説明

排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法

【課題】内燃機関の排気通路の排気ガス浄化装置の上流側に液体噴射装置を備えた内燃機関で、排気通路内に噴射した液体が、排気通路の内周側へ付着するのを防止でき、液体の消費量の悪化を抑制できると共に、曲管部における排気ガスの流れを良くして、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減することができる、排気管内液体噴射システム等を提供する。
【解決手段】液体噴射装置25を曲管部22に装着し、この曲管部22の下流の横断面積を増加した部分24に流路制御弁26を設け、この流路制御弁26を、閉じた時には、曲管部22の排気ガスGの流れを内周側に流すと共に排気ガスGの流通路を絞り、開いた時には、曲管部22の排気ガスGの流れを流路制御弁26の弁体26bの外周側と内周側に2分して流すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に、燃料や尿素等の還元剤等の液体を噴射して、排気ガス浄化装置の再生、又は、排気ガスの浄化を行うための、排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽油やガソリンを燃料とする自動車搭載の内燃機関等の排気ガスを浄化するために、内燃機関の排気通路に排気ガス浄化装置(後処理装置)を設けて、排気通路の排気ガスを浄化して大気環境の悪化を抑制している。
【0003】
この排気ガス浄化装置としては、未燃炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化する酸化触媒(DOC)、NOxを浄化するNOx吸蔵還元型触媒(LNT)、アンモニアを生成する尿素等の還元剤でNOxを浄化する選択還元型NOx触媒(SCR)、微粒子状物質(PM)を浄化するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)や触媒付きDPF(CSF)等が用いられている。
【0004】
この酸化触媒では、排気ガス温度が低く排気ガスを昇温する必要がある場合には、燃料等のHC(炭化水素)を排気管内に供給して、このHCを酸化触媒で酸化して、この酸化熱により排気ガスを昇温している。
【0005】
また、NO吸蔵還元型触媒は、アルカリ又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して、排気ガス空燃比がリーン状態でNOを酸化して硝酸塩として触媒上に吸着及び吸蔵して排気ガス中のNOxを浄化している。この吸着反応を維持するために、略定期的に、排気ガスの空燃比状態をリッチ状態に変更して、NOxを放出させると共に放出されたNOxを還元している。このNOx吸蔵能力を回復するために、排気ガスの空燃比をリッチ状態にする必要があり、このリッチ状態を排気ガス中に燃料等のHCを噴射及び供給することで実現している。
【0006】
また、NO吸蔵還元型触媒では、燃料中の硫黄成分により、NOx吸蔵還元型触媒のNOx吸蔵能力が低下するが、このNOx吸蔵能力の低下に伴う浄化率の悪化を防止するために、硫黄被毒からの回復のために硫黄除去による硫黄被毒回復処理を行っている。この硫黄被毒回復処理に際しても、より高温でリッチ状態にする必要があるので、排気ガス中への燃料等のHCの噴射及び供給を行っている。
【0007】
また、選択還元型NOx触媒では、排気管内に供給された尿素溶液等の還元剤を加水分解して得られるアンモニアにより、排気ガス中のNOxを還元している。更に、DPFや触媒付きDPFでは、DPFに捕集したPMを燃焼除去するPM強制再生のために、排気管内に燃料等のHCを供給して、この酸化熱により排気ガスを昇温し、昇温した排気ガスによりDPFを昇温してPMを燃焼除去している。
【0008】
この燃料等の液体の供給に関しては、従来技術では、排気管内液体噴射システムを設けて、噴射弁(インジェクター)等により排気ガスより高い圧力で燃料を噴射している。この排気管内液体噴射システムでは噴射弁を通過する燃料等の液体が高温により固化して目詰まりが生じないように、水循環による冷却構造を必要としている。
【0009】
