説明

排ガス浄化装置

【課題】アンモニアが漏れにくくし、かつ、排ガス中の窒素酸化物を効率よく低減することができる排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】燃焼機器から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する排ガス浄化装置であって、排気配管と、排気配管内に還元剤を噴射する還元剤噴射手段と、排ガスの流れ方向において還元剤が噴射される位置よりも下流側に配置されているアンモニアSCR触媒手段と、排ガスの流れ方向において触媒手段よりも下流側に配置され、アンモニアSCR触媒を通過した排ガスのアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測手段と、アンモニア濃度計測手段により計測されたアンモニア濃度に基づいて、尿素水の噴射を制御する制御手段と、を有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機器から排出される窒素酸化物を還元する排ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉、ガスタービン等の燃焼機器から排出されるガス、つまり排ガスには、窒素酸化物(NOx)が含まれている。そのため、燃焼機器の排気管には、窒素酸化物を低減する装置が設けられている。この窒素酸化物を低減する装置としては、排ガスを案内にする排気管の中に尿素水を噴射し、排気管内で尿素水からアンモニアを生成させ、生成させたアンモニアと排ガス中の窒素酸化物とを反応させ、窒素酸化物から酸素を取り除き窒素に戻すことにより、排ガスから窒素酸化物を低減する装置がある。また、尿素水を噴射することに代えて、還元剤としてアンモニア水や、アンモニアガスを直接噴射し、噴射したアンモニア水やアンモニアガスから生成されたアンモニアと窒素酸化物とを反応させる装置もある。
【0003】
例えば、特許文献1には、処理前ガスのNOx濃度と、処理後の排ガス中のアンモニア濃度と、排ガスのNOx濃度と、排ガスの流量とを測定し、測定結果から処理前のNOx流量と、処置後のNOx濃度と、脱硝設備での脱硝率の実績、処理後の排ガス中のアンモニア濃度を算出し、算出した各値と目標値との偏差を算出し、その偏差から補正量を算出し、算出した補正量の少なくとも1つに基づいて補正NOx流量を算出し、算出した補正NOx流量に基づいて処理前排ガスに注入するアンモニア流量を制御する脱硝制御方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、内燃機関の排ガス浄化装置であるが、内燃機関の排気通路において、上流から順に、DPF装置、選択的接触還元型触媒装置を配置した排ガス浄化システムが記載されている。また、特許文献2には、通常運転時には、通常運転時用のNOx排出マップからNOx排出量を算出し、DPF装置の強制再生時には、強制再生時用のNOx排出量マップから、NOx排出量を算出して、該算出されたNOx排出量に対応するアンモニア系水溶液の供給量を算出し、該算出された供給量になるようにアンモニア水溶液を選択的接触還元型触媒装置の上流側の排ガス中に供給する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−169331号公報
【特許文献2】特開2007−154849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、窒素酸化物の濃度、脱硝率及び処理後の排ガスのアンモニア濃度の少なくとも1つを用いて、窒素酸化物の流量の偏差を補正することでも、窒素酸化物を低減することはでき、アンモニアの量も調整することはできる。また、特許文献2に記載されているように、予め作成したマップに基づいて尿素の噴射量を制御することで窒素酸化物を低減することはでき、アンモニアの量も調整することはできる。
【0007】
しかしながら、特許文献2のように、予め作成したマップで尿素の噴射量を調整した場合でも、運転状態によっては、窒素酸化物が漏れ出たり、アンモニアが漏れ出たり、することがあるという問題がある。また、特許文献1のように、NOx流量を算出するためには、排ガスの流量とNOx(窒素酸化物)の濃度を検出して、演算する必要があり、時間がかかるという問題がある。また、NOx流量を基準としてアンモニアの噴射量を制御しても、窒素酸化物及び漏れ出るアンモニアの量を十分に低減することができないという問題もある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、排気管に噴射する尿素の適切な量を算出し、下流側にアンモニアが漏れにくくし、かつ、排ガス中の窒素酸化物を効率よく低減することができる排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、燃焼機器から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する排ガス浄化装置であって、前記燃焼機器から排出される排ガスを案内する排気配管と、前記排気配管内に尿素水、アンモニア水及びアンモニアガスの少なくとも1つを還元剤として噴射する還元剤噴射手段と、噴射された前記還元剤から生成されるアンモニアと前記窒素酸化物との反応を促進させるアンモニアSCR触媒及び前記排気配管の内部に配置され前記アンモニアSCR触媒を前記排気配管の内部に支持する支持機構とを備え、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤が噴射される位置よりも下流側に配置されている触媒手段と、前記排ガスの流れ方向において前記触媒手段よりも下流側に配置され、前記アンモニアSCR触媒を通過した前記排ガスのアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測手段と、前記アンモニア濃度計測手段により計測されたアンモニア濃度に基づいて、前記還元剤噴射手段による前記還元剤の噴射を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
このように、アンモニア濃度計測手段により検出したアンモニアSCR触媒を通過した排ガス中に含まれるアンモニア濃度に基づいて、前記制御手段により前期尿素水噴射手段による還元剤の噴射を制御することで、排ガス浄化装置から排出される排ガス中のアンモニアをより低減させつつ、排ガス中の窒素酸化物も低減することができる。また、アンモニアの検出値のみに基づいて、還元剤の噴射量を制御することで、演算量を少なくすることができ、装置構成も簡単にすることができる。
【0011】
ここで、排ガス浄化装置は、さらに、前記排ガスの流れ方向において前記触媒手段よりも下流側に配置され、前記アンモニアSCR触媒を通過した排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理後窒素酸化物濃度計測手段を有し、前記制御手段は、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度にも基づいて還元剤噴射手段による還元剤の噴射を制御することが好ましい。
【0012】
このように、処理後窒素酸化物濃度計測手段により計測したアンモニアSCR触媒を通過した排ガスの窒素酸化物濃度も用いて還元剤の噴射を制御することで、排ガス中に含まれる窒素酸化物をより低減することができる。
【0013】
また、前記アンモニア濃度計測手段により検出されたアンモニア濃度と、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度との両方が、基準濃度を超えている場合は、前記アンモニアSCR触媒の回復を行う回復手段を有することが好ましい。また、前記回復手段は、前記アンモニアSCR触媒を所定温度で加熱することが好ましい。
【0014】
このように、回復手段によりアンモニアSCR触媒を回復させることで、アンモニア及び窒素酸化物が漏れ出ることをより抑制することができる。また、アンモニア濃度と窒素酸化物濃度の両方に基づいてアンモニアSCR触媒の能力を判定することで、より正確に尿素SCR触媒の状態を把握することができ、不要な回復処理を行うことを抑制することができる。また、回復処理として、アンモニアSCR触媒を加熱することで、アンモニアSCR触媒の能力を簡単に回復させることができる。
