構造に基づきデザインされた除草剤耐性生産物
【課題】栽培される作物に選択的に広範囲および/または特異的な除草剤耐性を付与する方法を提供する。
【解決手段】ピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)同等物上に、AHASの三次元構造を誘導するために並べること、除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること、結合ポケットに対して一つの除草剤の親和性を変えるために、AHAS中のアミノ酸位置を選択すること、目標AHASをコードするDNAを変異し、該位置で該変異を含む変異体AHASが製造される条件下に、第一の細胞中で該変異DNAを発現することからなる。
【解決手段】ピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)同等物上に、AHASの三次元構造を誘導するために並べること、除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること、結合ポケットに対して一つの除草剤の親和性を変えるために、AHAS中のアミノ酸位置を選択すること、目標AHASをコードするDNAを変異し、該位置で該変異を含む変異体AHASが製造される条件下に、第一の細胞中で該変異DNAを発現することからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾリノンおよび他の除草剤に耐性であるアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)の変異体の構造に基づくモデリングおよびデザイン、AHAS阻害除草剤、AHASの変異体、これら変異体をコードするDNA、これら変異体を発現する植物および雑草管理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)は、細菌、酵母および植物のイソロイシン、ロイシンおよびバリンの生合成の第一段階を触媒する酵素である。例えば、トウモロコシ(Zea Mays)の成熟AHASは葉緑体(図1を参照)に局在するほぼ599個のアミノ酸のプロテインである。該酵素は、アセト乳酸を生成するためコファクターとしてチアミンピロホスフェート(TPP)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を、基質としてピルビン酸を用いる。また、この酵素は、ピルビン酸とケト酪酸の縮合を触媒してアセトヒドロキシ酪酸を生成する。AHASは、アセト乳酸シンターゼまたはアセト乳酸ピルビン酸リアーゼ(炭酸化)としても知られ、EC 4.1.3.18と命名されている。活性酵素は多分少なくともホモダイマーである。Ibdahらは、抄録(Protein Science, 3:479−S,1994)で、AHASの活性部位に対する一つのモデルを開示している。
【0003】
イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)−American Cyanamid Company−Wayne,NJ)等のイミダゾリノン化合物、スルホメツロンメチル(OUST(登録商標)−E.I.du Pont de Nemours and Company−Wilmington,DE)等スルホニルウレア系化合物、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類(BroadstrikeTM−Dow Elanco;Gerwickら、Pestic.Sci.29:357−364,1990参照)、スルファモイルウレア類(Rodawayら、水稲、麦および大麦におけるAc322140の選択性のメカニズム、Brighton Crop Protection Conference−Weeds,1993の講演要旨集)、ピリミジルオキシ安息香酸類(STABLER(登録商標)−クミアイ化学工業、E.I.du Pont de Nemours and Company;殺虫剤マニュアル 10版、ページ888−889、Clive Tomlin編、英国穀物保護委員会、49 Downing Street,Farmham,Surrey G49 7PH,英国)およびスルホニルカルボキサミド類(Alvaradoら、米国特許4,833,914)のようないろいろな除草剤がAHAS酵素活性を阻害することにより作用する(Chaleffら、Science, 224:1443,1984;LaRossaら、J.Biol.Chem. 259, 8753,1984;Ray,Plant Physiol.75:827,1984;Shanerら、Plant Physiol.76:545,1984参照)。これらの除草剤は非常に効果的でかつ環境にやさしい。しかし、これらの除草剤の植物毒性効果に対して雑草のみならず作物も反応するので、農業にそれらを使用することは選択性の欠如のため限られる。
【0004】
Bedbrookらは、米国特許5,013,659、5,141,870および5,378,824にいくつかのスルホニルウレア耐性AHAS変異体を開示している。しかし、これらの変異体は、植物、種子または細胞を変異させ、除草剤抵抗性変異体を選択することによって得られたか、そのような突然変異体から誘導された。このアプローチは、目標プロテインの構造モデルに基づく論理的なデザイン手法というよりはむしろ少なくとも初めは対応する突然変異体の偶然の機会による導入に頼る点で予測ができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、栽培される作物に選択的に広範囲および/または特異的な除草剤耐性を付与する方法および組成物には当該技術において、需要が依然としてある。本発明者らは、AHASの選択的除草剤耐性変異体およびそれを含む植物が、ピルビン酸オキシダーゼ(POX)に対するAHASの構造に基づくモデルリング、除草剤結合ポケットまたはAHASモデル上のポケットを定め、結合ポケットに対する除草剤の結合性を変える特異的な突然変異体をデザインすることによって製造できることを発見した。これらの変異体および植物は、一種類以上の除草剤によって阻害されたり殺されたりされず、作物の成長を支えるべく充分なAHAS酵素活性を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づくモデリング方法を提供する。本方法は、
(a)目標AHASプロテインをピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング同等物上に該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(d)例えば、該位置で少なくとも一つの異なるアミノ酸の変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、そして
(e)例えば、該位置で異なるアミノ酸のような変異を含む変異体AHASが製造される条件下第一の細胞中で該変異DNAを発現すること、
を包含する。
更に、本方法は、
(f)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(g)野生型および変異体AHASプロテインを細胞から精製すること;
(h)除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について野生型および変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1):少なくとも一つの除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一のAHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい細胞中に発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2):少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまで、ステップ(e)のAHAS変異体をコードするDNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(c)−(h)を繰り返すこと
をさらに包含することができる。
【0007】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づく別のモデリング方法も提供される。この方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、目標AHASプロテインを図1の配列を有するポリペプチドから得られる最初のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えることからなる目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(d)該位置で変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、および
(e)該位置で変異を含む変異体AHASが製造される条件下第一の細胞中で変異DNAを発現すること、
を包含する。
【0008】
更に、この方法は、
(f)第二の細胞で平行して目標野生型AHASプロテインをコードするDNAを発現すること;
(g)野生型および変異体AHASプロテインを細胞から精製すること;
(h)除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について野生型および変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一のAHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい細胞中に発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;を有することが同定されるまで、ステップ(e)のAHAS変異体をコードするDNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるようステップ(c)−(h)を繰り返すこと、
をさらに包含することができる。
【0009】
更に別の態様において、方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、同定された除草剤結合ポケットおよび図1の配列を有する最初のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に目標AHASプロテインを並べること;
(b)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対する少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(c)該位置で変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること;
(d)該位置で変異を含む変異体AHASが製造される条件下で第一の細胞に変異DNAを発現すること;
を包含する。
【0010】
この方法は、
(e)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(f)野生型および変異体AHASプロテインを細胞から精製すること;
(g)除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について野生型および変異体AHASプロテインを試験すること;および
(h)最初の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;
または
(b)最初のAHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい細胞中に発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性、ここにおいて細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりもな耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまでステップ(d)のAHAS変異体をコードするDNAがステップ(b)のAHASをコードするDNAとして使用されるようにステップ(b)−(g)を繰り返すこと、
をさらに包含することができる。
【0011】
上記方法の好ましい態様において、除草剤非存在下の触媒活性は、野生型AHASの触媒活性の少なくとも5%そして最も好ましくは約20%以上である。この除草剤がイミダゾリノン除草剤である場合、除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(i)除草剤非存在下において、野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(ii)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性、および
(iii)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有すると好ましい。
更に、本発明はアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)変異体プロテインをコードする単離DNAを提供するものであって、該変異体プロテインは、
【表1】
【0012】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なもの、およびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基における少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表2】
【0013】
前者のいずれかと機能的に同等なものおよび前者のいずれかのすべての組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
によって修飾されたAHASプロテインからなる。
この番号システムにおいて、残基#2は、即ち葉緑体ターゲッティングペプチドの除去後の成熟プロテインの推定アミノ末端に対応する。
【0014】
上記修飾は、プロテインの酵素活性を阻害する除草剤、好ましくはイミダゾリノン系除草剤の能力を変えることに向けられている。好ましい態様において、該単離DNAはAHASの除草剤耐性変異体をコードする。また、これらAHAS変異体をコードするDNAからなるDNAベクター、変異体AHASプロテイン自体およびAHAS変異体を発現するかまたはこれらのベクターを含むインビボまたは細胞培養中で増殖する細胞が提供される。
【0015】
別の態様において、本発明は一つの細胞または複数の細胞、そして特に例えば種子のような一つの植物細胞または複数の植物細胞に除草剤耐性を付与するための方法を提供する。AHAS遺伝子、好ましくはシロイヌナズナAHAS遺伝子をAHASの酵素活性を阻害する除草剤の能力を変えるように変異する。変異遺伝子を適合する発現ベクターにクローン形成し、遺伝子を、それが細胞に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで発現される条件下で除草剤感受性細胞に形質転換する。また、本発明に記載の除草剤耐性AHAS遺伝子を含む作物が栽培され、雑草をコントロールするのに効果的量の除草剤で処理されるような雑草管理の方法が考えられる。
【0016】
また、AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づくモデリング方法が開示される。この方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、ピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング機能同等物上に目標AHASプロテインを、並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;および
(c)第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分にAHAS活性を阻害するように、結合ポケットのAHAS活性阻害有効部分と相互作用する、好ましくは結合する、非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる。
【0017】
また、AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づく別のモデリング方法が含まれる。この方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、図1の配列を有するポリペプチドから得られる第一のAHAS鋳型またはその機能同等物上に目標AHASプロテインを並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;および
(c)第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分AHAS活性を阻害するように、結合ポケットのAHAS活性阻害有効部分と相互反応する、好ましくは結合する、非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる。
好ましくは、各方法において第一の除草剤は結合ポケットの官能性基と相互作用する少なくとも一つの官能性基を含有する。
【0018】
本発明は、酵素AHASの修飾体およびAHAS阻害除草剤の論理的なデザインまたは構造に基づく分子モデリングを含む。これら修飾酵素(AHAS変異体プロテイン)は除草剤の作用に対して耐性である。また、本発明は、これら変異体をコードするDNA、これらDNAを含むベクター、AHAS変異体プロテインおよびこれら変異体を発現する細胞を含む。更に、これら変異体を発現することによって植物に除草剤耐性をつくる方法および雑草管理の方法が提供される。本発明のDNAおよびAHAS変異体は、AHASの構造の分子モデリングに基づく研究において発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
AHAS変異体およびAHAS阻害除草剤の論理的な構造に基づくデザイン
本発明に記載のAHASの除草剤耐性変異体は、植物に除草剤耐性を付与するのに有用であり、POXモデル、AHASモデルまたはそれらの機能的に同等なもの、例えばトランスケトラーゼ、カルボリガーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、コファクターとしてFADおよび/またはTPPを結合するプロテインまたはPOXおよび/またはAHASに類似する構造的特徴を有する全てのプロテイン、また図1の配列を有するモデルのようなAHASモデルまたは前のモデルからモデル化された変異体を含む図1の配列と機能的に同等なものを用いてデザインされる。用いることのできるプロテインは、上記に挙げた分子のいずれかに対して、それらのCα炭素において3.5オングストロームよりも小さい平均二乗偏差を有するいかなるプロテインをも含む。AHASを対象とする除草剤を、これらの鋳型から同様に合わせることができる。AHASアミノ酸配列の機能的に同等なものは、特に例えば推定結合ポケットのような保存領域において実質的、即ち60−70%の相同性を有する配列である。相同性の程度は、例えばGCGによるGAPおよびPILEUPのような当該技術において公知のプログラムに基づく簡単な整列によって決定される。相同性は、同一のアミノ酸または保存的置換を意味する。図1のAHASプロテイン中の特定のアミノ酸残基の機能的に同等なものは、例えばGCGによるGAPおよびPILEUPのような当該技術において公知のプログラムによって図1の配列と一緒に並べた時、図1のアミノ酸残基と同じ位置にある他のAHASプロテインのアミノ酸残基である。
【0020】
論理的デザインは、典型的には、(1)目標AHASプロテインをPOXバックボーンまたは構造またはAHASバックボーンまたは構造と並べること、(2)任意に、そしてAHASバックボーンが同定された除草剤結合ポケットを有するならば、目標プロテインの除草剤結合ポケットを局限するために、一つ以上の除草剤を三次元構造中へモデリング、(3)このモデルに基づく変異の選択、(4)部位特異的変異誘発および(5)変異体の発現および精製を含む。追加のステップは、(6)酵素の性質の試験および(7)野生型AHASの性質と比べた適当な変異体の評価を含む。各ステップを以下別々に論述する。
【0021】
1.分子モデリング
分子モデリング(modelling)(および特にプロテイン相同モデリング)技術は、指定プロテインの構造および活性の知識を提供することができる。プロテインの構造モデルは、X−線結晶学などの実験データから直接に、相同モデリングなどにより間接的に、またはその組合わせにより決定することができる(White等によるAnnu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,23:349,1994参照)。AHASの三次元構造の解明はポリペプチドに対して除草剤耐性を付与するAHAS内の特定のアミノ酸残基の変異にかかわる理論的スキームの開発の基礎を提供する。
【0022】
ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)からの関連ピルビン酸オキシダーゼ(POX)の既知のX−線結晶構造を鋳型として使用するトウモロコシAHASの構造の分子モデリングは、除草剤耐性AHAS変異体またはAHAS阻害性除草剤のデザインに有用であるAHAS構造の三次元モデルを提供する。この分子モデリング方法は、AHASおよびPOXが多くの生化学的特徴を共有し、かつまた共通の先祖遺伝子から誘導することができるという利点を有する(Chang等によるJ.Bacteriol.170:3937,1988)。
【0023】
AHAS中の高度の交雑種(cross−species)相同性から、本明細書に記載されているモデリングされたAHASまたはその機能的に同等なものはまた、AHAS変異体プロテインをデザインするための鋳型として使用することができる。
【0024】
相互作用性分子グラフィックおよび配列形成を用いるモデルの一つの誘導は以下で詳細に説明する。この方法から得られる三次元AHAS構造は酵素の活性部位およびこれに制限されないが、イミダゾリノン除草剤を包含する除草剤などの阻害剤の結合部位または結合ポケットのおおよその空間的構成を予想させる。このモデルを次いでリファインし、次いで以下でまた説明する生化学的検討に基づいて再解明する。
【0025】
プロテイン相同モデリングには、検討するプロテインの一次配列をその結晶構造が既知である第二のプロテインとともに並べることが必要である。ピルビン酸オキシダーゼ(POX)はAHAS相同モデルの作製に選択される。これはPOXとAHASとが多くの生化学的特徴を共有しているからである。例えば、AHASおよびPOXは両方共に、酵素反応メカニズムの点で、かつまたコファクターおよび金属必須条件の点で共通している。これら両酵素では、その酵素活性にチアミンピロホスフェート(TPP)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)および二価カチオンが必要である。FADはPOXにおける触媒作用期間中のレドックス反応を媒介する。これは多分、AHASの構造的機能のみを有し、POXからAHASに進化する際の痕跡残物である。これら酵素は両方ともに、基質としてピルビン酸を利用し、安定な反応中間体としてヒドロキシエチルチアミンピロホスフェートを生成する(Schloss,J.V.等によるIn Biosynthesis of branched chain amino acids,Barak,Z.J.M.,Chipman D.M.,Schloss,J.V.(編集)、VCH出版社、Weinheim,ドイツ国、1990)。
【0026】
さらにまた、AHAS活性はPOXのN−末端半分およびAHASのC−末端半分からなるキメラPOX−AHASプロテインに存在し、これはPOXそれ自体により示されるAHAS活性は低度である。AHASおよびPOXはまた、溶液中で類似の性質を示す(Risse,B.等によるProtein Sci.,1:1699および1710,1992;Singh,B.K.,& Schmitt,G.K.(1989),FEBS Letters,258:113;Singh,B.K.等による(1989)、In:Prospects for Amino Acid Biosynthesis Inhibitorsin Crop Protection and Pharmaceutical Chemistry,(Lopping,L.G.,等編集,BCPCMonograph.87頁)。プロテイン濃度を増加させながら、POXおよびAHASの両方は、モノマーからダイマーおよびテトラマーへの段階的転移を受ける。FAD濃度を増加させると、より順位の高いサブユニット構築物が誘発される。両プロテインのテトラマー形態は熱による変質および化学的変質に対して最も安定である。
【0027】
さらにまた、ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)からのPOXの結晶構造は、Muller等により解明されている(Science,259:965,1993)。本発明者等は、AHASとPOXとの間の物理的、生化学的および遺伝学的相同性の程度に部分的に基づいて、POXのX−線結晶構造がAHAS構造の相同モデリングのための構造上の出発点として使用できることを見出した。
【0028】
しかしながら、AHAS配列とL.プランタラムPOX配列とは完全コンピューターによる配列形成に充分なほどには類似していない。総合的に、アミノ酸の約20%のみが同一であり、一方残基の約50%は類似の分類(すなわち、酸、塩基、芳香族など)に属する。しかしながら、これらの配列を親水性および疎水性残基の観点から比較すると、その600個のアミノ酸のうちの500個以上が一致する。AHASの二次構造予測(Holley等によるProc.Natl.Acad.Sci.USA,86:152,1989)はPOXの実際の二次構造に相当に類似していることを示した。残基の70%近くについて、予測AHAS二次構造はPOXのものと一致する。
【0029】
POXモノマーは3つのドメインからなり、これらのドメインはいずれも、α−ヘリックスおよび長いループからなるクロスオーバーによる中央の平行β−シートを有する(Muller等によるScience,259,965,1993)。このシートの位相幾何学的形態はドメイン間で相違している、すなわち第一ドメインおよび第三ドメインでは、そのストランドが配列2−1−3−4−6−5でβ−シートに集合され、一方第二ドメインのβ−シートでは、その配列は3−2−1−4−5−6と読める。
【0030】
コンピューター生成配列形成は、二次構造予測および配列相同性に基づいていた。NeedlemanおよびWunchによりJ.Mol.Biol.,48:443,1970に記載されている慣用の対式配列整列方法が使用された。2種の配列を並べて、配列形成スコア(alignment score)を最大にした。この配列形成スコア(相同性スコア)は、並べられた残基の全ての対にかかわるスコアおよびこの配列中に空間を導入するための任意のペナルティの合計である。この残基対を並べるためのスコアは、要約された整数値である。相同性スコアシステムは、一定の残基対の間の逸脱頻度を見出すことに基づいている。(MO Dayhoff,RM Schwartz & BC Orcutt,“Atlas of Protein Sequence and Structure”,vol.5,suppl.3,345〜362頁、1978)。
【0031】
この配列形成をさらに、連続する規則的二次構造が保存されるように、空間再配置によりリファインする。同様の配列形成スキームを評価することによって見出されたアミノ酸置換を、相互作用性分子グラフィックにより比較した。一定の部位内のアミノ酸の特定の機能にかかわる大部分の保存性置換を備えた配列を選び出した。POXおよびAHASの最終配列は図2に示されている。残基の保存されたクラスターを、特にTPP結合部位およびFAD結合部位について同定した。この配列は第一ドメイン、第二ドメインの大部分および第三ドメインのほぼ半分に、AHASとPOXとの間の高度の類似性を示した。不十分に並べられ、POXとAHASとでは相違して重畳されていることがある領域の大部分は当該プロテインの表面に存在するものと予想され、コファクターまたは阻害剤結合には包含されなかった。変異部位の予測は配列における小さな移動によっては実質的な影響を受けない。
【0032】
TPP結合残基の大部分はPOXとAHASとの間で高度に保存される(例えば、P48−G49−G50)。若干の場合に、TPPに近い残基はPOXとAHASとの間で相違しているが、高度に保存されている領域内に残る(例えば、残基90〜110)。他方、FAD結合部位は、ほとんど保存されないものと見做される。若干のFAD結合性残基は強力に保存されるが(例えば、D325−I326−D327−P328)、その他はPOXとAHASとの間で明白に相違している(例えば、位置278〜285からのループに存在する残基は相同ではない)。詳細な分析によって、ほとんど保存されない接触部位の少なくとも一部では、その相互作用がこの側鎖によるよりも、そのペプチド幹鎖により媒介されることが解明された。すなわち、保存はポリペプチド重畳に必要なだけであって、アミノ酸配列には不必要である(例えば、残基258〜263の幹鎖はFADのリビトール鎖を結合する)。アデニンおよびイソアロキサジン結合部位の半分は明白に相違している。
【0033】
一次構造配列を形成した後に、AHASアミノ酸配列をPOX鋳型構造体に転位させることによって相同モデルを構築した。欠落している配座(missing coordinates)はアミノ酸残基の鋳型を用いて構築し、未確定側鎖を完成させた。この分子の小部分のデータバンク調査およびエネルギー最低化(energy−minimization)を採用して、未確定のループ領域の配座を完成した。補因子TPPおよびFADをそれらの結合ポケット中にモデル化した。このモデルを次いで、完全500サイクルエネルギー最低化に付した。コンピュターモデリングは全部、Silicon Graphics Co.からのIndigo Elan R4000 Workstationで行った。相互作用性分子モデリングおよびエネルギー最低化は、Molecular Simulations Inc.からのQuanta/CHARMm 4.0を用いて行った。このステップ中に、配座は安定する。これは、例えばvan der Waals接触に近似するような格別には好ましくない相互作用は生起しないことを示した。この結果を図3に模式図として示す。
