説明

歩行支援装置

【課題】安定的固定と装着感の両者を満足させることを目的とする。
【解決手段】締付力を変更する固定具アクチュエータを設けることにより、歩行支援装置の締付力を可変にする。そして、1歩行周期の間を動作の状態に応じて区分し、各歩行動作状態の区分毎に各装着部21〜23の締付強度を予め決めておく。そして、各センサ出力から、脚がどの区分の歩行動作状態にあるかを検出し、検出した区分対応する締付力で各装着部21〜23を締め付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行支援装置に関し、例えば、歩行をアシストするものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、介護ビジネスなどを中心に、人の動作(歩行や持ち上げなど)に使われる筋力を補助する装着型ロボット(パワーアシストスーツ)などが開発されている。
装着型ロボットには、アシスト箇所として、上半身の筋力を補助するもの、下半身の筋力を補助するもの、あるいは、全身の筋力を補助するものなど各種のものがある。
また、装着型ロボットの用途も、健常者用から高齢者・障害者の補助用などがある。
【0003】
装着型ロボットは、例えば、装着者の筋電から筋肉の動きを解析したり、関節各部に配置した姿勢センサで検出される装着者の動きを解析することで、当該動きに必要な関節モーメントを算出し、これに応じた必要なアシスト力を発生させている。これによって、装着者は、重量物の持ち上げや歩行を楽に行うことができる。
【0004】
このような技術として動作補助装着具(特許文献1)が提案されている。
この動作補助装着具は、上部アーム、中間アーム、下部アーム間を回転自在に接合するジョイントが設けられ、当該ジョイントがアクチュエータにより駆動されることで、必要なパワーをアシストするようになっている。
そして、動作補助装置は、中間アームと下部アームに取り付けられた面ファスナー等の固定具により、装着者の太腿(上腿)やふくらはぎ(下腿)に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−95561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、歩行支援装置は所定のアシスト力を脚に作用させることで歩行支援を行うものであるから、装置を身体に固定するための固定具は、装置の機能を活かすためにも、その固定力、すなわち締め付け力が強いことが望ましい。
その反面、付け心地や体表面の血流の阻害など健康面から考えれば固定具の締め付け力は弱いことが望ましい。
しかし、特許文献1記載の動作補助装置を含め、従来の歩行支援装置では、装着者(歩行支援対象者)に装置を固定するための固定具の固定力は、一旦固定した後は一定であった。なお、装着者が改めて固定し直すことで固定力を変えることは可能であるが、変更した後の固定力は一定である。
そのため、装置を安定的に固定すると共にアシスト力を無駄なく脚に作用させるための要求と、圧迫感を無くし違和感の少ない装着感にするための要求の両者を満足させることはできなかった。
そこで、本発明は安定的固定と装着感の両者を満足させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明では、歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援装置であって、前記歩行支援対象者に対して装置を固定する固定手段と、1歩行周期を、脚の状態に基づいて複数に区分し、各区分における締付力を規定した歩行状態対応締付力テーブルを記憶した締付力記憶手段と、前記歩行支援対象者の脚の状態が、前記歩行状態対応締付力テーブルのどの区分に該当するかを判定する判定手段と、前記判定した区分に規定されている締付力により、前記固定手段による締付力を変更する締付力制御手段と、前記歩行支援対象者の各脚に対する歩行アシスト力を決定する歩行アシスト力決定手段と、前記決定した歩行アシスト力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させて歩行をアシストする歩行アシスト手段と、を具備することを特徴とする歩行支援装置を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記歩行状態対応締付力テーブルは、締付力が所定の強さに規定されている区分の直前の区分に対して、前記所定の強さよりも弱い強さによる締付力が規定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記固定手段は、上腿を固定する上腿装着部と、下腿を固定する下腿装着部を備え、前記歩行状態対応締付力テーブルは、各区分における前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力が規定され、前記締付力制御手段は、前記判定した区分に規定されている各締付力により、前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力を変更し、前記歩行アシスト手段は、前記歩行支援対象者の腰部に対応して配置される腰関節アクチュエータと、膝関節に対応して配設される膝関節アクチュエータを備え、前記歩行アシスト力決定手段は、前記腰関節アクチュエータから出力する歩行アシスト力と、前記膝関節アクチュエータから出力する歩行アシスト力を決定する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歩行支援装置を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記固定手段は、更に腰部を固定する腰部装着部を備え、前記歩行状態対応締付力テーブルは、各区分における前記腰部装着部と、前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力が規定され、前記締付力制御手段は、前記判定した区分に規定されている各締付力により、腰部装着部と前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力を変更する、ことを特徴とする請求項3に記載の歩行支援装置を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記締付力制御手段による締付力を調整する調整手段を備える、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の歩行支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、締付力可変型の固定具を使用し、アシスト力に応じて締付力を変えるようにしたので、安定的固定と装着感の両者を装着者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】歩行支援装置の装着状態を示した図である。
