説明

溶剤の燃焼処理装置

【課題】製造工程から排出される溶剤等を有効利用してガスタービン装置の燃料消費量を削減し、産業廃棄物の処理費用も節減する。
【解決手段】製造工程1から排出される溶剤を含む水は、溶剤等処理手段6において含有水分の少ない溶剤と、含有溶剤の少ない水に分けられる。電磁弁17,18及び切替弁19により燃料と溶剤を切り替えて燃料噴射手段8に供給し、燃焼器9で燃焼させる。高負荷では電磁弁20を開放して溶剤を含んだ水を供給してCO発生増加を防ぎつつNOX を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的製造工程から排出されてくる産業廃棄物としての溶剤や、溶剤を含む水をガスタービン装置の燃料として燃焼させることにより、産業廃棄物の処理費用を節減するとともに、ガスタービン装置の燃料消費量を削減することができる経済的かつ産業廃棄物を有効利用できる環境にやさしい燃焼処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
技術分野の別や製品の種類を問わず、現代の工業的製造工程においては、種々の目的で広く溶剤が使用されている。例えば塗料や樹脂の製造工程では、溶剤及び溶剤を含む水が産業廃棄物として排出される。このような塗料や樹脂の製造工程における廃棄物としての溶剤としては、高度な塗料用の樹脂製造やファインケミカル樹脂製造において溶媒種や量を調整する過程でバイプロダクト(副生物)として発生する廃溶剤もあれば、塗料製造においてライン洗浄等のために発生する廃溶剤をリサイクルのために再蒸留して生成される溶剤もある。また、溶剤を含む水としては、例えばエマルジョン樹脂製造における廃水として排出されるものや脱水縮合反応における縮合水として排出されるものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような産業廃棄物や廃水として処理しなければならない製造工程から排出される溶剤及び溶剤を含む水は、一旦工程から排出されてしまうと、従来は有効な再利用方法がなく、廃棄物として処理しなければならないために多大な処理費用が必要になり、経済性の面で問題があった。
【0004】
そこで本発明は、工業的製造工程から排出されてくる産業廃棄物としての溶剤や、溶剤を含む水を有効に利用することにより、当該製造工程で利用されるエネルギー消費量(例えばガスタービン装置の燃料消費量)を削減するとともに、産業廃棄物を有効利用し、かつ処理費用を節減することができる溶剤の燃焼処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載された溶剤の燃焼処理装置は、燃焼ガスによりタービンを駆動するガスタービン装置に前記燃焼ガスを供給するための手段であって、工業的製造工程から排出される溶剤を燃焼して燃焼ガスを生成することを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載された溶剤の燃焼処理装置は、請求項1記載の溶剤の燃焼処理装置において、
工業的製造工程から排出される水を含んだ溶剤を溶剤と水の異なる2層に分離すべく一時的に貯える第1の容器と、
第1の容器内で分離された溶剤の層から溶剤を前記燃焼処理装置に導く溶剤供給経路と、
第1の容器内で分離された水の層から溶剤を含む水を導出する第1循環路と、
第1循環路から供給される溶剤を含む水を2次的に貯えさらに分離するための第2の容器と、
第2の容器内の水の層から溶剤を含んだ水を前記燃焼処理装置に導く水供給経路と、
第2の容器内の溶剤の層から溶剤を導出して第1の容器に戻す第2循環路とを有する溶剤等処理手段を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載された溶剤の燃焼処理装置は、請求項2記載の溶剤の燃焼処理装置において、
燃料供給手段と、
燃料又は溶剤が供給されて燃焼する燃焼器と、
前記溶剤等処理手段からの溶剤と前記燃料供給手段からの燃料が選択的に供給されるパイロットノズル及びメインノズルと、前記溶剤等処理手段からの溶剤を含んだ水が選択的に供給される水ノズルとを備え、前記燃焼器に燃料と溶剤と溶剤を含んだ水の少なくとも一つを噴射する燃料噴射手段と、
