歩行型作業機
【課題】エンジンの支持構造に工夫を凝らすことによって、無端回動体と出力回転体等の巻回状態が変動し難い歩行型作業機を提供する。
【解決手段】走行機体3にエンジン7を搭載し、エンジン7の出力回転体12と後輪伝動ケース11に装着した後輪側入力プーリ12とに亘って後輪側伝動ベルト13を巻回する。走行機体3の機体フレーム3Aにおける複数箇所にエンジン7を取り付ける取付座を設け、複数箇所の取付座のうちの一部の取付座を、防振機構70を備えた防振取付座Dとして、残余の取付座をエンジン7の横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座Eに構成してある。
【解決手段】走行機体3にエンジン7を搭載し、エンジン7の出力回転体12と後輪伝動ケース11に装着した後輪側入力プーリ12とに亘って後輪側伝動ベルト13を巻回する。走行機体3の機体フレーム3Aにおける複数箇所にエンジン7を取り付ける取付座を設け、複数箇所の取付座のうちの一部の取付座を、防振機構70を備えた防振取付座Dとして、残余の取付座をエンジン7の横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座Eに構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体にエンジンを搭載し、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回してある歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機において、走行機体にエンジンを搭載するに、無端回動体の巻回方向に沿って二列状態でかつ4箇所に取付座を設けていた。その取付座には何れも防振機構としての防振ゴムが装備され、エンジンの取付部と機体フレームとの間に防振ゴムを配置し、エンジンの取付部と機体フレームとで防振ゴムを上下から挟み込む状態で防振支持する構成が採られていた(特許文献1)。
特許文献1では乗用型田植機が示されているが、同様な構成が歩行型作業機でも見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−36887号公報 ( 段落番号〔0034〕 、図5〜図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回してあるので、この無端回動体に作用するテンション力がエンジンの出力回転体を介してそのエンジンに作用し、エンジンに対して走行装置用伝動装置の入力回転体に向けて引っ張り力を及ぼすこととなる。
この場合に、エンジンは防振ゴムを変形させて、出力回転体を走行装置用伝動装置に向ける状態に横向きに偏位することとなり、無端回動体と出力回転体等の巻回状態(アライメント)が変動して、エンジンから走行装置用伝動装置への伝動不良や無端回動体の偏磨耗を招来する虞があった。
【0005】
本発明の目的は、エンジンの支持構造に工夫を凝らすことによって、無端回動体と出力回転体等の巻回状態が変動し難い歩行型作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、走行機体にエンジンを搭載し、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回し、前記走行機体の機体フレームにおける複数箇所に前記エンジンを取り付ける取付座を設け、前記複数箇所の前記取付座のうちの一部の取付座を、防振機構を備えた防振取付座として、前記複数箇所の前記取付座のうちの残余の取付座をエンジンの横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
エンジンを取り付ける取付座を、エンジンの振動を機体フレームに伝達しないように防振する防振取付座と、エンジンの横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座とで構成し、振動は主として防振取付座により吸収し、エンジンの横方向への偏位は偏位抑制取付座によって抑制することができ、夫々の取付座にその機能を発揮させることによって、機体フレームへのエンジン振動の防止を図りながら、エンジンの横方向への偏位も抑制することができる。
【0008】
〔効果〕
防振取付座と偏位抑制取付座とでエンジンを機体フレームに支持する構成の採用によって、防振機能を維持しながら、エンジンの横方向への偏位を抑制できて、無端回動体の巻回状態が変動することを抑制できる歩行型作業機を提供することができた。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明の構成において、前記防振取付座を前記エンジンの操縦ハンドル側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
エンジンの操縦ハンドル側には防振取付座が設けてあるので、例えば、偏位抑制取付座を操縦ハンドル側に取り付けた場合に比べて、エンジンの振動が操縦ハンドルに伝わり難く、操縦ハンドルを握る操縦者が不快感を感じることが少ない。
【0011】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1又は2に係る発明の構成において、前記機体フレームよりブラケットを立設し、前記ブラケットに横向き軸芯周りで上下揺動自在に支持具を取付て前記偏位抑制取付座を構成し、前記支持具にエンジンを取り付けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
偏位抑制取付座を、機体フレームより立設したブラケットとそのブラケットに対して横向き軸芯周りで上下揺動自在に支持させた支持具とで構成した。エンジンを取り付けた支持具が、機体フレームに固定されたブラケットに横向き軸芯周りで上下揺動自在に取り付けてあるので、エンジンの横方向へ向かう偏位がブラケットによって抑制され、無端回動体の巻回状態が変動することを抑制できる。
このようにエンジンの偏位を抑制する構造を、ブラケットと支持具との簡単な構造で達成した歩行型作業機を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】草刈機の右側面図である。
【図2】草刈機の平面図である。
【図3】草刈機の伝動構造、及び、路面用切断装置を示す走行機体の側面図である。
【図4】路面用デッキと法面用デッキ、及び、路面用切断装置と法面用切断装置への伝動構造を示す平面図である。
【図5】路面用切断装置と法面用切断装置とを示す縦断正面図である。
【図6】路面用切断装置と法面用切断装置とを示し、法面用切断装置が法面に沿った姿勢に切り換えられた状態を示す縦断正面図である。
【図7】路面用切断装置の回転ディスクに刈刃を取付けた状態、及び、法面用切断装置の回転ディスクに刈刃を取付けた状態を示す平面図である。
【図8】回転ディスクと刈刃との取付構造を示す縦断側面図である。
【図9】刈刃を回転ディスクに取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図10】路面用切断装置の前輪を前輪伝動ケースとともに左右方向に揺動可能に構成する状態を示す平面図である。
【図11】前輪を前輪伝動ケースとともに上下調節する構成を示す側面図である。
【図12】路面用切断装置の前輪を前輪伝動ケースとともに左右方向に揺動可能に構成する状態を示す縦断側面図である。
【図13】前輪伝動ケースを上下調節する構造を示す縦断正面図である。
【図14】法面用デッキと路面用デッキとの連結構造を示す平面図である。
【図15】法面用デッキの前端部と路面用デッキの前端部との連結構造を示す縦断正面図である。
【図16】法面用デッキと路面用デッキとの間に付勢ばねを装着してある状態を示す縦断正面図である。
【図17】法面用デッキ、付勢ばね、連結ロッド、アングル状の支持フレーム、支点ピンを示す分解斜視図である。
【図18】法面用切断装置を高い刈高さに設定した状態を示す縦断側面図である。
【図19】法面用切断装置を低い刈高さに設定した状態を示す縦断側面図である。
【図20】法面用切断装置の高さ調節操作構造を示す後面図である。
【図21】法面用切断装置を法面に沿った姿勢に変更調節する構造を示す横断平面図である。
【図22】法面用切断装置を法面に沿った姿勢に変更調節する構造を示す後面図である。
【図23】エンジンの防振構造を示す側面図である。
【図24】エンジンの防振構造を示す平面図である。
【図25】エンジン、エアクリーナ、マフラーを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
草刈機Aは、図1及び図2に示すように、単一の前輪1と単一の後輪2を駆動して推進する走行機体3に、前後輪1,2の間に位置して路面に生えた草類を切断する路面用切断装置4と、法面に生えた草類を切断すべく前記路面用切断装置4の左横側方に位置する法面用切断装置5とを備え、走行機体3の後端部から後方に向けて操縦ハンドル6を設け、路面用切断装置4の上方にエンジン7、燃料タンク8及びエアクリーナ9、マフラー14を配置して構成してある。
【0015】
動力伝達構造について説明する。図2〜図4に示すように、エンジン7の出力軸7Aに出力回転体としてのエンジン側出力プーリ10を取付け、後輪伝動ケース11の上端に取り付けた入力回転体としての後輪側入力プーリ12に無端回動体としての後輪側伝動ベルト13を介してエンジン側出力プーリ10の小径プーリ部10aから動力伝達している。
後輪伝動ケース11は上下向き姿勢に立設してあり、その下端位置に後輪2を軸支している。
【0016】
後輪伝動ケース11内には、後輪側入力プーリ12からその下方に位置する後輪2に回動無端体(図示せず)によって動力伝達が行われているが、後輪側入力プーリ12と後輪2とを連係する前記回動無端体の伝動中間位置に動力取出し用の回転体(図示せず)が設けられている。
動力取出し用の回転体には、後輪側出力スプロケット15が連係してあり、この後輪側出力スプロケット15から、走行機体3の前端に配置されている前輪伝動ケース16の伝動機構に動力伝達可能に構成してある。