また、図6に示すように、この噴射弁20は、排気通路10に上流側直管部11の下流側に曲管部12を設けて、更にその下流側に配置した下流側直管部13の方向へ燃料等の液体を噴射する構造としている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0010】
この構成によれば、液体の噴射弁の装着部を曲管部の部位としているので、噴射された液体が排気管の内壁への付着するのを防止するように、燃料や尿素等の液体の噴射方向を排気ガスの流れの方向と同じにすることができる。
【0011】
しかしながら、図6及び図7に示すように、排気通路10の曲管部22における排気ガスGの流れを見ると、曲管部22の外周側にはガス流れに遠心力が作用し高圧となる一方、内周側には低圧部分が発生し、曲管部22を通過する排気ガスGにはその断面で高圧の外周側から低圧の内周側へ排気ガスGが循環する流れを生じている。
【0012】
つまり、排気ガス配管形状に曲がり部22があると、その外側はガスのもつ質量と曲げ半径に応じた遠心力が発生する。この結果、外側は内側よりもガス圧が高くなる。図6のC−D断面を図7に示すが、図7の断面で排気ガスGの流れを考えると、ガスは高圧側から低圧側へ排気管内周面に沿って流れる。曲管部22の横断面内の中央部分では内側から外側へ流出するような流れが生成されるが、ここに液滴状の燃料等の液体Fが供給されると、液滴は外側へ押し出された後に、排気管の内周面に沿って再び内側へ戻るように流れるので、排気管内周面に付着し易い。
【0013】
この排気ガスGの流れは曲管部22に発生し、排気通路10に噴射された液体Fが排気ガス通路10の下流側直管23の内周面に付着すると、付着した分量だけ不足するので、液体F(例えば、触媒還元に必要な燃料)の供給量を補足するよう液体供給量を増加せねばならず、液体Fの消費量が増加する。
【0014】
また、NOx吸蔵還元型触媒の硫黄除去処理では、触媒温度を700℃以上に加熱する必要があるが、排気通路10の下流側直管23の内周面への燃料の付着により、NOx吸蔵還元型触媒への燃料供給量が低下すると、触媒の昇温が抑制され、不十分な硫黄除去となり、NOx吸蔵還元型触媒のNOx浄化性能を悪化させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−90259公報
【特許文献2】特開2006−77691公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関の排気通路の排気ガス浄化装置の上流側に液体噴射装置を備えた内燃機関で、排気ガス通路内に噴射した燃料等の液体が、排気ガス通路の曲管部とこの曲管部の下流側の直管において、内周側へ付着するのを防止でき、液体の消費量の悪化を抑制できると共に、曲管部における排気ガスの流れを良くして、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減することができる、排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するための本発明の排気管内直接液体噴射システムは、内燃機関の排気通路の排気ガス浄化装置の上流側に液体噴射装置を備えた排気管内液体噴射システムにおいて、前記液体噴射装置の装着部を曲管部の部位とし、この曲管部の下流部位の横断面積を増加し、この横断面増加部分に流路制御弁を設けると共に、該流路制御弁の制御装置を設け、前記流路制御弁を、閉じた時には前記曲管部の排気ガスの外周側の流れを遮って排気ガスの流れを内周側に流すと共に排気ガスの流通路を絞り、開いた時には前記曲管部の排気ガスの流れを前記流路制御弁の弁体の外周側と内周側に2分して流すように構成する。
【0018】
この構成によれば、流路制御弁により、排気ガスの流れを内周側に流したり、外周側と内周側に2分して流したりすることにより、排気ガス浄化装置の状態に応じて、排気ガス流量を絞って排気ガスの流量を減らしたり、排気ガスを2分して曲管部外周側と内周側に流して排気ガスの流れを良くして、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減できる。また、液体噴射時に排気管内に噴射する液体を2分した排気ガスの流れの外周側を流れる排気ガス中に噴射することにより、液体の排気管内周面への付着を防止することができ、液体の消費量の悪化を抑制できる。