【0015】
また、前記アンモニア濃度計測手段により検出されたアンモニア濃度と、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度との両方が、基準濃度を超えている場合は、前記アンモニアSCR触媒を交換する必要があることを通知する通知手段を有することも好ましい。
【0016】
このように、通知手段によりアンモニアSCR触媒の能力が低下していることを通知し、アンモニアSCR触媒の交換を操作者に要求することで、能力が低下したアンモニアSCR触媒を使用し続けることを抑制することができ、アンモニア及び窒素酸化物が漏れ出ることをより抑制することができる。また、アンモニア濃度と窒素酸化物濃度の両方に基づいて尿素SCR触媒の能力を判定することで、より正確にアンモニアSCR触媒の状態を把握することができ、不要な交換を行うことを抑制することができる。
【0017】
さらに、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理前窒素酸化物濃度計測手段を有し、前記制御手段は、前記処理前窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度にも基づいて還元剤噴射手段による還元剤の噴射を制御することが好ましい。
【0018】
このように、処理前窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度にも基づいて還元剤噴射手段による還元剤の噴射を制御することで、窒素酸化物の還元に必要なアンモニアの量も把握して、還元剤の噴射を制御することができ、排ガス浄化装置から排出される排ガス中のアンモニアをより低減させつつ、排ガス中の窒素酸化物もより低減することができる。
【0019】
さらに、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスのイソシアン酸濃度を計測するイソシアン酸濃度計測手段と、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間の排ガス流路の温度を調整する温度調整手段とを有し、前記イソシアン酸濃度計測手段で計測したイソシアン酸濃度に基づいて、前記温度調整手段により前記排ガス流路の温度を調整することが好ましい。
【0020】
このように、排ガス中のイソシアン酸濃度に基づいて、排ガス流路の温度を調整することで、噴射された還元剤をより確実にアンモニアにすることができ、排ガス中のアンモニア濃度をより容易に制御することができる。
【0021】
さらに、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスのアンモニア濃度を計測する処理前アンモニア濃度計測手段と、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間の排ガス流路の温度を調整する温度調整手段とを有し、前記処理前アンモニア濃度計測手段で計測したアンモニア濃度に基づいて、前記温度調整手段により前記排ガス流路の温度を調整することも好ましい。
【0022】
このように、処理前の排ガス中のアンモニア濃度に基づいて、排ガス流路の温度を調整することで、噴射された尿素水をより確実にアンモニアにすることができ、排ガス中のアンモニア濃度をより容易に制御することができる。
【0023】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、燃焼機器から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する排ガス浄化装置であって、前記燃焼機器から排出される排ガスを案内する排気配管と、前記排気配管内に尿素水、アンモニア水及びアンモニアガスの少なくとも1つを還元剤として噴射する還元剤噴射手段と、噴射された還元剤から生成されるアンモニアと前記窒素酸化物との反応を促進させるアンモニアSCR触媒及び前記排気配管の内部に配置され前記アンモニアSCR触媒を前記排気配管の内部に支持する支持機構とを備え、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤が噴射される位置よりも下流側に配置されている触媒手段と、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理前窒素酸化物濃度計測手段と、前記排ガスの流れ方向において前記触媒手段よりも下流側に配置され、前記アンモニアSCR触媒を通過した前記排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理後窒素酸化物濃度計測手段と、前記処理前窒素酸化物濃度計測手段で計測した窒素酸化物濃度と、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段で計測した窒素酸化物濃度との差分に基づいて、前記触媒手段を通過した排ガス中のアンモニア濃度を算出し、算出したアンモニア濃度に基づいて、還元剤噴射手段による還元剤の噴射を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0024】
このように、処理前窒素酸化物濃度及び処置後窒素酸化物濃度を用いて、排ガス中のアンモニア濃度を算出し、算出したアンモニア濃度に基づいて、還元剤の噴射量を制御することで、排ガス浄化装置から排出される排ガス中のアンモニアをより低減させつつ、排ガス中の窒素酸化物も低減することができる。また、アンモニアの算出値のみに基づいて、還元剤の噴射量を制御することで、装置構成も簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる排ガス浄化装置は、アンモニアSCR触媒を通過した排ガス中に含まれるアンモニア濃度に基づいて、還元剤の噴射を制御することで、排ガス浄化装置から排出される排ガス中のアンモニアをより低減させつつ、排ガス中の窒素酸化物も低減することができる。また、アンモニアの検出値のみに基づいて、還元剤の噴射量を制御することで、演算量を少なくすることができ、装置構成も簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の排ガス浄化装置を有するゴミ焼却システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すゴミ焼却システムの排ガス浄化装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す濃度計測手段の概略構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、制御手段による尿素水噴射量の制御方法の一例を示すフロー図である。
【図5−1】図5−1は、窒素酸化物(NOx)濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図5−2】図5−2は、計測されたアンモニア濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図5−3】図5−3は、尿素SCR触媒の温度と時間との関係を示すグラフである。
【図5−4】図5−4は、尿素SCR触媒に注入されるアンモニアの流量と時間との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、排ガス浄化装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、制御手段による尿素水噴射量の制御方法の一例を示すフロー図である。
【図8】図8は、排ガス浄化装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる排ガス浄化装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、下記実施形態では、排ガス浄化装置を焼却炉でゴミを焼却するゴミ焼却システムに取り付けた場合として説明するが、排ガス浄化装置を取り付ける燃焼機器は、これに限定されず、熱分解炉、溶融炉、ボイラ、外燃機関等種々の燃焼機器に用いることができる。なお、本発明の燃焼機器には、内燃機関を含まない。また、ゴミとしては、種々の廃棄物を対象とすることができる。また、ゴミ以外のものを焼却炉で焼却する焼却システムにも用いることができる。