【0017】
つまり、後輪伝動ケース11に後輪側出力スプロケット15を装着し、図3及び図10に示すように、後記するブラケット43に支持されている前輪側入力軸41に前輪側入力スプロケット17を設けてある。後輪側出力スプロケット15と前輪側入力スプロケット17とに亘って前後輪動力伝達用伝動チェーン18が架設してあり、後輪伝動ケース11の後輪側出力スプロケット15から前輪伝動ケース16に動力伝達すべく構成してある。
【0018】
図3及び図10に示すように、前輪側入力スプロケット17を取り付けている前輪側入力軸41を法面用切断装置5側に水平に延出してあり、延出先端側に前輪側出力軸42を配置してあり、前輪側入力軸41を機体フレーム3Aより立設したブラケット43に支持してある。前輪側入力軸41と前輪側出力軸42とはジョイント44で連結してある。
【0019】
図3、及び、図10〜図12に示すように、前輪伝動ケース16においては、前輪側出力軸42に前輪側出力スプロケット19が取付られており、下端位置に設けた前輪用の駆動軸1Aに装着した前輪入力スプロケット20と前輪側出力スプロケット19とに亘って前輪用伝動チェーン21を巻回し、前輪1を駆動すべく構成してある。前輪1は、前輪伝動ケース16の下端位置より法面用切断装置5側に片持ち状に延出された駆動軸1Aに取付られている。
【0020】
路面用切断装置4及び法面用切断装置5への動力伝達構造について説明する。図2〜図4に示すように、二段構成になるエンジン側出力プーリ10の大径プリー部10bと切断装置側入力プーリ22とに亘って切断装置動力伝達用伝動ベルト23を巻回して路面用切断装置4及び法面用切断装置5への動力伝達を可能に構成する。
【0021】
図3及び図4に示すように、切断装置動力伝達用伝動ベルト23に対してテンションプーリ71Aが作用すべく設けてあり、テンションプーリ71Aを支持するベルクランク状のアーム71を設けてある。ベルクランク状のアーム71は図示しないワイヤ機構を介して操縦ハンドル6に設けたクラッチ操作レバーに連係してある。
以上の構成によって、路面用切断装置4及び法面用切断装置5への動力を入り切りする刈取クラッチを構成する。
【0022】
図4〜図6に示すように、路面用切断装置4を支持する路面用デッキ24を設け、路面用デッキ24に上下向き姿勢の路面用伝動ケース25の上下中間部25Aを取り付けてある。路面用伝動ケース25には、前記した切断装置側入力プーリ22を支持し法面用切断装置5に向けて延出された切断装置側入力軸26と、切断装置側入力軸26の中間位置の下方に下向き姿勢の路面用出力軸27とを装入してある。
切断装置側入力軸26と路面用出力軸27との間にはべべルギヤ機構25Bが設けてあり、切断装置側入力軸26から路面用出力軸27へ動力伝達されるように構成してある。
【0023】
図4〜図6に示すように、切断装置側入力軸26の法面用切断装置側に位置する端部には、屈曲自在な路面側連結具28が連結してあり、その路面側連結具28の法面用切断装置側には屈曲自在な法面側連結具29が設けてある。法面側連結具29から連結軸29Aが延出されて、その連結軸29Aを路面側連結具28から延出されたボス部28A内に内嵌して、連結軸29Aとボス部28Aとを軸芯方向に相対スライド自在にスプライン外嵌して、法面用切断装置5への動力伝達構造を構成してある。
【0024】
法面用切断装置5を支持する法面用デッキ30を設け、法面用デッキ30に上下向き姿勢の法面用伝動ケース31の上下中間部31Aを取り付けてある。法面用伝動ケース31には、蛇腹状の法面用連結具29と同一軸芯上に配置され連動連結された法面用入力軸32と、法面用入力軸32の中間位置の下方に下向き姿勢の法面用出力軸33とが装入されている。
法面用入力軸32と法面用出力軸33との間には法面用べべルギヤ機構34が設けてあり、法面用入力軸32から法面用出力軸33へ動力伝達されるように構成してある。
図2に示すように、法面用デッキ30の前端には前方上方に向けて延出されたパイプ製のガード73が設けてあり、丈の高い草類を押し退けて、丈の高い草類が法面用デッキ30上に降り掛かかるのを阻止すべく構成してある。
【0025】
路面用切断装置4の構成について説明する。図5〜図7に示すように、路面用切断装置4は、路面用出力軸27の下端に取付固定された路面用回転ディスク35と、その路面用回転ディスク35の外縁部35Aに路面用出力軸27の回転軸芯と平行な軸芯周りで自由揺動自在に取付られている路面用刈刃36とを備えて構成されている。
【0026】
図5〜図7に示すように、路面用回転ディスク35は、回転中心位置に回転ボス35Bを配置し、回転ボス35Bの径方向外側に板状のディスク本体35Cを取付け、ディスク本体35Cの外縁部35Aにおける回転ボス35Bを挟んで180°対角位置に路面用刈刃36の取付座35Dを形成し、外縁部35Aの周方向4箇所に起風羽根板38を立設して構成してある。
【0027】
ディスク本体35Cは、回転ボス35Bを囲む円盤状の部分を基本に回転軸芯を挟んで180°対角位置に向けて山形状の延設部を径方向外向きに突出させて、全体として楕円に近似した外形形状を呈する。
そして、ディスク本体35Cの180°対角位置に形成した山形状の延設部に、路面用刈刃36を装着する為の前記した取付座35Dを形成してある。
【0028】
ディスク本体35Cの外縁部35Aの4箇所には起風羽根板38が設けてあり、図5及び図7に示すように、起風羽根板38は、板状の本体部38Aを径方向に沿った状態でかつディスク本体35Cの上面に立設してある。板状の本体部38Aの径方向外端を円周方向に折り曲げて補強リブ部38Bを形成し、補強リブ部38Bをディスク本体35Cの外縁部35Aに取付固定して、起風羽根板38を取付固定している。
起風羽根板38を円周方向の4箇所に設けてあるのは、刈草を一箇所に集中させるのではなく、均等に周辺に散らすためである。
【0029】
路面用刈刃36について説明する。図8及び図9に示すように、路面用刈刃36は本体部を板状に形成し、本体部における回転ディスク35への取付基端部36Aに装着孔36aを設けてある。本体部における取付基端部36Aから先端部36Bに至る両側端部36Cの間隔を先端部36Bに向かう程広くなるように構成して、扇形形状に形成してある。両側端部36Cには、夫々、先端部36Bに至る切刃36bを形成してある。
これによって、一方の切刃36bが磨滅等の不具合が生じた場合には、他方の切刃36bを使用すべく、裏返した状態で使用できる。
【0030】
路面用刈刃36の取付構造は次のようになっている。図8及び図9に示すように、ディスク本体35Cの取付座35Dに取付孔35bを形成し、取付孔35bを小判型の断面孔に形成してある。取付孔35bに対して取付ボルト37を装入して、上下二枚の路面用刈刃36を取り付けるべく構成してある。取付ボルト37に段付き部分37aを設けてあり、その段付き部分37aからボルト先端に向けて小径のネジ部37bを形成してある。
このような取付ボルト37の構成によって、路面用刈刃36を取付座35Dに装着した状態でナット37Aで抜止装着した場合に、段付き部分37aによって路面用刈刃36を締め付けることがなく、路面用刈刃36は、取付ボルト37の縦向き軸芯V周りで自由揺
動可能に取り付けられる。
【0031】
本体部は、取付基端部36Aに対して先端部36Bを緩く屈曲形成してあり、路面用刈刃36は、回転ディスク35の上面に取り付けた状態では、取付基端部36Aが回転ディスク面に沿った姿勢に載置され、先端部36Bは、回転ディスク35よりやや斜め上向きに反る状態となる。
一方、回転ディスク35の下面に取り付けた状態では、取付基端部36Aが回転ディスク面に沿った姿勢に載置され、先端部36Bは、回転ディスク35よりやや斜め下向きに反る状態となる。
このように、二つの刈刃36を回転ディスク35の上下両面に装着することによって、草類を細かく切断することができる。
【0032】
路面用刈刃36は、前記したように扇形形状に形成されており、取付基端部36Aから先端部36Bに掛けて単位長さ当たりの重量が重くなる構成を採っている。このような構成によって、回転ディスク35を回転させて切断作業を行う際に、路面用刈刃36に遠心力が大きく作用することとなり、切断力を大きくすることができる。
【0033】
また、前記した扇形形状に形成することによって、次のような作用効果を奏することができる。つまり、路面用刈刃36は、本体部における取付基端部36Aから先端部36Bに至る両側端部36Cの間隔を先端部36Bに向かう程広くなるように構成して、扇形形状に形成してある。
したがって、図9に示すように、路面用刈刃36の両側端部36Cの左右中心線Xを想
定すると、その左右中心線Xから側端部36Cの間隔は、基端部より先端側の方が広くな
っている。そうすると、切刃36bの切刃線Yは、先端側ほど左右中心線Xから離れる傾
斜状態にある。
このことによって、路面用刈刃36の側端部36Cに形成した切刃36bによって切断されようとする植立草は、前記した切刃36bの切刃線Yに沿って基端部側に誘導される分力を受けて、刈刃36の先端側に逃げることが抑制され、刈刃36の切断能力を高く維持することができる。
【0034】
路面用切断装置4の刈高さ調節構造について説明する。図2及び図3、図11及び図13に示すように、前輪1を軸支した前輪伝動ケース16は、機体フレーム3Aより立設された前輪伝動ケース支持用ブラケット45に前輪側出力軸42を介して上下揺動自在に取付られている。前輪伝動ケース支持用ブラケット45は、前輪伝動ケース16の横側面に沿って機体フレーム3Aの前方上方に向けて立ち上げてあり、前輪伝動ケース16の上方から上面を跨ぐように、フォーク状の吊り上げ具46が連結してある。
【0035】
フォーク状の吊り上げ具46には駆動ネジ部46Bが上方に延出してあり、前輪伝動ケース支持用ブラケット45の上面に軸芯方向へ移動不能に操作ハンドル47の基端ボス部47Aを設け、フォーク状の吊り上げ具46の駆動ネジ部46Bが基端ボス部47Aに螺合している。フォーク状の吊り上げ具46には、下端部に前輪伝動ケース16を吊り下げ支持する横向きピン46Aが取り付けてあり、操作ハンドル47を回転駆動することによって、フォーク状の吊り上げ具46を昇降させ、横向きピン46Aが昇降作動し、前輪伝動ケース16を昇降駆動する。
