点火部品
【課題】中心電極を覆う絶縁碍子の絶縁破壊が生じ難い内燃機関用の点火部品を提供する。
【解決手段】中心電極30と、中心電極30の外周に配設された絶縁碍子32と、を備え、絶縁碍子32が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部33と、この大径部33よりも外径の小さい小径部34とを有する異径の柱状体からなり、絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に挿入され、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着される点火部品100。
【解決手段】中心電極30と、中心電極30の外周に配設された絶縁碍子32と、を備え、絶縁碍子32が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部33と、この大径部33よりも外径の小さい小径部34とを有する異径の柱状体からなり、絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に挿入され、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着される点火部品100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火部品に関する。更に詳しくは、中心電極を覆う絶縁碍子の絶縁破壊が生じ難い内燃機関用の点火部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の内燃機関において、燃料や燃料を含む混合ガスに点火する点火部品として、内燃機関用スパークプラグ(以下、単に「スパークプラグ」ともいう)が用いられている。この内燃機関用スパークプラグは、内燃機関シリンダーヘッド等に取り付けられ、その先端に高圧電気を印加して電気放電による着火を起こし、燃焼サイクルのきっかけを作るものである。
【0003】
例えば、内燃機関用のスパークプラグとしては、例えば、中心電極と、この中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、絶縁碍子の外周にカシメ固定された金属製ハウジングとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
このようなスパークプラグにおいては、上記金属製ハウジングの外周面に、内燃機関のシリンダーヘッドに装着するための取り付け用ネジ部が形成されている。このようなスパークプラグは、上記取り付け用ネジ部を用いて、内燃機関のシリンダーヘッドにねじ込み固定することによって装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−059077号公報
【特許文献2】特開2007−073224号公報
【特許文献3】特開2007−317448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、エンジンの小型化、また、補機類の多様化に伴い、スパークプラグを設置するスペースが小さくなっている。例えば、一般的な自動車のエンジンのシリンダーヘッドにおけるスパークプラグの設置スペースは、取り付け用ネジ部の基準寸法としてM14〜12のサイズ(有効直径として9.8〜11.8mm程度)となっている。このため、中心電極の外周に配設された絶縁碍子の厚さを十分に確保することができず、中心電極に高電圧をかけた場合に、絶縁碍子が絶縁破壊を生じてしまうという問題があった。
【0007】
また、今後、スパークプラグを設置するスペースの細径化は進むと考えられており、更に、上記絶縁破壊による問題が顕著となることが予想される。特に、従来のスパークプラグにおいては、内燃機関シリンダーヘッドに装着するためのネジ部を形成するために、絶縁碍子の外側に更に金属製ハウジングを配設している。このため、従来のスパークプラグにおいては、金属製ハウジングの厚さ分だけ、絶縁碍子の厚さが更に薄くなってしまっていた。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、中心電極を覆う絶縁碍子の絶縁破壊が生じ難い点火部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために、従来の点火部品(例えば、スパークプラグ)における金属製ハウジングのネジ部の螺合による装着方法を見直し、上記金属製ハウジングを用いることなく、点火部品の外周全体を絶縁碍子によって形成し、且つ、この絶縁碍子を、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入されるような形状のものとすることにより、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の点火部品が提供される。
【0010】
[1] 中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部と、前記大径部よりも外径の小さい小径部とを有する異径の柱状体からなり、前記絶縁碍子の前記大径部が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔に挿入され、前記絶縁碍子の前記大径部と前記小径部との段差部分が前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧されて固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品(以下、「第一の発明」ということがある)。
【0011】
[2] 前記絶縁碍子の前記段差部分を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧する絶縁碍子固定手段を更に備えた前記[1]に記載の点火部品。
【0012】
[3] 前記絶縁碍子固定手段が、前記小径部の外径よりも大きく且つ前記大径部の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔が形成された座金状の押さえ部材である前記[2]に記載の点火部品。
【0013】
[4] 中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、前記碍子本体の側面の一部が、前記碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有し、前記絶縁碍子の前記碍子本体が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部に、前記絶縁碍子の前記鍔部を前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させるようにして挿入され、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と前記内燃機関シリンダーヘッドとが固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品(以下、「第二の発明」ということがある)。
【0014】
[5] 前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、5mm以上である前記[4]に記載の点火部品。
【0015】
[6] 前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、前記鍔部の付根部から最外周部にかけて漸減し、前記鍔部の付根部から最外周部までの部分が、前記プラグ挿入孔に挿入される方向に垂直な面に対してテーパー状に形成されている[4]又は[5]に記載の点火部品。
【0016】
[7] 前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と、前記内燃機関シリンダーヘッドとを固定する絶縁碍子固定手段を更に備えた前記[4]〜[6]のいずれかに記載の点火部品。
【0017】
[8] 前記絶縁碍子固定手段が、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧して支持する押さえ部材である前記[7]に記載の点火部品。
【0018】
[9] 前記押さえ部材には、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとを締結するための締結部材が挿入される締結用貫通孔が更に形成され、前記押さえ部材の前記締結用貫通孔に前記締結部材が挿通され、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとが締結により固定される前記[3]又は[8]に記載の点火部品。
【0019】
[10] 前記締結部材が、前記貫通孔よりも大径の頭部と、前記頭部から延出され、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部と、を有する前記[9]に記載の点火部品。
【0020】
[11] 前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される部分における厚さが2mm以上である前記[1]〜[10]のいずれかに記載の点火部品。
【0021】
[12] 前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される先端部に、テーパー状の封止部が形成された前記[1]〜[11]のいずれかに記載の点火部品。
【発明の効果】
【0022】
本発明の点火部品は、中心電極の外周に配設された絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入されるように構成されている。即ち、本発明の点火部品は、従来の点火部品のような、内燃機関シリンダーヘッドに装着するためのネジ部が形成された金属製ハウジングを備えておらず、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に対して、柱状の絶縁碍子が直接挿入された状態で装着される。
【0023】
特に、第一の発明の点火部品は、中心電極と、中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部と、大径部よりも外径の小さい小径部とを有する異径の柱状体からなるものである。また、第二の発明の点火部品は、中心電極と、中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、碍子本体の側面の一部が、碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有するものである。
【0024】
このように構成された本発明の点火部品によれば、中心電極を覆う絶縁碍子の絶縁破壊を生じ難くすることができる。即ち、本発明の点火部品は、従来の点火部品と比較して、金属製ハウジングの厚さに相当する分だけ、絶縁碍子の厚さを厚くすることができる。このため、点火部品自体の大きさ、換言すれば、点火部品を設置するスペースの大きさを、従来の点火部品における大きさから変更することなく、絶縁碍子の耐電圧性を良好に向上させることができる。これにより、絶縁碍子の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0025】
本発明の点火部品に用いられる絶縁碍子は、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される部分が、柱状(例えば、円柱状)に形成されたものである。このため、本発明の点火部品においては、絶縁碍子とプラグ挿入孔との間の電界強度が均一化する。従って、絶縁碍子の絶縁破壊をより生じ難くすることができる。例えば、絶縁碍子の側面(即ち、外周面)にネジ部が形成され、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に螺合装着されるものの場合には、点火部品の中心電極に高電圧を印加した際に、ネジ部のネジ山の頂部と谷部とで、電界強度に差異が生じて、仮に絶縁碍子の厚さを厚くしたとしても、絶縁破壊の発生を抑制することは極めて困難である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明(第一の発明)の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明(第二の発明)の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図9】実施例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。
【図10】比較例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。
【図11】実施例1の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフである。
【図12】比較例1及び2の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0028】
(1)点火部品(第一の発明):
本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態の点火部品100は、図1〜図3に示すように、中心電極30と、中心電極30の外周に配設された絶縁碍子32と、を備え、絶縁碍子32が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部33と、この大径部33よりも外径の小さい小径部34とを有する異径の柱状体からなる点火部品100である。
【0029】
本実施形態の点火部品100は、絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に挿入され、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。
【0030】
ここで、図1は、本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。図3は、本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。なお、内燃機関シリンダーヘッド20、プラグ挿入孔21、及びプラグ挿入孔21の開口部22は、本実施形態の点火部品100の構成要素ではない。即ち、上記内燃機関シリンダーヘッド20等は、本実施形態の点火部品100を使用する内燃機関の一部である。また、図2においては、点火部品100が絶縁碍子固定手段36を更に備えた例を示す。
【0031】
本実施形態の点火部品100は、従来の点火部品のような、内燃機関シリンダーヘッドに装着させるための金属製ハウジングを備えていないものである。即ち、本実施形態の点火部品100は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に、絶縁碍子32の大径部33が直接挿入されることにより装着されるものである。
【0032】
更に、本実施形態の点火部品100の大径部33の側面33xには、ネジ山等のネジ部が形成されていない。このため、従来の点火部品のような、金属製ハウジングのネジ部の螺合によりシリンダーヘッドに装着されるものではない。勿論、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の内周面にも、ネジ山等のネジ部が形成されている必要はない。本実施形態の点火部品100は、上記絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に非螺合状態で挿入されることによって、内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。なお、「非螺合状態で挿入される」とは、ネジ等によって行われる螺合挿入時における回転を伴うことなく、被挿入物(具体的には、「絶縁碍子」)が、挿入方向に対して平行に挿入されることを意味する。「挿入方向」とは、点火部品100を、内燃機関シリンダーヘッドに装着させる際に、プラグ挿入孔21の開口部22に挿入する方向のことを意味する。従って、一方向に長い柱状の点火部品100においては、上記柱状の一方の端部(例えば、先端)から他方の端部(例えば、末端)に向かう方向が、挿入方向となる。
【0033】
このように構成された本実施形態の点火部品100によれば、中心電極30を覆う絶縁碍子32の絶縁破壊を生じ難くすることができる。即ち、本実施形態の点火部品100は、従来の点火部品と比較して、金属製ハウジングの厚さに相当する分だけ、絶縁碍子32の厚さを厚くすることができる。このため、点火部品100自体の大きさ、換言すれば、点火部品100を設置するスペースの大きさ(例えば、プラグ挿入孔21の開口部22の内径)を、従来の点火部品における大きさから変更することなく、絶縁碍子32の耐電圧性を良好に向上させることができる。これにより、絶縁碍子32の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0034】