【0019】
上記の排気管内液体噴射システムにおいて、前記流路制御弁の弁体を下流側に設けた回転軸を中心に回転可能に設けると共に、前記流路制御弁を閉じる時には、前記弁体の前端を前記曲管部の外周側部分に付くように回転移動させ、前記流路制御弁を開く時には、前記弁体の前端を前記曲管部の内周側に回転移動させるように構成する。
【0020】
この構成によれば、比較的簡単な構成で、流路制御弁を形成できる。例えば、制御弁形状を上流側に向けた半円形とすると共に、曲管部の下流部位の横断面を単純円形構造ではなく、例えば、二円を並べた共通接線で結んだ長円構造のように形成して、下流部位の横断面積を増加する。
【0021】
上記の排気管内液体噴射システムにおいて、前記液体が燃料であり、かつ、前記制御装置が、前記排気ガス浄化装置への燃料の供給に際しては、前記排気ガス浄化装置に担持された触媒が活性化温度より低くて、前記触媒を加熱する場合には、排気管内直接燃料噴射を行わずにシリンダ内燃料噴射でのポスト噴射により燃料を前記排気ガス浄化装置に供給する第1制御を行い、前記触媒が活性化温度以上になった場合及び硫黄除去制御の場合には、排気管内直接燃料噴射により前記排気ガス浄化装置に燃料を供給する第2制御を行うと共に、前記第1制御では、前記流路制御弁を閉じて、排気ガスを前記曲管部の内周側に流し、前記第2制御では、排気ガスを前記曲管部の外周側と内周側に2分して流す制御を行うように構成する。
【0022】
この構成によれば、第1制御において、流路制御弁を閉じて排気ガス流量を絞ることで、排気ガス流量を減らすことができる。これにより、内燃機関のシリンダ内で噴射した燃料と排気ガス中の酸素との反応時間、即ち、噴射された燃料の燃焼時間と、燃焼により発熱した熱量の触媒への伝達時間を長くし、触媒の昇温時間を短縮することができる。
【0023】
また、第2制御において、流路制御弁の制御軸を一定角度だけ回転させ、曲管部の内周側のガス流を抑制するようにガス流を曲管部の外周側へ流し、外周側と内周側との圧力差が生じることを抑制する。これにより、曲管部での排気ガスの流れを良くし、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減することができる。また、液体噴射時に排気管内に噴射する液体は外周側を流れる排気ガス中に噴射されることになるので、液体の排気管内周面への付着を防止することができ、液体の消費量の悪化を抑制できる。
【0024】
上記の排気管内液体噴射システムにおいて、前記制御装置が、エンジン回転数と負荷により変化する排気ガスの流量と温度に応じて、前記流路制御弁の下流側において前記流路制御弁の弁体の外周側を通る流れと前記流路制御弁の弁体の内周側を通る流れとの間で圧力差が小さくなるように前記流路制御弁の弁開度を制御する。この弁開度の制御は、予め設定した弁開度のための調整角度の制御値の読み込みにより行う。この構成によれば、より精度良く流路制御弁の流出端部における両側の圧力差を小さくすることができ、渦流の発生を抑制でき、圧力損失の増加を防止できる。
【0025】
上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化システムは、上記の排気管内液体噴射システムを用いて構成される。この構成によれば、上記と同様の効果を奏する排気ガス浄化システムを提供することができる。
【0026】
そして、上記の目的を達成するための本発明の排気管内直接液体噴射方法は、内燃機関の排気通路の排気ガス浄化装置の上流側に液体噴射装置を備え、前記液体噴射装置の装着部を曲管部の部位とし、この曲管部の下流部位の横断面積を増加し、この横断面増加部分に流路制御弁を設けると共に、前記流路制御弁を閉じた時には、前記曲管部の排気ガスの外周側の流れを遮って、排気ガスの流れを内周側に流すと共に排気ガスの流通路を絞り、前記流路制御弁を開いた時には、前記曲管部の排気ガスの流れを前記流路制御弁の弁体の外周側と内周側に2分して流すように構成し、前記液体を燃料とした排気管内液体噴射システムの排気管内液体噴射方法において、前記排気ガス浄化装置への燃料の供給に際しては、前記排気ガス浄化装置に担持された触媒が活性化温度より低くて、前記触媒を加熱する場合には、排気管内直接燃料噴射を行わずにシリンダ内燃料噴射でのポスト噴射により燃料を前記排気ガス浄化装置に供給する第1制御を行い、前記触媒が活性化温度以上になった場合及び硫黄除去制御の場合には、排気管内直接燃料噴射により前記排気ガス浄化装置に燃料を供給する第2制御を行うと共に、前記第1制御では、流路制御弁を閉じて、排気ガスを曲管部の内周側に流し、前記第2制御では、排気ガスを曲管部の外周側と内周側に2分して流すことを特徴とする方法である。
