説明

教示装置、コントローラ、自動機械システム、およびその無線通信方法

【課題】無線化された教示装置において、無線通信で一定周期毎にLIVE信号をやり取りし、その受信時間間隔を監視して、無線通信の通信状態が悪化している場合には、作業者に警告を発したり、自動機械を停止させたりすることで、安全な自動機械システムを提供する。
【解決手段】1つ以上の駆動機構を備える機構部と、前記機構部を駆動制御するコントローラ2と、前記機構部を操作する教示装置3を備える自動機械システムにおいて、前記教示装置3は、前記コントローラ2との無線通信を行う教示装置通信部と、前記教示装置通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する第1のLIVE信号監視部とを備え、前記コントローラ2は、前記教示装置との無線通信を行うコントローラ通信部と、前記コントローラ通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する第2のLIVE信号監視部と、前記コントローラ通信部にて受信した前記教示装置からの指令信号に基づいて前記機構部を駆動する駆動部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動機械のコントローラと教示装置を、無線通信を介して接続する自動機械システムおよびその無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動機械やモータ、産業用ロボットを制御するシステムにおいては、当該自動機械やモータ、ロボットの作動を制御するための制御部を有するほか、教示作業時等に作業者が携帯する可搬式の教示操作部(ペンダントとも指称される)を有している。従来、教示操作部と制御部との情報伝送には、ツイストペア線や光ファイバ等を信号伝送路として使用し、教示操作部への電源供給線を含む複合ケーブル(以後、単にケーブルという)が用いられていた。
【0003】
一例として、特許文献1に記載された従来のロボットシステムの構成図を図6に示す。図において、101はロボット、102はロボット101の作動を制御するコントローラ、103は教示装置、104はコントローラ102と教示装置103との間で操作ボタンや非常停止等の情報を伝送するケーブルである。教示装置103の詳細図を図7に示す。図において、105は略T字型をなす筐体、106は作業者が把持するハンド部である。筐体105の操作面には、教示作業時に操作されるキーボード(ないしはキーシート)107と、教示データやロボット位置等の種々の情報を表示する液晶パネルからなるLCDディスプレイ108と、非常停止スイッチ109(非常停止操作手段に相当する)とが設けられている。また、筐体105にはケーブル104の一端が接続されている。
【0004】
作業者が非常停止スイッチ109を押下すると、ケーブル104を介して非常停止情報がコントローラ102に伝送され、コントローラ102はロボット101の図示しない駆動モータへの電力供給を遮断することでロボット101の動作を強制的に停止させる。これにより、万一の意図しない動作に対して確実にロボットを非常停止させることができる。
以上述べた従来のロボットシステムでは、作業者は教示装置103を持ち運ぶ際に、太くて重いケーブルを引きずりながら教示作業を行う必要があり作業者にとって負担が大きく、また教示をする際の動作自由度も制約されるという問題があった。そのため、コントローラ102と教示装置103との間のケーブル104を無線化することが強く望まれていた。
【0005】
例えば、特許文献2には、ロボットの駆動モータへの電力供給を遮断してロボットを非常停止状態とするための非常停止操作手段を備えた教示装置が、ロボットを制御するためのコントローラと互いに無線で通信を行うように構成されたロボットシステムにおける、非常停止機能の実現手段について記載されている。
【0006】
また、前記特許文献2の手段以外に特許文献3には、無線を用いたロボットの駆動制御において、非常停止操作で確実な駆動電源遮断を行う手段について記載されている。具体的には、送信器(教示装置)に、制御許可スイッチ及び駆動制御用のスイッチと、制御許可スイッチが作動されている状態にあるときにベース信号を連続的に発生するベース信号発生手段と、このベース信号と駆動制御用のスイッチからの信号とを混成する混成手段を設ける。一方、ロボットのコントローラに、駆動制御用の信号に応じてモータを制御する駆動制御手段と、ベース信号の監視に基づき、ベース信号が連続的に受信されているときには上記駆動制御手段にパワーソース供給手段を接続し、ベース信号が途切れたときには上記駆動制御手段に対しパワーソース供給手段を遮断してモータを停止させるサーボ制御許可手段を設ける実現手段について記載されている。
【0007】
