携帯無線通信装置のアンテナ装置及び該アンテナ装置を備えた携帯無線通信装置
本発明は、携帯電話などの携帯無線通信装置のアンテナ装置及び該アンテナ装置を備える携帯無線通信装置に関する。アンテナ装置は、第1の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)が可撓性アンテナ素子(10)と接続装置(11)との間に延在する第1のセグメントを備え、第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)が可撓性アンテナ素子(10)と接続装置(11)との間に延在する第2のセグメントを備え、延在部分の合計が、可撓性アンテナ素子(10)の支持構造(9)への取付位置のずれに関係なく一定であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、より詳細には、携帯無線通信装置のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯無線通信装置が小型化するにつれて、装置に内蔵される電子部品、例えばアンテナも小型化する必要がある。電子部品間の電気接続はコネクタによって実現されるが、コネクタは、電子部品間の良好かつ明確な電気接触を提供し、かつ、製造工程や取付工程で常に発生するわずかな変化の影響を受けない必要がある。
【0003】
従って、小型部品には、弾性タイプ又はバネタイプのコネクタがますます魅力あるものとなっている。このようなコネクタは部品間に確実な電気接続を提供することで知られている。コネクタのバネ特性によって、明確な接触と、すべての製造寸法が完全に正確でない場合に生じる公差を回避する可撓性とが提供される。さらに、大量製造工程によくあるような、接触パッドが完全に平面でない平面性からの逸脱を吸収するために、コンプライアンスも求められる。
【0004】
小型の電子部品を電気的に接続する従来の方法は、その電子部品とプリント回路基板との間に、例えばポゴピン(商標)と呼ばれるようなバネ接触(SLC)などの電気コネクタを介在させることである。
【0005】
特許文献1には、SLCを利用してアンテナ素子をプリント回路基板に接続するアンテナ装置が開示されている。特許文献1に記載のこのようなアンテナ装置を図1及び図2に示す。アンテナ装置は支持構造2に支持されるアンテナ素子1を備える。支持構造2は第1及び第2の孔5,6を備え、第1及び第2の接続部7,8が孔5,6内に配置される。SLCなどの第1及び第2の接続装置3,4を孔5,6内に配置して接続部7,8を支持構造2に固定し、アンテナ素子1と第1及び第2の接続装置3,4とを確実に電気的に接触させる。
【0006】
特許文献1に開示されるアンテナ装置の問題を図3乃至5に示す。図3は、互いに近接して配置された2つの孔5,6を簡素化して示している。アンテナ素子1を支持構造2上の正確な位置に取り付けると、図3に示すように、接続部7,8はアンテナ素子1の平面に延在する所望の長さを有する。アンテナ素子1を正確な位置からずれた位置に取り付けると、図4及び図5にそれぞれ示すように、アンテナ素子1の平面に延在する接続部7,8の長さは増減する。このような取付位置のずれによって、アンテナ装置の共振周波数に、所望の共振周波数からの望ましくないずれが生じる。
【特許文献1】米国特許第6,812,899号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題を最小限に抑えるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特に上記目的は、本発明によれば、添付の特許請求の範囲において定義されるアンテナ装置及び携帯無線通信装置のそれぞれによって達成される。
可撓性アンテナ素子と接続装置との間に延在する第1のセグメントを有する可撓性アンテナ素子の第1の接続部と、可撓性アンテナ素子と接続装置との間に延在する第2のセグメントを有するアンテナ素子の第2の接続部とによって、延在部分の合計は、可撓性アンテナ素子の支持構造への取付けのずれに関係なく一定となる。従って、可撓性アンテナ素子の支持構造への取付けのずれによって発生するアンテナ装置の共振周波数への影響は最低限に抑えられる。
【0009】
本発明の他の特徴及び利点は以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、以下に挙げる実施形態の詳細な説明及び添付の図面から、より完全に理解されよう。但し、これらは例示のために挙げるに過ぎず、本発明を限定するものではない。
以下の説明では、説明を目的とするものであり、本発明を限定することを意図したものではなく、本発明を完全に理解できるように、特定の技術及び用途などの具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者であれば、これら具体的詳細から逸脱した他の実施形態でも本発明を実施できることは明らかであろう。他の例では、不必要な詳細で本発明の説明を不明瞭にしないように、周知の方法及び装置の詳細な説明を省略する。