【0027】
この方法によれば、流路制御弁により、排気ガスの流れを内周側に流したり、外周側と内周側に2分して流したりすることにより、排気ガス浄化装置の状態に応じて、排気ガス流量を絞って排気ガスの流量を減らしたり、排気ガスを2分して曲管部外周側と内周側に流して排気ガスの流れを良くして、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減できる。
【0028】
また、第1制御において、流路制御弁を閉じて排気ガス流量を絞ることで、排気ガス流量を減らすことができる。これにより、内燃機関のシリンダ内で噴射した燃料と排気ガス中の酸素との反応時間、即ち、噴射された燃料の燃焼時間と、燃焼により発熱した熱量の触媒への伝達時間を長くし、触媒の昇温時間を短縮することができる。
【0029】
更に、第2制御において、流路制御弁の制御軸を一定角度だけ回転させ、曲管部の内周側のガス流を抑制するようにガス流を曲管部の外周側へ流し、外周側と内周側との圧力差が生じることを抑制する。これにより、曲管部での排気ガスの流れを良くし、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減することができる。また、液体噴射時に排気管内に噴射する液体は外周側を流れる排気ガス中に噴射されることになるので、液体の排気管内周面への付着を防止することができ、液体の消費量の悪化を抑制できる。
【0030】
上記の排気管内液体噴射方法において、エンジン回転数と負荷により変化する排気ガスの流量と温度に応じて、前記流路制御弁の下流側において前記流路制御弁の弁体の外周側を通る流れと前記流路制御弁の弁体の内周側を通る流れとの間で圧力差が小さくなるように前記流路制御弁の弁開度を制御する。この構成によれば、より精度良く流路制御弁の流出端部における両側の圧力差を小さくすることができ、渦流の発生を抑制でき、圧力損失の増加を防止できる。
【0031】
また、上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化方法は、上記の排気管内液体噴射方法を用いる方法である。この方法によれば、上記と同様の効果を奏する排気ガス浄化方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法によれば、流路制御弁により、排気ガスの流れを内周側に流したり、外周側と内周側に2分して流したりすることにより、排気ガス浄化装置の状態に応じて、排気ガス流量を絞って排気ガスの流量を減らしたり、排気ガスを2分して曲管部外周側と内周側に流して排気ガスの流れを良くして、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減できる。
【0033】
また、液体噴射時に排気管内に噴射する液体を2分した排気ガスの流れの外周側を流れる排気ガス中に噴射することにより、液体の排気管内周面への付着を防止することができ、液体の消費量の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態の排気管内液体噴射システムの構成を示した縦断面図である。
【図3】図2のA−B断面を示した横断面図である。
【図4】図2の管内液体噴射システムで流路制御弁を閉じた状態を示した縦断面図である。
【図5】図2の管内液体噴射システムで流路制御弁を開いた状態を示した縦断面図である。
【図6】従来技術の排気管内液体噴射システムの構成を示した縦断面図である。
【図7】図6のC−D断面内のガスの流れを示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施の形態の排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法について、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。