また、上述したように、大径部33の側面33xには、ネジ山等のネジ部が形成されていないため、絶縁碍子32(より具体的には、「絶縁碍子32の大径部33」)とプラグ挿入孔21との間の電界強度が均一化する。即ち、ネジ山等のネジ部が形成されていない大径部33の側面33xと、同様にネジ部が形成されていないプラグ挿入孔21の内周面とが当接或いは僅かな隙間を空けた状態で、点火部品100が内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。従って、絶縁碍子32の絶縁破壊をより生じ難くすることができる。例えば、絶縁碍子32の側面(具体的には、大径部33の側面33x)にネジ部が形成され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に螺合挿入されるものの場合には、点火部品100の中心電極30に高電圧を印加した際に、ネジ部のネジ山の頂部と谷部とで、電界強度に差異が生じて、仮に絶縁碍子32の厚さを厚くしたとしても、絶縁破壊の発生を抑制することは極めて困難である。
【0035】
また、本実施形態の点火部品100においては、絶縁碍子32が大径部33と小径部34と有する異径の柱状体からなるため、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより、点火部品100が内燃機関シリンダーヘッド20に簡便に装着される。また、上述したように、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧する固定方法であれば、セラミック等の絶縁体からなる絶縁碍子32に破損等が生じ難い。プラグ挿入孔21に挿入された点火部品100と、内燃機関シリンダーヘッド20との固定方法については、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して固定することが可能な方法であれば、特に制限はない。
【0036】
本実施形態の点火部品100は、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧する絶縁碍子固定手段36を更に備えたものであってもよい。例えば、図3においては、上述した絶縁碍子固定手段36を更に備えた点火部品100の例を示している。図3においては、絶縁碍子固定手段36が、絶縁碍子32の小径部34の外径よりも大きく且つ大径部33の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔36aが形成された座金状の押さえ部材37である場合の例を示す。押さえ部材37としては、絶縁碍子32の段差部分35を、点火部品100の挿入方向に向けて押圧して支持する固定ブラケット(固定冶具)等を挙げることができる。このような押さえ部材37によれば、プラグ挿入孔21の開口部22よりも上方にて、絶縁碍子32と内燃機関シリンダーヘッド20とを固定させることができる。このような固定方法であれば、固定方法により、絶縁碍子32の大径部33の外形や厚さが制約を受けることがない。このため、絶縁碍子32の高い耐電圧性を良好に維持することができる。また、大径部33と小径部34との段差部分35が破損し難い。
【0037】
また、図4に示すように、絶縁碍子固定手段36が、押さえ部材38と、締結部材39とを有するものであってもよい。図4に示す押さえ部材38は、絶縁碍子32の小径部34の外径よりも大きく且つ大径部33の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔36aと、絶縁碍子32の挿入方向と平行な方向に貫通する締結用貫通孔38xが形成されたものである。また、締結部材39は、押さえ部材38の締結用貫通孔38xに挿通され、押さえ部材38と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結するものである。ここで、図4は、本発明の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0038】
図4に示す点火部品200においては、押さえ部材38が、締結部材39によって内燃機関シリンダーヘッド20と固定されることで、押さえ部材38によって絶縁碍子32の段差部分35が押圧されて、点火部品200が内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。上記構成を採用することによって、より確実で強固な固定を行うことができる。更に、点火部品200の装着時に掛かる絶縁碍子32に対する応力は、絶縁碍子32の段差部分35に対する押圧力のみとなる。このため、絶縁碍子32が、例えば、セラミック等の絶縁性材料からなるものであっても、装着時に掛かる応力による、段差部分35の割れや欠けの発生を有効に抑制することができる。
【0039】
上記締結部材39としては、押さえ部材38の締結用貫通孔38xよりも大径の頭部39aと、頭部39aから延出され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部39bと、有するボルト形状の締結部材39を挙げることができる。
【0040】
(2)点火部品(第二の発明):
本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態の点火部品300は、図5〜図7に示すように、中心電極10と、中心電極10の外周に配設された絶縁碍子12と、を備え、絶縁碍子12が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体13と、碍子本体13の側面13xの一部が、碍子本体13の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部14と、を有するものである。
【0041】
本実施形態の点火部品300は、絶縁碍子12の碍子本体13が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に、上記絶縁碍子12の鍔部14をプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させるようにして挿入され、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14と内燃機関シリンダーヘッド20とが固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。即ち、本実施形態の点火部品300は、これまでに説明した第一の発明の点火部品の実施形態における、絶縁碍子の大径部と小径部とにより形成される段差部分の代わりに、絶縁碍子を構成する柱状の碍子本体13に、その外径が大きくなるように突出した鍔部14が形成されたものである。
【0042】
ここで、図5は、本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図6は、本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。図7は、本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。なお、内燃機関シリンダーヘッド20、プラグ挿入孔21、及びプラグ挿入孔21の開口部22は、本実施形態の点火部品300の構成要素ではない。即ち、上記内燃機関シリンダーヘッド20等は、本実施形態の点火部品300を使用する内燃機関の一部である。また、図6においては、点火部品300が絶縁碍子固定手段16を更に備えた例を示す。
【0043】
本実施形態の点火部品300も、従来の点火部品のような、内燃機関シリンダーヘッドに装着させるための金属製ハウジングを備えていないものである。即ち、本実施形態の点火部品300は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に、碍子本体13が直接挿入されることにより装着されるものである。
【0044】
更に、本実施形態の点火部品300の碍子本体13の側面13xには、ネジ山等のネジ部が形成されていない。このため、従来の点火部品のような、金属製ハウジングのネジ部の螺合によりシリンダーヘッドに装着されるものではない。即ち、本実施形態の点火部品300は、絶縁碍子12の碍子本体13が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に非螺合状態で挿入されることによって、内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。なお、「非螺合状態で挿入される」とは、ネジ等によって行われる螺合挿入時における回転を伴うことなく、被挿入物(具体的には、「碍子本体」)が、挿入方向に対して平行に挿入されることを意味する。
【0045】
このように構成された本実施形態の点火部品300によれば、中心電極10を覆う絶縁碍子12の絶縁破壊を生じ難くすることができる。即ち、本実施形態の点火部品300は、従来の点火部品と比較して、金属製ハウジングの厚さに相当する分だけ、絶縁碍子12の厚さを厚くすることができる。このため、点火部品300自体の大きさ、換言すれば、点火部品300を設置するスペースの大きさ(例えば、プラグ挿入孔21の開口部22の内径)を、従来の点火部品における大きさから変更することなく、絶縁碍子12の耐電圧性を良好に向上させることができる。これにより、絶縁碍子12の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0046】
また、上述したように、碍子本体13の側面13xには、ネジ山等のネジ部が形成されていないため、絶縁碍子12(より具体的には、「碍子本体13」)とプラグ挿入孔21との間の電界強度が均一化する。従って、絶縁碍子12の絶縁破壊をより生じ難くすることができる。例えば、絶縁碍子12の側面(具体的には、碍子本体13の側面13x)にネジ部が形成され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に螺合挿入されるものの場合には、点火部品300の中心電極10に高電圧を印加した際に、ネジ部のネジ山の頂部と谷部とで、電界強度に差異が生じて、仮に絶縁碍子12の厚さを厚くしたとしても、絶縁破壊の発生を抑制することは極めて困難である。
【0047】
また、本実施形態の点火部品300においては、碍子本体13がプラグ挿入孔21の開口部22に挿入される際には、絶縁碍子12の鍔部14がプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接するため、碍子本体13が適切な深さまで良好に挿入されることとなる。即ち、鍔部14の外径は、プラグ挿入孔21の開口部22の内径よりも大きくなるように構成されている。このように、絶縁碍子12の鍔部14は、本実施形態の点火部品300における、プラグ挿入孔21への落ち込み防止のための部材にもなる。
【0048】
プラグ挿入孔21に挿入された点火部品300と、内燃機関シリンダーヘッド20との固定方法については、特に制限はない。即ち、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14と内燃機関シリンダーヘッド20とが固定されるものであればよい。
【0049】
本実施形態の点火部品300は、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14と、内燃機関シリンダーヘッド20とを固定する絶縁碍子固定手段16を更に備えたものであってもよい。例えば、図7においては、上述した絶縁碍子固定手段16を更に備えた点火部品300の例を示している。絶縁碍子固定手段16は、絶縁碍子貫通孔16aが形成された座金状の押さえ部材17である。この絶縁碍子固定手段16が、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を、内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持する。押さえ部材17としては、鍔部14の、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた面とは反対側の面を、点火部品300の挿入方向に向けて押圧して支持する固定ブラケット(固定冶具)等を挙げることができる。このような押さえ部材17によれば、プラグ挿入孔21の開口部22よりも上方にて、鍔部14と内燃機関シリンダーヘッド20とを固定させることができる。このような固定方法であれば、その固定方法により、碍子本体13の外形や厚さが制約を受けることがない。このため、絶縁碍子12の高い耐電圧性を良好に維持することができる。
【0050】
また、図8に示すように、絶縁碍子固定手段16が、押さえ部材18と、締結部材19とを有するものであってもよい。押さえ部材18は、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持するものである。この押さえ部材18には、絶縁碍子12の挿入方向と平行な方向に貫通する締結用貫通孔18xが形成されている。締結部材19は、押さえ部材18の締結用貫通孔18xに挿通され、押さえ部材18と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結するものである。ここで、図8は、本発明(第二の発明)の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0051】
図8に示す点火部品400においては、押さえ部材18が、締結部材19によって内燃機関シリンダーヘッド20と固定されることで、押さえ部材18によって支持された鍔部14が内燃機関シリンダーヘッド20に固定され、点火部品400が内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。上記構成を採用することによって、より確実で強固な固定を行うことができる。更に、点火部品400の装着時に掛かる、絶縁碍子12に対する応力は、鍔部14の一方の面(プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた面とは反対側の面)から、他方の面(プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた面)に向かう押圧力のみとなる。このため、絶縁碍子12(換言すれば、碍子本体13と鍔部14)が、例えば、セラミック等の絶縁性材料からなるものであっても、装着時に掛かる応力による、鍔部14の割れや欠けの発生を有効に抑制することができる。
【0052】
上記締結部材19としては、押さえ部材18の締結用貫通孔18xよりも大径の頭部19aと、頭部19aから延出され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部19bと、有するボルト形状の締結部材19を挙げることができる。
【0053】
(3)点火部品の構成:
以下、第一及び第二の発明の点火部品の各構成要素について、更に具体的に説明する。
【0054】
(3−1)中心電極:
図1〜図3に示すように、中心電極30は、絶縁碍子32の内燃機関側の先端から、その中心電極30の端部(以下、この端部を「先端部30a」という)が突出するように絶縁碍子32に内挿された略棒状の電極である。図1〜図3に示す点火部品100においては、絶縁碍子32の大径部33側の端部が、内燃機関側の先端である。第二の発明の点火部品に用いられる中心電極も、上記した第一の発明の点火部品に用いられる中心電極と同様に構成されたものを好適に用いることができる。
【0055】
中心電極30の他方の先端部は、絶縁碍子32の内燃機関側の端部と反対側の端部において、その端部(以下、この端部を「末端部30b」という)が突出するように配置され、ターミナル端子45(図6〜図8においては、ターミナル端子25)によって覆われている。「ターミナル端子」とは、プラグコードやダイレクトイグニッション等のプラグキャップが接続される端子のことである。
【0056】
中心電極30の形状については、上述したように、絶縁碍子32の一方の端部から他方の端部まで貫通する円柱状であることが好ましい。また、中心電極30を絶縁碍子32内に固定するために、中心電極30の長手方向(挿入方向)の一部に段差が設けされていてもよい。
【0057】
中心電極30が円柱状である場合には、中心電極30の外径が0.5〜4.0mmであることが好ましく、1.0〜3.5mmであることが更に好ましい。このような外径の中心電極10とすることで、放電を強くすることができる。例えば、中心電極10の外形が0.5mm未満であると、中心電極の固定が困難で、且つ放電が弱くなることがある。中心電極10の外形が4.0mm超であると、絶縁碍子の厚さが相対的に薄くなってしまう。