同様な手段として、特許文献4には、教示装置が故障した場合、教示装置に設けられた常用発信器から信号が発信されなくなるため、コントローラに配設された停止用受信器は信号を受信できなくなり、ロボットの動作を停止させる停止信号をコントローラへ出力する。コントローラは、停止信号を入力されると何らかの異常があると判断して、ロボットの作動を緊急停止させ、ロボットの暴走を回避する実現手段について記載されている。
【0008】
また、特許文献5には、コントローラと教示装置間の無線通信をシステム制御装置で傍受して、非常停止操作や自己診断結果の異常や無線通信が途絶えたことをコントローラとシステム制御装置の双方で検出してモータの駆動電源を遮断する実現手段について記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2000−280193号公報(第7頁、図1および図2)
【特許文献2】特開2004−148488号公報(第20頁、図1)
【特許文献3】特開平9−117888号公報(第6頁、図2)
【特許文献4】特開平7−195285号公報(第4頁、図1)
【特許文献5】特開2005−161486号公報(第8頁、図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、コントローラと教示装置とを無線で接続するシステムでは、例えば、作業によっては、教示装置がコントローラから離れ、無線通信の有効範囲から出てしまうときがあり、この場合は当然として教示装置の操作(ロボットを誘導するJOG動作やロボットのプレイバックスタート・ストップ等)を制御部へ送信するすべがない。この操作には非常停止操作も含まれており、作業者が教示装置の非常停止スイッチを押下して駆動モータへの電力供給を遮断しようとしてもロボットを停止させることができない。その結果、ロボットや周辺機器に多大な損傷を与える可能性があった。
【0011】
また、教示装置とコントローラとの無線通信状態の悪化により、ロボット操作信号や非常停止情報がコントローラまで伝達されない状態にある場合においても、同様にロボット停止信号や非常停止スイッチ信号を送信できないため、ロボットを停止させることができず、ロボットや周辺機器に多大な損傷を与えるという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、無線化された教示装置において、無線通信で一定周期毎にLIVE信号をやり取りし、その受信時間間隔を監視して、無線通信の通信状態が悪化している場合には、作業者に警告を発したり、自動機械を停止させたりすることで、安全な自動機械システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、上記問題点を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、1つ以上の駆動機構を備える機構部と、前記機構部を駆動制御するコントローラと、前記機構部を操作するための教示装置を備える自動機械システムにおいて、前記教示装置は、前記コントローラとの無線通信を行う教示装置通信部と、前記教示装置通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する第1のLIVE信号監視部と、を備え、前記コントローラは、前記教示装置との無線通信を行うコントローラ通信部と、前記コントローラ通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する第2のLIVE信号監視部と、前記コントローラ通信部にて受信した前記教示装置からの指令信号に基づいて前記機構部を駆動する駆動部と、を備えることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が第2の閾値を超えた場合は、前記機構部の駆動を停止することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が第1の閾値を超えた場合は、作業者に対し警告を発することを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、前記第1のLIVE信号監視部が発する警告は、ディスプレイ表示、音、または振動のいずれかによるものであることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、前記第2のLIVE信号監視部が発する警告は、ディスプレイ表示、音、または前記コントローラに接続された外部機器への信号出力のいずれかによるものであることを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔の閾値をパラメータとして保持することを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、
