説明

搬送機構

【課題】被加工物の中心位置合わせ機能を有する装置において、中心位置合わせ機能を損なうことなく被加工物の大型化に伴う装置の大型化を抑制する。
【解決手段】ウェーハ把持部20に固定把持ピン201と水平移動可能な可動把持ピン202とを備えるとともにウェーハ保持パッド34を上下方向に通過させるための開口部200を設け、ウェーハ把持部20とウェーハ保持パッド34とを水平方向に相対移動可能な構成とすることで、可動把持ピン202を固定把持ピン201に近づける方向に移動させてウェーハを把持してウェーハの中心位置を一定の位置にあわせて搬送し、その状態を維持したまま降下したウェーハ保持パッド34によってウェーハを保持し、把持状態を解除するとともに、ウェーハをチャックテーブルに載置することができる。搬送機能と中心位置合わせ機能とを併せ持つため、加工装置には専用の中心位置合わせ機構が不要となり、装置の小型化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを収容するカセットからウェーハを搬出してウェーハ載置テーブルに搬送する搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハを薄化研削する研削装置や溝入れ等を行う切削装置等においては、ウェーハを収容するカセットを各装置のカセット載置位置に載置し、搬送パッド等を用いてウェーハをカセットから装置内に搬入している。例えば研削装置の場合には、ウェーハをカセットから取り出した後、ウェーハ載置テーブルであるチャックテーブルの回転中心にウェーハの中心をあわせて載置して保持する必要があるため、カセットから取り出されたウェーハは、中心位置合わせ機構に搬送され、そこでウェーハの中心位置が一定の位置に合わされた後に、チャックテーブルに搬送される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−211766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、近年は、半導体ウェーハが大口径化する傾向にあり、半導体ウェーハが大口径化すると、これに伴い中心位置合わせ機構も大型化し、このことが研削装置の大型化の要因になるという問題がある。特に、研削装置等の半導体製造装置は、クリーンルームと呼ばれる平米単価の高い設備内に設置する必要があり、装置が大型化するとその分コストの増大を招くことになるため、小型化が望まれている。中心位置合わせ機構を備える他の装置、例えば半導体ウェーハ等の各種の板状物を切削する切削装置においても、同様の問題が生ずる。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物の中心位置合わせ機能を有する各種装置において、中心位置合わせ機能を損なうことなく、被加工物の大型化に伴う装置の大型化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウェーハを収容するカセットからチャックテーブルの保持面へウェーハを搬送する搬送機構に関するもので、カセットに進入しウェーハを把持する進入プレートと、進入プレートの上方に配設され、ウェーハより外径が小さく形成され進入プレートに把持されたウェーハの表面を保持するウェーハ保持パッドとを備え、進入プレートは、板状に形成されたウェーハ把持部と、ウェーハ把持部を水平方向から支持する支持部とからなり、ウェーハ把持部は、ウェーハの外周縁を把持する少なくとも3個の把持ピンが下面に配設されているとともに、ウェーハ保持パッドを上下方向に通過させるための開口部を有し、少なくとも3個の把持ピンは、ウェーハ把持部の先端側に固定された固定把持ピンと、固定把持ピンよりも支持部側に配設され水平方向に移動可能な可動把持ピンとから構成され、支持部には、ウェーハ保持パッドを、相対的に、開口部の上方位置と、開口部から退避しウェーハ把持部のカセット内への進入を妨げない退避位置との間で水平方向に移動させる水平移動手段が配設され、進入プレートの上方には、ウェーハ保持パッドを段階的に上下方向に昇降動可能な昇降動手段が配設され、ウェーハ保持パッドは、保持面を下に向けて配設されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ウェーハ把持部を構成する把持ピンを固定把持ピンと水平移動可能な可動把持ピンとで構成するとともに、ウェーハ把持部にウェーハ保持パッドを上下方向に通過させるための開口部を設け、ウェーハ把持部とウェーハ保持パッドとを水平方向に相対移動可能としたため、可動把持ピンを固定把持ピンに近づける方向に移動させてウェーハを把持することによりウェーハの中心位置を一定の位置にあわせて搬送することができ、その把持状態を維持したまま、開口部を通過して降下したウェーハ保持パッドによってウェーハを保持し、可動把持ピンを固定把持ピンから離れる方向に移動させて把持状態を解除するとともに、ウェーハをチャックテーブルに載置して保持させることができる。したがって、搬送機構と中心位置合わせ機能とを併せ持つため、装置には専用の中心位置合わせ機構が不要であり、各種装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】搬送機構の一例を示す斜視図である。
【図2】ウェーハ把持部をカセットの内部に進入させた状態を略示的に示す断面図である。