【0011】
本発明の第1実施形態を図6乃至9を参照して説明する。
例えば携帯電話、PDA(個人用携帯情報端末)、携帯用コンピュータといった携帯無線通信装置のアンテナ装置は、可撓性フィルムアンテナ素子などの略平面状の可撓性アンテナ素子10と、アンテナ素子10を支持するための支持構造9とを備える。可撓性アンテナ素子10は、例えばアンテナ給電用又はアンテナ接地用の2つの接続部14,15を備える。接続部14,15は可撓性アンテナ素子10の部位12を打ち抜いて設けることが好ましい。それにより、アンテナ素子10の残りの部分とは距離を隔てた2つの接続部14,15となる。あるいは、接続部14,15は、パターンを切り取って可撓性アンテナ素子10に設けることができる。
【0012】
支持構造9は接続部14,15の外端部を受容するための孔13を備える。アンテナ装置は、アンテナ素子10を携帯無線通信装置のRF回路(すなわち給電又は接地)に接続するための、SLCや接触シートなどの接続装置11をさらに備え、この接続装置11は、好ましくは長手方向軸線を有する。長手方向軸線という表現は、孔を貫通する方向を定義するために使用する。孔13は接続装置11を受容するためのものでもある。
【0013】
接続装置11は、半径方向の力によって2つの接続部14,15の外端部を孔13に固定するように配置される。接続装置11の上端部が各接続部14,15の外端部を孔13に固定し、これによりアンテナ素子10に電気的に接続する。接続装置11の上端部は、孔13内へと延びる各接続部14,15の長さに好ましくは対応する長さに沿って均一の厚みを有する。接続装置11の他方の端部は、携帯無線通信装置のプリント配線板への接続や携帯無線通信装置のRF回路への接続のために、軸方向において弾性を有することが好ましい。接続装置11の軸方向における弾性により、アンテナ装置を携帯無線通信装置のプリント配線板に取り付ける際に、接続装置の軸方向のずれを防止するために必要な半径方向の力が大幅に削減される。
【0014】
孔13の断面形状は正方形であり、少なくとも接続部14,15を受容する面は平面状をなす。また、接続装置11の断面形状は好ましくは円形であり、少なくとも接続部14,15に接触する部分は丸みを帯びた表面を有する。このようにして、接続部14,15と接続装置11との間で明確な接触を実現する。
【0015】
上記のように構成されたアンテナ装置は、例えば携帯電話のハウジング内に占めるアンテナ装置の空間に関する要件や、携帯電話のRF回路へ接続するためのプリント回路基板上の接触位置に関する要件に容易に適合する。支持構造9は特定の容積に合うように容易に適合させられる。孔13は、プリント配線板の所望の接触位置に関連して支持構造9の種々の位置に容易に設けられる。可撓性アンテナ素子10は、支持構造9に取り付けられる。接続部14,15の外端部は、孔13内に配置される。接続装置11を孔13内に配置し、接続部14,15の外端部を孔13に固定して、これらを孔13に電気的に接続する。孔13に止め具を設け、接続装置11が孔13に深く押し込まれることを防止してもよい。これにより、接続装置11の取付けが容易になる。
【0016】
別の取付け方法においては、接続部14,15の外端部を孔13内ではなく孔13の上方にまず配置し、続いて、接続装置11の孔13への配置を利用して孔13内に配置してもよい。
【0017】
その後、アンテナ装置は例えば携帯電話のハウジングに配置できる状態になる。接続装置11が軸方向において弾性を有する場合には、支持構造9と携帯無線通信装置のプリント配線板上の接触位置との正確な距離を知る必要はない。また、軸方向に弾性を有することにより、接続装置11を孔13内に保持するために必要な半径方向の力がさらに低減される。
【0018】
接続部14,15は、略平面状の可撓性アンテナ素子10から接続装置11に延びて、略平面状の可撓性アンテナ素子10が画定する平面に実質的に存在するセグメントをそれぞれ有する。略平面状の可撓性アンテナ素子10を支持構造9の所望の位置に取り付けると、図7に示すように、接続部14,15のセグメントの延在部分は、孔13から等距離だけ延びる。図7は概略を示したものであり、各種部品の相対位置を示すために、それら部品間の距離は相当誇張して描かれている。しかしながら、略平面状の可撓性アンテナ素子10の支持構造9への取り付けが所望の位置からずれると、図8に示すように、接続部14,15は孔13から異なる程度で延びることになる。図8もまた概略図であり、各種部品の相対位置を示すために、それら部品間の距離は相当誇張して描かれている。略平面状の可撓性アンテナ素子10が画定する平面にある接続部14,15の延在部分の合計の電気的長さは、依然、略平面状の可撓性アンテナ素子10が所望の位置に取り付けられた場合と同じである。これにより、略平面状の可撓性アンテナ素子10の支持構造9への取付位置のずれに起因するアンテナ装置の周波数拡散が低減する。接続装置11が孔内の主要導体素子であるため、接続装置11に沿った接続部の孔内への延在量、すなわち接続部の外側部分の量は周波数には無関係である。