使用していた無線チャンネルの解放を行うことを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の発明は、1つ以上の駆動機構を備える機構部を駆動制御するコントローラと、前記機構部を操作する教示装置と、を備える自動機械システムにおいて、前記教示装置は、前記コントローラと無線通信を行い、一定周期毎にLIVE信号を監視するとともに、前記コントローラは、前記教示装置と無線通信を行い、一定周期毎にLIVE信号を監視し、前記教示装置または前記コントローラは、前記LIVE信号の検出時間間隔が第1の閾値を超えた場合は、警告を発し、第2の閾値を超えた場合は、前記機構部の駆動を停止することを特徴とするものである。
また、請求項9に記載の発明は、自動機械の駆動機構を駆動制御するコントローラとの無線通信を行う教示装置通信部と、前記教示装置通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する前記LIVE信号監視部と、を備え、前記自動機械を操作するための教示装置において、前記LIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が所定の閾値を超えた場合は、作業者に対し所定の警告を発することを特徴とするものである。
また、請求項10に記載の発明は、前記所定の警告は、ディスプレイ表示、音、または振動のいずれかによるものであることを特徴とするものである。
また、請求項11に記載の発明は、前記所定の警告は、音または振動によるものであり、前記LIVE信号の検出時間間隔が前記所定の閾値に近づくに従い、前記音または前記振動が次第に大きくなることを特徴とするものである。
また、請求項12に記載の発明は、前記所定の警告は、音または振動によるものであり、前記LIVE信号の検出時間間隔が前記所定の閾値に近づくに従い、前記音または前記振動の出力間隔が次第に短くなることを特徴とするものである。
また、請求項13に記載の発明は、自動機械を操作するための教示装置との無線通信を行うコントローラ通信部と、前記コントローラ通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する前記LIVE信号監視部と、を備え、前記自動機械の駆動機構を駆動制御するコントローラにおいて、前記LIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が所定の閾値を超えた場合は、作業者に対し所定の警告を発することを特徴とするものである。
また、請求項14に記載の発明は、前記所定の警告は、ディスプレイ表示、音、または前記コントローラに接続された外部機器への信号出力のいずれかによるものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、9,13に記載の発明によれば、教示装置とコントローラで、無線通信による一定周期毎のLIVE信号をそれぞれ監視するため、通信環境の悪化を作業者が識別しないまま、いきなり操作不可能になることを防ぐことができ、自動機械の安全性を高めることができるという効果がある。
また、請求項2に記載の発明によれば、教示装置とコントローラで、予め設定された第2の閾値以下となった場合は機構部の駆動を停止するため、通信状態が悪化して作業者からの操作が不能になった場合でも、自動機械の安全性を高めることができるという効果がある。
また、請求項3に記載の発明によれば、教示装置とコントローラで、予め設定された第1の閾値以下となった場合は警告を発するため、通信状態が悪化しつつあることを作業者が識別でき、受信状態を改善する対策(例えばコントローラに近づく等)を打つことができるという効果がある。
また請求項4、5、10、11、12、14に記載の発明によれば、作業者が直感的に異常を認識でき、更に自動機械を使用した設備の状況管理や保守に利用することができる。
また、請求項6に記載の発明によれば、第1または第2のLIVE信号監視部は、LIVE信号の検出時間間隔の所定の閾値をパラメータとして保持することで、作業者が現場の無線通信環境に応じて調整することができるという効果がある。更に、その調整により、1度だけの偶発的なLIVE信号の消失による誤認識を防止できるという効果もある。
また、請求項7に記載の発明によれば、通信確立していた無線チャンネルの解放を自動的に行うことで、他のコントローラと接続する際に元のコントローラとの確立解放の手順を省略することができる。また、無線使用が停止された無線チャンネルを空け、他のコントローラと教示装置間で使用することができるので、チャンネル数に制限がある無線通信を効率的に利用できるという効果もある。
