説明

深さ測定装置および深さ測定方法

【課題】凹部を有する被測定物に対して傷を付ける恐れなく、かつ精度よく凹部の深さを測定できる深さ測定装置および深さ測定方法を提供すること。
【解決手段】基台11と、被測定物100が載置される載置台17と、を有し、基台11と載置台17とが相対移動可能な移動ステージ10と、載置台17に対して着脱自在で被測定物100と置き換えて載置可能に設けられ、光線を反射可能な平面状の反射部を有する平面板と、基台11に設けられ、可干渉性の光束を参照光と測定光L50とに分割し測定光L50と参照光との光路差に基づく干渉縞を観察する干渉縞観察部20と、載置台17に載置された前記平面板に対して測定光L50が照射された際に前記干渉縞の本数が最少となる基台11と載置台17との位置関係を原点とした基台11と載置台17との相対移動量を測定する移動量測定部30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深さ測定装置および深さ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凹面レンズのような凹部を有する光学素子などの形状の検査を行う装置として、凹部を有する被測定物における凹部の深さを測定する装置が知られている。例えば、特許文献1には、触針子を凹面レンズの凹面に当てつけ、凹面の深さを測定できる球欠深さ測定器が開示されている。
【0003】
より詳しくは、被検レンズ(被測定物)が載置される載置台と、載置台に載置された被測定物に接触して被測定物の球欠部分の深さを測定する触針子と、触針子による測定における原点を設定する0点リセットをするために載置台に載置される平行平板とを備えている。
この特許文献1に記載の球欠深さ測定器によれば、平行平板に触針子を当接させて0点リセットが行われることで0点リセットのバラツキが解消される。このため、高精度な深さ測定ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−325387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の球欠深さ測定器では、凹面レンズに触針子をあてつけているため、凹面レンズの凹面にキズが付いてしまうという問題点があった。
また、凹面に触針子をあてつけ、表示値が最大になる様に凹面レンズを水平方向に移動させることで、凹面部の一番深い場所を推測しながら測定を行っている。そのため、凹面部の一番深い場所を測定しているか否かが確実でないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は凹部を有する被測定物に対して傷を付けず、かつ精度よく凹部の深さを測定できる深さ測定装置および深さ測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の深さ測定装置は、一部に球面をなす凹部を有する被測定物における前記凹部の深さを測定する深さ測定装置であって、基台と、前記被測定物が載置される載置台と、を有し、前記基台と前記載置台とが相対移動可能な移動ステージと、前記載置台に対して前記被測定物と置き換えて載置可能に設けられ、光線を反射可能な平面状の反射部を有する平面板と、前記基台に設けられ、可干渉性の光束を参照光と測定光とに分割し、前記測定光と前記参照光との光路差に基づく干渉縞を観察する干渉縞観察部と、前記平面板に対して前記干渉縞の本数が最少となる前記載置台の位置を原点として、前記被測定物に対して前記干渉縞の本数が最少となる前記載置台の位置までの移動量を、前記凹部の深さとして測定する移動量測定部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の深さ測定方法は、一部に球面をなす凹部を有する被測定物における前記凹部の深さを測定する深さ測定方法であって、被測定物が載置される載置台に、光線を反射可能な平面状の反射部を有する平面板を載置する平面板載置工程と、前記反射部に測定光を照射して取得される干渉縞の本数が最小になる前記載置台の位置を、基準位置として設定する設定工程と、前記平面板に代えて前記被測定物を前記載置台に載置する被測定物載置工程と、前記被測定物が有する凹部の面頂位置に測定光を照射して取得される干渉縞の本数が最小になる前記載置台の位置と前記基準位置との相対移動量を、前記凹部の深さとして計測する計測工程と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、前記干渉縞の本数が最小となる位置を前記凹部の球心位置として設定するとともに、前記測定光の光軸が前記球心位置を通る位置に、前記被測定物の位置を調整する軸合わせ工程と、を備え、前記軸合わせ工程は、前記被測定物載置工程と前記計測工程との間に行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の深さ測定装置および深さ測定方法によれば、凹部を有する被測定物に対して傷を付けず、かつ精度よく凹部の深さを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の深さ測定装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】同実施形態の深さ測定装置の作用を示す説明図である。