前記溶剤等処理手段からの溶剤及び溶剤を含んだ水と前記燃料供給手段からの燃料の前記燃料噴射手段への供給を切り替える切換手段と、
を有することを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載された溶剤の燃焼処理装置は、請求項3記載の溶剤の燃焼処理装置において、
前記メインノズルが噴射した溶剤又は燃料と前記水ノズルが噴射した溶剤を含んだ水が付着して膜状に引き伸ばされる壁体と、壁体に付着した溶剤又は燃料と溶剤を含んだ水を微粒化するスワラーを有することを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載された溶剤の燃焼処理装置は、請求項3記載の溶剤の燃焼処理装置において、
前記燃焼器が、
閉止された一端部側から燃料噴射手段を介して供給された燃料又は溶剤と空気の混合気を内部で燃焼させ、開放された他端部側から燃焼ガスを排出して前記タービンに供給する内筒と、
前記内筒の外側に間隔をおいて設けられ、前記内筒の一端部側には前記内筒との間に空気を取り入れるための間隙が設けられるとともに前記内筒の他端部側には前記内筒の周壁に固定された閉止部が設けられた外筒とを有し、
前記外筒の前記閉止部の内側にある前記内筒の周壁には前記内筒の内部に連通する貫通孔が設けられ、
前記間隙から流入した空気が前記内筒と前記外筒の間で加熱されてから前記貫通孔を介して前記内筒の内部に入るように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された溶剤の燃焼処理装置によれば、工業的製造工程から排出される溶剤を燃料として燃焼し、燃焼ガスを生成することができるので、例えばガスタービン発電装置において、燃焼ガスにより熱を得るとともに該燃焼ガスによりタービンを駆動して発電を行うことができ、ガスタービン装置における燃料消費量を削減するとともに、産業廃棄物である廃溶剤の処理費用を節減することができ経済的である。
【0011】
請求項2に記載された溶剤の燃焼処理装置によれば、請求項1に記載された溶剤の燃焼処理装置において、工業的製造工程から排出される溶剤を含む水を第1の容器で溶剤と水に分離し、第1の容器で溶剤から一応分離されたが依然溶剤を含む水を第2の容器で再び分離し、第2の容器で分離された溶剤を第1の容器に戻して第1の容器から溶剤を燃料として供給することができる。また、第2の容器で分離された水には適度な量の溶剤が含まれるので、これを水を含む溶剤として燃焼に供すれば、水の供給によりNOX 低減が達成されるとともに、水による燃焼領域の火炎温度の低下を水に含まれる溶剤の熱量により防ぎ、火炎温度低下によりCO発生量が増加するのを防止することができる。
【0012】
請求項3に記載された溶剤の燃焼処理装置によれば、請求項2記載の溶剤の燃焼処理装置において、溶剤等処理手段からの溶剤及び溶剤を含んだ水と燃料供給手段からの燃料を切換手段によって適宜切り替えて供給することにより、次のようなノズル操作による燃料の切り替えにより燃焼制御を行うことができる。すなわち、始動時には圧力式のパイロットノズルにより燃料供給手段からの燃料を噴射し、その後にパイロットノズルとメインノズルを使用して燃料を噴射し、その後適当な負荷になったところで両ノズルから燃料に替えて溶剤を噴射し、さらに負荷が適当な値まで上昇したところで溶剤等処理手段から供給される溶剤を含んだ水を水ノズルから噴射することができる。
【0013】
請求項4に記載された溶剤の燃焼処理装置によれば、請求項3記載の溶剤の燃焼処理装置において、メインノズルから噴射された溶剤又は燃料が壁体に付着して膜状に引き伸ばされ、これがスワラーによる旋回流によって微粒化され、燃焼される。このため、この溶剤が、ガスタービンの燃焼器における燃焼にとって好ましくない種類の溶剤(例えば芳香族炭化水素)を多量に含む場合であっても、上記微粒化による燃焼によって適正な燃焼処理が達成され、不都合は生じない。また、水ノズルが噴射した溶剤を含んだ水も壁体に付着して膜状に引き伸ばされ、これがスワラーによる旋回流の作用を受けるので、水中に存在する溶剤も微粒化され、適正に燃焼される。
