説明

易剥離性一液湿気硬化型接着剤

【課題】 床下地材と床材の接着施工に用いる接着剤であって、床下地材に塗布しやすく、しかも接着後、高剪断接着強さで床材の拘束性に優れており、かつ、床下地材から床材を剥離する際、低割裂接着強さ及び低破壊エネルギーで剥離しうる易剥離性一液湿気硬化型接着剤を提供する。
【解決手段】 この接着剤は、粉体成分(X):液体成分(Y)=1.0〜2.0:1(重量比)の組成を持つ。粉体成分(X)は、中空粉体(a):中実粉体(b)=1.0〜3.3:1(容積比)からなる。中空粉体(a)と中実粉体(b)は、充填材として機能する。液体成分(Y)は、湿気によって反応硬化する加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c):高分子重合体を主体とする非反応性の液状成分(d)=c:d=0.5〜2.5(ただし、0.5を除く。)(重量比)からなる。全成分が均一に混合されて、粘度10〜150Pa・s程度の接着剤となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下地材や壁下地材等の下地材に、床材や壁材等の表面材を接着施工する際に用いる易剥離性一液湿気硬化型接着剤に関し、特に接着施工した後、容易に表面材を剥離でき、住宅等において、床材等の表面材の貼り替え作業が合理化しうる易剥離性一液湿気硬化型接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅や戸建て住宅等では、床材等の表面材を、床下地材等の下地材表面に接着剤で接着施工することがしばしば行われている。そして、住宅リフォームの際に、床材等の表面材を下地材から剥離して、新しい表面材を再度接着施工することも、行われている。
【0003】
このような接着施工に用いられる接着剤は、下地材と表面材とを接着した後において、以下のような特性を持っていることが要求されている。
(1)表面材が温度や湿度の影響で、平面方向に伸縮しようとしても、それを拘束しうる程度に、下地材に接着固定されているという特性が要求されている。すなわち、表面材と下地材との間での剪断接着強さが高いという特性が要求されているのである。
(2)下地材から表面材を剥離する際に、下地材や表面材、特に下地材を破壊せずに、容易に剥離しうることという特性が要求されている。すなわち、表面材と下地材との間で割裂接着強さが低い或いは剥離する際の破壊エネルギーが低いという特性が要求されているのである。
【0004】
上記(1)及び(2)の要求特性を満足する接着剤として、湿気によって反応硬化するポリウレタンプレポリマー100重量部に対して、中空粉体を20重量%以上含有する充填材300〜1000重量部添加配合したポリウレタン系接着剤が提案されている(特許文献1)。また、湿気によって反応硬化する加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー100重量部に対して、充填材144重量部以上添加配合した変成シリコーン系接着剤も提案されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献1及び2記載の技術は、いずれも、反応硬化型ポリマー100重量部に対して、充填材300重量部以上又は144重量部以上添加配合し、上記(1)及び(2)の特性を満足させようというものである。すなわち、接着剤中の充填材量によって、上記(1)及び(2)の特性を満足させようというものである。しかし、充填材量の調整によるだけでは、上記(1)及び(2)の特性を満足できても、接着剤の重量が重くなったり、接着剤がぱさついたりして、塗布しにくくなるという憾みがあった。
【0006】
このため、本件出願人は、接着剤中の充填材量だけではなく、接着剤中に、非反応性の高分子重合体を含有する液状成分を、所定量添加混合することによって、上記(1)及び(2)の特性を満足させうると共に、接着剤が塗布しにくくなるのを防止した易剥離性一液湿気硬化型接着剤を提案した(特許文献3)
【0007】
【特許文献1】特開2004−307788公報(特許請求の範囲の項)
【特許文献2】特表2007−508402公報(特許請求の範囲の項)
【特許文献3】特願2007−189359(特許請求の範囲の項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に開示された易剥離性一液湿気硬化型接着剤は、粉体成分(X)と液体成分(Y)とが混合されてなり、前記粉体成分(X)は、充填材として機能する中空粉体(a)と中実粉体(b)とからなり、前記液体成分(Y)は、湿気によって反応硬化する加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と、高分子重合体を主体とする非反応性の液状成分(d)とからなり、前記粉体成分(X)と前記液体成分(Y)の割合は、重量比で、X:Y=1.5〜2.7:1であり、前記中空粉体(a)と前記中実粉体(b)の割合は、容積比で、a:b=0.3〜2.0:1であり、前記加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と前記液状成分(d)の割合は、重量比で、c:d=0.2〜0.5:1であるというものである。そして、この易剥離性一液湿気硬化型接着剤は、上記(1)及び(2)の特性を満足させるものである。
【0009】
しかるに、表面材及び下地材の種類或いは表面材の剥離方法によっては、上記(1)の特性を若干向上させると共に、上記(2)の特性を若干低下させる方が好ましい場合があった。すなわち、表面材と下地材との間での剪断接着強さをより高くすると共に、表面材と下地材との間で割裂接着強さ或いは剥離する際の破壊エネルギーは少々高くなっても差し支えないという場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような要求に答えるため、液体成分(Y)中の加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)の量を、特許文献3で開示された量に比べて多くするという手段を採用したものである。すなわち、本発明は、粉体成分(X)と液体成分(Y)とが混合されてなり、前記粉体成分(X)は、充填材として機能する中空粉体(a)と中実粉体(b)とからなり、前記液体成分(Y)は、湿気によって反応硬化する加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と、高分子重合体を主体とする非反応性の液状成分(d)とからなり、前記粉体成分(X)と前記液体成分(Y)の割合は、重量比で、X:Y=1.0〜2.0:1であり、前記中空粉体(a)と前記中実粉体(b)の割合は、容積比で、a:b=1.0〜3.3:1であり、前記加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と前記液状成分(d)の割合は、重量比で、c:d=0.5〜2.5(ただし、0.5を除く。):1であることを特徴とする易剥離性一液湿気硬化型接着剤に関するものである。