【0058】
中心電極30の材質については特に制限はない。中心電極30の材質としては、従来公知の点火部品の中心電極と同様の材質のものを好適例として挙げることができる。具体的には、例えば、中心電極30の内材としては、銅や、銅を含有する合金等を挙げることができる。中心電極30の外材としては、Ni基合金等を挙げることができる。
【0059】
中心電極30の先端部30aの形状は、単独或いは複数の針状であることが好ましい。このように構成することによって、放電を強くすることができる。この先端部30aは、絶縁碍子32の端部から、少なくとも1.0mm突出していることが好ましい。
【0060】
中心電極30の末端部30bは、絶縁碍子32の端部から、少なくとも5mm突出していることが好ましい。末端部30bは、点火部品100に電圧を印加する電源(図示せず)と、電気配線等により電気的に接続される。
【0061】
従来の点火部品においては、中心電極から放電を生じさせるための対向電極(接地電極ともいう)を有しているが、本実施形態の点火部品においては、その外周部分が、絶縁性材料からなる絶縁碍子によって構成されているため(換言すれば、金属製ハウジング等を備えていないため)、対向電極が必要な場合には、内燃機関のシリンダーヘッドの燃焼室内に、上記対向電極に相当する電極を配置してもよい。
【0062】
(3−2)絶縁碍子:
図1〜図3に示すように、絶縁碍子32は、中心電極30を内挿して保持して、点火部品100における外周部分を構成するものである。絶縁碍子32は、電気絶縁性を有する材料から形成されたものである。
【0063】
第一の発明の実施形態の点火部品に用いられる絶縁碍子32は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部33と、この大径部33よりも外径の小さい小径部34とを有する異径の柱状体からなるものである。絶縁碍子32を構成する大径部33と小径部34とは、上述した電気絶縁性を有する材料を一体成形することにより形成されたもの(即ち、大径部33と小径部34とが一体であるもの)であることが好ましい。点火部品100は、絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に挿入され、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。即ち、上記段差部分35が、点火部品100を固定する際に応力が加えられる部分となる。
【0064】
絶縁碍子32の大径部33は、プラグ挿入孔21に挿入可能な、柱状の電気絶縁性部材である。大径部33の挿入方向に垂直な断面の形状は、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。大径部33の挿入方向に垂直な断面の形状としては、円形、多角形であることが好ましい。なお、多角形の場合には、少なくとも六角形以上の多角形であることが更に好ましい。
【0065】
大径部33の外径については、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。大径部33の挿入方向に垂直な断面の形状が円形である場合には、その直径(外径)が、10〜14mmであることが好ましく、12〜14mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、既存の自動車等のエンジンに使用される点火部品との互換性を得ることができる。即ち、点火部品が装着されるエンジン側において、大きな仕様変更(例えば、プラグ挿入孔の形状変更等)を行わずに、本実施形態の点火部品を使用することが可能となる。大径部33は、少なくともプラグ挿入孔21に挿入される部位における直径が一定の大きさのものであることがより好ましい。
【0066】
大径部33の挿入方向の長さ(以下、単に「大径部33の長さ」ということがある)についても特に制限はない。但し、大径部33の長さは、プラグ挿入孔21に絶縁碍子32を挿入した際に、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が、プラグ挿入孔21が形成された内燃機関シリンダーヘッド20の表面と同じ又は近い位置となるような長さであることが好ましい。このように構成することによって、点火部品100の固定が容易になる。
【0067】
小径部34は、絶縁碍子32を内燃機関シリンダーヘッド20に固定するための上記段差部分35を形成するための部位であり、大径部33よりも外径が小さく構成されたものであれば、その形状等については特に制限はない。
【0068】
絶縁碍子32の挿入方向の長さ(以下、単に「絶縁碍子の長さ」ともいう)は、点火部品100を設置するスペース内に収納される長さとすることが好ましい。なお、「絶縁碍子の長さ」とは、絶縁碍子32の大径部33の先端から小径部34の末端までの長さまでの長さのことをいう。例えば、絶縁碍子32の長さは、40〜120mmであることが好ましく、45〜100mmであることが更に好ましい。
【0069】
大径部33の厚さについては、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。大径部33の厚さは、プラグ挿入孔21とのクリアランスを考慮し、中心電極10を内挿して保持した状態で、プラグ挿入孔21の開口部22に挿入可能な厚さとすることが好ましい。即ち、開口部22の開口径をR1(mm)とし、中心電極10の直径をr1(mm)とし、プラグ挿入孔21とのクリアランスをa(mm)とした場合には、大径部33の厚さT(mm)は、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。なお、大径部33自体がプラグ挿入孔21の内面に密着して燃焼圧を封止することから、プラグ挿入孔21とのクリアランスaは極力小さいものであることが好ましく、大径部33をプラグ挿入孔21の開口部22に隙間なく挿入することができるのであれば、上記クリアランスを設けなくともよい。例えば、クリアランスaが、0≦a≦0.1の範囲であることが好ましい。上記大径部33の厚さT(mm)は、プラグ挿入孔21内に実際に挿入される部分における厚さである。
厚さT={(R1−r1)/2}−a ・・・ (1)
【0070】
絶縁碍子のプラグ挿入孔に挿入される部分における厚さ(換言すれば、大径部の厚さ)が2mm以上であることが好ましい。
【0071】
一方、図5〜図7に示すように、第二の発明の実施形態の点火部品300に用いられる絶縁碍子12は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体13と、碍子本体13の側面13xの一部が、碍子本体13の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部14と、を有するものである。絶縁碍子12を構成する碍子本体13と鍔部14とは、上述した電気絶縁性を有する材料を一体成形することにより形成されたものであることが好ましい。即ち、碍子本体13と鍔部14とは、それぞれ別々の構成要素であるが、1つの電気絶縁性部材として形成されたものであってもよい。勿論、碍子本体13の側面の一部に、碍子本体13の外径よりもその外径が大きな鍔部14を配設することによって絶縁碍子12を形成してもよい。
【0072】
碍子本体13は、プラグ挿入孔21に挿入可能な、柱状の電気絶縁性部材である。碍子本体13における鍔部14が形成されている部位から先端側が、プラグ挿入孔21に挿入される部分となる。碍子本体13の挿入方向に垂直な断面の形状は、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。碍子本体13の挿入方向に垂直な断面の形状としては、円形、多角形であることが好ましい。なお、多角形の場合には、少なくとも六角形以上の多角形であることが更に好ましい。
【0073】
碍子本体13の外径については、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。碍子本体13の挿入方向に垂直な断面の形状が円形である場合には、その直径(外径)が、10〜14mmであることが好ましく、12〜14mmであることが更に好ましい。このように構成することによって、既存の自動車等のエンジンに使用される点火部品との互換性を得ることができる。即ち、点火部品が装着されるエンジン側において、大きな仕様変更(例えば、プラグ挿入孔の形状変更等)を行わずに、本実施形態の点火部品を使用することが可能となる。なお、碍子本体13は、少なくともプラグ挿入孔21に挿入される部位における直径が一定の大きさのものであることがより好ましい。
【0074】
碍子本体13の挿入方向の長さ(以下、単に「碍子本体13の長さ」ということがある)についても特に制限はない。但し、碍子本体13の長さは、碍子本体13における鍔部14が形成されている部位から先端側までの長さが、少なくともプラグ挿入孔21を貫通する長さとする。また、碍子本体13の鍔部14が形成された部位から末端側については、点火部品300を設置するスペース内に収納される長さとすることが好ましい。なお、「碍子本体13の長さ」とは、碍子本体13の先端(即ち、中心電極10の先端部10aが露出する端部)から、碍子本体13の末端(即ち、中心電極10の末端部10bが露出する端部)までの長さのことをいう。例えば、碍子本体13の長さは、40〜120mmであることが好ましく、45〜100mmであることが更に好ましい。
【0075】
碍子本体13の厚さについても、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。碍子本体13の厚さは、第一の発明の実施形態の点火部品における大径部の厚さと同様の厚さにすることが好ましい。例えば、絶縁碍子のプラグ挿入孔に挿入される部分における厚さが2mm以上であることが好ましい。
【0076】
また、内燃機関からの圧縮漏れを防止する対策として、上述した鍔部のプラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、鍔部の付根部から最外周部にかけて漸減し、鍔部の付根部から最外周部までの部分が、プラグ挿入孔に挿入される方向に垂直な面に対してテーパー状に形成されていてもよい。このように、鍔部の内燃機関側の面をテーパー状に形成することにより、内燃機関からの圧縮漏れを有効に防止することができる。
【0077】
また、第一及び第二の発明の実施形態の点火部品の絶縁碍子は、その先端部に、テーパー状の封止部が形成されたものであってもよい。このような封止部が形成されたものとすることにより、内燃機関からの圧縮漏れを有効に防止することができる。
【0078】
また、第一及び第二の発明の実施形態の点火部品の絶縁碍子は、先端部分及び末端部分の少なくとも一方に、襞状のコルゲーションが形成されたものであることが好ましい。このようなコルゲーションが形成されたものとすることにより、絶縁碍子の沿面距離を稼ぐことができる。即ち、襞状のコルゲーションにより、絶縁碍子の挿入方向の表面距離が大きくなり、例えば、正極と陰極との間の沿面放電電圧を上げることが可能となる。
【0079】
図1〜図3に示す点火部品100、及び図5〜図7に示す点火部品300においても、絶縁碍子の末端部分(電源ケーブル結合部付近)に、上記襞状のコルゲーションを形成することにより、沿面距離を稼いでいる。なお、第一及び第二の発明の実施形態の点火部品は、従来の点火部品において使用される電圧よりもはるかに高電圧を適用することが可能であるため、上述したコルゲーションが形成された部分を、比誘電率の低い材料、例えば、市販のシリコーン樹脂等を用いて被覆することにより、更にコルゲーションが形成された部分の絶縁性を強化することが好ましい。
【0080】
コルゲーションが形成された部分を比誘電率の低い材料により被覆することにより、その絶縁性が強化される理由としては、以下のことが考えられる。沿面放電し易さは、その部材を構成する材料の比誘電率の大きさに比例する。例えば、絶縁碍子がアルミナから形成されたものの場合には、その比誘電率が約10である。それに対し、シリコーン樹脂においては、その比誘電率が約3である。このため、シリコーン樹脂等の比誘電率の低い材料によりコルゲーションが形成された部分を被覆することにより、絶縁性を強化することができる。比誘電率の低い材料としては、上記のシリコーン樹脂に限定されることはなく、比誘電率が低く且つ所望の耐熱性を有する材料であれば、例えば、フッ素樹脂(比誘電率が約2)やエポキシ樹脂(比誘電率が約3)を用いることもできる。被覆する材料の耐熱性については、点火部品を使用する環境に応じたものであればよい。例えば、点火部品をエンジンに使用する場合には、被覆する材料が200℃前後の耐熱性を有していればよい。なお、沿面距離を稼ぐための別の方法としては、絶縁碍子の長さを長くすることも考えられる。但し、その際には、絶縁碍子が長くなることによって、絶縁碍子の強度が低下することがあったり、中心電極を内挿するための貫通孔の形成が困難になったりすることがある。
【0081】
図5〜図7に示すように、絶縁碍子12の鍔部14は、碍子本体13の側面の一部において、碍子本体13の外径が、その他の部位よりも大きくなるように突出した部位のことである。上述したように、碍子本体13と鍔部14とは、それぞれ別々の構成要素であるが、1つの電気絶縁性部材として形成されたものであってもよいし、碍子本体13の外径よりもその外径が大きな鍔部14が、柱状の碍子本体13の側面に配設されたものであってもよい。絶縁碍子12の強度的な観点から、碍子本体13と鍔部14とは、1つの電気絶縁性部材として形成されたものであることが好ましい。
【0082】
鍔部14は、絶縁碍子12(換言すれば、点火部品300)が、プラグ挿入孔21に所定の深さまで挿入され、それ以降の落ち込みを防止するための落下防止用の部位にもなる。このことから、鍔部14の外径は、碍子本体13の外径よりも大きく、且つ、プラグ挿入孔21の開口部22の開口径よりも大きなものとすることが好ましい。鍔部14の外径は、プラグ挿入孔21の開口部22の開口径よりも、5〜20mm大きいことが好ましく、10〜15mm大きいことが更に好ましい。例えば、鍔部14の外径が小さすぎると、プラグ挿入孔21の開口部22の周囲に鍔部14が良好に係止せず、絶縁碍子12の保持が困難になることがある。一方、鍔部14の外径が大きすぎると、点火部品を設置するためのスペースを必要以上に要することとなる。
【0083】
鍔部14の、点火部品300の挿入方向における長さ(以下、「鍔部14の厚さ」ということがある)についても特に制限はない。鍔部14の厚さは、鍔部14の機械的強度の観点から、少なくとも3mm以上であることが好ましく、4mm以上であることが更に好ましく、5mm以上であることが特に好ましい。また、点火部品300の小型化の観点から、鍔部14の厚さは、3〜8mmとしてもよく、更に4〜6mmとしてもよい。
【0084】
鍔部14が形成される位置は、碍子本体13の先端側から挿入方向の長さの30〜60%の範囲であることが好ましい。このように構成することによって、プラグ挿入孔21に挿入される部位を良好に確保しつつ、内燃機関シリンダーヘッド20から突出する末端側部分を、設置スペース内にコンパクトに収納することができる。
【0085】
絶縁碍子の材料については、電気絶縁性を有する材料であれば、特に制限はない。例えば、アルミナ基焼結材料等を挙げることができる。
【0086】
(3−3)絶縁碍子固定手段:
本実施形態の点火部品は、絶縁碍子を内燃機関シリンダーヘッドに固定するための絶縁碍子固定手段を更に備えたものであってもよい。絶縁碍子固定手段は、絶縁碍子を固定する固定冶具である。第一及び第二の発明の実施形態(点火部品)における絶縁碍子の構成に応じて、適切な固定を実現する固定手段を適宜選択することができる。
【0087】
図3においては、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧する絶縁碍子固定手段36を更に備えた場合の例を示している。絶縁碍子固定手段36は、絶縁碍子32の小径部34の外径よりも大きく且つ大径部33の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔36aが形成された座金状の押さえ部材37からなるものである。
【0088】
また、図7においては、絶縁碍子32の鍔部14と、内燃機関シリンダーヘッド20とを固定する絶縁碍子固定手段16を更に備えた場合の例を示している。絶縁碍子固定手段16は、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を、内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持する押さえ部材17からなるものである。
【0089】