【0014】
請求項5に記載された溶剤の燃焼処理装置によれば、請求項3記載の溶剤の燃焼処理装置において、燃焼器は内筒と外筒の2重管構造になっているので、一端部側の間隙から内筒と外筒の間に流入した空気は加熱した内筒の外面に接触して予熱されつつ長い滞留時間を経て貫通孔から内筒の内部に流入し、燃料又は溶剤による燃焼ガスと混合されてこれを希釈し、その温度を調節するが、内筒内に流入した希釈用の空気は内筒の熱によってすでに予熱された状態にあるので、内筒における燃料及び溶剤の燃焼による分解反応は速やかに進行し、燃焼ガス中にTHC等の有害物質が増加することはない。そして、燃焼ガスは他端部側の出口から排出されてタービンに供給される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の最良の実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る燃焼処理装置を含むガスタービン発電装置と、燃焼処理装置に溶剤等を供給する製造工程を模式的に示す全体構成図、図2は全体構成中における溶剤等処理手段の構成図、図3は本発明の実施形態に係る燃焼処理装置の断面図、図4は本発明の実施形態に係る燃焼処理装置の燃料噴射手段付近の拡大断面図、図5は燃料噴射手段の構造を示す横断面図、図6は本発明の実施形態における効果の一例を示すグラフを表す図である。
【0016】
1.全体構成
図1に示す実施形態において、塗料等の製造工程1からは廃棄物として溶剤と溶剤を含む水(以下、溶剤等とも呼ぶ)が排出される。なお、本製造工程から排出される溶剤と水の量はほぼ1:1であり、NOX 低減のために水を噴射するための比率として適当である。
【0017】
図1中に、実施形態の構成とは異なる従来の構成を比較上の便宜として部分図Pに示したように、製造工程1から排出される溶剤等は、従来は「産業廃棄物」として別途費用を費やして処理していた。しかしながら、本例ではこれら溶剤等はガスタービン発電装置の一部を構成する燃焼処理装置に燃料として供給され、消費されるものとされている。
【0018】
2.ガスタービン発電装置2の構成等
図1に示すように、本例の燃焼処理装置が一部に組み込まれた前記ガスタービン発電装置2は、駆動軸3と、これに設けられたタービンT及び圧縮機Cを備えており、燃焼処理装置4からの燃焼ガスをタービンTに送り込んで駆動軸3を回転駆動し、同時に回転される圧縮機Cによって空気を圧縮して燃焼処理装置4の燃焼器Bに送り込むことができる。駆動軸3には発電機Gが連結されており、駆動軸3の回転によって発電が行われ、電力を供給することができる。また、タービンTを駆動した後の燃焼ガスは熱源としてボイラ5に送られて熱が回収され、蒸気を生成することができる。
【0019】
3.燃焼処理装置4の構成等
(1) 溶剤等処理手段6及び燃料供給手段7の構成等
図1に示すように、前記燃焼処理装置4は、溶剤等処理手段6と燃料供給手段7を有している。溶剤等処理手段6は、製造工程1から排出される溶剤等を、ある程度のレベルで水が除去された溶剤と、NOX 低減のために適当な量の溶剤を含む水とに分離・調整して後述する後段の燃料噴射手段8及び燃焼器9に供給するものである。また、燃料供給手段7は、燃料噴射手段8及び燃焼器9に正規燃料としての灯油を供給するものであり、前記溶剤等を使用できないガスタービン発電装置2の起動時及び比較的低負荷時等に使用される。
【0020】
すなわち、後述する運転制御において詳細に説明するが、溶剤等と燃料は選択的に使用されるものであり、従って溶剤等処理手段6と燃料供給手段7はいずれか一方のみを選択して使用する。そのために、溶剤等と燃料を選択して後段の燃料噴射手段8及び燃焼器9に供給するために、溶剤等処理手段6と燃料供給手段7から導出される配管系には要所に切替手段としての電磁弁が設けられており、自在に切り替え制御することができるように構成されている。
【0021】
図2を参照して前記溶剤等処理手段6の詳細な構成を説明する。