【図2】各装着部により歩行支援装置を固定した状態を表した説明図である。
【図3】固定具と固定具アクチュエータの断面を表した説明図である。
【図4】固定具アクチュエータ他の例について表した説明図である。
【図5】他の固定具と固定具アクチュエータの断面を表した説明図である。
【図6】歩行支援装置のシステム構成を示した図である。
【図7】歩行アシスト処理の動作を示したフローチャートである。
【図8】歩行動作状態における区分と、各部の締付強度について表した説明図である。
【図9】歩行状態対応締付力テーブルを表した説明図である。
【図10】歩行アシスト処理の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態の概要
歩行支援装置1は、装着者(歩行支援対象者)の筋電から筋肉の動きを解析したり、関節各部に配置した姿勢センサで検出される装着者の動きを解析することで、当該動きに必要な関節モーメントを算出し、これに応じた必要なアシスト力を発生させることで各関節の動作を支援する。例えば、股関節アシストアクチュエータ17で股関節の動作を支援し、膝関節アシストアクチュエータ18で膝関節の動作を支援し、足首関節アシストアクチュエータ19で足首関節の動作を支援する。
即ち歩行支援装置1は、装着者が歩行のために関節モーメントを発生させる際に、各アシストアクチュエータを駆動して装着者が発生させる関節モーメントを軽減する。
【0011】
本実施形態の歩行支援装置1では、固定具によって装置を脚に固定するが、固定具による締付力を変更する固定具アクチュエータを設けることにより、締付力を可変にする。
そして、歩行支援装置1は、各姿勢センサや反力センサの検出値から、各関節アシストアクチュエータに対する歩行アシスト力を決定し出力することで歩行を支援する。
一方、決定した各関節アクチュエータに対する歩行アシスト力が所定の閾値を超えるかどうかを判断し、超えている場合には大きなアシスト力を無駄なく脚に作用させるために、固定具アクチュエータを駆動して締付力を強くする。
一方、歩行アシスト力が所定閾値以下の場合には、アシスト力の伝達(作用)よりも歩行支援対象者の装着感を優先して、締付力を弱くする(又はデフォルトで決められた締付力とする)。
また、第2の実施形態では、1歩行周期の間を動作の状態に応じて区分し、各歩行動作状態の区分毎に各装着部21〜23の締付強度を予め決めておく。そして、各センサ出力から、脚がどの区分の歩行動作状態にあるかを検出し、検出した区分に対応する締付力で各装着部21〜23を締め付ける。
【0012】
(2)実施形態の詳細
図1は歩行支援装置1の装着状態を示した図である。
歩行支援装置1は、装着者の腰部及び下肢に装着し、装着者の歩行を支援(アシスト)するものである。
歩行支援装置1は、腰部装着部21、上腿装着部22、下腿装着部23、足装着部24、上腿連結部材26、下腿連結部材27、制御装置2、つま先反力センサ10、踵反力センサ11、つま先姿勢センサ12、踵姿勢センサ13、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19などを備えている。
なお、腰部装着部21、制御装置2、腰姿勢センサ14以外は、左右の両脚用に各部が設けられており、それぞれの検出値が出力されるようになっている。
但し、つま先反力センサ10、踵反力センサ11については、反力の検出が不要である実施例の場合には、両センサに変えてつま先接地センサ、踵接地センサを備えるようにしてもよい。
【0013】
腰部装着部21は、装着者の腰部の周囲に取り付けられ歩行支援装置1を固定する。
腰姿勢センサ14は、腰部装着部21に取り付けられ、ジャイロなどによって腰部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、腰部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0014】
制御装置2は、腰部装着部21に取り付けられ、歩行支援装置1の動作を制御する。
股関節アシストアクチュエータ17は、装着者の股関節と同じ高さに設けられており、腰部装着部21に対して上腿連結部材26を前後方向に駆動する。なお、股関節アシストアクチュエータ17を3軸アクチュエータとして横方向にも駆動するように構成することもできる。
【0015】
上腿連結部材26は、装着者の上腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、股関節アシストアクチュエータ17と膝関節アシストアクチュエータ18を連結する。
上腿装着部22は、外側が上腿連結部材26の内側に固定されており、内側が装着者の上腿に固定される。本実施形態の上腿装着部22は、後述するが、上腿固定具アクチュエータ221を備えており、上腿を動作を支援(アシスト)する股関節アシストアクチュエータ17の出力値(歩行アシスト力)に応じて、上腿の締付力が制御されるようになっている。
上腿姿勢センサ15は、上腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、上腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0016】
膝関節アシストアクチュエータ18は、装着者の膝関節と同じ高さに設けられており、上腿連結部材26に対して下腿連結部材27を前後方向に駆動する。
下腿連結部材27は、装着者の下腿部の外側に設けられた剛性を有する柱状部材であり、膝関節アシストアクチュエータ18と足首関節アシストアクチュエータ19を連結する。
【0017】
下腿装着部23は、外側が下腿連結部材27の内側に固定されており、内側が装着者の下腿に固定される。本実施形態の下腿装着部23は、後述するが、下腿固定アクチュエータ231を備えており、下腿を動作を支援(アシスト)する膝関節アシストアクチュエータ17の出力値(歩行アシスト力)に応じて、下腿の締付力が制御されるようになっている。
下腿姿勢センサ16は、下腿部の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、下腿部の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0018】
足首関節アシストアクチュエータ19は、装着者の足首関節と同じ高さに設けられており、下腿連結部材27に対して足装着部24のつま先を上下する方向に駆動する。
足装着部24は、装着者の足部(足の甲、及び足裏)に固定される。一般に、足指の付け根の関節は歩行の際に屈曲するが、足装着部24も足指の付け根の部分が足指に従って屈曲するようになっている。
【0019】
つま先姿勢センサ12と踵姿勢センサ13は、それぞれ、足装着部24の先端と後端に設置され、それぞれ、つま先と踵の姿勢(ロール角、ヨー角、ピッチ角)を検出する。また、これらの角度を微分することにより、つま先や踵の角速度や角加速度を求めることもできる。