【0034】
予測AHAS構造の特徴
上記のモデリングしたAHAS構造を検討することによって、プロテインの大部分が溶剤を許容する大部分の疎水性側鎖とともに、エネルギー的に妥当であるバックボーンと重畳していることが判った。β−シートの表面は滑らかであり、それらに付着しているクロスオーバー領域を収容している。
【0035】
ダイマー形AHASのモデルは、配列形成スキームに関して定義されているCα配座の対を用いて、エネルギー最低化モノマー形AHASの配座の重複および2つのPOXサブユニットに2つのコピイをスーパーインポーズすることによって生成された。長い「ループ」およびα−ヘリックスにより取り囲まれている6−ストランドからなる平行β−シートコアからなる3つの同様に重畳されているドメイン中に、このAHASのポリペプチド鎖を重畳する。一方のサブユニットの第一ドメインが他方のサブユニットのコファクター−結合ドメイン2および3のほぼ近くにあるように集合させる。溶剤で満たされた空間がこの部位でサブユニット間に残される。このポケットは3つのドメインの合流によって定められており、サブユニットのための準備された入口部位である。これはまた、除草剤用の結合部位であるように用意されている。
【0036】
この結合ポケットの内面はコファクターにより縁どられている。TPPのチアゾールはこのポケットの底部に配置される。ドメイン3はその軸がTPPのピロホスフェート向かっている地点である短いα−ヘリックスとともにポケットの内面に関連し、その双極子モーメントによるホスフェート電荷を補償する。この必須のヘリックスは、TPPと密に接触している「逆戻り」(turn)残基であるG498から出発し、F507で終わり、スルホニルウレア耐性のための3つの既知の変異部位、すなわちV500、W503およびF507(米国特許第5,013,659号;同第5,141,870号および同第5,378,824号参照)を含んでいる。ドメイン1では、P48−S52として定められているループ(β−ストランドとα−ヘリックス2との間)がW503に対面し、この部位での変異はイミダゾリノンに対する耐性を付与する。残基Y47〜G50はまた、TPPと接触している。このループはもう一つの逆戻り地点のP184〜Q189に隣接しており、これはドメイン1のβ−シートの最後のストランドとβ−ストランドとを連結しており、このβ−ストランドはドメイン2と連結している。ポケット内では、その入口近くがドメイン2の相補ストレッチ(complementary stretch)と相互作用するドメイン1の長形領域である。T96〜G100からなる逆戻りはループ125〜129とTPPとの間である。ドメイン3の追加のストレッチおよび結合ポケットを並べるドメイン2の2つの領域はこのポケットの裏側の角にある。ドメイン3の残基572、575、582および583は一側面でポケット表面を定めている。このポケット表面の内部の残りの部分はFADによりおよびまたFADのイソアロキサジン環と接触しているループ、L278〜G282により定められている。
AHASプロテインの構造モデルはまた、除草剤またはAHAS阻害剤の理論的デザインに使用することができる。
【0037】
2.結合部位中への除草剤のモデリング
イマゼタピル(imazethapyr)、すなわちPURSUIT(登録商標名)の活性イミダゾリノンを、相互作用性分子グラフィック(図4)および上記ソフトウエアー(図4)を用いて、その用意されている結合部位中に配置した。「アンカー」としてK185を選択し、カルボキシル基の電荷と相互反応させた。イミダゾリノンのNH−CO単位を配置し、G50およびA51への水素結合を生成させた。これは、小さいα−ヘリックスのバックボーン上のV500に近いイマゼタピルのメチル置換基を配置させた。イソプロピル基は、ポケット内面に関与する残基125〜135の領域でアミノ酸の疎水性残基により結合させることができる。ピリジン環はA134またはF135、F507およびW503間に最も多分、「サンドイッチ」されている。W503はまた、イミダゾリノン環系と相互作用する。
【0038】
同様の方法で、スルホニルウレア除草剤のモデルを前記イミダゾリノン結合部位と部分的に重複している部位に作製した。スルホニルウレア結合部位とイミダゾリノン結合部位との重複は、競合結合試験および確立された変異データと一致し、トウモロコシにおける同一の変異、W503Lが両除草剤に対する耐性を付与することができることを示している。これらのモデルでは、スルホニルウレア除草剤耐性を付与する既知の変異部位、すなわちG50、A51、K185、V500、W503、F507は、結合した除草剤と密に接触している。P126およびA51は疎水性孔を生成させることによってK185側鎖をその場所に保持するのに必要である。特異的イミダゾリノン耐性部位は、結合領域から離れており、その相同性が重畳における変化が予想されるほど不十分である領域に位置する。FAD結合部位は明らかに、この領域でAHASとPOXとの間で低い相同性を有する。S582はトウモロコシにおける耐性を付与する残基であり、そしてS582およびその隣接残基はこの活性部位ポケットと密に接触している。FADおよび残基278〜285を包含するループ領域は第三ドメインから僅かに離れて移動するものと予想され(図4の下流に向かって)、そしてS582を含むループは位置499〜507のヘリックスと位置278〜285のループとの間の空間で重畳されているものと予想される。もう一つの既知の耐性部位であるD305はFADに近接しており、ドメイン1とドメイン2との相互反応を媒介する。M280は位置498〜507でヘリックス配置に包含されるか、または阻害剤結合に直接に包含される。ドメイン1およびドメイン2が相互に僅かに近接して移動する場合には、M208およびD305はまた、阻害剤結合に直接に包含される。
【0039】
3.変異の選択
AHASの一次配列中に変異を導入するための部位として、特定のアミノ酸残基を正確に定める。これらのアミノ酸はそれらの位置に基づいて選択される。すなわち、アミノ酸残基位置が修飾された場合には、結合ポケットに対する除草剤の親和性に関する変更が生じる(すなわち、減退する)。ポケットそれ自体の外側のアミノ酸残基として結合ポケットに存在する変異位置がポケットの電荷または形態を変更することができるか否かは必須ではない。変異のための目標部位の選択は、前記したとおりにして分子モデルを使用して達成される。例えば、上記モデルに従う場合に、位置128に存在するアルギニン(アミノ酸について1文字コードを用いて図1にR128として示されている)は、基質−および除草剤−結合ポケットへの入口近くに位置しており、高度の配座自由性を有し、従って結合ポケット中への帯電した除草剤の輸送に関与することができる。従って、この残基をアラニンにより置換して、その電荷およびその長い疎水性側鎖の両方を分離する。(生成する変異体をR128Aと命名する)。
【0040】
この変異は、単純な置換、すなわち野生型配列をいずれか別のアミノ酸で置き換えることによることができる。別法として、この変異は、1個または2個以上の、好ましくは5個までのアミノ酸を指定部位から削除するか、または指定部位に付加することからなることもできる。この付加配列は別種のプロテインに存在することが既知であるアミノ酸配列からなることができ、あるいは完全合成配列であることもできる。さらにまた、1つ以上の変異および(または)1形式以上の変異を単一のポリペプチド中に導入することもできる。
【0041】
4.部位指向変異
AHASをコードするDNAは、所望の変異が導入されるように操作することができる。変異は、例えばHiguchi,R.によるRecombinant PCR,In M.A.innis等編集、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,177〜183頁、1990に記載されているような当技術で標準的な方法を使用して行われる。
【0042】
5.変異体の発現および精製
変異させたまたは変化させたAHAS配列をDNA発現ベクターにクローン形成し(例えば、例3参照)、例えば大腸菌(E.coli)などの適当な細胞で発現させる。好ましくは、AHASをコードするDNAを転写調節エレメントに結合させ、変異体AHASを縮合プロテイン、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼの一部として発現させ、精製を促進させる(下記例3参照)。この変異体AHASを次いで、アフィニテイクロマトグラフイまたは当技術で公知のいずれかその他の適当な方法を使用して精製する。AHASポリペプチドの「精製」は、当該ポリペプチドを発現させる細胞の別の成分により干渉されることなく、その酵素活性の測定を可能にする形態でAHASポリペプチドを単離することを意味する。
【0043】
6.酵素性の評価
この精製した変異体AHASは下記の3つの性質の1つまたは2つ以上について試験することができる:
(a)ピルビン酸をアセト乳酸に変換することにかかわる特異性または触媒活性(これは単位/mg純粋AHASとして表わされ、この活性の単位は生成されるアセト乳酸1μmol/時間であると定義される)、あるいはピルビン酸と2−ケト酪酸とを縮合させてアセトヒドロキシ酪酸を生成することにかかわる特異性または触媒活性(これは単位/mg純粋AHASとして表わされ、この活性の単位は生成されるアセトヒドロキシ酪酸1μmol/時間であると定義される);
(b)除草剤、例えばイミダゾリノンなどによる阻害レベル(これはIC50として表わされ、IC50は酵素活性の50%が阻害される濃度である);および
(c)選択された除草剤に対する耐性対別種の除草剤に対する耐性の選択性(この選択性の指数は野生型酵素に比較したこの変異体のイミダゾリノンに対する集約耐性(fold resistance)を野生型酵素と比較した同一変異体の別種の除草剤に対する集約耐性で割り算した数値であると定義される)。この野生型酵素と比較した除草剤に対する集約耐性は変異体のIC50値を野生型のIC50値により割り算した数値として表わされる。従って、この選択指数(S.I.)は下記式で表わされる:
【化1】
これらの決定に適する試験方法は、これに制限されないものとして、下記例4に詳細に記載されている方法を包含する。
【0044】
7.a.適当な変異体の評価
変異体AHASポリペプチドの酵素としての性質を野生型AHASと比較する。好ましくは、一定の変異は、インビトロでピルビン酸またはピルビン酸および2−ケト酪酸に向かう酵素活性を保有する、すなわちピルビン酸をアセト酪酸に変換するか、またはピルビン酸と2−ケト酪酸とを縮合させて、アセトヒドロキシ酪酸を生成させるAHAS変異体ポリペプチドをもたらし(従って、インビボでの生物学的活性が予想される)、他方で野生型AHASに比較して選択された除草剤(1種または2種以上)に対して比較的大きい耐性を示す触媒活性を示す。好ましくは、この変異体AHASは:
(i)少なくとも1種の除草剤の不存在下に、
(a)この変異体が発現された細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性を示し;あるいは
(b)細胞中でまた発現された除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組合わされて触媒活性を示す;この組合わされるプロテインは第一のAHAS変異プロテインと同一であっても、あるいは相違していてもよく、これが発現される細胞の生存を維持するのに充分なものである;この場合に、当該細胞は生存にAHAS活性を要する、および
(ii)野生型AHASに比較して、少なくとも1種の除草剤に対してよりも大きい耐性を有し、かつまた野生型AHASに比較して除草剤(1種または2種以上)に対して比較的大きい耐性を有する触媒活性を示す。
【0045】
従って、いずれか1種の特定のAHAS変異体プロテインが細胞の生存の維持に要する全触媒活性を有する必要はないが、単独でまたは同一AHAS変異体の追加のコピイの触媒活性および(または)別種のAHAS変異体プロテイン(1種または2種以上)の触媒活性と組合わされて、その生存にAHAS活性を要する細胞の生存を維持するのに充分な量で若干の触媒活性を有していなければならない。例えば、細胞中に変異体をコードする遺伝子の複数のコピイを導入することによって、あるいは当該変異体の生成を増強させるために比較的強力なプロモーターをさらに含有する遺伝子を導入することによって、触媒活性を許容される最低レベルまで増加させることができる。
【0046】
より大きい耐性の用語は、野生型AHAS触媒活性が除草剤(1種または2種以上)によって減少される程度に比較して、変異体の触媒活性が、生じたとしても、低度で除草剤(1種または2種以上)によって減少されることを意味する。好ましくは、このより大きい耐性を有する変異体AHASは細胞、植物または有機体の生存を維持するのに充分な触媒性を保有し、これに対して野生型AHASは細胞、植物または有機体の生存を維持するのに充分な触媒性を保有していない。
【0047】
好ましくは、除草剤(1種または2種以上)の不存在下における触媒活性は少なくとも約5%であり、最も好ましくは除草剤(1種または2種以上)の不存在下における野生型AHASの触媒活性の約20%よりも大である。最も好適なAHAS変異体はスルホニルウレアを基剤とする除草剤に対する耐性よりも大きいイミダゾリノンに対する耐性を有する。しかしながら、いくつかの用途では、この選択性は必要ではなく、好ましくないこともある。
【0048】
イミダゾリノン−耐性AHAS変異体の場合に、このAHAS変異体は、好ましくは、
(i)当該除草剤の不存在下に、野生型AHASの触媒活性の約20%よりも大きい触媒活性を有し、
(ii)野生型AHASに比較して、イミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性を有し、および
(iii)イミダゾリノン除草剤に比較して、スルホニルウレア除草剤の存在下に比較的大きい感受性を有する触媒活性を有する。
【0049】
最も好ましい除草剤−耐性AHAS変異体は、約20単位/mgの最低特異活性を示し、イミダゾリノンによる阻害が最低であるか、または無く、かつまた別種の除草剤に対するのに比較して、約1.3〜約3000の範囲にわたる選択指数を示す。
【0050】
理論に拘束されることは望まないが、野生型またはその他の目標AHASプロテインに対するこの方法を全体的に繰り返し適用することによって、前記で説明した大きい酵素活性および1種または2種以上の除草剤に対する耐性という望ましい性質を有するAHAS変異体の生成がもたらされるものと信じられる。例えば、特定の位置における野生型AHAS配列の指定アミノ酸への変異は、高度の除草剤耐性を示すが、ピルビン酸またはピルビン酸および2−ケト酪酸に対する酵素活性を格別には喪失していない変異体をもたらすことができる。上記方法の第二の用途では、この出発または目標AHASポリペプチドがこの変異体である(野生型AHASの代わりに)。理論的デザインには、元の変異位置における別のアミノ酸の置換および(または)除草剤耐性の保有が予想されるが、また高度の触媒活性の維持も予想される選択された地点または範囲におけるアミノ酸の付加または削除が包含される。
【0051】
除草剤耐性AHASプロテインの構造に基づく理論的デザインはランダム変異および選択に頼る慣用の手段に優る多くの利点を提供する。例えば、特定のアミノ酸の別のアミノ酸による置換がコドン内の1個以上のヌクレオチドの置換を要する場合には、これがランダムに生じる可能性は実用することができないほど低い。これに対して、理論的デザイン手段により示唆されている場合には、コドン内のヌクレオチド配列の2つまたは3つの変更でさえも容易に実施することができる。例えば、選択的イミダゾリノン耐性を付与する理論的にデザインした変異の一つはアルギニンからグルタミンへの変更を要する。アルギニンはCGT、CGC、CGA、CGG、AGA、AGGによりコードされ、他方グルタミンはGAAおよびGAGによりコードされる。アルギニンコドンの中でGAから始まるものはないことから、この変更には隣接ヌクレオチドの二重の置換が必要であり、この二重置換は、成功を確信しては予想できず、反復できないようなランダム変異を使用することによっては非常に稀に生じるのみである。変異頻度はランダム変異中に増加させることができるが、ヌクレオチド配列における変更は、先行の部位指向変異の不存在下ではAHAS遺伝子全体に等しく生じる可能性がある。これは酵素活性により干渉される無意味な変異が得られる可能性が増加させる。同様に、ランダム変異を使用して、触媒活性を維持しながら除草剤耐性を付与する複数のアミノ酸の置換、削除または置換/削除による変異が見出されることは稀である。除草剤耐性を付与する削除による変異はまた、ランダム変異手段を使用してはほとんど見込みがない。削除は小領域に制限する必要があり、かつまた酵素活性を保有するためにAHASリーディングフレームが保有されるように、三重に生じさせなければならない。
【0052】
しかしながら、構造に基づく理論的手段の場合には、二重のアミノ酸置換および(または)削除による変異が比較的容易に達成され、かつまた正確に目標を定めることができる。さらにまた、ランダム変異に使用される異なる変異原は特定の変異型を創造する。例えば、ナトリウムアジドは植物における一点置換変異を創造し、一方照射は削除を生じさせる傾向を有する。従って、複数の置換/削除組合わせを達成するためには、2種の変異プロトコールを使用しなければならない。
【0053】
さらにまた、除草剤耐性AHAS変異体を理論的にデザインする本発明の構造に基づく方法は、除草剤耐性変異体の確実な改良を可能にする。このステップはランダム変異によっては促進されない。ランダム変異による除草剤耐性のための変異部位の同定は、あったとしても、変異特性の追加の改良を導く確実な利益をもたらすことはほとんどない。他方、本発明による構造に基づく手段は、構造モデルにおけるアミノ酸の位置、環境および機能に基づく手段として改良を可能にする。
【0054】
この繰り返し式改良方法はまた、AHASの3つの重要な性質:耐性のレベル、耐性の選択性および触媒効力を独立して取り扱うことを可能にする。例えば、断定的方法で、補償変異をデザインすることができる。特定の変異が酵素活性に対して有害な作用を有する場合には、第二の補償変異を使用して、活性を保有させることができる。一例として、帯電した残基が変異によって導入されるか、または削除される場合に、ドメイン内の元の電荷の変化を第二の変異の導入によって補償することができる。酵素活性を保有させるための第二の部位における導入、削除または置換を行う位置および残基の種類の決定には、本明細書に記載されているようなモデルから誘導される構造−機能関係にかかわる知見が必要である。
【0055】
7.b.非ペプチド除草剤またはAHAS阻害剤のデザイン
目標プロテインの活性部位を変更し、活性部位に適合させることができるか、またはいずれかの位置に結合する化学的実体は当業者に公知の方法によって、例えばレセプター部位と特異的に相互反応する化合物のデザインを助けるコンピューターデザインプログラムによって、デザインすることができる。
このようなプログラムの例には、LUDI(Biosym Technologies−San Diego,CA)がある(また、Lam等によるScience,263:380,1994;Thompson等によるJ.Med.Chem.,37:3100,1994を参照することができる)。
結合ポケットおよび特に阻害剤結合に包含されるものとして同定されているアミノ酸残基を、阻害剤デザイン用のアンカー地点として使用することができる。部位特異性除草剤のデザインは、農場で、特にAHAS遺伝子の変異によって除草剤耐性を自発的に発現できる雑草の種のコントロールに有利である。
【0056】
除草剤−耐性AHAS変異体:DNA、ベクターおよびポリペプチド
本発明はまた、除草剤−耐性AHAS変異体ポリペプチドをコードする単離DNA分子を包含する。本発明によるAHASポリペプチドをコードする遺伝子は、いずれかの種から、好ましくは植物種から誘導することができ、除草剤耐性を付与する変異は、これらのAHAS遺伝子いずれかの中の相当する位置に導入することができる。相違するAHAS遺伝子の指定のコドン位置の同等性は一次アミノ酸配列およびそのプロテインの保存および類似の三次元構造の保有の両方の関数である。例えば、図5は相違する植物種から誘導されたAHAS間の高度の配列相同性を例示している。これらのAHASポリペプチドは少なくとも約60%〜約70%の総合的相同性を示す。理論に拘束されることは望まないが、高度の保存配列を有するポリペプチドの領域では、ポリペプチド鎖形態がまた保存されているものと信じられる。従って、分子モデル形成用の種の一つからAHASをコードする配列を使用して、初期試験および相互作用性改良用の第二の種からのAHAS遺伝子中に予想どうりの変異を導入することができ、さらに遺伝子転換植物(transgenic plant)における発現用の追加の第三の植物種から誘導されるAHAS中に最適化した変異を導入することができる。
【0057】
一連の態様において、これらのAHAS DNAはAHASポリペプチドの、好ましくは図1のトウモロコシAHASポリペプチドの変異体をコードする。ここで、このポリペプチドは、図1のアミノ酸残基:
【表3】
【0058】
前者のいづれかと機能的に同等なものの先行または後続の1種または2種以上の置換または削除;図1のQ124とH150、あるいはその機能的に同等なものとの間での挿入または削除;図1のG300とD324、あるいはその機能的に同等なものとの間での挿入または削除;および前者のいずれかのすべての組合わせにより修飾することができる。
【0059】
図1のポリペプチド中に導入するか、または別種のAHAS遺伝子における同等の位置に導入するかにかかわらず、この変異は前記残基のいずれかの先行する5個までのアミノ酸または後続の5個までのアミノ酸の削除またはいずれか1個または2個以上の別のアミノ酸の単純置換をもたらすDNA配列の変更を包含することができる。適当なアミノ酸置換には、これらに制限されないものとして、天然産生アミノ酸が包含される。
【0060】
別法として、この変異は、1種または2種以上のアミノ酸が上記位置でフレームとして付加または削除されるようなDNA配列の変更を包含することができる。好ましくは、この付加は約3〜約30ヌクレオチドを包含し、そして削除は約3〜約30ヌクレオチドを包含する。さらにまた、一回変異したポリペプチドが一つよりも多い類似のまたは相違する変異を含むことができる。
【0061】
本発明はまた、DNAおよび対応するRNA配列、ならびにセンスおよびアンチセンス配列を包含する。AHASポリペプチドをコードする核酸配列は天然AHAS調節配列により側面に配列することができ、あるいはプロモーター、エンハサー、応答エレメント、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5´−および3´−非コード領域などの異種配列と組合わせることができる。さらにまた、核酸を修飾して、安定性、溶解性、結合親和性および特異性を変えることができる。一例として、変異体AHASコード配列は選択的にメチル化することができる。本発明の核酸配列はまた、直接にまたは間接的に、検知可能なシグナルを提供できるラベルにより修飾することができる。ラベルの例には、放射性同位元素、蛍光分子、ビオチンなどが包含される。
【0062】
本発明はまた、AHAS変異体をコードする核酸を含有するベクターを提供する。プラスミドおよび真菌ベクターを包含する多数のベクターが種々の真核ホストおよび原核ホストにおける発現にかかわり開示されている。有利には、ベクターにはまた、作動するようにAHASコードプロテインに結合されているプロモーターが包含される。コードされたAHASはいずれか適当なベクターおよびホスト細胞を使用し、本明細書に記載されているか、または引用されている方法、あるいはまた別段では関連技術で当業者に公知の方法を用いて発現させることができる。適当なベクターの例には、これらに制限されないものとして、pBINに基づくベクター、pBluescriptベクターおよびpGEMベクターが包含される。
【0063】
本発明はまた、変異体除草剤−耐性AHASポリペプチドまたはそのポリペプチド断片の両方を包含する。上記で説明したように、変異体AHASポリペプチドは図1に示されているトウモロコシポリペプチドから、あるいはいずれかの植物または微生物AHASポリペプチドから、好ましくは植物AHASポリペプチドから誘導することができる。これらのポリペプチドはまた、例えばホスホリル化、スルフェート化、アシル化、グリコシル化、またはその他のプロテイン修飾により修飾することができる。これらのポリペプチドは植物から分離することができ、あるいは異種有機体または細胞(これらに制限されないものとして、バクテリア、酵母、昆虫、植物および哺乳動物細胞を包含する)から分離することができる。これらの細胞中に変異体AHASポリペプチドをコードする遺伝子を導入し、発現させる。さらにまた、AHASポリペプチドは検知可能なシグナルを生じることができるラベルにより、直接にまたは間接的に、修飾することができ、このようなラベルには放射性同位元素、蛍光化合物などが包含される。
【0064】
化学物質−耐性植物および変異体AHAS遺伝子を含有する植物
本発明は、形質転換原性細胞(trnsgenic cell)を包含し、この細胞には、これらに制限されないものとして、種子、有機体および植物が包含される。このような細胞に除草剤−耐性AHAS変異体をコードする遺伝子を導入する。非制限的例として、適当な受容植物を下記表1に挙げる
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
形質転換原性植物における変異体AHASポリペプチドの発現は、これらに制限されないものとして、イミダゾリノン除草剤、例えばイマゼタピル(imazethapyr)(PURSUIT(登録商標))などの除草剤に対する高度の耐性を付与し、これらの除草剤を形質転換原性植物の栽培中に使用することを可能にする。 植物中への外来遺伝子の導入方法は当技術で公知である。このような方法の非制限的例には、アグロバクテリウム(Agrobacterium)感染、粒子衝撃、原形質体のポリエチレングリコール(PEG)処理、原形質体のエレクトロポレーション(electroporation)、マイクロインジェクション(microinjection)、マクロインジェクション(macroinjection)、チラーインジェクション(tiller injection)、花粉管経路、乾燥種子膨潤、レーザー鑚孔、および電気泳動が包含される。これらの方法は、例えばB.Jenes等およびS.W.Ritchie等によるIn Transgenic Plants,Vol.1,Engineering and Utilization,S.D.Kung編集、R.Wu,Academic Press,Inc.,Harcourt Brace Jovanovich 1993;およびMannonen等によるCritical Reviews in Biotechnology,14:287〜310,1994に記載されている。
【0071】
好適態様において、変異体AHASをコードするDNAは、抗生物質耐性マーカー遺伝子を含有するDNAベクターにクローン形成し、次いでこの組換えAHAS DNA含有プラスミドをTiプラスミド含有アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中に導入する。この「二成分ベクター系」は、例えば米国特許第4,490,838号およびAn等によるPlant Mol.Biol.Manual,A3:1〜19(1988)に記載されている。この形質転換したアグロバクテリウムを次いで、受容体植物からの葉ディスクとともに共培養し、植物細胞を感染させ、形質転換させる。この形質転換された植物細胞を次いで、新芽の発芽を促進する再生培地で、先ず形質転換細胞を選択するために適当な抗生物質の存在下に、次いで除草剤の存在下に、培養する。除草剤−耐性AHASをコードするDNAにより充分に形質転換された植物細胞においては、形質転換されていない細胞からの新芽の発生を阻止するレベルの除草剤が存在しても、新芽の発芽が生じる。例えば、ポリアミラーゼ連鎖反応(PCR)分析を使用して変異体AHAS DNAの存在を確認した後に、形質転換した植物を、それらの除草剤噴霧に対する耐性能力およびそれらの除草剤の存在下における種子発芽および発根抑制および増殖にかかわる能力について試験する。
【0072】
その他の用途
本発明の方法および組成物は除草剤−耐性AHAS変異体の構造に基づく理論的デザインに使用することができ、この場合に、この変異体は植物中に組み込んで、植物に対して選択的除草剤耐性を付与することができる。AHASの中間変異体(例えば、最適に近い特異活性を示すが、高度の耐性および選択性を示すか、またはその逆である変異体)は、適度の特異的活性を保有し、かつまた高度の耐性および選択性を有する第二世代AHAS変異体をデザインするための鋳型として有用である。
【0073】
除草剤耐性AHAS遺伝子は、単一のまたは複数のコピーで作物種を形質転換させることができる。除草剤に対して減少された感受性を有する作物種の遺伝子エンジニアリングは:
(1)イミダゾリノン除草剤などの特異的有効な、環境に優しい除草剤の適用範囲および柔軟性を増大させることができ;
(2)これらの除草剤の市場価値を高めることができ;
(3)除草剤耐性作物種に対する除草剤の効果的な使用により作物栽培地における雑草による抑圧を減少させ、収穫量を対応して増加させることができ;
(4)除草剤耐性植物の種子の販売高を増加させることができ;
(5)以前の栽培で使用された除草剤の持ち込みからの作物の打撃に対する抵抗性を増大させることができ;
(6)有害な風土条件による除草剤特性の変化に対する感受性を減少させることができ;かつまた
(7)不均一に、または誤って施用された除草剤に対する寛容性を増大させることができる。
一例として、形質転換原性AHAS変異体プロテインを含有する植物を栽培することができる。この作物をAHAS変異体形質転換原性植物が耐性である除草剤の雑草制御有効量で処理することによって、栽培される作物に有害に作用することなく、作物の雑草制御を生じさせることができる。
【0074】