溶剤等処理手段6は、まず製造工程1から排出される溶剤を含む水を受け入れて一次的に貯える第1の容器10(タンク1)を有している。第1の容器10内において、溶剤を含む水は、溶剤と水の2層として分離される。そして、第1の容器10内で分離した液体の上層である溶剤は、第1の容器10の比較的上方部分の壁体に接続連通された溶剤供給経路11によって導出され、前記燃料噴射手段8に導かれる。なお、製造工程1から排出される溶剤については、第1の容器10を経由することなく、前記溶剤供給経路11に配管12で接続されて第1の容器10からの溶剤とともに燃料として燃料噴射手段8に供給される。
【0022】
第1の容器10の溶剤供給経路11から燃料噴射手段8に供給される溶剤は、本溶剤等処理手段6での溶剤分離工程を経てきたため、最初に製造工程1から送られてきた溶剤を含んだ水に比べて水の含有量がはるかに少ないため、燃焼器9で燃焼に供した場合に十分な発熱量を確保でき、安定した燃焼を実現することができる。
【0023】
また、第1の容器10の比較的下方部分の壁体には第1循環路13が接続連通されており、第1の容器10内において分離した液体の下層である水(これにもある程度の溶剤は含まれている)は、この第1循環路13から次に説明する第2の容器14(タンク2)に供給される。
【0024】
第1の容器10の隣部下方には、第2の容器14(タンク2)が設けられており、第1の容器10から第1循環路13を経て供給された水を受け入れて2次的に貯え、静置することで、この水を溶剤と水の2層にさらに分離することができるようになっている。第2の容器14には、第2の容器14内の溶剤の層(上層)から溶剤を導出して第1の容器10に戻す第2循環路15が設けられている。また、第2の容器14には、第2の容器14内の水の層(下層)から溶剤を含んだ水を燃焼処理装置4に導く溶剤水供給経路16が設けられている。
【0025】
第2の容器14の溶剤水供給経路16から送り出される溶剤を含んだ水は、本溶剤等処理手段6での溶剤分離工程を経てきたため、最初に製造工程1から送られてきた溶剤を含んだ水よりも溶剤の含有量は少ないが、燃焼器9で燃焼に供した場合にNOX 低減とCOの発生抑止を共に達成するために適正な量・比率の溶剤を含有している。
【0026】
(2) 切り替え手段の構成等
図1に示すように、前記溶剤等処理手段6及び前記燃料供給手段7と、燃料噴射手段8とを接続する配管系には、溶剤等及び燃料の切り替え制御を行う切り替え手段として複数の電磁弁が設けられている。すなわち、前記溶剤等処理手段6から溶剤を供給する溶剤供給経路11には第1電磁弁17が設けられ、第1電磁弁17の下流の供給配管に、燃料供給手段7から燃料を供給する燃料配管が第2電磁弁18を介して接続され、燃料配管が合流した溶剤供給経路11は、切替弁19を介して燃料噴射手段8のパイロットノズル(供給口(X))及びメインノズル(供給口(Y))に接続されている。切替弁19は、燃料又は溶剤を、パイロットノズル(供給口(X))のみに供給するか、又はパイロットノズル(供給口(X))及びメインノズル(供給口(Y))の両方に供給するか、いずれかの位置を選択できる。また、前記溶剤等処理手段6から溶剤を供給する溶剤水供給経路16には第3電磁弁20が設けられ、燃焼装置の燃料噴射手段8の後述する水ノズル(供給口(Z))に接続されている。
【0027】
(3) 燃焼器9の構成等
図3及び図4を参照して燃焼処理装置4の燃焼器9及び燃料噴射手段8の構成を説明する。
図3に示すように、この燃焼器9は上面が閉止され、下面が燃焼ガスの出口として開放された略円筒形の容器であり、その出口はガスタービンのハウジングに接続連通されている。燃焼器9は円筒形のケース21に収納されており、このケース21内には図1中矢印で示すように空気が供給される。この空気は、製造工程1で揮発性有機化合物(VOC)のガスが発生する場合には、VOCガスを含む空気であってもよい。
【0028】
前記燃焼器9は二重壁構造であり、同芯(同軸)で周壁の間隔が一定とされた内筒22と外筒23からなる。内筒22は、混合気が供給される上方の大径部22aと、燃焼ガスを排出する下方の小径部22bと、両部をつなぐテーパ部22cからなり、小径部22bには燃焼ガスの温度を調整するために空気を取り入れる希釈孔24が貫通して設けられている。内筒22は、閉止された大径部の上面側から予混合装置30によって混合気を供給されて内部で燃焼させ、この燃焼ガスに小径部22bの希釈孔24から空気を加えて温度を調整し、小径部22bの開放された下端の出口から燃焼ガスを排出してタービンTに供給する。