【0036】
この排気ガス浄化システム1では、エンジン(内燃機関)2の吸気マニホールド3に吸気通路4が接続して設けられている。この吸気通路4にはターボチャージャ5のコンプレッサ5aが設けられ、空気Aを圧縮している。更に、このターボチャージャ5のタービン5bが排気マニホールド6の出口に設けられ、タービン5bには、排気通路10が接続して設けられている。更に、排気マニホールド6と吸気通路4とを接続するEGR通路7が設けられ、このEGR通路7にEGRクーラ8とEGR弁9とが設けられている。
【0037】
また、排気通路10に排気管内液体噴射システム20が設けられている。この下流の排気通路10に温度センサ11と排気ガス浄化装置12が設けられている。更に、燃料供給ポンプ13が設けられ、燃料ライン14経由で、燃料タンク(図示しない)から燃料Fをシリンダ内及び燃料噴射弁25に供給する。更に、ECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれる制御装置30が設けられ、エンジン2の運転全般の制御及び排気ガス浄化装置12の再生制御等を行う。
【0038】
この排気ガス浄化装置12は、排気ガスG中の有害成分を浄化する触媒を担持したNOx浄化触媒ユニット等の幾つかの排気ガス浄化ユニットの組み合わせで形成される。この実施の形態では、NOx吸蔵還元型触媒を担持したNOx浄化触媒ユニットを有して構成される。
【0039】
このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガス中のNOxを浄化するために、モノリス触媒で形成される。このモノリス触媒のコージェライトハニカム等の担持体に酸化アルミニウム、酸化チタン等の触媒コート層を設ける。この触媒コート層に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の触媒金属と、バリウム(Ba)等のNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)とからなるNOx吸蔵還元触媒を担持させて構成される。
【0040】
このNOx吸蔵還元型触媒は、酸素濃度が高い排気ガスの状態、即ち、リーン空燃比状態の時に、排気ガス中のNOxをNOx吸蔵材が吸蔵することにより、排気ガス中のNOxを浄化し、酸素濃度が低いか空燃比が1より小さいリッチ空燃比状態か、あるいは、空燃比が1のストイキ空燃比状態の時に、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを触媒金属の触媒作用により還元することにより、大気中へのNOxの流出を防止する。
【0041】
このNOx吸蔵還元型触媒は、リーン空燃比状態が継続すると、NOx吸蔵材が硝酸塩に変化してしまうため、NOx吸蔵能力が飽和する前に、排気ガスGをリッチ空燃比状態にする再生制御を行って、吸蔵したNOxを放出及び還元して、NOx吸蔵能力を回復している。
【0042】
なお、この実施の形態では、排気ガス浄化装置12としてNOx吸蔵還元型触媒を担持したNOx浄化ユニットを用いた例を示すが、これに限定されず、排気通路10に対して排気管内直接液体噴射を行う必要がある排気ガス浄化装置であればよい。例えば、硫黄被毒を回復する必要がある酸化触媒(DOC)や、尿素等の還元剤を供給する必要がある選択還元型NOx触媒(SCR)や、PM強制再生のために排気ガスを昇温させる必要のあるDPF又は触媒付きDPF等の排気ガス浄化ユニットであってもよい。
【0043】
次に、排気管内液体噴射システム20について説明する。この排気管内液体噴射システム20は、図1〜図5に示すように、排気通路10の一部として設けられた、上流側直管21、曲管部22、下流側直管23及び横断面積増加部24とからなる配管部分と、曲管部22に設けられた液体噴射装置である燃料噴射弁(インジェクター)25と、エンジンの制御装置(ECU)30により弁開度を制御される流路制御弁26が設けられている。
【0044】