【0036】
前輪伝動ケース16の横側面16Aとフォーク状の吊り上げ具46のフォーク状本体部46Cとの間に、前輪伝動ケース支持用ブラケット45の横側部45Aが位置している。この横側部45Aに円弧状のガイド孔45aが設けてあり、このガイド孔45aに横向きピン46Aを貫通させて、前輪伝動ケース16の上下揺動を許容しながら、一定の揺動範囲に制限する構成を採っている。
【0037】
具体的には、操作ハンドル47とナット部47Aが一体で回転する。ナット部47Aが回転すると、ナット部47Aはブラケット43に軸芯方向への移動を規制された状態で取り付けてあるので、ナット部47Aに螺合した駆動ネジ部46Bが相対的に昇降作動して、フォーク状の吊り上げ具46が前輪伝動ケース16を昇降駆動する。
これによって、前輪1が昇降駆動されて、走行機体3の前端部が後輪2の接地点を基準に昇降駆動され、走行機体3に取付られた路面用切断装置4が昇降作動され、刈取高さが調節される。
【0038】
次に、前輪伝動ケース16を前輪伝動ケース支持用ブラケット45と一体で左右に揺動して、前輪1の進行方向を法面より離れる方向に変更する構成について説明する。図10〜図12に示すように、前輪伝動ケース支持用ブラケット45は、操作ハンドル47を取り付けている上方のハンドル取付部45Bと、上方のハンドル取付部45Bの下方に延設されている前記した左右一対の横側部45Aと、左右一対の横側部45Aより機体フレーム3Aの上面に載置される左右一対の水平載置部45Cとを延出して構成してある。
【0039】
前輪伝動ケース支持用ブラケット45の左右一対の横側部45Aに、前輪伝動ケース16の横側面16Aより横側方に延出されたボス部16aを嵌入保持してあり、この横側部45Aのボス部16aに対する支持軸芯を中心に、前輪伝動ケース16を上下揺動自在に支持してある。
左右一対の水平載置部45Cの左側水平載置部45Cには円弧状ガイド孔45bが設けてあり、円弧状ガイド孔45bを貫通して上方に突出する取付用ネジ45Dが機体フレーム3Aの下面に固着して設けてある。左側水平載置部45Cより上方に突出する取付用ネジ45Dに対して上方側から締め付けハンドル45Eを取り付けてある。
【0040】
一方、左右一対の水平載置部45Cの右側水平載置部45C側には、機体フレーム3Aから上方に突出された支点ボルト45Fがその機体フレーム3Aに固着された状態で設けてあり、支点ボルト45Fの右側水平載置部45Cより上方に突出したネジ部にダブルナット45dが装着してある。
以上のような構成によって、前輪伝動ケース支持用ブラケット45及び前輪伝動ケース16は一体で、支点ボルト45Fの縦向き軸芯Tを中心に水平揺動自在に構成してある。
【0041】
なお、前輪伝動ケース支持用ブラケット45及び前輪伝動ケース16の水平揺動範囲は、左側水平載置部45Cに形成した円弧状ガイド孔45bによって規制されており、前輪車輪1は、機体前後方向を基準に法面より離れる方向への揺動が許容される。
そして、前輪伝動ケース支持用ブラケット45及び前輪伝動ケース16を揺動させるには、締め付けハンドル45Eを緩めて、人為的に前輪伝動ケース支持用ブラケット45を強制的に回転させることによって行うことができる。
【0042】
このように前輪伝動ケース16を法面から離れる方向に偏位させるのは、路面に対して下向きに傾斜する法面に沿って刈取を行う法面用切断装置5によって、法面側に路面切断装置4が引き寄せられて進行方向が法面側に偏るのを抑制する為である。
【0043】
法面用切断装置5の構成について説明する。法面用切断装置5は路面用切断装置4と同様の構成を採っている。つまり、図5〜図7に示すように、法面用切断装置5は、法面用出力軸33の下端に取付固定された法面用回転ディスク48と、法面用回転ディスク48の中心に位置する法面用回転ボス部48Bと、その法面用回転ディスク48の外縁部48Aに路面用出力軸33の回転軸芯と平行な軸芯周りで自由揺動自在に取付られている法面用刈刃49とを備えて構成されている。
【0044】
法面用回転ディスク48には、板状ディスク本体48Cの対角位置に法面用刈刃49の取付座48D、板状ディスク本体48Cの上面に起風羽根板50、取付座48Dに取り付けた法面用刈刃49とを備えている。
以上、ここで記載した法面用切断装置5の構成、及び、構成部品の構造・形状などは、路面用切断装置4の構成、及び、構成部品の構造・形状と同一である。
【0045】
ただし、法面用切断装置5には、接地体51が設けてある。接地体51は、法面用出力軸33の下端に取り付けられる取付ボス部51Aと、取付ボス部51Aの下端に接地部51Bが設けてあり、接地部51Bは傾斜が急な上部接地面部51dと穏やかな下部接地面部51bを屈折することなく滑らかに繋いだ椀状面に形成し、中心部ほど下向きに突出する椀状面に形成してある。これによって、法面用切断装置5の接地状態に傾きを生じても、接地状態が維持できるようになっている。接地部51Bは、取付ボス部51Aの下端フランジ部51aにボルトを介して取り付けてあり、ボルト頭が接地部51Bの下端接地面より突出しないように、下端接地面に凹入部を形成している。
【0046】
路面用切断装置4と法面用切断装置5との配置関係について説明する。図7に示すように、路面用切断装置4と法面用切断装置5とは、夫々、回転ディスク35,48を楕円状に形成し、その楕円状の長径部の先端に刈刃36,49を取付てある。そして、法面用刈刃49と路面用刈刃36とが互いに干渉しないように90度回転位相をずらした状態で、法面用刈刃49を回転ディスク48に、路面用刈刃36を回転ディスク35に夫々取付て、路面用切断装置4と法面用切断装置5とを構成してある。
【0047】
上記のように、法面用刈刃49と路面用刈刃36とを、回転位相を90度ずらした状態で配置しているので、必然的に、楕円状の回転ディスク35,48の配置構成も、一方の回転ディスク35の長径部の先端が他方の回転ディクス48の短径部に近接する状態に配置する構成になっている。
したがって、法面用刈刃49と路面用刈刃36とが、互いに、相手側の回転軌跡内に入り込む状態で回転するので、路面用切断装置4と法面用切断装置5とを十分近接させた状態で配置することができ、路面用切断装置4の作業領域と法面用切断装置5の作業領域とが隣接する領域での刈残しを少なくできる。
【0048】
路面用デッキ24と法面用デッキ30との連結構造について説明する。図14〜図17に示すように、法面用デッキ30の右側端に前後姿勢の連結用パイプ52を前後二箇所に間隔を開けて取付け、この連結用パイプ52を後記する操作ロッド53に外嵌して、法面用デッキ30を操作ロッド53で支持し、かつ、法面用デッキ30を操作ロッド53の前後向き軸芯P周りで上下揺動自在に構成してある。
また、図17に示すように、連結用パイプ52を覆うように配置されたアングル状のカバーフレーム54のアングル状本体部54Aを、操作ロッド53にピン52aで連結して、操作ロッド53と一体で上下揺動すべく構成してある。
【0049】
操作ロッド53の前端部には、チャンネル状の揺動ブラケット55が取付け固定してあり、路面用切断装置4の路面用デッキ24から法面用切断装置5側に向けて屈曲した左右向きのL字形の支点ピン(機体横向き軸の一例)56を延出し、揺動ブラケット55に支点ピン56を貫通させて、支点ピン56で揺動ブラケット55を支持している。カバーフレーム54のアングル状本体部54Aの先端部に連結用の板状連結部54Bが形成してあり、この板状連結部54Bの貫通孔54aを介して板状連結部54Bが支点ピン56に外嵌装着されている。このような構成によって、法面用切断装置5は、揺動ブラケット55、連結用パイプ52、操作ロッド53及びカバーフレーム54とともに、支点ピン56の機体横向き軸芯Q周りに上下揺動可能である。
【0050】
一方、図14、図18〜図20に示すように、操作ロッド53の後端部近くには、機体フレーム3Aに支持された後ブラケット67が配置してある。後ブラケット67は、機体フレーム3Aに取付固定される取付板部67Aと取付板部67Aより法面用デッキ30側に屈折された支持板部67Bとで構成されており、支持板部67Bに操作ロッド53を挿通する縦長状の挿通孔67bを形成してある。
この挿通孔67bによって、後記するように、操作ロッド53の後端部を持ち上げて昇降させ、法面用切断装置5の刈高さ調節を行うことを許容しながら、操作ロッド53の左右方向への横ブレを抑制することができる。
【0051】
尚、図14〜図19に示すように、操作ロッド53には、付勢ばね66が巻回してあり、この付勢ばね66の一端は法面用デッキ30に下から当てがわれており、付勢ばね66の他端は操作ロッド53と一体で揺動するカバーフレーム54のアングル状本体部54Aに当て付けられている。付勢ばね66の付勢力によって、法面用切断装置5を操作ロッド53の機体前後向き軸芯P周りに上向き付勢してある。これによって、法面用切断装置5の下方揺動力を軽減して、付勢ばね66を法面用切断装置5に対するバランスバネとして機能させている。
【0052】
次に、法面用切断装置5を支点ピン56の機体横向き軸芯Q周りに上下揺動させて、法面用切断装置5の刈高さを変更する機構Bについて説明する。図14〜図19に示すように、操作ロッド53を後方に延出し、連結用パイプ52の後端より後方に突出させ、その突出端に横向き貫通孔53aを形成する。貫通孔53aに連結ピン57を挿入固定し、連結ピン57に操作連係機構Cを連係してある。
【0053】
操作連係機構Cは、連結ピン57に前後揺動自在に連係された第1操作アーム58と、第1操作アーム58の上端において相対揺動自在に連係された第2操作アーム59と、第2操作アーム59の基端部59Aを支持する操作部60とでなる。操作部60は、操縦ハンドル6の支持フレーム6Aに取り付けた支軸60Aと、その支軸60Aに回転自在に外嵌したボス部60Bとそのボス部60Bに一体回転自在に連結された操作レバー61と、操作レバー61を案内するガイド板60Cとからなる。
【0054】