【0020】
つま先反力センサ10は、足装着部24の足裏部前方に設置され、つま先の接地を検出すると共に、歩行面からの反力を検出する。
踵反力センサ11は、足装着部24の足裏部後方に設置され、踵の接地を検出すると共に、歩行面からの反力を検出する。
以上のように構成された歩行支援装置1は、股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19を駆動することにより、装着者の歩行を支援する。
【0021】
図2は、各装着部21〜24による歩行支援装置1を固定した状態を表したものであり、図2(a)は正面の状態を、図2(b)は右側面の状態を表している。
なお、図2(a)では、図を簡略化するため右脚のみ装着した状態を表している。但し、歩行支援装置1は、図1に示すように、腰部装着部21に左脚用の各部が配置されており、両脚に装着するのが一般的であるが、片方の脚だけに支援が必要な装着者に対しては、図2に示すように右脚又は左脚だけの装置を装着する場合もある。
【0022】
腰部装着部21は、腰固定具210を備えており、腰固定具210を腰に締め付けることで、歩行支援装置1全体を支えるようになっている。
足装着部24は、足固定具240と足裏部品241を備えている。足裏部品241は、金属で形成された足を載せる足裏部品241と、この足裏部品241に取り付けられた足固定具240とを備えている。
腰固定具210と足固定具240は、面ファスナーなどにより腰や足を固定するが、一度固定した締付力は一定で可変ではない。但し足固定具240については、足固定具アクチュエータを設け、他の固定具アクチュエータと同様にして、足首関節アシストアクチュエータ19によるアシスト力に応じて(所定閾値以上になるか否かに応じて)締付力を変更するようにしてもよい。
【0023】
上腿装着部22は、上腿固定具220と上腿固定具アクチュエータ221を備えている。上腿固定具220は、幅広のベルトを上腿に巻き付けることで上腿連結部材26を上腿に固定する。上腿固定具アクチュエータ221は、上腿を動作を支援する股関節アシストアクチュエータ17の歩行アシスト力に応じて、上腿固定具220による上腿の締付力を制御する。
下腿装着部22は、下腿固定具230と下腿固定具アクチュエータ231を備えている。下腿固定具は、幅広のベルトを下腿に巻き付けることで下腿連結部27を下腿に固定する。下腿固定具アクチュエータ231は、下腿を動作を支援する膝関節アシストアクチュエータ18の歩行アシスト力に応じて、下腿固定具230による上腿の締付力を制御する。
【0024】
次に、図3〜図5を参照して、本実施形態で使用可能な、上腿固定具220と上腿固定具アクチュエータ221について説明する。
下腿固定具230と下腿固定具アクチュエータ231については、固定対象の太さ(径)が異なるだけで同一構造であるため説明は省略する。
なお、図3と図5では、上腿固定具220、上腿固定具アクチュエータ221との位置関係を解り易くするために、上腿固定具220と上腿Aとの間に隙間を設けているが、実際には上腿Aに密着した状態で巻かれるものである。
【0025】
図3は、上腿装着部22で上腿連結部材26を上腿Aに装着した状態の断面図である。
上腿装着部22の固定部220は、第1ベルト220a、第2ベルト220b、及び金属環220cから構成されている。
第1ベルト220aの一端側は上腿連結部材26に固定され、他端側は開放端になっている。
第2ベルト220bの一端側も上腿連結部材26に固定され、他端も開放端になっている。第2ベルトの開放端側は、端部の外側面と、それより所定距離だけ内側の外側面には、面ファスナー220eの対が取り付けられている。
【0026】
第1ベルト220a、第2ベルト220bで上腿Aを固定する場合、第1ベルト220aを内側にして第2ベルト220bを上腿外周に巻き、第2ベルト200bの開放端側を金属環220cに通した状態で折り返し、面ファスナー220eで固定する。この際、金属環220eを通した第2ベルト220bの開放端側を引っ張ることで、固定強度と固定位置を調整する。
なお、第2ベルト220bを第1ベルト220aに固定する場合、面ファスナー220eを使用する以外に、ラチェット式の結合具を使用するようにしてもよい(他の上腿固定具アクチュエータ221も同じ)。
【0027】
上腿連結部材26には上腿固定具アクチュエータ221が取り付けられている。なお、上腿固定具アクチュエータ221は、上腿連結部材26内に収容するように固定保持されるようにしてもよい。
この上腿固定具アクチュエータ221は、内部に固定配置されたモータ221aと、締付力変更ベルト221cを備えている。
締付力変更ベルト221の一端側は、縫製部221xにおいて第1ベルトに縫い付けられている。この締付力変更ベルト221cは、第2ベルト220bの折り返し部分と対向するように金属環220cを通って折り返し、他端側の端部がモータ221aの軸221bに固定されている。
【0028】
モータ221aは、正逆両方向の回転が可能で、所定トルク(締付力強)となるまで回転した時点で回転が固定されるようになっている。回転の固定は、機械的なロック作用により固定することもできる。
モータ221aは、上腿連結部26内に配置された図示しない配線により制御装置2の締付力決定部7に接続されている。モータ221aは、この締付力決定部7で決定した締付力に従い、締付力変更ベルト221cを巻き取り、と巻き戻しを行うことで、締付力の強弱を調整することができる。
【0029】
図4は、人工筋肉の1種として知られているマッキベン型のアクチュエータを使用した上腿固定具アクチュエータ221の説明図である。なお、図4では、上腿固定具アクチュエータ221について示し、上腿固定具220については図3と同様なので、同一の符号を付してその一部だけを表している。
図4に示すように、上腿固定具アクチュエータ221は、このマッキベン型のアクチュエータとして、シリコーンゴム等のゴム部材からなる筒状体221dを備えている。この筒状体221の外側に合成繊維を網状に編んだ筒状のスリーブ221eで覆っている。
そして、筒状体221dの一端側を蓋部材で密閉し、この蓋部材に締付力変更ベルト221c(図3と同じ)の端部が固定されている。なお、締付力変更ベルト221cは上腿Aの長さに合わせて幅広に形成されるため、マッキベン型アクチュエータを複数並べて配置し、それぞれの蓋部材に締付力変更ベルト221cの端部を固定するようにしてもよい。
【0030】
筒状体221の反対側(他端側)も蓋部材で密閉され、この蓋部材には空気導出管221fが貫通配置されている。この空気導出管221fには筒状体221dに空気を供給及び排出(導出)するための空気導出機構を備えている。この空気導出機構は、空気導出管221fに接続された図示しない電磁三方弁と、この電磁三方弁に接続された同じく図示しない圧縮空気供給装置を備えている。
