説明

排気ガス浄化システム

【課題】排気管噴射を用いDPF再生を行うに際し、排気ガスの昇温制御が不安定となる車両状態においては、DPF再生の中止を的確に行って、燃費の悪化を抑制できる排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】排気ガス中のPMを捕集するDPF25と、排気管噴射を行う排気管噴射インジェクタ38と、DPF25が捕集するPMが一定量を超えたとき、排気管噴射により排気ガス温度を昇温制御してDPF25を再生させ、かつその再生中、排気ガス温度がPM燃焼温度を超える時間を積算し、その積算値が再生完了設定値に達したとき、再生を完了させるDPF再生制御部100と、を備えた排気ガス浄化システムにおいて、DPF再生制御部100は、再生中、排気ガス温度がPM燃焼温度を超える時間の積算値が、再生完了設定値に達する前に、排気管噴射の総量が排気管噴射上限値を超えたとき、再生を中止させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPM(Particulate Matter)を捕集する排気ガス浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中のPMをDPF(Diesel Particulate Filter)、例えば、その一種であるDPD(Diesel Particulate Defuser)と呼ばれるフィルタで捕集して、外部へ排出されるPMの量を低減する排気ガス浄化システムが開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この排気ガス浄化システムとして、DPFの上流側にDOC(Diesel Oxidation Catalyst)を設けた連続再生型のDPFシステムがある。
【0004】
排気ガスから捕集されてDPFに堆積したPMは、DPFの詰まりの原因となり、排気ガス浄化効率を低下させることから、DPFにPMが一定量以上堆積された際には、排気ガスを(例えば、500〜600℃程度に)昇温させて、PMを燃焼(酸化)させて強制除去するDPF再生が行われる。
【0005】
PMの堆積量は、DPF前後の排気の差圧を計測する差圧センサの出力値から推定され、差圧センサの出力値が所定の差圧を超えたときに、ECU(Engine Control Unit)はPM堆積量が所定量を超えたものとみなして、車両走行中にECUが自動的にDPF再生を開始する(自動再生)か、あるいはDPF警告灯35aを点灯後に車両停車させたドライバーが再生実行スイッチを押してDPF再生を開始する(手動再生)。
【0006】
また、DPF前後の排気の差圧以外にも、走行距離に基づいてPMの堆積量の検出がなされる場合もある。この場合は、走行距離が所定の距離を超えたときに、上述したように自動或いは手動でDPF再生を開始する。
【0007】
DPF再生が開始されると、ディーゼルエンジンの燃料インジェクタが制御され、マルチ噴射によるエンジンアウトの排気ガス温度の昇温を行い、DOCが十分昇温された後に、排気ガスに未燃燃料を添加して、その燃料成分をDOCで燃焼させることにより、DOCから流れ出る排気ガスの温度を再生目標温度(例えば500〜600℃程度に)に上昇させ、これによりDPFが捕集したPMを強制的に燃焼除去する。
【0008】
この際、DPFに設けられた温度センサの信号を用いて排気ガス温度のフィードバック制御が行われ、排気ガスを再生目標温度に昇温させて保つために必要な未燃燃料の添加量が、PID制御により常時調整される。
【0009】
上述の未燃燃料を添加する手段としては、爆発行程後に再び燃料インジェクタからシリンダー内へ燃料を噴射し、シリンダー内に残る排気ガスへ未燃燃料を添加するポスト噴射と、エンジンとDPFとの間の排気管に設けられる排気管インジェクタから、エンジンから排気されて排気管を流れる排気ガスに未燃燃料を添加する排気管噴射に分けられる。
【0010】
ポスト噴射は、従来のディーゼルエンジンおよび排気ガス浄化システムをそのまま利用することが出来るが、シリンダー内に直接未燃燃料を噴射することから、エンジンオイルに燃料成分が混入して希釈され、潤滑機能が低下することによりシリンダーが焼き付くなどするオイルダイリューションの問題が発生する。
【0011】