【図3】同実施形態の深さ測定装置の使用時の一過程を示す側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の深さ測定方法を示すフローチャートである。
【図5】同実施形態の深さ測定方法の一部の工程を詳細に示すフローチャートである。
【図6】同実施形態の深さ測定方法の一部の工程を詳細に示すフローチャートである。
【図7】同実施形態の深さ測定装置の作用を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態の深さ測定装置の概略構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の深さ測定装置および深さ測定方法について図1から図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態の深さ測定装置の概略構成を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態の深さ測定装置1は、一部に球面をなす凹部101を有する被測定物100に対して好適に用いられるものである。このような被測定物100としては、具体的には例えば凹部を有する凹面レンズや凹部を有する凹面鏡などの光学素子を挙げることができる。
【0013】
深さ測定装置1は、被測定物100を載置可能な移動ステージ10と、被測定物100に対して干渉縞を生じさせて観察する干渉縞観察部20と、移動ステージ10に取り付けられた移動量測定部30とを備えている。
【0014】
移動ステージ10は、基台11と、基台11に固定された支持体12と、支持体12に支持された移動部13と、とを有している。基台11は平板状に形成されており、支持体12は軸線方向に延びる筒状あるいは柱状に形成されている。基台11と支持体12とは互いに垂直な位置関係に設けられている。
【0015】
以下本明細書では、図1にXYZで示すように座標軸を定め、X軸及びY軸が基台11の面に沿うとともに互いに直交する軸線であり、Z軸が支持体12の軸方向に向かう軸線であるとして説明を行う。
【0016】
移動部13は、支持体12の外面に沿って摺動移動可能で、基台11に対して近接あるいは離間するように相対移動可能に設けられている。また、移動部13には、支持体12に対して締付による摩擦係合によって位置関係を固定するための締付固定部13aが設けられている。
【0017】
また、移動部13には、基台11に対してZ軸方向に進退動作可能なZステージ14と、Zステージ14に取り付けられXY平面と平行な面に沿って基台11に対して相対移動可能なXYステージ15とを有している。
【0018】
XYステージ15には、基台11側の面に連結部材16が固定されており、連結部材16を介して載置台17が固定されている。載置台17は、本実施形態の被測定物100が載置されて使用される。載置台17には、被測定物100が載置される面である載置面18と、載置面18の一部に設けられZ軸方向に貫通して形成された貫通孔19とを有している。
【0019】
本実施形態では、図1に示すように被測定物100の凹部101の開口102が載置面18に向かう位置関係となるように被測定物100が載置台17に配置される。このとき、開口102と載置面18とは同一平面上にある。すなわち、凹部101の深さとは、被測定物100が載置台17に載置されたときの載置面18から面頂位置103までの、載置面18に垂直な方向の距離である。
【0020】
干渉縞観察部20は、基台11に固定され載置台17に向けて測定光L50を照射する干渉計50と、干渉計50に固定されて設けられたフリンジスキャンユニット60と、干渉計50およびフリンジスキャンユニット60に電気的に接続された解析部70とを有している。
【0021】
干渉計50は、集光位置O50において集光する可干渉性の測定光L50の光軸A50がZ軸方向に向かうように調整されている。また基台11側から載置台17に向けて照射される測定光L50は、貫通孔19を通過して被測定物100に到達する。また、本実施形態では、測定光L50の光軸A50は、載置面18に対して垂直になるように調整されている。
【0022】
本実施形態では、干渉計50はフィゾー型干渉計が採用されている。詳細は図示しないが、干渉計50には、球面をなす参照面を有する図示しない参照レンズが設けられている。干渉計50は、可干渉性の光束を測定光L50と図示しない参照光とに分離して測定光L50と参照光との間の光路差に基づく光の干渉によって干渉縞を生じさせる。
【0023】