【0011】
本発明に係る接着剤は、粉体成分(X)と液体成分(Y)とが混合されてなり、好ましくは均一に混合されているものである。粉体成分(X)の主体は充填材である。液体成分(Y)は、湿気によって反応硬化する加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と、高分子重合体を主体とする非反応性の液状成分(d)とからなる。
【0012】
粉体成分(X)は、基本的に充填材として機能するものであるが、中空粉体(a)と中実粉体(b)の組み合わせが採用される。この理由は、以下のとおりである。すなわち、特許文献1及び2に記載されているように、接着剤中に一定重量の粉体成分(X)を添加配合しておかないと、接着後に易剥離性を与えることができない。中空粉体(a)だけで一定重量を添加配合しようとすると、中空粉体は低比重であるため、接着剤中に占める中空粉体(a)の体積が過大となり、接着剤がぱさつき塗布しにくくなる。また、中実粉体(b)だけで一定重量を添加配合しようとすると、中実粉体は高比重であるため、接着剤が重くなって、塗布作業性が悪くなる。したがって、接着後に易剥離性を与えながら、接着剤の塗布性を良好にするには、中空粉体(a)と中実粉体(b)を組み合わせる必要がある。
【0013】
充填材として機能する中空粉体(a)及び中実粉体(b)としては、従来より接着剤に用いられている公知のものであれば、どのようなものでも用いうる。中空粉体(a)は空洞を持つ粉体のことであり、中実粉体(b)はこのような中空粉体(a)以外の粉体のことである。具体的には、中空粉体(a)としては、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、ゼオライト、プラスチックバルーン、火山灰土、メサライト及び/又はアサノライト等が用いられる。また、中実粉体(b)としては、炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、セメント、珪砂、二酸化チタン、ガラスビーズ及び/又はポリマービーズ等が用いられる。中空粉体(a)及び中実粉体(b)共に、その粒径は、1〜500μm程度のものが用いられる。
【0014】
液体成分(Y)は、湿気によって反応硬化する加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と、高分子重合体を主体とする非反応性の液状成分(d)とからなる。液体成分(Y)が、(c)成分と(d)成分からなる理由は、以下のとおりである。すなわち、(c)成分は反応硬化するポリマーであり、接着剤の主成分であって接着強度に最も寄与するものである。接着後において易剥離性とするためには、この(c)成分を粉体成分(X)に対して少なくしなければならない。しかしながら、(c)成分は液体成分(Y)を構成するものであるから、これを少なくすると、接着剤がぱさついて塗布しにくくなる。このぱさつきを防止するために、非反応性の液状成分(d)を加えたのである。また、接着剤のぱさつきを防止するためだけならば、非反応性の液状成分(d)として、低分子量の可塑剤を用いることも可能であるが、低分子量の可塑剤だけでは接着剤の流動性が大となり、所定の箇所に所定の厚さで接着剤を塗布しにくくなり、下地材と表面材との間に十分な剪断接着強さを与えにくくなる。
【0015】
本発明において、加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)を用いる理由は、これが接着剤皮膜を形成した場合、エポキシ樹脂やポリウレタンプレポリマーの場合に比べて、凝集力が低く、剥離する際に凝集破壊が生じやすく易剥離性となるからである。加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)の数平均分子量は、3000〜20000であることが好ましい。数平均分子量が3000未満であると、割裂接着強さ及び剥離接着強度が高くなる傾向が生じる。また、数平均分子量が20000を超えると、液体成分(Y)の粘度が上がり、接着剤を塗布しにくくなる傾向が生じる。
【0016】
加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)としては、主鎖がアルキレンオキシド単量体単位を含み、加水分解性シリル基を1分子あたり少なくとも1個、好ましくは2個以上有するポリマーであれば、どのようなもので使用しうる。すなわち、従来公知のいわゆる変成シリコーンポリマーと呼称されるものや、分子内にウレタン結合や尿素結合と加水分解性シリル基とを有するポリマー(特許第3317353号、特許第3030020号、特許第3471667号、特許第3343604号、特表2004−518801及び特表2005−501146)を、単独で又は混合して用いることができる。前記したような、加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)のことを、従来の呼称に準じて、「変成シリコーンポリマー(c)」と称する。加水分解性シリル基は、ポリマー分子内の末端に存在していても、側鎖に存在していてもよく、また、両方に存在していてもよい。変成シリコーンポリマー(c)の主鎖は、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの1種又は2種以上が重合してなるものである。好ましくは、入手が容易であることから、主鎖がプロピレンオキサイド(−CH2CH(CH3)O−)の繰り返し単位からなる変成シリコーンポリマー(c)を用いるのがよい。
【0017】
加水分解性シリル基は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を有し、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こしてシロキサン結合を形成することにより架橋しうるケイ素含有基である。たとえば、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が好適に用いられる。特に、取り扱いが容易である点で、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基は、特に限定されないが、原料の入手が容易なことからメトキシ基、エトキシ基又はプロポキシ基が好適に用いられる。アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基は、特に限定されず、たとえば、水素原子又は炭素原子数が20以下である、アルキル基、アルケニル基若しくはアリールアルキル基等が用いられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基が好ましい。