【0028】
図1は、本発明の排ガス浄化装置を有するゴミ焼却システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。図1に示すようにゴミ焼却システム(廃棄物燃焼システム)1は、基本的に、投入ホッパ2と、焼却炉3と、灰処理部4と、ボイラ5と、焼却減温塔6と、集塵器7と、排ガス浄化装置9と、ファン10と、煙突12とを有する。
【0029】
投入ホッパ2は、ゴミの投入部であり、クレーン等の搬送手段によりゴミの集積部から搬送されたゴミが投入される。投入ホッパ2は、焼却炉3と繋がっている。
【0030】
焼却炉3は、ゴミを燃焼させる燃焼機器であり、投入ホッパから投入されたゴミを燃焼させる。焼却炉3としては、ストーカ式焼却炉、流動床式焼却炉、バーナ式焼却炉等の種々の焼却炉を用いることができる。例えば、焼却炉としてストーカ式焼却炉を用いた場合は、投入ホッパ2から受け入れた廃棄物(ゴミ)を火格子上にて移送しながら、火格子の下方に位置する一次空気導入口より一次空気を導入し、火格子の上方に形成された一次燃焼室にて燃焼させ、さらに焼却炉本体の上方に二次空気の導入により形成された二次燃焼室にて、一次燃焼室で発生した排ガス中の未燃ガスを再燃焼させる。焼却炉3でゴミを燃焼させることで発生した燃焼灰は灰処理部4に送られ、排ガスは配管によりボイラ5に送られる。
【0031】
灰処理部4は、焼却炉3でゴミが燃焼されることで生成される燃焼灰を回収する。ここで、灰処理部4は、回収した燃焼灰をそのまま廃棄するようにしてもよいが、例えば、回収した灰を、灰溶融炉で溶融し、溶融されて得られた溶融スラグを生成することが好ましい。このようにして、作成した溶融スラグは、路盤材、コンクリート用骨材、アスファルト混合用骨材等種々の用途に再生利用することができる。
【0032】
ボイラ5は、焼却炉3から排出される高温の排ガスから熱を回収する。ボイラ5で熱を回収された排ガスは、焼却減温塔6に送られる。
【0033】
焼却減温塔6は、減温水が貯留されている減温水タンク13と接続されており、ボイラ5から送られた排ガスに減温水タンク13からの減温水を噴霧し、排ガスを冷却する。焼却減温塔6で冷却された排ガスは、集塵器7に送られる。
【0034】
ここで、焼却減温塔6と集塵器7とを繋げる配管には、消石灰貯留タンク14、活性炭貯留タンク15、特反剤貯留タンク16、押込ファン17とが接続されている。消石灰貯留タンク14に貯留されている消石灰と、活性炭貯留タンク15に貯留されている活性炭と、特反剤貯留タンク16に貯留されている特反剤とは、押込ファン17により焼却減温塔6と集塵器7とを繋げる配管に送られる。焼却減温塔6から集塵器7に向けて流れる排ガスに、消石灰、活性炭が供給されることで、排ガスに含まれる有害物質が中和される。具体的には、消石灰により、排ガス内の酸性ガス、例えばHCl、SOxを中和させることができ、活性炭により、排ガス内のダイオキシン類を除去することができる。また、特反剤(珪藻土)を投入することで、濾布の目詰まりを抑制することができる。
【0035】
集塵器7は、配管を介して焼却減温塔6と接続されており、焼却減温塔6から該配管を通過した排ガスが供給される。集塵器7は、排ガス中に含まれる、排ガスと消石灰との中和反応または排ガスと活性炭との中和反応で得られた塩類、飛灰(煤塵)、酸性ガスを除去する。集塵器7で塩類、飛灰(煤塵)、酸性ガスを除去された排ガスは、排ガス浄化装置9に送られる。
【0036】
排ガス浄化装置9は、配管を介して集塵器7と接続されており、集塵器7から該配管を通過した排ガスが供給される。排ガス浄化装置9は、排ガス中に含まれる窒素酸化物を除去する。なお、排ガス浄化装置9については、後ほど詳細に説明する。排ガス浄化装置9で窒素酸化物が除去された排ガスは、ファン10により煙突12から外部に排出される。ゴミ焼却システム1は、以上のようにして、ゴミを燃焼する。また、ゴミ焼却システム1は、ゴミの燃焼により発生した排ガスは、排ガス中の有害物質を除去、低減した後、煙突12から排出する。
【0037】
次に、排ガス浄化装置9について説明する。ここで、図2は、図1に示すゴミ焼却システムの排ガス浄化装置の概略構成を示すブロック図であり、図3は、図2に示す排ガス浄化装置の濃度計測手段の概略構成を示すブロック図である。なお、以下では、排ガスの流れる配管を排気配管21とする。排ガス浄化装置9は、尿素水噴射手段22と、尿素水タンク24と、アンモニア水供給手段25と、尿素SCR触媒手段26と、濃度計測手段28と、制御手段30とを有する。排ガス浄化装置9は、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムで、排ガスに含まれる窒素酸化物(NO、NO)を低減している。ここで、尿素SCRシステムは、尿素水噴射手段22と、尿素水タンク24と、尿素SCR触媒手段26とで構成される。
【0038】
尿素水噴射手段22は、排気配管21内に尿素水を噴射する噴射装置であり、排気配管21の集塵器7よりも下流側の部分に噴射口が設けられている。尿素水噴射手段22は、噴射口から排気配管21の内部に尿素水を噴射する。尿素水タンク24は、尿素水を貯めておくタンクであり、尿素水噴射手段22に尿素を供給する。尿素水タンク24には、外部の尿素水を供給する装置から尿素水を補充するための補給口が設けられており、この補給口から必要に応じて、尿素水が補給される。
【0039】
アンモニア水供給手段25は、排気配管21内にアンモニア水を供給する供給手段であり、排気配管21の尿素水噴射手段22よりも下流側の部分に噴射口が設けられている。なお、アンモニア水供給手段25は、必ずしも設けなくてもよい。
【0040】
尿素SCR触媒手段26は、尿素から生成されたアンモニアと窒素酸化物との反応を促進させる尿素選択的還元触媒である複数の尿素SCR触媒26aと、排気配管21の、尿素水噴射手段22よりも下流側部分の内部に設けられ、該尿素SCR触媒を支持する支持機構26bとを備える。ここで、尿素SCR触媒26aには、バナジア/チタニア系触媒やゼオライト系触媒を用いることができる。また、支持機構26bは、排ガスを通気させる孔が形成され、その表面に尿素SCR触媒26aを支持している。なお、支持機構26bは、尿素SCR触媒26aを排気配管21に支持できればよく例えば枠でもよい。また、尿素SCR触媒手段26は、複数の尿素SCR触媒26a及び支持機構26bを1つずつ交換できる。
【0041】
ここで、本実施形態では、排気配管21の尿素SCR触媒手段26が配置されている部分は、他の部分よりも開口面積が大きい脱硝塔21aである。脱硝塔21aには、複数の尿素SCR触媒26aとそれを保持する支持機構26bとが積層されている。したがって、尿素SCR触媒手段26を通過する排ガスは、複数個の尿素SCR触媒26aを通過する。
【0042】
尿素SCRシステムは、以上のような構成であり、尿素水噴射手段22により排気配管21の内部に尿素水を噴射する。噴射された尿素水は、排気配管21内の熱によりアンモニア(NH)となる。具体的には、以下の化学反応により、尿素水からアンモニアが生成される。
(NH)2CO+HO→2NH+CO
その後、生成されたアンモニア及びアンモニア水供給手段25から供給されたアンモニア水は、排ガスとともに排気配管21の脱硝塔21a内を流れ、尿素SCR触媒手段26に到達する。なお、尿素水の一部は、アンモニアにならずに、尿素水のまま尿素SCR触媒手段26に到達する。そのため、尿素SCR触媒手段26内でも、上記反応により、尿素水からアンモニアが生成される。尿素SCR触媒手段26に到達したアンモニアは、排ガスに含まれる窒素酸化物と反応し、窒素酸化物から酸素を取り除き、窒素に還元する。具体的には、以下の化学反応により、窒素酸化物が還元される。
4NH+4NO+O→4N+6H
4NH+2NO+O→3N+6H
【0043】
濃度計測手段28は、排ガスの排気配管21において尿素SCR触媒手段26の下流側の排気配管21に配置されており、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガス中のアンモニアの濃度を計測する。濃度計測手段28は、図3に示すように、計測手段本体40と、光ファイバ42と、計測セル44と、受光部46と、を有する。
【0044】