以上のような構成により、操作レバー61を前後に揺動操作すると、操作ロッド53と、操作ロッド53を覆うアングル状のカバーフレーム54と、その操作ロッド53を挿通支持する前後一対の連結フレーム52と、操作ロッド53の前端部に連結してある揺動ブラケット55と、法面用デッキ30とが一体で、支点ピン56の機体横向き軸芯Q周りで上下揺動する。これによって、連結フレーム52に連結固定された法面用デッキ30及び法面用切断装置5が前端部を基準に後端部側を上下させて、前下がり姿勢を切り換え、刈高さを変更する。
【0055】
具体的には、図18に示すように、操作ロッド53を水平姿勢に設定すると、接地体51及び法面用刈刃49が、法面に対して平行な姿勢にある。この状態では、法面用刈刃49の刈高さH1を高く設定することができる。
【0056】
次に、図19に示すように、操作レバー61を後方側に揺動操作して、操作ロッド53の後端部を持ち上げ操作すると、接地体51が法面に対して前傾斜姿勢になり、法面用刈刃49の刈高さH2を低くすることができる。
以上のような構成によって、操作レバー61を操作することによって、法面用切断装置5の刈高さを変更できる。ここに、操作レバー61を刈高さ調節操作具という。路面用切断装置4は操作レバー61の操作では、上下動はしない。
【0057】
次に、法面用切断装置5を路面用切断装置4に対して、操作ロッド53の機体前後向き軸芯P周りに揺動させて、法面に沿った姿勢に切換える構成について説明する。図14、図21及び図22に示すように、法面用デッキ30上にブラケット62を立設し、このブラケット62に取り付けた後記する保持ボス部62Cに径方向に貫通する貫通孔62aを形成し、その貫通孔62aを貫通する状態で長尺状のガイド板63をスライド移動自在に収納してある。そのガイド板63の一端をブラケット62より突出させて路面用デッキ24まで延出する一方、路面用デッキ24には支持ブラケット24Aを立設し、支持ブラケット24Aの法面用切断装置側に臨む一端部を操作ロッド53の上方まで延出する。ガイド板63の一端を支持ブラケット24Aの一端部に前後向き軸芯R周りで上下揺動自在に支持する。
前後向き軸芯Rは、下方に位置する操作ロッド53の機体前後向き軸芯Pと平行であるが、直上方に位置するのではなく、やや法面用切断装置側に入り込んでいる。
【0058】
ブラケット62は、図21及び図22に示すように、横向きに平行する状態で立設した前後板状部材62A,62Aと、その前後板状部材62A,62Aの上端同士を連結する天井板部62Bとを組み付けて構成してある。長尺状のガイド板63の後端面には鋸歯状の係止部63Aが形成してあり、後記する係合ピン64と係止部63Aとが係止すべく構成してある。係合ピン64は、ブラケット62の前後板状部材62Aを貫通する状態でそのブラケット62に取り付けた保持ボス部62C内にスライド移動自在に保持され、保持ボス部62C内に挿入した付勢バネ64Aによってガイド板63の係止部63Aに向けて、突出付勢してある。
係合ピン64には、ワイヤ65が連係されており、操縦ハンドル6の近傍に設けた操作レバーによってガイド板63の係止部63Aから離間する方向に引き操作可能に構成してある。
【0059】
以上のような構成によって、法面用切断装置5が法面に沿った傾斜姿勢になった場合に、係合ピン64とガイド板63における対応する係止部63Aとが係合して、法面用切断装置5の下方への揺動を阻止する構成を採っている。したがって、係合ピン64を係止部63Aから離間させると、法面用切断装置5は更に下方に揺動しようとする。
【0060】
ここで、法面用切断装置5の刈高さを調節する場合の接地体51の作動について説明する。法面用切断装置5を機体前後向き軸芯P周りで上下揺動させて接地体51を接地させる。その接地体51の接地状態を維持しながら、法面用切断装置5を機体左右向き軸芯Q周りで、後部側を持ち上げ操作することによって、法面用切断装置5を前後向きに傾斜させて、刈高さを調節する。この場合に、接地体51は、法面用切断装置5の前後向き傾斜に連れて回転するが、椀状の接地面51bの接地点を移動させながら接地状態を維持しているので、法面用切断装置5の刈高さ調節を安定して行える。
【0061】
エンジン7の支持構造について説明する。図2、図23及び図24に示すように、エンジン7の前端部下方に、ブラケット68に軸支された支持具69を横向き軸芯S周りで揺動自在に配置し、支持具69の後方側に、機体フレーム3Aに設けた防振機構としての防振ゴム機構70を配置して、この支持具69と防振ゴム機構70とでエンジン7を支持すべく構成してある。
【0062】
支持具69は、横向き軸芯位置に配置された支軸69Cに外嵌する筒状部69Aとその筒状部69Aより後方に延出された取付板部69Bとで構成してあり、取付板部69Bと防振ゴム機構70とに、エンジン7の受座7Bを載置してボルト止め固定してある。
支軸69Cは、左右一体形成されたブラケット68における左右側板部に支持されており、筒状部69Aを外嵌されてその筒状部69Aを支持している。筒状部69Aには取付板部69Bが一体形成してあり、取付板部69Bにエンジン7の受座7Bが載置してある。
【0063】
これによって、防振ゴム機構70だけで支持する場合に見られる、伝動ベルト12,13の張力によって、防振ゴム機構70が横方向に引っ張られて、エンジン7が偏位し、そのエンジン7の偏位によって、後輪側伝動ベルト13、切断装置動力伝達用伝動ベルト23の取付状態(アライメント)が変化することを抑制できる。
【0064】
防振ゴム機構70が操縦ハンドル6側にあるので、エンジン7の振動を防振ゴム機構70によって遮断することができ、操縦ハンドル6にエンジン7の振動が伝わることを阻止できる。したがって、操縦ハンドル6を握る操縦者に不快感を与えることが少なく、快適な操作を行うことができる。
以上、ブラケット68に支持された、支軸69C、その支軸69Cに外嵌された筒状部69A、筒状部69Aに一体形成されている取付板部69Bで、エンジン7の横方向への偏位を抑制できるので、これらを偏位抑制取付座Eと総称する。一方、防振ゴム機構70と防振ゴム機構70を載置している機体フレーム3Aの部分を、防振取付座Dと称する。
【0065】
次に、前輪1と操縦ハンドル6との位置関係について説明する。図2及び図25に示すように、エンジン7の上方に燃料タンク8を配置し、燃料タンク8の前方側にエアクリーナ9とマフラー14とを左右に並列配置し、エンジン7の後方に操縦ハンドル6とその操縦ハンドル6の下方に後輪2、エアクリーナ9とマフラー14との間の前方側に前輪1を配置してある。
【0066】
つまり、エアクリーナ9とマフラー14とをある一定の間隔aを置いて配置し、その間隔aの後方側に操縦ハンドル6を配置し、その間隔aの前方側に前輪1を配置してある。
このように、操縦ハンドル6側から運転者が、エアクリーナ9とマフラー14との間隔aを通して前輪1を確認しやすい構成を採っている。
【0067】
〔別実施形態〕
(1) 偏位抑制取付座Eとして、前記した実施形態では、ブラケット68に支軸69Cを架設し、横向き軸芯位置に配置された支軸69Cに外嵌する筒状部69Aとその筒状部69Aより後方に延出された取付板部69Bとで構成する支持具69を配置したものを提示した。これに加えて、図示はしていないが、支軸69Cの外周面とこの支軸69Cに外嵌された筒状部69Aの内周面との間に、筒状の防振ゴムを装入してもよい。このような構成によって、防振ゴムの厚み方向への圧縮量だけはエンジン7が横方向に偏位する可能性はあるが、防振ゴム機構70での横方向への偏位量に比べて小さな偏位量に抑制することが可能である。一方、防振ゴムの装入によって防振効果が期待でき、エンジン振動の伝播を抑制することができる。
【0068】
(2) 防振取付座Dを操縦ハンドル側に配置する構成を示したが、偏位抑制取付座Eを操縦ハンドル側に配置し、偏位抑制取付座Eを挟んで防振取付座Dを操縦ハンドル6の存在側とは反対側に配置してもよい。
【0069】
(3) 防振取付座Dと偏位抑制取付座Eとの配置構成は、図示するものに限定されず、例えば、法面側に2個の防振取付座D、路面側に2個の偏位抑制取付座Eを配置する構成を採ってもよく、かつ、4箇所の対角線上に位置するものを防振取付座Dとし、残りの対角線上に位置するものを偏位抑制取付座Eと構成してもよい。
【0070】
(4) 防振取付座Dと偏位抑制取付座Eの数は異なる数であってもよく、例えば、4個の取付座のうちの1個を偏位抑制取付座Eとし、残余の取付座を防振取付座Dとしてもよく、3個の取付座のうちの1個を偏位抑制取付座Eとし、残余の取付座を防振取付座Dとしもよく、これら以外の構成を採ってもよい。
【0071】
(5) 無端回動体13としては、ベルトではなくチェーンであってもよい。したがって、エンジン側出力プーリ10、後輪側入力プーリ12はスプロケットであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、法面用草刈機だけでなく、芝刈り機、その他歩行型トラクタ等の他の作業機におけるエンジン搭載構造に使用可能である。
【符号の説明】
【0073】
3 走行機体
3A 機体フレーム
7 エンジン
11 後輪伝動ケース(走行装置用伝動装置)
12 後輪側入力プーリ(入力回転体)
13 後輪側伝動ベルト(無端回動体)
68 ブラケット
69 支持具
70 防振ゴム機構(防振機構)
D 防振取付座
E 偏位抑制取付座
S 横向き軸芯
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体にエンジンを搭載し、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回してある歩行型作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機において、走行機体にエンジンを搭載するに、無端回動体の巻回方向に沿って二列状態でかつ4箇所に取付座を設けていた。その取付座には何れも防振機構としての防振ゴムが装備され、エンジンの取付部と機体フレームとの間に防振ゴムを配置し、エンジンの取付部と機体フレームとで防振ゴムを上下から挟み込む状態で防振支持する構成が採られていた(特許文献1)。