【0019】
接続部の形状は、アンテナ素子に接続部を形成するために、アンテナ素子を部分的に除去する上述の打ち抜きによって切断することが好ましい。図9a乃至9dには、接続部の4種類の形状(矩形、三角形、長尺、及び短尺)を示す。図9aの矩形接続部の利点は、対称形であるがゆえの取り付け易さと、孔の大きさに制限される接続部の長さにある。
【0020】
上述の従来技術と比較した改善点の他に、本発明は、それぞれの接続装置が、取付位置のずれに起因する周波数偏差を最小限に抑えるため、1つしか接続装置を利用しないアンテナ素子に対して極めて有利である。
【0021】
図10は、従来技術にあるような単一の接続部を有するアンテナ素子に接続された接続装置と上述したような2つの接続部を有するアンテナ素子に接続された接続装置とに係る周波数偏差のヒストグラム比較を示している。X軸は周波数偏差を示し、Y軸は特定の周波数偏差の標準発生率を示す。本発明に係る2つ以上の接続部を有することは、製造時の廃棄レベルが低減するため、従来技術にあるような単一の接続部に比して非常に有利である。さらに、本発明の設計は、従来技術に比して極めて強固である。
【0022】
本発明の第2実施形態を図11乃至13を参照して説明する。本発明の第2実施形態は以下を除いて上述した第1実施形態と同一である。
孔16は、2つの円弧部とそれらの間に2つの平面部17とを備えた断面を有する。平面部17は接続部19,20の一部を受容するためのものである。従って、接続装置(図を混乱させないよう図示せず)の丸みを帯びた表面が、平面によって支持された接続部19,20を押圧する。また、接続装置(図示せず)の丸みを帯びた表面は、孔16の円弧部の対応する丸みを帯びた表面を押圧する。略平面状の可撓性アンテナ素子の打ち抜き部18もまた、略円形であることが好ましく、これにより周波数偏差の更なる低減がもたらされる。
【0023】
本発明の第3実施形態を図14を参照して説明する。本発明の第3実施形態は以下を除いて第2実施形態と同一である。
アンテナ素子10は、円弧部の間に4つの平面部を有する孔21に取り付けるための4つの接続部22,23,24,25を備えるように形成される。また、アンテナ素子10の打ち抜き部26はほぼ円形をなす。
【0024】
あるいは、アンテナ素子は3つ又は5つ以上の接続部を備えるように形成してもよい。また、上記実施形態の接続部は接続装置の周囲に対称的に配置して図示されているが、このようにすることが好ましい。
【0025】
上記実施形態で説明した接続装置は、例えば、折り返しモノポールアンテナなどのために、アンテナ素子が非励振素子であれば接地用に、接地点が不要であれば給電用に使用してもよい。また、2つ以上の接続装置を1つのアンテナ装置に、例えば、1つのアンテナ素子についてそれぞれ給電及び接地するために、あるいは複数の給電及び/又は接地点のために使用してもよい。各接続点は、上述したように本発明に従って形成することができる。
【0026】
上記で使用した可撓性フィルムという用語は、ワイヤやバンドといった導体部を備えた可撓性を有する薄い材料として解釈すべきである。
本発明は種々の方法で変更できることは明らかであり、そのような変更は、添付の特許請求の範囲によって定める本発明の範囲から逸脱するものとはみなされない。つまり、当業界の技術者に自明であろう変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定める本発明の範囲に含まれることを意味する。
【0027】
アンテナ素子10は略平面状であると説明してきたが、凸状など他の形状を採ることも本発明の着想から逸脱することなく可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来技術に係るアンテナ装置を示す図。
【図2】図1に示すアンテナ装置の取付位置にある接触装置を示す図。
【図3】従来技術に係る正確に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図4】従来技術に係る不正確に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図5】従来技術に係る不正確に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図6】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置を示す図。
【図7a】本発明の第1実施形態に係る所望の位置に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図7b】本発明の第1実施形態に係る所望の位置に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図8a】本発明の第1実施形態に係る所望の位置からずれて取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図8b】本発明の第1実施形態に係る所望の位置からずれて取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図9a】本発明に係るアンテナ素子の接続部の形状を示す図。
