説明

旧ゴムゲージ測定機

【課題】測定値のバラツキを少なくすることで、測定精度を向上させた。
【解決手段】旧ゴムゲージ測定機1は、スチールベルト層31のベルト外周面Lcまでの第1測定距離D1を測定する渦電流センサー21と、渦電流センサー21に接して固定され、バフタイヤ30の外周面までの第2測定距離D2を測定するレーザー変位センサーとを備えている。渦電流センサー21の検出コイル21a及びレーザー変位センサー22の検出端22aは、固定された回転軸を中心に回転するバフタイヤ30の外周面Laより一定距離をもって固定されている。両センサー21、22のセンサー間距離D3は一定であり、第1測定距離D1とセンサー間距離D3の和から第2測定距離D2を減じることで旧ゴムゲージGが算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更生用バフタイヤの外周面からベルト層までを測定する旧ゴムゲージ測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、更生タイヤの更生方法は、タイヤの金型を使用するモールド加硫方式(ホット更生方式)と、金型を使用せず既に加硫されたパターン付きトレッドをタイヤに貼り付け加硫間で加硫するプレキュア更生方式(コールド更生方式)とがある。いずれの方式にしても更生に供されるバフタイヤは、まずバフ工程でトレッド部を削り所用の形状にするが、このバフ実施後のバフタイヤについて埋設されたベルト層から外周面までの厚さ(旧ゴムゲージ)が更生タイヤの性能(特に発熱耐久性やP走行性)を決定する重要な要素になっている。
この旧ゴムゲージの測定は、ベルト層に達するまで削り、スケールなどでその深さ(旧ゴムゲージ)を手作業で測定していたが、手作業による測定は、手間がかかるうえ、測定数が少ないと信頼性も低いといった欠点があった。
そこで、このような問題に対応するために渦電流センサー或いは金属検知センサーによって測定する旧ゴムゲージを測定する方法が、例えば特許文献1、2に開示されている。
特許文献1、2は、一対の車輪を備えた台車形状の支持部材に渦電流センサー(特許文献2では金属検知センサー)を支持させてなる旧ゴムゲージの測定機である。これによると、測定機の一対の車輪を回転可能に設けたバフタイヤの外周面に接触させ、バフタイヤを回転させることで渦電流センサーがバフタイヤの周面から一定距離を保ってトレースする。そして、渦電流センサーによって測定されたセンサー測定端とベルト層との距離から、センサーとバフタイヤの外周面までの固定距離の距離差(すなわちベルト層上の旧ゴムゲージに相当)を算出するものである。
【特許文献1】特開2002−86586号公報
【特許文献2】特開昭58−001546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2では、下記のような問題があった。
バフ作業前の更生されるバフタイヤの外周面(旧ゴムゲージ)がタイヤ全周にわたって均一であるとは限らない。このことから、このバフタイヤの外周面に接触して回転する支持部材の車輪及びこの車輪に支持されてなる渦電流センサーなどは、バフタイヤの回転による振動の影響を受け、測定値にバラツキが発生し、測定精度が低下するといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、測定値のバラツキを少なくすることで、測定精度を向上させた旧ゴムゲージ測定機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る旧ゴムゲージ測定機は、バフタイヤの外周面からベルト層のベルト外周面までの旧ゴムゲージを測定する旧ゴムゲージ測定機であって、ベルト層のベルト外周面までの第1測定距離を測定する渦電流センサーと、渦電流センサーに並んで設けられ、バフタイヤの外周面までの第2測定距離を測定するレーザー変位センサーとを備え、渦電流センサー及びレーザー変位センサーは、各々の測定端が固定された回転軸を中心に回転するバフタイヤの外周面より一定距離をもって固定されていることを特徴としている。
本発明では、渦電流センサー及びレーザー変位センサーによって回転軸を回転するバフタイヤの全周にわたって測定することで、渦電流センサーではその測定端からベルト層のベルト外周面までの第1測定距離を測定でき、レーザー変位センサーではその測定端からバフタイヤの外周面までの第2測定距離を測定できる。渦電流センサー及びレーザー変位センサーの各測定端が並んで設けられているため、両センサーの距離(センサー間距離)は一定となる。例えば渦電流センサーの測定端がレーザー変位センサーの測定端よりもバフタイヤ側に設けられているときは、第1測定距離とセンサー間距離の和から第2測定距離を減じることで旧ゴムゲージを算出することができる。そして、渦電流センサー及びレーザー変位センサーは共に、回転軸中心に回転するバフタイヤの外周面から一定の距離をもって非接触状態で固定されているため、回転するバフタイヤの振動の影響を受けることなく測定できる。
【0006】
また、本発明に係る旧ゴムゲージ測定機では、渦電流センサー及びレーザー変位センサーの各測定端は、回転可能に設けたバフタイヤの径方向に向けて設けられていることが好ましい。
本発明では、渦電流センサーによって測定された第1測定距離と、レーザー変位センサーによって測定された第2測定距離との両測定値より、径方向の旧ゴムゲージを算出できるため、バフ外周面の設定を容易に行うことができる。
【0007】