特許文献1では乗用型田植機が示されているが、同様な構成が歩行型作業機でも見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−36887号公報 ( 段落番号〔0034〕 、図5〜図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成においては、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回してあるので、この無端回動体に作用するテンション力がエンジンの出力回転体を介してそのエンジンに作用し、エンジンに対して走行装置用伝動装置の入力回転体に向けて引っ張り力を及ぼすこととなる。
この場合に、エンジンは防振ゴムを変形させて、出力回転体を走行装置用伝動装置に向ける状態に横向きに偏位することとなり、無端回動体と出力回転体等の巻回状態(アライメント)が変動して、エンジンから走行装置用伝動装置への伝動不良や無端回動体の偏磨耗を招来する虞があった。
【0005】
本発明の目的は、エンジンの支持構造に工夫を凝らすことによって、無端回動体と出力回転体等の巻回状態が変動し難い歩行型作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、走行機体にエンジンを搭載し、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回し、前記走行機体の機体フレームにおける複数箇所に前記エンジンを取り付ける取付座を設け、前記複数箇所の前記取付座のうちの一部の取付座を、防振機構を備えた防振取付座として、前記複数箇所の前記取付座のうちの残余の取付座をエンジンの横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
エンジンを取り付ける取付座を、エンジンの振動を機体フレームに伝達しないように防振する防振取付座と、エンジンの横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座とで構成し、振動は主として防振取付座により吸収し、エンジンの横方向への偏位は偏位抑制取付座によって抑制することができ、夫々の取付座にその機能を発揮させることによって、機体フレームへのエンジン振動の防止を図りながら、エンジンの横方向への偏位も抑制することができる。
【0008】
〔効果〕
防振取付座と偏位抑制取付座とでエンジンを機体フレームに支持する構成の採用によって、防振機能を維持しながら、エンジンの横方向への偏位を抑制できて、無端回動体の巻回状態が変動することを抑制できる歩行型作業機を提供することができた。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明の構成において、前記防振取付座を前記エンジンの操縦ハンドル側に配置してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
エンジンの操縦ハンドル側には防振取付座が設けてあるので、例えば、偏位抑制取付座を操縦ハンドル側に取り付けた場合に比べて、エンジンの振動が操縦ハンドルに伝わり難く、操縦ハンドルを握る操縦者が不快感を感じることが少ない。
【0011】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1又は2に係る発明の構成において、前記機体フレームよりブラケットを立設し、前記ブラケットに横向き軸芯周りで上下揺動自在に支持具を取付て前記偏位抑制取付座を構成し、前記支持具にエンジンを取り付けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
偏位抑制取付座を、機体フレームより立設したブラケットとそのブラケットに対して横向き軸芯周りで上下揺動自在に支持させた支持具とで構成した。エンジンを取り付けた支持具が、機体フレームに固定されたブラケットに横向き軸芯周りで上下揺動自在に取り付けてあるので、エンジンの横方向へ向かう偏位がブラケットによって抑制され、無端回動体の巻回状態が変動することを抑制できる。
このようにエンジンの偏位を抑制する構造を、ブラケットと支持具との簡単な構造で達成した歩行型作業機を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】草刈機の右側面図である。
【図2】草刈機の平面図である。
【図3】草刈機の伝動構造、及び、路面用切断装置を示す走行機体の側面図である。
【図4】路面用デッキと法面用デッキ、及び、路面用切断装置と法面用切断装置への伝動構造を示す平面図である。
【図5】路面用切断装置と法面用切断装置とを示す縦断正面図である。
【図6】路面用切断装置と法面用切断装置とを示し、法面用切断装置が法面に沿った姿勢に切り換えられた状態を示す縦断正面図である。
【図7】路面用切断装置の回転ディスクに刈刃を取付けた状態、及び、法面用切断装置の回転ディスクに刈刃を取付けた状態を示す平面図である。
【図8】回転ディスクと刈刃との取付構造を示す縦断側面図である。
【図9】刈刃を回転ディスクに取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図10】路面用切断装置の前輪を前輪伝動ケースとともに左右方向に揺動可能に構成する状態を示す平面図である。
【図11】前輪を前輪伝動ケースとともに上下調節する構成を示す側面図である。
【図12】路面用切断装置の前輪を前輪伝動ケースとともに左右方向に揺動可能に構成する状態を示す縦断側面図である。
【図13】前輪伝動ケースを上下調節する構造を示す縦断正面図である。
【図14】法面用デッキと路面用デッキとの連結構造を示す平面図である。
【図15】法面用デッキの前端部と路面用デッキの前端部との連結構造を示す縦断正面図である。
【図16】法面用デッキと路面用デッキとの間に付勢ばねを装着してある状態を示す縦断正面図である。
【図17】法面用デッキ、付勢ばね、連結ロッド、アングル状の支持フレーム、支点ピンを示す分解斜視図である。
【図18】法面用切断装置を高い刈高さに設定した状態を示す縦断側面図である。
【図19】法面用切断装置を低い刈高さに設定した状態を示す縦断側面図である。
【図20】法面用切断装置の高さ調節操作構造を示す後面図である。
【図21】法面用切断装置を法面に沿った姿勢に変更調節する構造を示す横断平面図である。
【図22】法面用切断装置を法面に沿った姿勢に変更調節する構造を示す後面図である。
【図23】エンジンの防振構造を示す側面図である。
【図24】エンジンの防振構造を示す平面図である。
【図25】エンジン、エアクリーナ、マフラーを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
草刈機Aは、図1及び図2に示すように、単一の前輪1と単一の後輪2を駆動して推進する走行機体3に、前後輪1,2の間に位置して路面に生えた草類を切断する路面用切断装置4と、法面に生えた草類を切断すべく前記路面用切断装置4の左横側方に位置する法面用切断装置5とを備え、走行機体3の後端部から後方に向けて操縦ハンドル6を設け、路面用切断装置4の上方にエンジン7、燃料タンク8及びエアクリーナ9、マフラー14を配置して構成してある。
【0015】
動力伝達構造について説明する。図2〜図4に示すように、エンジン7の出力軸7Aに出力回転体としてのエンジン側出力プーリ10を取付け、後輪伝動ケース11の上端に取り付けた入力回転体としての後輪側入力プーリ12に無端回動体としての後輪側伝動ベルト13を介してエンジン側出力プーリ10の小径プーリ部10aから動力伝達している。
後輪伝動ケース11は上下向き姿勢に立設してあり、その下端位置に後輪2を軸支している。
【0016】
後輪伝動ケース11内には、後輪側入力プーリ12からその下方に位置する後輪2に回動無端体(図示せず)によって動力伝達が行われているが、後輪側入力プーリ12と後輪2とを連係する前記回動無端体の伝動中間位置に動力取出し用の回転体(図示せず)が設けられている。
動力取出し用の回転体には、後輪側出力スプロケット15が連係してあり、この後輪側出力スプロケット15から、走行機体3の前端に配置されている前輪伝動ケース16の伝動機構に動力伝達可能に構成してある。
【0017】
つまり、後輪伝動ケース11に後輪側出力スプロケット15を装着し、図3及び図10に示すように、後記するブラケット43に支持されている前輪側入力軸41に前輪側入力スプロケット17を設けてある。後輪側出力スプロケット15と前輪側入力スプロケット17とに亘って前後輪動力伝達用伝動チェーン18が架設してあり、後輪伝動ケース11の後輪側出力スプロケット15から前輪伝動ケース16に動力伝達すべく構成してある。
【0018】
図3及び図10に示すように、前輪側入力スプロケット17を取り付けている前輪側入力軸41を法面用切断装置5側に水平に延出してあり、延出先端側に前輪側出力軸42を配置してあり、前輪側入力軸41を機体フレーム3Aより立設したブラケット43に支持してある。前輪側入力軸41と前輪側出力軸42とはジョイント44で連結してある。
【0019】
図3、及び、図10〜図12に示すように、前輪伝動ケース16においては、前輪側出力軸42に前輪側出力スプロケット19が取付られており、下端位置に設けた前輪用の駆動軸1Aに装着した前輪入力スプロケット20と前輪側出力スプロケット19とに亘って前輪用伝動チェーン21を巻回し、前輪1を駆動すべく構成してある。前輪1は、前輪伝動ケース16の下端位置より法面用切断装置5側に片持ち状に延出された駆動軸1Aに取付られている。
【0020】
路面用切断装置4及び法面用切断装置5への動力伝達構造について説明する。図2〜図4に示すように、二段構成になるエンジン側出力プーリ10の大径プリー部10bと切断装置側入力プーリ22とに亘って切断装置動力伝達用伝動ベルト23を巻回して路面用切断装置4及び法面用切断装置5への動力伝達を可能に構成する。
【0021】