そして、この圧縮空気導出管221fから筒状体221に供給する空気の量や圧力を、電磁三方弁の開閉で制御することによって、締付力変更ベルト221cを上腿連結部材26側に引っ張る力が変更される。
すなわち、空気導出管221fから筒状体221dに供給する空気の量を中に調節してる状態(図4(a)の状態)から、電磁三方弁を制御して供給する空気量を多くすると図4(b)に示すように、筒状体221dはスリーブ221eで制約されながら膨張する(径が大きくなる)。これにより、筒状体221dは、その長さがLだけ短くなり、締付力変更ベルト221cを上腿連結部材26側に引っ張ることになり、その結果、上腿固定具220による上腿Aの締付力が大きくなる。
一方、図4(b)に示す、大きな締付力の状態から締付力を弱める場合には、図示しない電磁三方弁を制御し、筒状体221d内の空気の一部を空気導出管221f及び電磁三方弁から外部に抜くことで、図4(a)の状態に戻り、その結果締付力が弱まる。
なお、図4において、一端が筒状体221dに固定されている締付力変更ベルト221cは、図3で説明したと同様に、金属環220cを通って折り返し、端部が第1ベルト220aに固定されている。
【0031】
このマッキベン型のアクチュエータを使用した場合には、モータを使用した場合に比べて、バネやゴム等と同じような弾性力を伴う締付力の変更を行うことができる。
また、締付力の変更として強弱の2種類であればオン、オフ信号を出力するだけでよく制御が簡単である。
【0032】
図5は、上腿固定具アクチュエータ221として、エアバッグ221fを使用した場合を表したものである。
図3、4で説明した両上腿固定具アクチュエータ221では、上腿Aに巻いているベルト(第2ベルト220bと、締付力変更ベルト221c)の全体の長さ(周方向の長さ)を変更することで、上腿Aの締付力を変更している。
これに対して図5の上腿固定具アクチュエータ221では、上腿Aに巻いて固定したベルトの長さは変更せず、上腿Aの外周と接しているベルト内周面の断面積を変更することで締付力を変更するものである。
【0033】
この図5に示す上腿装着部22の固定具220は、第1ベルト220aと第2ベルト220fを備えている。
第1ベルト220aは一端側が上腿連結部26に固定されており、他端が開放端となっている。第2ベルト220fは、一端側が上腿連結部26に固定されており、他端側が開放端となっている。
第1ベルト220aの開放端外側(大腿Aと接していない側)と、第2ベルト220fの開放端内側には、1対の面ファスナー220eが取り付けられており、この面ファスナー220eの貼り付け位置によって当初の締付力が決まる。
【0034】
そして、第1ベルト220a、上腿連結部材26、第2ベルト220fの内側には、上腿固定具アクチュエータ221の一部として機能するエアバッグ221fが3つ配設されている。
エアバッグ221gの個数や取り付け位置については任意であるが、図5の例では、第2ベルト220fの内側(上腿A側)に2つのエアバッグ221gが取り付けられ、上腿連結部材26の内側にエアバッグ221gが1つ取り付けられている。
上腿固定具アクチュエータ221としては、図示しないが、このエアバッグ221gに空気を供給及び排出(導出)するための空気導出機構を備えている。この空気導出機構としては図4で説明した筒状体221dに空気を導出する空気導出機構と同様である。
【0035】
この上腿固定具アクチュエータ221では、図5(a)の状態から、エアバッグ221gに空気を供給すると、図5(b)に示すようにエアバッグ221gが膨張して大腿Aの締付力が大きくなる。
この状態で、エアバッグ221に供給していた空気を抜くことで締付力が弱まり、図5(a)に示す状態となる。
【0036】
なお、エアバッグ221gも、筒状体221e(図3)も、共に空気の供給と排出により締付力を変更するものであるが、空気の排出については、エアバッグ2221g、筒状体221e内の空気圧によって内部の空気が自然と排出されるようになっている。
これに対して、締付力大の状態(空気が供給されている状態)から、エアバッグ221gも、筒状体221e内の空気を積極的に吸気する吸気機構を設けることとで、締付力を弱める速度を速めるようにしてもよい。これにより、締付力の強弱を変更する場合のレスポンスを高めることができる。
【0037】
なお図5では、第2ベルト220fが、第1ベルト220aよりも長く形成されている場合について表しているが、大腿Aや下腿の太さに合わせた汎用的な合計長さと、面ファスナー220eによる貼り付け位置の調節に必要な長さがあれば、両ベルトの長さをどの様な割合にしてもよい。但し、上腿連結部材26が脚の外側にくるため、面ファスナー220eによる貼り付け位置をどの位置にするか(身体の全面側、後側、両脚の間)により決める場合が多い。
また、図3、図4、図5の場合に共通するが、第1ベルト220aと第2ベルト220b、fは共に一端が上腿連結部材26に固定されている場合について説明したが、上腿連結部材26の内部、又は内側において連結していてもよい。
【0038】
図6は、歩行支援装置1のシステム構成を示した図である。
制御装置2は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、時間を計測する手段としての時計、記憶部、各種インターフェースなどを備えた電子制御ユニットであり、歩行支援装置1の各部を電子制御する。
【0039】
制御装置2は、また、CPUで記憶部に記憶された歩行支援プログラム等の各種プログラムを実行することにより構成される、センサ情報取得部3、各種パラメータ算出部4、歩行動作判定部5、歩行シーン判定部6、締付力決定部7、歩行アシスト力決定部8を備えている。
センサ情報取得部3は、つま先反力センサ10〜下腿姿勢センサ16の各センサから検出値を取得する。センサ情報取得部3で取得した各センサの検出値は、歩行動作の判定や、歩行シーンの判定等に使用される。
【0040】
各種パラメータ算出部4は、センサ情報取得部3で取得した検出値から、各関節の角度や位置を求めることで歩行パラメータ値(重複歩調と重複歩距離)を算出する。
ここで、1側の踵が接地してから次に同側の踵が接地するまでの動作を重複歩といい、この重複歩における一連の動作を歩行周期という。そして、重複歩における踵の両接地点間の距離を重複歩距離といい、1分間当たりの重複歩数(重複歩数/分)を重複歩調という。
【0041】
歩行動作判定部5は、装着者の動作が屈伸運動や足踏み動作などの歩行以外の動作なのか、それとも実際に歩行している動作なのかを判定する。
歩行シーン判定部6は、センサ情報取得部3で取得した検出値から、装着者の歩行している歩行シーンを判定する。判定対象となる歩行シーンとしては、歩行面種類(平地、上り階段、下り階段、上り坂道、下り坂道)の5種類がある。
なお、上記歩行シーン5種類のそれぞれに対して、前進歩行と後進歩行の歩行方向を区別することで、合計10の歩行シーンを検出するようにしてもよい。