【0018】
なお、変成シリコーンポリマー(c)の市販品としては、たとえば、カネカ社製のMSポリマー S203、S303、S810、SILYL EST250、EST280、SAT200又はSAT400、旭硝子社製のEXCESTAR ES−S2410、ES−S2420又はES−S3430等が用いられる。
【0019】
液体成分(Y)に含有されている液状成分(d)は、非反応性のものである。ここで、非反応性とは、変成シリコーンポリマー(c)が湿気によって反応硬化するのに対して、液状成分(d)はこのような反応硬化が生じないという意味である。液状成分(d)の主体は、液状の高分子重合体であり、一般的には液状成分(d)中に50重量%以上含有されている。高分子重合体の数平均分子量は、400〜5000であることが好ましい。数平均分子量が400未満であると、低粘度すぎて、得られる接着剤の流動性が大となり、所定の箇所に所定の厚さで接着剤を塗布しにくくなり、下地材と表面材との間に十分な剪断接着強さを与えにくくなる。また、数平均分子量が5000を超えると、高粘度すぎて、得られた接着剤のぱさつきを防止しにくくなる。
【0020】
液状の高分子重合体としては、ポリオキシアルキレンポリマー、キシレン樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、アクリルポリマー等が用いられる。特に、ポリオキシアルキレンポリマーは、変成シリコーンポリマー(c)との相溶性に優れているため、本発明において好適に用いられる。ポリオキシアルキレンポリマーは、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの1種又は2種以上が重合してなるものである。ポリオキシアルキレンポリマーの中でも、プロピレンオキサイドを重合してなるポリプロピレングリコール[(−CH2CH(CH3)O−)n]が、入手が容易であることと、変成シリコーンポリマー(c)との相溶性に優れていることから、好適である。なお、ポリオキシアルキレンポリマーの末端は、一般的には水酸基であるが、これを変性して、末端をアルキル基やアリル基としてもよい。
【0021】
なお、液状の高分子重合体の市販品としては、たとえば、旭硝子社製 EXCENOL 2020、PREMINOL 3050、アデカ社製 P−700、P−1500、LX−749、LX1164、東亞合成社製 ARUFON UP- 1000、UP−1110、フドー社製 ニカノールL、ニカノールLL、出光サートマー社製 Poly bd R −45HT、Poly ip、KRASOL LBH 2000、LBH−P 3000等を用いることができる。
【0022】
液状成分(d)の主体は、液状の高分子重合体であるが、これ以外に非反応性の液状の低分子化合物が含有されていてもよい。高分子重合体のみでは、得られる接着剤の粘度の微調整を行いにくいため、低分子化合物が用いられるのである。低分子化合物としては、従来から接着剤に添加配合されていた可塑剤と呼称されるものであれば、どのようなものでも用いることができる。具体的には、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル類、ペンタエリスリトール等のグリコールエステル類、オレイン酸メチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル類、プロピレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドン、塩化パラフィン類、スルホン酸エステル類、ナフテン系又はパラフィン系炭化水素、イソパラフィン、鉱油、α−オレフィンオリゴマー又はそれらの水添体、アルキルベンゼン類等が単独で又は混合して用いられる。
【0023】
粉体成分(X)と液体成分(Y)の混合割合、粉体成分(X)中の中空粉体(a)と中実粉体(b)の混合割合、液体成分(Y)中の変成シリコーンポリマー(c)と非反応性の液状成分(d)の混合割合は、以下のとおりである。まず、粉体成分(X)と液体成分(Y)の混合割合は、重量比で、X:Y=1.0〜2.0:1である。特許文献3で開示した粉体成分(X)と液体成分(Y)の混合割合は、重量比で、X:Y=1.5〜2.7:1であるから、これに比べて、粉体成分(X)が相対的に少なくなる方向にシフトしている。この理由は、粉体成分(X)の割合を少なくして、表面材と下地材との間での剪断接着強さをより高くするためである。
【0024】
中空粉体(a)と中実粉体(b)の混合割合は、容積比で、a:b=1.0〜3.3:1である。ここで、この割合を容積比としたのは、両者の比重が大きく相違するため、粉体成分(X)中に占める割合を表すには、容積比の方が的確だからである。また、容積比は、各々の重量を密度で除して容積を算出し、その比を求めたものである。特許文献3で開示した中空粉体(a)と中実粉体(b)の混合割合は、容積比で、a:b=0.3〜2.0:1であるから、これに比べて、中空粉体(a)の容積割合が相対的に多くなる方向にシフトしている。この理由は、本発明においては、接着成分である加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)の量を増加させているので、粉体成分(X)中の中空粉体(a)の容積割合も増加させて、表面材と下地材との間で割裂接着強さや剥離する際の破壊エネルギーが高くなるのを抑制するためである。
【0025】
変成シリコーンポリマー(c)と非反応性の液状成分(d)の混合割合は、重量比で、c:d=0.5〜2.5(ただし、0.5を除く。):1である。なお、括弧書きで「ただし、0.5を除く。」とあるのは、特許文献3で開示されたc:d=0.5:1を除く趣旨である。c:d=0.5未満:1であると、反応硬化する変成シリコーンポリマー(c)が少なすぎて、本発明で所望する剪断接着強さが得られないので、好ましくない。逆に、c:d=2.5超:1であると、変成シリコーンポリマー(c)が多くなりすぎて、接着後の割裂接着強さや剥離する際の破壊エネルギーが、本発明で所望する範囲を超えてしまい、下地材と表面材との間に易剥離性を実現しにくくなる。
【0026】