除草剤−耐性AHAS変異体をコードする前記DNAベクターを使用してまた、AHAS変異体の発現がベクターによる細胞の形質転換にかかわる選択性のマーカーを提供することができる。対象受容細胞は培養物であることができ、またはその元のものであることができ、またAHAS変異体遺伝子は単独でまたは別種の選択可能なマーカーと組合わせて使用することができる。唯一の要件は、受容細胞が同種除草剤の細胞毒性作用に対して感受性であることである。この態様は、比較的安価であり、かつまた例えばイミダゾリノン基剤除草剤の毒性が欠落しているという利点をもたらし、DNA媒介形質転換を必要とする全ての系に適用することができる。
【実施例】
【0075】
好ましい態様の例示
以下の実施例により本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
実施例1: 除草剤耐性AHAS変異体のデザイン
詳しく上述したモデルの提案された除草剤結合部位に近接する残基が変異誘発用に、除草剤結合能の減少した活性AHASポリペプチドをデザインするため選択された。ポケット表面の各部位は、コファクターおよび除草剤の他にポケットの他の残基との相互作用の可能性があるものと考えた。例えば、正に帯電した残基の付加は、結合部位内の電荷分布に影響し、負に帯電した除草剤の結合親和性の消失をもたらすものと期待される。
【0076】
三つの残基が変異誘発に最も有用なターゲットとして決定された。
(1)F135はFADのイソアロキサチン環および除草剤の芳香環の両方と相互作用すると考えられた。結合ポケットにもっと帯電した残基を導入する戦略にしたがって、この残基をアルギニンに変えた。
(2)M53はヘリックス498−507と接触している。このヘリックスは、公知の除草剤耐性変異部位を含み、TPP結合とも関わっている。更に、53位でグルタミン酸の置換は、K185との相互作用を有利にし、イマゼタピルのカルボキシル基に対するK185の親和性を減少させるものと考えられた。
(3)R128はポケットの入口の近かくに位置し、それが結合ポケットへの帯電した除草剤の最初の輸送に関与するものと考えられた。この残基は、その電荷と長い疎水性鎖とを除くためにアラニンに変換された。
【0077】
実施例2: 除草剤耐性変異体を製造するための部位特異的変異誘発
アラビドプシスAHAS遺伝子をpGEX−2Tベクター(Pharmacia)中のグルタチオンS−トランスフェラーゼ遺伝子のコード領域の3′末端にインフレーム(in−frame)挿入した。このようにしたベクターの構築は、発現されるグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)/AHAS融合プロテインの結合部に6個のアミノ酸のトロンビン認識配列を保持していた。発現された融合プロテインのトロンビン消化は、トロンビン認識部位から得られるN末端グリシン残基を有する推定トランジットペプチドプロセシング部位のトランジットペプチドの末端に、N末端出発位置を有するAHASを与える。切り出されたAHASプロテインの最終アミノ末端はGly−Ser−Ser−Ile−Serからなる。部位特異的変異誘発はこのベクターのAHAS遺伝子に導入された。
【0078】
部位特異的変異誘発は、樋口のPCR法(Recombinant PCR. In MA Innis, et al. PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego, pp. 177−183, 1990)にしたがってつくられた。二つのPCR産生物で、その各々が変異部位が重なっているものが増幅された。重なり領域のプライマーは変異を含んでいた。重複PCR増幅断片を組み合わせ、変成させ、再連結させて、中断(recessed)3′末端を有するヘテロ二本鎖産生物を製造した。中断3′末端を所望の変異を含む二つの重複PCR産生物の和である断片を製造するためにTaq DNAポリメラーゼによって伸ばした。このフラグメントを二つの外側プライマーだけと引き続いて再増幅すると全長の産生物に富む結果となった。変異を含む産生物をpGEX−2Tベクター中のアラビドプシスAHAS遺伝子に再び導入した。
【0079】
実施例3: AHAS変異体の発現と精製
A)方法
トウモロコシ野生型AHAS遺伝子(ベクター名pAC751)、アラビドプシスSer653Asn変異体またはアラビドプシスIle401Phe変異体を含むpGEX−2Tベクターで形質転換された大腸菌(DH5α)細胞をアンピシリン50μg/mLを含むLB培養液中で一夜増殖させた。大腸菌の一夜培養物をアンピシリン50μg/mLおよびアンチホーム A(0.1 v/v%)のLB1リットルに1:10で希釈した。培養物を37℃でOD600が約0.8になるまで振りながら培養した。イソプロピルチオガラクトース(IPTG)を最終濃度が1mMになるよう加え、培養物を3時間以上培養した。
【0080】
細胞をJA−10ローターで10分間8670xgで遠心することより集め、MTPBS(16mMのNa2HPO4、4mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、pH7.3)中に元の培養量の1/100にして再懸濁した。トリトンX−100およびリソザイムを各々最終濃度が1v/v%および100μg/mLになるよう加えた。細胞を30℃で15分間培養し、氷で4℃に冷やし、ミクロチッププローブの付いたBranson Sonifier細胞破砕器を用いてレベル7で10秒超音波をかけ破砕した。細胞を含まぬ抽出物を35,000xgで4℃、10分間遠心した。上清をデカンテーションし、遠心工程を繰り返した。
【0081】
発現された融合プロテインの精製をSmithおよびJohnsonの方法(Gene 67:31−40,1988)を修飾しておこなった。その上清を室温に温め、MTPBS中で平衡にされたグルタチオン−アガロースビーズ(硫黄結合、Sigma)の2mLカラムに通した。次いで、カラムをMTPBSを用いて流出液のA280がMTPBSのそれと同じになるまで室温で洗浄した。次いで、融合プロテインをトリス(Tris)塩酸(50mM、pH8.0)中の還元グルタチオン(5mM)を含む溶液で溶出した。溶出融合プロテインを約30NIH単位のトロンビンを用いて処理し、クエン酸(50mM、pH6.5)およびNaCl(150mM)に対して透析した。
【0082】
融合プロテインを室温で一夜消化した。消化サンプルをMTPBSに対して透析し、遊離したグルタチオントランスフェラーゼプロテインを除くためMTPBS中で平衡にされたグルタチオン−アガロースカラムに二度通した。カラムに吸着しないプロテインフラクションを集め、YM10フィルター(Amicon)で限外ろ過して濃縮した。濃縮サンプルをゲルろ過緩衝液(50mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.0)中で平衡にされたセファクリルS−100ゲルろ過カラム(1.5×95cm)にかける。2mLフラクションを0.14mL/分の流速で集めた。酵素の安定性は、0.02%のナトリウムアジドを添加し、2mMのチアミンピロフォスフェートおよび100μMのフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の存在または非存在下に、ゲルろ過緩衝液中で4℃で保存して試験された。
【0083】
B) 結果
GTS遺伝子でダウンストリーム且つイン−フレームに融合された野生型AHAS遺伝子を含むpAC751プラスミドによって形質転換された大腸菌がIPTGで形質転換されると91kDのプロテインが発現された。この91kDのプロテインは、GST/AHAS融合プロテインの予想された分子量(26kDと65kDの和)を示した。DH5α/pAC751の細胞を含まぬ抽出物をグルタチオン−アガロース親和性ゲルに通し、洗い、そして遊離グルタチオンで溶出すると、91kDのプロテインに富んだ製造物が得られ(図6、レーンC)。GSTとAHASの結合部に設計された6個のアミノ酸のトロンビン認識部位をトロンビンでうまく切断した(図6、レーンD)。切断された融合プロテインは、予想された26kDのGSTプロテインおよび65kDのトウモロコシAHASプロテインからなっていた。トウモロコシAHASをGSTを除くためグルタチオン−アガロース親和性カラムに二度通して精製し、トロンビンを除くため最後のセファクリルS−100ゲルろ過工程に付した(図6、レーンE)。65kDのプロテインは、ウエスタンブロット上トウモロコシAHASペプチドに対するモノクロナル抗体によって認識される。
【0084】
精製された野生型トウモロコシAHASをエレクトロスプレイ質量スペクトルによって分析し、64,996ダルトンの分子量を有することを決定した(データは示されていない)。pGEX−2Tベクターに挿入された遺伝子の推定アミノ酸配列から計算される予想質量は65,058である。実際に測定された質量と予想質量との間で0.096%の誤差は質量スペクトルの調節変動の範囲内であった。二つの質量決定が近似していることは、発現ベクターの構築の際間違って混入したヌクレオチドが無いこと、分子量に大きな変化をおこすようなプロテインに対する翻訳後の修飾も無いことを示唆する。更に、精製酵素の製造物にみかけのピークがないことは、サンプルに混ざりがないことを示した。
【0085】
実施例4: AHAS変異体の酵素特性
大腸菌で製造される野生型および変異体AHASの酵素特性をSinghらの方法(Anal. Biochem.171:173−179,1988)を修飾して以下のように測定した。即ち、
1X AHAS試験緩衝液(50mMのHEPES、PH7.0、100mMのピルビン酸、10mMのMgCl2、1mMのチアミンピロフォスフェートおよび50μMのフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD))を含む反応混合物を酵素の2X試験緩衝液に希釈するか、1X AHAS試験緩衝液に濃縮された酵素を加えるかして得た。イマゼタピルおよび関連対照を含む全ての試験は、50%DMSO溶液として試験混合物にイマゼタピルを添加するため最終5%濃度のDMSOを含有した。試験をミクロタイタープレート中37℃、最終容量250μLで行った。反応を60分間行わせた後、アセト酪酸の蓄積をSinghらによって記載されているように比色測定した(Anal. Biochem.171:173−179,1988)。
【0086】
上記実施例3に記載されたpAC751から発現され精製されたトウモロコシAHASはピルビン酸のアセト乳酸への変換に活性である。完全なAHAS活性は、試験メジウム中のコファクターであるFADおよびTPPの存在による。FADのみを試験メジウムに加えたのでは活性は見られなかった。TPPだけと一緒にした精製酵素の活性は、共にFADおよびTPPの存在下に検出される活性の1%にも達しなかった。通常、植物の粗抽出物に存在するAHASは、特に基質およびコファクターの非存在下に非常に不安定である。これと対照的に細菌発現システムからの精製AHASは、50mMのHEPES PH7.0、150mMのNaCl、0.02%NaN3中、FADおよびTPPの存在または非存在にかかわらず4℃で一ヵ月貯蔵して触媒活性を失わなかった。更に、SDS−PAGEゲルに溶かした時に、これら貯蔵物から分解物は検出されなかった。 野生型AHASとM124E、R199AおよびF206R変異体の比活性を下記表2に示す。図5の配列から決定されるように、アラビドプシスAHASのM124E変異はトウモロコシM53E変異と同等であり、アラビドプシスのR199A変異はトウモロコシR128Aと同等であり、アラビドプシスのF206R変異はトウモロコシF135Rと同等である。トウモロコシAHAS構造モデルにおいてデザインされた変異を双子葉植物のアラビドプシスAHAS遺伝子中の等価アミノ酸を同定するために使用し、アラビドプシスAHAS遺伝子中に挿入および試験した。双子葉植物のアラビドプシスAHAS遺伝子中へ論理的にデザインされた除草剤変異のこの翻訳と挿入は、双子葉植物種の植物における除草剤耐性の評価を促進することができる。
【表9】
【0087】
R199A変異は、イマゼタピルに対し有意なレベルの耐性を示す(図7)と同時に、高いレベルの触媒活性を保っている(表2)。特に、この変異体はスルホニルウレアに対し完全な感受性を保っている(図8)。したがって、この変異体は高い比活性と選択的な除草剤耐性の基準を満たしている。対照的に、M124E置換はイマゼタピルに対しほぼ完全な耐性をもたらすが、またひどく減少した触媒活性を示した(表2)。イミダゾリノン耐性に比較して、この変異体はスルホニルウレアに対し大きな感受性を示す(図8)ことから、この残基は選択的耐性を付与する変異を与えるよい候補であることを示唆している。グルタミン酸以外のアミノ酸の置換が触媒活性を維持するのに役立っている。F206E置換はM124E変異体について観察された結果と類似したものを与えたが、耐性の選択性に欠けた。
【0088】
実施例5: 論理的デザインアプローチによるAHAS除草剤耐性変異体の反復改良
上記実施例4に記載したようにAHASの残基124をMetからGluに変えると、イミダゾリノン耐性が付与されたが、酵素活性は野生型の値の9.2%に減少された。上述のトウモロコシAHAS構造のモデルは、Met53(アラビドプシスMet124残基と同等)が別のサブユニットから得られるα−ヘリックスの表面上のMet53に近接している一連の疎水性残基と相互作用する。したがって、Met53とヘリックス上の残基との疎水性相互作用がサブユニット/サブユニット会合および活性部位のコンフォメーションを安定している。疎水性Metを帯電したグルタミン酸残基で置換することは多分サブユニット間の疎水性相互作用を不安定にし、触媒活性の喪失をもたらす。
【0089】
この構造/機能解析に基づいて、元のアラビドプシスMet124Glu(トウモロコシMet53Gluと同等)変異酵素の活性を、次いでこの位置でより疎水性なアミノ酸(Ile)を置換することによって反復的に改善した。Ile側鎖の疎水性は、野生型のレベルまで活性を戻すことになった(比活性102、野生型活性の102%と同等)が、Ile側鎖のより大きなかさばりがイミダゾリノン耐性の有意なレベルを依然として維持できた(図9)。
比較すると、この位置でヒスチジン残基の置換は、野生型活性の42.6%と同等の42.5の比活性を示した。それにもかかわらず、この変異はPURSUIT(登録商標)に高い耐性を示した(図10)。
【0090】
実施例6: 論理的デザインアプローチを用いAHAS除草剤耐性変異体の反復改良
本発明の方法を用いる反復調整の別の例はArg128Ala変異体を含む。トウモロコシAHASの構造モデルは除草剤結合ポケットの縁にあるArg128残基が帯電した基質と除草剤とを除草剤結合ポケットと活性部位に運ぶのに寄与する。Arg128残基は、AHASの反応メカニズムにおける最初のピルビン酸分子を結合するTPP部分から離れており、アラビドプシスAHASArg199(トウモロコシArg128と同等)のアラニンへの置換は酵素の触媒活性に余り影響しなかった理由を説明している。構造モデルは、もっとはげしい変化をこの位置で触媒活性の高いレベルを維持しながら耐性のレベルを上げるためすることができることを示した。これに基づいて、変異の反復改善は、正に帯電したアルギニン残基を負に帯電したグルタミン酸残基で置換してなされた。このようにして変異された酵素は、高い活性を維持しながら(比活性114、野生型活性の114%と同等)、PURSUIT(登録商標)に改善されたレベルの耐性を有していた(図11)。
【0091】
実施例7: 除草剤耐性変異体の構造に基づく論理的デザインにおける各種の種から得られるAHAS交換性
AHASの三次元構造の構造モデルを上述したようにトウモロコシから得られた単子葉植物AHAS配列で構築する。アラビドプシスのような双子葉植物種から得られるAHASに変異を導入するため、単子葉植物種および双子葉植物種から得られるAHAS配列をGAPおよびPILEUPプログラム(Genetics Computer Group, 575 SequenceDrive, Madison, WI 53711)を用いて並べる。同等の位置をコンピュター産出の並びから決定する。次いで、変異を上述のように双子葉植物AHAS遺伝子に導入する。大腸菌の変異AHASプロテインの発現および生化学的性質の評価(即ち、比活性および除草剤耐性)に続いて、変異遺伝子を上記の植物形質転換法によって双子葉植物に導入する。
【0092】
実施例8: 論理的にデザインされたAHAS遺伝子を用いる形質転換による除草剤耐性植物の製造
DNA構築:
大腸菌発現ベクター内に含まれる論理的にデザインされたAHAS変異体遺伝子を、アラビドプシスAHAS遺伝子に等価制限フラグメントを置き換えるためのDNA制限フラグメントの元として使用した。この遺伝子は、アラビドプシスAHASプロモター、アラビドプシスAHAS終結配列および5′−と3′−隣接DNAを含む5.5kbの遺伝子DNAフラグメント中に存在する。適切な変異の存在を確認するために変異部位を通したDNA塩基配列の配列形成をした後、各プラスミドからの全5.5kbフラグメントをpBINに基づく植物形質転換ベクター(Mogen, Leiden, Netherlands)に挿入した。また、植物形質転換ベクターは、35Sカリフラワーモザイクウイルスプロモターによって駆動されるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)カナマイシン耐性遺伝子を含む。最終ベクター構築を図12に示す。Met124Ile、Met124HisおよびArg199Glu変異(図1に示されたトウモロコシAHAS配列におけるMet53Ile、Met53HisおよびArg128Glu変異に対応)を有するアラビドプシスAHAS遺伝子を含むベクターに各々pJK002、pJK003およびpJK004のラベルを付けた。
【0093】
これらのベクターの各々を、An et al. Plant Mol.Biol.Manual 43:1−19(1988)に記載された形質転換方法を用いてアグロバクテリウム ツメファシエンス株LBA4404に形質転換した(R&D Life Technologies,Gaithersburg, MD)。
【0094】
植物形質転換:
タバコ属cv.Wisconsin 38の葉の断片形質転換をHorschら(Science,227:1229−1231,1985)によって記載されているものを少し変えて行った。葉の断片を無菌状態で成長した植物から切り出し、Murashige Skoog培地(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)で、プラスミドpJK002、pJK003またはpJK004を含むアグロバクテリウム ツメファシエンスと共に2−3日間、25℃暗所でひっくり返して培養した。この断片を乾式ブロットし、ベンジルアデニン(1MG/L)、1−ナフチル酢酸(0.1mg/L)、カナマイシン(500mg/L)およびセホタキシム(500mg/L)(全てSigmaから入手)を含むB5ビタミンとともに再生Murashige Skoog培地に移した。
初めに、形質転換体を形質転換ベクター中に存在するnptII遺伝子によって付与されるカナマイシン耐性によって選択した。葉の断片から得られる苗条を切り出し、セホタキシムおよびカナマイシンを含有する新鮮なMurashige Skoog培地に置いた。
【0095】
インビボ除草剤耐性
カナマイシン耐性タバコ苗条をイマゼタピル(0.25μM)を含む培地に移した。この濃度のイミダゾリノン除草剤で、非形質転換タバコ苗条(内因性野生型AHASを含有)は、根形成を開始できなかった。対照的に、根形成および成長が各変異AHAS遺伝子で形質転換されたタバコ苗条から観察された。Met124IleおよびArg199Glu変異遺伝子で形質転換された苗条から出た根を野生型と共に図13に示す。更に、Met124IleおよびArg199Glu変異遺伝子で形質転換された植物は、イマゼタピルの農場レート(100g/ヘクタール)の二倍散布に対して耐性であった(図13)。除草剤の存在下の非形質転換植物に対する形質転換植物の根成長のパターンおよび除草剤散布後の様子は、論理的にデザインされた除草剤耐性遺伝子の発現がインビボ除草剤耐性を付与していることを示唆している。
【0096】
除草剤耐性タバコ中の論理的にデザインされた遺伝子の検出
ゲノムDNAをAHAS形質転換タバコ植物から単離し、アラビドプシスAHAS変異遺伝子の存在をPCR分析で証明した。アラビドプシスAHAS遺伝子のヌクレオチド配列と二つのタバコAHAS遺伝子のヌクレオチド配列との間の差異を、タバコゲノムDNAバックグラウンドのアラビドプシス遺伝子のみを増幅するPCRプライマーのデザインに用いた。論理的にデザインされた除草剤耐性遺伝子を検出した。これは除草剤耐性植物の大多数において適当なサイズのDNAフラグメントの増幅によって示されている。非形質転換タバコ植物からPCRシグナルは見られなかった。
【0097】
形質転換AHAS遺伝子の分離
形質転換植物中の論理的にデザインされたAHAS遺伝子の分離を調べるため、発芽試験を行った。種子をPURSUIT(登録商標)2.5μMおよびカナマイシン100μMまで含むホルモンの入っていないMurashige Skoog培地に置いた。得られた実生を除草剤に対する耐性または感受性に対して目で点数をつけた。
タバコ植物は二倍体であるから、自家授粉植物の子孫は耐性3に感受性1の比に分かれることが期待され、耐性AHAS遺伝子に対する一つの実生ホモ接合体、耐性AHAS遺伝子に対する二つの実生ヘテロ接合および耐性AHAS遺伝子を欠く一つの実生の存在を示す。
【0098】
結果は、耐性AHAS遺伝子が予想された3:1の比に分かれることを示し、除草剤耐性が論理的にデザインされたAHAS遺伝子の一つの支配的なコピーによって付与されるという結論を支持している。
これらの結果は、除草剤耐性AHAS遺伝子の論理的にデザインをインビボで除草剤耐性の成長を示す植物の製造に使用できることを示している。
【0099】
実施例9: 論理的にデザインされたAHAS遺伝子による形質転換によって異なる除草剤に対する交差耐性植物の製造
上記実施例8の論理的にデザインされたAHAS遺伝子を用いて形質転換されたタバコ植物を、また別の除草剤CL299,263(イマザモックスとしても公知)に対する交差耐性について試験した。発芽試験をCL299,263(2.5μM)の存在または非存在下、Met124Ile、Met124HisおよびArg199GluのアラビドプシスAHAS変異体遺伝子を含む一次形質転換体から収穫された種子について行った(図15)。この濃度の除草剤は、野生型タバコ植物の激しい発育阻害と脱色を生じさせる。Met124HisAHAS遺伝子で形質転換されたタバコ植物は、最大レベルの耐性を示した(図15)。Arg199Glu形質転換体は中間レベルの耐性を示したが、Met124Ileはほとんど耐性を示さなかった(図15)。
【0100】
上記のすべての特許、出願、論文、出版物および試験方法はここに引用して組み入れる。
本発明の多くの変更が上記の詳細な記述のもと当業者に示唆を与えるであろう。そのような明らかな変更は、添付されている特許請求項の全ての意図された範囲に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1a】図1aは、植物AHAS酵素の一つの例として示されるトウモロコシ由来のアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)の約599アミノ酸配列に対応する600アミノ酸配列の例示である。この配列はトランジット配列を含まず、余分のグリシンはトロンビン分解部位から残っている。Met53、Arg128およびPhe135残基は太字で示されている。
【図1b】図1bは、植物AHAS酵素の一つの例として示されるトウモロコシ由来のアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)の約599アミノ酸配列に対応する600アミノ酸配列の例示である。この配列はトランジット配列を含まず、余分のグリシンはトロンビン分解部位から残っている。Met53、Arg128およびPhe135残基は太字で示されている。
【0102】
【図2a】図2は、トウモロコシAHASおよびラクトバチラスプラナルム由来ピルビン酸オキシダーゼ(POX)の配列を一列にならべたものである。
【図2b】図2は、トウモロコシAHASおよびラクトバチラスプラナルム由来ピルビン酸オキシダーゼ(POX)の配列を一列にならべたものである。
【0103】
【図3a】図3aは、AHASサブユニットの二次構造の図式的な表示である。通常の二次構造部分のαヘリックスおよびβシートは、各々円と長円として描かれ、サブユニット中の三つのドメインの各々に対して別々に番号をつけている。ループやコイル領域を、その始まりと終りを表わす数字をつけて黒線で示す。コファクター結合部位および公知の変異部位は、各々八角形および星印で示される。
【図3b】図3bは、AHASサブユニットの二次構造の図式的な表示である。通常の二次構造部分のαヘリックスおよびβシートは、各々円と長円として描かれ、サブユニット中の三つのドメインの各々に対して別々に番号をつけている。ループやコイル領域を、その始まりと終りを表わす数字をつけて黒線で示す。コファクター結合部位および公知の変異部位は、各々八角形および星印で示される。
【図3c】図3cは、AHASサブユニットの二次構造の図式的な表示である。通常の二次構造部分のαヘリックスおよびβシートは、各々円と長円として描かれ、サブユニット中の三つのドメインの各々に対して別々に番号をつけている。ループやコイル領域を、その始まりと終りを表わす数字をつけて黒線で示す。コファクター結合部位および公知の変異部位は、各々八角形および星印で示される。
【0104】
【図4】図4は、結合ポケットに合ったイマゼタピル(PURSUITR(登録商標)除草剤)を有するトウモロコシAHASの活性部位のコンピュターによるモデルの例示である。
【0105】
【図5a】図5aは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5b】図5bは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5c】図5cは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5d】図5dは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5e】図5eは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5f】図5fは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5g】図5gは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5h】図5hは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【0106】
【図6】図6は、トウモロコシAHASの精製を示すプロテインに対して染色されたSDSポリアクリルアミドゲルの写真例である。レーンは左から右へ、A;分子量マーカー、B;大腸菌(E.coli)粗細胞抽出物、C;グルタチオン−アガロース アフィニティ精製物、D;該アフィニティ精製物のトロンビン消化物、E;二度目のグルタチオン−アガロースカラムとセファクリルS−100ゲルろ過を含む。
【図7】図7は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型と変異AHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験結果のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【0107】
【図8】図8は、スルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下および増加する濃度での存在下における、野生型と変異AHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験結果のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【図9】図9は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)およびスルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型アラビドプシス(Arabidopsis)AHASプロテインとMet124Ile変異AHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【0108】
【図10】図10は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)およびスルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型アラビドプシスAHASプロテインとMet124His変異アラビドプシスAHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【図11】図11は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)およびスルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型アラビドプシスAHASプロテインとArg199Glu変異アラビドプシスAHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【0109】
【図12】図12は、35Sプロモターのコントロール下にnptII遺伝子(カナマイシン耐性をコードする)およびアラビドプシスAHASプロモターのコントロール下にAHAS遺伝子(野生型または変異体)含む植物形質転換のために使用されるDNAベクターの模式図による説明である。
【図13】図13はMet124Ile変異またはArg199Glu変異のどちらかを含むアラビドプシスAHAS遺伝子で形質転換されたタバコ植物および非形質転換対照の発根を示す写真である。植物は0.25μMのイマゼタピルを含有する培地に移した後、18日間生育させた。
【0110】
【図14】図14は、Met124Ile、Met124HIsまたはArg199Glu変異を含むアラビドプシスAHAS遺伝子で形質転換されたタバコ植物とイマゼタピルのフィールド率(100g/ヘクタール)の二倍で散布された非形質転換対照とを示す写真である。