【0029】
外筒23は、前記内筒22の外側に所定の間隔をおいて設けられる筒体であり、内筒22と同様に、上方の大径部23aと下方の小径部23bがテーパ部23cで一体とされた構造を有する。外筒23の大径部23aと内筒22の大径部22aの間隙は開放された周状の空気導入口25とされており、ケース21内の空気がこの空気導入口25から両筒22,23の間の壁間空間Sに流入するように構成されている。また、外筒23の小径部23bの軸方向の長さは内筒22の小径部22bよりも短く、外筒23の小径部23bは内筒22の小径部22bの希釈孔24を覆い、内筒22の小径部22bの周壁の外面に周状に固定されて前記壁間空間Sの下端を閉止している。
【0030】
また、前記壁間空間S内には、空気導入口25から流入した空気の流路を規制する複数の仕切り板26が所定のパターンで設けられている。従って、空気導入口25から壁間空間S内に流入した空気は、内筒22と外筒23の軸線方向に沿って単に直線的に流れるのではなく、仕切り板26に流路を規制され、より長い屈曲した経路で壁間空間Sを流れ、その間に内筒22に加熱されて温度が上昇した状態で壁間空間Sの下端に至り、内筒22の小径部22bの希釈孔24から内筒22内に流入することとなる。
【0031】
(4) 燃料噴射手段8の構成等
図3に示すように、前記燃焼器9の上面には予混合装置30が設けられており、図中に矢印で示すように予混合装置30の吸入口からケース21内の空気が流入する。図4に示すように、予混合装置30に設けられてケース21の上面を貫通する燃料噴射手段8は、中央の着火用のパイロットノズル31(供給口を符号(X)で示す)と、燃焼用のメインノズル32(供給口を符号(Y)で示す)を有しており、ケース21の外部から溶剤又は燃料のいずれかが選択的に供給され、これによって予混合装置30は溶剤又は燃料の混合気を燃焼器9内に供給することができる。そして混合気は燃焼器9内で点火され、開放された下面の出口から燃焼ガスとなってタービンのハウジング内に導かれる。また、燃料噴射手段8は、さらに水ノズル33(供給口を符号(Z)で示す)を有しており、ケース21の外部から溶剤を含む水が選択的に供給され、これによって予混合装置30は溶剤と水の混合気を燃焼器9内に供給することができる。
【0032】
図4において、前記予混合装置30は、前記パイロットノズル31が形成された中心軸34の外周囲に設けられた第1スワラー35と、第1スワラー35の外周に設けられた円筒状の第1壁体36と、第1壁体36の外周に設けられた第2スワラー37と、第2スワラー37の外周に設けられて第1壁体36と先端がほぼ揃った位置にある円筒状の第2壁体38と、第2壁体38の外周に設けられた第3スワラー39と、第3スワラー39の外周に設けられて第1及び第2壁体36,38の下端よりも下方に延設された下方部分の内径が縮小された円筒状の第3壁体40と、第3壁体40の下端外周に設けられた第4スワラー41と、第4スワラー41の外周に設けられて第3壁体40の下端を外挿する円筒状の第4壁体42とを有している。第4壁体42の下端は内径が縮小されて燃焼器9に連通している。
【0033】
前記各ノズルの前記予混合装置30における構造をさらに詳述する。
パイロットノズル31は、主に始動時の着火性を確保するために使用される。始動時は空気流量が少ないため、エアブラスト式のノズルでは微粒化が困難であるため、燃料圧力による微粒化(圧力式)を採用している。図4及び図5に示すように、まず中央のパイロットノズル31は、中心軸34の内部に軸線方向に形成された中心孔45と、中心軸34の下端に形成されて中心孔に連通する噴射孔46を有している。中心孔45の底部には、図5(a)に示すように、略円筒状で下面に円柱形の空洞が開口形成された密封ブロック47が配置されており、噴射孔46の上方に円筒形の渦巻き室48を区画している。密封ブロック47の最大外径は中心孔45の下部の内径に略一致しており、軸方向にスライド自在とされている。