また、図4に示すように、絶縁碍子固定手段36を構成する押さえ部材38としては、この押さえ部材38と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結するための締結部材39が挿入される締結用貫通孔38xが更に形成されたものであってもよい。押さえ部材38の締結用貫通孔38xに締結部材39が挿通され、押さえ部材38と内燃機関シリンダーヘッド20とが締結により固定される。
【0090】
また、図8に示すように、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持し、且つ絶縁碍子12の挿入方向と平行な方向に貫通する締結用貫通孔18xが形成された押さえ部材18であってもよい。このような押さえ部材18においても、押さえ部材18の貫通孔18xに、締結部材19が挿通され、押さえ部材18と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結により固定される。
【0091】
押さえ部材の材質としては、鉄系材料、ステンレス鋼、アルミ合金等を挙げることができる。また、締結部材としては、図4及び図8に示すように、頭部19aとネジ部19bと有するボルト形状の締結部材19を挙げることができる。
【0092】
本実施形態の点火部品に用いられる絶縁碍子固定手段は、上述した押さえ部材等の固定冶具に限定されることはなく、絶縁碍子と、内燃機関シリンダーヘッドとを固定可能なものであればよい。なお、絶縁碍子を固定した際に、絶縁碍子の大径部と小径部との段差部分や絶縁碍子の鍔部が、割れや欠け等の破損を生じないようにするため、絶縁碍子の一部(例えば、上記段差部分や鍔部)を押圧して支持する固定方法を用いた絶縁碍子固定手段であることがより好ましい。例えば、固定時において、碍子本体の側面の一部が突出した鍔部の根元部分に剪断応力が掛かるような固定方法よりも、鍔部の厚さ方向に圧縮応力が掛かるような固定方法がより好ましい。
【0093】
(4)点火部品の製造方法:
次に、本実施形態の点火部品を製造方法について、図5〜図7に示す点火部品300を製造する方法の例に説明する。
【0094】
まず、アルミナ等のセラミック材料を用いて、各種プレス成型法により、柱状の成形本体(後に、碍子本体となる成形体)と、この成形本体の側面の一部が、成形本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する成形体を作製する。柱状の成形本体には、その中心軸方向に貫通する貫通孔を形成する。この成形本体の貫通孔に、点火部品の中心電極が配設されることとなる。
【0095】
次に、この成形体を焼成して、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、碍子本体の側面の一部が、碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する絶縁碍子を得る。図1〜図3に示す点火部品100の絶縁碍子も同様の方法により形成することができる。
【0096】
また、絶縁碍子の作製とは別に、点火部品の中心電極を作製する。中心電極の作製方法としては、中心電極を形成するための導電性材料を、所定の形状に成形して中心電極の内材部分と外材部分を作成し、その後、これらを組み合わせて押出成形することにより複合電極(中心電極)を作製する方法を挙げることができる。中心電極を形成するための導電性材料としては、従来公知の点火部品の中心電極と同様の材質を用いることができ、耐熱ニッケル合金と銅、又は耐熱ニッケル合金と銅合金等を挙げることができる。また、上記導電性材料としては、ニッケル合金、貴金属、又は導電性セラミック等を用いることもできる。
【0097】
次に、得られた絶縁碍子の一方の端部から他方の端部まで貫通する貫通孔に、上記中心電極を配設することによって、本実施形態の点火部品を製造することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
まず、絶縁碍子を作製するためのセラミック材料を調製した。セラミック材料としては、アルミナを用いた。
【0100】
次に、得られたセラミック材料を用いて、プレス成型法により、円柱状の成形本体と、この成形本体の側面の一部が、成形本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する成形体を作製した。また、円柱状の成形本体には、その中心軸方向に貫通する貫通孔を形成した。次に、得られた成形体を、1500℃で5時間焼成して、柱状の碍子本体と、碍子本体の側面の一部が、碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する絶縁碍子を作製した。
【0101】
絶縁碍子の碍子本体の挿入方向の長さは、90mmであり、碍子本体の外径は13mmであった。碍子本体は、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に挿入される箇所にネジ部等の螺合による接合部分を有しておらず、上記プラグ挿入孔に挿入される30mmの範囲において、その外径が均一の円柱状に形成されたものであった。プラグ挿入孔に挿入される範囲における碍子本体の厚さは5mmであった。
【0102】
また、絶縁碍子の鍔部は、碍子本体の先端側から30mmの位置に形成されたものであった。鍔部の外径は17mmであり、鍔部の挿入方向の長さ(厚さ)は5mmであった。
【0103】
上記絶縁碍子とは別に、耐熱ニッケル合金と銅を所定の形状に成形して、中心電極の内材部分と外材部分を作製した。その後、得られた内材部分と外材部分とを組み合わせ押出成形して複合電極を成形した。得られた複合電極を、実施例1の点火部品の中心電極とした。中心電極の外径は3mmであり、長さは97mであった。
【0104】
絶縁碍子の碍子本体の貫通孔内に、得られた中心電極を配設して、実施例1の点火部品を作製した。
【0105】
実施例1の点火部品について、以下の方法により、「絶縁破壊による破損評価」と、「電界強度評価」とを行った。
【0106】
[絶縁破壊による破損評価]
点火部品の碍子本体を、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に挿入し、その点火部品を内燃機関シリンダーヘッドに装着した。プラグ挿入孔の開口径は、13mmである。実施例1の点火部品においては、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に、点火部品の碍子本体を非螺合状態で挿入した。その後、点火部品の中心電極に、20k〜50kVの電圧を印加して、点火部品の中心電極の先端部にて、電気放電を生じさせた。その後、実施例1の点火部品を、内燃機関シリンダーヘッドから取り外し、碍子本体の破損状態を目視にて確認した(絶縁破壊による破損評価)。
【0107】
[電界強度評価]
実施例1の点火部品を、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に、非螺合状態で挿入し、5kV〜40kVの電圧を印加した場合の、点火部品と内燃機関シリンダーヘッドとの間の電界強度についての評価を行った。プラグ挿入孔の開口径は、14mmとした。評価方法としては、実施例1の点火部品を内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に挿入した状態と同じ2D軸対称モデルを作成し、この2D軸対称モデルの静電界を計算した。2D軸対称モデルは、図9に示すように、2D軸対称モデルの対称軸Lを対象として、厚さ2.9mmの碍子本体13を挟んで、中心電極10(高電圧側)と内燃機関シリンダーヘッド20(0V側)とが対向配置されたモデルである。ここで、図9は、実施例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。図9においては、2D軸対称モデルの対称軸Lの片側の図面を示す。上記静電界の計算に際しては、碍子本体13の軸Lの方向の中央部分における電界強度を求めた。得られた結果を図11に示す。図11は、実施例1の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフであり、横軸が「碍子本体の厚さ(mm)」を示し、縦軸が「電界強度(V/m)」を示す。
【0108】
(比較例1)
実施例1の絶縁碍子の作製に使用したセラミック材料と同様に調製されたセラミック材料を用いて、碍子本体の側面にネジ部が形成された絶縁碍子を作製した。比較例1にて作製した絶縁碍子は、絶縁碍子の形状を以下のようにし、且つ、碍子本体の側面に以下のようなネジ部を形成した以外は、実施例1と同様の形状である。
【0109】
比較例1の絶縁碍子は、碍子本体の挿入方向の長さが90mmであり、碍子本体の外径が13mmであった。また、この絶縁碍子は、プラグ挿入孔に挿入される30mmの範囲において、碍子本体の側面にネジ部が形成されたものであった。ネジ部は、ネジ山の高さが0.7mm、ネジ山のピッチが0.7mm、ネジ山の角度が60°、ネジ山の頂部の尖端Rが50μmであった。また、碍子本体の厚さが、ネジ山の頂部において3.9mmであり、ネジ山の谷部で3.2mmであった。
【0110】
得られた絶縁碍子に、実施例1の中心電極と同様の方法で作製された中心電極を配設して、比較例1の点火部品を作製した。比較例1の点火部品について、実施例1と同様の方法で、「絶縁破壊による破損評価」を行った。比較例1の「絶縁破壊による破損評価」においては、点火部品を装着する内燃機関シリンダーヘッドとして、プラグ挿入孔の内面に、碍子本体のネジ部に螺合するネジ部が形成されたものを用いた。
【0111】
また、比較例1の点火部品の「電界強度評価」を行った。まず、比較例1の点火部品の2D軸対称モデルを作成し、この2D軸対称モデルの静電界を計算した。2D軸対称モデルは、図10に示すように、2D軸対称モデルの対称軸Lを対象として、上述したネジ部が形成された碍子本体513を挟んで、中心電極510(高電圧側)と内燃機関シリンダーヘッド520(0V側)とが対向配置されたモデルである。ここで、図10は、比較例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。図10においては、2D軸対称モデルの対称軸Lの片側の図面を示す。上記静電界の計算に際しては、碍子本体513の軸Lの方向の中央部分における電界強度を求めた。得られた結果を図12に示す。図12は、比較例1及び2の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフであり、横軸が「碍子本体の厚さ(mm)」を示し、縦軸が「電界強度(V/m)」を示す。
【0112】
(比較例2)
碍子本体の側面に形成したネジ部のネジ山の頂部の尖端Rを100μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法で、点火部品を作製した。得られた点火部品について、比較例1と同様の方法で、「絶縁破壊による破損評価」及び「電界強度評価」を行った。電界強度評価の結果を図12に示す。
【0113】
(結果)
碍子本体にネジ部を形成した比較例1及び2の点火部品は、中心電極に高電圧をかけた場合に、ネジ部の谷部において破損が生じた。具体的には、ネジ部の谷部に、アーク電流が流れた痕跡(アーク痕)が確認された。また、図11及び図12に示すように、比較例1及び2の点火部品は、実施例1の点火部品と比較して電界強度が約2倍となっていた。碍子本体にネジ部を形成した場合には、ネジ部の谷部が鋭角に形成されているため、電界が集中し、電界強度が強くなると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の点火部品は、内燃機関の着火装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
10:中心電極、10a:先端部(中心電極の先端部)、10b:末端部(中心電極の末端部)、12:絶縁碍子、13:碍子本体、13x:側面、14:鍔部、16:絶縁碍子固定手段、16a:絶縁碍子貫通孔、17,18:押さえ部材、18x:締結用貫通孔(押さえ部材の締結用貫通孔)、19:締結部材、19a:頭部、19b:ネジ部、20:内燃機関シリンダーヘッド、21:プラグ挿入孔、22:開口部(プラグ挿入孔の開口部)、25:ターミナル端子、30:中心電極、30a:先端部(中心電極の先端部)、30b:末端部(中心電極の末端部)、32:絶縁碍子、33:大径部、33x:側面、34:小径部、35:段差部分(大径部と小径部との段差部分)、36:絶縁碍子固定手段、36a:絶縁碍子貫通孔、37,38:押さえ部材、38x:締結用貫通孔(押さえ部材の締結用貫通孔)、39:締結部材、39a:頭部、39b:ネジ部、45:ターミナル端子、100,200,300,400:点火部品、510:中心電極、513:碍子本体、520:内燃機関シリンダーヘッド、L:対象軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火部品に関する。更に詳しくは、中心電極を覆う絶縁碍子の絶縁破壊が生じ難い内燃機関用の点火部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の内燃機関において、燃料や燃料を含む混合ガスに点火する点火部品として、内燃機関用スパークプラグ(以下、単に「スパークプラグ」ともいう)が用いられている。この内燃機関用スパークプラグは、内燃機関シリンダーヘッド等に取り付けられ、その先端に高圧電気を印加して電気放電による着火を起こし、燃焼サイクルのきっかけを作るものである。
【0003】
例えば、内燃機関用のスパークプラグとしては、例えば、中心電極と、この中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、絶縁碍子の外周にカシメ固定された金属製ハウジングとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
このようなスパークプラグにおいては、上記金属製ハウジングの外周面に、内燃機関のシリンダーヘッドに装着するための取り付け用ネジ部が形成されている。このようなスパークプラグは、上記取り付け用ネジ部を用いて、内燃機関のシリンダーヘッドにねじ込み固定することによって装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−059077号公報
【特許文献2】特開2007−073224号公報
【特許文献3】特開2007−317448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、エンジンの小型化、また、補機類の多様化に伴い、スパークプラグを設置するスペースが小さくなっている。例えば、一般的な自動車のエンジンのシリンダーヘッドにおけるスパークプラグの設置スペースは、取り付け用ネジ部の基準寸法としてM14〜12のサイズ(有効直径として9.8〜11.8mm程度)となっている。このため、中心電極の外周に配設された絶縁碍子の厚さを十分に確保することができず、中心電極に高電圧をかけた場合に、絶縁碍子が絶縁破壊を生じてしまうという問題があった。
【0007】
また、今後、スパークプラグを設置するスペースの細径化は進むと考えられており、更に、上記絶縁破壊による問題が顕著となることが予想される。特に、従来のスパークプラグにおいては、内燃機関シリンダーヘッドに装着するためのネジ部を形成するために、絶縁碍子の外側に更に金属製ハウジングを配設している。このため、従来のスパークプラグにおいては、金属製ハウジングの厚さ分だけ、絶縁碍子の厚さが更に薄くなってしまっていた。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、中心電極を覆う絶縁碍子の絶縁破壊が生じ難い点火部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記のような従来技術の課題を解決するために、従来の点火部品(例えば、スパークプラグ)における金属製ハウジングのネジ部の螺合による装着方法を見直し、上記金属製ハウジングを用いることなく、点火部品の外周全体を絶縁碍子によって形成し、且つ、この絶縁碍子を、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入されるような形状のものとすることにより、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の点火部品が提供される。
【0010】
[1] 中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部と、前記大径部よりも外径の小さい小径部とを有する異径の柱状体からなり、前記絶縁碍子の前記大径部が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔に挿入され、前記絶縁碍子の前記大径部と前記小径部との段差部分が前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧されて固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品(以下、「第一の発明」ということがある)。