計測手段本体40は、アンモニアが吸収する波長域のレーザ光を発光させる発光手段と、信号からアンモニアの濃度を算出する演算手段とを有し、光ファイバ42にレーザ光を出力し、受光部46が受光した信号を受け取る。
【0045】
光ファイバ42は、計測手段本体40から出力されたレーザ光を案内し、計測セル44に入射させる。
【0046】
計測セル44は、排気配管21の一部に配置されており、光ファイバ42から射出された光を計測セル44の内部に入射させる入射部と、計測セル44の所定経路を通過したレーザ光を出力する出力部と、を有する。
【0047】
受光部46は、計測セル44の内部を通過し、出力部から出力されたレーザ光を受光し、受光したレーザ光の強度を受光信号として計測手段本体40に出力する。
【0048】
濃度計測手段28は、以上のような構成であり、計測手段本体40から出力されたレーザ光は、光ファイバ42から計測セル44内の所定経路を通過した後、出力部から出力される。このとき、計測セル44内の排ガス中にアンモニアが含まれていると、計測セル44を通過するレーザ光が吸収される。そのため、レーザ光は、排ガス中のアンモニア濃度によって、出力部に到達するレーザ光の出力が変化する。受光部46は、出力部から出力されるレーザ光を受光信号に変換し、計測手段本体40に出力する。計測手段本体40は、出力したレーザ光の強度と、受光信号から算出される強度とを比較し、その減少割合から計測セル44内を流れる排ガスのアンモニア濃度を算出する。このように、濃度計測手段28は、TDLAS方式(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:可変波長ダイオードレーザー分光法)を用い、出力したレーザ光の強度と、受光部46で検出した受光信号とに基づいて計測セル44内の所定位置、つまり、測定位置を通過する排ガス中のアンモニア濃度を算出及び/または計測する。また、本実施形態の濃度計測手段28は、連続的にアンモニア濃度を算出及び/または計測することができる。
【0049】
なお、計測セル44は、入射部と出力部のみを、光を透過する材料で形成しても、計測セル44全体を、光を透過する材料で形成してもよい。また、計測セル44内に少なくとも2枚の光学ミラーを設け、入射部から入射されたレーザ光を光学ミラーで多重反射させた後、出力部から出力させるようにしてもよい。このようにレーザ光を多重反射させることで、計測セル44内のより多くの領域を通過させることができる。これにより、計測セル44内を流れる排ガスに濃度の分布の影響を小さくすることができ、正確に濃度を検出することができる。
【0050】
制御手段30は、濃度計測手段28の検出結果に基づいて、尿素水噴射手段22から噴射する尿素水の量及び噴射するタイミングをPID制御により制御する。具体的には、アンモニア濃度が所定値よりも低い場合は、一度に噴射する尿素水の量を多くしたり、尿素水を噴射する間隔を短くしたりする。また、アンモニア濃度が所定値よりも高い場合は、一度に噴射する尿素水の量を少なくしたり、尿素水を噴射する間隔を長くしたりする。
【0051】
図4は、制御手段30による尿素水噴射量の制御方法の一例を示すフロー図である。なお、図4に示すフロー図は、尿素水噴射手段22から噴射する尿素水の量によりアンモニア濃度を調整する場合である。まず、濃度計測手段28で計測されたアンモニア濃度が制御手段30に入力されたら、制御手段30は、ステップS12として、計測されたアンモニア濃度が目標値よりも大きいかを判定する。制御手段30は、ステップS12で計測されたアンモニア濃度が目標値よりも大きい(YES)と判定したら、ステップS14に進み、現状設定されている尿素水噴射量を一定量低減する。つまり、尿素水噴射手段22から噴射される尿素水の量を一定量少なくする。その後、制御手段30は、ステップS20に進む。
【0052】
また、ステップS12で、制御手段30が計測されたアンモニア濃度が目標値以下である(NO)と判定したら、ステップS16に進み、計測されたアンモニア濃度が目標値よりも小さいかを判定する。制御手段30は、ステップS16で、計測されたアンモニア濃度が目標値よりも小さい(YES)と判定したら、ステップS18に進み、現状設定されている尿素水噴射量を一定量増加させる。つまり、尿素水噴射手段22から噴射される尿素水の量を一定量多くする。その後、制御手段30は、ステップS20に進む。また、制御手段30は、ステップS16で、計測されたアンモニア濃度が目標値以上である(NO)と判定したら、ステップS20に進む。
【0053】
制御手段30は、ステップS20で、排ガスの排出が停止しているか(つまり、ゴミ焼却システム1が停止しているか)を判定する。制御手段30は、ステップS20で、排ガスの排出が停止していない(NO)と判定したらステップS12に進み、上述した処理を繰り返す。他方、制御手段30は、ステップS20で、排ガスの排出が停止している(YES)と判定したら処理を終了する。以上のようにして、制御手段30は、尿素水噴射手段22の尿素水噴射量を制御する。なお、上記制御では、尿素水噴射量を一定量増加、減少させたが、これに限定されない。例えば、アンモニア濃度が目標値以下の場合は、尿素水噴射量を予め設定した基準値としてもよく、アンモニア濃度が目標値以上の場合は、尿素水噴射量を0にするようにしてもよい。また、尿素水噴射量は、噴射回数で調整しても、1回の噴射量で調整してもよい。また、アンモニア濃度の上限の目標値と下限の目標値とは、異なる値としてもよい。つまり、ステップS12で使用される目標値とステップS16で使用される目標値を異なる目標値としてもよい。アンモニア濃度の上限の目標値と下限の目標値とを異なる値とすることで、尿素水噴射量を変化させないアンモニア濃度の範囲を一定の濃度範囲とすることができる。
【0054】
ゴミ焼却システム1の排ガス浄化装置9は、基本的に以上のような構成である。焼却炉3で生成された排ガスは、各部で不純物が除去された後、排ガス浄化装置9に供給される。排ガス浄化装置9に供給された排ガスは、排気配管21を流れ、尿素水噴射手段22から尿素水が噴射された後、尿素水及び尿素水から生成されたアンモニアとともに尿素SCR触媒手段26を通過する。排ガスは、アンモニアとともに尿素SCR触媒手段26を通過することで、排ガスに含まれる窒素酸化物を尿素SCRシステムで低減される。その後、排ガスは、煙突からから大気中に排出される。ここで、排ガス浄化装置9は、上述したように、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガスのアンモニア濃度を濃度計測手段28により計測し、その計測結果に基づいて、尿素水噴射手段22が噴射する尿素水の量、噴射タイミングを制御している。
【0055】
排ガス浄化装置9は、尿素SCR触媒手段26を通過したアンモニア濃度を計測し、その結果に応じて尿素水の噴射量を制御している。このように、尿素SCR触媒手段26を通過したアンモニア濃度に基づいて、尿素水の噴射量を制御することで、アンモニアと窒素酸化物の反応状態に即して尿素水の噴射量を制御することができる。
【0056】
以下、具体的に測定例を用いて詳細に説明する。本測定例では、尿素SCR触媒の温度を変化させて排ガスの処理能力を変化させた。この場合に、アンモニア濃度に基づいてアンモニアの注入量を制御し、アンモニア濃度の測定値が目標値となるまで、つまり定常状態となるまでの、アンモニア濃度の変化、窒素酸化物濃度の変化、アンモニア注入量の変化を計測した。なお、アンモニア注入量は、尿素水の噴射量に対応している。また、比較のために、アンモニア濃度に応じた制御を行わず、アンモニアの注入量を一定とした場合の、アンモニア濃度の変化、窒素酸化物濃度の変化、アンモニア注入量の変化も計測した。測定結果を図5−1〜図5−4に示す。ここで、図5−1は、窒素酸化物(NOx)濃度と時間との関係を示すグラフであり、図5−2は、計測されたアンモニア濃度と時間との関係を示すグラフであり、図5−3は、尿素SCR触媒の温度と時間との関係を示すグラフであり、図5−4は、尿素SCR触媒に注入されるアンモニアの量と時間との関係を示すグラフである。ここで、図5−1〜図5−4のグラフの時間軸は同一時間軸である。また、アンモニア濃度の目標値は、125ppmに設定している。
【0057】