以上のとおり、本発明に係る易剥離性一液湿気硬化型接着剤は、中空粉体(a)と中実粉体(b)が、所定の割合で混合されてなる粉体成分(X)と、変成シリコーンポリマー(c)と液状成分(d)が、所定の割合で混合されてなる液体成分(Y)とを、常法によって所定の割合で混合して製造されるものである。本発明においては、(a)、(b)、(c)及び(d)成分以外に、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、硬化触媒、シランカップリング剤、各種添加剤等を含有させることができる。
【0027】
硬化触媒としては、変成シリコーンポリマー(c)の硬化を促進させるため、従来より用いられていたものであれば、どのようなものでも使用することができる。具体的には、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物、有機チタン化合物等の有機金属化合物、アミン化合物等の塩基性化合物、リン酸系化合物等の酸性化合物、三フッ化ホウ素及び/又はその誘導体等が用いられる。シランカップリング剤としても、従来公知のものであれば、どのようなものでも使用しうる。具体的には、アミノシラン化合物、エポキシシラン化合物、メルカプトシラン化合物、(メタ)アクリルシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、ビニルシラン化合物等が単独で又は混合して用いられる。また、各種添加剤としても、従来より用いられていたものであれば、どのようなものでも使用することができる。具体的には、粘着付与剤、揺変剤、脱水剤、難燃剤、オリゴマー、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、桐油等の乾性油等が単独で又は混合して用いられる。なお、揺変剤等の添加剤としては、ポリエチレン繊維、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、クレー及び/又はカーボンブラック等が用いられる。
【0028】
以上の(a)、(b)、(c)、(d)成分及びその他の上記した成分を、所定の割合で混合することにより、易剥離性一液湿気硬化型接着剤が得られる。この接着剤は、(a)、(b)、(c)及び(d)成分が所定の割合で混合されているため、BH型粘度計で、23℃の条件下、スピンドルNo.7を用い、20rpmの回転数において、10〜150Pa・sに容易に調整することができる。粘度が10Pa・s未満であると、接着剤の流動性が大となり、所定の箇所に所定の厚さで接着剤を塗布しにくくなり、下地材と表面材との間に所望する剪断接着強さを与えにくくなる。粘度が150Pa・sを超えると、接着剤がぱさついて、下地材や表面材に塗布しにくくなる。
【0029】
本発明に係る易剥離性一液湿気硬化型接着剤は、床下地材や壁下地材等の下地材と、床材や壁材等の表面材の間に適用され、下地材と表面材とを接着して、表面材を接着施工することができる。具体的には、パーティクルボード等の木質ボードよりなる床下地材の表面に、接着剤を塗布した後、カラーフロア等の合板よりなる床材である表面材を積層し、圧締することによって、表面材を接着施工することができる。このような接着施工によって、下地材、接着剤皮膜、表面材の順に積層一体化された接着構造体が得られるのである。そして、本発明に係る易剥離性一液湿気硬化型接着剤は、パーティクルボードよりなる床下地材にカラーフロアよりなる床材を接着施工した場合、特に、床材と床下地材との間に所望の高い剪断接着強さを与えやすく、かつ、床材と床下地材との間で所望の低い割裂接着強さ或いは剥離する際の低い破壊エネルギーを与えやすくなる。なお、下地材としては、上記した木質ボードに限られず、公知の床下地材や壁下地材等が用いられる。たとえば、セメント製や、合板等の木質材が用いられる。また、表面材としては、上記したカラーフロア等の合板に限られず、公知の壁材や床材等が用いられる。たとえば、壁材としては、天然木化粧板、プラスチックオーバーレイ化粧板、メラミン化粧板、化粧ケイ酸カルシウム板、珪藻土板、石膏ボード化粧板、表面化粧金属パネル、MDF等の加工を施した各種造作材、幅木、腰壁等が用いられる。また、床材としては、各種クッション材を裏打した木質(直貼り及び/又は防音)フロア及びそれらクッション材の表面に不織布を貼り合わせたフロア、高分子床材、リノリウム、タイルカーペット、コルクタイル、遮音シート等が用いられる。
【0030】
接着構造体が得られた後、住宅リフォームのために、表面材を貼り替えるには、まず、接着構造体から旧表面材を剥離する。旧表面材を剥離するには、たとえば、バールの先端を旧表面材と旧下地材の間に差し入れて、押し広げ、その後はバールを漸次奥へ差し入れていって、完全に旧表面材を剥離して除去する。また、バールを漸次奥へ差し入れるのに代えて、人手によって旧表面材を完全に剥離して除去してもよい。旧下地材には、接着剤皮膜が残存している場合があるが、このときには、スクレイパー、カッター又は金属ヘラ等を用いて、接着剤皮膜を除去する。そして、旧下地材表面に易剥離性一液湿気硬化型接着剤を塗布した後、新表面材を積層し、圧締することによって、新表面材を接着施工することができる。以上のようにして、住宅リフォームにおける表面材の更新接着施工が完了する。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る易剥離性一液湿気硬化型接着剤は、特定の成分が特定の割合で混合されてなるものであるため、ぱさついたり、流動性が大きくなったりするのを防止でき、下地材表面等に良好に塗布することができる。しかも、これを下地材と表面材の間に適用すると、表面材と下地材との間での剪断接着強さが高く、しかも、割裂接着強さや剥離する際の破壊エネルギーが低い接着構造体を得ることができる。すなわち、表面材が下地材に十分に拘束されているにも拘わらず、下地材から表面材を剥離する際に剥離しやすくなっている。したがって、本発明に係る易剥離性一液湿気硬化型接着剤を用いて、床材や壁材等の表面材を施工しておけば、使用中は床材や壁材等が伸縮するのを防止でき快適な住環境を与える一方、住宅リフォームの際には、床材や壁材等の表面材の貼り替え作業を合理的に且つ容易に行えるという効果を奏する。
【実施例】
【0032】
実施例1
以下の各成分を混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 120重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (266容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 160重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (160容積部)