一方、排気管噴射によるDPF再生においては、上述のオイルダイリューションの懸念が無く、DPFが捕集したPMの量に応じてDPF再生を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4175281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
排気管噴射を用いた排気ガス浄化システムにおいては、上述のようにDPF再生に際してオイルダイリューションの懸念が無いことから、排気管噴射の総量に上限値を設定せず、DPF再生が完了するまで排気管噴射を行うことが可能である。
【0014】
しかしながら、自動再生中に、排気ガスの昇温が不十分となる状況(例えば、発進および停車が繰り返し行われる渋滞など)が継続されると、昇温制御が不安定となり排気ガスが十分に昇温されず、排気ガスの温度がPMの燃焼に必要な温度にほとんど達しない可能性があり、この場合、DPF再生が完了するまでに昇温制御に使用される排気管噴射の総量が異常に増大してしまうおそれがある。
【0015】
また、DPF再生に使用される各種デバイス(排気管や、未燃燃料を燃焼させ排気ガスを昇温させるDOCなど)に不良が発生し、排気ガスの昇温が困難となる場合においても、DPF再生を行うべく際限なく排気管噴射が行われ、燃費が悪化する可能性がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、排気管噴射を用いDPF再生を行うに際し、排気ガスの昇温制御が不安定となる車両状態においては、DPF再生の中止を的確に行って、燃費の悪化を抑制できる排気ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、ディーゼルエンジンの排気管に設けられ、排気ガス中のPMを捕集するDPFと、前記DPFの上流側の前記排気管に設けられ、前記排気管内に排気管噴射を行う排気管噴射インジェクタと、前記DPFが捕集する前記PMが一定量を超えたとき、前記排気管噴射により排気ガス温度を昇温制御して前記DPFを再生させ、かつ当該再生中、前記排気ガス温度がPM燃焼温度を超える時間を積算し、その積算値が再生完了設定値に達したとき、再生を完了させるDPF再生制御部と、を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記DPF再生制御部は、再生中、前記PM燃焼温度よりも高い所定温度となる排気管噴射の噴射量を決定し、当該再生中において前記排気管噴射の総量が排気管噴射上限値を超えたとき、再生を中止させることを特徴とする排気ガス浄化システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の排気ガス浄化システムによれば、排気管噴射を用いDPF再生を行うに際し、排気ガスの昇温制御が不安定となる車両状態においては、DPF再生の中止を的確に行って、燃費の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】排気ガス浄化システムの構成を示すシステム図である。
【図2】排気ガス浄化システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムを示すシステム図である。
【0022】
図1において、ディーゼルエンジン10の吸気マニホールド11と排気マニホールド12は、過給機(ターボチャージャー)13のコンプレッサ14とタービン15にそれぞれ連結され、上流側吸気管16aからの空気がコンプレッサ14で昇圧され、下流側吸気管16bのインタークーラ17を通って冷却されて吸気スロットル(吸気スロットルバルブ)18を介して吸気マニホールド11からディーゼルエンジン10に供給され、ディーゼルエンジン10からの排気ガスは、タービン15を駆動した後、排気管20に排気される。
【0023】
上流側吸気管16aには、吸気量を測定するMAF(Mass Air Flow)センサ19が設けられ、そのMAFセンサ19で、吸気スロットル18の開度が制御されて吸気量が調整される。また、吸気マニホールド11と排気マニホールド12には排気ガスの一部をディーゼルエンジン10の吸気系に戻してNOXを低減するためのEGR管21が接続され、そのEGR管21にEGRクーラ22とEGRバルブ23とが接続される。
【0024】
排気管20には、排気ブレーキバルブ24、DPF25、排気スロットル(排気スロットルバルブ)26、サイレンサー27が接続される。DPF25は、未燃焼燃料を酸化する活性触媒からなるDOC28と排ガス中のPMを捕集するCSF(Catalyzed Soot Filter)29からなる。