【図3】ウェーハ把持部に把持されたウェーハがチャックテーブルの上方に搬送された状態を略示的に示す断面図である。
【図4】ウェーハ把持部に把持されたウェーハをウェーハ保持パッドが保持した状態を略示的に示す断面図である。
【図5】ウェーハ把持部によるウェーハの把持を開放しウェーハ保持パッドがウェーハを保持した状態を略示的に示す断面図である。
【図6】ウェーハをチャックテーブルに載置した状態を略示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す搬送機構1は、下面側においてウェーハを把持する進入プレート2を備えている。この進入プレート2は、板状に形成されたウェーハ把持部20と、ウェーハ把持部20を水平方向側方から支持する支持部21とから構成される。
【0010】
ウェーハ把持部20の中心部には、表裏を貫通する開口部200が形成されている。開口部200を基準としてウェーハ把持部20の先端側、すなわち開口部200よりも支持部21から離れる側においては、進入プレート2の下面側に固定把持ピン201が固着されている。一方、開口部200よりも支持部21に近い側には、固定把持ピン201に対して近づく方向及び離れる方向に移動可能な可動把持ピン202が配設されている。固定把持ピン201及び可動把持ピン202は、それぞれが例えば円弧状に窪む凹部を側面に有し、その凹部においてウェーハの外周縁を把持する。可動把持ピン202は、把持ピン駆動部203によって駆動されて水平方向に移動するピストン204の下部に垂設されており、ピストン204の移動にともない可動把持ピン202も同方向に移動する構成となっている。把持ピン駆動部203としては、例えばエアシリンダを用いることができる。
【0011】
本実施形態では、固定把持ピン201は2個、可動把持ピン202は1個であるが、固定把持ピン201と可動把持ピン202とで合計3個以上あればよく、それぞれの数は問われない。固定把持ピン201が1個であれば、可動把持ピン202は2個以上であり、固定把持ピン201と可動把持ピン202がともに2個以上であってもよい。固定把持ピン201、可動把持ピン202のいずれかまたは双方が複数ある場合は、それぞれが離間して配設される。
【0012】
進入プレート2の上方には、進入プレート2に対する水平方向の相対的な位置関係を変えることができる搬送部3を備えている。搬送部3は、搬送アーム30と、搬送アーム30の先端に固定された基部31と、基部31に起立状態で固定された壁部32と、進入プレート2の上方において壁部32の一方の面に固定された昇降動手段33と、昇降動手段33によって駆動されて段階的に上下方向に昇降するウェーハ保持パッド34とを備えている。ウェーハ保持パッド34は、進入プレート2の上方に配設され、保持対象のウェーハより外径が小さく形成され、下面340が吸引面となっており、軸部35を介して昇降板36に固定され、軸部35の周囲にはコイルバネ37が巻かれている。昇降動手段33は、モータまたは多位置型シリンダによって昇降板36を昇降させる。
【0013】
支持部21には、進入プレート2を水平方向に移動させることにより、ウェーハ保持パッド34を、相対的に、開口部200の上方位置と、開口部200の上方から退避した退避位置とに移動させる水平移動手段210を備えている。水平移動手段210には、精密な位置制御を可能とするために、例えばパルスモータを使用する。なお、水平移動手段210は、ウェーハ保持パッド34を水平方向に移動させるものであってもよいし、ウェーハ把持部20を水平方向に移動させるものであってもよい。
【0014】
次に、図1に示した搬送装置1を用いて、図2に示すカセット4に収容されているウェーハを取り出し、図3、4、5に示すチャックテーブル5の保持面50へウェーハを搬送する場合の搬送装置1の動作について説明する。
【0015】
カセット4の内部においては、複数段の支持プレート40の上にウェーハWがそれぞれ載置されている。最初に、搬送アーム30の上下動により、図2に示すように、取り出そうとするウェーハWより少し上の高さにウェーハ把持部20を位置させる。そして、水平移動手段210による駆動により、取り出そうとするウェーハWの上方の空間41にウェーハ把持部20を進入させる。このとき、固定把持ピン201及び可動把持ピン202によって形成される楕円弧の長径がウェーハWの直径よりも大きくなるように、固定把持ピン201と可動把持ピン202とを離間させておき、固定把持ピン201と可動把持ピン202とが形成する楕円弧の内側にウェーハWを収容できるようにしておく。また、ウェーハ保持パッド34については、水平移動手段210によって、ウェーハ把持部20がカセット4に進入するのを妨げない退避位置に位置させておく。
【0016】
つぎに、空間41においてウェーハ把持部20を若干降下させ固定把持ピン201及び可動把持ピン202をウェーハWの外周の真横に位置させてから、把持ピン駆動部203の駆動により可動把持ピン202を固定把持ピン201に近づける方向(図2における矢印A方向)に移動させて可動把持ピン202がウェーハWを外周縁を押すことにより、ウェーハWを矢印A方向に若干移動させて固定把持ピン201に押し付け、固定把持ピン201と可動把持ピン202とでウェーハWを挟持する。こうして可動把持ピン202が移動した後における固定把持ピン201と可動把持ピン202との間隔は、ウェーハWの外径にあわせて予め調整されており、固定把持ピン201と可動把持ピン202とでウェーハWを挟持することにより、ウェーハWの回路面への接触なく外周縁から把持され、回路面を傷付けることなくウェーハWの中心位置が一定の位置に位置合わせされる。