フリンジスキャンユニット60は、干渉計50によって得られる上述の干渉縞の解析をより高精度に行うための機構である。フリンジスキャンユニット60は、干渉計50に設けられた上述の参照面と載置面18との間のZ軸方向の相対位置を変化させる微小駆動部61と、微小駆動部61を駆動させるためのフリンジスキャン制御部62とを有している。
【0024】
フリンジスキャン制御部62は、詳細は後述する解析部70に電気的に接続されており、解析部70を通じて送信される動作指令に基づいて動作する。
【0025】
解析部70は、一般に普及しているパーソナルコンピュータを採用することができ、干渉縞の解析をするための干渉縞解析ソフトがインストールされているものが好ましい。解析部70は、上記干渉縞解析ソフトによって干渉縞の解析処理を行う解析本体71と、解析本体71によって解析された結果などを表示する表示部72とを有している。解析部70で干渉縞解析ソフトを立ち上げて使用することで、干渉計50で取得された干渉縞画像の映像情報を、表示部72で目視観察することが出来る。
【0026】
移動量測定部30は、光軸A50と同軸上に設定された測定軸Mを有する測長器31と、測長器31の動作を制御する測長制御部32と、測長器31によって測定された測定結果を表示するための位置情報モニタ33と、詳細は図示しないリセットスイッチと、を有している。
また、測長器31は、固定部材34によって支持体12に固定されている。固定部材34には、締付固定部13aと同様に締付固定部34aが設けられている。
【0027】
測長器31で測定された位置信号は、測長制御部32により所定の基準位置からの移動量、すなわち所定の基準位置からの距離情報となり、位置情報モニタ33において使用者が認知可能な状態に表示される。また、上述のリセットスイッチを押すことで上述の距離情報がリセットされ、リセットスイッチが押されたときの位置関係があらたな基準位置として設定される。
【0028】
図2は、被測定物100に対して照射される測定光L50の光路の一部を示す光路図である。図2に示すように、測定光L50の集光位置O50と、被測定物100の凹部101の曲率中心(球心位置O100)とが一致する様に被測定物100が載置台17に載置されると、測定光L50は光路51、52を通り、干渉計50に光が戻る。以下、この位置関係を球心反射位置と称する。
【0029】
また、測定光L50の集光位置O50と、被測定物100の凹部の面頂位置103とが一致するように被測定物100が載置台17に載置されると、測定光L50は、光路53、54を通り、干渉計50に光が戻る。以下、この位置関係を面頂反射位置と称する。
【0030】
球心反射位置と面頂反射位置との二箇所では、被測定物100と集光位置O50との相対位置が、球心反射位置あるいは面頂反射位置と完全に一致しているときには干渉縞は生じない。一方で被測定物100と集光位置O50との相対位置が、球心反射位置あるいは面頂反射位置と微小なズレを有している際には干渉計50、および解析部70によって観察可能な干渉縞が発生する。
【0031】
図3は、深さ測定装置1の使用時の一過程を示す側面図である。図3に示すように、深さ測定装置1が使用される際には、載置台17の載置面18には、貫通孔19を塞ぐように平面板40が配置される。平面板40は、載置面18上で被測定物100と置き換えて配置されるように載置台17に対して着脱自在に設けられている。
【0032】
平面板40には、載置面18に接する第一面41と、第一面41と異なる第二面42とが形成されている。平面板40における第一面41は測定光L50を反射可能な反射部43が設けられている。
【0033】
反射部43は、図1および図2に示す被測定物100の凹部101の深さの基準となる位置に配置されるものである。このため、反射部43は被測定物100の凹部101の開口102が接している載置面18と同一平面状に位置していることが好ましい。なお、反射部43は、貫通孔19を通過して平面板40に照射される測定光L50を反射することができればよく、平面板40の第一面41の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0034】
以上に説明する構成の、本実施形態の深さ測定装置1の使用時の動作および深さ測定方法について、図4ないし図6を参照しながら説明を行う。
図4ないし図6は、本実施形態の深さ測定装置1による深さ測定方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、使用者は、載置台17の載置面18に平面板40をセット(載置)する(平面板載置工程;ステップS1)。
【0035】
続いて、干渉計50から射出される測定光L50の集光位置O50が、平面板40の反射部43付近に位置するように基台11と移動部13とのZ軸方向の相対位置を移動させる。このとき、使用者は、締付固定部13aを緩め、移動部13を支持体12に対してZ軸方向に摺動移動させることで、平面板40を面頂位置へ移動させる(移動工程;ステップS2)。
【0036】
続いて、平面板40の反射部43(面頂位置)の干渉縞調整を行う(設定工程;ステップS3)。ステップS3では、干渉計50の測定光L50を反射部43の面に垂直な方向から反射部43に照射する。