【図15】図15は、除草剤CL299,263(imazamox)の存在下に行われた発芽試験の結果を示す写真であって、この試験は、Met124Ile、Met124HIsまたはArg199Glu変異を含むアラビドプシスAHAS遺伝子で形質転換された一次タバコ植物形質転換体から収穫された種子について行われた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾリノンおよび他の除草剤に耐性であるアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)の変異体の構造に基づくモデリングおよびデザイン、AHAS阻害除草剤、AHASの変異体、これら変異体をコードするDNA、これら変異体を発現する植物および雑草管理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)は、細菌、酵母および植物のイソロイシン、ロイシンおよびバリンの生合成の第一段階を触媒する酵素である。例えば、トウモロコシ(Zea Mays)の成熟AHASは葉緑体(図1を参照)に局在するほぼ599個のアミノ酸のプロテインである。該酵素は、アセト乳酸を生成するためコファクターとしてチアミンピロホスフェート(TPP)およびフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を、基質としてピルビン酸を用いる。また、この酵素は、ピルビン酸とケト酪酸の縮合を触媒してアセトヒドロキシ酪酸を生成する。AHASは、アセト乳酸シンターゼまたはアセト乳酸ピルビン酸リアーゼ(炭酸化)としても知られ、EC 4.1.3.18と命名されている。活性酵素は多分少なくともホモダイマーである。Ibdahらは、抄録(Protein Science, 3:479−S,1994)で、AHASの活性部位に対する一つのモデルを開示している。
【0003】
イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)−American Cyanamid Company−Wayne,NJ)等のイミダゾリノン化合物、スルホメツロンメチル(OUST(登録商標)−E.I.du Pont de Nemours and Company−Wilmington,DE)等スルホニルウレア系化合物、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類(BroadstrikeTM−Dow Elanco;Gerwickら、Pestic.Sci.29:357−364,1990参照)、スルファモイルウレア類(Rodawayら、水稲、麦および大麦におけるAc322140の選択性のメカニズム、Brighton Crop Protection Conference−Weeds,1993の講演要旨集)、ピリミジルオキシ安息香酸類(STABLER(登録商標)−クミアイ化学工業、E.I.du Pont de Nemours and Company;殺虫剤マニュアル 10版、ページ888−889、Clive Tomlin編、英国穀物保護委員会、49 Downing Street,Farmham,Surrey G49 7PH,英国)およびスルホニルカルボキサミド類(Alvaradoら、米国特許4,833,914)のようないろいろな除草剤がAHAS酵素活性を阻害することにより作用する(Chaleffら、Science, 224:1443,1984;LaRossaら、J.Biol.Chem. 259, 8753,1984;Ray,Plant Physiol.75:827,1984;Shanerら、Plant Physiol.76:545,1984参照)。これらの除草剤は非常に効果的でかつ環境にやさしい。しかし、これらの除草剤の植物毒性効果に対して雑草のみならず作物も反応するので、農業にそれらを使用することは選択性の欠如のため限られる。
【0004】
Bedbrookらは、米国特許5,013,659、5,141,870および5,378,824にいくつかのスルホニルウレア耐性AHAS変異体を開示している。しかし、これらの変異体は、植物、種子または細胞を変異させ、除草剤抵抗性変異体を選択することによって得られたか、そのような突然変異体から誘導された。このアプローチは、目標プロテインの構造モデルに基づく論理的なデザイン手法というよりはむしろ少なくとも初めは対応する突然変異体の偶然の機会による導入に頼る点で予測ができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、栽培される作物に選択的に広範囲および/または特異的な除草剤耐性を付与する方法および組成物には当該技術において、需要が依然としてある。本発明者らは、AHASの選択的除草剤耐性変異体およびそれを含む植物が、ピルビン酸オキシダーゼ(POX)に対するAHASの構造に基づくモデルリング、除草剤結合ポケットまたはAHASモデル上のポケットを定め、結合ポケットに対する除草剤の結合性を変える特異的な突然変異体をデザインすることによって製造できることを発見した。これらの変異体および植物は、一種類以上の除草剤によって阻害されたり殺されたりされず、作物の成長を支えるべく充分なAHAS酵素活性を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づくモデリング方法を提供する。本方法は、
(a)目標AHASプロテインをピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング同等物上に該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(d)例えば、該位置で少なくとも一つの異なるアミノ酸の変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、そして
(e)例えば、該位置で異なるアミノ酸のような変異を含む変異体AHASが製造される条件下第一の細胞中で該変異DNAを発現すること、
を包含する。
更に、本方法は、
(f)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(g)野生型および変異体AHASプロテインを細胞から精製すること;
(h)除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について野生型および変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1):少なくとも一つの除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一のAHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい細胞中に発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2):少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまで、ステップ(e)のAHAS変異体をコードするDNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(c)−(h)を繰り返すこと
をさらに包含することができる。
【0007】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づく別のモデリング方法も提供される。この方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、目標AHASプロテインを図1の配列を有するポリペプチドから得られる最初のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えることからなる目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(d)該位置で変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、および
(e)該位置で変異を含む変異体AHASが製造される条件下第一の細胞中で変異DNAを発現すること、
を包含する。
【0008】
更に、この方法は、
(f)第二の細胞で平行して目標野生型AHASプロテインをコードするDNAを発現すること;
(g)野生型および変異体AHASプロテインを細胞から精製すること;
(h)除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について野生型および変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一のAHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい細胞中に発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;を有することが同定されるまで、ステップ(e)のAHAS変異体をコードするDNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるようステップ(c)−(h)を繰り返すこと、
をさらに包含することができる。
【0009】
更に別の態様において、方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、同定された除草剤結合ポケットおよび図1の配列を有する最初のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に目標AHASプロテインを並べること;
(b)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対する少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(c)該位置で変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること;
(d)該位置で変異を含む変異体AHASが製造される条件下で第一の細胞に変異DNAを発現すること;
を包含する。
【0010】
この方法は、
(e)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(f)野生型および変異体AHASプロテインを細胞から精製すること;
(g)除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について野生型および変異体AHASプロテインを試験すること;および
(h)最初の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;
または
(b)最初のAHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい細胞中に発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性、ここにおいて細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりもな耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまでステップ(d)のAHAS変異体をコードするDNAがステップ(b)のAHASをコードするDNAとして使用されるようにステップ(b)−(g)を繰り返すこと、
をさらに包含することができる。
【0011】
上記方法の好ましい態様において、除草剤非存在下の触媒活性は、野生型AHASの触媒活性の少なくとも5%そして最も好ましくは約20%以上である。この除草剤がイミダゾリノン除草剤である場合、除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(i)除草剤非存在下において、野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(ii)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性、および
(iii)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有すると好ましい。
更に、本発明はアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)変異体プロテインをコードする単離DNAを提供するものであって、該変異体プロテインは、
【表1】
【0012】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なもの、およびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基における少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表2】
【0013】
前者のいずれかと機能的に同等なものおよび前者のいずれかのすべての組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
によって修飾されたAHASプロテインからなる。
この番号システムにおいて、残基#2は、即ち葉緑体ターゲッティングペプチドの除去後の成熟プロテインの推定アミノ末端に対応する。
【0014】
上記修飾は、プロテインの酵素活性を阻害する除草剤、好ましくはイミダゾリノン系除草剤の能力を変えることに向けられている。好ましい態様において、該単離DNAはAHASの除草剤耐性変異体をコードする。また、これらAHAS変異体をコードするDNAからなるDNAベクター、変異体AHASプロテイン自体およびAHAS変異体を発現するかまたはこれらのベクターを含むインビボまたは細胞培養中で増殖する細胞が提供される。
【0015】
別の態様において、本発明は一つの細胞または複数の細胞、そして特に例えば種子のような一つの植物細胞または複数の植物細胞に除草剤耐性を付与するための方法を提供する。AHAS遺伝子、好ましくはシロイヌナズナAHAS遺伝子をAHASの酵素活性を阻害する除草剤の能力を変えるように変異する。変異遺伝子を適合する発現ベクターにクローン形成し、遺伝子を、それが細胞に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで発現される条件下で除草剤感受性細胞に形質転換する。また、本発明に記載の除草剤耐性AHAS遺伝子を含む作物が栽培され、雑草をコントロールするのに効果的量の除草剤で処理されるような雑草管理の方法が考えられる。
【0016】
また、AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づくモデリング方法が開示される。この方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、ピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング機能同等物上に目標AHASプロテインを、並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;および
(c)第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分にAHAS活性を阻害するように、結合ポケットのAHAS活性阻害有効部分と相互作用する、好ましくは結合する、非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる。
【0017】
また、AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づく別のモデリング方法が含まれる。この方法は、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、図1の配列を有するポリペプチドから得られる第一のAHAS鋳型またはその機能同等物上に目標AHASプロテインを並べること;
(b)目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;および
(c)第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分AHAS活性を阻害するように、結合ポケットのAHAS活性阻害有効部分と相互反応する、好ましくは結合する、非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる。
好ましくは、各方法において第一の除草剤は結合ポケットの官能性基と相互作用する少なくとも一つの官能性基を含有する。
【0018】
本発明は、酵素AHASの修飾体およびAHAS阻害除草剤の論理的なデザインまたは構造に基づく分子モデリングを含む。これら修飾酵素(AHAS変異体プロテイン)は除草剤の作用に対して耐性である。また、本発明は、これら変異体をコードするDNA、これらDNAを含むベクター、AHAS変異体プロテインおよびこれら変異体を発現する細胞を含む。更に、これら変異体を発現することによって植物に除草剤耐性をつくる方法および雑草管理の方法が提供される。本発明のDNAおよびAHAS変異体は、AHASの構造の分子モデリングに基づく研究において発見された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
AHAS変異体およびAHAS阻害除草剤の論理的な構造に基づくデザイン
本発明に記載のAHASの除草剤耐性変異体は、植物に除草剤耐性を付与するのに有用であり、POXモデル、AHASモデルまたはそれらの機能的に同等なもの、例えばトランスケトラーゼ、カルボリガーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、コファクターとしてFADおよび/またはTPPを結合するプロテインまたはPOXおよび/またはAHASに類似する構造的特徴を有する全てのプロテイン、また図1の配列を有するモデルのようなAHASモデルまたは前のモデルからモデル化された変異体を含む図1の配列と機能的に同等なものを用いてデザインされる。用いることのできるプロテインは、上記に挙げた分子のいずれかに対して、それらのCα炭素において3.5オングストロームよりも小さい平均二乗偏差を有するいかなるプロテインをも含む。AHASを対象とする除草剤を、これらの鋳型から同様に合わせることができる。AHASアミノ酸配列の機能的に同等なものは、特に例えば推定結合ポケットのような保存領域において実質的、即ち60−70%の相同性を有する配列である。相同性の程度は、例えばGCGによるGAPおよびPILEUPのような当該技術において公知のプログラムに基づく簡単な整列によって決定される。相同性は、同一のアミノ酸または保存的置換を意味する。図1のAHASプロテイン中の特定のアミノ酸残基の機能的に同等なものは、例えばGCGによるGAPおよびPILEUPのような当該技術において公知のプログラムによって図1の配列と一緒に並べた時、図1のアミノ酸残基と同じ位置にある他のAHASプロテインのアミノ酸残基である。
【0020】
論理的デザインは、典型的には、(1)目標AHASプロテインをPOXバックボーンまたは構造またはAHASバックボーンまたは構造と並べること、(2)任意に、そしてAHASバックボーンが同定された除草剤結合ポケットを有するならば、目標プロテインの除草剤結合ポケットを局限するために、一つ以上の除草剤を三次元構造中へモデリング、(3)このモデルに基づく変異の選択、(4)部位特異的変異誘発および(5)変異体の発現および精製を含む。追加のステップは、(6)酵素の性質の試験および(7)野生型AHASの性質と比べた適当な変異体の評価を含む。各ステップを以下別々に論述する。
【0021】
1.分子モデリング
分子モデリング(modelling)(および特にプロテイン相同モデリング)技術は、指定プロテインの構造および活性の知識を提供することができる。プロテインの構造モデルは、X−線結晶学などの実験データから直接に、相同モデリングなどにより間接的に、またはその組合わせにより決定することができる(White等によるAnnu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,23:349,1994参照)。AHASの三次元構造の解明はポリペプチドに対して除草剤耐性を付与するAHAS内の特定のアミノ酸残基の変異にかかわる理論的スキームの開発の基礎を提供する。
【0022】
ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)からの関連ピルビン酸オキシダーゼ(POX)の既知のX−線結晶構造を鋳型として使用するトウモロコシAHASの構造の分子モデリングは、除草剤耐性AHAS変異体またはAHAS阻害性除草剤のデザインに有用であるAHAS構造の三次元モデルを提供する。この分子モデリング方法は、AHASおよびPOXが多くの生化学的特徴を共有し、かつまた共通の先祖遺伝子から誘導することができるという利点を有する(Chang等によるJ.Bacteriol.170:3937,1988)。
【0023】
AHAS中の高度の交雑種(cross−species)相同性から、本明細書に記載されているモデリングされたAHASまたはその機能的に同等なものはまた、AHAS変異体プロテインをデザインするための鋳型として使用することができる。
【0024】
相互作用性分子グラフィックおよび配列形成を用いるモデルの一つの誘導は以下で詳細に説明する。この方法から得られる三次元AHAS構造は酵素の活性部位およびこれに制限されないが、イミダゾリノン除草剤を包含する除草剤などの阻害剤の結合部位または結合ポケットのおおよその空間的構成を予想させる。このモデルを次いでリファインし、次いで以下でまた説明する生化学的検討に基づいて再解明する。
【0025】
プロテイン相同モデリングには、検討するプロテインの一次配列をその結晶構造が既知である第二のプロテインとともに並べることが必要である。ピルビン酸オキシダーゼ(POX)はAHAS相同モデルの作製に選択される。これはPOXとAHASとが多くの生化学的特徴を共有しているからである。例えば、AHASおよびPOXは両方共に、酵素反応メカニズムの点で、かつまたコファクターおよび金属必須条件の点で共通している。これら両酵素では、その酵素活性にチアミンピロホスフェート(TPP)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)および二価カチオンが必要である。FADはPOXにおける触媒作用期間中のレドックス反応を媒介する。これは多分、AHASの構造的機能のみを有し、POXからAHASに進化する際の痕跡残物である。これら酵素は両方ともに、基質としてピルビン酸を利用し、安定な反応中間体としてヒドロキシエチルチアミンピロホスフェートを生成する(Schloss,J.V.等によるIn Biosynthesis of branched chain amino acids,Barak,Z.J.M.,Chipman D.M.,Schloss,J.V.(編集)、VCH出版社、Weinheim,ドイツ国、1990)。
【0026】
さらにまた、AHAS活性はPOXのN−末端半分およびAHASのC−末端半分からなるキメラPOX−AHASプロテインに存在し、これはPOXそれ自体により示されるAHAS活性は低度である。AHASおよびPOXはまた、溶液中で類似の性質を示す(Risse,B.等によるProtein Sci.,1:1699および1710,1992;Singh,B.K.,& Schmitt,G.K.(1989),FEBS Letters,258:113;Singh,B.K.等による(1989)、In:Prospects for Amino Acid Biosynthesis Inhibitorsin Crop Protection and Pharmaceutical Chemistry,(Lopping,L.G.,等編集,BCPCMonograph.87頁)。プロテイン濃度を増加させながら、POXおよびAHASの両方は、モノマーからダイマーおよびテトラマーへの段階的転移を受ける。FAD濃度を増加させると、より順位の高いサブユニット構築物が誘発される。両プロテインのテトラマー形態は熱による変質および化学的変質に対して最も安定である。
【0027】
さらにまた、ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)からのPOXの結晶構造は、Muller等により解明されている(Science,259:965,1993)。本発明者等は、AHASとPOXとの間の物理的、生化学的および遺伝学的相同性の程度に部分的に基づいて、POXのX−線結晶構造がAHAS構造の相同モデリングのための構造上の出発点として使用できることを見出した。
【0028】
しかしながら、AHAS配列とL.プランタラムPOX配列とは完全コンピューターによる配列形成に充分なほどには類似していない。総合的に、アミノ酸の約20%のみが同一であり、一方残基の約50%は類似の分類(すなわち、酸、塩基、芳香族など)に属する。しかしながら、これらの配列を親水性および疎水性残基の観点から比較すると、その600個のアミノ酸のうちの500個以上が一致する。AHASの二次構造予測(Holley等によるProc.Natl.Acad.Sci.USA,86:152,1989)はPOXの実際の二次構造に相当に類似していることを示した。残基の70%近くについて、予測AHAS二次構造はPOXのものと一致する。
【0029】
POXモノマーは3つのドメインからなり、これらのドメインはいずれも、α−ヘリックスおよび長いループからなるクロスオーバーによる中央の平行β−シートを有する(Muller等によるScience,259,965,1993)。このシートの位相幾何学的形態はドメイン間で相違している、すなわち第一ドメインおよび第三ドメインでは、そのストランドが配列2−1−3−4−6−5でβ−シートに集合され、一方第二ドメインのβ−シートでは、その配列は3−2−1−4−5−6と読める。
【0030】
コンピューター生成配列形成は、二次構造予測および配列相同性に基づいていた。NeedlemanおよびWunchによりJ.Mol.Biol.,48:443,1970に記載されている慣用の対式配列整列方法が使用された。2種の配列を並べて、配列形成スコア(alignment score)を最大にした。この配列形成スコア(相同性スコア)は、並べられた残基の全ての対にかかわるスコアおよびこの配列中に空間を導入するための任意のペナルティの合計である。この残基対を並べるためのスコアは、要約された整数値である。相同性スコアシステムは、一定の残基対の間の逸脱頻度を見出すことに基づいている。(MO Dayhoff,RM Schwartz & BC Orcutt,“Atlas of Protein Sequence and Structure”,vol.5,suppl.3,345〜362頁、1978)。
【0031】
この配列形成をさらに、連続する規則的二次構造が保存されるように、空間再配置によりリファインする。同様の配列形成スキームを評価することによって見出されたアミノ酸置換を、相互作用性分子グラフィックにより比較した。一定の部位内のアミノ酸の特定の機能にかかわる大部分の保存性置換を備えた配列を選び出した。POXおよびAHASの最終配列は図2に示されている。残基の保存されたクラスターを、特にTPP結合部位およびFAD結合部位について同定した。この配列は第一ドメイン、第二ドメインの大部分および第三ドメインのほぼ半分に、AHASとPOXとの間の高度の類似性を示した。不十分に並べられ、POXとAHASとでは相違して重畳されていることがある領域の大部分は当該プロテインの表面に存在するものと予想され、コファクターまたは阻害剤結合には包含されなかった。変異部位の予測は配列における小さな移動によっては実質的な影響を受けない。
【0032】
TPP結合残基の大部分はPOXとAHASとの間で高度に保存される(例えば、P48−G49−G50)。若干の場合に、TPPに近い残基はPOXとAHASとの間で相違しているが、高度に保存されている領域内に残る(例えば、残基90〜110)。他方、FAD結合部位は、ほとんど保存されないものと見做される。若干のFAD結合性残基は強力に保存されるが(例えば、D325−I326−D327−P328)、その他はPOXとAHASとの間で明白に相違している(例えば、位置278〜285からのループに存在する残基は相同ではない)。詳細な分析によって、ほとんど保存されない接触部位の少なくとも一部では、その相互作用がこの側鎖によるよりも、そのペプチド幹鎖により媒介されることが解明された。すなわち、保存はポリペプチド重畳に必要なだけであって、アミノ酸配列には不必要である(例えば、残基258〜263の幹鎖はFADのリビトール鎖を結合する)。アデニンおよびイソアロキサジン結合部位の半分は明白に相違している。
【0033】
一次構造配列を形成した後に、AHASアミノ酸配列をPOX鋳型構造体に転位させることによって相同モデルを構築した。欠落している配座(missing coordinates)はアミノ酸残基の鋳型を用いて構築し、未確定側鎖を完成させた。この分子の小部分のデータバンク調査およびエネルギー最低化(energy−minimization)を採用して、未確定のループ領域の配座を完成した。補因子TPPおよびFADをそれらの結合ポケット中にモデル化した。このモデルを次いで、完全500サイクルエネルギー最低化に付した。コンピュターモデリングは全部、Silicon Graphics Co.からのIndigo Elan R4000 Workstationで行った。相互作用性分子モデリングおよびエネルギー最低化は、Molecular Simulations Inc.からのQuanta/CHARMm 4.0を用いて行った。このステップ中に、配座は安定する。これは、例えばvan der Waals接触に近似するような格別には好ましくない相互作用は生起しないことを示した。この結果を図3に模式図として示す。
【0034】
予測AHAS構造の特徴
上記のモデリングしたAHAS構造を検討することによって、プロテインの大部分が溶剤を許容する大部分の疎水性側鎖とともに、エネルギー的に妥当であるバックボーンと重畳していることが判った。β−シートの表面は滑らかであり、それらに付着しているクロスオーバー領域を収容している。
【0035】
ダイマー形AHASのモデルは、配列形成スキームに関して定義されているCα配座の対を用いて、エネルギー最低化モノマー形AHASの配座の重複および2つのPOXサブユニットに2つのコピイをスーパーインポーズすることによって生成された。長い「ループ」およびα−ヘリックスにより取り囲まれている6−ストランドからなる平行β−シートコアからなる3つの同様に重畳されているドメイン中に、このAHASのポリペプチド鎖を重畳する。一方のサブユニットの第一ドメインが他方のサブユニットのコファクター−結合ドメイン2および3のほぼ近くにあるように集合させる。溶剤で満たされた空間がこの部位でサブユニット間に残される。このポケットは3つのドメインの合流によって定められており、サブユニットのための準備された入口部位である。これはまた、除草剤用の結合部位であるように用意されている。