【図9b】本発明に係るアンテナ素子の接続部の別の形状を示す図。
【図9c】本発明に係るアンテナ素子の接続部の別の形状を示す図。
【図9d】本発明に係るアンテナ素子の接続部の別の形状を示す図。
【図10】2つの接続部を有するアンテナ素子の正規分布と単一の接続部を有するアンテナ素子の正規分布との比較を示す図。
【図11】本発明の第2実施形態に係る孔の断面を示す図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る所望の位置に取り付けられたアンテナ素子を接続装置なしで示す図。
【図13】本発明の第2実施形態に係る所望の位置からずれて取り付けられたアンテナ素子を接続装置なしで示す図。
【図14】本発明の第3実施形態に係るアンテナ素子を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、より詳細には、携帯無線通信装置のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯無線通信装置が小型化するにつれて、装置に内蔵される電子部品、例えばアンテナも小型化する必要がある。電子部品間の電気接続はコネクタによって実現されるが、コネクタは、電子部品間の良好かつ明確な電気接触を提供し、かつ、製造工程や取付工程で常に発生するわずかな変化の影響を受けない必要がある。
【0003】
従って、小型部品には、弾性タイプ又はバネタイプのコネクタがますます魅力あるものとなっている。このようなコネクタは部品間に確実な電気接続を提供することで知られている。コネクタのバネ特性によって、明確な接触と、すべての製造寸法が完全に正確でない場合に生じる公差を回避する可撓性とが提供される。さらに、大量製造工程によくあるような、接触パッドが完全に平面でない平面性からの逸脱を吸収するために、コンプライアンスも求められる。
【0004】
小型の電子部品を電気的に接続する従来の方法は、その電子部品とプリント回路基板との間に、例えばポゴピン(商標)と呼ばれるようなバネ接触(SLC)などの電気コネクタを介在させることである。
【0005】
特許文献1には、SLCを利用してアンテナ素子をプリント回路基板に接続するアンテナ装置が開示されている。特許文献1に記載のこのようなアンテナ装置を図1及び図2に示す。アンテナ装置は支持構造2に支持されるアンテナ素子1を備える。支持構造2は第1及び第2の孔5,6を備え、第1及び第2の接続部7,8が孔5,6内に配置される。SLCなどの第1及び第2の接続装置3,4を孔5,6内に配置して接続部7,8を支持構造2に固定し、アンテナ素子1と第1及び第2の接続装置3,4とを確実に電気的に接触させる。
【0006】
特許文献1に開示されるアンテナ装置の問題を図3乃至5に示す。図3は、互いに近接して配置された2つの孔5,6を簡素化して示している。アンテナ素子1を支持構造2上の正確な位置に取り付けると、図3に示すように、接続部7,8はアンテナ素子1の平面に延在する所望の長さを有する。アンテナ素子1を正確な位置からずれた位置に取り付けると、図4及び図5にそれぞれ示すように、アンテナ素子1の平面に延在する接続部7,8の長さは増減する。このような取付位置のずれによって、アンテナ装置の共振周波数に、所望の共振周波数からの望ましくないずれが生じる。
【特許文献1】米国特許第6,812,899号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題を最小限に抑えるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特に上記目的は、本発明によれば、添付の特許請求の範囲において定義されるアンテナ装置及び携帯無線通信装置のそれぞれによって達成される。
可撓性アンテナ素子と接続装置との間に延在する第1のセグメントを有する可撓性アンテナ素子の第1の接続部と、可撓性アンテナ素子と接続装置との間に延在する第2のセグメントを有するアンテナ素子の第2の接続部とによって、延在部分の合計は、可撓性アンテナ素子の支持構造への取付けのずれに関係なく一定となる。従って、可撓性アンテナ素子の支持構造への取付けのずれによって発生するアンテナ装置の共振周波数への影響は最低限に抑えられる。
【0009】
本発明の他の特徴及び利点は以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、以下に挙げる実施形態の詳細な説明及び添付の図面から、より完全に理解されよう。但し、これらは例示のために挙げるに過ぎず、本発明を限定するものではない。
以下の説明では、説明を目的とするものであり、本発明を限定することを意図したものではなく、本発明を完全に理解できるように、特定の技術及び用途などの具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者であれば、これら具体的詳細から逸脱した他の実施形態でも本発明を実施できることは明らかであろう。他の例では、不必要な詳細で本発明の説明を不明瞭にしないように、周知の方法及び装置の詳細な説明を省略する。
