説明

消火設備

【課題】 火災は大きな火勢と高温および上昇気流があっても消火剤は可燃物に到達でき、且従来のガス系消火設備のコストより安価できる消火設備を提供する。
【課題手段】
窒素ガス及び消火水を消火薬剤として放出して火を消す消火設備100において、上記消火設備100は、窒素ガスを貯蔵・開放するガス装置10と、消火水を加圧して送出する送水装置20と、主配管70を介して上記ガス装置10と上記送水装置20とを接続される閉鎖型感熱開栓式ヘッド50または閉鎖型感熱開栓式継手60と、計時装置を有する制御盤80とを備え、消火を始めるとき、上記ガス装置10を開放して窒素ガスを放出し、火災に規模が大きくなっても強風と窒息効果により火災を一時的に制圧または鎮火し、上記計時装置で所定時間が経過すると上記ガス放出を停止するとともに、上記送水装置20を開放して消火水を放出して、水の冷却効果により火災を完全に消滅する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火ヘッドにより不活性ガスおよび水泡消火溶液を連続的に放出する消火設備に関する内容である。
【背景技術】
【0002】
従来の消火設備としては、水泡系消火設備やガス系消火設備等が知られている。
【0003】
水泡系消火設備の代表的なものはスプリンクラ消火設備が挙げられる。このスプリンクラ消火設備は、消火剤として水や泡を使用するものであり、天井などに配設された配管上に複数のスプリンクラヘッドが設置されている。このスプリンクラヘッドは熱によって溶解する可溶部を有し、火災が発生して温度が上昇すると、可溶部が溶解等してヘッドが開栓すると、配管中に常時加圧されている水や泡がスプリンクラヘッドから放出されて自動的に消火を行うものである。
【0004】
また、ガス系の消火設備は、消火剤として不活性ガスを使用するものであり、不活性ガスの放出方式は、全域放出方式と局所放出方式がある。
【0005】
全域放出方式とは、密閉又は密閉に近く防護区画に、放出ヘッドを設け、当該区画部分の容積、防護対象物の性質によって標準放出量でその防護対象物の火災を有効に消火することできるように不活性ガスを放出する方法である。また、局所放出方式とは、防護対象物の形状、構造、性質、数量に応じて、その防護対象物に対して標準放出量で不活性ガスを直接放出して当該防護対象物の火災を有効に消火する方法である。
【特許文献1】特開平6−205852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の水泡系消火設備は、火災による炎が天井に達して、スプリンクラヘッドの可溶部が溶解することによって開栓するものであるために、装置が作動した時点では既に火災が広範囲にわたっている可能性がある。特に高天井の場合、開栓温度に至るまでに火災がかなり成長しており、スプリンクラ消火設備が作動して大量に水や泡を放出しても、大きな火勢と高温および上昇気流により可燃物に到達できず、十分な火災の抑制及び消火効果を期待できない問題がある。
【0007】
一方、従来のガス系消火設備は、消火剤として不活性ガスを使用する関係上、その防護区画が高天井倉庫のような大空間の場合、全域放出方式を採用すると、消火に至るまで大量の消火剤が必要となり、局所放出方式を採用すると、防護対象物の状況に応じて相当数量の放出ヘッドを要し、完全に鎮火するためにやはり大量の消火剤を消費しなければならない、何れの方式を採用しても、設備のコストはかなり高くなるという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述した種々の問題を解消し、火災は大きな火勢と高温および上昇気流があっても消火剤は可燃物に到達でき、且従来のガス系消火設備のコストより安価できる消火設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明による消火設備は、不活性ガス及び消火液を消火薬剤として放出して火を消す消火設備において、上記消火設備は、不活性ガスを貯蔵・開放するガス装置と、消火液を加圧して送出する送液装置と、主配管を介して上記ガス装置と上記送液装置とを接続される閉鎖型感熱開栓式ヘッドまたは閉鎖型感熱開栓式継手と、計時装置を有する制御盤とを備え、消火を始めるとき、上記ガス装置を開放して不活性ガスを放出し、上記計時装置で、所定時間が経過すると上記ガス放出を停止するとともに、上記送液装置を開放して消火液を放出することを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明による消火設備は、上記不活性ガスおよび上記消火液を放出するときに使われる上記主配管、上記閉鎖型感熱開栓式ヘッドまたは上記閉鎖型感熱開栓式継手は、同一のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、不活性ガス及び消火液を消火薬剤として放出して火を消す消火設備において、上記消火設備は、不活性ガスを貯蔵・開放するガス装置と、消火液を加圧して送出する送液装置と、主配管を介して上記ガス装置と上記送液装置とを接続される閉鎖型感熱開栓式ヘッドまたは閉鎖型感熱開栓式継手と、計時装置を有する制御盤とを備え、消火を始めるとき、上記ガス装置を開放して不活性ガスを放出し、上記計時装置で、所定時間が経過すると上記ガス放出を停止するとともに、上記送液装置を開放して消火液を放出するため、火災に規模が大きくなっても、最初の不活性ガスを放出して強風と窒息効果により火災を一時的に制圧または鎮火し、そして計時装置でそのガス放出時間を計り、所定の時間が経過するとガス放出を停止すると同時に、消火液を放出して冷却効果により火災を完全に消滅し、また再燃を防止するという十分な消火効果を得られる功を奏することができる。
【0012】
また、上記不活性ガスおよび上記消火液を放出するときに使われる上記主配管、上記閉鎖型感熱開栓式ヘッドまたは上記閉鎖型感熱開栓式継手は、同一のものであるため、不活性ガス、消火液の両装置を使用しても、配管等の設備の重複設置が不要で、消火設備の全体コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明を利用する設備を図1に示し、以下にその構成を簡単に説明する。
【0014】
図1は消火設備のシステム概要を示している。システム100は、消火薬剤としての窒素ガスを貯蔵・開放するガス装置10と、消火液としての水を送出する送水装置20と、常時に配管内に一定の気圧、例えば0.1MPaの気圧を加える加圧装置30と、上記気圧の変動によって配管の圧力を監視する圧力計31と、システム100を制御する制御盤80と、閉鎖型感熱開栓式スプリンクラヘッド50と閉鎖型熱開栓式継手60と、を構成している。また、主配管70を介して、上記ガス装置10と上記送水装置20はスプリンクラヘッド50及び継手60と接続されており、継手60の二次側に、開放型スプリンクラヘッド61が取り付けられている。
【0015】
制御盤80は、システム100全体の動作を制御している。煙感知器81または熱感知器82は防護対象物の現場を監視し、火災Fから発生する煙または熱等物理量を電気信号に変換して、配線93を介して制御盤80と通信している。
【0016】
また、制御盤80には、計時装置が設置されて(図示しない)、ガスの放出時間、あるいは放出でガス圧力の変化によってガスの放出量を測り、ガス放出の中止と送水装置20の起動時間を決定する。
【0017】
連結送水装置40を利用して、消防隊が現場で水を配管へ送出し、開栓したヘッドより放出することができる。
【0018】
以下、図1による構成につき、消火設備100の動作手順を、図2を参照しながら簡単に説明する。
【0019】
図2は、火災発生の感知から消火まで一連制御のフローチャートである。
【0020】
現場に火災Fが発生すると、煙感知器81または熱82が作動するか否かを確認し(S1)、感知器の作動がなければ監視モードが継続的に行うが、感知器の作動があれば、圧力計31によって閉鎖型感熱開栓式スプリンクラヘッド50、あるいは閉鎖型感熱開栓式継手60が作動(開栓)するか否かを確認する(S2)。上記スプリンクラヘッド50または継手60の開栓作動がなければ、監視モードがさらに継続的に行うが、ヘッド50か継手60の開栓作動があれば、ガス装置10を起動して、図示しないガスボンベに貯蔵されている、例えば1MPaの高圧窒素ガスを上記ヘッド50または継手60より一気に火災を向かって噴き出し、その強風と窒息効果により火災の火勢と熱気流を抑制する(S3)。計時装置で窒素ガスを放出してから所定の時間Tを経つと(S4)、ガス放出を停止して、同時に送水装置20を開放し、消火水を放出して(S5)、水の冷却効果により火災を完全鎮火させ、また再燃を防止する。
【0021】
また、現場に火災Fが発生すると、閉鎖型感熱開栓式スプリンクラヘッド50、あるいは閉鎖型感熱開栓式継手60が感知器より先に開栓作動することも想定できる。この場合、圧力計31でスプリンクラヘッド50、または継手60の開栓作動があるか否かのを確認し(S6)、なければ継続的に監視モードを行い、開栓作動があれば、配管内に予め加圧されていた監視用のガスは開栓によって圧力が低下するが、消火用の高圧窒素ガスは放出しない。続いて、煙感知器81または熱感知器82の作動を確認する(S7)。感知器の作動がなければ、監視モードがさらに続けていくが、感知器の作動があれば、ガス装置10を起動し、高圧窒素ガスをヘッド50または61から一気に火災に向かって放出して(S8)、その強風と窒息効果により火災を一時的に制圧または鎮火する。その後計時装置で所定時間Tを経過すると(S9)、ガス放出を停止して直ちに消火水を放出し(S10)、水の冷却効果により火災を完全に鎮火させ、また再燃を防止する。