図5−1〜図5−4に示すように、アンモニア濃度が目標値よりも高くなる場合は、アンモニア注入量を低減させ、アンモニア濃度が目標値よりも低い場合は、アンモニア注入量を増加させていることがわかる。アンモニア濃度によってアンモニア注入量を制御することで、アンモニア注入量を一定とした場合よりも、排ガスに含まれるアンモニアの量が急激に変化することを防止でき、アンモニアの漏れ量を少なくすることができることがわかる。具体的には、アンモニア注入量を一定とした場合よりもアンモニアスリップ積算値を50%〜67%低減できることがわかる。以上より、本発明の効果は明らかである。
【0058】
また、尿素SCR触媒手段26は、温度や濃度等の複数の要因によって、窒素酸化物とアンモニアとの反応量や、アンモニアの吸着率が変化するため、予め作成したマップに基づいて、尿素水の噴射量を制御しても、アンモニアが多くなりアンモニアが漏れ出すか、アンモニアが少なく窒素酸化物を還元しきれず窒素酸化物が漏れ出す可能性があるが、尿素SCR触媒を通過した排ガスのアンモニア濃度を計測することで、より適切に尿素水の噴射量を制御することができる。また、アンモニア濃度のみから尿素水噴射量を制御することができる、1つのセンサのみを設ければよいため装置構成を簡単にすることができる。
【0059】
また、尿素SCR触媒手段26の出口側のアンモニア濃度に基づいて制御を行うことで、尿素SCR触媒手段26の一部の尿素SCR触媒26aを交換した場合や、尿素SCR触媒手段26の処理能力が算出できない場合であっても、適切な尿素水の噴射量、アンモニア水の供給量を算出することができる。
【0060】
ここで、排ガス浄化装置9は、上述したようにアンモニアが漏れ出ることを抑制できるが、大気中に漏れ出るアンモニアをより低減するために、尿素SCR触媒手段26よりも下流側にアンモニアを酸化する酸化触媒を設けることが好ましい。なお、酸化触媒を設けても、排ガス浄化装置9は、上述したように、アンモニアが漏れ出る量を低減できているため、従来よりも酸化触媒をより小型化することができる。これにより、排ガス浄化装置の装置構成をより簡単にすることができ、重量も軽くすることができる。さらに、アンモニアを酸化することで発生する窒素酸化物を低減することができる。
【0061】
また、制御手段30は、測定位置におけるアンモニア濃度の目標値を、焼却炉の運転条件によって変化させても、運転条件にかかわらず一定としてもよい。運転条件によって、目標値を変化させた場合は、排ガス中に含まれる窒素酸化物の量の増減に対応して尿素水の噴射量を制御することができ、窒素酸化物をより適切に低減することができ、測定位置のアンモニア濃度を目標値に近い値に維持することができる。なお、目標値を一定にして、目標値と運転条件との関係から尿素水の噴射量、噴射タイミングを制御する場合も同様である。また、アンモニア濃度の目標値を運転条件にかかわらず一定とした場合は、運転条件を検出する必要がなくなり、測定手段を少なくすることができ、排ガス浄化装置の装置構成を簡単にすることができる。また条件に応じて目標値を算出する必要が無くなるため、制御が簡単になる。
【0062】
また、尿素SCR触媒としてゼオライト系の触媒を用いることで、排ガスが高温であっても、触媒として適切に機能させることができる。また、ゼオライト系は、アンモニアの吸着量が多く、また温度や触媒劣化によって性能が変化するためマップ等による制御は困難であるが、本発明のように、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガスのアンモニア濃度を計測し、その計測結果に基づいて尿素水噴射量を制御することで、尿素SCR触媒としてゼオライト系の触媒を用いた場合でも、アンモニアが漏れ出ることを抑制することができる。
【0063】
なお、排ガス浄化装置9では、濃度計測手段28として、連続的に且つ窒素酸化物を検出することなくアンモニアを計測できるため、アンモニアが吸収する波長域のレーザ光を出力し、レーザ光の吸収割合を検出するTDLAS方式により、アンモニア濃度を測定したがこれに限定されない。本発明には、排ガス中のアンモニア濃度を計測できる種々の計測手段を用いることができ、例えば、測定位置に分岐管を設けて、排ガスの一部が分岐管にも流れるようにし、分岐管を流れる排ガスのアンモニア濃度を測定するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、尿素水噴射手段22から噴射する尿素水の量を制御したが、本発明はこれに限定されず、尿素水の噴射量に加えてまたは代えて、アンモニア水供給手段25から供給するアンモニア水の供給量を換えてもよい。また、尿素水噴射手段とアンモニア水供給手段に加えてまたは代えて、アンモニアガスを供給するアンモニアガス噴射手段を設け、アンモニアガスを供給する量を調整するようにしてもよい。以上のように、本発明は、アンモニアを生成できる還元剤、尿素水、アンモニア水、アンモニアガス等を供給する還元剤噴射手段(供給手段)を設け、その還元剤噴射手段から供給する還元剤の量を調整すればよい。なお、アンモニア水やアンモニアガスを用いる場合は、尿素SCR触媒は、アンモニアSCR触媒ともいえる。なお、尿素SCR触媒とアンモニアSCR触媒とは、名称が異なるのみで、同一の触媒である。
【0065】
また、本実施形態のような、ゴミ焼却システムや、ボイラに用いる場合は、大量の排気ガスが排出され、排気配管の開口面積が大きくなるため、複数点のアンモニア濃度を測定することが好ましい。ここで、測定点は、排ガスの流れ方向の位置は同じで排出配管の位置が異なる点、つまり、排気配管の同一断面の異なる点のアンモニア濃度を測定することが好ましい。このように複数点のアンモニア濃度を測定することで、排気配管内にアンモニア濃度の偏りがあった場合も排ガス中のアンモニア濃度をより正確に測定することができる。なお、複数点の測定結果からアンモニア濃度を算出する方法は特に限定されず、平均値を求めるようにしても、測定結果から濃度の分布を算出して、全体のアンモニア濃度を求めるようにしてもよい。
【0066】
また、排ガス浄化装置9では、濃度計測手段28のみを設け、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガスのアンモニア濃度のみから尿素水噴射量を制御したが、本発明はこれに限定されない。以下、図6と共に、本発明の排ガス浄化装置の他の実施形態について説明する。
【0067】
図6は、排ガス浄化装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。なお、図6に示す排ガス浄化装置50は、一部の構成を除いて他の構成は、図2に示す排ガス浄化装置9と同様であるので、同様の構成要素の説明は省略し、以下、排ガス浄化装置50に特有の点を重点的に説明する。図6に示す排ガス浄化装置50は、尿素水噴射手段22と、尿素水タンク24と、アンモニア水供給手段25と、尿素SCR触媒手段26と、濃度計測手段28と、処理前アンモニア濃度計測手段54と、イソシアン酸濃度計測手段56と、処理前窒素酸化物濃度計測手段58と、処理後窒素酸化物濃度計測手段60と、温度調整手段62と、制御手段64とを有する。尿素水噴射手段22と、尿素水タンク24と、アンモニア水供給手段25と、尿素SCR触媒手段26と、濃度計測手段28とは、上述した排ガス浄化装置9の各部と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。また、説明のために図6には、集塵器7も示す。
【0068】
処理前アンモニア濃度計測手段54は、排ガスの排気経路において、尿素SCR触媒手段26の上流側、具体的には、集塵器7及び尿素水噴射手段22よりも下流側かつ尿素SCR触媒手段26よりも上流側の排気配管21に配置されており、尿素SCR触媒手段26に供給される排ガス中のアンモニアの濃度を計測する。処理前アンモニア濃度計測手段54は、濃度計測手段28と同様に、計測手段本体と、光ファイバと、計測セルと、受光部と、を有する。処理前アンモニア濃度計測手段54によるアンモニア濃度の計測方法は、濃度計測手段28と同様であるので、その説明は省略する。処理前アンモニア濃度計測手段54は、尿素SCR触媒手段26を通過する前の排ガス中に含まれるアンモニア濃度を連続的に計測し、計測結果を制御手段64に送る。
【0069】