【0042】
締付力決定部7は、歩行アシスト力決定部8で決定した股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18に出力させる各アシスト力の大きさに応じて、上腿装着部22の締付力、下腿装着部23の締付力を決定し、決定した締付力となるように上腿固定具アクチュエータ221、下腿固定具アクチュエータ231を駆動する。
なお、締付力決定部7は、両荷重センサ10、11の出力から、足にかかる床反力を算出し、床反力の大きさに応じて、足装着部24又は/及び下腿装着部23の締付力を変更するようにしてもよい。
歩行アシスト力決定部8は、左右両足のそれぞれに配置されている股関節アシストアクチュエータ17、膝関節アシストアクチュエータ18、足首関節アシストアクチュエータ19に出力させるアシスト力を決定し、これに従ってこれら関節アシストアクチュエータを駆動する。なお、アシスト力とは、歩行支援装置1がアシストアクチュエータを駆動して脚部に作用させるモーメント(トルク)である。
【0043】
次に、本実施形態の歩行支援装置1による歩行アシスト処理について説明する。
図7は、歩行アシスト処理の動作について表したフローチャートである。
以下の処理は、制御装置2のCPUが歩行支援プログラムに従って行うものであり、各センサからの信号の検出は、センサ情報取得部3が行い、固定具アクチュエータ221、231に対する締付力の決定は締付力決定部7が行い、各関節アシストアクチュエータ17〜19に対するアシスト力の決定は、歩行アシスト力決定部8が行う。
【0044】
まず、装着者が歩行周期を開始すると、CPUは、各センサ10〜16の出力値を取得する(ステップ11)。
そして、CPUは、検出した検出値から歩行状態各脚の状態を求め、各関節に対する歩行アシスト力を決定する(ステップ12)。すなわち、CPUは、各姿勢センサ12〜16の検出値から、各関節の角度を求め、現在の脚の状態における各関節に作用している関節モーメントを算出する。
そして算出した各関節の関節モーメントの大きさに所定のアシスト率(例えば、50%)を乗じることで、各関節アシストアクチュエータ17〜19から出力すべき歩行アシスト力を決定する。
【0045】
次に、CPUは、歩行アシスト力が閾値T以上か否かを判断する(ステップ13)。
すなわち、CPUは、股関節アシストアクチュエータ17から出力する歩行アシスト力が所定の閾値T1を超えているか、膝関節アシストアクチュエータ18から出力する歩行アシスト力が所定の閾値T2を超えているか否かを判断する。
【0046】
CPUは、歩行アシスト力が閾値以上である場合(ステップ13;Y)、締付力を強に決定し(ステップ14)、閾値を超えていない場合(ステップ13;N)、締付力をデフォルト(装着の際に装着者が固定具で決めた締付力=弱)に決定する(ステップ15)。
すなわち、CPUは、股関節アシストアクチュエータ17の歩行アシスト力が閾値T1以上である場合、上腿固定具アクチュエータ221による締付力を強、超えていない場合デフォルト(弱)に決定する。
またCPUは、膝関節アシストアクチュエータ18の歩行アシスト力が閾値T2以上である場合、下腿固定具アクチュエータ231による締付力を強、超えていない場合デフォルト(弱)に決定する。
【0047】
次にCPUは、ステップ14、15で決定した締付力(強、弱)に応じて、各固定具アクチュエータ221、231を駆動して、締付力を変更又は維持する(ステップ16)。
更に、CPUは、各関節アシストアクチュエータ17〜19をそれぞれ決定した歩行アシスト力が出力されるように制御する(ステップ17)。
【0048】
そしてCPUは、歩行支援装置1の電源がオフされたか判断し(ステップ18)、オフでないと判断した場合(ステップ18;N)ステップ11に戻って歩行支援を継続し、オフと判断した場合(ステップ18;Y)、歩行支援処理を終了する。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、上腿装着部22、下腿装着部23による上腿、下腿の締付力を固定具アクチュエータにより変更可能な構造としたので、次の様な効果を得ることができる。
歩行アシスト力に応じて締付力を変更するので、装置の安定的な固定力を得ると共に、心地よい装着感を得ることができる。
すなわち、歩行アシスト力が弱い場合に拘束力を弱くすることで、人体への負担を軽減したり、快適な装着感を与えることができる。
また、歩行アシスト力が大きい場合には拘束力を強くすることで、各関節アシストアクアクチュエータ17、18によるアシスト力を効率良く伝達することができ、更に、装具ズレの発生を低減することができる。
更に、歩行に合わせて上腿、下腿の締付力の強弱が変化するため、脚に対するマッサージ効果を得ることができ、歩行中の疲労を軽減することができる。
【0050】
以上、本発明の歩行支援装置1における1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施形態では、締付力の強弱を決定するための、閾値T1、T2を一定値としたが、これを歩行状態によって変更する(異なる値を使用)するようにしてもよい。
例えば、歩行アシスト力の増加率がプラスの場合(増加している場合)の閾値T1d、T2dとマイナスの場合(減少している場合)の閾値T1e、T2eに差を設ける(T1d<T1e、T2d<T2e)ようにしても良い。これにより、歩行アシスト力が増加する場合には早めに締付力を強くし、アシスト力が減少する場合にも早めに締付力を弱くすることができる。
【0051】
更に、立脚相にある脚は身体を支える必要があることから、遊脚相にある脚の閾値よりも低く設定してもよい。例えば、遊脚相にある脚に対する歩行アシスト力の閾値T1a、T2aに対して、立脚相にある脚に対する歩行アシスト力の閾値を閾値値T1b、T2b(T1b<T1a、T2b<T2a)としてもよい。
また、立脚相側の閾値T1b、T2bを、両反力センサ10、11の出力値α、βに応じて可変にしてもよい(T1b、T2b=f(α、β))。この場合、床反力が大きいほど閾値T3、T4を小さくする。
【0052】
歩行アシスト力(トルク)の決定には、公知の各種方法を用いて決定するようにしてもよい。
例えば、説明した特許文献1に記載された方法により、装着者の筋電から筋肉の動きを解析することで歩行アシスト力を決定してもよい。
また、特開20011ー147556に記載された方法によって歩行アシスト力(指令トルクTk)を決定するようにしてもよい。
【0053】
固定具駆動アクチュエータの構成について図3〜図5を参照して3種類説明したが、締付力変更ベルト221cに対する引っ張り力を他の方法で変更するアクチュエータを使用することも可能である。
【0054】
