説明

液体タンクおよび燃料電池

【課題】どのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能な液体タンクおよびこれを用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により、X字形状の撥液性構造30を形成し、これを外側筐体20内に配設する。撥液性構造30は、外側筐体20の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口21とを接続する。外側筐体20をどのような角度に傾けても、気体に接している頂点,その頂点を含む辺またはその頂点を含む面の一部分から撥液性構造30の内部を通じて気体出入口21で気体が出入りし、内圧が一定に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の液体燃料などを収容する液体タンクおよびこれを備えた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
メタノールなどの液体燃料や、水などの水素発生助剤を使用する燃料電池システムは、通常その内部に液体を貯蔵するタンクを保有している。このような液体タンク内には、通常、収容すべき液体のほかに、空気などの気体が共存している。更に、タンク内に空気を供給し、その圧力で液体燃料を押し出すようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−30699号公報
【特許文献2】特許第2716883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の液体タンクでは、加温などによってタンク内の気体が暖められると、気体が膨張して内圧が上昇し、液体が異常に噴出したりタンクが破損したりするおそれがあり、更に改善の余地があった。
【0005】
この対策として、例えば、液体タンクに通気孔となる気体出入口を設けることが考えられる。定置式の燃料電池システムでは液体タンクの姿勢が変化することはないので、例えば液体タンクの上面に一つの気体出入口を設ければ事足りる。一方、ポータブル機器に搭載する燃料電池システムでは、液体タンクがどのような角度に傾けられた状態でも、気体出入口から液体を漏らさずに気体だけを外部に逃がし、内圧を一定に保つことが要求されていた。
【0006】
なお、ちなみに、特許文献2では、インクジェットプリンタ用のインク貯蔵タンクに関して、タンクの各隅部に通気孔を設け、この通気孔の内面を撥水性とすることにより、液面よりも下に位置する通気孔からのインク漏れを抑えることが記載されている。インクジェット用のインクは、ほとんどが水溶液または水分散液なので、特許文献1のように通気孔を直接大気開放しても、特に有害な物質を外部に漏らすことはない。しかしながら、燃料電池の場合には、タンク内の気体に気化したメタノールが混入しているので、特許文献1と同様の構成にするとメタノールを大気中に漏らしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、どのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能な液体タンクおよびこれを用いた燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の液体タンクは、以下の(A),(B)の構成要件を備えたものである。
(A)一つの気体出入口が設けられた外側筐体
(B)外側筐体内に設けられ、外側筐体の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口とを接続し、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料により形成された撥液性構造
【0009】
本発明の第2の液体タンクは、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料によりすべての面が形成された撥液性筐体を備えたものである。
【0010】
ここに「撥液性」とは液体に対する接触角θの余弦が負であることをいう。これに対して「親液性」とは液体に対する接触角θの余弦が正であることをいう。
【0011】
本発明の第1および第2の燃料電池は、燃料電池本体と、液体タンクを有する燃料カートリッジとを備え、液体タンクは、上記本発明の第1および第2の液体タンクによりそれぞれ構成されているものである。
【0012】
本発明の第1の液体タンクでは、外側筐体の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口とが、撥液性構造で接続されている。この撥液性構造は、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料により形成されているので、毛細管力によって液体が浸入できず、内部が常に気体で満たされている。また、外側筐体は、どのような角度に傾けても、気体に接している頂点が必ず一つはある。よって、気体に接している頂点,その頂点を含む辺,またはその頂点を含む面の一部分から撥液性構造の内部を通じて気体が出入りし、内圧が一定に保たれる。
【0013】
本発明の第2の液体タンクでは、撥液性筐体のすべての面が、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料により構成されている。撥液性材料は、毛細管力によって液体が浸入できず、内部が常に気体で満たされている。また、撥液性筐体は、どのような角度に傾けても、気体に接している頂点が必ず一つはある。よって、気体に接している頂点から撥液性材料の内部を通じて気体が出入りし、内圧が一定に保たれる。
【0014】
本発明の第1および第2の燃料電池では、上記本発明の第1または第2の液体タンクを備えているので、液体タンクがどのような角度に傾けられた状態でも内圧が一定に保たれている。よって、液体の異常な噴出や液体タンクの破損が抑えられ、安全性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の液体タンクによれば、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料により撥液性構造を形成し、この撥液性構造で、外側筐体の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口とを接続するようにしたので、外側筐体がどのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能となる。
【0016】
本発明の第2の液体タンクによれば、撥液性筐体のすべての面を、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料により形成するようにしたので、撥液性筐体がどのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能となる。
【0017】
本発明の第1の燃料電池、または本発明の第2の燃料電池によれば、上記本発明の第1および第2の液体タンクをそれぞれ備えるようにしたので、液体タンクの姿勢にかかわらず内圧を一定に保つことが可能となる。特にポータブル用途の電子機器に搭載される燃料電池に好適であり、機器の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る液体タンクの構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した液体タンクの外観を表す斜視図である。
【図3】図1に示した撥液性材料の作用を説明するための図である。
【図4】図1に示した撥液性筐体を傾けた状態を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る液体タンクの構成を表す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係る液体タンクの構成を表す断面図である。
【図7】図6に示した毛細管力傾斜材料の作用を説明するための図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係る液体タンクの構成を表す断面図である。