この配管部分の横断面積増加部24は、図3の横断面図に示すように、排気ガス流通断面積を増加するように、その断面を単純な円形形状ではなく、二円を並べて共通接線で結んだ長円構造とする。この構造が比較的簡単な構成となるので、好ましいが、その他の形状、例えば、楕円形状等であってもよい。
【0045】
また、燃料噴射弁25は、噴射された燃料Fが排気ガスGの流れと同一方向になるように、曲管部22に装着する。更に、燃料噴射弁25に燃料供給ライン25aを設けて燃料供給ポンプ13から燃料(液体)Fを供給する。また、燃料Fの固化による目詰まりを抑制するように、燃料Fの気化を防止のために、燃料噴射弁25を水冷する構造(図示しない)を設ける。
【0046】
この流路制御弁26は、回転軸(駆動軸)26a周りに回動する弁体26bとこの弁体26bを回転駆動する制御弁駆動モータ26cと、弁体26bの回転角度(弁開度)θを検出する磁気検出プローグ26dを有するエンコーダを備えて構成される。この弁体26bは例えば半円形状や半楕円形状に形成し、曲管部22の曲げに関して内側に配置する。
【0047】
言い換えれば、流路制御弁26の弁体26bを下流側に設けた回転軸26aを中心に回転可能に設ける。それと共に、流路制御弁26を閉じる時には、弁体26bの前端を曲管部22の外周側部分に付くように回転移動させ、流路制御弁26を開く時には、弁体26bの前端を曲管部22の内周側に回転移動させるように構成する。この構成によれば、比較的簡単な構成で、流路制御弁26を形成できる。
【0048】
それと共に、回転軸26aを回転中心として、流路制御弁26を閉じた時には、図4に示すように、曲管部22の排気ガスGの外周側の流れを遮って、排気ガスGの流れを内周側に流すと共に排気ガスGの流通路を絞る。つまり、弁体26bが曲管部22の外側へ張り出して弁開度θ1となり、排気ガスGが曲管部22の内側のみを通過させる。
【0049】
また、流路制御弁26を開いた時には、図5に示すように、曲管部22の排気ガスGの流れを流路制御弁26の弁体26bの外周側と内周側に2分して流す。つまり、弁体26bが曲管部22の内側に回動して弁開度θ2となり、排気ガスGを2分して弁体26bの外周側と内周側の両方に流す。
【0050】
更に、エンジン回転数や負荷によって変わる排気ガスの流量や温度に応じて流路制御弁26の弁角度θを調整する。この弁開度θの調整角度は予め設定した制御値の読み込みにより行う。この流路制御弁26の制御のための制御装置が設けられるが、この制御装置はエンジン全体の制御を行う制御装置(ECU)に組み込まれる。
【0051】
次に、上記の排気管内液体噴射システム20及び排気ガス浄化システム1における、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法について説明する。この排気管内液体噴射システム20において、排気ガス浄化装置12への燃料Fの供給に際しては、排気ガス浄化装置12に担持されたNOx吸蔵還元型触媒が活性化温度より低くて、このNOx吸蔵還元型触媒を加熱する場合には、排気管内直接燃料噴射を行わずにシリンダ内燃料噴射でのポスト噴射により燃料Fを排気ガス浄化装置12に供給する第1制御を行う。この第1制御では、流路制御弁26を閉じて、排気ガスGを曲管部22の内周側に流す。即ち、エンジン始動後のNOx吸蔵還元型触媒の加熱処理時に、流路制御弁26を曲管部22の外側へ倒し、排気ガスGを曲管部22の内側のみに通過させる。
【0052】
また、NOx吸蔵還元型触媒が活性化温度以上になった場合及びNOx吸蔵還元型触媒の硫黄除去制御の場合には、排気管内直接燃料噴射により排気ガス浄化装置12に燃料Fを供給する第2制御を行う。この第2制御では、排気ガスGを曲管部22の外周側と内周側に2分して流す。即ち、NOx吸蔵還元型触媒の触媒温度がNOx浄化に十分な温度域となった後では、排気ガスGが曲管部22の外側にも流れ込むように弁角度θを変更する。
【0053】
これにより、第1制御において、流路制御弁26を閉じて排気ガスGの流量を絞ることで、排気ガスGの流量を減らすことができる。これにより、エンジン2のシリンダ内で噴射した燃料Fと排気ガスG中の酸素との反応時間、即ち、噴射された燃料Fの燃焼時間と、燃焼により発熱した熱量のNOx吸蔵還元型触媒への伝達時間を長くし、NOx吸蔵還元型触媒の昇温時間を短縮することができる。