また、請求項8に記載の発明によれば、教示装置とコントローラで、無線通信による一定周期毎のLIVE信号をそれぞれ監視するため、通信環境の悪化を作業者が識別しないまま、いきなり操作不可能になることを防ぐことができ、自動機械の安全性を高めることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1実施例における自動機械(ここでは、ロボットとする)システムの構成図である。図において、1はロボット、2はロボット1の作動を制御するコントローラ、3は教示装置、4はコントローラ2と教示装置3との間で操作ボタンや非常停止等の情報を伝送する無線通信である(符号4は模式的に描いている)。
【0016】
教示装置3の詳細図を図2に示す。図において、5は略T字型をなす筐体、6は作業者が把持するハンド部である。筐体5の操作面には、教示作業時に作業者によって操作されるキーボード(ないしはキーシート)7と、教示データやロボット位置等の種々の情報を表示する液晶パネルからなるLCDディスプレイ8と、非常停止スイッチ9(非常停止操作手段に相当する)とが設けられている。また、筐体5には無線通信4の送受信手段であるアンテナ10、コントローラ2から独立して電源を供給するためのバッテリ11、電源の供給を開始/停止するための電源スイッチ12が設けられている。また、コントローラ2とアンテナ10を介して、無線通信4を行う教示装置通信部14が設けられている。
コントローラ2の詳細図を図3に示す。図において、21は駆動モータへの電流指令を演算する制御部、22は電流指令により駆動モータを駆動するサーボアンプ、23はロボット1に取り付けられた駆動モータ、24は無線通信4の送受信手段であるアンテナ、25はロボットの運転状態やアラーム等を表示する液晶パネルからなるLCDディスプレイである。
【0017】
作業者が教示装置3のキーボード7に割り当てられたロボット1の軸毎の誘導操作ボタンを押すことで、教示装置通信部14からアンテナ10により無線通信4を介して軸動作情報がコントローラ2へ送信される。コントローラ2では、アンテナ24及びコントローラ通信部27で受信した軸動作情報はコントローラ通信部27から制御部21に伝送され、制御部21はロボット1の駆動モータ23への電力を供給することでロボット1を動作させる。
【0018】
また、作業者が非常停止スイッチ9を押下すると、無線通信4を介して非常停止情報がコントローラ2に伝送され、制御部21はロボット1の駆動モータ23への電力供給を遮断することでロボット1の動作を強制的に停止させる。これにより、万一の意図しない動作に対して確実にロボット1を非常停止させる。
【0019】
本発明においては、教示装置3に無線通信4の通信データのLIVE信号を監視する第1のLIVE信号監視部13を、コントローラ2に無線通信4の通信データのLIVE信号を監視する第2のLIVE信号監視部26を、新たに設けている。
【0020】
教示装置3とコントローラ2との間では、無線通信4による相互確認が常時行われる。すなわち、教示装置3の電源投入の有無は勿論、無線通信4の通信障害の有無、相互の内部処理回路の障害有無、コントローラ2における非常停止回路のリレー溶着等の障害有無がチェックされる。相互確認の結果、障害が無く双方が正常に動作していると判断される場合にのみ、教示装置3からロボット1の操作ができる。
【0021】
ここで、LIVE信号は、図4に示すように、無線通信4の通信障害の有無を検出するため、教示装置3の教示装置通信部14から予め設定された一定周期でLIVEコマンドをコントローラ2のコントローラ通信部27へ送信する。前記コントローラ通信部27はそのLIVEコマンドを受信して直ぐにLIVEコマンドを前記教示装置通信部14へ返信する。前記教示装置通信部14もそのLIVEコマンドを受信して直ぐにLIVEコマンドを前記コントローラ通信部27へ返信することを以下繰り返す。この時、第1のLIVE信号監視部13と第2のLIVE信号監視部26でそれぞれ相手方からのLIVE信号を受信した時間間隔を監視し、予め設定された閾値と比較することで、通信状態が良好であるかを判断する。
【0022】
本方式によれば、作業者がロボット1の近傍で教示作業やプレイバック運転を実施する場合、教示装置3の第1のLIVE信号監視部13ではコントローラ2からの無線通信4のLIVE信号の検出時間間隔を監視し、コントローラ2の第2のLIVE信号監視部26では教示装置3からの無線通信4のLIVE信号の検出時間間隔を監視する。
【0023】
図5に示すように、作業者がロボット1の動作確認や他の作業のために、コントローラ2から離れる方向に移動して無線が届き難くなったり、外部から別の無線通信が障害となって発生したりすると、電波に乗っているLIVE信号の欠けや消失が発生して、検出時間よりも短い間隔でLIVEコマンドの再送を行うが、第1のLIVE信号監視部13や第2のLIVE信号監視部26で監視しているLIVE信号の検出が行えない頻度が高くなるため、結果として検出時間間隔が長くなる。
【0024】