【図9】図8に示した液体タンクの外観を表す斜視図である。
【図10】図8に示した撥液性構造の一例を表す斜視図である。
【図11】図8に示した撥液性構造の他の例を表す斜視図である。
【図12】図8に示した撥液性構造の更に他の例を表す斜視図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る燃料電池の概略構成を表す断面図である。
【図14】図13に示した燃料電池本体をカソード側板状部材の側から見た構成を表す平面図である。
【図15】図13に示した燃料電池の主要部を表す斜視図である。
【図16】図13に示した液体タンクの内部構造の一例を表す斜視図である。
【図17】図16に示した親液性構造を表す断面図である。
【図18】撥液性構造および親液性構造の配設例を表す斜視図である。
【図19】撥液性構造および親液性構造の他の配設例を表す斜視図である。
【図20】撥液性構造および親液性構造の更に他の配置例を表す斜視図である。
【図21】図17に示した親液性構造の一例を表す分解斜視図である。
【図22】図16に示した親液性構造の作用を説明するための斜視図である。
【図23】本発明の第6の実施の形態に係る液体タンクの構成を表す断面図である。
【図24】本発明の第7の実施の形態に係る液体タンクの構成を表す断面図である。
【図25】本発明の第8の実施の形態に係る燃料電池の構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(液体タンク;撥液性筐体)
2.第2の実施の形態(液体タンク;撥液性筐体の外面を外側筐体で覆う)
3.第3の実施の形態(液体タンク;撥液性筐体を毛細管力傾斜材料により形成する)
4.第4の実施の形態(液体タンク;外側筐体内に撥液性構造を設ける)
5.第5の実施の形態(燃料電池の液体タンク;外側筐体内に撥液性構造および親液性構造を設ける)
6.第6の実施の形態(燃料電池の液体タンク;撥液性筐体内に親液性構造を設ける)
7.第7の実施の形態(燃料電池の液体タンク;撥液性筐体内に親液性構造を設けると共に、撥液性筐体の外面を外側筐体で覆う)
8.第8の実施の形態(液体タンクからの排気を大気に出さない)
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る液体タンクの断面構成を表したものであり、図2は、図1に示した液体タンクの外観を表したものである。この液体タンク1は、例えば燃料電池の燃料タンクとして用いられるものであり、撥液性筐体10を備えている。
【0021】
撥液性筐体10は、例えば直方体形状を有し、六つの面のすべてが、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により形成されている。これにより、この液体タンク1では、撥液性筐体10がどのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能となっている。
【0022】
撥液性材料11は、液体に対する濡れ性が低い、すなわち、液体の接触角θの余弦が負である。よって、撥液性材料11は、毛細管力によって液体が浸入できず、内部が常に気体で満たされている。すなわち、図3に示したように、撥液性材料11は、液体A1を通さない一方、空気A2は通す。よって、すべての面を撥液性材料11で形成した撥液性筐体10は、内部の液体A1を漏らさずに、空気を自由に出入りさせることが可能である。
【0023】
このような撥液性材料11は、例えば、多孔質体,海綿状材料,発泡体,繊維状材料および細管束のうち少なくとも一種により構成されている。具体的には、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリウレタン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリエーテル樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、発泡金属、発泡酸化物、ゼオライト、素焼きの陶器に対して、パーフルオロアルキル基を有する樹脂を用いて撥水処理を行ったものが適している。また、撥液性材料11は、上記の材料のうち1種または2種以上の組合せからなるフォーム(発泡体)、フェルト、フェルト焼結体、粒子焼結体に対して、上述した撥水処理を行ったものでもよい。具体的な材料としては、例えば、ニッケル(Ni)よりなる多孔質金属体(例えば、富山住友電工社製「セルメット(商品名)」)に対して、フッ素樹脂(例えば、株式会社フロロテクノロジー製「フロロサーフ(登録商標)」)を用いて撥水処理を行ったものが挙げられる。多孔質金属体は、発泡樹脂の表面に電気めっきによりニッケル膜を形成したものであり、三次元の網目状骨格構造を有している。
【0024】
この液体タンク1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0025】
まず、例えば、上述したニッケル(Ni)よりなる多孔質金属体(例えば、富山住友電工社製「セルメット(商品名)」)を用意し、この多孔質金属体に対して、シラン系化合物よりなるプライマー(例えば、株式会社フロロテクノロジー製「フロロサーフ(登録商標)専用プライマーコート」)で処理する。次いで、処理した多孔質金属体に対して、フッ素樹脂(例えば、株式会社フロロテクノロジー製「フロロサーフ(登録商標)」)でコート処理を行うことにより、撥液性材料11を形成する。続いて、この撥液性材料11により、撥液性筐体10のすべての面を形成する。以上により、図1および図2に示した液体タンク1が完成する。
【0026】
なお、上述した製造方法と同様にして撥液性材料11を実際に作製し、得られた撥液性材料11の上に水滴を乗せたところ、撥液性材料11は完全に水を弾き、内部には全く水が浸透しなかった。また、この撥液性材料11を水の中に落としたところ、撥液性材料11は水に浮いた。ニッケルの比重は8.9g/ccであり、水(比重1.0g/cc)よりもはるかに重く、本来であれば沈むべきであるが、撥液性材料11は完全に水を弾き、内部に空気が留められているため、その浮力によって浮いたと考えられる。更に、この撥液性材料11を80vol%のメタノール水溶液の中に落としたところ、水の場合と同様に、撥液性材料11は浮いた。すなわち、この撥液性材料11で撥液性筐体10のすべての面を形成すれば、液体A1を漏らすことなく収容できることが分かった。
【0027】
この液体タンク1では、撥液性筐体10のすべての面が、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により形成されている。撥液性材料11は、毛細管力によって液体が浸入できず、内部が常に気体で満たされている。また、撥液性筐体10は、図4に示したように、どのような角度に傾けても、気体に接している頂点が必ず一つはある。よって、気体に接している頂点10Aから撥液性材料11の内部を通じて気体が出入りし、撥液性筐体10の内圧が一定に保たれる。
【0028】
このように本実施の形態では、撥液性筐体10のすべての面を、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により形成するようにしたので、撥液性筐体10がどのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能となる。
【0029】
なお、上記実施の形態では、撥液性筐体10が直方体形状を有する場合について説明したが、撥液性筐体10の形状は特に限定されないことは言うまでもない。
【0030】
(第2の実施の形態)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る液体タンク2の断面構成を表したものである。この液体タンク2は、撥液性筐体10の外面を覆う外側筐体20を備えたことを除いては、上記第1の実施の形態で説明した液体タンク1と同様に構成されている。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0031】
撥液性筐体10および撥液性材料11は、第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0032】