【0036】
この結合ポケットの内面はコファクターにより縁どられている。TPPのチアゾールはこのポケットの底部に配置される。ドメイン3はその軸がTPPのピロホスフェート向かっている地点である短いα−ヘリックスとともにポケットの内面に関連し、その双極子モーメントによるホスフェート電荷を補償する。この必須のヘリックスは、TPPと密に接触している「逆戻り」(turn)残基であるG498から出発し、F507で終わり、スルホニルウレア耐性のための3つの既知の変異部位、すなわちV500、W503およびF507(米国特許第5,013,659号;同第5,141,870号および同第5,378,824号参照)を含んでいる。ドメイン1では、P48−S52として定められているループ(β−ストランドとα−ヘリックス2との間)がW503に対面し、この部位での変異はイミダゾリノンに対する耐性を付与する。残基Y47〜G50はまた、TPPと接触している。このループはもう一つの逆戻り地点のP184〜Q189に隣接しており、これはドメイン1のβ−シートの最後のストランドとβ−ストランドとを連結しており、このβ−ストランドはドメイン2と連結している。ポケット内では、その入口近くがドメイン2の相補ストレッチ(complementary stretch)と相互作用するドメイン1の長形領域である。T96〜G100からなる逆戻りはループ125〜129とTPPとの間である。ドメイン3の追加のストレッチおよび結合ポケットを並べるドメイン2の2つの領域はこのポケットの裏側の角にある。ドメイン3の残基572、575、582および583は一側面でポケット表面を定めている。このポケット表面の内部の残りの部分はFADによりおよびまたFADのイソアロキサジン環と接触しているループ、L278〜G282により定められている。
AHASプロテインの構造モデルはまた、除草剤またはAHAS阻害剤の理論的デザインに使用することができる。
【0037】
2.結合部位中への除草剤のモデリング
イマゼタピル(imazethapyr)、すなわちPURSUIT(登録商標名)の活性イミダゾリノンを、相互作用性分子グラフィック(図4)および上記ソフトウエアー(図4)を用いて、その用意されている結合部位中に配置した。「アンカー」としてK185を選択し、カルボキシル基の電荷と相互反応させた。イミダゾリノンのNH−CO単位を配置し、G50およびA51への水素結合を生成させた。これは、小さいα−ヘリックスのバックボーン上のV500に近いイマゼタピルのメチル置換基を配置させた。イソプロピル基は、ポケット内面に関与する残基125〜135の領域でアミノ酸の疎水性残基により結合させることができる。ピリジン環はA134またはF135、F507およびW503間に最も多分、「サンドイッチ」されている。W503はまた、イミダゾリノン環系と相互作用する。
【0038】
同様の方法で、スルホニルウレア除草剤のモデルを前記イミダゾリノン結合部位と部分的に重複している部位に作製した。スルホニルウレア結合部位とイミダゾリノン結合部位との重複は、競合結合試験および確立された変異データと一致し、トウモロコシにおける同一の変異、W503Lが両除草剤に対する耐性を付与することができることを示している。これらのモデルでは、スルホニルウレア除草剤耐性を付与する既知の変異部位、すなわちG50、A51、K185、V500、W503、F507は、結合した除草剤と密に接触している。P126およびA51は疎水性孔を生成させることによってK185側鎖をその場所に保持するのに必要である。特異的イミダゾリノン耐性部位は、結合領域から離れており、その相同性が重畳における変化が予想されるほど不十分である領域に位置する。FAD結合部位は明らかに、この領域でAHASとPOXとの間で低い相同性を有する。S582はトウモロコシにおける耐性を付与する残基であり、そしてS582およびその隣接残基はこの活性部位ポケットと密に接触している。FADおよび残基278〜285を包含するループ領域は第三ドメインから僅かに離れて移動するものと予想され(図4の下流に向かって)、そしてS582を含むループは位置499〜507のヘリックスと位置278〜285のループとの間の空間で重畳されているものと予想される。もう一つの既知の耐性部位であるD305はFADに近接しており、ドメイン1とドメイン2との相互反応を媒介する。M280は位置498〜507でヘリックス配置に包含されるか、または阻害剤結合に直接に包含される。ドメイン1およびドメイン2が相互に僅かに近接して移動する場合には、M208およびD305はまた、阻害剤結合に直接に包含される。
【0039】
3.変異の選択
AHASの一次配列中に変異を導入するための部位として、特定のアミノ酸残基を正確に定める。これらのアミノ酸はそれらの位置に基づいて選択される。すなわち、アミノ酸残基位置が修飾された場合には、結合ポケットに対する除草剤の親和性に関する変更が生じる(すなわち、減退する)。ポケットそれ自体の外側のアミノ酸残基として結合ポケットに存在する変異位置がポケットの電荷または形態を変更することができるか否かは必須ではない。変異のための目標部位の選択は、前記したとおりにして分子モデルを使用して達成される。例えば、上記モデルに従う場合に、位置128に存在するアルギニン(アミノ酸について1文字コードを用いて図1にR128として示されている)は、基質−および除草剤−結合ポケットへの入口近くに位置しており、高度の配座自由性を有し、従って結合ポケット中への帯電した除草剤の輸送に関与することができる。従って、この残基をアラニンにより置換して、その電荷およびその長い疎水性側鎖の両方を分離する。(生成する変異体をR128Aと命名する)。
【0040】
この変異は、単純な置換、すなわち野生型配列をいずれか別のアミノ酸で置き換えることによることができる。別法として、この変異は、1個または2個以上の、好ましくは5個までのアミノ酸を指定部位から削除するか、または指定部位に付加することからなることもできる。この付加配列は別種のプロテインに存在することが既知であるアミノ酸配列からなることができ、あるいは完全合成配列であることもできる。さらにまた、1つ以上の変異および(または)1形式以上の変異を単一のポリペプチド中に導入することもできる。
【0041】
4.部位指向変異
AHASをコードするDNAは、所望の変異が導入されるように操作することができる。変異は、例えばHiguchi,R.によるRecombinant PCR,In M.A.innis等編集、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,177〜183頁、1990に記載されているような当技術で標準的な方法を使用して行われる。
【0042】
5.変異体の発現および精製
変異させたまたは変化させたAHAS配列をDNA発現ベクターにクローン形成し(例えば、例3参照)、例えば大腸菌(E.coli)などの適当な細胞で発現させる。好ましくは、AHASをコードするDNAを転写調節エレメントに結合させ、変異体AHASを縮合プロテイン、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼの一部として発現させ、精製を促進させる(下記例3参照)。この変異体AHASを次いで、アフィニテイクロマトグラフイまたは当技術で公知のいずれかその他の適当な方法を使用して精製する。AHASポリペプチドの「精製」は、当該ポリペプチドを発現させる細胞の別の成分により干渉されることなく、その酵素活性の測定を可能にする形態でAHASポリペプチドを単離することを意味する。
【0043】
6.酵素性の評価
この精製した変異体AHASは下記の3つの性質の1つまたは2つ以上について試験することができる:
(a)ピルビン酸をアセト乳酸に変換することにかかわる特異性または触媒活性(これは単位/mg純粋AHASとして表わされ、この活性の単位は生成されるアセト乳酸1μmol/時間であると定義される)、あるいはピルビン酸と2−ケト酪酸とを縮合させてアセトヒドロキシ酪酸を生成することにかかわる特異性または触媒活性(これは単位/mg純粋AHASとして表わされ、この活性の単位は生成されるアセトヒドロキシ酪酸1μmol/時間であると定義される);
(b)除草剤、例えばイミダゾリノンなどによる阻害レベル(これはIC50として表わされ、IC50は酵素活性の50%が阻害される濃度である);および
(c)選択された除草剤に対する耐性対別種の除草剤に対する耐性の選択性(この選択性の指数は野生型酵素に比較したこの変異体のイミダゾリノンに対する集約耐性(fold resistance)を野生型酵素と比較した同一変異体の別種の除草剤に対する集約耐性で割り算した数値であると定義される)。この野生型酵素と比較した除草剤に対する集約耐性は変異体のIC50値を野生型のIC50値により割り算した数値として表わされる。従って、この選択指数(S.I.)は下記式で表わされる:
【化1】
これらの決定に適する試験方法は、これに制限されないものとして、下記例4に詳細に記載されている方法を包含する。
【0044】
7.a.適当な変異体の評価
変異体AHASポリペプチドの酵素としての性質を野生型AHASと比較する。好ましくは、一定の変異は、インビトロでピルビン酸またはピルビン酸および2−ケト酪酸に向かう酵素活性を保有する、すなわちピルビン酸をアセト酪酸に変換するか、またはピルビン酸と2−ケト酪酸とを縮合させて、アセトヒドロキシ酪酸を生成させるAHAS変異体ポリペプチドをもたらし(従って、インビボでの生物学的活性が予想される)、他方で野生型AHASに比較して選択された除草剤(1種または2種以上)に対して比較的大きい耐性を示す触媒活性を示す。好ましくは、この変異体AHASは:
(i)少なくとも1種の除草剤の不存在下に、
(a)この変異体が発現された細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性を示し;あるいは
(b)細胞中でまた発現された除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組合わされて触媒活性を示す;この組合わされるプロテインは第一のAHAS変異プロテインと同一であっても、あるいは相違していてもよく、これが発現される細胞の生存を維持するのに充分なものである;この場合に、当該細胞は生存にAHAS活性を要する、および
(ii)野生型AHASに比較して、少なくとも1種の除草剤に対してよりも大きい耐性を有し、かつまた野生型AHASに比較して除草剤(1種または2種以上)に対して比較的大きい耐性を有する触媒活性を示す。
【0045】
従って、いずれか1種の特定のAHAS変異体プロテインが細胞の生存の維持に要する全触媒活性を有する必要はないが、単独でまたは同一AHAS変異体の追加のコピイの触媒活性および(または)別種のAHAS変異体プロテイン(1種または2種以上)の触媒活性と組合わされて、その生存にAHAS活性を要する細胞の生存を維持するのに充分な量で若干の触媒活性を有していなければならない。例えば、細胞中に変異体をコードする遺伝子の複数のコピイを導入することによって、あるいは当該変異体の生成を増強させるために比較的強力なプロモーターをさらに含有する遺伝子を導入することによって、触媒活性を許容される最低レベルまで増加させることができる。
【0046】
より大きい耐性の用語は、野生型AHAS触媒活性が除草剤(1種または2種以上)によって減少される程度に比較して、変異体の触媒活性が、生じたとしても、低度で除草剤(1種または2種以上)によって減少されることを意味する。好ましくは、このより大きい耐性を有する変異体AHASは細胞、植物または有機体の生存を維持するのに充分な触媒性を保有し、これに対して野生型AHASは細胞、植物または有機体の生存を維持するのに充分な触媒性を保有していない。
【0047】
好ましくは、除草剤(1種または2種以上)の不存在下における触媒活性は少なくとも約5%であり、最も好ましくは除草剤(1種または2種以上)の不存在下における野生型AHASの触媒活性の約20%よりも大である。最も好適なAHAS変異体はスルホニルウレアを基剤とする除草剤に対する耐性よりも大きいイミダゾリノンに対する耐性を有する。しかしながら、いくつかの用途では、この選択性は必要ではなく、好ましくないこともある。
【0048】
イミダゾリノン−耐性AHAS変異体の場合に、このAHAS変異体は、好ましくは、
(i)当該除草剤の不存在下に、野生型AHASの触媒活性の約20%よりも大きい触媒活性を有し、
(ii)野生型AHASに比較して、イミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性を有し、および
(iii)イミダゾリノン除草剤に比較して、スルホニルウレア除草剤の存在下に比較的大きい感受性を有する触媒活性を有する。
【0049】
最も好ましい除草剤−耐性AHAS変異体は、約20単位/mgの最低特異活性を示し、イミダゾリノンによる阻害が最低であるか、または無く、かつまた別種の除草剤に対するのに比較して、約1.3〜約3000の範囲にわたる選択指数を示す。
【0050】
理論に拘束されることは望まないが、野生型またはその他の目標AHASプロテインに対するこの方法を全体的に繰り返し適用することによって、前記で説明した大きい酵素活性および1種または2種以上の除草剤に対する耐性という望ましい性質を有するAHAS変異体の生成がもたらされるものと信じられる。例えば、特定の位置における野生型AHAS配列の指定アミノ酸への変異は、高度の除草剤耐性を示すが、ピルビン酸またはピルビン酸および2−ケト酪酸に対する酵素活性を格別には喪失していない変異体をもたらすことができる。上記方法の第二の用途では、この出発または目標AHASポリペプチドがこの変異体である(野生型AHASの代わりに)。理論的デザインには、元の変異位置における別のアミノ酸の置換および(または)除草剤耐性の保有が予想されるが、また高度の触媒活性の維持も予想される選択された地点または範囲におけるアミノ酸の付加または削除が包含される。
【0051】
除草剤耐性AHASプロテインの構造に基づく理論的デザインはランダム変異および選択に頼る慣用の手段に優る多くの利点を提供する。例えば、特定のアミノ酸の別のアミノ酸による置換がコドン内の1個以上のヌクレオチドの置換を要する場合には、これがランダムに生じる可能性は実用することができないほど低い。これに対して、理論的デザイン手段により示唆されている場合には、コドン内のヌクレオチド配列の2つまたは3つの変更でさえも容易に実施することができる。例えば、選択的イミダゾリノン耐性を付与する理論的にデザインした変異の一つはアルギニンからグルタミンへの変更を要する。アルギニンはCGT、CGC、CGA、CGG、AGA、AGGによりコードされ、他方グルタミンはGAAおよびGAGによりコードされる。アルギニンコドンの中でGAから始まるものはないことから、この変更には隣接ヌクレオチドの二重の置換が必要であり、この二重置換は、成功を確信しては予想できず、反復できないようなランダム変異を使用することによっては非常に稀に生じるのみである。変異頻度はランダム変異中に増加させることができるが、ヌクレオチド配列における変更は、先行の部位指向変異の不存在下ではAHAS遺伝子全体に等しく生じる可能性がある。これは酵素活性により干渉される無意味な変異が得られる可能性が増加させる。同様に、ランダム変異を使用して、触媒活性を維持しながら除草剤耐性を付与する複数のアミノ酸の置換、削除または置換/削除による変異が見出されることは稀である。除草剤耐性を付与する削除による変異はまた、ランダム変異手段を使用してはほとんど見込みがない。削除は小領域に制限する必要があり、かつまた酵素活性を保有するためにAHASリーディングフレームが保有されるように、三重に生じさせなければならない。
【0052】
しかしながら、構造に基づく理論的手段の場合には、二重のアミノ酸置換および(または)削除による変異が比較的容易に達成され、かつまた正確に目標を定めることができる。さらにまた、ランダム変異に使用される異なる変異原は特定の変異型を創造する。例えば、ナトリウムアジドは植物における一点置換変異を創造し、一方照射は削除を生じさせる傾向を有する。従って、複数の置換/削除組合わせを達成するためには、2種の変異プロトコールを使用しなければならない。
【0053】
さらにまた、除草剤耐性AHAS変異体を理論的にデザインする本発明の構造に基づく方法は、除草剤耐性変異体の確実な改良を可能にする。このステップはランダム変異によっては促進されない。ランダム変異による除草剤耐性のための変異部位の同定は、あったとしても、変異特性の追加の改良を導く確実な利益をもたらすことはほとんどない。他方、本発明による構造に基づく手段は、構造モデルにおけるアミノ酸の位置、環境および機能に基づく手段として改良を可能にする。
【0054】
この繰り返し式改良方法はまた、AHASの3つの重要な性質:耐性のレベル、耐性の選択性および触媒効力を独立して取り扱うことを可能にする。例えば、断定的方法で、補償変異をデザインすることができる。特定の変異が酵素活性に対して有害な作用を有する場合には、第二の補償変異を使用して、活性を保有させることができる。一例として、帯電した残基が変異によって導入されるか、または削除される場合に、ドメイン内の元の電荷の変化を第二の変異の導入によって補償することができる。酵素活性を保有させるための第二の部位における導入、削除または置換を行う位置および残基の種類の決定には、本明細書に記載されているようなモデルから誘導される構造−機能関係にかかわる知見が必要である。
【0055】
7.b.非ペプチド除草剤またはAHAS阻害剤のデザイン
目標プロテインの活性部位を変更し、活性部位に適合させることができるか、またはいずれかの位置に結合する化学的実体は当業者に公知の方法によって、例えばレセプター部位と特異的に相互反応する化合物のデザインを助けるコンピューターデザインプログラムによって、デザインすることができる。
このようなプログラムの例には、LUDI(Biosym Technologies−San Diego,CA)がある(また、Lam等によるScience,263:380,1994;Thompson等によるJ.Med.Chem.,37:3100,1994を参照することができる)。
結合ポケットおよび特に阻害剤結合に包含されるものとして同定されているアミノ酸残基を、阻害剤デザイン用のアンカー地点として使用することができる。部位特異性除草剤のデザインは、農場で、特にAHAS遺伝子の変異によって除草剤耐性を自発的に発現できる雑草の種のコントロールに有利である。
【0056】
除草剤−耐性AHAS変異体:DNA、ベクターおよびポリペプチド
本発明はまた、除草剤−耐性AHAS変異体ポリペプチドをコードする単離DNA分子を包含する。本発明によるAHASポリペプチドをコードする遺伝子は、いずれかの種から、好ましくは植物種から誘導することができ、除草剤耐性を付与する変異は、これらのAHAS遺伝子いずれかの中の相当する位置に導入することができる。相違するAHAS遺伝子の指定のコドン位置の同等性は一次アミノ酸配列およびそのプロテインの保存および類似の三次元構造の保有の両方の関数である。例えば、図5は相違する植物種から誘導されたAHAS間の高度の配列相同性を例示している。これらのAHASポリペプチドは少なくとも約60%〜約70%の総合的相同性を示す。理論に拘束されることは望まないが、高度の保存配列を有するポリペプチドの領域では、ポリペプチド鎖形態がまた保存されているものと信じられる。従って、分子モデル形成用の種の一つからAHASをコードする配列を使用して、初期試験および相互作用性改良用の第二の種からのAHAS遺伝子中に予想どうりの変異を導入することができ、さらに遺伝子転換植物(transgenic plant)における発現用の追加の第三の植物種から誘導されるAHAS中に最適化した変異を導入することができる。
【0057】
一連の態様において、これらのAHAS DNAはAHASポリペプチドの、好ましくは図1のトウモロコシAHASポリペプチドの変異体をコードする。ここで、このポリペプチドは、図1のアミノ酸残基:
【表3】
【0058】
前者のいづれかと機能的に同等なものの先行または後続の1種または2種以上の置換または削除;図1のQ124とH150、あるいはその機能的に同等なものとの間での挿入または削除;図1のG300とD324、あるいはその機能的に同等なものとの間での挿入または削除;および前者のいずれかのすべての組合わせにより修飾することができる。
【0059】
図1のポリペプチド中に導入するか、または別種のAHAS遺伝子における同等の位置に導入するかにかかわらず、この変異は前記残基のいずれかの先行する5個までのアミノ酸または後続の5個までのアミノ酸の削除またはいずれか1個または2個以上の別のアミノ酸の単純置換をもたらすDNA配列の変更を包含することができる。適当なアミノ酸置換には、これらに制限されないものとして、天然産生アミノ酸が包含される。
【0060】
別法として、この変異は、1種または2種以上のアミノ酸が上記位置でフレームとして付加または削除されるようなDNA配列の変更を包含することができる。好ましくは、この付加は約3〜約30ヌクレオチドを包含し、そして削除は約3〜約30ヌクレオチドを包含する。さらにまた、一回変異したポリペプチドが一つよりも多い類似のまたは相違する変異を含むことができる。
【0061】
本発明はまた、DNAおよび対応するRNA配列、ならびにセンスおよびアンチセンス配列を包含する。AHASポリペプチドをコードする核酸配列は天然AHAS調節配列により側面に配列することができ、あるいはプロモーター、エンハサー、応答エレメント、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5´−および3´−非コード領域などの異種配列と組合わせることができる。さらにまた、核酸を修飾して、安定性、溶解性、結合親和性および特異性を変えることができる。一例として、変異体AHASコード配列は選択的にメチル化することができる。本発明の核酸配列はまた、直接にまたは間接的に、検知可能なシグナルを提供できるラベルにより修飾することができる。ラベルの例には、放射性同位元素、蛍光分子、ビオチンなどが包含される。
【0062】
本発明はまた、AHAS変異体をコードする核酸を含有するベクターを提供する。プラスミドおよび真菌ベクターを包含する多数のベクターが種々の真核ホストおよび原核ホストにおける発現にかかわり開示されている。有利には、ベクターにはまた、作動するようにAHASコードプロテインに結合されているプロモーターが包含される。コードされたAHASはいずれか適当なベクターおよびホスト細胞を使用し、本明細書に記載されているか、または引用されている方法、あるいはまた別段では関連技術で当業者に公知の方法を用いて発現させることができる。適当なベクターの例には、これらに制限されないものとして、pBINに基づくベクター、pBluescriptベクターおよびpGEMベクターが包含される。
【0063】
本発明はまた、変異体除草剤−耐性AHASポリペプチドまたはそのポリペプチド断片の両方を包含する。上記で説明したように、変異体AHASポリペプチドは図1に示されているトウモロコシポリペプチドから、あるいはいずれかの植物または微生物AHASポリペプチドから、好ましくは植物AHASポリペプチドから誘導することができる。これらのポリペプチドはまた、例えばホスホリル化、スルフェート化、アシル化、グリコシル化、またはその他のプロテイン修飾により修飾することができる。これらのポリペプチドは植物から分離することができ、あるいは異種有機体または細胞(これらに制限されないものとして、バクテリア、酵母、昆虫、植物および哺乳動物細胞を包含する)から分離することができる。これらの細胞中に変異体AHASポリペプチドをコードする遺伝子を導入し、発現させる。さらにまた、AHASポリペプチドは検知可能なシグナルを生じることができるラベルにより、直接にまたは間接的に、修飾することができ、このようなラベルには放射性同位元素、蛍光化合物などが包含される。
【0064】
化学物質−耐性植物および変異体AHAS遺伝子を含有する植物
本発明は、形質転換原性細胞(trnsgenic cell)を包含し、この細胞には、これらに制限されないものとして、種子、有機体および植物が包含される。このような細胞に除草剤−耐性AHAS変異体をコードする遺伝子を導入する。非制限的例として、適当な受容植物を下記表1に挙げる
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
形質転換原性植物における変異体AHASポリペプチドの発現は、これらに制限されないものとして、イミダゾリノン除草剤、例えばイマゼタピル(imazethapyr)(PURSUIT(登録商標))などの除草剤に対する高度の耐性を付与し、これらの除草剤を形質転換原性植物の栽培中に使用することを可能にする。 植物中への外来遺伝子の導入方法は当技術で公知である。このような方法の非制限的例には、アグロバクテリウム(Agrobacterium)感染、粒子衝撃、原形質体のポリエチレングリコール(PEG)処理、原形質体のエレクトロポレーション(electroporation)、マイクロインジェクション(microinjection)、マクロインジェクション(macroinjection)、チラーインジェクション(tiller injection)、花粉管経路、乾燥種子膨潤、レーザー鑚孔、および電気泳動が包含される。これらの方法は、例えばB.Jenes等およびS.W.Ritchie等によるIn Transgenic Plants,Vol.1,Engineering and Utilization,S.D.Kung編集、R.Wu,Academic Press,Inc.,Harcourt Brace Jovanovich 1993;およびMannonen等によるCritical Reviews in Biotechnology,14:287〜310,1994に記載されている。
【0071】
好適態様において、変異体AHASをコードするDNAは、抗生物質耐性マーカー遺伝子を含有するDNAベクターにクローン形成し、次いでこの組換えAHAS DNA含有プラスミドをTiプラスミド含有アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)中に導入する。この「二成分ベクター系」は、例えば米国特許第4,490,838号およびAn等によるPlant Mol.Biol.Manual,A3:1〜19(1988)に記載されている。この形質転換したアグロバクテリウムを次いで、受容体植物からの葉ディスクとともに共培養し、植物細胞を感染させ、形質転換させる。この形質転換された植物細胞を次いで、新芽の発芽を促進する再生培地で、先ず形質転換細胞を選択するために適当な抗生物質の存在下に、次いで除草剤の存在下に、培養する。除草剤−耐性AHASをコードするDNAにより充分に形質転換された植物細胞においては、形質転換されていない細胞からの新芽の発生を阻止するレベルの除草剤が存在しても、新芽の発芽が生じる。例えば、ポリアミラーゼ連鎖反応(PCR)分析を使用して変異体AHAS DNAの存在を確認した後に、形質転換した植物を、それらの除草剤噴霧に対する耐性能力およびそれらの除草剤の存在下における種子発芽および発根抑制および増殖にかかわる能力について試験する。
【0072】
その他の用途
本発明の方法および組成物は除草剤−耐性AHAS変異体の構造に基づく理論的デザインに使用することができ、この場合に、この変異体は植物中に組み込んで、植物に対して選択的除草剤耐性を付与することができる。AHASの中間変異体(例えば、最適に近い特異活性を示すが、高度の耐性および選択性を示すか、またはその逆である変異体)は、適度の特異的活性を保有し、かつまた高度の耐性および選択性を有する第二世代AHAS変異体をデザインするための鋳型として有用である。
【0073】
除草剤耐性AHAS遺伝子は、単一のまたは複数のコピーで作物種を形質転換させることができる。除草剤に対して減少された感受性を有する作物種の遺伝子エンジニアリングは:
(1)イミダゾリノン除草剤などの特異的有効な、環境に優しい除草剤の適用範囲および柔軟性を増大させることができ;
(2)これらの除草剤の市場価値を高めることができ;
(3)除草剤耐性作物種に対する除草剤の効果的な使用により作物栽培地における雑草による抑圧を減少させ、収穫量を対応して増加させることができ;
(4)除草剤耐性植物の種子の販売高を増加させることができ;
(5)以前の栽培で使用された除草剤の持ち込みからの作物の打撃に対する抵抗性を増大させることができ;
(6)有害な風土条件による除草剤特性の変化に対する感受性を減少させることができ;かつまた
(7)不均一に、または誤って施用された除草剤に対する寛容性を増大させることができる。
一例として、形質転換原性AHAS変異体プロテインを含有する植物を栽培することができる。この作物をAHAS変異体形質転換原性植物が耐性である除草剤の雑草制御有効量で処理することによって、栽培される作物に有害に作用することなく、作物の雑草制御を生じさせることができる。
【0074】
除草剤−耐性AHAS変異体をコードする前記DNAベクターを使用してまた、AHAS変異体の発現がベクターによる細胞の形質転換にかかわる選択性のマーカーを提供することができる。対象受容細胞は培養物であることができ、またはその元のものであることができ、またAHAS変異体遺伝子は単独でまたは別種の選択可能なマーカーと組合わせて使用することができる。唯一の要件は、受容細胞が同種除草剤の細胞毒性作用に対して感受性であることである。この態様は、比較的安価であり、かつまた例えばイミダゾリノン基剤除草剤の毒性が欠落しているという利点をもたらし、DNA媒介形質転換を必要とする全ての系に適用することができる。
【実施例】
【0075】
好ましい態様の例示
以下の実施例により本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
実施例1: 除草剤耐性AHAS変異体のデザイン
詳しく上述したモデルの提案された除草剤結合部位に近接する残基が変異誘発用に、除草剤結合能の減少した活性AHASポリペプチドをデザインするため選択された。ポケット表面の各部位は、コファクターおよび除草剤の他にポケットの他の残基との相互作用の可能性があるものと考えた。例えば、正に帯電した残基の付加は、結合部位内の電荷分布に影響し、負に帯電した除草剤の結合親和性の消失をもたらすものと期待される。
【0076】
三つの残基が変異誘発に最も有用なターゲットとして決定された。
(1)F135はFADのイソアロキサチン環および除草剤の芳香環の両方と相互作用すると考えられた。結合ポケットにもっと帯電した残基を導入する戦略にしたがって、この残基をアルギニンに変えた。