【0017】
そして、その状態でウェーハ把持部20を若干上昇させてウェーハWを持ち上げてから、ウェーハ把持部20をカセット4から退避させてウェーハWをカセット4の外部に搬出し、搬送アーム30の回動等により、図3に示すように、ウェーハWをチャックテーブル5の上方に移動させる。
【0018】
つぎに、水平移動手段210がウェーハ把持部20を引き込み方向(図2の矢印Aと逆の方向)に移動させ、ウェーハ保持パッド34の下方にウェーハWを移動させる。すなわち、開口部200の上方にウェーハ保持パッド34が位置した状態とする。そして、昇降動手段33がウェーハ保持パッド34を前記退避位置の高さから1段階降下させ、図4に示すように、ウェーハ保持パッド34が、ウェーハ把持部20に把持されたウェーハWの表面を吸引保持する。このとき、固定把持ピン201と可動把持ピン202とによって挟持されたウェーハの中心とウェーハ保持パッド34の中心とが合致するようにあらかじめ調整されているが、チャックテーブル5の回転中心は、ウェーハW及びウェーハ保持パッド34の中心と合致していない。
【0019】
こうしてウェーハ保持パッド34がウェーハWの表面を吸引保持した後は、水平移動手段210がウェーハ把持部20を先端側に押し出す方向(矢印B方向)に移動させて、ウェーハWの中心とチャックテーブル5の中心とを一致させる。また、把持ピン駆動部203が可動把持ピン202をウェーハWから離れる方向(矢印C方向)に移動させ、固定把持ピン201及び可動把持ピン202によるウェーハWの把持状態を解除する。その後、ウェーハ保持パッド34をさらにもう1段階降下させて開口部200を上下方向に通過させ、ウェーハWをチャックテーブル4の保持面40に載置し、ウェーハ保持パッド34による吸引を解除してウェーハ保持パッド34を上昇させる。チャックテーブル5においては、保持面50に吸引力を作用させてウェーハWを吸引保持する。このように、カセット4から搬出されたウェーハWは、ウェーハWの中心とチャックテーブル5の中心とが位置合わせされた状態で搬送される。
【0020】
以上のように、搬送機構1は、固定把持ピン201と可動把持ピン202によってウェーハWの中心位置合わせを行うことができるため、ウェーハの搬送と中心位置合わせという2つの機能を併せ持つ。したがって、専用の中心位置合わせ機構は不要であり、各種加工装置の小型化が可能となる。
【0021】
また、ウェーハ把持部20が搬送部3に対して水平方向に移動し、ウェーハ把持部20のみがカセット4に進入する構成としたため、空間41の高さが比較的低くても、ウェーハ把持部20をカセット内に進入させてウェーハの中心位置合わせを行うことが可能となる。
【0022】
なお、本実施形態では、ウェーハの表面を吸引保持するウェーハ保持パッド34を用いたが、ウェーハの表面に破損しやすいデバイスが形成されている場合等、必要に応じて、流体層を介して非接触状態でウェーハを保持する機能を有するパッドを用いることが望ましい
【符号の説明】
【0023】
1:搬送機構
2:進入プレート
20:ウェーハ把持部
200:開口部 201:固定把持ピン 202:可動把持ピン
203:把持ピン駆動部
204:ピストン
21:支持部 210:水平移動手段
3:搬送部
30:搬送アーム 31:基部 32:壁部 33:昇降動手段
34:ウェーハ保持パッド 340:下面(吸引面)
35:軸部 36:昇降板 37:コイルバネ
4:カセット 40:支持プレート
5:チャックテーブル 50:保持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを収容するカセットからチャックテーブルの保持面へ該ウェーハを搬送する搬送機構であって、
該カセットに進入し該ウェーハを把持する進入プレートと、
該進入プレートの上方に配設され、該ウェーハより外径が小さく形成され該進入プレートに把持された該ウェーハの表面を保持するウェーハ保持パッドと、
を備え、
該進入プレートは、板状に形成されたウェーハ把持部と、該ウェーハ把持部を水平方向から支持する支持部とからなり、
該ウェーハ把持部は、該ウェーハの外周縁を把持する少なくとも3個の把持ピンが下面に配設されているとともに、該ウェーハ保持パッドを上下方向に通過させるための開口部を有し、
該少なくとも3個の把持ピンは、該ウェーハ把持部の先端側に固定された固定把持ピンと、該固定把持ピンよりも該支持部側に配設され水平方向に移動可能な可動把持ピンとから構成され、
該支持部には、該ウェーハ保持パッドを、相対的に、該開口部の上方位置と、該開口部から退避し該ウェーハ把持部の該カセット内への進入を妨げない退避位置との間で水平方向に移動させる水平移動手段が配設され、
該進入プレートの上方には、該ウェーハ保持パッドを段階的に上下方向に昇降動可能な昇降動手段が配設され、
該ウェーハ保持パッドは、保持面を下に向けて配設されている、
搬送機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−181723(P2011−181723A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45067(P2010−45067)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】