外側筐体20は、液体タンク2の耐衝撃性を向上させるためのものである。内部の液体A1に強い振動や衝撃などが加わると(すなわち大きな加速度が加わると)、撥液性材料11の表面には大きな力がかかる(この力は加速度に比例する)。この力が毛細管力を上回ると、液体A1は撥液性材料11の内部へと侵入し、更に撥液性材料11の裏側に到達し、いわゆる「漏れ出す」という状況になる。外側筐体20が設けられている場合も、液体A1が撥液性材料11の内部に侵入することは防げないが、少なくとも外部への漏れ出しは防ぐことが可能となる。
【0033】
また、外側筐体20は、液体A1の気化速度を低減する機能も有している。外側筐体20を設けない場合には、内部の気体と外部の空気は容易に置換できる。このような状況下では、液体A1に有害な物質、例えばメタノールが含まれていたとき、メタノールは容易に気化し、空気中に拡散してしまう。外側筐体20を設けることにより、メタノールの気化速度を遅らせることが可能である。
【0034】
外側筐体20には気体出入口21が設けられている。気体出入口21の位置は、液体タンク2が装着される機器側の構成に応じて選択可能であり、液体A1の直下でも問題ない。また、気体出入口21の個数および寸法も特に限定されない。ただし、気体出入口21の個数は一つで十分であり、従来のように外側筐体20の各隅部に通気孔を設ける必要はなくなり、一つの気体出入口21で気体の出入りを行わせることが可能となる。よって、有害な物質を含む液体A1を収容する場合でも、気体出入口21から排出される気体の管理が容易になり、有害な物質を大気中に漏らすおそれが小さくなり、安全性が向上する。なお、外側筐体20には、液体A1のための液体出入口(図示せず)も設けられている。
【0035】
この液体タンク2は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0036】
まず、第1の実施の形態と同様にして撥液性材料11を形成し、この撥液性材料11により、撥液性筐体10のすべての面を形成する。次いで、上述する材料により、気体出入口21を有する外側筐体20を形成し、この外側筐体20で撥液性筐体10の外面を覆う。以上により、液体タンク2が完成する。
【0037】
この液体タンク2では、撥液性筐体10の外面が外側筐体20で覆われ、外側筐体20に気体出入口21が設けられている。撥液性筐体10は、図4に示したように、どのような角度に傾けても、気体に接している頂点が必ず一つはある。よって、撥液性筐体10が気体の通り道となって、気体に接している頂点10Aから撥液性材料11の内部を通じて気体出入口21で気体が出入りする。従って、撥液性筐体10の内圧が一定に保たれる。
【0038】
また、液体タンク2を振ったり落下させたりする等により、内部の液体A1に強い振動や衝撃などが加わると(すなわち大きな加速度が加わると)、撥液性材料11の表面には大きな力がかかる(この力は加速度に比例する)。この力が毛細管力を上回ると、液体A1は撥液性材料11の内部へと侵入し、更に撥液性材料11の裏側に到達する。ここでは、撥液性筐体10の外面が外側筐体20で覆われているので、液体タンク2外への液体A1の漏れ出しは抑えられる。なお、撥液性材料11の内部に液体A1が入っている間は、気体A2の通り道が塞がれてしまうので、内圧を一定に保つ機能は失われる。ただし、液体A1が再び移動するか、気化するなどして、再び気体A2の通り道が確保されれば、内圧を一定に保つ機能も回復される。
【0039】
このように本実施の形態では、撥液性筐体10の外面を外側筐体20で覆うと共に、外側筐体20に気体出入口21を設けるようにしたので、上述した第1の実施の形態の効果に加えて、耐衝撃性を向上させると共に液体A1の気化速度を低減させることが可能となる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、撥液性筐体10および外側筐体20が直方体形状を有する場合について説明したが、撥液性筐体10および外側筐体20の形状は特に限定されないことは言うまでもない。
【0041】
(第3の実施の形態)
図6は、本発明の第3の実施の形態に係る液体タンクの断面構成を表したものである。
本実施の形態は、撥液性材料11の空隙の形状を適切に制御することにより、撥液性材料11の内部に入り込んだ液体A1を自律的に排出しやすくしたものである。このことを除いては、本実施の形態の液体タンク3は、上記第2の実施の形態で説明した液体タンク2と同様に構成されている。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0042】
具体的には、本実施の形態の撥液性材料11は、図7(A)に示したように、表面11Aおよび裏面11Bの対向方向11C(面直方向)において空隙の形状が変化していることにより、表面11Aにおける毛細管力が裏面11Bにおける毛細管力よりも小さい。つまり、撥液性材料11は、毛細管力が面直方向において傾斜している。
【0043】
この場合、図7(B)に示したように、撥液性材料11の内部に液体A1が侵入すると、液体A1は毛細管力の小さい表面11A側へと自律的に排出される。
【0044】
これに対して、図7(C)に示したように、撥液性材料11の空隙の形状が面直方向において均一である場合には、撥液性材料11の毛細管力も面直方向において均一である。この場合、図7(D)に示したように、撥液性材料11の内部に液体A1が侵入すると、表面11A側あるいは裏面11B側のどちらに排出されるか分からない。バランスを取って内部にとどまる可能性もある。
【0045】
図6に示した撥液性筐体10では、そのすべての面が、このように毛細管力が面直方向において傾斜した撥液性材料11により形成されている。また、撥液性材料11の毛細管力の小さい表面11Aは撥液性筐体10の内面に、毛細管力の大きい裏面11Bは撥液性筐体10の外面にそれぞれ配置されている。これにより、撥液性材料11の内部に入り込んだ液体A1は、自律的に毛細管力の小さい表面11A側へと導かれ、撥液性筐体10内部に戻る。よって、衝撃等により一時的に気体の通り道が塞がれた場合にも、内圧を一定に保つ機能が回復しやすくなる。
【0046】
この液体タンク3は、撥液性材料11の製造工程において空隙の形状を適切に制御し、毛細管力が面直方向に傾斜した撥液性材料11を形成することを除いては、第2の実施の形態の液体タンク2と同様にして製造することができる。
【0047】
このように本実施の形態では、撥液性筐体10のすべての面を、毛細管力が面直方向において傾斜した撥液性材料11により形成し、毛細管力の小さい表面11Aを撥液性筐体10の内面に、毛細管力の大きい裏面11Bを撥液性筐体10の外面にそれぞれ配置するようにしたので、撥液性材料11の内部に入り込んだ液体A1を自律的に排出しやすくすることが可能である。
【0048】
(第4の実施の形態)
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る液体タンクの断面構成を表したものであり、図9は、図8に示した液体タンクの外観を表したものである。この液体タンク4は、外側筐体20内に、撥液性筐体10に代えて、X字形状の撥液性構造30が設けられていることを除いては、上記第2の実施の形態で説明した液体タンク2と同様に構成されている。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0049】
外側筐体20は、第2の実施の形態と同様に構成されている。
【0050】
撥液性構造30は、外側筐体20内における気体の通り道としての機能を有するものであり、第1の実施の形態と同様の撥液性材料11により形成され、外側筐体20の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口21とを接続している。これにより、この液体タンク3では、外側筐体20がどのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能となっている。
【0051】
具体的には、撥液性構造30は、外側筐体20内の特定位置24から例えばX字形状に分岐する撥液性分岐部31を有している。これにより、第1の実施の形態のように撥液性筐体10のすべての面を撥液性材料11により形成する場合に比べて、撥液性構造30の体積は著しく小さくなる。撥液性材料11の内部は気体で満たされているので、撥液性構造30の体積を小さくすることにより、液体タンク4の実質的な容量を増やすことが可能となる。
【0052】