そのため、検出時間が予め設定された閾値A(Aは0より大きい実数)以上になった場合は、警告領域や警告状態に入ったとして無線通信4の通信障害が発生する可能性がある旨や操作可能領域を外れる可能性がある旨を、教示装置3のLCDディスプレイ8に表示して、作業者に警告を発する。同様に、コントローラ2のLCDディスプレイ25にも無線通信4の通信障害が発生する可能性がある旨や操作可能領域を外れる可能性がある旨を表示する。
LIVE信号の検出時間間隔と閾値Aとの関係を教示装置3のLCDディスプレイ8やコントローラ2のLCDディスプレイ25に表示しても良く、作業者はこの関係を見ながら閾値のパラメータを調整することができる。
【0025】
本方式によれば、無線通信4による操作可能領域を外れた位置からや、通信障害による操作不能状態から、ロボット1の操作を行う状態を回避でき、ロボット1の動作が異常時に、非常停止スイッチ9を押下しても通信不良でロボット1を停止できない状態等を回避できる。
【実施例2】
【0026】
作業者が教示装置3のLCDディスプレイ8に表示された警告を無視し、更に無線通信4の操作可能領域から外れたり、無線通信障害の影響が大きくなったりした場合、ロボット1は作業者の制御下にないので、危険防止のため非常停止操作によってロボット1の駆動モータ23への電力供給を遮断する必要がある。このことを考慮したのが本発明の第2実施例である。
【0027】
図5に示すように、作業者が更にコントローラ2から離れる方向に移動したり、無線通信障害の影響が大きくなったりすると、第1のLIVE信号監視部13や第2のLIVE信号監視部26で監視しているLIVE信号の検出時間間隔が長くなり、予め設定された第2の閾値B(Bは0より大きい実数、ただしA<B)以上になる。この場合は、完全に作業者の意図が無線通信4を介してコントローラ2に伝わらなくなるため、停止領域(状態)に入ったとして、第2のLIVE信号監視部26は安全のためにコントローラ2に対して非常停止処理を発行する。これにより、コントローラ2はロボット1の駆動モータ23への電力供給を遮断する。
また、第1のLIVE信号監視部13は教示装置3のLCDディスプレイ8に、ロボットを非常停止させたことを示す等の表示を行う。
【0028】
また、前述の実施例1と組み合わせ、LIVE信号の検出時間間隔が予め設定された第1の閾値A以上になった場合には警告領域(状態)に入ったとして警告を発し、予め設定された第2の閾値B以上になった場合には停止領域(状態)に入ったとして安全のためにロボット1の駆動モータ23への電力供給を遮断する構成にしても良い。
また、作業者が停止領域(状態)から再度コントローラ2に近づく場合には、無線通信4のLIVE信号の検出時間間隔が予め設定された第1の閾値Aまたは第2の閾値Bを下回った場合にのみ、コントローラ2から作業者に対して、ロボット1の電力供給が可能である旨を教示装置3のLCDディスプレイ8やコントローラ2のLCDディスプレイ25に表示しても良い。
本方式によれば、無線通信4による操作可能領域(状態)を完全に外れた場合には自動的にロボット1への電力供給を遮断してロボットを停止させることで、作業者の制御下にない状態での安全を確保できる。
【実施例3】
【0029】
以上説明した実施例では、第1のLIVE信号監視部13が教示装置3のLCDディスプレイ8に、警告として無線通信4による操作可能領域(状態)を外れる旨を表示していた。しかし、作業者が頻繁にLCDディスプレイ8に視線を向けていれば良いが、長時間LCDディスプレイ8に視線を向けない可能性もある。こうした場合にはLCDディスプレイ8に警告が出ているにも係わらず、作業者が気づかずに操作可能領域(状態)の外に出てしまうという問題がある。このような問題に対処したのが本発明の第3実施例である。
本発明の第3実施例では、警告手段として、教示装置3のLCDディスプレイ8に警告を表示する以外に、ブザー音や音声出力等の聴覚的な手段、または振動による警告の提示を行う。又は、閾値に近づくに従い、音、振動を次第に大きく(又はその出力間隔を短くしていく)していく手段を用いることで、作業者により直感的に警告しても良い。
本方式によれば、作業者が頻繁にLCDディスプレイ8に視線を向けていなくても、無線通信4による操作可能領域(状態)を外れる旨の警告を、確実に認識することができる。
【実施例4】
【0030】
教示装置3のLCDディスプレイ8に警告を発生するだけでは、教示装置3を持った作業者のみしか警告を認識することができないという問題がある。このような問題に対処したのが本発明の第4実施例である。
コントローラ2内の第2のLIVE信号監視部26が発する警告や停止表示を、LCDディスプレイ25への表示の他に、ブザー音や音声出力等の聴覚的な手段や外部機器への出力とする。
ここで、外部機器とはネットワークを介して接続された上位システムや周辺システムである。外部機器へ信号出力を行うことで、ロボット1の作業が中断されたことを、他のコントローラやそれを操作している作業者に伝達することができる。