【0037】
平面板40の反射部43では、測定光L50が反射されて干渉計50に入射される。干渉計50では、測定光L50と上述の参照光との間の光路差に基づく干渉縞が生じる。干渉縞の画像は解析部70における表示部72で目視可能に表示される。
【0038】
図5は、ステップS3を詳細に示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS3では、まずZステージ14の位置をZ方向に進退移動させて平面板40と干渉計50との間の距離を調整する(ステージ調整工程;ステップS31)。
ここで、使用者は表示部72に表示された干渉縞画像における干渉縞の本数が最小になるときの干渉計50と平面板40とのZ軸方向の距離を基準位置(原点)として設定する。ここで、使用者は締付固定部13aを締めることで支持体12と移動部13との位置関係を固定する。
【0039】
さらに、使用者はフリンジスキャンユニット60によって、干渉計50の参照レンズと被測定物100との距離を変えて干渉縞画像を解析する。干渉計50によって、フリンジスキャンユニット60の微小駆動部61の可動範囲内において、測定光L50の波長よりも短い間隔で距離が異なる複数の干渉縞画像が取得される。
【0040】
解析部70では、複数の干渉縞画像に基づいて干渉縞の本数が0本になる位置が解析される(分岐判断工程;ステップS32)。Zステージ14が固定された位置関係において干渉縞の本数が0本であるとみなされる場合には、干渉縞が0本になる位置を定めることができた(YES)としてステップS3を完了する。
なお、ステップS32において微小駆動部61の可動範囲内に干渉縞が0本となる位置を定められない場合には、ステップS31に戻って再度Zステージ14の位置を調整する。
【0041】
続いて、図4に示すように、位置情報モニタ33の表示値をリセットして基準位置(原点)を設定する(基準位置確定工程;ステップS4)。基準位置の設定方法は上述のとおり移動量測定部30のリセットスイッチの押下によって行われる。
【0042】
ステップS4に続いて、平面板40を載置台17から取り除き、被測定物100の凹部101が干渉計50側に向かうように、被測定物100(被検レンズ)を載置台17の載置面18にセット(載置)する(被測定物載置工程;ステップS5)。この時、測定光L50が貫通孔19を通じて凹部101に照射される位置関係になるように被測定物100と載置台17との位置関係が調整される。
【0043】
ステップS5に続いて、被測定物100(被検レンズ)の凹部101の球心位置O100と、測定光L50の集光位置O50とが略一致するように移動させる。(軸合わせ移動工程;ステップS6)具体的には、上述と同様に締付固定部13aを緩めた後に支持体12に対して移動部13を摺動移動させてZ軸方向に進退動作させることによって基台11と移動部13との相対位置を調整する。
【0044】
続いて、被測定物100の球心位置O100と集光位置O50とを正確に位置決めするため、球心位置の干渉縞による調整を行う(軸合わせ工程;ステップS7)。図6はステップS7を詳細に示すフローチャートである。
【0045】
使用者は、表示部72に表示された干渉縞画像を観察しながら、干渉縞の本数が最小となるようにZステージ14及びXYステージ15を調整して基台11に対する被測定物100の位置を調整する(ステージ調整工程;ステップS71)。
【0046】
さらに、使用者は上述と同様にフリンジスキャンユニット60を使用して干渉計50の参照レンズと被測定物100との距離を変えて干渉縞画像を解析する。干渉計50によって、フリンジスキャンユニット60の微小駆動部61の可動範囲内において、測定光L50の波長よりも短い間隔で距離が異なる複数の干渉縞画像が取得される。
【0047】
解析部70では、複数の干渉縞画像に基づいて干渉縞の本数が0本になる位置が解析される。Zステージ14およびXYステージ15が固定された位置関係において干渉縞の本数が0本であるとみなせる場合には、干渉縞が0本になる位置を定めることができた(YES)としてステップS7を完了する(分岐判断工程;ステップS72)。
ステップS72では、微小駆動部61の可動範囲内に干渉縞が0本となる位置を定められない場合にはステップS71に戻って再度Zステージ14の位置を調整する。
【0048】
図7に示すように、ステップS7では、集光位置O50と球心位置O100とが正確に一致しているときには、干渉計50の参照レンズの曲率中心と凹部101の曲率中心とが一致しているので、干渉縞の本数は0本になる。
【0049】
ステップS7に続いて、被測定物100(被検レンズ)を面頂位置103へ移動させる(Zステージ移動工程;ステップS8)。詳しくは、凹部101の面頂位置103に測定光L50の集光位置O50が一致するように移動部13をZ方向に直線移動させる。このとき、XYステージ15におけるX軸およびY軸方向の相対位置関係は固定されている。このように移動部13が基台11に対してZ軸方向のみに移動することによって、測定光L50の光軸A50が、球面P100の一部をなす凹部101の球心位置O100を常に通る位置関係にある。(図7参照)