また、説明した実施形態では、締付力として強と弱(デフォルト)の2段階で変更する場合について説明したが、より多くの多段階(強、中、弱の3段階、4段階等)、更に、無段階で変更するようにしてもよい。この場合、閾値を各段階に応じた数の閾値を設けるようにする。
また、説明した実施形態では、締付力の強弱に応じて固定具アクチュエータの出力が決められていたが、上腿装着部22、下腿装着部23のそれぞれに、締付力を検出する締付圧力センサを設け、その検出値から締付力が所定の値(強、弱、無段階等)に成るように制御するようにしてもよい。
【0055】
次に第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、股関節アシストアクチュエータ17及び膝関節アシストアクチュエータ18から出力する歩行アシスト力に応じて、上腿装着部22、下腿装着部23の締付力を変更する場合について説明した。
これに対して第2の実施形態では、1歩行周期の間を動作の状態に応じて区分し、各歩行動作状態の区分毎に各装着部21〜23の締付強度を予め決めておく。そして、各センサ出力から、脚がどの区分の歩行動作状態にあるかを検出し、検出した区分に対応する締付力で各装着部21〜23を締め付けるものである。
【0056】
すなわち、1歩行周期における歩行リズム(位相)に対して歩行アシスト力(アシストトルク)が大きい場面と中くらいの場面において、上腿装着部22、下腿装着部23による締付力付加制御(強、中)を行う。これにより、大きなアシスト力に対して上腿装着部22がずれることなく確実に締付ることができると共に、大きなアシスト力を効率的に上腿に伝達させることができる。
また、歩行アシスト力が大きくなる前段階(直前の区分)で、予備動作として締付力付加制御(中)を行う。これにより、次の場面(区分)における大きなアシストに対応した強い締付力の付与を遅れることなく確実に実現することができる。
一方、腰部装着部21については、脚と腰で体重を支えながら重心を前方に移動している場面において、締付力付加制御(強)を行い、その前段階で締付力付加制御(中)を行う。この場面は、歩行アシスト力が大きい場面であるため、上述したように、上腿装着部22の締付力付加制御(強)が行われる。なお、腰部装着部21は、右脚の1歩行周期と左脚の1歩行周期の両者に共通するため、右脚と左脚の両1歩行周期に対応して締付力付加制御(強)が行われる。
【0057】
また第1実施形態と異なり、本実施形態では、腰部装着部21も締付力変更の対象としている。そのため、腰部装着部21も、第1実施形態で説明した上腿装着部22の上腿固定具220、上腿固定具アクチュエータ221と同様に、締付力を変更するために腰部固定具210、腰部固定具アクチュエータ211を備えており、その構成は図3〜図5で説明した例と同様である。
【0058】
図8は、歩行動作状態における区分と、各部の締付強度について表したものである。
図8では、各部の締付強度について右脚だけ表示しているが、反対の左脚についても1歩行周期内の区分と各部の締付強度は右脚と同一になる。また、注目している右脚を明瞭にするために、右脚の膝関節と足首関節に黒丸を付すと共に、左足を細線で示している。
第2実施形態における歩行支援装置1では、図8に示すように、歩行動作状態を8つに区分している。
すなわち、1歩行周期に対して、足が床(地面)に接地している立脚の状態と、離れている遊脚の状態に区分でき、立脚の状態を図8(a)〜(e)の5つに区分し、遊脚の状態を図8(f)〜(h)の3つに区分している。なお、図8(i)は遊脚の後ふたたび立脚になった状態であり、図8(a)と同じ状態である。
【0059】
これら8つの各区分における歩行動作状態の開始時点として、踵が地面についた時(a)、足底が地面に着いた時(b)、体重が足にかかり始めた時(c)、全体重が足にかかったとき後半(d)、踵が地面を離れ始めた時(e)、足が地面を離れる時(f)、足を前方に降り出すために加速し、身体の真下を足が通過する時(g)、及び、前方に振り出した足が減速を開始する時(h)、ふたたび踵が地面についた時(i=a)が規定されている。
そして歩行動作状態の区分としては、各歩行動作状態の開始時点から次の歩行動作状態の開始時点直前までが1区分とされる。すなわち、図8(a)〜(b)直前、(b)〜(c)直前、(c)〜(d)直前、…(h)〜(i=a)直前の8つに1歩行周期が区分される。但し、説明の都合上、(a)から(b)の直前の区分を区分(a)というように、各区分の名称として区分開始の検出時(a)、(b)…を使用して説明する。
【0060】
そして図8に示すように、1歩行周期の各区分(a)〜(h)における腰部装着部21、上腿装着部22、下腿装着部23に対する締付力が規定されている。
図8では、装着時の締付力を通常締付力(デフォルト)とし、この通常締付力の箇所(装着部21〜23)は無印で表示している。
一方、通常締付力を基準として、それよりも所定量pだけ強い締付力を締付力(中)とし、例えば図8(c)の上腿、下腿のように、該当部分を細点線円で表示している。
また通常締付力を基準として、それよりも所定量q(q>p)だけ強い締付力を締付力(強)とし、例えば図8(b)の腰部、上腿のように、該当部分を太点線円で表示している。
各区分において、筋力が発生する力が大きい区分では比例してアシストトルクが大きい、という観点から締付力の強、中が決定され、さらに締付力強の前段階(直前の区分)の予備締付の動作として締付力中が決定されている。
【0061】
上腿装着部22の場合、図8に示すように、筋力が発生する力の大きさや、想定される股関節アシストアクチュエータ17の歩行アシスト力の大きさに応じて、区分(a)、(b)、(f)で締付力が強に設定され、区分(c)、(g)で締付力が中に設定されている。
また区分(e)と(h)では、区分(f)、(i)の締付力(強)に対応するための予備動作として締付力が中に設定されている。
そして、関節アシストアクチュエータ17で出力する歩行アシスト力が小さい区分(d)では、通常締付力(デフォルト)に設定されている。
【0062】
一方、下腿装着部23の場合、筋力が発生する力の大きさや、想定される膝関節アシストアクチュエータ18の歩行アシスト力の大きさに応じて、区分(a)、(c)、(d)、(e)、(f)で締付力が中に設定されている。すなわち、区分(a)は踵接地後に下腿に体重がかかるためで、区分(c)〜(f)は足裏からの床反力に対応するために、締付力が中に設定されている。
【0063】
さらに、腰部装着部21の場合、脚と腰で体重を支えながら重心を前方に移動する区分(b)で締付力が強に設定され、その直前の区分(a)で締付力が中に設定されている。
【0064】
図9は、歩行状態対応締付力テーブルを表したものである。
第2の実施形態における歩行支援装置1では、制御装置2が所定の記憶手段に、歩行状態対応締付力テーブルを記憶している。
この歩行状態対応締付力テーブルは、図9に示されるように、各歩行動作状態の区分(a)〜(h)に対応して、腰部装着部21、上腿装着部22、下腿装着部23の各々に対する締付力が規定されている。