また、本発明に係る旧ゴムゲージ測定機では、渦電流センサー及びレーザー変位センサーは、バフタイヤに非接触で設けられた固定架台に固定されていることが好ましい。
本発明では、固定架台が回転するバフタイヤに接触していないため、固定架台に取り付けられた渦電流センサー及び前記レーザー変位センサーもバフタイヤに接することがない。そのため、回転による振動の影響を受けることなく測定できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の旧ゴムゲージ測定機によれば、バフタイヤに対して渦電流センサー及び変位センサーは、バフタイヤの外周面から所定の距離をもって非接触状態で固定されているため、バフタイヤの外周面に対して非接触で測定することができる。したがって、従来のように測定機を直接或いは間接的にバフタイヤの外周面に接触させて測定する測定機と比較して、接触による振動がないことから、測定値の測定誤差を少なくすることができ、測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の旧ゴムゲージ測定機の実施の形態について、図1及び図2に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による旧ゴムゲージ測定機の全体概要を示す側面図、図2は旧ゴムゲージ測定機の測定部を示す部分断面図である。
【0010】
図1及び図2に示すように、本実施の形態による旧ゴムゲージ測定機1は、バフ作業(仮バフ作業或いは本バフ作業)前に更生用のバフタイヤ30を所定のバフ外周面Lbまで削る更生工程に適用され、このバフ外周面Lbを設定するものである。すなわち、バフタイヤ30内のスチールベルト層31(ベルト層)を検出してそのベルト外周面Lcの上方の残留ゴムの肉厚(以下、「旧ゴムゲージG」とする)を測定し、この旧ゴムゲージGが最適値に達するまで自動的にバフタイヤ30のトレッド部を研削するものである。
【0011】
次に、この旧ゴムゲージ測定機1の詳細構成について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、旧ゴムゲージ測定機1は、リム(図示省略)を装着したバフタイヤ30の回転軸30aが支持基台11に装着されて固定位置で回転可能に支持されている。そして、バフタイヤ30の外周面Laから一定距離をもって測定部20が固定架台12の所定位置に固定されている。
ここで、バフタイヤ30の概略構成について説明しておく。図2では、更生されたバフタイヤ30の輪郭を二点鎖線で示しており、バフタイヤ30内には、上述したようにスチールベルト層31が埋設されている。そして、図2に示すバフタイヤ30の外周面Laを実線で示し、バフ作業によるバフ外周面Lbを点線で示している。
【0012】
図2に示すように、旧ゴムゲージ測定機1の測定部20は、渦電流センサー21と、この渦電流センサー21に接して固定されているレーザー変位センサー22とからなる。
渦電流センサー21は、その検出コイル21a(渦電流センサーの測定端)を、回転可能に設けたバフタイヤ30の径方向に向け、バフタイヤ30の外周面Laに対向させるように近接させて配置されている。この渦電流センサー21によると、検出コイル21aに高周波電流を流すことで磁束を誘起し、この磁束の変化によりスチールベルト層31に渦電流が発生する。この渦電流は磁束を誘起して検出コイル21aに作用してインピーダンス変化を起こすため、この検出コイル21aのインピーダンス変化から距離信号を電圧で取り出すことができる。この検出電圧は、渦電流センサー21からスチールベルト層31のベルト外周面Lcまでの距離(第1測定距離D1)をなしている。このように、渦電流センサー21によってバフタイヤ30の外周面Laから所定の距離を保ってトレースすることで、第1測定距離D1が測定される。
【0013】
一方、レーザー変位センサー22は、レーザーを用いた発光素子と光位置検出素子とを組み合わせて構成される検出端22a(レーザー変位センサー22の測定端)を有している。そして、その検出端22aは、回転可能に設けたバフタイヤ30の径方向に向けて配置されている。このときの検出端22aの位置は、前記渦電流センサー21の検出コイル21aの位置より上方(すなわちバフタイヤ30の外周面Laから離れる方向)に設けられている。
そして、検出端22aからバフタイヤ30の外周面Laにレーザー光を照射させ、その外周面Laから拡散反射されたレーザー光の一部を検出端22aの光位置検出素子で検出することで、検出端22aから外周面Laまでの変位量(すなわち第2測定距離D2)が測定される。
このように、渦電流センサー21とレーザー変位センサー22を使用することで、バフタイヤ30の全周にわたって夫々の測定距離D1、D2が測定されることになる。
【0014】
次に、旧ゴムゲージGの算出方法につて説明する。
図2に示すように、渦電流センサー21の検出コイル21aと、レーザー変位センサー22の検出端22aとの間のセンサー間距離D3が一定に固定されていることから、旧ゴムゲージGは下式に基づいて算出することができる。すなわち、第1測定距離D1とセンサー間距離D3との和から、第2測定距離D2を減じることで旧ゴムゲージGを算出することができる。
旧ゴムゲージG=(第1測定距離D1+センサー間距離D3)−第2測定距離D2
そして、この算出した旧ゴムゲージGから任意のバフ外周面Lbを設定し、このバフ外周面Lbを管理することで、高精度なタイヤ更生作業を行うことができる。
【0015】