【0031】
また、前述の第3実施例および本実施例では、無線通信4による操作可能領域(状態)の外に出る旨の警告に関するものであったが、操作可能領域(状態)外に出てロボットが自動的に停止した場合も同様に、教示装置3でのブザー音や音声出力等の聴覚的な手段、または振動によって停止したことを提示したり、コントローラ2でのブザー音や音声出力等の聴覚的な手段、または外部機器への出力によって停止したことを提示したりしてもよい。
本方式によれば、教示装置3を持った作業者以外の者も、教示作業やプレイバック運転が停止したことを認識でき、更にロボットを使用した設備の状況管理や保守に利用することもできる。
【実施例5】
【0032】
作業者がロボット1の教示作業を行うために、教示装置3を持って無線通信4による操作可能領域(状態)から外に出た際に無線確立を解放しないままでは、他の無線チャンネルと混信したり、無線チャンネルの資源が不足したりしてしまうという問題がある。このような問題に対処したのが本発明の第5実施例である。
第2実施例にて説明したように、作業者がコントローラ2から離れたり、外部からの無線通信障害が発生したりすることで、第1のLIVE信号監視部13や第2のLIVE信号監視部26で監視しているLIVE信号の検出時間間隔が予め設定された第2の閾値B以上になり、コントローラ2がロボット1の駆動モータ23への電力供給を遮断する。その際、自動的に無線通信で通信確立していた無線チャンネルの確立解放を行う。これは、この時点では電波状態は悪いものの未だ通信確立できている状態であるため、完全に通信出来なくなる前に、通信確立の解放を行う。
【0033】
具体的には、第1のLIVE信号監視部13や第2のLIVE信号監視部26から、教示装置3とコントローラ2に対して、無線通信4の通信確立を解放する指令が出て、通信が遮断される。この通信確立/解放の状態は教示装置3のLCDディスプレイ8やコントローラ2のLCDディスプレイ25に表示しても良い。
また、作業者が再度通信確立を行いたい場合には、操作可能領域(状態)の中に入り、教示装置3からコントローラ2に対して、無線確立要求を発行して、無線通信の通信確立を行う。
【0034】
本方式によれば、無線通信4による操作可能領域(状態)から外に出る直前に無線通信の確立を解放することで、無線通信のデータが正常に処理されている間に確立解放を行うことができる。また、他のコントローラと接続する際に、元のコントローラとの確立解放の手順を省略することができる。また、無線使用が停止された無線チャンネルを空け、他のコントローラと教示装置3との間で使用することができるので、チャンネル数に制限がある無線通信を効率的に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、溶接・塗装・組立等を用途とする産業用ロボットの無線化された教示装置において、無線通信の通信データのLIVE信号の検出時間間隔を監視することで、作業者に無線通信障害の状態を提示して、作業者が知らずに操作不可能状態からロボットを操作することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施例におけるロボットシステムの構成図
【図2】本発明の第1実施例における教示装置の詳細図
【図3】本発明の第1実施例におけるロボットシステムの詳細図
【図4】本発明の第1実施例における信号伝達図
【図5】本発明の第2実施例におけるロボットシステムの動作図
【図6】従来のロボットシステムの構成図
【図7】従来の教示装置の詳細図
【符号の説明】
【0037】
1 ロボット
2 コントローラ
3 教示装置
4 無線通信
5 筐体
6 ハンド部
7 キーボード
8 LCDディスプレイ
9 非常停止スイッチ
10 アンテナ
11 バッテリ
12 電源スイッチ
13 第1のLIVE信号監視部
14 教示装置通信部
21 制御部
22 サーボアンプ
23 駆動モータ
24 アンテナ
25 LCDディスプレイ
26 第2のLIVE信号監視部
27 コントローラ通信部
101 ロボット
102 制御部
103 教示装置
104 ケーブル
105 筐体
106 ハンド部
107 キーボード
108 LCDディスプレイ
109 非常停止スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の駆動機構を備える機構部と、前記機構部を駆動制御するコントローラと、前記機構部を操作するための教示装置を備える自動機械システムにおいて、
前記教示装置は、前記コントローラとの無線通信を行う教示装置通信部と、
前記教示装置通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する第1のLIVE信号監視部と、を備え、