【0011】
本発明の第1実施形態を図6乃至9を参照して説明する。
例えば携帯電話、PDA(個人用携帯情報端末)、携帯用コンピュータといった携帯無線通信装置のアンテナ装置は、可撓性フィルムアンテナ素子などの略平面状の可撓性アンテナ素子10と、アンテナ素子10を支持するための支持構造9とを備える。可撓性アンテナ素子10は、例えばアンテナ給電用又はアンテナ接地用の2つの接続部14,15を備える。接続部14,15は可撓性アンテナ素子10の部位12を打ち抜いて設けることが好ましい。それにより、アンテナ素子10の残りの部分とは距離を隔てた2つの接続部14,15となる。あるいは、接続部14,15は、パターンを切り取って可撓性アンテナ素子10に設けることができる。
【0012】
支持構造9は接続部14,15の外端部を受容するための孔13を備える。アンテナ装置は、アンテナ素子10を携帯無線通信装置のRF回路(すなわち給電又は接地)に接続するための、SLCや接触シートなどの接続装置11をさらに備え、この接続装置11は、好ましくは長手方向軸線を有する。長手方向軸線という表現は、孔を貫通する方向を定義するために使用する。孔13は接続装置11を受容するためのものでもある。
【0013】
接続装置11は、半径方向の力によって2つの接続部14,15の外端部を孔13に固定するように配置される。接続装置11の上端部が各接続部14,15の外端部を孔13に固定し、これによりアンテナ素子10に電気的に接続する。接続装置11の上端部は、孔13内へと延びる各接続部14,15の長さに好ましくは対応する長さに沿って均一の厚みを有する。接続装置11の他方の端部は、携帯無線通信装置のプリント配線板への接続や携帯無線通信装置のRF回路への接続のために、軸方向において弾性を有することが好ましい。接続装置11の軸方向における弾性により、アンテナ装置を携帯無線通信装置のプリント配線板に取り付ける際に、接続装置の軸方向のずれを防止するために必要な半径方向の力が大幅に削減される。
【0014】
孔13の断面形状は正方形であり、少なくとも接続部14,15を受容する面は平面状をなす。また、接続装置11の断面形状は好ましくは円形であり、少なくとも接続部14,15に接触する部分は丸みを帯びた表面を有する。このようにして、接続部14,15と接続装置11との間で明確な接触を実現する。
【0015】
上記のように構成されたアンテナ装置は、例えば携帯電話のハウジング内に占めるアンテナ装置の空間に関する要件や、携帯電話のRF回路へ接続するためのプリント回路基板上の接触位置に関する要件に容易に適合する。支持構造9は特定の容積に合うように容易に適合させられる。孔13は、プリント配線板の所望の接触位置に関連して支持構造9の種々の位置に容易に設けられる。可撓性アンテナ素子10は、支持構造9に取り付けられる。接続部14,15の外端部は、孔13内に配置される。接続装置11を孔13内に配置し、接続部14,15の外端部を孔13に固定して、これらを孔13に電気的に接続する。孔13に止め具を設け、接続装置11が孔13に深く押し込まれることを防止してもよい。これにより、接続装置11の取付けが容易になる。
【0016】
別の取付け方法においては、接続部14,15の外端部を孔13内ではなく孔13の上方にまず配置し、続いて、接続装置11の孔13への配置を利用して孔13内に配置してもよい。
【0017】
その後、アンテナ装置は例えば携帯電話のハウジングに配置できる状態になる。接続装置11が軸方向において弾性を有する場合には、支持構造9と携帯無線通信装置のプリント配線板上の接触位置との正確な距離を知る必要はない。また、軸方向に弾性を有することにより、接続装置11を孔13内に保持するために必要な半径方向の力がさらに低減される。
【0018】
接続部14,15は、略平面状の可撓性アンテナ素子10から接続装置11に延びて、略平面状の可撓性アンテナ素子10が画定する平面に実質的に存在するセグメントをそれぞれ有する。略平面状の可撓性アンテナ素子10を支持構造9の所望の位置に取り付けると、図7に示すように、接続部14,15のセグメントの延在部分は、孔13から等距離だけ延びる。図7は概略を示したものであり、各種部品の相対位置を示すために、それら部品間の距離は相当誇張して描かれている。しかしながら、略平面状の可撓性アンテナ素子10の支持構造9への取り付けが所望の位置からずれると、図8に示すように、接続部14,15は孔13から異なる程度で延びることになる。図8もまた概略図であり、各種部品の相対位置を示すために、それら部品間の距離は相当誇張して描かれている。略平面状の可撓性アンテナ素子10が画定する平面にある接続部14,15の延在部分の合計の電気的長さは、依然、略平面状の可撓性アンテナ素子10が所望の位置に取り付けられた場合と同じである。これにより、略平面状の可撓性アンテナ素子10の支持構造9への取付位置のずれに起因するアンテナ装置の周波数拡散が低減する。接続装置11が孔内の主要導体素子であるため、接続装置11に沿った接続部の孔内への延在量、すなわち接続部の外側部分の量は周波数には無関係である。