【0011】
[2] 前記絶縁碍子の前記段差部分を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧する絶縁碍子固定手段を更に備えた前記[1]に記載の点火部品。
【0012】
[3] 前記絶縁碍子固定手段が、前記小径部の外径よりも大きく且つ前記大径部の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔が形成された座金状の押さえ部材である前記[2]に記載の点火部品。
【0013】
[4] 中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、前記碍子本体の側面の一部が、前記碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有し、前記絶縁碍子の前記碍子本体が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部に、前記絶縁碍子の前記鍔部を前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させるようにして挿入され、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と前記内燃機関シリンダーヘッドとが固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品(以下、「第二の発明」ということがある)。
【0014】
[5] 前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、5mm以上である前記[4]に記載の点火部品。
【0015】
[6] 前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、前記鍔部の付根部から最外周部にかけて漸減し、前記鍔部の付根部から最外周部までの部分が、前記プラグ挿入孔に挿入される方向に垂直な面に対してテーパー状に形成されている[4]又は[5]に記載の点火部品。
【0016】
[7] 前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と、前記内燃機関シリンダーヘッドとを固定する絶縁碍子固定手段を更に備えた前記[4]〜[6]のいずれかに記載の点火部品。
【0017】
[8] 前記絶縁碍子固定手段が、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧して支持する押さえ部材である前記[7]に記載の点火部品。
【0018】
[9] 前記押さえ部材には、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとを締結するための締結部材が挿入される締結用貫通孔が更に形成され、前記押さえ部材の前記締結用貫通孔に前記締結部材が挿通され、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとが締結により固定される前記[3]又は[8]に記載の点火部品。
【0019】
[10] 前記締結部材が、前記貫通孔よりも大径の頭部と、前記頭部から延出され、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部と、を有する前記[9]に記載の点火部品。
【0020】
[11] 前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される部分における厚さが2mm以上である前記[1]〜[10]のいずれかに記載の点火部品。
【0021】
[12] 前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される先端部に、テーパー状の封止部が形成された前記[1]〜[11]のいずれかに記載の点火部品。
【発明の効果】
【0022】
本発明の点火部品は、中心電極の外周に配設された絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入されるように構成されている。即ち、本発明の点火部品は、従来の点火部品のような、内燃機関シリンダーヘッドに装着するためのネジ部が形成された金属製ハウジングを備えておらず、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に対して、柱状の絶縁碍子が直接挿入された状態で装着される。
【0023】
特に、第一の発明の点火部品は、中心電極と、中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部と、大径部よりも外径の小さい小径部とを有する異径の柱状体からなるものである。また、第二の発明の点火部品は、中心電極と、中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、碍子本体の側面の一部が、碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有するものである。
【0024】
このように構成された本発明の点火部品によれば、中心電極を覆う絶縁碍子の絶縁破壊を生じ難くすることができる。即ち、本発明の点火部品は、従来の点火部品と比較して、金属製ハウジングの厚さに相当する分だけ、絶縁碍子の厚さを厚くすることができる。このため、点火部品自体の大きさ、換言すれば、点火部品を設置するスペースの大きさを、従来の点火部品における大きさから変更することなく、絶縁碍子の耐電圧性を良好に向上させることができる。これにより、絶縁碍子の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0025】
本発明の点火部品に用いられる絶縁碍子は、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される部分が、柱状(例えば、円柱状)に形成されたものである。このため、本発明の点火部品においては、絶縁碍子とプラグ挿入孔との間の電界強度が均一化する。従って、絶縁碍子の絶縁破壊をより生じ難くすることができる。例えば、絶縁碍子の側面(即ち、外周面)にネジ部が形成され、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に螺合装着されるものの場合には、点火部品の中心電極に高電圧を印加した際に、ネジ部のネジ山の頂部と谷部とで、電界強度に差異が生じて、仮に絶縁碍子の厚さを厚くしたとしても、絶縁破壊の発生を抑制することは極めて困難である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明(第一の発明)の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明(第二の発明)の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【図9】実施例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。
【図10】比較例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。
【図11】実施例1の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフである。
【図12】比較例1及び2の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0028】
(1)点火部品(第一の発明):
本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態の点火部品100は、図1〜図3に示すように、中心電極30と、中心電極30の外周に配設された絶縁碍子32と、を備え、絶縁碍子32が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部33と、この大径部33よりも外径の小さい小径部34とを有する異径の柱状体からなる点火部品100である。
【0029】
本実施形態の点火部品100は、絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に挿入され、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。
【0030】
ここで、図1は、本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。図3は、本発明(第一の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。なお、内燃機関シリンダーヘッド20、プラグ挿入孔21、及びプラグ挿入孔21の開口部22は、本実施形態の点火部品100の構成要素ではない。即ち、上記内燃機関シリンダーヘッド20等は、本実施形態の点火部品100を使用する内燃機関の一部である。また、図2においては、点火部品100が絶縁碍子固定手段36を更に備えた例を示す。
【0031】
本実施形態の点火部品100は、従来の点火部品のような、内燃機関シリンダーヘッドに装着させるための金属製ハウジングを備えていないものである。即ち、本実施形態の点火部品100は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に、絶縁碍子32の大径部33が直接挿入されることにより装着されるものである。
【0032】
更に、本実施形態の点火部品100の大径部33の側面33xには、ネジ山等のネジ部が形成されていない。このため、従来の点火部品のような、金属製ハウジングのネジ部の螺合によりシリンダーヘッドに装着されるものではない。勿論、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の内周面にも、ネジ山等のネジ部が形成されている必要はない。本実施形態の点火部品100は、上記絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に非螺合状態で挿入されることによって、内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。なお、「非螺合状態で挿入される」とは、ネジ等によって行われる螺合挿入時における回転を伴うことなく、被挿入物(具体的には、「絶縁碍子」)が、挿入方向に対して平行に挿入されることを意味する。「挿入方向」とは、点火部品100を、内燃機関シリンダーヘッドに装着させる際に、プラグ挿入孔21の開口部22に挿入する方向のことを意味する。従って、一方向に長い柱状の点火部品100においては、上記柱状の一方の端部(例えば、先端)から他方の端部(例えば、末端)に向かう方向が、挿入方向となる。
【0033】
このように構成された本実施形態の点火部品100によれば、中心電極30を覆う絶縁碍子32の絶縁破壊を生じ難くすることができる。即ち、本実施形態の点火部品100は、従来の点火部品と比較して、金属製ハウジングの厚さに相当する分だけ、絶縁碍子32の厚さを厚くすることができる。このため、点火部品100自体の大きさ、換言すれば、点火部品100を設置するスペースの大きさ(例えば、プラグ挿入孔21の開口部22の内径)を、従来の点火部品における大きさから変更することなく、絶縁碍子32の耐電圧性を良好に向上させることができる。これにより、絶縁碍子32の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0034】
また、上述したように、大径部33の側面33xには、ネジ山等のネジ部が形成されていないため、絶縁碍子32(より具体的には、「絶縁碍子32の大径部33」)とプラグ挿入孔21との間の電界強度が均一化する。即ち、ネジ山等のネジ部が形成されていない大径部33の側面33xと、同様にネジ部が形成されていないプラグ挿入孔21の内周面とが当接或いは僅かな隙間を空けた状態で、点火部品100が内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。従って、絶縁碍子32の絶縁破壊をより生じ難くすることができる。例えば、絶縁碍子32の側面(具体的には、大径部33の側面33x)にネジ部が形成され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に螺合挿入されるものの場合には、点火部品100の中心電極30に高電圧を印加した際に、ネジ部のネジ山の頂部と谷部とで、電界強度に差異が生じて、仮に絶縁碍子32の厚さを厚くしたとしても、絶縁破壊の発生を抑制することは極めて困難である。
【0035】
また、本実施形態の点火部品100においては、絶縁碍子32が大径部33と小径部34と有する異径の柱状体からなるため、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより、点火部品100が内燃機関シリンダーヘッド20に簡便に装着される。また、上述したように、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧する固定方法であれば、セラミック等の絶縁体からなる絶縁碍子32に破損等が生じ難い。プラグ挿入孔21に挿入された点火部品100と、内燃機関シリンダーヘッド20との固定方法については、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して固定することが可能な方法であれば、特に制限はない。
【0036】
本実施形態の点火部品100は、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧する絶縁碍子固定手段36を更に備えたものであってもよい。例えば、図3においては、上述した絶縁碍子固定手段36を更に備えた点火部品100の例を示している。図3においては、絶縁碍子固定手段36が、絶縁碍子32の小径部34の外径よりも大きく且つ大径部33の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔36aが形成された座金状の押さえ部材37である場合の例を示す。押さえ部材37としては、絶縁碍子32の段差部分35を、点火部品100の挿入方向に向けて押圧して支持する固定ブラケット(固定冶具)等を挙げることができる。このような押さえ部材37によれば、プラグ挿入孔21の開口部22よりも上方にて、絶縁碍子32と内燃機関シリンダーヘッド20とを固定させることができる。このような固定方法であれば、固定方法により、絶縁碍子32の大径部33の外形や厚さが制約を受けることがない。このため、絶縁碍子32の高い耐電圧性を良好に維持することができる。また、大径部33と小径部34との段差部分35が破損し難い。
【0037】
また、図4に示すように、絶縁碍子固定手段36が、押さえ部材38と、締結部材39とを有するものであってもよい。図4に示す押さえ部材38は、絶縁碍子32の小径部34の外径よりも大きく且つ大径部33の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔36aと、絶縁碍子32の挿入方向と平行な方向に貫通する締結用貫通孔38xが形成されたものである。また、締結部材39は、押さえ部材38の締結用貫通孔38xに挿通され、押さえ部材38と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結するものである。ここで、図4は、本発明の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0038】
図4に示す点火部品200においては、押さえ部材38が、締結部材39によって内燃機関シリンダーヘッド20と固定されることで、押さえ部材38によって絶縁碍子32の段差部分35が押圧されて、点火部品200が内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。上記構成を採用することによって、より確実で強固な固定を行うことができる。更に、点火部品200の装着時に掛かる絶縁碍子32に対する応力は、絶縁碍子32の段差部分35に対する押圧力のみとなる。このため、絶縁碍子32が、例えば、セラミック等の絶縁性材料からなるものであっても、装着時に掛かる応力による、段差部分35の割れや欠けの発生を有効に抑制することができる。
【0039】
上記締結部材39としては、押さえ部材38の締結用貫通孔38xよりも大径の頭部39aと、頭部39aから延出され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部39bと、有するボルト形状の締結部材39を挙げることができる。