撥液性分岐部31は、複数の先端31Aを有している。外側筐体20が直方体の場合には、図8に示したように、撥液性分岐部31の複数の先端31Aは、外側筐体20の八つの頂点、すなわち、上面22の全頂点22A〜22Dと、下面23の全頂点23A〜23Dとに接していることが望ましい。特に、外側筐体20が扁平な直方体、つまり厚み方向の四辺zが幅方向の四辺xおよび高さ方向の四辺yよりも短い直方体の場合には、図9に示したように、撥液性分岐部31の複数の先端31Aは、外側筐体20の厚み方向の四辺zに接していることが好ましい。方位依存性をなくすことができ、本当の意味での如何なる角度、すなわちすべてのロール角(前後軸の回転角)、ピッチ角(左右軸の回転角)、ヨー角(上下軸の回転角)にも対応することができるからである。なお、厚み方向の四辺zとは、上面22の対向する二辺22E,22Fと、下面23の対向する二辺23E,23Fとである。
【0053】
また、外側筐体20は、例えば図10に示したような筒状、すなわち、対向する二つの端面である上面22および下面23と、これらの間の側面25とを有する形状であってもよい。上面22および下面23は、円形のほか、楕円形などの曲線を含む形状、または多角形でもよい。側面25の長手方向の寸法Lは、上面22および下面23の直径または最大径Wよりも十分に長くなっている。
【0054】
外側筐体20がこのような筒状である場合、撥液性分岐部31の複数の先端31Aは、上面22内の少なくとも一点と、下面23内の少なくとも一点とに接していてもよい。このようにしても方位依存性をなくすことができるからである。撥液性分岐部31の先端31Aは、上面22の中心および下面23の中心に接していることが好ましい。なお、この場合にも、撥液性分岐部31は、上述した直方体の外側筐体20の場合と同様に、八方向分岐または四方向分岐の構造を有していてもよい。
【0055】
撥液性分岐部31の出発点となる特定位置24は、外側筐体20の中心位置であることが好ましい。撥液性分岐部31をすべての方向に等距離にすることができ、方位依存性の解消に有利であるからである。
【0056】
気体出入口21の位置は、第2の実施の形態と同様に、液体タンク2が装着される機器側の構成に応じて選ばれるものであり、特に限定されない。具体的には、気体出入口21は、撥液性分岐部31の延長線上、つまり先端31Aに設けられていることが好ましい。撥液性構造30の体積を最小とし、余計な体積ロスを小さくすることが可能となるからである。気体出入口21が撥液性分岐部31の先端31A以外の位置に設けられている場合には、撥液性分岐部31および気体出入口21をつなぐ撥液性接続部32を設けることが好ましい。
【0057】
気体出入口21の個数は、第2の実施の形態と同様に、一つで十分であり、従来のように外側筐体20の各隅部に通気孔を設ける必要はなくなり、一つの気体出入口21で気体の出入りを行わせることが可能となる。よって、有害な物質を含む液体A1を収容する場合でも、気体出入口21から排出される気体の管理が容易になり、有害な物質を大気中に漏らすおそれが小さくなり、安全性が向上する。
【0058】
この液体タンク4は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0059】
まず、第1の実施の形態と同様にして撥液性材料11を形成し、この撥液性材料11により、撥液性分岐部31および必要に応じて撥液性接続部32を有する撥液性構造30を形成する。次いで、上述する材料により、気体出入口21を有する外側筐体20を形成し、この外側筐体20内に撥液性構造30を配設する。以上により、液体タンク4が完成する。
【0060】
この液体タンク4では、外側筐体20の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口21とが、撥液性構造30で接続されている。この撥液性構造30は、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により形成されているので、毛細管力によって液体が浸入できず、内部が常に気体で満たされている。また、外側筐体20は、図4に示したように、どのような角度に傾けても、気体に接している頂点が必ず一つはある。よって、気体に接している頂点,その頂点を含む辺またはその頂点を含む面の一部分から撥液性構造30の内部を通じて気体出入口21で気体が出入りし、内圧が一定に保たれる。また、撥液性筐体10の外面が外側筐体20で覆われているので、内部の液体A1に強い振動や衝撃などが加えられた場合にも、液体タンク4外への液体A1の漏れ出しは抑えられる。
【0061】
このように本実施の形態では、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により撥液性構造30を形成し、この撥液性構造30で、外側筐体20の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口21とを接続するようにしたので、外側筐体20がどのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能となる。
【0062】
(第5の実施の形態)
図13は、本発明の第5の実施の形態に係る燃料電池の断面構成を表したものである。この燃料電池100は、液体燃料、例えばメタノールを直接供給して反応させるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC;Direct Methanol Fuel Cell )であり、携帯電話なまたはノート型PC(Personal Computer )などの電子機器に用いられるものである。燃料電池100は、例えば、燃料電池本体110と、燃料カートリッジ120とを有している。
【0063】
燃料電池本体110は、複数の接合体130を有している。各接合体130は、電解質膜131を間にして、アノード電極(燃料電極)132とカソード電極(酸素電極)133とが対向配置された構成となっている。この接合体130は、アノード側板状部材111とカソード側板状部材112との間に挟み込まれ、例えばガスケット(図示せず)により封止されている。なお、図13では、電解質膜131は複数の接合体130の間で共通の層となっているが、接合体130ごとに設けられていてもよい。
【0064】
電解質膜131は、例えば、スルホン酸基(−SO3 H)を有するプロトン伝導材料により構成されている。プロトン伝導材料としては、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸系プロトン伝導材料(例えば、デュポン社製「Nafion(登録商標)」)、ポリイミドスルホン酸などの炭化水素系プロトン伝導材料、またはフラーレン系プロトン伝導材料などが挙げられる。
【0065】
アノード電極132およびカソード電極133は、例えば、カーボンペーパーなどよりなるガス拡散基材に、白金(Pt)あるいはルテニウム(Ru)などの触媒を含む触媒層が形成された構成を有している。触媒層は、例えば、触媒を担持させたカーボンブラックなどの担持体をポリパーフルオロアルキルスルホン酸系プロトン伝導材料などに分散させたものにより構成されている。アノード電極132には、アノード側板状部材111に設けられた開口111Aを介してメタノールなどを含む液体燃料が気体として供給されるようになっている。また、カソード電極133は、カソード側板状部材112に設けられた開口112Aを介して外部と連通しており、自然換気あるいは空気供給ポンプ(図示せず)により空気すなわち酸素が供給されるようになっている。
【0066】
図14は、図13に示した燃料電池本体110をカソード側板状部材112の側から見た平面構成を表したものである。接合体130は、例えば面内方向に3×2の配列で計6つ配置されている。また、これら6つの接合体130は、図示しない集電体構造により、例えば符号P1で示したように、互いに電気的に直列接続されている。
【0067】
図13に示した燃料カートリッジ120は、燃料電池本体110のアノード側板状部材111の側に設けられ、後述する燃料タンク5と、気化部121とを有している。燃料タンク5と気化部121とは流路122で接続されている。流路122にはポンプ123が設けられており、燃料タンク5からの液体燃料A3はポンプ123により気化部121へ向けて一方向B1に輸送されるようになっている。
【0068】