図5(b)に示すように、密封ブロック47の側面には4本の通孔49が回転方向90度間隔でそれぞれ接線方向に沿って形成され、渦巻き室48を中心孔45に連通させている。図5(c)に示すように、密封ブロック47の上部外周の一部には4箇所に切り欠き部50が形成され、中心孔45内に供給された燃料等がこの切り欠き部50を経て通孔49を通り、渦巻き室48に入れるように構成されている。この密封ブロック47は、中心棒51の下端によって中心孔45の底部に押さえつけられている。図4に示すように、中心棒51は付勢手段としてのばね52により密封ブロック47に向けて付勢されている。中心孔45の上部内面にはねじ部が設けられ、このねじ部には環状の固定ナット53がねじ込まれており、固定ナット53と中心棒51の間にある前記ばね52の付勢力を調整できるようになっている。
【0034】
以上の構成によれば、中心孔45の開口上端にある供給口(X)から導入された溶剤又は燃料は、中心棒51と中心孔45の内周面の間を通過し、密封ブロック47の切り欠き部50を経て通孔49を通り、渦巻き室48に入って渦巻き流を形成し、旋回しながら噴射孔46から円錐状に噴射されて微粒化される。
【0035】
図4に示すように、パイロットノズル31の外側にあるメインノズル32は、第1壁体36の厚みの中に軸線方向に沿って周方向に所定間隔で形成された複数本の通孔54と、各通孔54の下端を第1壁体36の内周面に連通開口させる噴射孔55と、各通孔54の上端を連通させる周溝56と、周溝56に溶剤等又は燃料を供給する供給口(Y)とを有している。
【0036】
以上の構成によれば、供給口(Y)から導入された溶剤又は燃料は、周溝56から各通孔54を経て噴射孔55から第1壁体36の内方に噴射される。噴射された溶剤又は燃料は、第1壁体36の内面や中心軸34の外周面に付着して薄い膜状となり、ここに第1スワラー35からの空気の旋回流が当たって微粒化される。微粒化されきれなかった分は、第3、第4の各壁体40,42に付着して薄い膜状になるとともに第2〜第4スワラー37,39,41からの空気の旋回流によって確実に微粒化されていく。そして、第4壁体42の下端の開口より火炎となって燃焼器9内に噴出される。
【0037】
図4に示すように、メインノズル32の外側にある水ノズル33は、溶剤を含む水の噴射専用であり、第3壁体40の厚みの中に軸線方向に沿って周方向に所定間隔で形成された通孔57と、通孔57の下端を周溝を介して第3壁体40の内周面に複数箇所で連通開口させる複数の噴射孔58と、通孔57の上端に連通する管路59と、管路59に溶剤を含んだ水を供給する供給口(Z)とを有している。
【0038】
以上の構成によれば、供給口(Z)から導入された溶剤を含む水は、管路59及び通孔57を経て噴射孔58から第3壁体40の内方に噴射される。噴射された溶剤又は燃料は、第2壁体38の内面に付着して薄い膜状となり、ここに第3スワラー39からの空気の旋回流が当たって微粒化される。微粒化されきれなかった分は、第3、第4の各壁体40,42に付着して薄い膜状になるとともに第2〜第4スワラー37,39,41からの空気の旋回流によって確実に微粒化されていく。そして、第4壁体42の下端の開口より火炎となって燃焼器9内に噴出される。
【0039】
以上の構成によれば、溶剤(燃料)噴射用にはパイロットノズル31とメインノズル32の2系統があり、溶剤を含む水用の水ノズル33は1系統で別になっている。従って、いずれの系統も良好な微粒化特性を得ることができる。図7は、従来の燃料噴射弁の断面図であるが、燃料と水が同一系統の供給路100に供給されるために燃料:水=1:1とすると燃料と水の合計量がおよそ2倍になるため微粒化が悪化する問題がある。本例にはこのような問題がない。
【0040】
以上の構成によれば、ケース21内に流入した空気は、予混合装置30で燃料や溶剤と十分に混合されて内筒22内に噴射され、燃料や溶剤は壁体上で薄膜に伸ばされてスワラーの旋回流で微粒化され、燃料や溶剤を好条件で燃焼させる。また、水ノズル33が噴射した溶剤を含んだ水も壁体上で膜状に引き伸ばされ、これがスワラーによる旋回流の作用を受けるので、水中に存在する溶剤も微粒化され、適正に燃焼される。
【0041】