【0040】
(2)点火部品(第二の発明):
本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態の点火部品300は、図5〜図7に示すように、中心電極10と、中心電極10の外周に配設された絶縁碍子12と、を備え、絶縁碍子12が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体13と、碍子本体13の側面13xの一部が、碍子本体13の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部14と、を有するものである。
【0041】
本実施形態の点火部品300は、絶縁碍子12の碍子本体13が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に、上記絶縁碍子12の鍔部14をプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させるようにして挿入され、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14と内燃機関シリンダーヘッド20とが固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。即ち、本実施形態の点火部品300は、これまでに説明した第一の発明の点火部品の実施形態における、絶縁碍子の大径部と小径部とにより形成される段差部分の代わりに、絶縁碍子を構成する柱状の碍子本体13に、その外径が大きくなるように突出した鍔部14が形成されたものである。
【0042】
ここで、図5は、本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図6は、本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。図7は、本発明(第二の発明)の点火部品の一の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。なお、内燃機関シリンダーヘッド20、プラグ挿入孔21、及びプラグ挿入孔21の開口部22は、本実施形態の点火部品300の構成要素ではない。即ち、上記内燃機関シリンダーヘッド20等は、本実施形態の点火部品300を使用する内燃機関の一部である。また、図6においては、点火部品300が絶縁碍子固定手段16を更に備えた例を示す。
【0043】
本実施形態の点火部品300も、従来の点火部品のような、内燃機関シリンダーヘッドに装着させるための金属製ハウジングを備えていないものである。即ち、本実施形態の点火部品300は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に、碍子本体13が直接挿入されることにより装着されるものである。
【0044】
更に、本実施形態の点火部品300の碍子本体13の側面13xには、ネジ山等のネジ部が形成されていない。このため、従来の点火部品のような、金属製ハウジングのネジ部の螺合によりシリンダーヘッドに装着されるものではない。即ち、本実施形態の点火部品300は、絶縁碍子12の碍子本体13が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22に非螺合状態で挿入されることによって、内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。なお、「非螺合状態で挿入される」とは、ネジ等によって行われる螺合挿入時における回転を伴うことなく、被挿入物(具体的には、「碍子本体」)が、挿入方向に対して平行に挿入されることを意味する。
【0045】
このように構成された本実施形態の点火部品300によれば、中心電極10を覆う絶縁碍子12の絶縁破壊を生じ難くすることができる。即ち、本実施形態の点火部品300は、従来の点火部品と比較して、金属製ハウジングの厚さに相当する分だけ、絶縁碍子12の厚さを厚くすることができる。このため、点火部品300自体の大きさ、換言すれば、点火部品300を設置するスペースの大きさ(例えば、プラグ挿入孔21の開口部22の内径)を、従来の点火部品における大きさから変更することなく、絶縁碍子12の耐電圧性を良好に向上させることができる。これにより、絶縁碍子12の絶縁破壊を生じ難くすることができる。
【0046】
また、上述したように、碍子本体13の側面13xには、ネジ山等のネジ部が形成されていないため、絶縁碍子12(より具体的には、「碍子本体13」)とプラグ挿入孔21との間の電界強度が均一化する。従って、絶縁碍子12の絶縁破壊をより生じ難くすることができる。例えば、絶縁碍子12の側面(具体的には、碍子本体13の側面13x)にネジ部が形成され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に螺合挿入されるものの場合には、点火部品300の中心電極10に高電圧を印加した際に、ネジ部のネジ山の頂部と谷部とで、電界強度に差異が生じて、仮に絶縁碍子12の厚さを厚くしたとしても、絶縁破壊の発生を抑制することは極めて困難である。
【0047】
また、本実施形態の点火部品300においては、碍子本体13がプラグ挿入孔21の開口部22に挿入される際には、絶縁碍子12の鍔部14がプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接するため、碍子本体13が適切な深さまで良好に挿入されることとなる。即ち、鍔部14の外径は、プラグ挿入孔21の開口部22の内径よりも大きくなるように構成されている。このように、絶縁碍子12の鍔部14は、本実施形態の点火部品300における、プラグ挿入孔21への落ち込み防止のための部材にもなる。
【0048】
プラグ挿入孔21に挿入された点火部品300と、内燃機関シリンダーヘッド20との固定方法については、特に制限はない。即ち、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14と内燃機関シリンダーヘッド20とが固定されるものであればよい。
【0049】
本実施形態の点火部品300は、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14と、内燃機関シリンダーヘッド20とを固定する絶縁碍子固定手段16を更に備えたものであってもよい。例えば、図7においては、上述した絶縁碍子固定手段16を更に備えた点火部品300の例を示している。絶縁碍子固定手段16は、絶縁碍子貫通孔16aが形成された座金状の押さえ部材17である。この絶縁碍子固定手段16が、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を、内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持する。押さえ部材17としては、鍔部14の、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた面とは反対側の面を、点火部品300の挿入方向に向けて押圧して支持する固定ブラケット(固定冶具)等を挙げることができる。このような押さえ部材17によれば、プラグ挿入孔21の開口部22よりも上方にて、鍔部14と内燃機関シリンダーヘッド20とを固定させることができる。このような固定方法であれば、その固定方法により、碍子本体13の外形や厚さが制約を受けることがない。このため、絶縁碍子12の高い耐電圧性を良好に維持することができる。
【0050】
また、図8に示すように、絶縁碍子固定手段16が、押さえ部材18と、締結部材19とを有するものであってもよい。押さえ部材18は、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持するものである。この押さえ部材18には、絶縁碍子12の挿入方向と平行な方向に貫通する締結用貫通孔18xが形成されている。締結部材19は、押さえ部材18の締結用貫通孔18xに挿通され、押さえ部材18と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結するものである。ここで、図8は、本発明(第二の発明)の点火部品の他の実施形態を内燃機関に装着した状態の、中心電極の延びる方法に平行な断面を模式的に示す断面図である。
【0051】
図8に示す点火部品400においては、押さえ部材18が、締結部材19によって内燃機関シリンダーヘッド20と固定されることで、押さえ部材18によって支持された鍔部14が内燃機関シリンダーヘッド20に固定され、点火部品400が内燃機関シリンダーヘッド20に装着される。上記構成を採用することによって、より確実で強固な固定を行うことができる。更に、点火部品400の装着時に掛かる、絶縁碍子12に対する応力は、鍔部14の一方の面(プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた面とは反対側の面)から、他方の面(プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた面)に向かう押圧力のみとなる。このため、絶縁碍子12(換言すれば、碍子本体13と鍔部14)が、例えば、セラミック等の絶縁性材料からなるものであっても、装着時に掛かる応力による、鍔部14の割れや欠けの発生を有効に抑制することができる。
【0052】
上記締結部材19としては、押さえ部材18の締結用貫通孔18xよりも大径の頭部19aと、頭部19aから延出され、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21の開口部22の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部19bと、有するボルト形状の締結部材19を挙げることができる。
【0053】
(3)点火部品の構成:
以下、第一及び第二の発明の点火部品の各構成要素について、更に具体的に説明する。
【0054】
(3−1)中心電極:
図1〜図3に示すように、中心電極30は、絶縁碍子32の内燃機関側の先端から、その中心電極30の端部(以下、この端部を「先端部30a」という)が突出するように絶縁碍子32に内挿された略棒状の電極である。図1〜図3に示す点火部品100においては、絶縁碍子32の大径部33側の端部が、内燃機関側の先端である。第二の発明の点火部品に用いられる中心電極も、上記した第一の発明の点火部品に用いられる中心電極と同様に構成されたものを好適に用いることができる。
【0055】
中心電極30の他方の先端部は、絶縁碍子32の内燃機関側の端部と反対側の端部において、その端部(以下、この端部を「末端部30b」という)が突出するように配置され、ターミナル端子45(図6〜図8においては、ターミナル端子25)によって覆われている。「ターミナル端子」とは、プラグコードやダイレクトイグニッション等のプラグキャップが接続される端子のことである。
【0056】
中心電極30の形状については、上述したように、絶縁碍子32の一方の端部から他方の端部まで貫通する円柱状であることが好ましい。また、中心電極30を絶縁碍子32内に固定するために、中心電極30の長手方向(挿入方向)の一部に段差が設けされていてもよい。
【0057】
中心電極30が円柱状である場合には、中心電極30の外径が0.5〜4.0mmであることが好ましく、1.0〜3.5mmであることが更に好ましい。このような外径の中心電極10とすることで、放電を強くすることができる。例えば、中心電極10の外形が0.5mm未満であると、中心電極の固定が困難で、且つ放電が弱くなることがある。中心電極10の外形が4.0mm超であると、絶縁碍子の厚さが相対的に薄くなってしまう。
【0058】
中心電極30の材質については特に制限はない。中心電極30の材質としては、従来公知の点火部品の中心電極と同様の材質のものを好適例として挙げることができる。具体的には、例えば、中心電極30の内材としては、銅や、銅を含有する合金等を挙げることができる。中心電極30の外材としては、Ni基合金等を挙げることができる。
【0059】
中心電極30の先端部30aの形状は、単独或いは複数の針状であることが好ましい。このように構成することによって、放電を強くすることができる。この先端部30aは、絶縁碍子32の端部から、少なくとも1.0mm突出していることが好ましい。
【0060】
中心電極30の末端部30bは、絶縁碍子32の端部から、少なくとも5mm突出していることが好ましい。末端部30bは、点火部品100に電圧を印加する電源(図示せず)と、電気配線等により電気的に接続される。
【0061】
従来の点火部品においては、中心電極から放電を生じさせるための対向電極(接地電極ともいう)を有しているが、本実施形態の点火部品においては、その外周部分が、絶縁性材料からなる絶縁碍子によって構成されているため(換言すれば、金属製ハウジング等を備えていないため)、対向電極が必要な場合には、内燃機関のシリンダーヘッドの燃焼室内に、上記対向電極に相当する電極を配置してもよい。
【0062】
(3−2)絶縁碍子:
図1〜図3に示すように、絶縁碍子32は、中心電極30を内挿して保持して、点火部品100における外周部分を構成するものである。絶縁碍子32は、電気絶縁性を有する材料から形成されたものである。
【0063】
第一の発明の実施形態の点火部品に用いられる絶縁碍子32は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部33と、この大径部33よりも外径の小さい小径部34とを有する異径の柱状体からなるものである。絶縁碍子32を構成する大径部33と小径部34とは、上述した電気絶縁性を有する材料を一体成形することにより形成されたもの(即ち、大径部33と小径部34とが一体であるもの)であることが好ましい。点火部品100は、絶縁碍子32の大径部33が、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に挿入され、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧されて固定されることにより内燃機関シリンダーヘッド20に装着されるものである。即ち、上記段差部分35が、点火部品100を固定する際に応力が加えられる部分となる。
【0064】
絶縁碍子32の大径部33は、プラグ挿入孔21に挿入可能な、柱状の電気絶縁性部材である。大径部33の挿入方向に垂直な断面の形状は、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。大径部33の挿入方向に垂直な断面の形状としては、円形、多角形であることが好ましい。なお、多角形の場合には、少なくとも六角形以上の多角形であることが更に好ましい。
【0065】
大径部33の外径については、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。大径部33の挿入方向に垂直な断面の形状が円形である場合には、その直径(外径)が、10〜14mmであることが好ましく、12〜14mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、既存の自動車等のエンジンに使用される点火部品との互換性を得ることができる。即ち、点火部品が装着されるエンジン側において、大きな仕様変更(例えば、プラグ挿入孔の形状変更等)を行わずに、本実施形態の点火部品を使用することが可能となる。大径部33は、少なくともプラグ挿入孔21に挿入される部位における直径が一定の大きさのものであることがより好ましい。
【0066】
大径部33の挿入方向の長さ(以下、単に「大径部33の長さ」ということがある)についても特に制限はない。但し、大径部33の長さは、プラグ挿入孔21に絶縁碍子32を挿入した際に、絶縁碍子32の大径部33と小径部34との段差部分35が、プラグ挿入孔21が形成された内燃機関シリンダーヘッド20の表面と同じ又は近い位置となるような長さであることが好ましい。このように構成することによって、点火部品100の固定が容易になる。
【0067】
小径部34は、絶縁碍子32を内燃機関シリンダーヘッド20に固定するための上記段差部分35を形成するための部位であり、大径部33よりも外径が小さく構成されたものであれば、その形状等については特に制限はない。
【0068】
絶縁碍子32の挿入方向の長さ(以下、単に「絶縁碍子の長さ」ともいう)は、点火部品100を設置するスペース内に収納される長さとすることが好ましい。なお、「絶縁碍子の長さ」とは、絶縁碍子32の大径部33の先端から小径部34の末端までの長さまでの長さのことをいう。例えば、絶縁碍子32の長さは、40〜120mmであることが好ましく、45〜100mmであることが更に好ましい。
【0069】