(2)M53はヘリックス498−507と接触している。このヘリックスは、公知の除草剤耐性変異部位を含み、TPP結合とも関わっている。更に、53位でグルタミン酸の置換は、K185との相互作用を有利にし、イマゼタピルのカルボキシル基に対するK185の親和性を減少させるものと考えられた。
(3)R128はポケットの入口の近かくに位置し、それが結合ポケットへの帯電した除草剤の最初の輸送に関与するものと考えられた。この残基は、その電荷と長い疎水性鎖とを除くためにアラニンに変換された。
【0077】
実施例2: 除草剤耐性変異体を製造するための部位特異的変異誘発
アラビドプシスAHAS遺伝子をpGEX−2Tベクター(Pharmacia)中のグルタチオンS−トランスフェラーゼ遺伝子のコード領域の3′末端にインフレーム(in−frame)挿入した。このようにしたベクターの構築は、発現されるグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)/AHAS融合プロテインの結合部に6個のアミノ酸のトロンビン認識配列を保持していた。発現された融合プロテインのトロンビン消化は、トロンビン認識部位から得られるN末端グリシン残基を有する推定トランジットペプチドプロセシング部位のトランジットペプチドの末端に、N末端出発位置を有するAHASを与える。切り出されたAHASプロテインの最終アミノ末端はGly−Ser−Ser−Ile−Serからなる。部位特異的変異誘発はこのベクターのAHAS遺伝子に導入された。
【0078】
部位特異的変異誘発は、樋口のPCR法(Recombinant PCR. In MA Innis, et al. PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego, pp. 177−183, 1990)にしたがってつくられた。二つのPCR産生物で、その各々が変異部位が重なっているものが増幅された。重なり領域のプライマーは変異を含んでいた。重複PCR増幅断片を組み合わせ、変成させ、再連結させて、中断(recessed)3′末端を有するヘテロ二本鎖産生物を製造した。中断3′末端を所望の変異を含む二つの重複PCR産生物の和である断片を製造するためにTaq DNAポリメラーゼによって伸ばした。このフラグメントを二つの外側プライマーだけと引き続いて再増幅すると全長の産生物に富む結果となった。変異を含む産生物をpGEX−2Tベクター中のアラビドプシスAHAS遺伝子に再び導入した。
【0079】
実施例3: AHAS変異体の発現と精製
A)方法
トウモロコシ野生型AHAS遺伝子(ベクター名pAC751)、アラビドプシスSer653Asn変異体またはアラビドプシスIle401Phe変異体を含むpGEX−2Tベクターで形質転換された大腸菌(DH5α)細胞をアンピシリン50μg/mLを含むLB培養液中で一夜増殖させた。大腸菌の一夜培養物をアンピシリン50μg/mLおよびアンチホーム A(0.1 v/v%)のLB1リットルに1:10で希釈した。培養物を37℃でOD600が約0.8になるまで振りながら培養した。イソプロピルチオガラクトース(IPTG)を最終濃度が1mMになるよう加え、培養物を3時間以上培養した。
【0080】
細胞をJA−10ローターで10分間8670xgで遠心することより集め、MTPBS(16mMのNa2HPO4、4mMのNaH2PO4、150mMのNaCl、pH7.3)中に元の培養量の1/100にして再懸濁した。トリトンX−100およびリソザイムを各々最終濃度が1v/v%および100μg/mLになるよう加えた。細胞を30℃で15分間培養し、氷で4℃に冷やし、ミクロチッププローブの付いたBranson Sonifier細胞破砕器を用いてレベル7で10秒超音波をかけ破砕した。細胞を含まぬ抽出物を35,000xgで4℃、10分間遠心した。上清をデカンテーションし、遠心工程を繰り返した。
【0081】
発現された融合プロテインの精製をSmithおよびJohnsonの方法(Gene 67:31−40,1988)を修飾しておこなった。その上清を室温に温め、MTPBS中で平衡にされたグルタチオン−アガロースビーズ(硫黄結合、Sigma)の2mLカラムに通した。次いで、カラムをMTPBSを用いて流出液のA280がMTPBSのそれと同じになるまで室温で洗浄した。次いで、融合プロテインをトリス(Tris)塩酸(50mM、pH8.0)中の還元グルタチオン(5mM)を含む溶液で溶出した。溶出融合プロテインを約30NIH単位のトロンビンを用いて処理し、クエン酸(50mM、pH6.5)およびNaCl(150mM)に対して透析した。
【0082】
融合プロテインを室温で一夜消化した。消化サンプルをMTPBSに対して透析し、遊離したグルタチオントランスフェラーゼプロテインを除くためMTPBS中で平衡にされたグルタチオン−アガロースカラムに二度通した。カラムに吸着しないプロテインフラクションを集め、YM10フィルター(Amicon)で限外ろ過して濃縮した。濃縮サンプルをゲルろ過緩衝液(50mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.0)中で平衡にされたセファクリルS−100ゲルろ過カラム(1.5×95cm)にかける。2mLフラクションを0.14mL/分の流速で集めた。酵素の安定性は、0.02%のナトリウムアジドを添加し、2mMのチアミンピロフォスフェートおよび100μMのフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の存在または非存在下に、ゲルろ過緩衝液中で4℃で保存して試験された。
【0083】
B) 結果
GTS遺伝子でダウンストリーム且つイン−フレームに融合された野生型AHAS遺伝子を含むpAC751プラスミドによって形質転換された大腸菌がIPTGで形質転換されると91kDのプロテインが発現された。この91kDのプロテインは、GST/AHAS融合プロテインの予想された分子量(26kDと65kDの和)を示した。DH5α/pAC751の細胞を含まぬ抽出物をグルタチオン−アガロース親和性ゲルに通し、洗い、そして遊離グルタチオンで溶出すると、91kDのプロテインに富んだ製造物が得られ(図6、レーンC)。GSTとAHASの結合部に設計された6個のアミノ酸のトロンビン認識部位をトロンビンでうまく切断した(図6、レーンD)。切断された融合プロテインは、予想された26kDのGSTプロテインおよび65kDのトウモロコシAHASプロテインからなっていた。トウモロコシAHASをGSTを除くためグルタチオン−アガロース親和性カラムに二度通して精製し、トロンビンを除くため最後のセファクリルS−100ゲルろ過工程に付した(図6、レーンE)。65kDのプロテインは、ウエスタンブロット上トウモロコシAHASペプチドに対するモノクロナル抗体によって認識される。
【0084】
精製された野生型トウモロコシAHASをエレクトロスプレイ質量スペクトルによって分析し、64,996ダルトンの分子量を有することを決定した(データは示されていない)。pGEX−2Tベクターに挿入された遺伝子の推定アミノ酸配列から計算される予想質量は65,058である。実際に測定された質量と予想質量との間で0.096%の誤差は質量スペクトルの調節変動の範囲内であった。二つの質量決定が近似していることは、発現ベクターの構築の際間違って混入したヌクレオチドが無いこと、分子量に大きな変化をおこすようなプロテインに対する翻訳後の修飾も無いことを示唆する。更に、精製酵素の製造物にみかけのピークがないことは、サンプルに混ざりがないことを示した。
【0085】
実施例4: AHAS変異体の酵素特性
大腸菌で製造される野生型および変異体AHASの酵素特性をSinghらの方法(Anal. Biochem.171:173−179,1988)を修飾して以下のように測定した。即ち、
1X AHAS試験緩衝液(50mMのHEPES、PH7.0、100mMのピルビン酸、10mMのMgCl2、1mMのチアミンピロフォスフェートおよび50μMのフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD))を含む反応混合物を酵素の2X試験緩衝液に希釈するか、1X AHAS試験緩衝液に濃縮された酵素を加えるかして得た。イマゼタピルおよび関連対照を含む全ての試験は、50%DMSO溶液として試験混合物にイマゼタピルを添加するため最終5%濃度のDMSOを含有した。試験をミクロタイタープレート中37℃、最終容量250μLで行った。反応を60分間行わせた後、アセト酪酸の蓄積をSinghらによって記載されているように比色測定した(Anal. Biochem.171:173−179,1988)。
【0086】
上記実施例3に記載されたpAC751から発現され精製されたトウモロコシAHASはピルビン酸のアセト乳酸への変換に活性である。完全なAHAS活性は、試験メジウム中のコファクターであるFADおよびTPPの存在による。FADのみを試験メジウムに加えたのでは活性は見られなかった。TPPだけと一緒にした精製酵素の活性は、共にFADおよびTPPの存在下に検出される活性の1%にも達しなかった。通常、植物の粗抽出物に存在するAHASは、特に基質およびコファクターの非存在下に非常に不安定である。これと対照的に細菌発現システムからの精製AHASは、50mMのHEPES PH7.0、150mMのNaCl、0.02%NaN3中、FADおよびTPPの存在または非存在にかかわらず4℃で一ヵ月貯蔵して触媒活性を失わなかった。更に、SDS−PAGEゲルに溶かした時に、これら貯蔵物から分解物は検出されなかった。 野生型AHASとM124E、R199AおよびF206R変異体の比活性を下記表2に示す。図5の配列から決定されるように、アラビドプシスAHASのM124E変異はトウモロコシM53E変異と同等であり、アラビドプシスのR199A変異はトウモロコシR128Aと同等であり、アラビドプシスのF206R変異はトウモロコシF135Rと同等である。トウモロコシAHAS構造モデルにおいてデザインされた変異を双子葉植物のアラビドプシスAHAS遺伝子中の等価アミノ酸を同定するために使用し、アラビドプシスAHAS遺伝子中に挿入および試験した。双子葉植物のアラビドプシスAHAS遺伝子中へ論理的にデザインされた除草剤変異のこの翻訳と挿入は、双子葉植物種の植物における除草剤耐性の評価を促進することができる。
【表9】
【0087】
R199A変異は、イマゼタピルに対し有意なレベルの耐性を示す(図7)と同時に、高いレベルの触媒活性を保っている(表2)。特に、この変異体はスルホニルウレアに対し完全な感受性を保っている(図8)。したがって、この変異体は高い比活性と選択的な除草剤耐性の基準を満たしている。対照的に、M124E置換はイマゼタピルに対しほぼ完全な耐性をもたらすが、またひどく減少した触媒活性を示した(表2)。イミダゾリノン耐性に比較して、この変異体はスルホニルウレアに対し大きな感受性を示す(図8)ことから、この残基は選択的耐性を付与する変異を与えるよい候補であることを示唆している。グルタミン酸以外のアミノ酸の置換が触媒活性を維持するのに役立っている。F206E置換はM124E変異体について観察された結果と類似したものを与えたが、耐性の選択性に欠けた。
【0088】
実施例5: 論理的デザインアプローチによるAHAS除草剤耐性変異体の反復改良
上記実施例4に記載したようにAHASの残基124をMetからGluに変えると、イミダゾリノン耐性が付与されたが、酵素活性は野生型の値の9.2%に減少された。上述のトウモロコシAHAS構造のモデルは、Met53(アラビドプシスMet124残基と同等)が別のサブユニットから得られるα−ヘリックスの表面上のMet53に近接している一連の疎水性残基と相互作用する。したがって、Met53とヘリックス上の残基との疎水性相互作用がサブユニット/サブユニット会合および活性部位のコンフォメーションを安定している。疎水性Metを帯電したグルタミン酸残基で置換することは多分サブユニット間の疎水性相互作用を不安定にし、触媒活性の喪失をもたらす。
【0089】
この構造/機能解析に基づいて、元のアラビドプシスMet124Glu(トウモロコシMet53Gluと同等)変異酵素の活性を、次いでこの位置でより疎水性なアミノ酸(Ile)を置換することによって反復的に改善した。Ile側鎖の疎水性は、野生型のレベルまで活性を戻すことになった(比活性102、野生型活性の102%と同等)が、Ile側鎖のより大きなかさばりがイミダゾリノン耐性の有意なレベルを依然として維持できた(図9)。
比較すると、この位置でヒスチジン残基の置換は、野生型活性の42.6%と同等の42.5の比活性を示した。それにもかかわらず、この変異はPURSUIT(登録商標)に高い耐性を示した(図10)。
【0090】
実施例6: 論理的デザインアプローチを用いAHAS除草剤耐性変異体の反復改良
本発明の方法を用いる反復調整の別の例はArg128Ala変異体を含む。トウモロコシAHASの構造モデルは除草剤結合ポケットの縁にあるArg128残基が帯電した基質と除草剤とを除草剤結合ポケットと活性部位に運ぶのに寄与する。Arg128残基は、AHASの反応メカニズムにおける最初のピルビン酸分子を結合するTPP部分から離れており、アラビドプシスAHASArg199(トウモロコシArg128と同等)のアラニンへの置換は酵素の触媒活性に余り影響しなかった理由を説明している。構造モデルは、もっとはげしい変化をこの位置で触媒活性の高いレベルを維持しながら耐性のレベルを上げるためすることができることを示した。これに基づいて、変異の反復改善は、正に帯電したアルギニン残基を負に帯電したグルタミン酸残基で置換してなされた。このようにして変異された酵素は、高い活性を維持しながら(比活性114、野生型活性の114%と同等)、PURSUIT(登録商標)に改善されたレベルの耐性を有していた(図11)。
【0091】
実施例7: 除草剤耐性変異体の構造に基づく論理的デザインにおける各種の種から得られるAHAS交換性
AHASの三次元構造の構造モデルを上述したようにトウモロコシから得られた単子葉植物AHAS配列で構築する。アラビドプシスのような双子葉植物種から得られるAHASに変異を導入するため、単子葉植物種および双子葉植物種から得られるAHAS配列をGAPおよびPILEUPプログラム(Genetics Computer Group, 575 SequenceDrive, Madison, WI 53711)を用いて並べる。同等の位置をコンピュター産出の並びから決定する。次いで、変異を上述のように双子葉植物AHAS遺伝子に導入する。大腸菌の変異AHASプロテインの発現および生化学的性質の評価(即ち、比活性および除草剤耐性)に続いて、変異遺伝子を上記の植物形質転換法によって双子葉植物に導入する。
【0092】
実施例8: 論理的にデザインされたAHAS遺伝子を用いる形質転換による除草剤耐性植物の製造
DNA構築:
大腸菌発現ベクター内に含まれる論理的にデザインされたAHAS変異体遺伝子を、アラビドプシスAHAS遺伝子に等価制限フラグメントを置き換えるためのDNA制限フラグメントの元として使用した。この遺伝子は、アラビドプシスAHASプロモター、アラビドプシスAHAS終結配列および5′−と3′−隣接DNAを含む5.5kbの遺伝子DNAフラグメント中に存在する。適切な変異の存在を確認するために変異部位を通したDNA塩基配列の配列形成をした後、各プラスミドからの全5.5kbフラグメントをpBINに基づく植物形質転換ベクター(Mogen, Leiden, Netherlands)に挿入した。また、植物形質転換ベクターは、35Sカリフラワーモザイクウイルスプロモターによって駆動されるネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)カナマイシン耐性遺伝子を含む。最終ベクター構築を図12に示す。Met124Ile、Met124HisおよびArg199Glu変異(図1に示されたトウモロコシAHAS配列におけるMet53Ile、Met53HisおよびArg128Glu変異に対応)を有するアラビドプシスAHAS遺伝子を含むベクターに各々pJK002、pJK003およびpJK004のラベルを付けた。
【0093】
これらのベクターの各々を、An et al. Plant Mol.Biol.Manual 43:1−19(1988)に記載された形質転換方法を用いてアグロバクテリウム ツメファシエンス株LBA4404に形質転換した(R&D Life Technologies,Gaithersburg, MD)。
【0094】
植物形質転換:
タバコ属cv.Wisconsin 38の葉の断片形質転換をHorschら(Science,227:1229−1231,1985)によって記載されているものを少し変えて行った。葉の断片を無菌状態で成長した植物から切り出し、Murashige Skoog培地(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)で、プラスミドpJK002、pJK003またはpJK004を含むアグロバクテリウム ツメファシエンスと共に2−3日間、25℃暗所でひっくり返して培養した。この断片を乾式ブロットし、ベンジルアデニン(1MG/L)、1−ナフチル酢酸(0.1mg/L)、カナマイシン(500mg/L)およびセホタキシム(500mg/L)(全てSigmaから入手)を含むB5ビタミンとともに再生Murashige Skoog培地に移した。
初めに、形質転換体を形質転換ベクター中に存在するnptII遺伝子によって付与されるカナマイシン耐性によって選択した。葉の断片から得られる苗条を切り出し、セホタキシムおよびカナマイシンを含有する新鮮なMurashige Skoog培地に置いた。
【0095】
インビボ除草剤耐性
カナマイシン耐性タバコ苗条をイマゼタピル(0.25μM)を含む培地に移した。この濃度のイミダゾリノン除草剤で、非形質転換タバコ苗条(内因性野生型AHASを含有)は、根形成を開始できなかった。対照的に、根形成および成長が各変異AHAS遺伝子で形質転換されたタバコ苗条から観察された。Met124IleおよびArg199Glu変異遺伝子で形質転換された苗条から出た根を野生型と共に図13に示す。更に、Met124IleおよびArg199Glu変異遺伝子で形質転換された植物は、イマゼタピルの農場レート(100g/ヘクタール)の二倍散布に対して耐性であった(図13)。除草剤の存在下の非形質転換植物に対する形質転換植物の根成長のパターンおよび除草剤散布後の様子は、論理的にデザインされた除草剤耐性遺伝子の発現がインビボ除草剤耐性を付与していることを示唆している。
【0096】
除草剤耐性タバコ中の論理的にデザインされた遺伝子の検出
ゲノムDNAをAHAS形質転換タバコ植物から単離し、アラビドプシスAHAS変異遺伝子の存在をPCR分析で証明した。アラビドプシスAHAS遺伝子のヌクレオチド配列と二つのタバコAHAS遺伝子のヌクレオチド配列との間の差異を、タバコゲノムDNAバックグラウンドのアラビドプシス遺伝子のみを増幅するPCRプライマーのデザインに用いた。論理的にデザインされた除草剤耐性遺伝子を検出した。これは除草剤耐性植物の大多数において適当なサイズのDNAフラグメントの増幅によって示されている。非形質転換タバコ植物からPCRシグナルは見られなかった。
【0097】
形質転換AHAS遺伝子の分離
形質転換植物中の論理的にデザインされたAHAS遺伝子の分離を調べるため、発芽試験を行った。種子をPURSUIT(登録商標)2.5μMおよびカナマイシン100μMまで含むホルモンの入っていないMurashige Skoog培地に置いた。得られた実生を除草剤に対する耐性または感受性に対して目で点数をつけた。
タバコ植物は二倍体であるから、自家授粉植物の子孫は耐性3に感受性1の比に分かれることが期待され、耐性AHAS遺伝子に対する一つの実生ホモ接合体、耐性AHAS遺伝子に対する二つの実生ヘテロ接合および耐性AHAS遺伝子を欠く一つの実生の存在を示す。
【0098】
結果は、耐性AHAS遺伝子が予想された3:1の比に分かれることを示し、除草剤耐性が論理的にデザインされたAHAS遺伝子の一つの支配的なコピーによって付与されるという結論を支持している。
これらの結果は、除草剤耐性AHAS遺伝子の論理的にデザインをインビボで除草剤耐性の成長を示す植物の製造に使用できることを示している。
【0099】
実施例9: 論理的にデザインされたAHAS遺伝子による形質転換によって異なる除草剤に対する交差耐性植物の製造
上記実施例8の論理的にデザインされたAHAS遺伝子を用いて形質転換されたタバコ植物を、また別の除草剤CL299,263(イマザモックスとしても公知)に対する交差耐性について試験した。発芽試験をCL299,263(2.5μM)の存在または非存在下、Met124Ile、Met124HisおよびArg199GluのアラビドプシスAHAS変異体遺伝子を含む一次形質転換体から収穫された種子について行った(図15)。この濃度の除草剤は、野生型タバコ植物の激しい発育阻害と脱色を生じさせる。Met124HisAHAS遺伝子で形質転換されたタバコ植物は、最大レベルの耐性を示した(図15)。Arg199Glu形質転換体は中間レベルの耐性を示したが、Met124Ileはほとんど耐性を示さなかった(図15)。
【0100】
上記のすべての特許、出願、論文、出版物および試験方法はここに引用して組み入れる。
本発明の多くの変更が上記の詳細な記述のもと当業者に示唆を与えるであろう。そのような明らかな変更は、添付されている特許請求項の全ての意図された範囲に入るものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1a】図1aは、植物AHAS酵素の一つの例として示されるトウモロコシ由来のアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)の約599アミノ酸配列に対応する600アミノ酸配列の例示である。この配列はトランジット配列を含まず、余分のグリシンはトロンビン分解部位から残っている。Met53、Arg128およびPhe135残基は太字で示されている。
【図1b】図1bは、植物AHAS酵素の一つの例として示されるトウモロコシ由来のアセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)の約599アミノ酸配列に対応する600アミノ酸配列の例示である。この配列はトランジット配列を含まず、余分のグリシンはトロンビン分解部位から残っている。Met53、Arg128およびPhe135残基は太字で示されている。
【0102】
【図2a】図2は、トウモロコシAHASおよびラクトバチラスプラナルム由来ピルビン酸オキシダーゼ(POX)の配列を一列にならべたものである。
【図2b】図2は、トウモロコシAHASおよびラクトバチラスプラナルム由来ピルビン酸オキシダーゼ(POX)の配列を一列にならべたものである。
【0103】
【図3a】図3aは、AHASサブユニットの二次構造の図式的な表示である。通常の二次構造部分のαヘリックスおよびβシートは、各々円と長円として描かれ、サブユニット中の三つのドメインの各々に対して別々に番号をつけている。ループやコイル領域を、その始まりと終りを表わす数字をつけて黒線で示す。コファクター結合部位および公知の変異部位は、各々八角形および星印で示される。
【図3b】図3bは、AHASサブユニットの二次構造の図式的な表示である。通常の二次構造部分のαヘリックスおよびβシートは、各々円と長円として描かれ、サブユニット中の三つのドメインの各々に対して別々に番号をつけている。ループやコイル領域を、その始まりと終りを表わす数字をつけて黒線で示す。コファクター結合部位および公知の変異部位は、各々八角形および星印で示される。
【図3c】図3cは、AHASサブユニットの二次構造の図式的な表示である。通常の二次構造部分のαヘリックスおよびβシートは、各々円と長円として描かれ、サブユニット中の三つのドメインの各々に対して別々に番号をつけている。ループやコイル領域を、その始まりと終りを表わす数字をつけて黒線で示す。コファクター結合部位および公知の変異部位は、各々八角形および星印で示される。
【0104】
【図4】図4は、結合ポケットに合ったイマゼタピル(PURSUITR(登録商標)除草剤)を有するトウモロコシAHASの活性部位のコンピュターによるモデルの例示である。
【0105】
【図5a】図5aは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5b】図5bは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5c】図5cは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5d】図5dは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5e】図5eは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5f】図5fは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5g】図5gは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【図5h】図5hは、異なる植物種から得られるAHASアミノ酸配列の相同性の例示である。pAC751は、図1におけるようにpAC751大腸菌発現ベクターで発現されるトウモロコシals2AHASアイソザイムであり、トウモロコシals2はトウモロコシals2AHASアイソザイムである。トウモロコシals1はトウモロコシals1AHASアイソザイムである。Tobac1はタバコAHAS SuRAアイソザイムである。Tobac2はタバコAHAS SuRBアイソザイムである。Athcsr12はシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)Csr1.2AHAS遺伝子である。Bnaal3はセイヨウアブラナ(Brassica napus)AHASIIIアイソザイムであり、Bnaal2はセイヨウアブラナAHASIIアイソザイムである。pAC751およびトウモロコシals2は、同一遺伝子であるが、トウモロコシals2がトランジット配列のはじめから出発するのに対して、pAC751はpGEX−2T発現ベクター中のトロンビン認識配列によるN末端に付加的にグリシンを有する推定成熟N末端部位ではじまる。N末端グリシンはその位置において天然のアミノ酸ではない。AHASプロテインのアミノ酸配列の並びは,PILEUP(GCGパッケージ−Genetics Computer Group,Inc.,−University Reseach Park−Madison−WI)によってつくられる。コンセンサス配列は、PRETTY GCGパッケージによってつくられる。
【0106】
【図6】図6は、トウモロコシAHASの精製を示すプロテインに対して染色されたSDSポリアクリルアミドゲルの写真例である。レーンは左から右へ、A;分子量マーカー、B;大腸菌(E.coli)粗細胞抽出物、C;グルタチオン−アガロース アフィニティ精製物、D;該アフィニティ精製物のトロンビン消化物、E;二度目のグルタチオン−アガロースカラムとセファクリルS−100ゲルろ過を含む。
【図7】図7は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型と変異AHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験結果のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【0107】
【図8】図8は、スルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下および増加する濃度での存在下における、野生型と変異AHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験結果のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【図9】図9は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)およびスルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型アラビドプシス(Arabidopsis)AHASプロテインとMet124Ile変異AHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【0108】
【図10】図10は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)およびスルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型アラビドプシスAHASプロテインとMet124His変異アラビドプシスAHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【図11】図11は、イマゼタピル(PURSUIT(登録商標)除草剤)およびスルホメツロンメチル(OUST(登録商標)除草剤)の非存在下または増加する濃度での存在下における、野生型アラビドプシスAHASプロテインとArg199Glu変異アラビドプシスAHASプロテインの酵素活性のインビトロ試験のグラフ例である。Y軸は変異酵素の活性(%)を示し、100%値は阻害剤の非存在下で測定される。
【0109】
【図12】図12は、35Sプロモターのコントロール下にnptII遺伝子(カナマイシン耐性をコードする)およびアラビドプシスAHASプロモターのコントロール下にAHAS遺伝子(野生型または変異体)含む植物形質転換のために使用されるDNAベクターの模式図による説明である。
【図13】図13はMet124Ile変異またはArg199Glu変異のどちらかを含むアラビドプシスAHAS遺伝子で形質転換されたタバコ植物および非形質転換対照の発根を示す写真である。植物は0.25μMのイマゼタピルを含有する培地に移した後、18日間生育させた。
【0110】
【図14】図14は、Met124Ile、Met124HIsまたはArg199Glu変異を含むアラビドプシスAHAS遺伝子で形質転換されたタバコ植物とイマゼタピルのフィールド率(100g/ヘクタール)の二倍で散布された非形質転換対照とを示す写真である。