図9に示した例では、締付力強を2重丸で、締付力中を丸で、通常締付力(デフォルト)を横棒で表している。
【0065】
また、図9には特に明示していないが、歩行状態対応締付力テーブルには、各区分を規定するための各センサの出力値の範囲や条件が規定されている。
すなわち、各区分(a)〜(h)に対応する、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16の出力値の範囲、及び、つま先反力センサ10、踵反力センサ11によるつま先、踵が接地しているか離れているかの条件、等が規定されている。
なお、股関節、膝関節の角度範囲と、つま先、踵の接地、非接地状態を規定するようにしてもよい。この場合、各姿勢センサ14〜16から股関節の角度と膝関節の角度を算出してもよく、また、股関節角度センサと膝関節角度センサを配置して両センサ出力から角度を取得するようにしてもよい。
【0066】
次に、第2実施形態における歩行アシスト処理について図10のフローチャートを参照して説明する。
まず、装着者が歩行周期を開始すると、CPUは、各センサ10〜16の出力値を取得する(ステップ20)。
【0067】
そしてCPUは、取得した各センサ10〜16の出力値から、判断対象となっている脚が、図8の何れの区分にあるかの決定、すなわち、歩行動作状態の判定を行う(ステップ22)。
この判定において、CPUは、つま先反力センサ10と踵反力センサ11の出力値から、判断対象となっている側の足が接地状態か離地状態かを判定する。
そしてCPUは、この接地、離地の判定結果と、腰姿勢センサ14、上腿姿勢センサ15、下腿姿勢センサ16の出力値とが、図9で例示した、歩行状態対応締付力テーブルにおける何れの区分(a)〜(h)に該当するのかを判定する。
【0068】
さらにCPUは、判定した区分(a)〜(h)に規定されている締付力を読み出し、腰部装着部21の腰部固定具アクチュエータ211、上腿装着部22の上腿固定具アクチュエータ221、及び下腿装着部23の下腿固定具アクチュエータ231の各々に対する締付力(強、中、通常)を決定する(ステップ24)。
【0069】
更に、CPUは、各センサ10〜16の出力値から歩行状態各脚の状態を求め、各関節に対する歩行アシスト力を決定する(ステップ26)。
すなわち、CPUは、各姿勢センサ12〜16の検出値から、各関節の角度を求め、現在の脚の状態における各関節に作用している関節モーメントを算出する。
そして算出した各関節の関節モーメントの大きさに所定のアシスト率(例えば、50%)を乗じることで、各関節アシストアクチュエータ17〜19から出力すべき歩行アシスト力を決定する。
【0070】
次にCPUは、ステップ24で決定した締付力強、中に応じて、各固定具アクチュエータ211、221、231を駆動して、締付力を変更又は維持する(ステップ28)。
更に、CPUは、各関節アシストアクチュエータ17〜19に対して、ステップ26で決定した各歩行アシスト力が出力されるように制御する(ステップ30)。
【0071】
そしてCPUは、歩行支援装置1の電源がオフされたか判断し(ステップ31)、オフでないと判断した場合(ステップ30;N)ステップ20に戻って歩行支援を継続し、オフと判断した場合(ステップ30;Y)、歩行支援処理を終了する。
【0072】
以上説明したように第2実施形態によれば、腰部装着部21、上腿装着部22、下腿装着部23の各固定具アクチュエータ211、221、231により腰部、上腿、下腿の締付力を変更可能な構造としたので、次の効果を得ることができる。
歩行アシスト力に応じて締付力を変更するので、装置の安定的固定力を得ると共に、心地よい装着感を得ることができる。
すなわち、歩行アシスト力が弱い場合に拘束力を弱くすることで、人体への負担を軽減したり、快適な装着感を与えることができる。
また、歩行アシスト力が大きい場合には拘束力を強くすることで、各関節アシストアクアクチュエータ17、18によるアシスト力を効率良く伝達することができ、更に、装具ズレの発生を低減することができる。
更に、歩行に合わせて上腿、下腿の締付力の強弱が変化するため、脚に対するマッサージ効果を得ることができ、歩行中の疲労を軽減することができる。
【0073】
また1歩行周期を区分し、各区分状態にある各脚の腰部、上腿、下腿に対する締付力を予め決めてあるので、脚の状態から直ちに各部の締付力を決定することができる。
また、歩行アシスト力に応じて締付力を決定していた第1実施形態と異なり、歩行状態がどの区分に属しているかにより、各部の締付力を決定することができるため、歩行アシスト力の決定と締付力の決定とを切り離して別に行うことができる。
更に、第2実施形態では、締付力強に設定されている区分の直前の区分に対して締付力中が設定されているので、強い歩行アシスト力が出力される前の段階で予備的な締付を行うことができる。これにより、強い歩行アシスト力の出力に遅れることなく強い締付力での締付を行うことができる。
また、通常締付力から突然締付力強に変化するのではなく、締付力中を経て締付力強とし、段階的に締付力が強くなっていくため、締付力を自然な感覚で変化させることができる。
【0074】
以上、本発明の歩行支援装置1における第2実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施形態では、1歩行周期における歩行動作状態として、図8(a)〜(h)の8区分に分けたが、より多くの区分に分けることで細かな締付力の変更制御を行うことも可能であり、逆により少ない区分に分けることで簡略した締付力の変更制御とすることも可能である。
また、図8と図9において規定した、各装着部21〜23に対する締付強度(強、中、通常締付力)については、一例でありこれに限定されるものではない。すなわち、他の締付力を規定することも可能であり、またユーザが強、中、通常の締付力を変更することができるようにしてもよい。
【0075】
また、説明した実施形態では、各装着部の締付力について、通常締付力を基準として、それよりも所定量pだけ強い締付力を締付力(中)、所定量q(q>p)だけ強い締付力を締付力(強)とし、p、qが予め決められている場合について説明したが、締付力強、中の程度については、装着者が自己決定することができるようにしてもよい。
この場合、制御装置2に締付力調整モードに移行するための締付力調節キーを設ける。そして、通常締付力から徐々に締付力を上げていき、途中で装着者(ユーザ)が選択ボタンを押した時点での締付力を強とし、通常締付量からの増量の1/2を締付力中とする。また、ユーザが選択ボタンを2度押すことで、1回目の締付力を中、2回目の締付力を強と決定するようにしてもよい。
【0076】
さらに、締付力強と中は、通常締付力を基準としたが、通常締付力を中とし、通常締付力よりも強い締付力を強、通常締付力よりも弱い締付力を弱としてもよい。この場合、図9の2重丸は締付力強、丸は通常締付力、横棒は締付力弱を表すものとする。