【0025】
排気ブレーキバルブ24の上流側には、DPF再生時に排気ガス温度を昇温させるべく、排気管20に燃料を噴射(排気管噴射)する排気管インジェクタ38が設けられる。この排気管インジェクタ38に図示しない燃料タンクからの燃料を供給する燃料供給ライン39には、燃料中に混入、発生する異物や水分を除去する燃料フィルタ40が接続され、その下流側に排気管インジェクタ38の燃料圧力を測定する燃料圧力センサ41が設けられる。
【0026】
また、図1には示していないが、排気スロットル26とサイレンサー27間にSCR装置が接続される。SCR装置は、排気ガス中のNOXをNH3と反応させてN2とH2Oにして浄化する装置である。
【0027】
DOC28の前後には、排気管噴射の可否、排気管噴射量、及びDPF再生の完了の判断に用いられる排気ガス温度センサ30a,30bが設けられる。また、CSF29のPM堆積量を推定するために、CSF29前後の排気の差圧を計測する差圧センサ31が設けられる。
【0028】
これらセンサの出力値は、ディーゼルエンジン10の運転の全般的な制御を行うと共に、DPF再生も行うECU32に入力され、このECU32から出力される制御信号により、ディーゼルエンジン10の燃料インジェクタ33や、排気スロットル26、排気ブレーキバルブ24、EGRバルブ23、排気管インジェクタ38等が制御される。
【0029】
ECU32には、ディーゼルエンジン10の運転のために、アクセルポジションセンサからのアクセル開度、回転数センサからのエンジン回転数、車速センサ34からの車速等の情報の他、エンジン冷却水の温度等の情報も入力される。
【0030】
また、ECU32には、キャビン内に設けられた手動再生用のDPF警告灯35a、自動再生用のDPF警告灯35bや、ドライバーが手動再生を実行するための再生実行スイッチ36、ディーゼルエンジン10に何らかの不具合が発生したときに、それをユーザに知らせるべく点灯するチェックエンジンランプ37等が接続され、制御される。
【0031】
このシステムにおいては、空気は、上流側吸気管16aのMAFセンサ19を通過し、過給機13のコンプレッサ14で昇圧され、下流側吸気管16bのインタークーラ17を通って冷却されて吸気スロットル18を介して吸気マニホールド11からディーゼルエンジン10のシリンダ内に入る。
【0032】
一方、シリンダ内で発生した排気ガスは、排気マニホールド12を通過してタービン15を駆動し、DPF25とSCR装置からなる排ガス浄化システムで浄化され、サイレンサー27で消音されて大気中に排出される。排気ガスの一部は、EGRクーラ22で冷却され、その量をEGRバルブ23で調整されて、吸気マニホールド11に循環される。
【0033】
排気ガス中にはPMが含まれており、このPMはDPF25によって捕集される。DPF25では、常時は、DOC28で排気ガス中のNOを酸化してNO2にして、このNO2で、下流側のCSF29に捕集されたPMを酸化してCO2とし、CSF29からPMを除去する、所謂DPF再生を連続的に行っている。
【0034】
ところが、排気ガス温度が低い場合には、DOC28の温度が低下して活性化しないため、酸化反応が促進されず、PMを酸化してDPF再生を行うことができないため、PMのCSF29への堆積が継続されてフィルタの目詰まりが進行してしまう。
【0035】
このフィルタの目詰まりに対して、PM堆積量が所定の堆積量を超えたときに排気ガス温度を強制的に昇温させて、CSF29に捕集されているPMを強制的に燃焼除去することが行われる。
【0036】
PM堆積量は、差圧センサ31の出力値に比例するため、差圧センサ31の出力値が所定の差圧(差圧閾値)を超えたときに、ECU32はフィルタの目詰まりを検出し、ECU32が自動的にDPF再生を行うか、或いは、DPF警告灯35aを点灯し、ドライバーに再生実行スイッチ36を押下することによるDPF再生を促す。このように差圧により、開始時期を判断するDPF再生が差圧型再生である。以下、ECU32が自動的に行うDPF再生を自動再生、ドライバーが手動で行う再生を手動再生と言う。
【0037】
なお、DPF再生の開始時期は、差圧センサ31の出力値以外にも、車速センサ34で計測された車速を基に計算される走行距離が所定の距離(距離閾値)を超えたかどうかで判断しても良い。このように走行距離により、開始時期を判断するDPF再生が距離型再生である。