大径部33の厚さについては、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。大径部33の厚さは、プラグ挿入孔21とのクリアランスを考慮し、中心電極10を内挿して保持した状態で、プラグ挿入孔21の開口部22に挿入可能な厚さとすることが好ましい。即ち、開口部22の開口径をR1(mm)とし、中心電極10の直径をr1(mm)とし、プラグ挿入孔21とのクリアランスをa(mm)とした場合には、大径部33の厚さT(mm)は、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。なお、大径部33自体がプラグ挿入孔21の内面に密着して燃焼圧を封止することから、プラグ挿入孔21とのクリアランスaは極力小さいものであることが好ましく、大径部33をプラグ挿入孔21の開口部22に隙間なく挿入することができるのであれば、上記クリアランスを設けなくともよい。例えば、クリアランスaが、0≦a≦0.1の範囲であることが好ましい。上記大径部33の厚さT(mm)は、プラグ挿入孔21内に実際に挿入される部分における厚さである。
厚さT={(R1−r1)/2}−a ・・・ (1)
【0070】
絶縁碍子のプラグ挿入孔に挿入される部分における厚さ(換言すれば、大径部の厚さ)が2mm以上であることが好ましい。
【0071】
一方、図5〜図7に示すように、第二の発明の実施形態の点火部品300に用いられる絶縁碍子12は、内燃機関シリンダーヘッド20のプラグ挿入孔21に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体13と、碍子本体13の側面13xの一部が、碍子本体13の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部14と、を有するものである。絶縁碍子12を構成する碍子本体13と鍔部14とは、上述した電気絶縁性を有する材料を一体成形することにより形成されたものであることが好ましい。即ち、碍子本体13と鍔部14とは、それぞれ別々の構成要素であるが、1つの電気絶縁性部材として形成されたものであってもよい。勿論、碍子本体13の側面の一部に、碍子本体13の外径よりもその外径が大きな鍔部14を配設することによって絶縁碍子12を形成してもよい。
【0072】
碍子本体13は、プラグ挿入孔21に挿入可能な、柱状の電気絶縁性部材である。碍子本体13における鍔部14が形成されている部位から先端側が、プラグ挿入孔21に挿入される部分となる。碍子本体13の挿入方向に垂直な断面の形状は、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。碍子本体13の挿入方向に垂直な断面の形状としては、円形、多角形であることが好ましい。なお、多角形の場合には、少なくとも六角形以上の多角形であることが更に好ましい。
【0073】
碍子本体13の外径については、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。碍子本体13の挿入方向に垂直な断面の形状が円形である場合には、その直径(外径)が、10〜14mmであることが好ましく、12〜14mmであることが更に好ましい。このように構成することによって、既存の自動車等のエンジンに使用される点火部品との互換性を得ることができる。即ち、点火部品が装着されるエンジン側において、大きな仕様変更(例えば、プラグ挿入孔の形状変更等)を行わずに、本実施形態の点火部品を使用することが可能となる。なお、碍子本体13は、少なくともプラグ挿入孔21に挿入される部位における直径が一定の大きさのものであることがより好ましい。
【0074】
碍子本体13の挿入方向の長さ(以下、単に「碍子本体13の長さ」ということがある)についても特に制限はない。但し、碍子本体13の長さは、碍子本体13における鍔部14が形成されている部位から先端側までの長さが、少なくともプラグ挿入孔21を貫通する長さとする。また、碍子本体13の鍔部14が形成された部位から末端側については、点火部品300を設置するスペース内に収納される長さとすることが好ましい。なお、「碍子本体13の長さ」とは、碍子本体13の先端(即ち、中心電極10の先端部10aが露出する端部)から、碍子本体13の末端(即ち、中心電極10の末端部10bが露出する端部)までの長さのことをいう。例えば、碍子本体13の長さは、40〜120mmであることが好ましく、45〜100mmであることが更に好ましい。
【0075】
碍子本体13の厚さについても、プラグ挿入孔21の開口部22の形状に応じて適宜決定することができる。碍子本体13の厚さは、第一の発明の実施形態の点火部品における大径部の厚さと同様の厚さにすることが好ましい。例えば、絶縁碍子のプラグ挿入孔に挿入される部分における厚さが2mm以上であることが好ましい。
【0076】
また、内燃機関からの圧縮漏れを防止する対策として、上述した鍔部のプラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、鍔部の付根部から最外周部にかけて漸減し、鍔部の付根部から最外周部までの部分が、プラグ挿入孔に挿入される方向に垂直な面に対してテーパー状に形成されていてもよい。このように、鍔部の内燃機関側の面をテーパー状に形成することにより、内燃機関からの圧縮漏れを有効に防止することができる。
【0077】
また、第一及び第二の発明の実施形態の点火部品の絶縁碍子は、その先端部に、テーパー状の封止部が形成されたものであってもよい。このような封止部が形成されたものとすることにより、内燃機関からの圧縮漏れを有効に防止することができる。
【0078】
また、第一及び第二の発明の実施形態の点火部品の絶縁碍子は、先端部分及び末端部分の少なくとも一方に、襞状のコルゲーションが形成されたものであることが好ましい。このようなコルゲーションが形成されたものとすることにより、絶縁碍子の沿面距離を稼ぐことができる。即ち、襞状のコルゲーションにより、絶縁碍子の挿入方向の表面距離が大きくなり、例えば、正極と陰極との間の沿面放電電圧を上げることが可能となる。
【0079】
図1〜図3に示す点火部品100、及び図5〜図7に示す点火部品300においても、絶縁碍子の末端部分(電源ケーブル結合部付近)に、上記襞状のコルゲーションを形成することにより、沿面距離を稼いでいる。なお、第一及び第二の発明の実施形態の点火部品は、従来の点火部品において使用される電圧よりもはるかに高電圧を適用することが可能であるため、上述したコルゲーションが形成された部分を、比誘電率の低い材料、例えば、市販のシリコーン樹脂等を用いて被覆することにより、更にコルゲーションが形成された部分の絶縁性を強化することが好ましい。
【0080】
コルゲーションが形成された部分を比誘電率の低い材料により被覆することにより、その絶縁性が強化される理由としては、以下のことが考えられる。沿面放電し易さは、その部材を構成する材料の比誘電率の大きさに比例する。例えば、絶縁碍子がアルミナから形成されたものの場合には、その比誘電率が約10である。それに対し、シリコーン樹脂においては、その比誘電率が約3である。このため、シリコーン樹脂等の比誘電率の低い材料によりコルゲーションが形成された部分を被覆することにより、絶縁性を強化することができる。比誘電率の低い材料としては、上記のシリコーン樹脂に限定されることはなく、比誘電率が低く且つ所望の耐熱性を有する材料であれば、例えば、フッ素樹脂(比誘電率が約2)やエポキシ樹脂(比誘電率が約3)を用いることもできる。被覆する材料の耐熱性については、点火部品を使用する環境に応じたものであればよい。例えば、点火部品をエンジンに使用する場合には、被覆する材料が200℃前後の耐熱性を有していればよい。なお、沿面距離を稼ぐための別の方法としては、絶縁碍子の長さを長くすることも考えられる。但し、その際には、絶縁碍子が長くなることによって、絶縁碍子の強度が低下することがあったり、中心電極を内挿するための貫通孔の形成が困難になったりすることがある。
【0081】
図5〜図7に示すように、絶縁碍子12の鍔部14は、碍子本体13の側面の一部において、碍子本体13の外径が、その他の部位よりも大きくなるように突出した部位のことである。上述したように、碍子本体13と鍔部14とは、それぞれ別々の構成要素であるが、1つの電気絶縁性部材として形成されたものであってもよいし、碍子本体13の外径よりもその外径が大きな鍔部14が、柱状の碍子本体13の側面に配設されたものであってもよい。絶縁碍子12の強度的な観点から、碍子本体13と鍔部14とは、1つの電気絶縁性部材として形成されたものであることが好ましい。
【0082】
鍔部14は、絶縁碍子12(換言すれば、点火部品300)が、プラグ挿入孔21に所定の深さまで挿入され、それ以降の落ち込みを防止するための落下防止用の部位にもなる。このことから、鍔部14の外径は、碍子本体13の外径よりも大きく、且つ、プラグ挿入孔21の開口部22の開口径よりも大きなものとすることが好ましい。鍔部14の外径は、プラグ挿入孔21の開口部22の開口径よりも、5〜20mm大きいことが好ましく、10〜15mm大きいことが更に好ましい。例えば、鍔部14の外径が小さすぎると、プラグ挿入孔21の開口部22の周囲に鍔部14が良好に係止せず、絶縁碍子12の保持が困難になることがある。一方、鍔部14の外径が大きすぎると、点火部品を設置するためのスペースを必要以上に要することとなる。
【0083】
鍔部14の、点火部品300の挿入方向における長さ(以下、「鍔部14の厚さ」ということがある)についても特に制限はない。鍔部14の厚さは、鍔部14の機械的強度の観点から、少なくとも3mm以上であることが好ましく、4mm以上であることが更に好ましく、5mm以上であることが特に好ましい。また、点火部品300の小型化の観点から、鍔部14の厚さは、3〜8mmとしてもよく、更に4〜6mmとしてもよい。
【0084】
鍔部14が形成される位置は、碍子本体13の先端側から挿入方向の長さの30〜60%の範囲であることが好ましい。このように構成することによって、プラグ挿入孔21に挿入される部位を良好に確保しつつ、内燃機関シリンダーヘッド20から突出する末端側部分を、設置スペース内にコンパクトに収納することができる。
【0085】
絶縁碍子の材料については、電気絶縁性を有する材料であれば、特に制限はない。例えば、アルミナ基焼結材料等を挙げることができる。
【0086】
(3−3)絶縁碍子固定手段:
本実施形態の点火部品は、絶縁碍子を内燃機関シリンダーヘッドに固定するための絶縁碍子固定手段を更に備えたものであってもよい。絶縁碍子固定手段は、絶縁碍子を固定する固定冶具である。第一及び第二の発明の実施形態(点火部品)における絶縁碍子の構成に応じて、適切な固定を実現する固定手段を適宜選択することができる。
【0087】
図3においては、絶縁碍子32の段差部分35を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧する絶縁碍子固定手段36を更に備えた場合の例を示している。絶縁碍子固定手段36は、絶縁碍子32の小径部34の外径よりも大きく且つ大径部33の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔36aが形成された座金状の押さえ部材37からなるものである。
【0088】
また、図7においては、絶縁碍子32の鍔部14と、内燃機関シリンダーヘッド20とを固定する絶縁碍子固定手段16を更に備えた場合の例を示している。絶縁碍子固定手段16は、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を、内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持する押さえ部材17からなるものである。
【0089】
また、図4に示すように、絶縁碍子固定手段36を構成する押さえ部材38としては、この押さえ部材38と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結するための締結部材39が挿入される締結用貫通孔38xが更に形成されたものであってもよい。押さえ部材38の締結用貫通孔38xに締結部材39が挿通され、押さえ部材38と内燃機関シリンダーヘッド20とが締結により固定される。
【0090】
また、図8に示すように、プラグ挿入孔21の開口部22の周縁に当接させた鍔部14を内燃機関シリンダーヘッド20側に押圧して支持し、且つ絶縁碍子12の挿入方向と平行な方向に貫通する締結用貫通孔18xが形成された押さえ部材18であってもよい。このような押さえ部材18においても、押さえ部材18の貫通孔18xに、締結部材19が挿通され、押さえ部材18と内燃機関シリンダーヘッド20とを締結により固定される。
【0091】
押さえ部材の材質としては、鉄系材料、ステンレス鋼、アルミ合金等を挙げることができる。また、締結部材としては、図4及び図8に示すように、頭部19aとネジ部19bと有するボルト形状の締結部材19を挙げることができる。
【0092】
本実施形態の点火部品に用いられる絶縁碍子固定手段は、上述した押さえ部材等の固定冶具に限定されることはなく、絶縁碍子と、内燃機関シリンダーヘッドとを固定可能なものであればよい。なお、絶縁碍子を固定した際に、絶縁碍子の大径部と小径部との段差部分や絶縁碍子の鍔部が、割れや欠け等の破損を生じないようにするため、絶縁碍子の一部(例えば、上記段差部分や鍔部)を押圧して支持する固定方法を用いた絶縁碍子固定手段であることがより好ましい。例えば、固定時において、碍子本体の側面の一部が突出した鍔部の根元部分に剪断応力が掛かるような固定方法よりも、鍔部の厚さ方向に圧縮応力が掛かるような固定方法がより好ましい。
【0093】
(4)点火部品の製造方法:
次に、本実施形態の点火部品を製造方法について、図5〜図7に示す点火部品300を製造する方法の例に説明する。
【0094】
まず、アルミナ等のセラミック材料を用いて、各種プレス成型法により、柱状の成形本体(後に、碍子本体となる成形体)と、この成形本体の側面の一部が、成形本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する成形体を作製する。柱状の成形本体には、その中心軸方向に貫通する貫通孔を形成する。この成形本体の貫通孔に、点火部品の中心電極が配設されることとなる。
【0095】
次に、この成形体を焼成して、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、碍子本体の側面の一部が、碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する絶縁碍子を得る。図1〜図3に示す点火部品100の絶縁碍子も同様の方法により形成することができる。
【0096】
また、絶縁碍子の作製とは別に、点火部品の中心電極を作製する。中心電極の作製方法としては、中心電極を形成するための導電性材料を、所定の形状に成形して中心電極の内材部分と外材部分を作成し、その後、これらを組み合わせて押出成形することにより複合電極(中心電極)を作製する方法を挙げることができる。中心電極を形成するための導電性材料としては、従来公知の点火部品の中心電極と同様の材質を用いることができ、耐熱ニッケル合金と銅、又は耐熱ニッケル合金と銅合金等を挙げることができる。また、上記導電性材料としては、ニッケル合金、貴金属、又は導電性セラミック等を用いることもできる。
【0097】
次に、得られた絶縁碍子の一方の端部から他方の端部まで貫通する貫通孔に、上記中心電極を配設することによって、本実施形態の点火部品を製造することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0099】
(実施例1)
まず、絶縁碍子を作製するためのセラミック材料を調製した。セラミック材料としては、アルミナを用いた。
【0100】
次に、得られたセラミック材料を用いて、プレス成型法により、円柱状の成形本体と、この成形本体の側面の一部が、成形本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する成形体を作製した。また、円柱状の成形本体には、その中心軸方向に貫通する貫通孔を形成した。次に、得られた成形体を、1500℃で5時間焼成して、柱状の碍子本体と、碍子本体の側面の一部が、碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有する絶縁碍子を作製した。
【0101】
絶縁碍子の碍子本体の挿入方向の長さは、90mmであり、碍子本体の外径は13mmであった。碍子本体は、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に挿入される箇所にネジ部等の螺合による接合部分を有しておらず、上記プラグ挿入孔に挿入される30mmの範囲において、その外径が均一の円柱状に形成されたものであった。プラグ挿入孔に挿入される範囲における碍子本体の厚さは5mmであった。
【0102】