【0019】
接続部の形状は、アンテナ素子に接続部を形成するために、アンテナ素子を部分的に除去する上述の打ち抜きによって切断することが好ましい。図9a乃至9dには、接続部の4種類の形状(矩形、三角形、長尺、及び短尺)を示す。図9aの矩形接続部の利点は、対称形であるがゆえの取り付け易さと、孔の大きさに制限される接続部の長さにある。
【0020】
上述の従来技術と比較した改善点の他に、本発明は、それぞれの接続装置が、取付位置のずれに起因する周波数偏差を最小限に抑えるため、1つしか接続装置を利用しないアンテナ素子に対して極めて有利である。
【0021】
図10は、従来技術にあるような単一の接続部を有するアンテナ素子に接続された接続装置と上述したような2つの接続部を有するアンテナ素子に接続された接続装置とに係る周波数偏差のヒストグラム比較を示している。X軸は周波数偏差を示し、Y軸は特定の周波数偏差の標準発生率を示す。本発明に係る2つ以上の接続部を有することは、製造時の廃棄レベルが低減するため、従来技術にあるような単一の接続部に比して非常に有利である。さらに、本発明の設計は、従来技術に比して極めて強固である。
【0022】
本発明の第2実施形態を図11乃至13を参照して説明する。本発明の第2実施形態は以下を除いて上述した第1実施形態と同一である。
孔16は、2つの円弧部とそれらの間に2つの平面部17とを備えた断面を有する。平面部17は接続部19,20の一部を受容するためのものである。従って、接続装置(図を混乱させないよう図示せず)の丸みを帯びた表面が、平面によって支持された接続部19,20を押圧する。また、接続装置(図示せず)の丸みを帯びた表面は、孔16の円弧部の対応する丸みを帯びた表面を押圧する。略平面状の可撓性アンテナ素子の打ち抜き部18もまた、略円形であることが好ましく、これにより周波数偏差の更なる低減がもたらされる。
【0023】
本発明の第3実施形態を図14を参照して説明する。本発明の第3実施形態は以下を除いて第2実施形態と同一である。
アンテナ素子10は、円弧部の間に4つの平面部を有する孔21に取り付けるための4つの接続部22,23,24,25を備えるように形成される。また、アンテナ素子10の打ち抜き部26はほぼ円形をなす。
【0024】
あるいは、アンテナ素子は3つ又は5つ以上の接続部を備えるように形成してもよい。また、上記実施形態の接続部は接続装置の周囲に対称的に配置して図示されているが、このようにすることが好ましい。
【0025】
上記実施形態で説明した接続装置は、例えば、折り返しモノポールアンテナなどのために、アンテナ素子が非励振素子であれば接地用に、接地点が不要であれば給電用に使用してもよい。また、2つ以上の接続装置を1つのアンテナ装置に、例えば、1つのアンテナ素子についてそれぞれ給電及び接地するために、あるいは複数の給電及び/又は接地点のために使用してもよい。各接続点は、上述したように本発明に従って形成することができる。
【0026】
上記で使用した可撓性フィルムという用語は、ワイヤやバンドといった導体部を備えた可撓性を有する薄い材料として解釈すべきである。
本発明は種々の方法で変更できることは明らかであり、そのような変更は、添付の特許請求の範囲によって定める本発明の範囲から逸脱するものとはみなされない。つまり、当業界の技術者に自明であろう変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定める本発明の範囲に含まれることを意味する。
【0027】
アンテナ素子10は略平面状であると説明してきたが、凸状など他の形状を採ることも本発明の着想から逸脱することなく可能であることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来技術に係るアンテナ装置を示す図。
【図2】図1に示すアンテナ装置の取付位置にある接触装置を示す図。
【図3】従来技術に係る正確に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図4】従来技術に係る不正確に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図5】従来技術に係る不正確に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図6】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置を示す図。
【図7a】本発明の第1実施形態に係る所望の位置に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図7b】本発明の第1実施形態に係る所望の位置に取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図8a】本発明の第1実施形態に係る所望の位置からずれて取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図8b】本発明の第1実施形態に係る所望の位置からずれて取り付けられたアンテナ素子を示す図。