【0038】
手動再生と自動再生の例を説明する。
【0039】
手動再生は、車両を停止させた状態で行われる。車両の停止後、ユーザが再生実行スイッチ36を押下して手動再生が開始されると、ECU32によって燃料インジェクタ33、ディーゼルエンジン10、排気ブレーキバルブ24、EGRバルブ23、吸気スロットル18が制御され、排気ガス温度がDOC28の活性化する温度まで昇温される。
【0040】
より具体的には、ECU32は、燃料インジェクタ33を制御してマルチ噴射を開始し、ディーゼルエンジン10を制御してエンジン回転数を上昇させ、排気ブレーキバルブ24を急速昇温のため閉じ、EGRバルブ23を燃料の還流防止のため閉じ、吸気スロットル18を制御して吸気量を絞り、温度低下を抑制すると共に負荷を上げる。
【0041】
なお、DOC28の活性化の判断は、DOC28の上流側の排気ガス温度センサ30aの検出値が予め設定した上流側閾値以上となると共に、DOC28の下流側の排気ガス温度センサ30bの検出値が予め設定した下流側閾値以上となったときに行う。つまり、DOC28の上流側と下流側の排気ガス温度センサ30a,30bの両方の検出値からDOC28の活性化を判断する。
【0042】
DOC28が活性化したら、マルチ噴射と共に排気管インジェクタ38を制御して排気管噴射を開始し、排気ブレーキバルブ24を開き、排気スロットル26を閉じ、排気ガス温度を目標温度まで更に昇温する。
【0043】
このとき、目標温度は、例えば、再生目標温度(初期)と、再生目標温度(初期)よりも高温の再生目標温度(後期)の2段階に設定され、各目標温度が所定時間維持されるようにECU32によって制御される。目標温度を多段階とするのは、PMが燃焼することによって生じる熱により、CSF29が溶けてしまうのを防止するためである。つまり、PMが多く残っているDPF再生初期においては、PMの燃焼により多くの熱が発生するため、目標温度を低めに設定し、PMが燃焼して少なくなったDPF再生後期においては、目標温度を高く設定し、効率よくPMが燃焼するようにしている。
【0044】
しかる後、ECU32は、燃料インジェクタ33を制御して通常噴射に復帰させ、排気管インジェクタ38を閉じ、ディーゼルエンジン10を制御してエンジン回転数を通常のアイドル状態に戻し、排気スロットル26を開き、EGRバルブ23を通常(開)に戻し、吸気スロットル18を通常(開)に戻す。これにより、排気ガス温度が低下し、手動再生が終了する。
【0045】
この手動再生では、車両を停止させた状態でDPF再生を行うため、排気ガス温度を安定に保つことができ、効率よく確実にPMを燃焼させることができる一方で、手動再生中は車両を停止して所定の時間待機しておく必要がある。
【0046】
次に、自動再生を説明する。
【0047】
自動再生は、車両の走行中に行われる。ECU32によって自動再生が開始されると、ECU32が燃料インジェクタ33、ディーゼルエンジン10、EGRバルブ23、吸気スロットル18を制御し、排気ガス温度をDOC28の活性化する温度まで昇温する。自動再生では、手動再生と異なり走行中のため、排気ブレーキバルブ24を閉じることができないが、信号待ち等の車両停止時には排気ブレーキバルブ24を閉じて、排圧を上昇させ、排気ガス温度を昇温、保温するようにする。
【0048】
DOC28が活性化(DOC28の活性化の判断基準は上述と同じ)したら、マルチ噴射と共に排気管インジェクタ38を制御して排気管噴射を開始し、排気ガス温度を目標温度まで更に昇温する。走行中のため、排気スロットル26も閉じることができないので、排気スロットル26は常時開にされる。
【0049】
その後、排気ガス温度が目標温度まで上昇、所定時間維持されたら、ECU32は、燃料インジェクタ33を制御して通常噴射に復帰させ、排気管インジェクタ38を閉じ、ディーゼルエンジン10を制御してエンジン回転数を通常に戻し、EGRバルブ23を通常(開)に戻し、吸気スロットル18を通常(開)に戻す。これにより、排気ガス温度が低下し、自動再生が終了する。
【0050】
この自動再生では、車両が走行している状態でDPF再生を行うため、手動再生に比べて利便性に優れる。その反面、自動再生では、排気ガス温度が安定せず、或いは、なかなか上昇せず、手動再生に比べて排気管噴射量が多くなり、燃費が悪化する傾向にある。
【0051】
このように、自動再生と手動再生は、それぞれメリットとデメリットがあり、状況に応じて適宜選択して使い分けることが好ましいと言える。