図3及び図4に示すように、切断装置動力伝達用伝動ベルト23に対してテンションプーリ71Aが作用すべく設けてあり、テンションプーリ71Aを支持するベルクランク状のアーム71を設けてある。ベルクランク状のアーム71は図示しないワイヤ機構を介して操縦ハンドル6に設けたクラッチ操作レバーに連係してある。
以上の構成によって、路面用切断装置4及び法面用切断装置5への動力を入り切りする刈取クラッチを構成する。
【0022】
図4〜図6に示すように、路面用切断装置4を支持する路面用デッキ24を設け、路面用デッキ24に上下向き姿勢の路面用伝動ケース25の上下中間部25Aを取り付けてある。路面用伝動ケース25には、前記した切断装置側入力プーリ22を支持し法面用切断装置5に向けて延出された切断装置側入力軸26と、切断装置側入力軸26の中間位置の下方に下向き姿勢の路面用出力軸27とを装入してある。
切断装置側入力軸26と路面用出力軸27との間にはべべルギヤ機構25Bが設けてあり、切断装置側入力軸26から路面用出力軸27へ動力伝達されるように構成してある。
【0023】
図4〜図6に示すように、切断装置側入力軸26の法面用切断装置側に位置する端部には、屈曲自在な路面側連結具28が連結してあり、その路面側連結具28の法面用切断装置側には屈曲自在な法面側連結具29が設けてある。法面側連結具29から連結軸29Aが延出されて、その連結軸29Aを路面側連結具28から延出されたボス部28A内に内嵌して、連結軸29Aとボス部28Aとを軸芯方向に相対スライド自在にスプライン外嵌して、法面用切断装置5への動力伝達構造を構成してある。
【0024】
法面用切断装置5を支持する法面用デッキ30を設け、法面用デッキ30に上下向き姿勢の法面用伝動ケース31の上下中間部31Aを取り付けてある。法面用伝動ケース31には、蛇腹状の法面用連結具29と同一軸芯上に配置され連動連結された法面用入力軸32と、法面用入力軸32の中間位置の下方に下向き姿勢の法面用出力軸33とが装入されている。
法面用入力軸32と法面用出力軸33との間には法面用べべルギヤ機構34が設けてあり、法面用入力軸32から法面用出力軸33へ動力伝達されるように構成してある。
図2に示すように、法面用デッキ30の前端には前方上方に向けて延出されたパイプ製のガード73が設けてあり、丈の高い草類を押し退けて、丈の高い草類が法面用デッキ30上に降り掛かかるのを阻止すべく構成してある。
【0025】
路面用切断装置4の構成について説明する。図5〜図7に示すように、路面用切断装置4は、路面用出力軸27の下端に取付固定された路面用回転ディスク35と、その路面用回転ディスク35の外縁部35Aに路面用出力軸27の回転軸芯と平行な軸芯周りで自由揺動自在に取付られている路面用刈刃36とを備えて構成されている。
【0026】
図5〜図7に示すように、路面用回転ディスク35は、回転中心位置に回転ボス35Bを配置し、回転ボス35Bの径方向外側に板状のディスク本体35Cを取付け、ディスク本体35Cの外縁部35Aにおける回転ボス35Bを挟んで180°対角位置に路面用刈刃36の取付座35Dを形成し、外縁部35Aの周方向4箇所に起風羽根板38を立設して構成してある。
【0027】
ディスク本体35Cは、回転ボス35Bを囲む円盤状の部分を基本に回転軸芯を挟んで180°対角位置に向けて山形状の延設部を径方向外向きに突出させて、全体として楕円に近似した外形形状を呈する。
そして、ディスク本体35Cの180°対角位置に形成した山形状の延設部に、路面用刈刃36を装着する為の前記した取付座35Dを形成してある。
【0028】
ディスク本体35Cの外縁部35Aの4箇所には起風羽根板38が設けてあり、図5及び図7に示すように、起風羽根板38は、板状の本体部38Aを径方向に沿った状態でかつディスク本体35Cの上面に立設してある。板状の本体部38Aの径方向外端を円周方向に折り曲げて補強リブ部38Bを形成し、補強リブ部38Bをディスク本体35Cの外縁部35Aに取付固定して、起風羽根板38を取付固定している。
起風羽根板38を円周方向の4箇所に設けてあるのは、刈草を一箇所に集中させるのではなく、均等に周辺に散らすためである。
【0029】
路面用刈刃36について説明する。図8及び図9に示すように、路面用刈刃36は本体部を板状に形成し、本体部における回転ディスク35への取付基端部36Aに装着孔36aを設けてある。本体部における取付基端部36Aから先端部36Bに至る両側端部36Cの間隔を先端部36Bに向かう程広くなるように構成して、扇形形状に形成してある。両側端部36Cには、夫々、先端部36Bに至る切刃36bを形成してある。
これによって、一方の切刃36bが磨滅等の不具合が生じた場合には、他方の切刃36bを使用すべく、裏返した状態で使用できる。
【0030】
路面用刈刃36の取付構造は次のようになっている。図8及び図9に示すように、ディスク本体35Cの取付座35Dに取付孔35bを形成し、取付孔35bを小判型の断面孔に形成してある。取付孔35bに対して取付ボルト37を装入して、上下二枚の路面用刈刃36を取り付けるべく構成してある。取付ボルト37に段付き部分37aを設けてあり、その段付き部分37aからボルト先端に向けて小径のネジ部37bを形成してある。
このような取付ボルト37の構成によって、路面用刈刃36を取付座35Dに装着した状態でナット37Aで抜止装着した場合に、段付き部分37aによって路面用刈刃36を締め付けることがなく、路面用刈刃36は、取付ボルト37の縦向き軸芯V周りで自由揺
動可能に取り付けられる。
【0031】
本体部は、取付基端部36Aに対して先端部36Bを緩く屈曲形成してあり、路面用刈刃36は、回転ディスク35の上面に取り付けた状態では、取付基端部36Aが回転ディスク面に沿った姿勢に載置され、先端部36Bは、回転ディスク35よりやや斜め上向きに反る状態となる。
一方、回転ディスク35の下面に取り付けた状態では、取付基端部36Aが回転ディスク面に沿った姿勢に載置され、先端部36Bは、回転ディスク35よりやや斜め下向きに反る状態となる。
このように、二つの刈刃36を回転ディスク35の上下両面に装着することによって、草類を細かく切断することができる。
【0032】
路面用刈刃36は、前記したように扇形形状に形成されており、取付基端部36Aから先端部36Bに掛けて単位長さ当たりの重量が重くなる構成を採っている。このような構成によって、回転ディスク35を回転させて切断作業を行う際に、路面用刈刃36に遠心力が大きく作用することとなり、切断力を大きくすることができる。
【0033】
また、前記した扇形形状に形成することによって、次のような作用効果を奏することができる。つまり、路面用刈刃36は、本体部における取付基端部36Aから先端部36Bに至る両側端部36Cの間隔を先端部36Bに向かう程広くなるように構成して、扇形形状に形成してある。
したがって、図9に示すように、路面用刈刃36の両側端部36Cの左右中心線Xを想
定すると、その左右中心線Xから側端部36Cの間隔は、基端部より先端側の方が広くな
っている。そうすると、切刃36bの切刃線Yは、先端側ほど左右中心線Xから離れる傾
斜状態にある。
このことによって、路面用刈刃36の側端部36Cに形成した切刃36bによって切断されようとする植立草は、前記した切刃36bの切刃線Yに沿って基端部側に誘導される分力を受けて、刈刃36の先端側に逃げることが抑制され、刈刃36の切断能力を高く維持することができる。
【0034】
路面用切断装置4の刈高さ調節構造について説明する。図2及び図3、図11及び図13に示すように、前輪1を軸支した前輪伝動ケース16は、機体フレーム3Aより立設された前輪伝動ケース支持用ブラケット45に前輪側出力軸42を介して上下揺動自在に取付られている。前輪伝動ケース支持用ブラケット45は、前輪伝動ケース16の横側面に沿って機体フレーム3Aの前方上方に向けて立ち上げてあり、前輪伝動ケース16の上方から上面を跨ぐように、フォーク状の吊り上げ具46が連結してある。
【0035】
フォーク状の吊り上げ具46には駆動ネジ部46Bが上方に延出してあり、前輪伝動ケース支持用ブラケット45の上面に軸芯方向へ移動不能に操作ハンドル47の基端ボス部47Aを設け、フォーク状の吊り上げ具46の駆動ネジ部46Bが基端ボス部47Aに螺合している。フォーク状の吊り上げ具46には、下端部に前輪伝動ケース16を吊り下げ支持する横向きピン46Aが取り付けてあり、操作ハンドル47を回転駆動することによって、フォーク状の吊り上げ具46を昇降させ、横向きピン46Aが昇降作動し、前輪伝動ケース16を昇降駆動する。
【0036】
前輪伝動ケース16の横側面16Aとフォーク状の吊り上げ具46のフォーク状本体部46Cとの間に、前輪伝動ケース支持用ブラケット45の横側部45Aが位置している。この横側部45Aに円弧状のガイド孔45aが設けてあり、このガイド孔45aに横向きピン46Aを貫通させて、前輪伝動ケース16の上下揺動を許容しながら、一定の揺動範囲に制限する構成を採っている。
【0037】
具体的には、操作ハンドル47とナット部47Aが一体で回転する。ナット部47Aが回転すると、ナット部47Aはブラケット43に軸芯方向への移動を規制された状態で取り付けてあるので、ナット部47Aに螺合した駆動ネジ部46Bが相対的に昇降作動して、フォーク状の吊り上げ具46が前輪伝動ケース16を昇降駆動する。
これによって、前輪1が昇降駆動されて、走行機体3の前端部が後輪2の接地点を基準に昇降駆動され、走行機体3に取付られた路面用切断装置4が昇降作動され、刈取高さが調節される。
【0038】
次に、前輪伝動ケース16を前輪伝動ケース支持用ブラケット45と一体で左右に揺動して、前輪1の進行方向を法面より離れる方向に変更する構成について説明する。図10〜図12に示すように、前輪伝動ケース支持用ブラケット45は、操作ハンドル47を取り付けている上方のハンドル取付部45Bと、上方のハンドル取付部45Bの下方に延設されている前記した左右一対の横側部45Aと、左右一対の横側部45Aより機体フレーム3Aの上面に載置される左右一対の水平載置部45Cとを延出して構成してある。
【0039】