また、絶縁碍子の鍔部は、碍子本体の先端側から30mmの位置に形成されたものであった。鍔部の外径は17mmであり、鍔部の挿入方向の長さ(厚さ)は5mmであった。
【0103】
上記絶縁碍子とは別に、耐熱ニッケル合金と銅を所定の形状に成形して、中心電極の内材部分と外材部分を作製した。その後、得られた内材部分と外材部分とを組み合わせ押出成形して複合電極を成形した。得られた複合電極を、実施例1の点火部品の中心電極とした。中心電極の外径は3mmであり、長さは97mであった。
【0104】
絶縁碍子の碍子本体の貫通孔内に、得られた中心電極を配設して、実施例1の点火部品を作製した。
【0105】
実施例1の点火部品について、以下の方法により、「絶縁破壊による破損評価」と、「電界強度評価」とを行った。
【0106】
[絶縁破壊による破損評価]
点火部品の碍子本体を、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に挿入し、その点火部品を内燃機関シリンダーヘッドに装着した。プラグ挿入孔の開口径は、13mmである。実施例1の点火部品においては、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に、点火部品の碍子本体を非螺合状態で挿入した。その後、点火部品の中心電極に、20k〜50kVの電圧を印加して、点火部品の中心電極の先端部にて、電気放電を生じさせた。その後、実施例1の点火部品を、内燃機関シリンダーヘッドから取り外し、碍子本体の破損状態を目視にて確認した(絶縁破壊による破損評価)。
【0107】
[電界強度評価]
実施例1の点火部品を、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に、非螺合状態で挿入し、5kV〜40kVの電圧を印加した場合の、点火部品と内燃機関シリンダーヘッドとの間の電界強度についての評価を行った。プラグ挿入孔の開口径は、14mmとした。評価方法としては、実施例1の点火部品を内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に挿入した状態と同じ2D軸対称モデルを作成し、この2D軸対称モデルの静電界を計算した。2D軸対称モデルは、図9に示すように、2D軸対称モデルの対称軸Lを対象として、厚さ2.9mmの碍子本体13を挟んで、中心電極10(高電圧側)と内燃機関シリンダーヘッド20(0V側)とが対向配置されたモデルである。ここで、図9は、実施例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。図9においては、2D軸対称モデルの対称軸Lの片側の図面を示す。上記静電界の計算に際しては、碍子本体13の軸Lの方向の中央部分における電界強度を求めた。得られた結果を図11に示す。図11は、実施例1の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフであり、横軸が「碍子本体の厚さ(mm)」を示し、縦軸が「電界強度(V/m)」を示す。
【0108】
(比較例1)
実施例1の絶縁碍子の作製に使用したセラミック材料と同様に調製されたセラミック材料を用いて、碍子本体の側面にネジ部が形成された絶縁碍子を作製した。比較例1にて作製した絶縁碍子は、絶縁碍子の形状を以下のようにし、且つ、碍子本体の側面に以下のようなネジ部を形成した以外は、実施例1と同様の形状である。
【0109】
比較例1の絶縁碍子は、碍子本体の挿入方向の長さが90mmであり、碍子本体の外径が13mmであった。また、この絶縁碍子は、プラグ挿入孔に挿入される30mmの範囲において、碍子本体の側面にネジ部が形成されたものであった。ネジ部は、ネジ山の高さが0.7mm、ネジ山のピッチが0.7mm、ネジ山の角度が60°、ネジ山の頂部の尖端Rが50μmであった。また、碍子本体の厚さが、ネジ山の頂部において3.9mmであり、ネジ山の谷部で3.2mmであった。
【0110】
得られた絶縁碍子に、実施例1の中心電極と同様の方法で作製された中心電極を配設して、比較例1の点火部品を作製した。比較例1の点火部品について、実施例1と同様の方法で、「絶縁破壊による破損評価」を行った。比較例1の「絶縁破壊による破損評価」においては、点火部品を装着する内燃機関シリンダーヘッドとして、プラグ挿入孔の内面に、碍子本体のネジ部に螺合するネジ部が形成されたものを用いた。
【0111】
また、比較例1の点火部品の「電界強度評価」を行った。まず、比較例1の点火部品の2D軸対称モデルを作成し、この2D軸対称モデルの静電界を計算した。2D軸対称モデルは、図10に示すように、2D軸対称モデルの対称軸Lを対象として、上述したネジ部が形成された碍子本体513を挟んで、中心電極510(高電圧側)と内燃機関シリンダーヘッド520(0V側)とが対向配置されたモデルである。ここで、図10は、比較例1の点火部品の静電界を計算する際に用いた、2D軸対称モデルを示す模式図である。図10においては、2D軸対称モデルの対称軸Lの片側の図面を示す。上記静電界の計算に際しては、碍子本体513の軸Lの方向の中央部分における電界強度を求めた。得られた結果を図12に示す。図12は、比較例1及び2の点火部品の静電界を計算した結果を示すグラフであり、横軸が「碍子本体の厚さ(mm)」を示し、縦軸が「電界強度(V/m)」を示す。
【0112】
(比較例2)
碍子本体の側面に形成したネジ部のネジ山の頂部の尖端Rを100μmとしたこと以外は、比較例1と同様の方法で、点火部品を作製した。得られた点火部品について、比較例1と同様の方法で、「絶縁破壊による破損評価」及び「電界強度評価」を行った。電界強度評価の結果を図12に示す。
【0113】
(結果)
碍子本体にネジ部を形成した比較例1及び2の点火部品は、中心電極に高電圧をかけた場合に、ネジ部の谷部において破損が生じた。具体的には、ネジ部の谷部に、アーク電流が流れた痕跡(アーク痕)が確認された。また、図11及び図12に示すように、比較例1及び2の点火部品は、実施例1の点火部品と比較して電界強度が約2倍となっていた。碍子本体にネジ部を形成した場合には、ネジ部の谷部が鋭角に形成されているため、電界が集中し、電界強度が強くなると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の点火部品は、内燃機関の着火装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
10:中心電極、10a:先端部(中心電極の先端部)、10b:末端部(中心電極の末端部)、12:絶縁碍子、13:碍子本体、13x:側面、14:鍔部、16:絶縁碍子固定手段、16a:絶縁碍子貫通孔、17,18:押さえ部材、18x:締結用貫通孔(押さえ部材の締結用貫通孔)、19:締結部材、19a:頭部、19b:ネジ部、20:内燃機関シリンダーヘッド、21:プラグ挿入孔、22:開口部(プラグ挿入孔の開口部)、25:ターミナル端子、30:中心電極、30a:先端部(中心電極の先端部)、30b:末端部(中心電極の末端部)、32:絶縁碍子、33:大径部、33x:側面、34:小径部、35:段差部分(大径部と小径部との段差部分)、36:絶縁碍子固定手段、36a:絶縁碍子貫通孔、37,38:押さえ部材、38x:締結用貫通孔(押さえ部材の締結用貫通孔)、39:締結部材、39a:頭部、39b:ネジ部、45:ターミナル端子、100,200,300,400:点火部品、510:中心電極、513:碍子本体、520:内燃機関シリンダーヘッド、L:対象軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、
前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部と、前記大径部よりも外径の小さい小径部とを有する異径の柱状体からなり、
前記絶縁碍子の前記大径部が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔に挿入され、前記絶縁碍子の前記大径部と前記小径部との段差部分が前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧されて固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品。
【請求項2】
前記絶縁碍子の前記段差部分を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧する絶縁碍子固定手段を更に備えた請求項1に記載の点火部品。
【請求項3】
前記絶縁碍子固定手段が、前記小径部の外径よりも大きく且つ前記大径部の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔が形成された座金状の押さえ部材である請求項2に記載の点火部品。
【請求項4】
中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、
前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、前記碍子本体の側面の一部が、前記碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有し、
前記絶縁碍子の前記碍子本体が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部に、前記絶縁碍子の前記鍔部を前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させるようにして挿入され、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と前記内燃機関シリンダーヘッドとが固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品。
【請求項5】
前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、5mm以上である請求項4に記載の点火部品。
【請求項6】
前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、前記鍔部の付根部から最外周部にかけて漸減し、前記鍔部の付根部から最外周部までの部分が、前記プラグ挿入孔に挿入される方向に垂直な面に対してテーパー状に形成されている請求項4又は5に記載の点火部品。
【請求項7】
前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と、前記内燃機関シリンダーヘッドとを固定する絶縁碍子固定手段を更に備えた請求項4〜6のいずれか一項に記載の点火部品。
【請求項8】
前記絶縁碍子固定手段が、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧して支持する押さえ部材である請求項7に記載の点火部品。
【請求項9】
前記押さえ部材には、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとを締結するための締結部材が挿入される締結用貫通孔が更に形成され、前記押さえ部材の前記締結用貫通孔に前記締結部材が挿通され、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとが締結により固定される請求項3又は8に記載の点火部品。
【請求項10】
前記締結部材が、前記貫通孔よりも大径の頭部と、前記頭部から延出され、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部と、を有する請求項9に記載の点火部品。
【請求項11】
前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される部分における厚さが2mm以上である請求項1〜10のいずれか一項に記載の点火部品。
【請求項12】
前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される先端部に、テーパー状の封止部が形成された請求項1〜11のいずれか一項に記載の点火部品。
【請求項1】
中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、
前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される挿入部分となる大径部と、前記大径部よりも外径の小さい小径部とを有する異径の柱状体からなり、
前記絶縁碍子の前記大径部が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔に挿入され、前記絶縁碍子の前記大径部と前記小径部との段差部分が前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧されて固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品。
【請求項2】
前記絶縁碍子の前記段差部分を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧する絶縁碍子固定手段を更に備えた請求項1に記載の点火部品。
【請求項3】
前記絶縁碍子固定手段が、前記小径部の外径よりも大きく且つ前記大径部の外径よりも小さい絶縁碍子貫通孔が形成された座金状の押さえ部材である請求項2に記載の点火部品。
【請求項4】
中心電極と、前記中心電極の外周に配設された絶縁碍子と、を備え、
前記絶縁碍子が、内燃機関シリンダーヘッドのプラグ挿入孔に非螺合状態で挿入される柱状の碍子本体と、前記碍子本体の側面の一部が、前記碍子本体の外径よりもその外径が大きくなるように突出した鍔部と、を有し、
前記絶縁碍子の前記碍子本体が、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部に、前記絶縁碍子の前記鍔部を前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させるようにして挿入され、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と前記内燃機関シリンダーヘッドとが固定されることにより前記内燃機関シリンダーヘッドに装着される点火部品。
【請求項5】
前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、5mm以上である請求項4に記載の点火部品。
【請求項6】
前記鍔部の前記プラグ挿入孔に挿入される方向における長さが、前記鍔部の付根部から最外周部にかけて漸減し、前記鍔部の付根部から最外周部までの部分が、前記プラグ挿入孔に挿入される方向に垂直な面に対してテーパー状に形成されている請求項4又は5に記載の点火部品。
【請求項7】
前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部と、前記内燃機関シリンダーヘッドとを固定する絶縁碍子固定手段を更に備えた請求項4〜6のいずれか一項に記載の点火部品。
【請求項8】
前記絶縁碍子固定手段が、前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に当接させた前記鍔部を前記内燃機関シリンダーヘッド側に押圧して支持する押さえ部材である請求項7に記載の点火部品。
【請求項9】
前記押さえ部材には、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとを締結するための締結部材が挿入される締結用貫通孔が更に形成され、前記押さえ部材の前記締結用貫通孔に前記締結部材が挿通され、前記押さえ部材と前記内燃機関シリンダーヘッドとが締結により固定される請求項3又は8に記載の点火部品。
【請求項10】
前記締結部材が、前記貫通孔よりも大径の頭部と、前記頭部から延出され、前記内燃機関シリンダーヘッドの前記プラグ挿入孔の開口部の周縁に形成されたネジ孔に螺合可能なネジ部と、を有する請求項9に記載の点火部品。
【請求項11】
前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される部分における厚さが2mm以上である請求項1〜10のいずれか一項に記載の点火部品。
【請求項12】
前記絶縁碍子の前記プラグ挿入孔に挿入される先端部に、テーパー状の封止部が形成された請求項1〜11のいずれか一項に記載の点火部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−256489(P2012−256489A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128348(P2011−128348)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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