気化部121は、燃料タンク5から供給された液体燃料A3を気化させると共に、蒸留の理論に基づき燃料に含まれる低蒸気圧の不純物(イオン性の不純物や、分子量の大きな可塑剤など)を取り除くためのものであり、例えば、厚みが0.1mm〜1.0mm程度であり、ステンレス鋼、アルミニウムなどを含む金属あるいは合金、シクロオレフィンコポリマー(COC)などの剛性の高い樹脂材料よりなる板状部材(図示せず)上に、燃料の拡散を促進するための拡散部(図示せず)が設けられたものである。拡散部としては、アルミナ、シリカ、酸化チタンなどの無機多孔質材料や樹脂多孔質材料を用いることができる。あるいは、気化部121としては、ステンレス鋼よりなる板状部材を積層することにより内部流路を設けたものが好ましい。これにより、効率的な燃料供給が可能となるため、薄型化に有利となる。気化部121の表面には、燃料の噴出口としてのノズル部121Aが形成されている。ノズル部121Aは、例えば直径0.1mm〜0.5mmの口径を有している。
【0069】
燃料電池本体110と気化部121との間には、封止層140が設けられている。この封止層140は、燃料電池本体110の外周部に設けられ、例えばシリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、テフロン(登録商標)などの樹脂材料により構成されている。これにより、燃料電池本体110と気化部121との間に一定の空間Sが設けられ、この空間Sによって気化部121から噴出する燃料が更に拡散され、燃料電池本体110に対して均一に燃料が供給されるようになっている。
【0070】
燃料カートリッジ120は、例えば図15に示したように、燃料電池本体110に対して着脱自在となっていることが好ましい。燃料に含まれる不純物は、気化部121に濃縮し、長期間の使用によって燃料供給機能を低下させる。燃料カートリッジ120を着脱可能とすることにより、燃料カートリッジ120の交換時に気化部121を交換し、気化部121に濃縮された不純物の蒸発残差を定期的に取り除くことが可能となる。
【0071】
具体的には、燃料電池本体110の下方には、上面と四つの側面のうちの一つとが開放された収納部材150が配置されている。燃料電池本体110は、収納部材150の上面を覆っている。アノード側板状部材111またはカソード側板状部材112のいずれか一方には、収納部材150の開放された側面に対応する突片113が設けられている。この突片113は、蝶番151により収納部材150に対して回動可能に連結され、これにより燃料電池本体110は収納部材150に対して開閉可能となっている。燃料カートリッジ120は、収納部材150とアノード側板状部材112との間の間隙Gから、矢印B2方向に収納部材150の内部に収納され、または矢印B2とは反対の矢印B3方向に取り出されるようになっている。なお、収納部材150の内部の底面には、図示しない制御回路などの収納部が設けられている。
【0072】
図16は、図13に示した燃料タンク5の外側筐体20内の構成を表したものである。外側筐体20には、収納部材150への収納方向B2における先端面26に、気体出入口21と、液体出入口27とが設けられている。外側筐体20の内部には、撥液性構造30と、親液性構造40とが設けられている。
【0073】
外側筐体20は、第2および第3の実施の形態と同様に構成されている。液体出入口27の位置や個数などは、気体出入口21と同様に、液体タンク2が装着される機器側の構成に応じて選ばれるものであり、特に限定されない。液体出入口27は、必ずしも気体出入口21と同じ面に設けられている必要はない。
【0074】
撥液性構造30は、第3の実施の形態と同様に構成されている。
【0075】
親液性構造40は、外側筐体20内における液体燃料A3の通り道となるものであり、外側筐体20の二つ以上の頂点、辺または面と液体出入口27とを接続している。親液性構造40は、例えば、撥液性構造30と同一の形状を有しており、外側筐体20内に撥液性構造30に重ねて配設されている。
【0076】
図17は、親液性構造40の断面構造を表したものである。親液性構造40は、例えば、外側筐体20内の特定位置24からX字形状に分岐する分岐管41と、この分岐管41内に設けられた親液性内部部材43とを有している。液体出入口27が分岐管41の先端41A以外の位置に設けられている場合には、分岐管41および液体出入口27は接続管42によりつながれている。親液性内部部材43は、接続管42の内部にも設けられている。
【0077】
分岐管41は、複数の先端41Aを有している。これら複数の先端41Aは、外側筐体20の二つ以上の頂点,辺または面に接している。複数の先端41Aの各々には、液体の取入口41Bが設けられている。これにより、この液体タンク4では、外側筐体20がどのような角度に傾けられた状態でも外側筐体20内の液体燃料A3を最後まで吸い出すことができるようになっている。
【0078】
具体的には、外側筐体20が直方体の場合には、図18に示したように、分岐管41の複数の先端41Aは、外側筐体20の八つの頂点、すなわち、上面22の全頂点22A〜22Dと、下面23の全頂点23A〜23Dとに接していることが望ましい。特に、外側筐体20が扁平な直方体、つまり厚み方向の四辺zが幅方向の四辺xおよび高さ方向の四辺yよりも短い直方体の場合には、図16に示したように、分岐管41の複数の先端41Aは、外側筐体20の厚み方向の四辺zに接していることが望ましい。方位依存性をなくすことができ、本当の意味での如何なる角度、すなわちすべてのロール角(前後軸の回転角)、ピッチ角(左右軸の回転角)、ヨー角(上下軸の回転角)にも対応することができるからである。
【0079】
外側筐体20が筒状である場合には、図19に示したように、分岐管41の複数の先端41Aは、上面22内の少なくとも一点と、下面23内の少なくとも一点とに接していてもよい。このようにしても方位依存性をなくすことができるからである。分岐管41の先端41Aは、上面22の中心および下面23の中心に接していることが好ましい。なお、この場合にも、分岐管41は、上述した直方体の外側筐体20の場合と同様に、八方向分岐または四方向分岐の構造を有していてもよい。
【0080】
図18に示したように分岐管41の複数の先端41Aが外側筐体20の八つの頂点に接している場合には、親液性構造40を二つに分けて撥液性構造30の両側に配設することが可能である。一方の親液性構造40Aは、先端41Aが上面22の頂点22A,22Dおよび下面23の頂点23A,23Dに接している。他方の親液性構造40Bは、先端41Aが上面22の頂点22B,22Cおよび下面23の頂点23B,23Cに接している。二つの親液性構造40A,40Bは、接続管42A,42Bにより互いに連通していると共に液体出入口27に接続されている。
【0081】
同様に、図16に示したように分岐管41の複数の先端41Aが外側筐体20の厚み方向の四辺zに接する場合にも、図20に示したように、親液性構造40を二つに分けて撥液性構造30の両側に配設することができる。この場合も、一方の親液性構造40Aは、先端41Aが上面22の頂点22A,22Dおよび下面23の頂点23A,23Dに接している。他方の親液性構造40Bは、先端41Aが上面22の頂点22B,22Cおよび下面23の頂点23B,23Cに接している。二つの親液性構造40A,40Bは、接続管42A,42Bにより互いに連通していると共に液体出入口27に接続されている。
【0082】
なお、図18および図20においては、撥液性構造30を二つに分けて親液性構造40の両側に配設することも可能であるが、親液性構造40を二つに分けて撥液性構造30の両側に配設するほうが望ましい。液体タンク4では液体燃料A3を最後まで使用することが重要であるところ、最後に残った液体燃料A3は外側筐体20の頂点に溜まりやすい。そのため、外側筐体20の八つの頂点には親液性構造40が配設されているほうが、液体燃料A3を最後まで吸出しやすいからである。
【0083】
分岐管41の半径rは、分岐管41が一本の管で構成されており、特定位置24が外側筐体20の中心位置である場合には、数1を満たしている。
【0084】
(数1)
SQR(x2 +y2 +z2 )<4γcosθ/rρg
H1=2γcosθ/rρg
H2=SQR(x2 +y2 +z2 )/2