なお、レーザー変位センサー22は、例えば粗面に対する測定誤差(バラツキ)が±0.1mm以下の高精度なセンサーを採用することで、渦電流センサー21とレーザー変位センサー22を組み合わせて測定、算出された旧ゴムゲージGを精度よく測定することができる。
また、バフ作業時の旧ゴムゲージGを精度よく管理することができることから、例えば旧ゴムゲージGが極端に厚い部分に再バフ作業や部分バフ作業などを施して製品のユニフォーミティ・バランス量(タイヤの寸法、剛性、重量の不均一性)を改善させる場合に、この改善作業をより高い精度で行なうことができる。
【0016】
上述した本実施の形態による旧ゴムゲージ測定機では、バフタイヤ30に対して測定部20をなす渦電流センサー21及びレーザー変位センサー22は、バフタイヤ30の外周面Laから所定の距離をもって非接触状態で固定されているため、バフタイヤ30の外周面Laに対して非接触で測定することができる。したがって、従来のように測定機を直接或いは間接的にバフタイヤの外周面に接触させて測定する測定機と比較して、接触による振動がないことから、測定値の測定誤差を少なくすることができ、測定精度を向上させることができる。
【0017】
以上、本発明による旧ゴムゲージ測定機の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態ではまた、渦電流センサー21とレーザー変位センサー22同士が接して固定されているが、接して配列させることに限定されず、両センサー21、22間に隙間を設けて配置されてもかまわない。ただし、測定誤差を少なくするために、できるだけ接近させて設けることが好ましい。また、渦電流センサー21とレーザー変位センサー22は、バフタイヤ30の回転方向に配列されているが、例えば両センサー21、22をバフタイヤ30の幅方向に並列させて配置させてもかまわない。
また、渦電流センサー21及びレーザー変位センサー22の固定位置(バフタイヤ30から離間)は、各センサー21、22の測定値の誤差が少ない最適な位置とすることは言うまでもない。すなわち、本実施の形態では渦電流センサー21の検出コイル21aがレーザー変位センサー22の検出端22aより下方(バフタイヤ30側)に配置されているが、これに限定されず、例えば図3(a)に示すようにレーザー変位センサー22が渦電流センサー21よりバフタイヤ30側に設けることができる。この場合、旧ゴムゲージGの算出では、第1測定距離D1とセンサー間距離D3との差から、第2測定距離D2を減じることになる。また、図3(b)に示すように両センサー21、22の測定端(検出コイル21a、検出端22a)を同位置に設けたりすることもできる。この場合、センサー間距離D3はゼロであることから、第1測定距離D1から第2測定距離D2を減じることで旧ゴムゲージGを算出することができる。
さらに、本実施の形態では測定部20を固定する固定架台12や、バフタイヤ30を回転させる支持基台11の形状、構成は本実施の形態に限定されることはない。要は、バフタイヤ30がその回転軸30aを中心に回転し、測定部20が所定位置に固定できるように構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態による旧ゴムゲージ測定機の全体概要を示す側面図である。
【図2】旧ゴムゲージ測定機の測定部を示す部分断面図である。
【図3】(a)、(b)は本実施の形態の変形例による旧ゴムゲージ測定機の測定部を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 旧ゴムゲージ測定機
20 測定部
21 渦電流センサー
21a 検出コイル(渦電流センサーの測定端)
22 レーザー変位センサー
22a 検出端(レーザー変位センサーの測定端)
30 バフタイヤ
31 スチールベルト層(ベルト層)
La 外周面
Lb バフ外周面
Lc ベルト外周面
D1 第1測定距離
D2 第2測定距離
D3 センサー間距離
G 旧ゴムゲージ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
バフタイヤの外周面からベルト層のベルト外周面までの旧ゴムゲージを測定する旧ゴムゲージ測定機であって、
前記ベルト層のベルト外周面までの第1測定距離を測定する渦電流センサーと、
該渦電流センサーに並んで設けられ、前記バフタイヤの外周面までの第2測定距離を測定するレーザー変位センサーと、
を備え、
前記渦電流センサー及び前記レーザー変位センサーは、各々の測定端が固定された回転軸を中心に回転する前記バフタイヤの外周面より一定距離をもって固定されていることを特徴とする旧ゴムゲージ測定機。
【請求項2】
前記渦電流センサー及び前記レーザー変位センサーの各測定端は、回転可能に設けた前記バフタイヤの径方向に向けて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の旧ゴムゲージ測定機。
【請求項3】
前記渦電流センサー及び前記レーザー変位センサーは、前記バフタイヤに非接触で設けられた固定架台に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の旧ゴムゲージ測定機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−212278(P2007−212278A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32140(P2006−32140)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】