前輪伝動ケース支持用ブラケット45の左右一対の横側部45Aに、前輪伝動ケース16の横側面16Aより横側方に延出されたボス部16aを嵌入保持してあり、この横側部45Aのボス部16aに対する支持軸芯を中心に、前輪伝動ケース16を上下揺動自在に支持してある。
左右一対の水平載置部45Cの左側水平載置部45Cには円弧状ガイド孔45bが設けてあり、円弧状ガイド孔45bを貫通して上方に突出する取付用ネジ45Dが機体フレーム3Aの下面に固着して設けてある。左側水平載置部45Cより上方に突出する取付用ネジ45Dに対して上方側から締め付けハンドル45Eを取り付けてある。
【0040】
一方、左右一対の水平載置部45Cの右側水平載置部45C側には、機体フレーム3Aから上方に突出された支点ボルト45Fがその機体フレーム3Aに固着された状態で設けてあり、支点ボルト45Fの右側水平載置部45Cより上方に突出したネジ部にダブルナット45dが装着してある。
以上のような構成によって、前輪伝動ケース支持用ブラケット45及び前輪伝動ケース16は一体で、支点ボルト45Fの縦向き軸芯Tを中心に水平揺動自在に構成してある。
【0041】
なお、前輪伝動ケース支持用ブラケット45及び前輪伝動ケース16の水平揺動範囲は、左側水平載置部45Cに形成した円弧状ガイド孔45bによって規制されており、前輪車輪1は、機体前後方向を基準に法面より離れる方向への揺動が許容される。
そして、前輪伝動ケース支持用ブラケット45及び前輪伝動ケース16を揺動させるには、締め付けハンドル45Eを緩めて、人為的に前輪伝動ケース支持用ブラケット45を強制的に回転させることによって行うことができる。
【0042】
このように前輪伝動ケース16を法面から離れる方向に偏位させるのは、路面に対して下向きに傾斜する法面に沿って刈取を行う法面用切断装置5によって、法面側に路面切断装置4が引き寄せられて進行方向が法面側に偏るのを抑制する為である。
【0043】
法面用切断装置5の構成について説明する。法面用切断装置5は路面用切断装置4と同様の構成を採っている。つまり、図5〜図7に示すように、法面用切断装置5は、法面用出力軸33の下端に取付固定された法面用回転ディスク48と、法面用回転ディスク48の中心に位置する法面用回転ボス部48Bと、その法面用回転ディスク48の外縁部48Aに路面用出力軸33の回転軸芯と平行な軸芯周りで自由揺動自在に取付られている法面用刈刃49とを備えて構成されている。
【0044】
法面用回転ディスク48には、板状ディスク本体48Cの対角位置に法面用刈刃49の取付座48D、板状ディスク本体48Cの上面に起風羽根板50、取付座48Dに取り付けた法面用刈刃49とを備えている。
以上、ここで記載した法面用切断装置5の構成、及び、構成部品の構造・形状などは、路面用切断装置4の構成、及び、構成部品の構造・形状と同一である。
【0045】
ただし、法面用切断装置5には、接地体51が設けてある。接地体51は、法面用出力軸33の下端に取り付けられる取付ボス部51Aと、取付ボス部51Aの下端に接地部51Bが設けてあり、接地部51Bは傾斜が急な上部接地面部51dと穏やかな下部接地面部51bを屈折することなく滑らかに繋いだ椀状面に形成し、中心部ほど下向きに突出する椀状面に形成してある。これによって、法面用切断装置5の接地状態に傾きを生じても、接地状態が維持できるようになっている。接地部51Bは、取付ボス部51Aの下端フランジ部51aにボルトを介して取り付けてあり、ボルト頭が接地部51Bの下端接地面より突出しないように、下端接地面に凹入部を形成している。
【0046】
路面用切断装置4と法面用切断装置5との配置関係について説明する。図7に示すように、路面用切断装置4と法面用切断装置5とは、夫々、回転ディスク35,48を楕円状に形成し、その楕円状の長径部の先端に刈刃36,49を取付てある。そして、法面用刈刃49と路面用刈刃36とが互いに干渉しないように90度回転位相をずらした状態で、法面用刈刃49を回転ディスク48に、路面用刈刃36を回転ディスク35に夫々取付て、路面用切断装置4と法面用切断装置5とを構成してある。
【0047】
上記のように、法面用刈刃49と路面用刈刃36とを、回転位相を90度ずらした状態で配置しているので、必然的に、楕円状の回転ディスク35,48の配置構成も、一方の回転ディスク35の長径部の先端が他方の回転ディクス48の短径部に近接する状態に配置する構成になっている。
したがって、法面用刈刃49と路面用刈刃36とが、互いに、相手側の回転軌跡内に入り込む状態で回転するので、路面用切断装置4と法面用切断装置5とを十分近接させた状態で配置することができ、路面用切断装置4の作業領域と法面用切断装置5の作業領域とが隣接する領域での刈残しを少なくできる。
【0048】
路面用デッキ24と法面用デッキ30との連結構造について説明する。図14〜図17に示すように、法面用デッキ30の右側端に前後姿勢の連結用パイプ52を前後二箇所に間隔を開けて取付け、この連結用パイプ52を後記する操作ロッド53に外嵌して、法面用デッキ30を操作ロッド53で支持し、かつ、法面用デッキ30を操作ロッド53の前後向き軸芯P周りで上下揺動自在に構成してある。
また、図17に示すように、連結用パイプ52を覆うように配置されたアングル状のカバーフレーム54のアングル状本体部54Aを、操作ロッド53にピン52aで連結して、操作ロッド53と一体で上下揺動すべく構成してある。
【0049】
操作ロッド53の前端部には、チャンネル状の揺動ブラケット55が取付け固定してあり、路面用切断装置4の路面用デッキ24から法面用切断装置5側に向けて屈曲した左右向きのL字形の支点ピン(機体横向き軸の一例)56を延出し、揺動ブラケット55に支点ピン56を貫通させて、支点ピン56で揺動ブラケット55を支持している。カバーフレーム54のアングル状本体部54Aの先端部に連結用の板状連結部54Bが形成してあり、この板状連結部54Bの貫通孔54aを介して板状連結部54Bが支点ピン56に外嵌装着されている。このような構成によって、法面用切断装置5は、揺動ブラケット55、連結用パイプ52、操作ロッド53及びカバーフレーム54とともに、支点ピン56の機体横向き軸芯Q周りに上下揺動可能である。
【0050】
一方、図14、図18〜図20に示すように、操作ロッド53の後端部近くには、機体フレーム3Aに支持された後ブラケット67が配置してある。後ブラケット67は、機体フレーム3Aに取付固定される取付板部67Aと取付板部67Aより法面用デッキ30側に屈折された支持板部67Bとで構成されており、支持板部67Bに操作ロッド53を挿通する縦長状の挿通孔67bを形成してある。
この挿通孔67bによって、後記するように、操作ロッド53の後端部を持ち上げて昇降させ、法面用切断装置5の刈高さ調節を行うことを許容しながら、操作ロッド53の左右方向への横ブレを抑制することができる。
【0051】
尚、図14〜図19に示すように、操作ロッド53には、付勢ばね66が巻回してあり、この付勢ばね66の一端は法面用デッキ30に下から当てがわれており、付勢ばね66の他端は操作ロッド53と一体で揺動するカバーフレーム54のアングル状本体部54Aに当て付けられている。付勢ばね66の付勢力によって、法面用切断装置5を操作ロッド53の機体前後向き軸芯P周りに上向き付勢してある。これによって、法面用切断装置5の下方揺動力を軽減して、付勢ばね66を法面用切断装置5に対するバランスバネとして機能させている。
【0052】
次に、法面用切断装置5を支点ピン56の機体横向き軸芯Q周りに上下揺動させて、法面用切断装置5の刈高さを変更する機構Bについて説明する。図14〜図19に示すように、操作ロッド53を後方に延出し、連結用パイプ52の後端より後方に突出させ、その突出端に横向き貫通孔53aを形成する。貫通孔53aに連結ピン57を挿入固定し、連結ピン57に操作連係機構Cを連係してある。
【0053】
操作連係機構Cは、連結ピン57に前後揺動自在に連係された第1操作アーム58と、第1操作アーム58の上端において相対揺動自在に連係された第2操作アーム59と、第2操作アーム59の基端部59Aを支持する操作部60とでなる。操作部60は、操縦ハンドル6の支持フレーム6Aに取り付けた支軸60Aと、その支軸60Aに回転自在に外嵌したボス部60Bとそのボス部60Bに一体回転自在に連結された操作レバー61と、操作レバー61を案内するガイド板60Cとからなる。
【0054】
以上のような構成により、操作レバー61を前後に揺動操作すると、操作ロッド53と、操作ロッド53を覆うアングル状のカバーフレーム54と、その操作ロッド53を挿通支持する前後一対の連結フレーム52と、操作ロッド53の前端部に連結してある揺動ブラケット55と、法面用デッキ30とが一体で、支点ピン56の機体横向き軸芯Q周りで上下揺動する。これによって、連結フレーム52に連結固定された法面用デッキ30及び法面用切断装置5が前端部を基準に後端部側を上下させて、前下がり姿勢を切り換え、刈高さを変更する。
【0055】
具体的には、図18に示すように、操作ロッド53を水平姿勢に設定すると、接地体51及び法面用刈刃49が、法面に対して平行な姿勢にある。この状態では、法面用刈刃49の刈高さH1を高く設定することができる。
【0056】
次に、図19に示すように、操作レバー61を後方側に揺動操作して、操作ロッド53の後端部を持ち上げ操作すると、接地体51が法面に対して前傾斜姿勢になり、法面用刈刃49の刈高さH2を低くすることができる。
以上のような構成によって、操作レバー61を操作することによって、法面用切断装置5の刈高さを変更できる。ここに、操作レバー61を刈高さ調節操作具という。路面用切断装置4は操作レバー61の操作では、上下動はしない。
【0057】
次に、法面用切断装置5を路面用切断装置4に対して、操作ロッド53の機体前後向き軸芯P周りに揺動させて、法面に沿った姿勢に切換える構成について説明する。図14、図21及び図22に示すように、法面用デッキ30上にブラケット62を立設し、このブラケット62に取り付けた後記する保持ボス部62Cに径方向に貫通する貫通孔62aを形成し、その貫通孔62aを貫通する状態で長尺状のガイド板63をスライド移動自在に収納してある。そのガイド板63の一端をブラケット62より突出させて路面用デッキ24まで延出する一方、路面用デッキ24には支持ブラケット24Aを立設し、支持ブラケット24Aの法面用切断装置側に臨む一端部を操作ロッド53の上方まで延出する。ガイド板63の一端を支持ブラケット24Aの一端部に前後向き軸芯R周りで上下揺動自在に支持する。