【図15】図15は、除草剤CL299,263(imazamox)の存在下に行われた発芽試験の結果を示す写真であって、この試験は、Met124Ile、Met124HIsまたはArg199Glu変異を含むアラビドプシスAHAS遺伝子で形質転換された一次タバコ植物形質転換体から収穫された種子について行われた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインを、ピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング同等物上に、該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、該変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、該目標AHASプロテイン中のアミノ酸位置を選沢すること;
(d)該位置で該変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、該目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、そして (e)該位置で該変異を含む該変異体AHASが製造される条件下に、第一の細胞中で該変異DNAを発現すること;
からなる前記方法。
【請求項2】
請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法であって、
(f)第二の細胞に対応する野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(g)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(h)少なくとも一つの該除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの該除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一の該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中にも発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に対して野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまで、ステップ(e)の該変異体をコードする該DNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(c)−(h)を繰り返すこと、
をさらに包含する前記方法。
【請求項3】
該AHASモデリングと同等なものがトランスケトラーゼ、カルボリガーゼおよびピルビン酸デカルボキシラーゼからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項4】
少なくとも一つ以上の該除草剤の非存在下の該触媒活性は、少なくとも一つの該除草剤の上記条件下の該野生型AHASの触媒活性の約20%以上であることを特徴とする、請求項2において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項5】
該除草剤がイミダゾリノン除草剤であり、該第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(1)該除草剤非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性;および
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有することを特徴とする、請求項4において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項6】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項7】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)から誘導されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項8】
該第一の細胞が大腸菌(E.coli)であることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項9】
該第一および第二の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項10】
該目標AHASプロテインが図1の配列またはその機能的に同等なものを有するプロテインを含むことを特徴とする、請求項1において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項11】
該変異が、
【表1】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なもの、およびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表2】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なもの、およびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項12】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項11において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項13】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインを、図1の配列を有するポリペプチドから得られる第一のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に、該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、該目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(d)該位置で変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、該目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、そして
(e)該位置で該変異を含む該変異体AHASが製造される条件下第一の細胞中で該変異DNAを発現すること;
からなる前記方法。
【請求項14】
請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法であって、 (f)第二の細胞で平行して野生型AHASをコードするDNAを発現すること;
(g)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(h)少なくとも一つの除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの該除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一の該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中にも発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に対して野生型AHASよりも耐性である触媒活性
を有することが同定されるまで、ステップ(e)の該変異体をコードする該DNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(c)−(h)を繰り返すこと
をさらに包含する前記方法。
【請求項15】
少なくとも一つの該除草剤の非存在下の該触媒活性が、該野生型AHASの触媒活性の約20%以上であることを特徴とする、請求項14において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項16】
該除草剤がイミダゾリノン除草剤であり、該第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(1)該除草剤の非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性、および
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的により感受性である触媒活性
を有することを特徴とする、請求項15において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項17】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項18】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項19】
該第一の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項20】
該第一および第二の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項19において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項21】
該変異が、
【表3】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表4】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項13において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項22】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、前者いずれかと機能的に同等なものおよび前者いずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項21において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項23】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する、構造に基づくモデリング方法であって、
(a)該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、同定された除草剤結合ポケットおよび図1の配列を有する最初のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に目標AHASプロテインを並べること;
(b)変異の目標として、該変異が該結合ポケットに対する少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、該目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(c)該位置で該変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、該目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること;
(d)該位置で該変異を含む該変異体AHASが製造される条件下で該変異DNAを第一の細胞で発現すること;
からなる前記方法。
【請求項24】
請求項23において定義される構造に基づくモデリング方法であって、
(e)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(f)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(g)少なくとも一つの該除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;
(h)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの該除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一の該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中にも発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に対して野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまで、ステップ(d)の該AHASをコードする該DNAがステップ(b)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(b)−(g)を繰り返すこと;
をさらに包含する前記方法。
【請求項25】
少なくとも一つの該除草剤の非存在下の該触媒活性が、該野生型AHASの触媒活性の約20%以上であることを特徴とする、請求項24において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項26】
該除草剤がイミダゾリノン除草剤であり、第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(1)該除草剤非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性;および
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有することを特徴とする、請求項25において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項27】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項28】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項29】
該細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項30】
該第一および第二の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項24において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項31】
該変異が、
【表5】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表6】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項32】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項31において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項33】
アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)変異体プロテインをコードする単離DNAであって、該変異体プロテインが、
【表7】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表8】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
によって修飾されたAHASプロテインまたはその機能的に同等なものからなることを特徴とする、前記単離DNA。
【請求項34】
該修飾が該プロテインの酵素活性を阻害する除草剤の能力を変えることを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項35】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項34において定義されるDNA。
【請求項36】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項37】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項38】
該変異体AHASプロテインが、
(a)少なくとも一つのAHAS阻害除草剤の非存在下、
(1)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(2)該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中に発現されるあらゆる第二の除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHAS活性を必要とする、および
(b)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することを特徴とする、請求項37において定義されるDNA。
【請求項39】
該変異体AHASが該野生型AHASの触媒活性の約20%以上を有することを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項40】
該変異体AHASがイミダゾリノンに基づく除草剤に対して、スルホニルウレアに基づく除草剤に対してよりも少なくとも2倍は耐性であることを特徴とする、請求項39において定義されるDNA。
【請求項41】
作動するように転写調節エレメントに結合している請求項33のをDNAを含むDNAベクター。
【請求項42】
該細胞が細菌、カビ、植物、昆虫および哺乳動物の細胞からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項41において定義されるDNAベクターから誘導されるAHASをコードするDNA配列を含む細胞。
【請求項43】
植物細胞からなる請求項42において定義される細胞。
【請求項44】
請求項43において定義される細胞からなる種子。
【請求項45】
請求項33において定義されるDNAによってコードされるプロテインからなる変異体AHASプロテイン。
【請求項46】
【表9】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表10】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
によって修飾されたAHASプロテインからなる変異体AHASプロテイン。
【請求項47】
該修飾が該プロテインの酵素活性を阻害する除草剤の能力を変えることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項48】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項49】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項50】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項51】
該変異体AHASプロテインが、
(a)少なくとも一つのAHAS阻害除草剤の非存在下、
(1)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(2)該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中に発現されるあらゆる第二の除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(b)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;を有することを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項52】
該変異体AHASが該野生型AHASの触媒活性の約20%以上を有することを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項53】
細胞に除草剤耐性を付与するための方法であって、
(a)請求項33において定義されるDNAを適切な発現ベクターにクローニングすること;および
(b)該遺伝子が該細胞に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで発現されることからなる条件下該DNAを該細胞に形質転換すること;
を特徴とする、前記方法。
【請求項54】
請求項53の方法に従って製造される細胞。
【請求項55】
請求項54において定義される細胞を含む植物。
【請求項56】
該変異遺伝子が53、128、135またはそれらの組み合わせの少なくとも一つの位置で異なるアミノ酸をコードすることを特徴とする、請求項53において定義される方法。
【請求項57】
該AHAS遺伝子がシロイヌナズナ遺伝子を含むことを特徴とする、請求項56において定義される方法。
【請求項58】
該細胞が細菌、カビ、植物、昆虫および哺乳動物の細胞からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項53において定義される方法。
【請求項59】
該細胞が植物細胞であることを特徴とする、請求項58において定義される方法。
【請求項60】
該細胞が種子中にあることを特徴とする、請求項59において定義される方法。
【請求項61】
除草剤耐性AHASプロテインの製造方法であって、
(a)変異の目標として、AHASプロテイン中のアミノ酸位置を選沢すること;
(b)該位置で変異をコードする変異DNAを製造するため、AHASをコードするDNAを変異すること;
(c)該位置に該変異を含む変異体AHASが製造される条件下に、第一の細胞中で該変異DNAを発現すること;
(d)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインを発現すること;
(e)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(f)イミダゾリノン除草剤またはスルホニルウレア除草剤の非存在または存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;
(g)除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)除草剤の非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性、そして
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有するまで、該変異体がステップ(b)のAHASをコードするDNAとして使用されるようステップ(a)−(g)を繰り返すこと;
からなる前記方法。
【請求項62】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項63】
該AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項64】
該細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項65】
該目標AHASプロテインが図1の配列を有するプロテインを含むことを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項66】
該方法が
【表11】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表12】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項65において定義される方法。
【請求項67】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項66において定義される方法。
【請求項68】
作物における雑草を管理するための方法であって、請求項55において定義される除草剤耐性植物を栽培し、そして雑草を管理するのに有効な量の該除草剤を用いて該作物を処理する;
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項69】
作物における雑草を管理するための方法であって、請求項55において定義される除草剤耐性植物を含む作物を栽培し、そして雑草を管理するのに有効な量の該除草剤を含む除草組成物を用いて該作物を処理すること、
を特徴とする、前記方法。
【請求項70】
AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために目標AHASプロテインをピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング機能同等物上に並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために、AHAS阻害活性を有する第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること、そして
(c)該第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分該AHAS活性を阻害するために、該結合ポケットのAHAS活性阻害効果性部分と関わる非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる前記方法。
【請求項71】
該AHASモデリングの機能同等物がトランスケトラーゼ、カルボリガーゼおよびピルビン酸デカルボキシラーゼからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項72】
該第一の除草剤が該結合ポケットの官能性基と相互作用する少なくとも一つの官能性基を含むことを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項73】
該第一の除草剤が該結合ポケットの少なくともAHAS活性阻害に有効な部分に結合することを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項74】
該第一の除草剤が該触媒活性を野生型AHASの触媒活性の約20%以下に阻害することを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項75】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項76】
該目標AHASプロテインが図1の配列またはその機能的に同等なもの有するプロテインを含むことを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項77】
AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、該目標AHASプロテインを図1の配列を有するポリペプチドから得られる第一のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために、第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;および
(c)該第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分該AHAS活性を阻害するために、該結合ポケットのAHAS活性阻害効果性部分と関わる非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる前記方法。
【請求項78】
該第一の除草剤が該結合ポケットの官能性基と相互作用する少なくとも一つの官能性基を含むことを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項79】
該第一の除草剤が該結合ポケットの少なくともAHAS活性阻害に有効な部分に結合することを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項80】
該第一の除草剤が該AHASの該触媒活性を野生型AHASの触媒活性の約20%以下に阻害することを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項81】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項82】
AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための、構造に基づくモデリング方法であって、
(a)該除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分に該AHAS活性を阻害するために、AHASプロテインの結合ポケットのAHAS活性阻害有効部分と関わる非ペプチド性の除草剤をデザインすること;
からなる前記方法。
【請求項83】
請求項33において定義されるDNAで形質転換された細胞であって、該DNAを該細胞に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで該細胞中に発現することを特徴とする、前記細胞。
【請求項84】
請求項33において定義されるDNAで形質転換された植物であって、該DNAを該植物に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで該植物中に発現することを特徴とする、前記植物。
【請求項1】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインを、ピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング同等物上に、該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、該変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、該目標AHASプロテイン中のアミノ酸位置を選沢すること;
(d)該位置で該変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、該目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、そして (e)該位置で該変異を含む該変異体AHASが製造される条件下に、第一の細胞中で該変異DNAを発現すること;
からなる前記方法。
【請求項2】
請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法であって、