(式中、SQR(a)はaの平方根、x,y,zは外側筐体20の各辺の長さ(m)、H1は円筒管の場合の毛細管力による液面上昇の高さ(m)、γは液体の表面張力(N/m)、θは接触角、rは管の半径(m)、ρは液体の密度(kg/m3 )、gは重力加速度(9.8m/s2 )、H2は液体タンク4において必要な液面上昇の高さ(m)をそれぞれ表す。)
【0085】
数1の第2式は、分岐管41が円筒管である場合の毛細管力による液面上昇の高さH1を表している。数1の第3式は、液体タンク4において必要な液面上昇の高さH2を表している。すなわち、液体燃料A3を特定位置24から針(図示せず)などで外側筐体20外に吸出すためには、取入口41Bから少なくとも特定位置24まで、毛細管力により液体燃料A3を上昇させることが必要である。よって、液体タンク4において必要な液面上昇の高さH2は、外側筐体20が直方体であった場合、外側筐体20の各頂点から特定位置24すなわち外側筐体20の中心位置までの距離となる。以上のことから、H2<H1すなわち数1の第1式を満たす条件で、外側筐体20の寸法あるいは分岐管41の材料選定、分岐管41の内径選定などを行う必要がある。なお、特定位置24が外側筐体20の中心位置ではない場合、高さH2を求めるための数1の第3式は異なってくることは言うまでもない。
【0086】
分岐管41を一本の管で構成する場合、分岐管41の材料や内径は、数1の第1式においておおよその寸法や物性値を代入することによって求めることができる。例えば、外側筐体20の寸法x,y,zをそれぞれ18mm×34mm×5.5mmとし、おおよその物性値として、γ=21N/m、θ=30°、ρ=0.79g/cm3 という値を代入すると、分岐管41の半径rは242μm以下にしなければならないことが分かる。すなわち、分岐管41は、濡れ性の良い接触角30度程度の材料により構成され、内径は484μm未満である必要があることが分かる。
【0087】
しかし、内径484μmというのは非常に小さい値であり、無理やり液体燃料A3を吸い上げようとすると流路抵抗が高く、かなりの吸引圧が必要となる。これを解消するためには、例えば、内径484μmの管を数本束ねた細管束、または、平均孔径が484μm程度以下の多孔質体,海綿状材料,発泡体または繊維状材料(以下、「発泡体等」という。)により分岐管41を構成することが考えられる。なお、厳密に言えば、管の内径は発泡体等の平均孔径に置き換えられるものではないが、概数を議論する上では問題ないと考える。また、管と発泡体等とで、大きく異なる点がもう一つある。それは、管は両端面のみで液体の出入りがあるのに対し、発泡体等はどの面からも液体の出入りが可能であり、流れの方向が定まっていないという点である。ここでの発泡体等は管の代用として作用させるものであるので、管と同様に、両端面のみで液体燃料A3の出入りが行われるよう、発泡体等の側面を覆うこと、すなわち発泡体等が分岐管41に充填された状態にすることが重要になる。また、分岐管41で覆うことにより液体燃料A3の蒸発を抑えるという利点も得られる。
【0088】
親液性内部部材43は、上述した管の代用としての発泡体等に相当するものであり、多孔質体,海綿状材料,発泡体,繊維状材料および細管束のうち少なくとも一種よりなる親液性材料により形成され、液体を通過させる多数の空隙を有している。親液性内部部材43の空隙は、毛細管力により液体燃料A3を取入口41Bから特定位置24まで吸引可能な平均孔径を有している。具体的には、親液性内部部材43の平均孔径は、分岐管41が一本の管で構成されている場合の半径rに関する数1と同様の要件を満たしている。これにより、この液体タンク4では、分岐管41を太くすることを可能とし、流路抵抗の増大を抑え、液体燃料A3の吸出速度または吸出量を大きくすると共に、液体燃料A3の吸引圧を小さくすることができる。なお、親液性内部部材43は、多孔質体,海綿状材料,発泡体,繊維状材料および細管束のうちいずれか一種でもよいし、これらのうち二種以上を組み合わせたものでもよい。
【0089】
親液性内部部材43は、液体燃料A3に対する濡れ性が良い材料、すなわち、液体燃料A3の接触角θの余弦が正の材料により構成されている。数1の第1式から、管の半径rが正の値となるためには、接触角θの余弦は正でなければならず(θ>90だとcosθ<0なので)、親液性内部部材43の平均孔径も管の半径rと同様の要件を満たす必要があるからである。ちなみに、数1の第1式から、外側筐体20の寸法を大きくするためには、親液性内部部材43の孔径は小さいほど良く、濡れ性は高いほど良いことが分かる。
【0090】
このような親液性内部部材43の材料としては、例えば、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリウレタン、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリビニル、ポリカーボネート、ポリエーテル樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、発泡金属、発泡酸化物、ゼオライト、素焼きの陶器が適している。なお、これらにオゾン処理などを施して、メタノールに対する濡れ性を向上させてもよい。親液性内部部材43は、上記の材料のうち1種または2種以上の組合せからなるフォーム(発泡体)、フェルト、フェルト焼結体、粒子焼結体により構成することができる。具体的な材料としては、例えば、ニッケル(Ni)よりなる多孔質金属体(例えば、富山住友電工社製「セルメット(商品名)」)が挙げられる。
【0091】
図21は、親液性構造40の具体的な構造の一例を表したものである。分岐管41および接続管42は、例えば、ステンレス鋼(例えばSUS304)などよりなる一対のX字形の半割り部材44A,44Bを重ねて接着剤(図示せず)により接着した構成を有する。半割り部材44A,44Bにはそれぞれ溝45A,45Bが設けられており、この溝45A,45Bが合わさって分岐管41および接続管42が構成される。溝45A,45B内に親液性内部部材43が収容される。
【0092】
この燃料電池100は、例えば次のようにして製造することができる。なお、以下の製造方法では、図21に示した半割り部材44A,44Bを用いて親液性構造40を形成する場合について説明する。
【0093】
まず、第1の実施の形態と同様にして撥液性材料11を形成し、この撥液性材料11により、撥液性分岐部31および撥液性接続部32を有する撥液性構造30を形成する。
【0094】
次いで、上述した多孔質金属体よりなる薄板を溝45A,45Bの形状に合わせて切断し、親液性内部部材43を形成する。また、上述した材料よりなる半割り部材44A,44Bを用意し、図21に示したように、親液性内部部材43を半割り部材44A,44Bのそれぞれの溝45A,45Bに埋め込み、半割り部材44A,44Bをマレイン酸変性ポリプロピレンなどの接着剤(図示せず)により熱溶着する。これにより、図17に示した親液性構造40が形成される。
【0095】
続いて、上述する材料により、気体出入口21および液体出入口27を有する外側筐体20を形成し、この外側筐体20内に撥液性構造30および親液性構造40を配設する。これにより、図16および図17に示した液体タンク5が完成する。
【0096】
そののち、液体タンク5の一面に気化部121を配設し、液体タンク5と気化部121とを流路122で接続する。流路122にはポンプ123を設ける。これにより、図15に示した燃料カートリッジ120が形成される。
【0097】
また、上述した材料よりなる電解質膜131を、上述した材料よりなるアノード電極132およびカソード電極133の間に挟んで熱圧着することにより、電解質膜11にアノード電極132およびカソード電極133を接合し、接合体130を形成する。そののち、接合体130を電気的に直列に接続し、アノード側板状部材111およびカソード側板状部材112の間に配設する。以上により、図13に示した燃料電池本体110が形成される。最後に、燃料電池本体110のアノード側板状部材111の外側に、燃料カートリッジ120を配設する。以上により、図13に示した燃料電池100が完成する。
【0098】
この燃料電池100では、各接合体130のアノード電極132に、液体タンク5から液体燃料A3が供給され、反応によりプロトンと電子とを生成する。プロトンは電解質膜131を通ってカソード電極133に移動し、電子および酸素と反応して水を生成する。これにより、液体燃料A3すなわちメタノールの化学エネルギーの一部が電気エネルギーに変換されて電流として取り出され、外部の負荷が駆動される。