イソシアン酸濃度計測手段56は、排ガスの排気経路において、尿素SCR触媒手段26の上流側に配置されており、尿素SCR触媒手段26に供給される排ガス中のイソシアン酸の濃度を計測する。イソシアン酸濃度計測手段56としては、濃度計測手段28と同様の構成のセンサを用いることができる。具体的には、イソシアン酸が吸収する波長域のレーザ光を発光部から発光させ、発光部から発光され排ガス中を通過した光を受光部で受光し、その受光した光の強度から排ガス中のイソシアン酸の濃度を検出することができる。イソシアン酸濃度計測手段56は、尿素SCR触媒手段26を通過する前の排ガス中に含まれるイソシアン酸濃度を連続的に計測し、計測結果を制御手段64に送る。なお、イソシアン酸濃度計測手段としては、排ガス中の窒素酸化物とアンモニアを検出することなく、イソシアン酸のみを検出し、計測するセンサであれば種々のセンサを用いることができる。
【0070】
処理前窒素酸化物濃度計測手段58は、排ガスの排気経路において、尿素SCR触媒手段26の上流側に配置されており、尿素SCR触媒手段26に供給される排ガス中の窒素酸化物濃度の濃度を計測する。処理前窒素酸化物濃度計測手段58も、イソシアン酸酸化物濃度計測手段56と同様に、濃度計測手段28と同様の構成のセンサを用いることができる。具体的には、窒素酸化物が吸収する波長域のレーザ光を発光部から発光させ、発光部から発光され、排ガス中を通過した光を受光部で受光し、その受光した光の強度から排ガス中の窒素酸化物の濃度を検出することができる。処理前窒素酸化物濃度計測手段58は、尿素SCR触媒手段26を通過する前の排ガス中に含まれる窒素酸化物濃度を連続的に計測し、計測結果を制御手段64に送る。なお、窒素酸化物濃度計測手段としては、排ガス中のイソシアン酸とアンモニアを検出することなく、窒素酸化物のみを検出し、計測するセンサであれば種々のセンサを用いることができる。
【0071】
処理後窒素酸化物濃度計測手段60は、排ガスの排気経路において尿素SCR触媒手段26の下流側の排気配管21に配置されており、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガス中の窒素酸化物の濃度を計測する。処理後窒素酸化物濃度計測手段60は、処理前窒素酸化物濃度計測手段58と同様の構成のセンサを用いることができる。処理後窒素酸化物濃度計測手段60は、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガス中に含まれる窒素酸化物濃度を連続的に計測し、計測結果を制御手段64に送る。
【0072】
温度調整手段62は、排ガスの排気経路において尿素SCR触媒手段26の上流側の排気配管21、具体的には、尿素水噴射手段22と尿素SCR触媒手段26との間の排気配管21に設けられており、排気配管21を流れる排ガスの温度を調整する。温度調整手段62としては、排気配管21を加熱、冷却することで、排気配管21を流れる排ガスを温めたり、冷やしたりすることで排ガスの温度を調整する。温度調整手段62としては、ヒータや、ペルチェ素子、空冷装置等、種々の加熱機構、冷却機構を用いることができる。
【0073】
制御手段64は、濃度計測手段28、処理前窒素酸化物濃度計測手段58及び処理後窒素酸化物濃度計測手段60から送られる計測結果に基づいて、尿素水噴射手段22による尿素水噴射量を調整し、処理前アンモニア濃度計測手段54、イソシアン酸濃度計測手段56から送られる計測結果に基づいて、温度調整手段62による排ガス温度を調整する。
【0074】
まず、制御手段64による尿素水噴射量の調整について説明する。制御手段64は、濃度計測手段28から送られる尿素SCR触媒手段26を通過した排ガスのアンモニア濃度が目標値以下となり、処理後窒素酸化物濃度計測手段60から送られる尿素SCR触媒手段26を通過した排ガスの窒素酸化物濃度が目標値以下となるように尿素水噴射量を設定する。また、制御手段64は、処理前窒素酸化物濃度計測手段58から送られる尿素SCR触媒手段26を通過する前の排ガスの窒素酸化物濃度に基づいて、排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化するために必要なアンモニアの量を算出する。以下、図7を用いて、制御方法の一例について詳細に説明する。図7は、制御手段64による尿素水噴射量の制御方法の一例を示すフロー図である。なお、図7に示すフロー図では、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガス中のアンモニア濃度と窒素酸化物濃度が最適となるように尿素噴射量を制御する制御方法であり、尿素SCR触媒手段26を通過する前の排ガスの窒素酸化物濃度に基づいて尿素水噴射量を制御することは考慮していない制御方法である。
【0075】
まず、濃度計測手段28で計測されたアンモニア濃度及び処理後窒素酸化物濃度計測手段60で計測された窒素酸化物(NOx)濃度が制御手段64に入力されたら、制御手段64は、ステップS30として、計測されたアンモニア濃度が目標値よりも大きいかを判定する。制御手段64は、ステップS30で計測されたアンモニア濃度が目標値よりも大きい(YES)と判定したら、ステップS32に進み、計測された窒素酸化物(NOx)濃度は、目標値よりも小さいかを判定する。
【0076】
制御手段64は、ステップS32で、計測された窒素酸化物(NOx)濃度は、目標値よりも小さい(YES)と判定したら、ステップS38として、現状設定されている尿素水噴射量を一定量低減する。つまり、尿素水噴射手段22から噴射される尿素水の量を一定量少なくする。その後、制御手段64は、ステップS44に進む。他方、制御手段64は、ステップS32で、計測された窒素酸化物(NOx)濃度は、目標値以上である(NO)と判定したら、ステップS36として、回復処理を行う。ここで、回復処理とは、尿素SCR触媒手段26の触媒能力を回復させる処理であり、例えば、尿素SCR触媒手段26の尿素SCR触媒を加熱する処理である。なお、尿素SCR触媒を加熱する手段としては、例えば、ヒータを用いることができる。また、排気配管21に加温手段を設け、排ガスの温度を高温にするようにしてもよい。このように、アンモニア濃度と窒素酸化物濃度の両方が目標値以上の場合は、尿素SCR触媒手段26の触媒としての能力が低下しており、アンモニアと窒素酸化物の反応が適切に起きていないと判定して、回復処理をすることで、尿素SCR触媒手段26でアンモニアと窒素酸化物との反応が好適に発生するようにすることができる。
【0077】
次に、制御手段64は、ステップS30で計測されたアンモニア濃度が目標値以下である(NO)と判定したら、ステップS34として、窒素酸化物(NOx)濃度が目標値よりも大きいかを判定する。制御手段64は、ステップS34で、窒素酸化物濃度が目標値よりも大きい(YES)と判定したら、ステップS40に進み、アンモニア濃度が目標値よりも小さいかを判定する。他方、制御手段64は、ステップS34で、窒素酸化物濃度が目標値以下である(NO)と判定したら、窒素酸化物濃度及びアンモニア濃度がともに目標値以下となるため、尿素水噴射量を調整することなく、ステップS44に進む。次に、制御手段64は、ステップS40で、アンモニア濃度が目標値よりも小さい(YES)と判定したら、ステップS42に進み、現状設定されている尿素水噴射量を一定量増加させる。つまり、尿素水噴射手段22から噴射される尿素水の量を一定量多くする。その後、制御手段64は、ステップS44に進む。他方、制御手段64は、ステップS40で、アンモニア濃度が目標値以上である(NO)と判定したら、ステップS44に進む。このようにステップS40でアンモニアを目標値以上の場合は、窒素酸化物濃度が目標値以上の場合であってもアンモニアの量を増加させないことで、排気配管21から排出される排ガス中のアンモニアを少なくすることができる。
【0078】
制御手段64は、ステップS44で、排ガスの排出が停止しているか(つまり、ゴミ焼却システム1が停止しているか)を判定する。制御手段64は、ステップS44で排ガスの排出が停止していない(NO)と判定したらステップS30に進み、上述した処理を繰り返す。他方、制御手段64は、ステップS44で、排ガスの排出が停止している(YES)と判定したら処理を終了する。以上のようにして、制御手段64は、尿素水噴射手段22の尿素水噴射量を制御する。なお、上記制御も、尿素水噴射量を一定量増加、減少させたが、上述した制御と同様にこれには限定されない。また、アンモニア濃度の上限の目標値と下限の目標値とも、異なる値としてもよい。また、上記制御では、ステップS36で回復処理を行ったが、通知手段により、ユーザに尿素SCR触媒手段26の尿素SCR触媒を交換する必要があることを通知するようにしてもよい。ここで、通知手段としては、メッセージを表示するディスプレイや、音声で知らせる音声出力装置を用いることができる。