【0050】
次に、面頂位置の干渉縞調整を行う(干渉縞解析工程;ステップS9)。測定光L50の集光位置O50と凹部101の面頂位置103とが略一致している時には、干渉計50から被測定物100へ向けて照射された測定光L50は、凹部101の面頂位置103において反射されて測定光L50の光路を逆に進んで干渉計50に戻る。この時、上述と同様に測定光L50と参照光との間の光路差によって測定光L50と参照光とが干渉して干渉縞が生じる。
【0051】
測定光L50の集光位置O50と凹部101の面頂位置103とが正確に一致している時には、測定光L50と参照光との干渉による干渉縞は生じない。使用者は、表示部72に表示される干渉縞画像を観察しながら、上述のステップS3と同様にステップS31が行われる。さらに、ステップS3と同様にフリンジスキャンユニット60によって複数の干渉縞画像を取得し、解析部70において複数の干渉縞画像に基づいて干渉縞の本数が0本になる位置が解析される。
【0052】
以上の工程を行った後に、被測定物100(被検レンズ)の球欠深さを表示する(計測工程;ステップS10)。測長器31では、干渉計50と被測定物100との基準位置からの相対移動量が継続して計測されている。このため、上述のように干渉縞画像が解析され、干渉縞の本数が0本になるとみなされたときに、位置情報モニタ33には、基台11に対して載置面18が相対移動した相対移動量が表示される。この距離が凹部101における開口102からの深さである。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の深さ測定装置1および深さ測定方法によれば、被測定物100に対して測定光L50を照射し、測定光L50と参照光との間の光路差に基づいて凹部101の深さを測定する。このため、凹部101に対して物体が接触することなく測定を完了することができる。したがって凹部101を有する被測定物100に対して、測定による傷がつかないる。
【0054】
また、凹部101の深さの測定に測定光L50と参照光との干渉を利用し、また、フリンジスキャンユニット60によって光の波長よりも短い距離での解析ができるので、凹部の深さを測定するための分解能が測定光L50の波長よりも短い。このため、凹部の深さを精度よく測定できる。
【0055】
また、測長器31の測定軸Mと干渉計50の光軸A50とが同軸になるように設定されているので、アッベ誤差を最小限に抑えて凹部101の深さを測定することができる。
【0056】
また、載置台17の載置面18と干渉計50の測定光L50の光軸A50とが垂直であり、光軸A50上に凹部101の球心位置O100があるように設定されて測定が行われている。このため、凹部101の最深部を確実に測定することができる。これは、ステップS7において凹部101の球心位置O100と光軸A50とが合わせられているためである。
このようにステップS7(軸合わせ工程)が設けられているので、使用者は干渉縞の本数を参照して凹部101の面頂位置103に対して容易に測定光L50を集光させることができる。したがって、凹部101の最深部に対して測定光L50を容易に精度よく照射することができる。その結果、凹部の深さを精度よく、かつ再現性よく測定することができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の深さ測定装置について図8を参照して説明する。なお、上述した第1実施形態の深さ測定装置1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
図8は、本発明の第2実施形態の深さ測定装置の一部の概略構成を示す構成図である。図8に示すように、本発明の第2実施形態の深さ測定装置2は、移動ステージ10が、測定光L50の波長より短い間隔で被測定物100を相対移動させる微小移動機構80をさらに備えている点で上述の深さ測定装置1と構成が異なっている。
【0058】
また、本実施形態では、解析部70を備えず、表示部72に相当する機能を有する表示部172が設けられている。表示部172は干渉計50と電気的に接続されており干渉計50において取得された干渉縞画像を表示することができる。
【0059】
微小移動機構80は、Zステージ14に設けられたZ軸微動部81と、XYステージ15に設けられたXY軸微動部82と、Z軸微動部81およびXY軸微動部82の動作を制御する微動制御部83と、微動制御部83に対して入力操作を行うための微動操作部84と、を有する。
【0060】
Z軸微動部81には、Z軸用ピエゾ素子85が設けられている。また、XY軸微動部82には、X軸用ピエゾ素子86aと、Y軸用ピエゾ素子86bとが設けられている。
【0061】
Z軸用ピエゾ素子85は、Zステージ14とXYステージ15との間に固定されている。
【0062】