変成シリコーンポリマー(c) 100重量部
(カネカ社製「SILYL EST280」、数平均分子量約8000)
ポリプロピレングリコール(高分子重合体) 125重量部
(三井化学ポリウレタン社製「P−21」、数平均分子量2000)
ポリα−オレフィン(C20)水添体(低分子重合体) 25重量部
(阪和興業社製「Durasyn 162 」)
ビニルシラン 5重量部
(信越化学工業社製「KBM1003」)
アミノシラン 4重量部
(信越化学工業社製「KBM603」)
スズ系触媒 2重量部
(日東化成社製「U−700」)
なお、液状成分(d)は、上記の高分子重合体と低分子化合物とからなる。
【0033】
実施例2
実施例1において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例1と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 150重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (333容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 200重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (200容積部)
【0034】
実施例3
実施例1において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例1と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 180重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (400容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 240重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (240容積部)
【0035】
実施例4
実施例1において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例1と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 210重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (466容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 280重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (280容積部)
【0036】
比較例1
実施例1において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例1と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 60重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (133容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 80重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (80容積部)
【0037】
比較例2
実施例1において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例1と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 90重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (200容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 120重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (120容積部)
【0038】
比較例3
実施例1において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例1と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 240重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (533容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 320重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (320容積部)
【0039】
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた易剥離性一液湿気硬化型接着剤における、X:YをX/Yで、a:bをa/bで、c:dをc/dで表すと、表1のとおりである。また、各接着剤の粘度(Pa・s)を、BH型粘度計を用い、23℃の条件下、スピンドルNo.7で20rpmの回転数で測定すると、表1に示したとおりであった。
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
比較例 実 施 例 比較例
─────── ─────────────── ─────
1 2 1 2 3 4 3
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
X/Y 0.6 0.8 1.1 1.4 1.7 2.0 2.2
a/b 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7
c/d 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7
粘度 4.0 7.0 16 27 52 88 −
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
表1中、比較例3において粘度の値が「−」となっているのは、接着剤が塗布しにくいものであり、粘度の測定が不能であった。表1から分かるように、X/Yが2.0を超えると、粘度が高くなって、塗布しにくい接着剤しか得られない。
【0040】