(f)第二の細胞に対応する野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(g)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(h)少なくとも一つの該除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの該除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一の該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中にも発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に対して野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまで、ステップ(e)の該変異体をコードする該DNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(c)−(h)を繰り返すこと、
をさらに包含する前記方法。
【請求項3】
該AHASモデリングと同等なものがトランスケトラーゼ、カルボリガーゼおよびピルビン酸デカルボキシラーゼからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項4】
少なくとも一つ以上の該除草剤の非存在下の該触媒活性は、少なくとも一つの該除草剤の上記条件下の該野生型AHASの触媒活性の約20%以上であることを特徴とする、請求項2において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項5】
該除草剤がイミダゾリノン除草剤であり、該第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(1)該除草剤非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性;および
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有することを特徴とする、請求項4において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項6】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項7】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)から誘導されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項8】
該第一の細胞が大腸菌(E.coli)であることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項9】
該第一および第二の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項10】
該目標AHASプロテインが図1の配列またはその機能的に同等なものを有するプロテインを含むことを特徴とする、請求項1において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項11】
該変異が、
【表1】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なもの、およびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表2】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なもの、およびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項1において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項12】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項11において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項13】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインを、図1の配列を有するポリペプチドから得られる第一のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に、該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットを局在させるために一つ以上の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;
(c)変異の目標として、変異が該結合ポケットに対して少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、該目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(d)該位置で変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、該目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること、そして
(e)該位置で該変異を含む該変異体AHASが製造される条件下第一の細胞中で該変異DNAを発現すること;
からなる前記方法。
【請求項14】
請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法であって、 (f)第二の細胞で平行して野生型AHASをコードするDNAを発現すること;
(g)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(h)少なくとも一つの除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;および
(i)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの該除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一の該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中にも発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に対して野生型AHASよりも耐性である触媒活性
を有することが同定されるまで、ステップ(e)の該変異体をコードする該DNAがステップ(c)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(c)−(h)を繰り返すこと
をさらに包含する前記方法。
【請求項15】
少なくとも一つの該除草剤の非存在下の該触媒活性が、該野生型AHASの触媒活性の約20%以上であることを特徴とする、請求項14において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項16】
該除草剤がイミダゾリノン除草剤であり、該第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(1)該除草剤の非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性、および
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的により感受性である触媒活性
を有することを特徴とする、請求項15において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項17】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項18】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項19】
該第一の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項13において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項20】
該第一および第二の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項19において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項21】
該変異が、
【表3】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表4】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項13において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項22】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、前者いずれかと機能的に同等なものおよび前者いずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項21において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項23】
除草剤耐性AHAS変異体プロテインの製造に対する、構造に基づくモデリング方法であって、
(a)該目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、同定された除草剤結合ポケットおよび図1の配列を有する最初のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に目標AHASプロテインを並べること;
(b)変異の目標として、該変異が該結合ポケットに対する少なくとも一つの除草剤の親和性を変えるために、該目標AHASプロテイン中の少なくとも一つのアミノ酸位置を選沢すること;
(c)該位置で該変異を含む変異体AHASをコードする変異DNAを製造するため、該目標AHASプロテインをコードするDNAを変異すること;
(d)該位置で該変異を含む該変異体AHASが製造される条件下で該変異DNAを第一の細胞で発現すること;
からなる前記方法。
【請求項24】
請求項23において定義される構造に基づくモデリング方法であって、
(e)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインをコードするDNA発現すること;
(f)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(g)少なくとも一つの該除草剤の存在または非存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換またはアセトヒドロキシ酪酸を生成するピルビン酸とケト酪酸との縮合における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;
(h)第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)少なくとも一つの該除草剤の非存在下、
(a)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(b)第一の該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中にも発現されるあらゆる除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(2)少なくとも一つの除草剤に対して野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することが同定されるまで、ステップ(d)の該AHASをコードする該DNAがステップ(b)のAHASをコードするDNAとして使用されるように、ステップ(b)−(g)を繰り返すこと;
をさらに包含する前記方法。
【請求項25】
少なくとも一つの該除草剤の非存在下の該触媒活性が、該野生型AHASの触媒活性の約20%以上であることを特徴とする、請求項24において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項26】
該除草剤がイミダゾリノン除草剤であり、第一の除草剤耐性AHAS変異体プロテインは、
(1)該除草剤非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性;および
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有することを特徴とする、請求項25において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項27】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項28】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項29】
該細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項30】
該第一および第二の細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項24において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項31】
該変異が、
【表5】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表6】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項23において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項32】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項31において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項33】
アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)変異体プロテインをコードする単離DNAであって、該変異体プロテインが、
【表7】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表8】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
によって修飾されたAHASプロテインまたはその機能的に同等なものからなることを特徴とする、前記単離DNA。
【請求項34】
該修飾が該プロテインの酵素活性を阻害する除草剤の能力を変えることを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項35】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項34において定義されるDNA。
【請求項36】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項37】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項38】
該変異体AHASプロテインが、
(a)少なくとも一つのAHAS阻害除草剤の非存在下、
(1)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(2)該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中に発現されるあらゆる第二の除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHAS活性を必要とする、および
(b)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;
を有することを特徴とする、請求項37において定義されるDNA。
【請求項39】
該変異体AHASが該野生型AHASの触媒活性の約20%以上を有することを特徴とする、請求項33において定義されるDNA。
【請求項40】
該変異体AHASがイミダゾリノンに基づく除草剤に対して、スルホニルウレアに基づく除草剤に対してよりも少なくとも2倍は耐性であることを特徴とする、請求項39において定義されるDNA。
【請求項41】
作動するように転写調節エレメントに結合している請求項33のをDNAを含むDNAベクター。
【請求項42】
該細胞が細菌、カビ、植物、昆虫および哺乳動物の細胞からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項41において定義されるDNAベクターから誘導されるAHASをコードするDNA配列を含む細胞。
【請求項43】
植物細胞からなる請求項42において定義される細胞。
【請求項44】
請求項43において定義される細胞からなる種子。
【請求項45】
請求項33において定義されるDNAによってコードされるプロテインからなる変異体AHASプロテイン。
【請求項46】
【表9】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表10】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
によって修飾されたAHASプロテインからなる変異体AHASプロテイン。
【請求項47】
該修飾が該プロテインの酵素活性を阻害する除草剤の能力を変えることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項48】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項49】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項50】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項51】
該変異体AHASプロテインが、
(a)少なくとも一つのAHAS阻害除草剤の非存在下、
(1)それが発現される細胞の生存を維持するのに単独で充分な触媒活性;または
(2)該AHAS変異体プロテインと同じか異なっていてもよい該細胞中に発現されるあらゆる第二の除草剤耐性AHAS変異体プロテインと組み合わせて、それが発現される細胞の生存を維持するのに充分な触媒活性;ここにおいて該細胞は生存のためAHASを必要とする、および
(b)少なくとも一つの除草剤に野生型AHASよりも耐性である触媒活性;を有することを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項52】
該変異体AHASが該野生型AHASの触媒活性の約20%以上を有することを特徴とする、請求項46において定義される変異体AHASプロテイン。
【請求項53】
細胞に除草剤耐性を付与するための方法であって、
(a)請求項33において定義されるDNAを適切な発現ベクターにクローニングすること;および
(b)該遺伝子が該細胞に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで発現されることからなる条件下該DNAを該細胞に形質転換すること;
を特徴とする、前記方法。
【請求項54】
請求項53の方法に従って製造される細胞。
【請求項55】
請求項54において定義される細胞を含む植物。
【請求項56】
該変異遺伝子が53、128、135またはそれらの組み合わせの少なくとも一つの位置で異なるアミノ酸をコードすることを特徴とする、請求項53において定義される方法。
【請求項57】
該AHAS遺伝子がシロイヌナズナ遺伝子を含むことを特徴とする、請求項56において定義される方法。
【請求項58】
該細胞が細菌、カビ、植物、昆虫および哺乳動物の細胞からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項53において定義される方法。
【請求項59】
該細胞が植物細胞であることを特徴とする、請求項58において定義される方法。
【請求項60】
該細胞が種子中にあることを特徴とする、請求項59において定義される方法。
【請求項61】
除草剤耐性AHASプロテインの製造方法であって、
(a)変異の目標として、AHASプロテイン中のアミノ酸位置を選沢すること;
(b)該位置で変異をコードする変異DNAを製造するため、AHASをコードするDNAを変異すること;
(c)該位置に該変異を含む変異体AHASが製造される条件下に、第一の細胞中で該変異DNAを発現すること;
(d)第二の細胞で平行して野生型AHASプロテインを発現すること;
(e)該野生型および該変異体AHASプロテインを該細胞から精製すること;
(f)イミダゾリノン除草剤またはスルホニルウレア除草剤の非存在または存在下、ピルビン酸のアセト乳酸への変換における触媒活性について該野生型および該変異体AHASプロテインを試験すること;
(g)除草剤耐性AHAS変異体プロテインが、
(1)除草剤の非存在下において、該野生型AHASの触媒活性の約20%よりも高い触媒活性;
(2)野生型AHASに較べてイミダゾリノン除草剤の存在に対して比較的より耐性である触媒活性、そして
(3)イミダゾリノン除草剤に較べてスルホニルウレア除草剤の存在に対して比較的より感受性である触媒活性;
を有するまで、該変異体がステップ(b)のAHASをコードするDNAとして使用されるようステップ(a)−(g)を繰り返すこと;
からなる前記方法。
【請求項62】
該除草剤がイミダゾリノン類、スルホニルウレア類、トリアゾロピリミジンスルホンアミド類、ピリミジルオキシ安息香酸類、スルファモイルウレア類、スルホカルボキサミド類およびそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項63】
該AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項64】
該細胞が大腸菌であることを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項65】
該目標AHASプロテインが図1の配列を有するプロテインを含むことを特徴とする、請求項61において定義される方法。
【請求項66】
該方法が
【表11】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列のアミノ酸残基において少なくとも一つの異なるアミノ酸残基による置換;
【表12】
並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選ばれた図1の配列の少なくとも一つのアミノ酸残基の前5個までのアミノ酸残基または後5個までのアミノ酸残基の削除;
(iii)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(iv)図1の配列のQ124とH150の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(v)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの削除;
(vi)図1の配列のG300とD324の間での少なくとも一つのアミノ酸残基または機能的に同等なものの付加;
(vii)以上のいずれかとのいずれかの組み合わせ;
からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項65において定義される方法。
【請求項67】
該置換がMet53Trp、Met53Glu、Met53Ile、Met53His、Arg128Ala、Arg128Glu、Phe135Arg、Ile330Phe、並びにこれらのいずれかと機能的に同等なものおよびこれらのいずれかとのいずれかの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項66において定義される方法。
【請求項68】
作物における雑草を管理するための方法であって、請求項55において定義される除草剤耐性植物を栽培し、そして雑草を管理するのに有効な量の該除草剤を用いて該作物を処理する;
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項69】
作物における雑草を管理するための方法であって、請求項55において定義される除草剤耐性植物を含む作物を栽培し、そして雑草を管理するのに有効な量の該除草剤を含む除草組成物を用いて該作物を処理すること、
を特徴とする、前記方法。
【請求項70】
AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために目標AHASプロテインをピルビン酸オキシダーゼ鋳型またはそのAHASモデリング機能同等物上に並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために、AHAS阻害活性を有する第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること、そして
(c)該第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分該AHAS活性を阻害するために、該結合ポケットのAHAS活性阻害効果性部分と関わる非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる前記方法。
【請求項71】
該AHASモデリングの機能同等物がトランスケトラーゼ、カルボリガーゼおよびピルビン酸デカルボキシラーゼからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項72】
該第一の除草剤が該結合ポケットの官能性基と相互作用する少なくとも一つの官能性基を含むことを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項73】
該第一の除草剤が該結合ポケットの少なくともAHAS活性阻害に有効な部分に結合することを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項74】
該第一の除草剤が該触媒活性を野生型AHASの触媒活性の約20%以下に阻害することを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項75】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項76】
該目標AHASプロテインが図1の配列またはその機能的に同等なもの有するプロテインを含むことを特徴とする、請求項70において定義される構造に基づくモデリング方法。
【請求項77】
AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための構造に基づくモデリング方法であって、
(a)目標AHASプロテインの三次元構造を誘導するために、該目標AHASプロテインを図1の配列を有するポリペプチドから得られる第一のAHAS鋳型またはその機能的同等物上に並べること;
(b)該目標AHASプロテインの除草剤結合ポケットの位置、構造またはそれらの組み合わせを誘導するために、第二の除草剤を該三次元構造にモデリングすること;および
(c)該第一の除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分該AHAS活性を阻害するために、該結合ポケットのAHAS活性阻害効果性部分と関わる非ペプチド性の第一の除草剤をデザインすること;
からなる前記方法。
【請求項78】
該第一の除草剤が該結合ポケットの官能性基と相互作用する少なくとも一つの官能性基を含むことを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項79】
該第一の除草剤が該結合ポケットの少なくともAHAS活性阻害に有効な部分に結合することを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項80】
該第一の除草剤が該AHASの該触媒活性を野生型AHASの触媒活性の約20%以下に阻害することを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項81】
該目標AHASプロテインがシロイヌナズナから誘導されることを特徴とする、請求項77において定義される、構造に基づくモデリング方法。
【請求項82】
AHAS活性を阻害する第一の除草剤を製造するための、構造に基づくモデリング方法であって、
(a)該除草剤が生存のためにAHAS活性を要求する細胞の生存を破壊するのに充分に該AHAS活性を阻害するために、AHASプロテインの結合ポケットのAHAS活性阻害有効部分と関わる非ペプチド性の除草剤をデザインすること;
からなる前記方法。
【請求項83】
請求項33において定義されるDNAで形質転換された細胞であって、該DNAを該細胞に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで該細胞中に発現することを特徴とする、前記細胞。
【請求項84】
請求項33において定義されるDNAで形質転換された植物であって、該DNAを該植物に除草剤耐性を付与するのに充分なレベルで該植物中に発現することを特徴とする、前記植物。
【図1a】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図5g】
【図5h】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−159577(P2007−159577A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328154(P2006−328154)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【分割の表示】特願平8−532002の分割
【原出願日】平成8年4月19日(1996.4.19)
【出願人】(500516193)アメリカン シアナミド コンパニー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【分割の表示】特願平8−532002の分割
【原出願日】平成8年4月19日(1996.4.19)
【出願人】(500516193)アメリカン シアナミド コンパニー (1)
【Fターム(参考)】
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