【0054】
また、第2制御において、流路制御弁の制御軸を一定角度だけ回転させ、曲管部22の内周側のガス流を抑制するようにガス流を曲管部22の外周側へ流し、外周側と内周側との圧力差が生じることを抑制する。これにより、曲管部22での排気ガスGの流れを良くし、排気ガス浄化装置12に至るまでの圧力損失を低減することができる。また、燃料噴射時に排気通路10内に噴射する燃料Fは曲管部22の外周側を流れる排気ガスG中に噴射されることになるので、燃料Fの排気通路10の内周面への付着を防止することができ、燃料Fの消費量の悪化を抑制できる。
【0055】
また、流路制御弁26を開いた時に、エンジン回転数と負荷により変化する排気ガスGの流量と温度に応じて、流路制御弁26の下流側において流路制御弁26の弁体26bの外周側を通る流れと流路制御弁26の弁体26bの内周側を通る流れとの間で圧力差が小さくなるように流路制御弁26の弁開度θを制御する。
【0056】
この弁開度θの制御は、予め設定した弁開度θのための調整角度の制御値の読み込みにより行う。例えば、排気ガスGの流量と温度をベースにした弁開度のマップデータを用いて、検出された排気ガスGの流量と温度から弁開度を算出したり、エンジン回転数と負荷をベースにした弁開度のマップデータを用いてその時のエンジン回転数と負荷から弁開度を算出したりする。
【0057】
これによれば、より精度良く流路制御弁26の流出端部における両側の圧力差を小さくすることができ、渦流の発生を抑制でき、圧力損失の増加を防止できる。
【0058】
従って、本発明に係る排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法によれば、流路制御弁32により、排気ガスGの流れを内周側に流したり、外周側と内周側に2分して流したりすることにより、排気ガス浄化装置16の状態に応じて、排気ガスGの流量を絞って減らしたり、排気ガスGを2分して曲管部12の外周側と内周側に流すことにより、曲管部12における排気ガスGの流れを良くすることができるので、排気ガス浄化装置16に至るまでの圧力損失を低減できる。
【0059】
また、燃料噴射時に排気通路10内に噴射する燃料Fを2分した排気ガスGの流れの外周側を流れる排気ガスG中に噴射することにより、燃料Fの排気通路10の内周面への付着を防止することができ、燃料Fの消費量の悪化を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法は、排気ガス浄化装置の状態に応じて、排気ガス流量を絞って排気ガスの流量を減らしたり、排気ガスを2分して曲管部外周側と内周側に流して排気ガスの流れを良くしたりして、排気ガス浄化装置に至るまでの圧力損失を低減できる。
【0061】
そのため、乗用車やトラックやバス等に搭載されるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガス浄化に際して使用される、排気管内液体噴射システム、排気ガス浄化システム、排気管内液体噴射方法及び排気ガス浄化方法として利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 排気ガス浄化システム
2 エンジン(内燃機関)
10 排気通路
12 排気ガス浄化装置
20 排気管内液体噴射システム
21 上流側直管
22 曲管部
23 下流側直管
24 横断面積増加部
25 燃料噴射弁(液体噴射装置)
26 流路制御弁
26a 回転軸(駆動軸)
26b 弁体
30 制御装置(ECU)
A 空気
F 燃料
G 排気ガス
θ、θ1、θ2 弁開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路の排気ガス浄化装置の上流側に液体噴射装置を備えた排気管内液体噴射システムにおいて、
前記液体噴射装置の装着部を曲管部の部位とし、この曲管部の下流部位の横断面積を増加し、この横断面増加部分に流路制御弁を設けると共に、該流路制御弁の制御装置を設け、
前記流路制御弁を、閉じた時には前記曲管部の排気ガスの外周側の流れを遮って排気ガスの流れを内周側に流すと共に排気ガスの流通路を絞り、開いた時には前記曲管部の排気ガスの流れを前記流路制御弁の弁体の外周側と内周側に2分して流すように構成したことを特徴とする排気管内液体噴射システム。