実施例1〜4及び比較例1、2で得られた易剥離性一液湿気硬化型接着剤について、以下の接着試験を行い、剪断接着強さ、割裂接着強さ及び破壊エネルギーを測定した。この結果を表2に示した。なお、比較例3に係る接着剤は、ぱさついて、良好な塗布が行えないため、接着試験を行わなかった。
【0041】
[剪断接着強さ(N/mm2)]
JIS K 6852に準じて、アサダ材を被着材として用い、圧縮剪断接着強さ試験を行った。接着剤試料は、その塗布厚が0.3mmとなるように塗布し、接着面積が25×25mmとなるようにアサダ材同士を貼り合わせた。そして、23℃で50%RHの条件下で1日養生した。その後、さらに50℃で30%RHの条件下で2日養生を行った。そして、23℃で2時間放置後、株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AG5000A」を用い、ヘッドスピード5mm/minにて圧縮剪断接着強さを測定した。この測定を三回行い、その平均値を圧縮剪断接着強さとして表2に示した。この値が1.0N/mm2程度以上であると被着体同士が概ね良好な所望の拘束性を示す。
【0042】
[割裂接着強さ(N/25mm)]
アサダ材A(幅25mm、長さ50mm、厚さ5mm)、アサダ材B(幅25mm、長さ40mm、厚さ10mm)及びスペーサ(幅25mm、長さ10mm、厚さ0.3mm)を準備し、図1に示した試験体を作製した。アサダ材Bの片面にはアサダ材Aをあらかじめ酢酸ビニルエマルション系接着剤を用いて接着した。スペーサを取り付けたアサダ材Bのもう片面に接着剤試料を塗布し、アサダ材Aを貼り合わせ幅25mm、長さ20mm、厚さ0.3mmの接着剤層を得た。そして、23℃で50%RHの条件下で1日養生した。その後、さらに50℃30%RHの条件下で2日養生を行った。そして、23℃で2時間放置後、株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AG5000A」を用い、ヘッドスピード50mm/minにて割裂接着強さ試験を行った。この試験を三回行い、その平均値を割裂接着強さとして表2に示した。割裂接着強さが350N/25mm以下であると、下地材を傷めることがなく、概ね良好な所望の剥離性を示す。
【0043】
[破壊エネルギー(J)]
割裂接着強さを株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AG5000A」で測定する際に、当該装置に付属の解析ソフト「TRAPEZIUM2」(同社製)を用い、接着剤層が破断するまでの破壊エネルギーを測定した。これを三回行い、その平均値を破壊エネルギーとして表2に示した。破壊エネルギーが0.5J以下であると、下地材を傷めることがなく、概ね良好な所望の剥離性を示す。
【0044】
[表2]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
比較例 実 施 例
─────── ───────────────
1 2 1 2 3 4
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
剪断接着強さ 0.72 0.91 1.17 1.19 1.49 1.54
割裂接着強さ 177 226 228 296 257 297
破壊エネルギー 0.25 0.30 0.32 0.38 0.28 0.28
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
表2の結果から明らかなように、X/Yが1.0未満になると、剪断接着強さが低くなり、表面材と下地材との間で所望の拘束性が得られない。
【0045】
実施例11
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 184重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (408容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 125重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (125容積部)
【0046】
実施例12
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 173重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (383容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 150重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (150容積部)
【0047】
実施例13
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 127重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (283容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 250重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (250容積部)
【0048】
比較例11
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 206重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (458容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 75重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (75容積部)
【0049】
比較例12
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 195重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (433容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 100重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (100容積部)
【0050】
比較例13