このように、締付力を強、中、弱とする場合においても、強と弱の締付力を装着者が調節できるようにしてもよい。
なお、締付力を装着者が調整できるようにする場合には、装置の装着中であっても調整できることが好ましい。さらに、歩行中に立ち止まって調整する場合だけでなく、歩行中においても調整可能とすることで、実際に締付力が変化している状態を確認しながら調整することができるという効果がある。
【0077】
また、所定量p、qについては装着部21〜23に対して同一量として説明したが、腰部装着部21の所定量p21、q21、上腿装着部22の所定量p22、q22、下腿装着部23の所定量p23、q23をそれぞれ別々に規定するようにしてもよい。
本実施形態では、腰部装着部21についても締付力を変更する対象としたが、第1実施形態と同様に締付対象外とし、装着者が装着した際の一定の締付力のままとしてもよい。
【0078】
また、各装着部21〜23による締付力を変更する制御をデフォルトの制御とし、装着者がこの締付力変更制御を使用するかしないかを選択するようにしてもよい。すなわち、締付力変更モードと締付力固定モードを設け、装着者が何れかのモードを選択することができるようにする。
本実施形態では、腰部装着部21、右脚上腿装着部22、左脚上腿装着部22、右脚下腿装着部23、左脚下腿装着部23の5箇所において、締付力の変更を行うが、これら5箇所のうちの何れかを指定し、個別に締付力変更モード、締付力固定モードを選択することができるようにしたり、締付力変更モードの締付力調整を行うことができるようにしてもよい。
これにより、筋肉痛や、ケガをした部分に対応して締付力のモードを変更したり、締付力を調整したりすることができる。
【0079】
なお、図10で説明した歩行アシスト処理では、各装着部の締付力決定(ステップ24)の後に各歩行アシスト力を決定し(ステップ26)、固定具アクチュエータを駆動(ステップ28)の後に各関節アシストアクチュエータを駆動(ステップ30)する場合について説明したが、これらの前後関係は逆であってもよい。
また、本実施形態では、決定した歩行アシスト力に基づいて締付力が決まるのではなく、両者は独立して決定されるので、歩行アシストに関連するアシスト力の決定とアクチュエータの駆動の処理と、締付力の変更に関連する締付力の決定とアクチュエータの駆動の処理の両者を並行して行うようにしてもよい。
【0080】
更に、第2実施形態では、締付力強に設定されている区分の直前の区分に対して締付力中が設定されている場合について説明したが、この場合の直前の区間は、締付力が強に設定されている区分の2つ前の締付力(中又は通常締付力)から、締付力を強に変化させるまでの移行区間と考えられる。
そこで、この締付力強の区間の直前の区間については、さらに1つ前の区間の締付力から、締付力が強になるまで徐々に締付力を増加させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 歩行支援装置
2 制御装置
3 センサ情報取得部
4 各種パラメータ算出部
5 歩行動作判定部
6 歩行シーン判定部
7 記憶部
8 歩行アシスト力決定部
10 つま先反力センサ
11 踵反力センサ
12 つま先姿勢センサ
13 踵姿勢センサ
14 腰姿勢センサ
15 上腿姿勢センサ
16 下腿姿勢センサ
17 股関節アシストアクチュエータ
18 膝関節アシストアクチュエータ
19 足首関節アシストアクチュエータ
21 腰部装着部
22 上腿装着部
220 上腿固定具
221 上腿固定具アクチュエータ
23 下腿装着部
24 足装着部
26 上腿連結部材
27 下腿連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行支援対象者の歩行を支援する歩行支援装置であって、
前記歩行支援対象者に対して装置を固定する固定手段と、
1歩行周期を、脚の状態に基づいて複数に区分し、各区分における締付力を規定した歩行状態対応締付力テーブルを記憶した締付力記憶手段と、
前記歩行支援対象者の脚の状態が、前記歩行状態対応締付力テーブルのどの区分に該当するかを判定する判定手段と、
前記判定した区分に規定されている締付力により、前記固定手段による締付力を変更する締付力制御手段と、
前記歩行支援対象者の各脚に対する歩行アシスト力を決定する歩行アシスト力決定手段と、
前記決定した歩行アシスト力を前記歩行支援対象者の脚部に作用させて歩行をアシストする歩行アシスト手段と、
を具備することを特徴とする歩行支援装置。
【請求項2】
前記歩行状態対応締付力テーブルは、締付力が所定の強さに規定されている区分の直前の区分に対して、前記所定の強さよりも弱い強さによる締付力が規定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項3】
前記固定手段は、上腿を固定する上腿装着部と、下腿を固定する下腿装着部を備え、
前記歩行状態対応締付力テーブルは、各区分における前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力が規定され、
前記締付力制御手段は、前記判定した区分に規定されている各締付力により、前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力を変更し、
前記歩行アシスト手段は、前記歩行支援対象者の腰部に対応して配置される腰関節アクチュエータと、膝関節に対応して配設される膝関節アクチュエータを備え、
前記歩行アシスト力決定手段は、前記腰関節アクチュエータから出力する歩行アシスト力と、前記膝関節アクチュエータから出力する歩行アシスト力を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の歩行支援装置。
【請求項4】
前記固定手段は、更に腰部を固定する腰部装着部を備え、
前記歩行状態対応締付力テーブルは、各区分における前記腰部装着部と、前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力が規定され、
前記締付力制御手段は、前記判定した区分に規定されている各締付力により、腰部装着部と前記上腿装着部と前記下腿装着部の締付力を変更する、
ことを特徴とする請求項3に記載の歩行支援装置。
【請求項5】
前記締付力制御手段による締付力を調整する調整手段を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の歩行支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−70786(P2013−70786A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211175(P2011−211175)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】