【0079】
また、上記実施形態では、処置前窒素酸化物濃度計測手段58で計測される窒素酸化物濃度を用いていないが、尿素SCR触媒手段26を通過する前の排ガスの窒素酸化物濃度から排ガス中の窒素酸化物の浄化(中和)に必要なアンモニア量を算出し、制御手段で、尿素SCR触媒手段26通過後の排ガス中のアンモニア濃度と窒素酸化物濃度から算出された尿素水噴射量を補正するようにしてもよい。また、尿素SCR触媒手段26通過後の排ガス中の窒素酸化物濃度を用いずに、尿素SCR触媒手段26通過後の排ガス中のアンモニア濃度から尿素水噴射量を算出し、算出した尿素水噴射量を、尿素SCR触媒手段26を通過する前の排ガスの窒素酸化物濃度から算出した排ガス中の窒素酸化物の浄化(中和)に必要なアンモニア量に基づいて補正してもよい。
【0080】
次に、制御手段64が、処理前アンモニア濃度計測手段54、イソシアン酸濃度計測手段56から送られる計測結果に基づいて、温度調整手段62による排ガス温度を調整する方法について説明する。尿素水噴射手段22から噴射された尿素水は、排気配管21の熱、排ガスの熱により、尿素からイソシアン酸が生成され、イソシアン酸からアンモニアが生成される。しかしながら、反応が不十分の場合は、尿素水の一部が尿素のまま、またはイソシアン酸の状態で維持され、アンモニアとならない場合がある。この点を解決するために、制御手段64は、処理前アンモニア濃度計測手段54、イソシアン酸濃度計測手段56から送られる尿素SCR触媒手段26の通過前の排ガスのアンモニア濃度及び/またはイソシアン酸濃度から、噴射された尿素水が適切にアンモニアになっているか判定する。具体的には、イソシアン酸濃度が一定以上の場合、反応が適切に起きていないと判定する。また、尿素水噴射量から理論上のアンモニア濃度を算出し、その算出値よりも処理前アンモニア濃度計測手段54で計測された計測値が一定濃度以上低い場合も、反応が適切に起きていないと判定する。制御手段64は、反応が適切に起きておらず、尿素水、イソシアン酸が残っていると判定した場合は、温度調整手段62により排ガス温度を上昇させて、尿素水、イソシアン酸のアンモニア化を促進し、尿素SCR触媒手段26に到着時にアンモニアとなっているようにする。
【0081】
排ガス浄化装置50は、以上のような構成であり、焼却炉3で生成され、各部を通過した排ガスは、尿素水噴射手段22で尿素水が噴射された後、排気配管21の温度調整手段62が配置された領域を流れる。その後、排ガスは、排気配管21の処理前アンモニア濃度計測手段54、イソシアン酸濃度計測手段56、処理前窒素酸化物濃度計測手段58が配置された領域を流れる。その際、各濃度計測手段は、排ガスの測定対象の物質の濃度を計測する。その後、排ガスは、尿素SCR触媒26aを通過し、排気配管21の濃度計測手段28、処理後窒素酸化物濃度計測手段60が配置された領域を流れ、外部に排出される。ここで、排ガスは、尿素SCR触媒を通過する際に、排ガス中に含まれる窒素酸化物と尿素水から生成されたアンモニアとが反応し、窒素酸化物が還元される。各濃度計測手段は、排ガスの測定対象の物質の濃度を計測する。
【0082】
排ガス浄化装置50は、濃度計測手段28での計測結果に加えて、処理前窒素酸化物濃度計測手段58及び処理後窒素酸化物濃度計測手段60での計測結果に基づいて、尿素水噴射手段22による尿素水噴射量を調整することで、アンモニアが漏れ出ることを抑制しつつ、排ガス中の窒素酸化物をより低減することができる。また、処理前アンモニア濃度計測手段54、イソシアン酸濃度計測手段56での計測結果に基づいて、温度調整手段62による排ガス温度を調整することで、尿素水をより適切にアンモニアにすることができ、アンモニアと窒素酸化物を適切に反応させることができる。
【0083】
また、上記実施形態では、濃度計測手段28、処理前窒素酸化物濃度計測手段58、処理後窒素酸化物濃度計測手段60、処理前アンモニア濃度計測手段54及びイソシアン酸濃度計測手段56を用いたが、少なくとも濃度計測手段28を用いればよく、その他のセンサは、適宜組み合わせて用いればよい。濃度計測手段28と各センサのそれぞれから計測される計測結果に基づいて、尿素水噴射量、または、尿素水噴射量及び排ガス温度を調整することで、上記効果を得ることができる。
【0084】
また、排ガス浄化装置は、さらに、尿素SCR触媒の温度を検出する温度検出手段を有し、尿素SCR触媒の温度と、各計測手段で計測した計測結果との履歴を保存し、尿素SCR触媒に吸着されているアンモニア量を算出し、算出したアンモニア量に基づいて、排ガス中の窒素酸化物の浄化に必要なアンモニア量を算出し、算出したアンモニア量に基づく尿素水を噴射させるようにすることが好ましい。このように、尿素SCR触媒に吸着されているアンモニア量を加味して尿素水噴射量を制御することで、尿素SCR触媒に吸着されているアンモニア量を、尿素SCR触媒でアンモニアと窒素酸化物とを高効率で反応させることができる量とすることができる。これにより、排気配管から漏れ出るアンモニア量をより低減することができる。また、尿素SCR触媒で効率よくアンモニアと窒素酸化物とを反応させることができることで、尿素SCR触媒をより少なく、小さくすることができる。
【0085】
なお、処理前窒素酸化物濃度計測手段58、処理後窒素酸化物濃度計測手段60で検出する窒素酸化物としては、一酸化窒素のみを検出しても、二酸化窒素のみを検出してもよいし、一酸化窒素と二酸化窒素の両方を検出してもよい。一酸化窒素のみ、二酸化窒素のみ、一酸化窒素と二酸化窒素の両方のいずれを検出するようにしても、好適に排ガス中の窒素酸化物濃度の濃度を計測でき、計測値を尿素水の噴射量の算出に用いることができる。なお、処理前窒素酸化物濃度計測手段58、処理後窒素酸化物濃度計測手段60は、一酸化窒素のみを検出するようにすることが好ましい。
【0086】
なお、上述した排ガス浄化装置では、濃度計測手段28により尿素SCR触媒手段を通過した排ガスのアンモニア濃度を検出したが、本発明はこれに限定されず、処理前窒素酸化物濃度計測手段と処理後窒素酸化物濃度計測手段とで計測された窒素酸化物濃度からアンモニア濃度を算出してもよい。以下、図8を用いて詳細に説明する。図8は、排ガス浄化装置の他の実施形態の概略構成を示すブロック図である。なお、図8に示す排ガス浄化装置72は、一部の構成を除いて他の構成は、図2に示す排ガス浄化装置9と同様であるので、同様の構成要素の説明は省略し、以下、排ガス浄化装置72に特有の点を重点的に説明する。
【0087】
図8に示す排ガス浄化装置72は、尿素水噴射手段22と、尿素水タンク24と、アンモニア水供給手段25と、尿素SCR触媒手段26と、処理前窒素酸化物濃度計測手段76と、処理後窒素酸化物濃度計測手段78と、制御手段80とを有する。尿素水噴射手段22と、尿素水タンク24と、アンモニア水供給手段25と、尿素SCR触媒手段26とは、上述した排ガス浄化装置9の各部と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0088】
処理前窒素酸化物濃度計測手段76は、排ガスの排気経路において、尿素SCR触媒手段26の上流側に配置されており、尿素SCR触媒手段26に供給される排ガス中の窒素酸化物の濃度を計測する。処理前窒素酸化物濃度計測手段76は、図6に示す処理前窒素酸化物濃度計測手段58と同様の計測手段である。
【0089】
処理後窒素酸化物濃度計測手段78は、排ガスの排気経路において尿素SCR触媒手段26の下流側の排気配管21に配置されており、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガス中の窒素酸化物の濃度を計測する。処理後窒素酸化物濃度計測手段78は、処理後窒素酸化物濃度計測手段60と同様の計測手段である。
【0090】