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 116重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (258容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 275重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (275容積部)
【0051】
比較例14
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 105重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (233容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 300重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (300容積部)
【0052】
比較例15
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
フライアッシュ(中空粉体(a)) 82重量部
(sphereTek Industry社製「セノスフィアSA」) (183容積部)
重質炭酸カルシウム(中実粉体(b)) 350重量部
(日東粉化工業社製「NS2300」) (350容積部)
【0053】
実施例11〜13及び比較例11〜15で得られた易剥離性一液湿気硬化型接着剤における、X/Y、a/b、c/d及び粘度を、実施例1の場合と同様に示すと、以下の表3のとおりであった。
[表3]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
比較例 実 施 例 比 較 例
─────── ─────────── ───────────
11 12 11 12 13 13 14 15
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
X/Y 1.1 1.2 1.2 1.3 1.5 1.6 1.6 1.7
a/b 6.1 4.3 3.3 2.6 1.1 0.9 0.8 0.5
c/d 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7 0.7
粘度 46 39 38 32 29 28 33 31
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0054】
また、実施例11〜13及び比較例11〜15で得られた易剥離性一液湿気硬化型接着剤について、実施例1と同様に、剪断接着強さ、割裂接着強さ及び破壊エネルギーを測定した。この結果を表4に示した。
[表4]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
比較例 実 施 例 比 較 例
─────── ─────────── ───────────
11 12 11 12 13 13 14 15
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
剪断接着強さ 0.80 0.89 1.07 1.10 1.45 1.52 1.66 1.70
割裂接着強さ 192 195 248 256 329 360 358 363
破壊エネルギー 0.26 0.25 0.33 0.38 0.51 0.58 0.58 0.58
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
表4の結果から明らかなように、a/bが3.3を大きく超えると、剪断接着強さが低くなり、表面材と下地材との間で所望の拘束性が得られない。また、a/bが1.0未満であると、割裂接着強さ及び破壊エネルギーの両者ともが高くなり、下地材から表面材を剥離しにくくなる。
【0055】
実施例21
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
変成シリコーンポリマー(c) 140重量部
(カネカ社製「SILYL EST280」、数平均分子量約8000)
ポリプロピレングリコール(高分子重合体) 85重量部
(三井化学ポリウレタン社製「P−21」、数平均分子量2000)
【0056】
参考例21
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
変成シリコーンポリマー(c) 80重量部
(カネカ社製「SILYL EST280」、数平均分子量約8000)
ポリプロピレングリコール(高分子重合体) 145重量部
(三井化学ポリウレタン社製「P−21」、数平均分子量2000)
【0057】
比較例21
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
変成シリコーンポリマー(c) 40重量部
(カネカ社製「SILYL EST280」、数平均分子量約8000)
ポリプロピレングリコール(高分子重合体) 185重量部
(三井化学ポリウレタン社製「P−21」、数平均分子量2000)
【0058】
比較例22
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
変成シリコーンポリマー(c) 60重量部
(カネカ社製「SILYL EST280」、数平均分子量約8000)
ポリプロピレングリコール(高分子重合体) 165重量部
(三井化学ポリウレタン社製「P−21」、数平均分子量2000)
【0059】
比較例23
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
変成シリコーンポリマー(c) 180重量部
(カネカ社製「SILYL EST280」、数平均分子量約8000)
ポリプロピレングリコール(高分子重合体) 45重量部
(三井化学ポリウレタン社製「P−21」、数平均分子量2000)
【0060】
比較例24
実施例2において、下記の成分の配合量を下記のとおりに変更した他は、実施例2と同様に混合して、易剥離性一液湿気硬化型接着剤を得た。
変成シリコーンポリマー(c) 200重量部
(カネカ社製「SILYL EST280」、数平均分子量約8000)
ポリプロピレングリコール(高分子重合体) 25重量部
(三井化学ポリウレタン社製「P−21」、数平均分子量2000)
【0061】
実施例21、参考例21及び比較例21〜24で得られた易剥離性一液湿気硬化型接着剤における、X/Y、a/b、c/d及び粘度を、実施例1の場合と同様に示すと、以下の表5のとおりであった。なお、d成分は、ポリプロピレングリコールのみではなく、ポリα−オレフィン(C20)水添体(低分子重合体)(阪和興業社製「Durasyn 162 」)が25重量部含まれている。