X軸用ピエゾ素子86aは、XYステージ15におけるX軸方向の移動を担当するXステージと図示しないXステージ移動ツマミとの間に固定されている。
Y軸用ピエゾ素子86bは、X軸用ピエゾ素子86aと同様に、XYステージ15におけるY軸方向の移動を担当するYステージと図示しないY軸ステージ移動ツマミとの間に固定されている。
【0063】
また、XYステージ15は固定部材87によりZステージ14と接続されている。固定部材87はガイドとバネで構成されており、Z軸用ピエゾ素子85の伸縮量に応じて、XYステージ14とZステージ15間の距離を変化させることが出来る。これらの素子は、微動制御部83と電気的に接続されている。また、微動制御部83と微動操作部84とは電気的に接続されている。微動操作部84は、XYZ軸それぞれのピエゾ素子に対して所定の駆動電圧を印加することで伸縮量を指示することが出来る。微動操作部84より指示されたピエゾ素子伸縮量は、微動制御部83に伝達され、さらに、指示された軸のピエゾ素子(Z軸用ピエゾ素子85、X軸用ピエゾ素子86a、Y軸用ピエゾ素子86b)が伸縮する。
【0064】
このような構成であっても、第1実施形態の深さ測定装置1と同様に、凹部101を有する被測定物100に対して傷を付ける恐れなく、かつ精度よく凹部101の深さを測定できる。
また、深さ測定装置2によれば、載置台17に被測定物100が載置された場合は、被測定物100がピエゾ素子の伸縮量に応じて、基台11に対してXYZ軸方向のそれぞれに相対移動する。その結果、被測定物100の位置を高精度に微調整することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記第2実施形態の微小移動機構80におけるZ軸微動部81は、第1実施形態の深さ測定装置1に設けられたフリンジスキャンユニット60における微小駆動部61と同等の機能をさせることができる。この場合、微小駆動部61に代えてZ軸微動部81によって干渉計50と被測定物100との間の距離を測定光L50の波長より短い間隔で移動させてフリンジスキャンを行うことができる。
【0066】
また、上述の実施形態及び変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1、2 深さ測定装置
10 移動ステージ
11 基台
17 載置台
20 干渉縞観察部
30 移動量測定部
31 測長器
40 平面板
43 反射部
50 干渉計
60 フリンジスキャンユニット
70 解析部
100 被測定物
101 凹部
103 面頂位置
L50 測定光
A50 光軸
M 測定軸
S1 平面板載置工程
S3 設定工程
S5 被測定物載置工程
S7 軸合わせ工程
S10 計測工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に球面をなす凹部を有する被測定物における前記凹部の深さを測定する深さ測定装置であって、
基台と、前記被測定物が載置される載置台と、を有し、前記基台と前記載置台とが相対移動可能な移動ステージと、
前記載置台に対して前記被測定物と置き換えて載置可能に設けられ、光線を反射可能な平面状の反射部を有する平面板と、
前記基台に設けられ、可干渉性の光束を参照光と測定光とに分割し、前記測定光と前記参照光との光路差に基づく干渉縞を観察する干渉縞観察部と、
前記平面板に対して前記干渉縞の本数が最少となる前記載置台の位置を原点として、前記被測定物に対して前記干渉縞の本数が最少となる前記載置台の位置までの移動量を、前記凹部の深さとして測定する移動量測定部と、
を備える深さ測定装置。
【請求項2】
一部に球面をなす凹部を有する被測定物における前記凹部の深さを測定する深さ測定方法であって、
被測定物が載置される載置台に、光線を反射可能な平面状の反射部を有する平面板を載置する平面板載置工程と、
前記反射部に測定光を照射して取得される干渉縞の本数が最小になる前記載置台の位置を、基準位置として設定する設定工程と、
前記平面板に代えて前記被測定物を前記載置台に載置する被測定物載置工程と、
前記被測定物が有する凹部の面頂位置に測定光を照射して取得される干渉縞の本数が最小になる前記載置台の位置と前記基準位置との相対移動量を、前記凹部の深さとして計測する計測工程と、
を備える深さ測定方法。
【請求項3】
前記干渉縞の本数が最小となる位置を前記凹部の球心位置として設定するとともに、前記測定光の光軸が前記球心位置を通る位置に、前記被測定物の位置を調整する軸合わせ工程と、を備え、
前記軸合わせ工程は、前記被測定物載置工程と前記計測工程との間に行われる
ことを特徴とする請求項2に記載の深さ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−256029(P2010−256029A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102960(P2009−102960)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】