【0099】
ここでは、液体タンク5において、外側筐体20の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口21とが、撥液性構造30で接続されている。この撥液性構造30は、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により形成されているので、毛細管力によって液体燃料A3が浸入できず、内部が常に気体で満たされている。また、外側筐体20は、図4に示したように、どのような角度に傾けても、上面22または下面23のどちらかに、気体に接している頂点が必ず一つはある。よって、気体に接している頂点,その頂点を含む辺またはその頂点を含む面の一部分から撥液性構造30の内部を通じて気体出入口21で気体が出入りし、内圧が一定に保たれる。また、撥液性筐体10の外面が外側筐体20で覆われているので、内部の液体A1に強い振動や衝撃などが加えられた場合にも、液体タンク4外への液体A1の漏れ出しは抑えられる。
【0100】
また、親液性構造40への液体燃料A3の取入口41Bが分岐管41の先端のみに制限されているので、外側筐体20内の液体燃料A3の流れには、この取入口41Bのみから分岐管41に入り、特定位置24まで輸送され、接続管42を経由して液体出入口27で外側筐体20外に吸い出されるという一定の方向性が生じる。図22に示したように、外側筐体20をどのような角度に傾けても、頂点22A〜22D,23A〜23Dのうち最低一つは液体燃料A3に接している。よって、外側筐体20内の液体燃料A3が減っても、外側筐体20内の厚み方向の四辺zのいずれかに存在する液体燃料A3が、その辺に接する分岐管41の先端の取入口41Bから分岐管41に入る。従って、外側筐体20がどのような角度に傾けられても液体燃料A3が最後まで吸い出される。
【0101】
更に、親液性構造40は、多孔質体,海綿状材料,発泡体,繊維状材料および細管束のうち少なくとも一種よりなる親液性材料により形成された親液性内部部材43を有しているので、分岐管41の流路抵抗の増大が抑えられ、液体燃料A3の吸出速度または吸出量が大きくなると共に、液体燃料A3の吸引圧が小さくなる。
【0102】
このように本実施の形態の液体タンク5では、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料11により撥液性構造30を形成し、この撥液性構造30で、外側筐体20の二つ以上の頂点,辺または面と気体出入口21とを接続するようにしたので、外側筐体20がどのような角度に傾けられた状態でも内圧を一定に保つことが可能となる。よって、この液体タンク5を、燃料電池100の燃料カートリッジ120に用いることにより、液体燃料A3の異常な噴出や液体タンク5の破損が抑えられ、安全性が向上する。
【0103】
また、外側筐体20内に親液性構造40を設け、その分岐管41の先端に液体燃料A3の取入口41Bを設けるようにしたので、液体燃料A3の流れの方向が一定になり、液体燃料A3が少量になっても確実に吸い上げることができる。よって、外側筐体20をどのような角度に傾けても外側筐体20内の液体燃料A3を最後まで吸い出すことが可能となる。特にポータブル用途の電子機器に搭載される燃料電池100に好適であり、液体燃料A3の利用効率を高め、機器の利便性を向上させることができる。
【0104】
特に、親液性構造40の内部に、多孔質体,海綿状材料,発泡体,繊維状材料および細管束のうち少なくとも一種よりなる親液性材料により形成された親液性内部部材43を設けるようにしたので、流路抵抗の増大を抑え、液体燃料A3の吸出速度または吸出量を大きくすると共に、液体燃料A3の吸引圧を小さくすることができる。
【0105】
(第6の実施の形態)
図23は、本発明の第6の実施の形態に係る燃料タンク6の断面構成を表したものである。この燃料タンク6は、第1の実施の形態に係る燃料タンク1において、撥液性筐体10に液体出入口12を設けると共に、この撥液性筐体10内に、第5の実施の形態と同様の親液性構造40を設けたものである。この燃料タンク6の作用および効果は、第1および第5の実施の形態と同様であり、第1および第5の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0106】
(第7の実施の形態)
図24は、本発明の第7の実施の形態に係る燃料タンク7の断面構成を表したものである。この燃料タンク7は、第2の実施の形態に係る燃料タンク2において、外側筐体20に液体出入口27、撥液性筐体10に液体出入口12をそれぞれ設けると共に、この撥液性筐体10内に、第5の実施の形態と同様の親液性構造40を設けたものである。この燃料タンク7の作用および効果は、第2および第5の実施の形態と同様であり、第2および第5の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0107】
(第8の実施の形態)
図25は、本発明の第8の実施の形態に係る燃料電池100の構成を表したものである。この燃料電池100は、例えば、第5の実施の形態に係る液体タンク5において、吸気は外気から行う一方、排気は燃料電池本体110へと導くことにより、更に安全性を高めるようにしたものである。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0108】
燃料電池本体110は、第5の実施の形態と同様に構成されている。
【0109】
燃料カートリッジ120は、例えば、気体出入口21に接続された管路161と、この管路161から分岐する第1の分岐路162および第2の分岐路163とを備えている。
【0110】
第1の分岐路162は、管路161と外気からの吸気口164とを接続しており、気体の流れを液体タンク4内への一方向に制限する機構として例えば逆流防止弁162Aを有している。第2の分岐路163は、管路161と気化部121および燃料電池本体110とを接続しており、気体の流れを液体タンク4外への一方向に制限する機構として逆流防止弁163Aを有している。また、第2の分岐路163は、液体タンク4の液体出入口27に連通している。これにより、この燃料電池100では、液体タンク4からの排気に含まれる液体燃料A3が大気中に放出されることがなく、ユーザーのメタノール等への暴露を抑えて安全性を高めることが可能となっている。
【0111】
第1の分岐路162には、必要に応じて、ゴミとりフィルター162Bまたは酸素吸収剤フィルター162Cを設けてもよい。ゴミとりフィルター162Bは、空気中のゴミを除去するためのものであり、例えば吸気口164と逆流防止弁162Aとの間に設けられている。酸素吸収剤フィルター162Cは、空気中の酸素により燃料電池本体110の発電性能が低下するのを抑え、かつ、燃料そのものの酸化劣化などを抑えるためのものであり、例えば逆流防止弁162Aと気体出入口162との間に設けられている。
【0112】
なお、図25では、ポンプ123が逆流防止弁163Aの前段に配置されているが、ポンプ123は、逆流防止弁163Aと気化部121および燃料電池本体110との間の位置123Aに配置されていてもよい。
【0113】
この燃料電池100では、外側筐体20の内圧が下がると、吸気口164から第1の分岐路162に気体が吸い込まれる。この気体は、逆流防止弁162Aにより液体タンク4内への一方向B4に制限され、管路161および気体出入口21を介して液体タンク4内に取り込まれる。一方、外側筐体20の内圧が上がると、撥液性構造30の内部を通じて気体出入口21から管路161および第2の分岐路163へと気体が排出される。排出された気体は、逆流防止弁163Aにより液体タンク4外への一方向に制限され、液体出入口27からの気化した燃料と共に、気化部121および燃料電池本体110へと供給される。排出された気体に含まれる液体燃料A3は、燃料電池本体110で消費される。よって、液体燃料A3が大気中に放出されてしまうことがなく、ユーザーのメタノール等への暴露が抑えられる。
【0114】
このように本実施の形態では、気体出入口21に接続された管路161を、第1の分岐路162および第2の分岐路163に分岐させている。第1の分岐路162には、気体の流れを液体タンク4内への一方向に制限する逆流防止弁162A、第2の分岐路163には、気体の流れを液体タンク4外への一方向に制限する逆流防止弁163Aをそれぞれ設けている。これにより、液体タンク4からの排気に含まれる液体燃料A3が大気中に放出されることをなくし、ユーザーのメタノール等への暴露を抑えて安全性を高めることが可能となる。