【図9a】本発明に係るアンテナ素子の接続部の形状を示す図。
【図9b】本発明に係るアンテナ素子の接続部の別の形状を示す図。
【図9c】本発明に係るアンテナ素子の接続部の別の形状を示す図。
【図9d】本発明に係るアンテナ素子の接続部の別の形状を示す図。
【図10】2つの接続部を有するアンテナ素子の正規分布と単一の接続部を有するアンテナ素子の正規分布との比較を示す図。
【図11】本発明の第2実施形態に係る孔の断面を示す図。
【図12】本発明の第2実施形態に係る所望の位置に取り付けられたアンテナ素子を接続装置なしで示す図。
【図13】本発明の第2実施形態に係る所望の位置からずれて取り付けられたアンテナ素子を接続装置なしで示す図。
【図14】本発明の第3実施形態に係るアンテナ素子を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を備える可撓性アンテナ素子(10)と、
前記可撓性アンテナ素子(10)を支持し、孔(13;16;21)を備える支持構造(9)と、
前記孔(13;16;21)に配置され、前記可撓性アンテナ素子(10)を携帯無線通信装置に接続する接続装置(11)と
を備える携帯無線通信装置のアンテナ装置において、
前記接続装置(11)は前記第1及び第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を前記支持構造(9)に固定して、半径方向の力により、前記第1及び第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を前記接続装置(11)に電気的に接続することと、
前記第1の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は、前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第1のセグメントを有し、
前記第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は、前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第2のセグメントを有し、前記延在部分の合計が前記可撓性アンテナ素子(10)の前記支持構造(9)への取付位置のずれに関係なく一定であることとを特徴とする、携帯無線通信装置のアンテナ装置。
【請求項2】
前記接続装置(11)は長手方向軸線を有し、前記携帯無線通信装置に接続するために軸方向において弾性を有することを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は長尺状をなすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は矩形をなすことを特徴とする、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ素子(10)は前記接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を形成する打ち抜き部(13;18;26)を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記孔(16;21)は、前記接続装置(11)を支持するための、部分的に円弧状をなし、かつ部分的に平面状をなす断面を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記孔(16;21)は前記接続部(19,20;22,23,24,25)を支持するための2つの平面(17)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナ素子(10)は略平面状であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記接続装置(11)によって前記支持構造(9)に固定され、かつ前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第3セグメントを有する第3接続部をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記接続装置(11)によって前記支持構造(9)に固定され、かつ前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第4セグメントを有する第4接続部をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に係るアンテナ装置を備えることを特徴とする携帯無線通信装置。
【請求項1】
第1及び第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を備える可撓性アンテナ素子(10)と、