【0052】
自動再生と手動再生の選択は、DPF再生終了から次のDPF再生開始までの走行距離である再生インターバルに基づいてなされる。具体的には、再生インターバルが設定した手動再生閾値未満のときには、ドライバーに手動再生を促すようにしている。
【0053】
再生インターバルが短くなる、即ち走行距離が短いのにも拘わらずPMがDPFに閾値を超えて堆積する理由としては、先のDPF再生でPMが十分に除去されなかった可能性が考えられる。そのため、再生インターバルが手動再生閾値未満のときは、安定してDPF再生を行える手動再生を選択し、確実にPMを除去するようにしている。
【0054】
ところで、自動再生中において、排気ガスの昇温が不十分となる状況(例えば、発進および停車が繰り返し行われる渋滞など)が継続されると、排気ガスの昇温が不十分となり、排気ガスの温度がPMの燃焼温度に達しないためPMがほとんど燃焼除去されず、排気ガス温度が再生目標温度に一定時間保たれてDPF再生が完了するまでに、昇温制御に使用される排気管噴射の総量が際限なく増大してしまうおそれがある。
【0055】
また、DPF再生に使用される各種デバイス(DOC28など)に不良が発生し、排気ガスの昇温が困難となる場合においても、ECU32はDPF再生を行うべく、際限なく排気管噴射を行う可能性がある。
【0056】
そこで、本発明の排気ガス浄化システムにおいては、ECU32はDPF再生制御部100を備え、さらにDPF再生制御部100は、再生未完警告手段101と異常警告手段102とを備えるようにされる。
【0057】
DPF再生制御部100は再生中、排気ガスの温度がPM燃焼温度を超える時間(以下、再生時間という)を積算し、その積算値が再生完了設定値に達したとき、再生が完了したとして再生を終了すると共に、再生が完了する前に、排気管噴射の総量が排気管噴射上限値を超えたとき、再生が失敗したとして再生を中止するようにされる。
【0058】
またDPF再生制御部100は、排気管噴射の総量が排気管噴射上限値を超えたとき、再生が失敗したとして、それをドライバーに警告するための再生未完警告手段101を作動するようにされる。
【0059】
さらにDPF再生制御部100は、再生の失敗が所定回数連続したとき、排気ガス浄化用の機器や装置に異常が発生したとして、すなわち、排気管20そのものやDOC28などに不具合が発生したとして、ドライバーに異常を警告するための異常警告手段102を作動するようにされる。
【0060】
本発明は再生未完警告手段101および異常警告手段102を特に限定するものではなく、例えば再生未完警告手段101としてはDPF警告灯35a、35bを点滅させるなどし、異常警告手段102としてはチェックエンジンランプ37を点灯させるなどすればよく、車両に備えられた各種警告手段を用いて適宜変更可能である。
【0061】
以下に本発明の作用について説明する。
【0062】
図2は、特に自動再生における、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムの動作と排気ガス温度の推移について説明している。
【0063】
DPF25に捕集されたPMの量が一定量以上となったことを検知すると、ECU32に搭載されるDPF再生制御部100はDPF25を再生すべく、排気ガスの昇温制御を開始する。
【0064】
DPF再生制御部100は燃料インジェクタ33を制御してマルチ噴射を行い、エンジンアウトの排気ガス温度を上昇させ、DOC28の前後に設けられた温度センサ30a、30bにより、DOC28に流入する排気ガスの温度がDOC28の触媒活性温度に達したことを検知すると、排気ガスの温度を再生目標温度にさらに上昇させるべく、排気管インジェクタ38を制御して排気管噴射を行うと共に、排気管噴射量の積算を開始する。
【0065】
この際、DPF再生制御部100は、温度センサ30bにより検知する排気ガス温度と再生目標温度との偏差を用いてフィードバック制御を行い、排気ガスを再生目標温度に保つために必要な排気管噴射量がPID制御により調整される。
【0066】
またDPF再生制御部100は、再生目標温度よりも所定温度(A℃)低いPM燃焼温度以上に排気ガス温度があることを検知したとき、PMが燃焼しているものと判断して再生時間を積算するようにされる。
【0067】