制御手段80は、処理前窒素酸化物濃度計測手段76で検出した尿素SCR触媒手段26通過前の排ガス中の窒素酸化物濃度と、処理後窒素酸化物濃度計測手段78で検出した尿素SCR触媒手段26通過後の排ガス中の窒素酸化物濃度とに基づいて、反応したアンモニアの量を算出し、尿素SCR触媒手段26を通過した排ガス中に含まれるアンモニア濃度を算出する。制御手段80は、この算出したアンモニア濃度に基づいて、排ガス浄化装置9の制御手段30と同様の方法で、尿素水噴射量を制御する。このように、排ガス浄化装置72のように、排ガス中の窒素酸化物濃度から尿素SCR触媒手段26を通過した排ガス中のアンモニア濃度を算出することで、アンモニア濃度を直接計測しなくても、尿素水噴射量を制御することができる。なお、上述したように、尿素SCR触媒は、温度等により吸着させるアンモニアの量が変化するため、直接アンモニア濃度を計測する場合よりも計測の精度は低下する。そのため、上述した各排ガス浄化装置よりも排気配管から漏れ出るアンモニアの抑制効果は低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明にかかる排ガス浄化装置は、燃焼機器から排出される排ガスの浄化に有用であり、特に、焼却炉、ボイラから排出される排ガスの浄化に適している。
【符号の説明】
【0092】
1 ゴミ焼却システム
2 投入ホッパ
3 焼却炉
4 灰処理部
5 ボイラ
6 焼却減温塔
7 集塵器
9、50、72 排ガス浄化装置
10 ファン
12 煙突
13 減温水タンク
14 消石灰貯留タンク
15 活性炭貯留タンク
16 特反剤貯留タンク
17 押込ファン
22 尿素水噴射手段
24 尿素水タンク
25 アンモニア水供給手段
26 尿素SCR触媒手段
28 濃度計測手段
30、64、80 制御手段
40 計測手段本体
42 光ファイバ
44 計測セル
46 受光部
54 処理前アンモニア濃度計測手段
56 イソシアン酸濃度計測手段
58、76 処理前窒素酸化物濃度計測手段
60、78 処理後窒素酸化物濃度計測手段
62 温度調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機器から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する排ガス浄化装置であって、
前記燃焼機器から排出される排ガスを案内する排気配管と、
前記排気配管内に尿素水、アンモニア水及びアンモニアガスの少なくとも1つを還元剤として噴射する還元剤噴射手段と、
噴射された前記還元剤から生成されるアンモニアと前記窒素酸化物との反応を促進させるアンモニアSCR触媒及び前記排気配管の内部に配置され前記アンモニアSCR触媒を前記排気配管の内部に支持する支持機構とを備え、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤が噴射される位置よりも下流側に配置されている触媒手段と、
前記排ガスの流れ方向において前記触媒手段よりも下流側に配置され、前記アンモニアSCR触媒を通過した前記排ガスのアンモニア濃度を計測するアンモニア濃度計測手段と、
前記アンモニア濃度計測手段により計測されたアンモニア濃度に基づいて、前記還元剤噴射手段による前記還元剤の噴射を制御する制御手段と、を有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
さらに、前記排ガスの流れ方向において前記触媒手段よりも下流側に配置され、前記アンモニアSCR触媒を通過した排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理後窒素酸化物濃度計測手段を有し、
前記制御手段は、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度にも基づいて還元剤噴射手段による還元剤の噴射を制御することを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記アンモニア濃度計測手段により検出されたアンモニア濃度と、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度との両方が、基準濃度を超えている場合は、前記アンモニアSCR触媒の回復を行う回復手段を有することを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記回復手段は、前記アンモニアSCR触媒を所定温度で加熱することを特徴とする請求項3に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記アンモニア濃度計測手段により検出されたアンモニア濃度と、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度との両方が、基準濃度を超えている場合は、前記アンモニアSCR触媒を交換する必要があることを通知する通知手段を有することを特徴とする請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
さらに、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理前窒素酸化物濃度計測手段を有し、
前記制御手段は、前記処理前窒素酸化物濃度計測手段により計測された窒素酸化物濃度にも基づいて還元剤噴射手段による還元剤の噴射を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
さらに、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスのイソシアン酸濃度を計測するイソシアン酸濃度計測手段と、
前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間の排ガス流路の温度を調整する温度調整手段とを有し、
前記イソシアン酸濃度計測手段で計測したイソシアン酸濃度に基づいて、前記温度調整手段により前記排ガス流路の温度を調整することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
さらに、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスのアンモニア濃度を計測する処理前アンモニア濃度計測手段と、
前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間の排ガス流路の温度を調整する温度調整手段とを有し、
前記処理前アンモニア濃度計測手段で計測したアンモニア濃度に基づいて、前記温度調整手段により前記排ガス流路の温度を調整することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
燃焼機器から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物を還元する排ガス浄化装置であって、
前記燃焼機器から排出される排ガスを案内する排気配管と、
前記排気配管内に尿素水、アンモニア水及びアンモニアガスの少なくとも1つを還元剤として噴射する還元剤噴射手段と、
噴射された還元剤から生成されるアンモニアと前記窒素酸化物との反応を促進させるアンモニアSCR触媒及び前記排気配管の内部に配置され前記アンモニアSCR触媒を前記排気配管の内部に支持する支持機構とを備え、前記排ガスの流れ方向において前記還元剤が噴射される位置よりも下流側に配置されている触媒手段と、
前記排ガスの流れ方向において前記還元剤噴射手段と前記触媒手段との間に配置され、排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理前窒素酸化物濃度計測手段と、
前記排ガスの流れ方向において前記触媒手段よりも下流側に配置され、前記アンモニアSCR触媒を通過した前記排ガスの窒素酸化物濃度を計測する処理後窒素酸化物濃度計測手段と、
前記処理前窒素酸化物濃度計測手段で計測した窒素酸化物濃度と、前記処理後窒素酸化物濃度計測手段で計測した窒素酸化物濃度との差分に基づいて、前記触媒手段を通過した排ガス中のアンモニア濃度を算出し、算出したアンモニア濃度に基づいて、還元剤噴射手段による還元剤の噴射を制御する制御手段と、を有することを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−172855(P2010−172855A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20322(P2009−20322)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】