前後向き軸芯Rは、下方に位置する操作ロッド53の機体前後向き軸芯Pと平行であるが、直上方に位置するのではなく、やや法面用切断装置側に入り込んでいる。
【0058】
ブラケット62は、図21及び図22に示すように、横向きに平行する状態で立設した前後板状部材62A,62Aと、その前後板状部材62A,62Aの上端同士を連結する天井板部62Bとを組み付けて構成してある。長尺状のガイド板63の後端面には鋸歯状の係止部63Aが形成してあり、後記する係合ピン64と係止部63Aとが係止すべく構成してある。係合ピン64は、ブラケット62の前後板状部材62Aを貫通する状態でそのブラケット62に取り付けた保持ボス部62C内にスライド移動自在に保持され、保持ボス部62C内に挿入した付勢バネ64Aによってガイド板63の係止部63Aに向けて、突出付勢してある。
係合ピン64には、ワイヤ65が連係されており、操縦ハンドル6の近傍に設けた操作レバーによってガイド板63の係止部63Aから離間する方向に引き操作可能に構成してある。
【0059】
以上のような構成によって、法面用切断装置5が法面に沿った傾斜姿勢になった場合に、係合ピン64とガイド板63における対応する係止部63Aとが係合して、法面用切断装置5の下方への揺動を阻止する構成を採っている。したがって、係合ピン64を係止部63Aから離間させると、法面用切断装置5は更に下方に揺動しようとする。
【0060】
ここで、法面用切断装置5の刈高さを調節する場合の接地体51の作動について説明する。法面用切断装置5を機体前後向き軸芯P周りで上下揺動させて接地体51を接地させる。その接地体51の接地状態を維持しながら、法面用切断装置5を機体左右向き軸芯Q周りで、後部側を持ち上げ操作することによって、法面用切断装置5を前後向きに傾斜させて、刈高さを調節する。この場合に、接地体51は、法面用切断装置5の前後向き傾斜に連れて回転するが、椀状の接地面51bの接地点を移動させながら接地状態を維持しているので、法面用切断装置5の刈高さ調節を安定して行える。
【0061】
エンジン7の支持構造について説明する。図2、図23及び図24に示すように、エンジン7の前端部下方に、ブラケット68に軸支された支持具69を横向き軸芯S周りで揺動自在に配置し、支持具69の後方側に、機体フレーム3Aに設けた防振機構としての防振ゴム機構70を配置して、この支持具69と防振ゴム機構70とでエンジン7を支持すべく構成してある。
【0062】
支持具69は、横向き軸芯位置に配置された支軸69Cに外嵌する筒状部69Aとその筒状部69Aより後方に延出された取付板部69Bとで構成してあり、取付板部69Bと防振ゴム機構70とに、エンジン7の受座7Bを載置してボルト止め固定してある。
支軸69Cは、左右一体形成されたブラケット68における左右側板部に支持されており、筒状部69Aを外嵌されてその筒状部69Aを支持している。筒状部69Aには取付板部69Bが一体形成してあり、取付板部69Bにエンジン7の受座7Bが載置してある。
【0063】
これによって、防振ゴム機構70だけで支持する場合に見られる、伝動ベルト12,13の張力によって、防振ゴム機構70が横方向に引っ張られて、エンジン7が偏位し、そのエンジン7の偏位によって、後輪側伝動ベルト13、切断装置動力伝達用伝動ベルト23の取付状態(アライメント)が変化することを抑制できる。
【0064】
防振ゴム機構70が操縦ハンドル6側にあるので、エンジン7の振動を防振ゴム機構70によって遮断することができ、操縦ハンドル6にエンジン7の振動が伝わることを阻止できる。したがって、操縦ハンドル6を握る操縦者に不快感を与えることが少なく、快適な操作を行うことができる。
以上、ブラケット68に支持された、支軸69C、その支軸69Cに外嵌された筒状部69A、筒状部69Aに一体形成されている取付板部69Bで、エンジン7の横方向への偏位を抑制できるので、これらを偏位抑制取付座Eと総称する。一方、防振ゴム機構70と防振ゴム機構70を載置している機体フレーム3Aの部分を、防振取付座Dと称する。
【0065】
次に、前輪1と操縦ハンドル6との位置関係について説明する。図2及び図25に示すように、エンジン7の上方に燃料タンク8を配置し、燃料タンク8の前方側にエアクリーナ9とマフラー14とを左右に並列配置し、エンジン7の後方に操縦ハンドル6とその操縦ハンドル6の下方に後輪2、エアクリーナ9とマフラー14との間の前方側に前輪1を配置してある。
【0066】
つまり、エアクリーナ9とマフラー14とをある一定の間隔aを置いて配置し、その間隔aの後方側に操縦ハンドル6を配置し、その間隔aの前方側に前輪1を配置してある。
このように、操縦ハンドル6側から運転者が、エアクリーナ9とマフラー14との間隔aを通して前輪1を確認しやすい構成を採っている。
【0067】
〔別実施形態〕
(1) 偏位抑制取付座Eとして、前記した実施形態では、ブラケット68に支軸69Cを架設し、横向き軸芯位置に配置された支軸69Cに外嵌する筒状部69Aとその筒状部69Aより後方に延出された取付板部69Bとで構成する支持具69を配置したものを提示した。これに加えて、図示はしていないが、支軸69Cの外周面とこの支軸69Cに外嵌された筒状部69Aの内周面との間に、筒状の防振ゴムを装入してもよい。このような構成によって、防振ゴムの厚み方向への圧縮量だけはエンジン7が横方向に偏位する可能性はあるが、防振ゴム機構70での横方向への偏位量に比べて小さな偏位量に抑制することが可能である。一方、防振ゴムの装入によって防振効果が期待でき、エンジン振動の伝播を抑制することができる。
【0068】
(2) 防振取付座Dを操縦ハンドル側に配置する構成を示したが、偏位抑制取付座Eを操縦ハンドル側に配置し、偏位抑制取付座Eを挟んで防振取付座Dを操縦ハンドル6の存在側とは反対側に配置してもよい。
【0069】
(3) 防振取付座Dと偏位抑制取付座Eとの配置構成は、図示するものに限定されず、例えば、法面側に2個の防振取付座D、路面側に2個の偏位抑制取付座Eを配置する構成を採ってもよく、かつ、4箇所の対角線上に位置するものを防振取付座Dとし、残りの対角線上に位置するものを偏位抑制取付座Eと構成してもよい。
【0070】
(4) 防振取付座Dと偏位抑制取付座Eの数は異なる数であってもよく、例えば、4個の取付座のうちの1個を偏位抑制取付座Eとし、残余の取付座を防振取付座Dとしてもよく、3個の取付座のうちの1個を偏位抑制取付座Eとし、残余の取付座を防振取付座Dとしもよく、これら以外の構成を採ってもよい。
【0071】
(5) 無端回動体13としては、ベルトではなくチェーンであってもよい。したがって、エンジン側出力プーリ10、後輪側入力プーリ12はスプロケットであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、法面用草刈機だけでなく、芝刈り機、その他歩行型トラクタ等の他の作業機におけるエンジン搭載構造に使用可能である。
【符号の説明】
【0073】
3 走行機体
3A 機体フレーム
7 エンジン
11 後輪伝動ケース(走行装置用伝動装置)
12 後輪側入力プーリ(入力回転体)
13 後輪側伝動ベルト(無端回動体)
68 ブラケット
69 支持具
70 防振ゴム機構(防振機構)
D 防振取付座
E 偏位抑制取付座
S 横向き軸芯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体にエンジンを搭載し、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回し、前記走行機体の機体フレームにおける複数箇所に前記エンジンを取り付ける取付座を設け、前記複数箇所の前記取付座のうちの一部の取付座を、防振機構を備えた防振取付座として、前記複数箇所の前記取付座のうちの残余の取付座を、エンジンの横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座に構成してある歩行型作業機。
【請求項2】
前記防振取付座を前記エンジンの操縦ハンドル側に配置してある請求項1記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記機体フレームよりブラケットを立設し、前記ブラケットに横向き軸芯周りで上下揺動自在に支持具を取付けて前記偏位抑制取付座を構成し、前記支持具にエンジンを取り付けてある請求項1又は2記載の歩行型作業機。
【請求項1】
走行機体にエンジンを搭載し、前記エンジンの出力回転体と走行装置用伝動装置の入力回転体とに亘って無端回動体を巻回し、前記走行機体の機体フレームにおける複数箇所に前記エンジンを取り付ける取付座を設け、前記複数箇所の前記取付座のうちの一部の取付座を、防振機構を備えた防振取付座として、前記複数箇所の前記取付座のうちの残余の取付座を、エンジンの横方向への偏位を抑制する偏位抑制取付座に構成してある歩行型作業機。
【請求項2】
前記防振取付座を前記エンジンの操縦ハンドル側に配置してある請求項1記載の歩行型作業機。
【請求項3】
前記機体フレームよりブラケットを立設し、前記ブラケットに横向き軸芯周りで上下揺動自在に支持具を取付けて前記偏位抑制取付座を構成し、前記支持具にエンジンを取り付けてある請求項1又は2記載の歩行型作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−274736(P2010−274736A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127974(P2009−127974)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】
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