前記可撓性アンテナ素子(10)を支持し、孔(13;16;21)を備える支持構造(9)と、
前記孔(13;16;21)に配置され、前記可撓性アンテナ素子(10)を携帯無線通信装置に接続する接続装置(11)と
を備える携帯無線通信装置のアンテナ装置において、
前記接続装置(11)は前記第1及び第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を前記支持構造(9)に固定して、半径方向の力により、前記第1及び第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を前記接続装置(11)に電気的に接続することと、
前記第1の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は、前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第1のセグメントを有し、
前記第2の接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は、前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第2のセグメントを有し、前記延在部分の合計が前記可撓性アンテナ素子(10)の前記支持構造(9)への取付位置のずれに関係なく一定であることとを特徴とする、携帯無線通信装置のアンテナ装置。
【請求項2】
前記接続装置(11)は長手方向軸線を有し、前記携帯無線通信装置に接続するために軸方向において弾性を有することを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は長尺状をなすことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)は矩形をなすことを特徴とする、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ素子(10)は前記接続部(14,15;19,20;22,23,24,25)を形成する打ち抜き部(13;18;26)を備えることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記孔(16;21)は、前記接続装置(11)を支持するための、部分的に円弧状をなし、かつ部分的に平面状をなす断面を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記孔(16;21)は前記接続部(19,20;22,23,24,25)を支持するための2つの平面(17)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記アンテナ素子(10)は略平面状であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記接続装置(11)によって前記支持構造(9)に固定され、かつ前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第3セグメントを有する第3接続部をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記接続装置(11)によって前記支持構造(9)に固定され、かつ前記可撓性アンテナ素子(10)と前記接続装置(11)との間に延在する第4セグメントを有する第4接続部をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に係るアンテナ装置を備えることを特徴とする携帯無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−526471(P2009−526471A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554190(P2008−554190)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000114
【国際公開番号】WO2007/091954
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508222715)レアード テクノロジーズ アーベー (7)
【氏名又は名称原語表記】LAIRD TECHNOLOGIES AB
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000114
【国際公開番号】WO2007/091954
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508222715)レアード テクノロジーズ アーベー (7)
【氏名又は名称原語表記】LAIRD TECHNOLOGIES AB
【Fターム(参考)】
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