また、燃焼器9は内筒22と外筒23の2重管構造になっているので、両筒22,23の間(空間S)に流入した空気は加熱した内筒22の外面に接触して予熱されつつ長い滞留時間を経て内筒22の内部に流入し、燃料又は溶剤による燃焼ガスと混合されてこれを希釈し、その温度を調節するが、内筒22内に流入した希釈用の空気は内筒22の熱によってすでに予熱された状態にあるので、内筒22における燃料及び溶剤の燃焼による分解反応は速やかに進行し、燃焼ガス中にTHC等の有害物質が増加することはない。
【0042】
4.本実施形態における駆動時の燃料切替等について
次に、本例の燃焼処理装置4の運転における燃料・溶剤等の切り替え制御等について説明する。まず、始動時には、第1電磁弁17を閉止し、第2電磁弁18を開放し、切替弁19を操作してパイロットノズル31の供給口(X)のみに燃料供給手段7から燃料を供給してパイロットノズル31のみから燃料のみを噴射し、パイロット燃焼を行う。
【0043】
その後、切替弁19を操作してパイロットノズル31の供給口(X)及びメインノズル32の供給口(Y)の両方に燃料供給手段7から燃料を供給してパイロットノズル31及びメインノズル32の両方から燃料のみを噴射し、燃料のみによるメイン燃焼を行う。
【0044】
この燃料のみによる燃焼は、ガスタービンの出力が例えば40%になるまで続行し、40%を越えたところで第2電磁弁18を閉止し、第1電磁弁17を開放し、パイロットノズル31の供給口(X)及びメインノズル32の供給口(Y)の両方に溶剤のみを供給してメイン燃焼を行う。本例で燃料として使用する溶剤は、製造工程1から排出されたものであるが、溶剤等処理手段6において適正に分離処理されて含有水分が少なくなっているため安定した燃焼ができる。
【0045】
また、ガスタービンの出力が例えば50%以上になったら、さらに第3電磁弁20を開いて溶剤を含んだ水を水ノズル33から噴射し、NOX 低減と水処理を行う。ここで噴射するのは水だけでなく、この水には適正な濃度の溶剤も含まれているので、燃焼器9内の燃焼温度が必要以上に低下することはなく、水による燃焼領域の火炎温度の低下を水に含まれる溶剤の熱量により防ぎ、火炎温度低下によりCO発生量が増加するのを防止することができる。このように、本例によれば、CO発生量を増加させることなく、NOX 低減を実現することができる。
【0046】
すなわち、図6に示すように、ガスタービンにおける水噴射量とCO発生量の関係をグラフに示すと、従来のように純水を使用した場合は、水噴射量に対してCO発生量は正比例の関係で増加していくが、本例で使用する溶剤を含む水によれば、水噴射量の増加に対してCO発生量はある時点で飽和し、CO発生量を抑制できることがわかる。
【0047】
そして、ガスタービンを停止する際には、始動時と同様にパイロットノズル31による燃料噴射のみに切り替える。完全に停止する場合には第2電磁弁18も閉止してパイロットノズル31からの燃料の噴射を停止する。
【0048】
5.本例の効果等
以上説明した本例によれば、製造工程1から出てくる溶剤や溶剤を含む水をそのまま燃料として用い、電力として回収することができる。また、溶剤を含む水の燃焼処理とともにNOX の排出も低減できる。また、溶剤や溶剤を含む水の臭いを脱臭することができる。さらに、廃熱回収ボイラの併用により熱の回収を行い、蒸気を得ることもできる。
【0049】
なお、以上説明した本例の燃焼処理装置4はガスタービン発電装置2の燃焼器9を兼ねていたが、熱源乃至動力源、電源としての機能は考慮せず、本発明を製造工程1から排出される溶剤等の不要物質(廃棄物)を処理する専用の処理装置として利用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る燃焼処理装置を含むガスタービン発電装置と、燃焼処理装置に溶剤等を供給する製造工程を模式的に示す全体構成図である。
【図2】図2は全体構成中における溶剤等処理手段の構成図である。
【図3】図3は本発明の実施形態に係る燃焼処理装置の断面図である。
【図4】図4は本発明の実施形態に係る燃焼処理装置の燃料噴射手段付近の拡大断面図である。
【図5】図5は燃料噴射手段の構造を示す横断面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態におおける効果の一例を示すグラフを表す図である。