[表5]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
比較例 参考例 実施例 比較例
─────── ─── ─── ───────
21 22 21 21 23 24
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
X/Y 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4 1.4
a/b 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7 1.7
c/d 0.2 0.3 0.5 1.3 2.6 4.0
粘度 11 16 18 33 48 61
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0062】
また、実施例21、参考例21及び比較例21〜24で得られた易剥離性一液湿気硬化型接着剤について、実施例1と同様に、剪断接着強さ、割裂接着強さ及び破壊エネルギーを測定した。この結果を表6に示した。
[表6]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
比較例 参考例 実施例 比較例
─────── ─── ─── ───────
21 22 21 21 23 24
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
剪断接着強さ 0.33 0.59 1.05 1.60 1.85 1.82
割裂接着強さ 90 132 213 350 427 443
破壊エネルギー 0.08 0.14 0.22 0.46 0.61 0.57
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
表6の結果から明らかなように、c/dが0.5未満であると、剪断接着強さが1.0N/mm2より低く、下地材に対する表面材の拘束性が不十分となる。また、c/dが2.5を超えると、割裂接着強さが350N/25mmを超えると共に、破壊エネルギーも0.5Jを超えるため、下地材から表面材を剥離しにくくなる。なお、参考例21は本発明の範囲外であるが、剪断接着強さが若干低いものの、本発明の目的とする物性は満足している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】割裂接着強さ及び破壊エネルギーを測定する際に作成する試験体の模式的側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体成分(X)と液体成分(Y)とが混合されてなり、
前記粉体成分(X)は、充填材として機能する中空粉体(a)と中実粉体(b)とからなり、
前記液体成分(Y)は、湿気によって反応硬化する加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と、高分子重合体を主体とする非反応性の液状成分(d)とからなり、
前記粉体成分(X)と前記液体成分(Y)の割合は、重量比で、X:Y=1.0〜2.0:1であり、
前記中空粉体(a)と前記中実粉体(b)の割合は、容積比で、a:b=1.0〜3.3:1であり、
前記加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)と前記液状成分(d)の割合は、重量比で、c:d=0.5〜2.5(ただし、0.5を除く。):1である
ことを特徴とする易剥離性一液湿気硬化型接着剤。
【請求項2】
液状成分(d)中に、高分子重合体が50重量%以上含有されている請求項1記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤。
【請求項3】
高分子重合体が、ポリオキシアルキレンポリマーである請求項1又は2記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンポリマーが、ポリプロピレングリコールである請求項3記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤。
【請求項5】
加水分解性シリル基含有ポリオキシアルキレンポリマー(c)の数平均分子量は3000〜20000であり、
液状成分(d)中の高分子重合体の数平均分子量は400〜5000である
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤。
【請求項6】
中空粉体(a)は、フライアッシュバルーン及び/又はプラスチックバルーンであり、中実粉体(b)は、炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、酸化カルシウム及びセメントよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の粉体である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤。
【請求項7】
粘度が、10〜150Pa・s(BH型粘度計、23℃、スピンドルNo.7、20rpm)である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤。
【請求項8】
床下地材や壁下地材等の下地材と、床材や壁材等の表面材の間に、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤を適用し、下地材と表面材とを接着することを特徴とする表面材の接着施工方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法により得られた下地材と表面材との接着構造体。
【請求項10】
請求項9記載の接着構造体から、旧表面材を剥離した後、旧下地材と新表面材の間に、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の易剥離性一液湿気硬化型接着剤を適用し、旧下地材と新表面材とを接着することを特徴とする表面材の更新接着施工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−111726(P2010−111726A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283819(P2008−283819)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【Fターム(参考)】