【0022】
この実施例のように、窒素ガス及び消火水を消火薬剤として放出して火を消す消火設備100において、上記消火設備100は、窒素ガスを貯蔵・開放するガス装置10と、消火水を加圧して送出する送水装置20と、主配管70を介して上記ガス装置10と上記送水装置20とを接続される閉鎖型感熱開栓式ヘッド50または閉鎖型感熱開栓式継手60と、計時装置を有する制御盤80とを備え、消火を始めるとき、上記ガス装置10を開放して窒素ガスを放出し、火災に規模が大きくなっても強風と窒息効果により火災を一時的に制圧または鎮火し、上記計時装置で所定時間が経過すると、上記ガス放出を停止するとともに、上記送水装置20を開放して消火水を放出して、水の冷却効果により火災を完全に消滅し、また火災の再燃を防止することができる。
【0023】
すなわち、本実施例では、最初に高圧窒素ガスで火源を向けて放出し、そのとき火勢が強くても、窒素ガスの強風と窒息効果により一時的に火災を制圧または鎮火できる、つまりその「瞬間抑制力」を発揮して、次に抑制された火災に直ちに消火水を放出して燃焼物の上に散布し、水の冷却効果、つまり水の「持続抑制力」により火災の完全消滅また再燃防止というタイミング的な効果である。この方法では、強風と窒素効果を有するガス消火の長所と、冷却効果を有する水消火の長所をタイミング的に融合させ、それぞれの長所が発揮できる相乗効果が得られる。なお、計時装置はガス放出時間でガス放出量を決定することによって、上記タイミング的な効果の実現を果たしている。さらに、この方法によって最終的に消火剤は水を使うことで、ガス装置10は従来の設備のように大量な不活性ガスを貯蔵する必要がなく、設備のコストはかなり低減することができる。
【0024】
また、上記窒素ガスと上記消火水に使われている主配管70、閉鎖型感熱開栓式ヘッド50または継手60は同一のものであるため、ガス、消火水を使用しても配管等設備の二重設置は不要で、配管等設備、工事取付けなどのコストも低減することができる。
【0025】
なお、感知器の作動とスプリンクラヘッド50または継手60の何れかの作動は同時に行っていた条件を限って、上記高圧窒素ガスの放出は始めて実行することによって、窒素ガスの誤放出を防げることができるという効果を奏する。
【0026】
ここで、不活性ガスは窒素ガス、消火液は水をそれぞれ記載したが、それらに限定することはなく、例えば不活性ガスはCO2やアルゴンを、または消火液は泡水溶液や強化液等物質を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係わるシステム図である。
【図2】実施形態に係わるフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10 ガス装置
20 送水装置
30 加圧装置
40 連結送水装置
50 閉鎖型感熱開栓式スプリンクラヘッド
60 閉鎖型感熱開栓式スプリンクラ継手
61 開放型スプリンクラヘッド
70 主配管
80 制御盤
81 煙感知器
82 熱感知器
F 火災







【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス及び消火液を消火薬剤として放出して火を消す消火設備において、上記消火 設備は、不活性ガスを貯蔵・開放するガス装置と、
消火液を加圧して送出する送液装置と、
主配管を介して上記ガス装置と上記送液装置とを接続される閉鎖型感熱開栓式ヘッドまたは閉鎖型感熱開栓式継手と、計時装置を有する制御盤とを備え、
消火を始めるとき、上記ガス装置を開放して不活性ガスを放出し、上記計時装置で、所定時間が経過すると上記ガス放出を停止するとともに、上記送液装置を開放して消火液を放出することを特徴とする消火設備。

【請求項2】
上記不活性ガスおよび上記消火液を放出するときに使われる上記主配管、上記閉鎖型感熱開栓式ヘッドまたは上記閉鎖型感熱開栓式継手は、同一のものであることを特徴とする請求項1記載の消火設備。














【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−6932(P2007−6932A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187800(P2005−187800)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】