【図7】図7は従来の燃料噴射弁の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 製造工程
2 ガスタービン装置としてのガスタービン発電装置
4 燃焼処置装置
6 溶剤等処理手段
7 燃料供給手段
8 燃料噴射装置
9 燃焼器
10 第1の容器
11 溶剤供給経路
13 第1循環路
14 第2の容器
15 第2循環路
16 溶剤を含んだ水供給経路
17 切換手段としての第1電磁弁
18 切換手段としての第2電磁弁
19 切換手段としての切替弁
20 切換手段としての第3電磁弁
22 内筒
23 外筒
24 貫通孔としての希釈孔
31 パイロットノズル
32 メインノズル
33 水ノズル
35 第1スワラー
36 第1壁体
37 第2スワラー
38 第2壁体
39 第3スワラー
40 第3壁体
41 第4スワラー
42 第4壁体
T タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスによりタービンを駆動するガスタービン装置に前記燃焼ガスを供給するための手段であって、
工業的製造工程から排出される溶剤を燃焼して燃焼ガスを生成することを特徴とする溶剤の燃焼処理装置。
【請求項2】
工業的製造工程から排出される水を含んだ溶剤を溶剤と水の異なる2層に分離すべく一時的に貯える第1の容器と、
第1の容器内で分離された溶剤の層から溶剤を前記燃焼処理装置に導く溶剤供給経路と、
第1の容器内で分離された水の層から溶剤を含む水を導出する第1循環路と、
第1循環路から供給される溶剤を含む水を2次的に貯えさらに分離するための第2の容器と、
第2の容器内の水の層から溶剤を含んだ水を前記燃焼処理装置に導く水供給経路と、
第2の容器内の溶剤の層から溶剤を導出して第1の容器に戻す第2循環路とを有する溶剤等処理手段を備えることを特徴とする請求項1記載の溶剤の燃焼処理装置。
【請求項3】
燃料供給手段と、
燃料又は溶剤が供給されて燃焼する燃焼器と、
前記溶剤等処理手段からの溶剤と前記燃料供給手段からの燃料が選択的に供給されるパイロットノズル及びメインノズルと、前記溶剤等処理手段からの溶剤を含んだ水が選択的に供給される水ノズルとを備え、前記燃焼器に燃料と溶剤と溶剤を含んだ水の少なくとも一つを噴射する燃料噴射手段と、
前記溶剤等処理手段からの溶剤及び溶剤を含んだ水と前記燃料供給手段からの燃料の前記燃料噴射手段への供給を切り替える切換手段と、
を有することを特徴とする請求項2記載の溶剤の燃焼処理装置。
【請求項4】
前記メインノズルが噴射した溶剤又は燃料と前記水ノズルが噴射した溶剤を含んだ水が付着して膜状に引き伸ばされる壁体と、壁体に付着した溶剤又は燃料と溶剤を含んだ水を微粒化するスワラーを有することを特徴とする請求項3記載の溶剤の燃焼処理装置。
【請求項5】
前記燃焼器が、
閉止された一端部側から燃料噴射手段を介して供給された燃料又は溶剤と空気の混合気を内部で燃焼させ、開放された他端部側から燃焼ガスを排出して前記タービンに供給する内筒と、
前記内筒の外側に間隔をおいて設けられ、前記内筒の一端部側には前記内筒との間に空気を取り入れるための間隙が設けられるとともに前記内筒の他端部側には前記内筒の周壁に固定された閉止部が設けられた外筒とを有し、
前記外筒の前記閉止部の内側にある前記内筒の周壁には前記内筒の内部に連通する貫通孔が設けられ、
前記間隙から流入した空気が前記内筒と前記外筒の間で加熱されてから前記貫通孔を介して前記内筒の内部に入るように構成されたことを特徴とする請求項3記載の溶剤の燃焼処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−185247(P2008−185247A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18181(P2007−18181)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(503116899)新潟原動機株式会社 (61)
【Fターム(参考)】