PM燃焼温度は、PMが燃焼していることを保証できる最低限の温度を模擬試験などから求め、これを固定値としてDPF再生を行うようにされても良く、また、差圧センサ31などからもとめたPM捕集量に応じて、DPF再生制御部100がPM燃焼温度を適宜変更できるようにされてもよい。
【0068】
再生中、DPF再生制御部100は、積算する再生時間が所定値(B分)に達したとき、DPF25に捕集されたPMが一定量以下にまで燃焼除去されたものとして、排気ガスの昇温目標温度(すなわち、再生目標温度)を高温側へ変更させる。
【0069】
DPF再生初期においては、PMの燃焼熱によるDPF25の過昇温と溶損を防止するために比較的低温(例えば500℃程度)でDPF再生が行われるが、DPF25に燃え残るPMが少なくなる後期において、再生目標温度を高温側に(例えば、600℃程度に)変更することにより、効率よくPMを燃焼除去させることができる。
【0070】
このとき、PM燃焼温度は、変更された目標温度から所定温度(A℃)低くなるように、変更された目標温度に応じて変更できるようにされてもよく、変更される目標温度とは個別に、あらかじめ2段階の固定値からなるように設定されてもよい。
【0071】
排気ガスの昇温制御が安定して行われ、排気ガスの温度がPM燃焼温度以上に十分に保持された場合、再生時間の積算値が、再生目標温度を変更した所定値(B分)よりも大きく設定される再生完了設定値(C分)に達したとき、DPF25に捕集されたPMが十分に除去されたとして、DPF再生制御部100はDPF25の再生が完了したものと判断し、車両を通常の運転状態、あるいはアイドル状態に復帰させる制御を行う。
【0072】
一方、再生中の排気ガスの昇温制御が不安定で、排気ガスの温度がPM燃焼温度以上にほとんど保たれない場合、再生時間が再生完了設定値に達する前に排気管噴射の総量が排気管噴射上限値を超え、DPF再生制御部100は再生が失敗したものと判断してディーゼルエンジン10を通常の運転状態、あるいはアイドル状態に復帰させる制御を行うと共に、ドライバーに再生の未完了を警告するための再生未完警告手段101を作動させる。
【0073】
これにより、車両が排気ガス温度を十分に昇温できる状況にない場合には、DPF再生および排気管噴射を中止することにより、燃費の悪化を抑制することができ、次回のDPF再生を安定して行うようドライバーに促すことができる。
【0074】
また、再生の未完了が連続して発生する場合、排気ガスの昇温制御を行う各種デバイス(例えば排気管20そのものや、DOC28など)に不良が発生し、排気ガスの昇温が困難となっている可能性が強く考えられる。
【0075】
そのため、本発明に係る排気ガス浄化システムのDPF再生制御部100は、再生の失敗が所定の回数連続したときには、排気ガス浄化用の機器や装置に異常が発生したものと判断して、ドライバーに異常を警告するための異常警告手段102を作動させることにより、ドライバーに異常を知らせると共に、速やかな点検および修理を促すことが出来る。
【0076】
本発明は以上の実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
25 DPF
38 排気管インジェクタ
100 DPF再生制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気管に設けられ、排気ガス中のPMを捕集するDPFと、前記DPFの上流側の前記排気管に設けられ、前記排気管内に排気管噴射を行う排気管噴射インジェクタと、前記DPFが捕集する前記PMが一定量を超えたとき、前記排気管噴射により排気ガス温度を昇温制御して前記DPFを再生させ、かつ当該再生中、前記排気ガス温度がPM燃焼温度を超える時間を積算し、その積算値が再生完了設定値に達したとき、再生を完了させるDPF再生制御部と、を備えた排気ガス浄化システムにおいて、
前記DPF再生制御部は、再生中、前記PM燃焼温度よりも高い所定温度となる排気管噴射の噴射量を決定し、当該再生中において前記排気管噴射の総量が排気管噴射上限値を超えたとき、再生を中止させることを特徴とする排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−256843(P2011−256843A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134511(P2010−134511)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】