前記コントローラは、前記教示装置との無線通信を行うコントローラ通信部と、
前記コントローラ通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する第2のLIVE信号監視部と、
前記コントローラ通信部にて受信した前記教示装置からの指令信号に基づいて前記機構部を駆動する駆動部と、を備えることを特徴とする自動機械システム。
【請求項2】
前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が第2の閾値を超えた場合は、前記機構部の駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載の自動機械システム。
【請求項3】
前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が第1の閾値を超えた場合は、作業者に対し警告を発することを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載の自動機械システム。
【請求項4】
前記第1のLIVE信号監視部が発する警告は、ディスプレイ表示、音、または振動のいずれかによるものであることを特徴とする請求項3に記載の自動機械システム。
【請求項5】
前記第2のLIVE信号監視部が発する警告は、ディスプレイ表示、音、または前記コントローラに接続された外部機器への信号出力のいずれかによるものであることを特徴とする請求項3に記載の自動機械システム。
【請求項6】
前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔の閾値をパラメータとして保持することを特徴とする請求項1に記載の自動機械システム。
【請求項7】
前記第1または前記第2のLIVE信号監視部は、使用していた無線チャンネルの解放を行うことを特徴とする請求項2に記載の自動機械システム。
【請求項8】
1つ以上の駆動機構を備える機構部を駆動制御するコントローラと、前記機構部を操作する教示装置と、を備える自動機械システムにおいて、
前記教示装置は、前記コントローラと無線通信を行い、一定周期毎にLIVE信号を監視するとともに、
前記コントローラは、前記教示装置と無線通信を行い、一定周期毎にLIVE信号を監視し、
前記教示装置または前記コントローラは、前記LIVE信号の検出時間間隔が第1の閾値を超えた場合は、警告を発し、第2の閾値を超えた場合は、前記機構部の駆動を停止することを特徴とする自動機械システムの無線通信方法。
【請求項9】
自動機械の駆動機構を駆動制御するコントローラとの無線通信を行う教示装置通信部と、前記教示装置通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する前記LIVE信号監視部と、を備え、前記自動機械を操作するための教示装置において、
前記LIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が所定の閾値を超えた場合は、作業者に対し所定の警告を発することを特徴とする教示装置。
【請求項10】
前記所定の警告は、ディスプレイ表示、音、または振動のいずれかによるものであることを特徴とする請求項9に記載の教示装置。
【請求項11】
前記所定の警告は、音または振動によるものであり、前記LIVE信号の検出時間間隔が前記所定の閾値に近づくに従い、前記音または前記振動が次第に大きくなることを特徴とする請求項9に記載の教示装置。
【請求項12】
前記所定の警告は、音または振動によるものであり、前記LIVE信号の検出時間間隔が前記所定の閾値に近づくに従い、前記音または前記振動の出力間隔が次第に短くなることを特徴とする請求項9に記載の教示装置。
【請求項13】
自動機械を操作するための教示装置との無線通信を行うコントローラ通信部と、前記コントローラ通信部で一定周期毎にLIVE信号を監視する前記LIVE信号監視部と、を備え、前記自動機械の駆動機構を駆動制御するコントローラにおいて、
前記LIVE信号監視部は、前記LIVE信号の検出時間間隔が所定の閾値を超えた場合は、作業者に対し所定の警告を発することを特徴とするコントローラ。
【請求項14】
前記所定の警告は、ディスプレイ表示、音、または前記コントローラに接続された外部機器への信号出力のいずれかによるものであることを特徴とする請求項13に記載のコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−233817(P2007−233817A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56085(P2006−56085)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】