【0115】
なお、本実施の形態は、第2または第7の実施の形態で説明したような、撥液性筐体10の外面を外側筐体20で覆った構成の燃料タンク2,7にも適用可能である。
【0116】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、上記実施の形態では、撥液性分岐部31または分岐管41の出発点である特定位置24が、外側筐体20の中心位置である場合について説明したが、特定位置24はこれに限られず、外側筐体20を置く姿勢に応じて適切に選択することができる。例えば、外側筐体20が下向きに(上面22を下にして)配置されることが比較的多い場合には、中心位置よりも下方の位置を特定位置24としてもよい。
【0117】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各構成要素の材料および厚み、または燃料電池の発電条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の発電条件としてもよい。例えば、上述した液体タンク1〜5が燃料タンクとして使用される場合、液体燃料はメタノールのほか、エタノールやジメチルエーテルなどの他の液体燃料でもよい。
【0118】
更に、本発明の液体タンクは、燃料電池に限らず、灯油,軽油あるいはガソリンなど燃焼用燃料を使用する機器(照明用トーチ,ヒータあるいはエンジンなど)の燃料タンク、インクジェットプリンタにおけるインクカートリッジ、スプレーガン、または香水瓶などにも適用可能である。
【0119】
本発明の燃料電池は、例えば、携帯電話、電子写真機、電子手帳、ノートブック型パーソナルコンピュータ、カムコーダ、携帯型ゲーム機、携帯型ビデオプレーヤー、ヘッドフォンステレオまたはPDA(Personal Digital Assistants )等の携帯型の電子機器に好適に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0120】
1〜5…燃料タンク、10…撥液性筐体、11…撥液性材料、12…毛細管力傾斜材料、13…液体出入口、20…外側筐体、21…気体出入口、22…上面、23…下面、24…特定位置、25…側面、26…先端面、27…液体出入口、30…撥液性構造、31…撥液性分岐部、31A…先端、32…撥液性接続部、40…親液性構造、41…分岐管、41A…先端、41B…取入口、42…接続管、43…親液性内部部材、44A,44B…半割り部材、45A,45B…溝、100…燃料電池、110…燃料電池本体、120…燃料カートリッジ、130…接合体、131…電解質膜、132…アノード電極(燃料電極)、133…カソード電極(酸素電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの気体出入口が設けられた外側筐体と、
前記外側筐体内に設けられ、前記外側筐体の二つ以上の頂点,辺または面と前記気体出入口とを接続し、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料により形成された撥液性構造と
を備えた液体タンク。
【請求項2】
前記撥液性構造は、前記外側筐体内の特定位置から分岐する撥液性分岐部を有し、前記撥液性分岐部の複数の先端は、前記外側筐体の二つ以上の頂点,辺または面に接する
請求項1記載の液体タンク。
【請求項3】
前記外側筐体は一つの液体出入口を有すると共に内部に親液性構造を備え、
前記親液性構造は、
前記外側筐体内の特定位置から分岐すると共に複数の先端を有し、前記複数の先端は、前記外側筐体の二つ以上の頂点,辺または面に接し、前記複数の先端の各々に液体の取入口が設けられた分岐管と、
前記分岐管内に設けられ、液体を通過させる空隙を有する親液性材料により形成された親液性内部部材と
を有する請求項2記載の液体タンク。
【請求項4】
前記親液性構造は、前記撥液性構造と同一の形状を有し、前記外側筐体内に前記撥液性構造に重ねて配設されている。
請求項3記載の液体タンク。
【請求項5】
前記外側筐体は、厚み方向の四辺が幅方向の四辺および高さ方向の四辺よりも短い直方体であり、
前記撥液性分岐部の複数の先端は、前記外側筐体の厚み方向の四辺に接する
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項6】
前記分岐管の複数の先端は、前記外側筐体の厚み方向の四辺に接する
請求項5記載の液体タンク。
【請求項7】
前記外側筐体は直方体であり、
前記撥液性分岐部の複数の先端は、前記外側筐体の八つの頂点に接する
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項8】
前記分岐管の複数の先端は、前記外側筐体の八つの頂点に接する
請求項7記載の液体タンク。
【請求項9】
前記外側筐体は、対向する二つの端面と、前記二つの端面の間の側面とを有する筒状であり、
前記撥液性分岐部の複数の先端は、前記外側筐体の二つの端面に接する
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の液体タンク。
【請求項10】
前記分岐管の複数の先端は、前記外側筐体の二つの端面に接する
請求項9記載の液体タンク。
【請求項11】
気体を通過させる空隙を有する撥液性材料によりすべての面が形成された撥液性筐体を備えた
液体タンク。
【請求項12】
前記撥液性筐体の外面を覆うと共に気体出入口を有する外側筐体を備えた
請求項11記載の液体タンク。
【請求項13】
前記撥液性材料は対向する表面および裏面を有し、前記表面および前記裏面の対向方向において前記空隙の形状が変化していることにより前記表面における毛細管力が前記裏面における毛細管力よりも小さく、
前記撥液性材料の表面は前記撥液性筐体の内面に、前記撥液性材料の裏面は前記撥液性筐体の外面にそれぞれ配置されている
請求項12記載の液体タンク。
【請求項14】
燃料電池本体と、液体タンクを有する燃料カートリッジとを備え、
前記液体タンクは、
一つの気体出入口が設けられた外側筐体と、
前記外側筐体内に設けられ、前記外側筐体の二つ以上の頂点,辺または面と前記気体出入口とを接続し、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料により形成された撥液性構造と
を備えた燃料電池。
【請求項15】
前記燃料カートリッジは、前記液体タンクから供給された液体燃料を気化させる気化部を有すると共に、前記燃料電池本体に対して着脱自在となっている
請求項14記載の燃料電池。
【請求項16】
前記気体出入口に接続された管路と、
前記管路から分岐すると共に気体の流れを前記液体タンク内への一方向に制限する機構が設けられた第1の分岐路と、
前記管路から分岐すると共に気体の流れを前記液体タンク外への一方向に制限する機構が設けられ、前記液体出入口に連通する第2の分岐路と
を備えた請求項14または15記載の燃料電池。
【請求項17】
燃料電池本体と、液体タンクを有する燃料カートリッジとを備え、
前記液体タンクは、気体を通過させる空隙を有する撥液性材料によりすべての面が形成された撥液性筐体を備えた
燃料電池。
【請求項18】
前記燃料カートリッジは、前記液体タンクから供給された液体燃料を気化させる気化部を有すると共に、前記燃料電池本体に対して着脱自在となっている
請求項17記載の燃料電池。
【請求項19】
前記気体出入口に接続された管路と、
前記管路から分岐すると共に気体の流れを前記液体タンク内への一方向に制限する機構が設けられた第1の分岐路と、
前記管路から分岐すると共に気体の流れを前記液体タンク外への一方向に制限する機構が設けられ、前記液体出入口に連通する第2の分岐路と
を備えた請求項17または18記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−236799(P2010−236799A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85736(P2009−85736)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】