【請求項2】
前記流路制御弁の弁体を下流側に設けた回転軸を中心に回転可能に設けると共に、前記流路制御弁を閉じる時には、前記弁体の前端を前記曲管部の外周側部分に付くように回転移動させ、前記流路制御弁を開く時には、前記弁体の前端を前記曲管部の内周側に回転移動させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の排気管内液体噴射システム。
【請求項3】
前記液体が燃料であり、かつ、前記制御装置が、前記排気ガス浄化装置への燃料の供給に際しては、前記排気ガス浄化装置に担持された触媒が活性化温度より低くて、前記触媒を加熱する場合には、排気管内直接燃料噴射を行わずにシリンダ内燃料噴射でのポスト噴射により燃料を前記排気ガス浄化装置に供給する第1制御を行い、前記触媒が活性化温度以上になった場合及び硫黄除去制御の場合には、排気管内直接燃料噴射により前記排気ガス浄化装置に燃料を供給する第2制御を行うと共に、前記第1制御では、前記流路制御弁を閉じて、排気ガスを前記曲管部の内周側に流し、前記第2制御では、排気ガスを前記曲管部の外周側と内周側に2分して流す制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気管内液体噴射システム。
【請求項4】
前記制御装置が、エンジン回転数と負荷により変化する排気ガスの流量と温度に応じて、前記流路制御弁の下流側において前記流路制御弁の弁体の外周側を通る流れと前記流路制御弁の弁体の内周側を通る流れとの間で圧力差が小さくなるように前記流路制御弁の弁開度を制御することを特徴とする請求項1,2又は3記載の排気管内液体噴射システム。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4記載の排気管内液体噴射システムを用いたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項6】
内燃機関の排気通路の排気ガス浄化装置の上流側に液体噴射装置を備え、前記液体噴射装置の装着部を曲管部の部位とし、この曲管部の下流部位の横断面積を増加し、この横断面増加部分に流路制御弁を設けると共に、前記流路制御弁を閉じた時には、前記曲管部の排気ガスの外周側の流れを遮って、排気ガスの流れを内周側に流すと共に排気ガスの流通路を絞り、前記流路制御弁を開いた時には、前記曲管部の排気ガスの流れを前記流路制御弁の弁体の外周側と内周側に2分して流すように構成し、前記液体を燃料とした排気管内液体噴射システムの排気管内液体噴射方法において、
前記排気ガス浄化装置への燃料の供給に際しては、前記排気ガス浄化装置に担持された触媒が活性化温度より低くて、前記触媒を加熱する場合には、排気管内直接燃料噴射を行わずにシリンダ内燃料噴射でのポスト噴射により燃料を前記排気ガス浄化装置に供給する第1制御を行い、前記触媒が活性化温度以上になった場合及び硫黄除去制御の場合には、排気管内直接燃料噴射により前記排気ガス浄化装置に燃料を供給する第2制御を行うと共に、前記第1制御では、流路制御弁を閉じて、排気ガスを曲管部の内周側に流し、前記第2制御では、排気ガスを曲管部の外周側と内周側に2分して流すことを特徴とする排気管内液体噴射方法。
【請求項7】
エンジン回転数と負荷により変化する排気ガスの流量と温度に応じて、前記流路制御弁の下流側において前記流路制御弁の弁体の外周側を通る流れと前記流路制御弁の弁体の内周側を通る流れとの間で圧力差が小さくなるように前記流路制御弁の弁開度を制御することを特徴とする請求項6記載の排気管内液体噴射方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の排気管内液体噴射方法を用いたことを特徴とする排気ガス浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−180863(P2010−180863A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27658(P2009−27658)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】