説明

焦点調節装置、および撮像装置

【課題】 焦点制御の禁止状態を適切に解除することを目的とする。
【解決手段】 本発明の焦点調節装置は、焦点検出部、焦点制御部、禁止部、解除部、および情報検出部を備える。焦点検出部は、撮影レンズの焦点検出を行う。焦点制御部は、焦点調節状態に基づいて撮影レンズを焦点制御する。禁止部は、撮影レンズが合焦すると、焦点制御を禁止する。解除部は、焦点制御が禁止されている状態で、焦点調節状態が所定量以上の後ピンを示すと、焦点制御の禁止を解除する。情報検出部は撮影倍率に関する情報を検出する。ここで、解除部は、この情報から撮影倍率が大きいと判断できる場合に上記の所定量を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどの焦点調節装置で、一旦合焦した後に焦点制御を禁止した状態で後ピン状態が検出された場合に、被写体が動体であると判断して、焦点調節用のレンズの駆動の禁止を解除するものが知られている(例えば特許文献1)
【特許文献1】特開2000−66086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の焦点調節装置では、撮影状態や被写体の状態によっては、不用意に駆動禁止が解除される場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
《1》 本発明の焦点調節装置は、焦点検出部、焦点制御部、禁止部、解除部、および情報検出部を備える。
焦点検出部は、撮影レンズの焦点調節状態を繰り返し検出する。
焦点制御部は、焦点調節状態に基づいて、撮影レンズの焦点制御を行う。
禁止部は、焦点調節状態に基づいて撮影レンズが合焦していると見なせる場合に、焦点制御を禁止する。
解除部は、焦点制御が禁止されている状態で、焦点調節状態が所定量以上の後ピンを示す場合に、焦点制御の禁止を解除する。
情報検出部は、被写体の撮影倍率に関する情報を検出する。
以上の構成において、解除部は、この情報が撮影倍率が大きいことを示す場合は、撮影倍率が小さいことを示す場合に比べて合焦ロック解除の判定基準である上記の所定量を大きくする。
《2》 なお好ましくは、情報検出部は、上記の情報として被写体までの距離を検出する。解除部は、この距離が近いことを示す場合は、距離が遠いことを示す場合に比べて上記の所定量を大きくする。
《3》 また好ましくは、上記の距離は、撮影レンズに設定された撮影距離である。
《4》 なお好ましくは、情報検出部は、上記の情報として撮影レンズの焦点距離を検出する。解除部は、この焦点距離が長いことを示す場合は、焦点距離が短いことを示す場合に比べて上記の所定量を大きくする。
《5》 また好ましくは、解除部は、撮影レンズの撮影時に制御されるF値を検出する。解除部は、この撮影時の制御F値が大きいことを示す場合は、撮影時の制御F値が小さいことを示す場合に比べて上記の所定量を大きくする。
《6》 なお好ましくは、解除部は、撮影レンズによる像のブレを補正するブレ補正機構の動作状態を検出する。解除部は、このブレ補正機構が動作していない場合は、ブレ補正機構が動作している場合よりも、上記の所定量を大きくする。
《7》 また好ましくは、解除部は、焦点調節状態の信頼度を検出する。解除部は、この信頼度が低いことを示す場合は、信頼度が高いことを示す場合に比べて、上記の所定量を大きくする。
《8》 本発明の撮像装置は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の焦点調節装置を搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、焦点調節状態が所定量以上の後ピンを示す場合に焦点制御を解除するものである。この場合、撮影倍率が大きいことを示す情報が検出される場合は、上記の所定量を大きくする。その結果、近接撮影や長焦点距離による撮影時に焦点調節状態の変動が比較的大きく発生しても、不用意に焦点調節を再開するおそれが低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[構成説明]
図1は、カメラのブロック図である。図1において、カメラボディ10には、撮影レンズ11が装着されている。この撮影レンズ11の内部には、レンズ群12(焦点調節用のレンズを含む)が設けられる。このレンズ群12の光軸上に沿って、カメラボディ10内にはメインミラー13およびサブミラー14が配置される。このサブミラー14の反射方向にAFモジュール15が配置される。なお、AFモジュール15の内部には、瞳分割方式の再結像光学系とAFセンサが設けられる。このAFセンサは、センサ駆動回路16に接続される。
【0007】
また、カメラボディ10は、CPU17、モータ駆動回路18、モータ19、モータエンコーダ20、レリーズ釦21およびメモリ22を有する。なお、メモリ22は、後述するフラグ類や、AF制御モード変数などを記憶する記憶領域を有する。
一方、撮影レンズ11内には、レンズ情報通信部23、レンズ移動機構24、および撮影レンズ11による像のブレを補正するブレ補正機構30などが設けられる。このレンズ情報通信部23は、レンズの光学特性や制御特性などに関するデータをレンズ情報として記憶し、カメラボディ10側へ適時に伝達する。また、レンズ情報通信部23は、レンズ群12のレンズ位置に基づいて、焦点距離、撮影距離(合焦被写体までの距離)、または撮影倍率などを検出し、カメラボディ10側へ伝達する。なお、撮影倍率については、焦点距離および撮影距離に基づいて、カメラボディ10内で算出してもよい。さらに、レンズ情報通信部23は、ブレ補正機構30の動作状態(オン/オフなど)を検出し、カメラボディ10側へ伝達する。
なお、図1では、カメラボディ10内のモータ19で焦点制御を行う場合について説明したが、これに限定されるものではない。撮影レンズ11にレンズ内モータを搭載し、カメラボディ10側からこのレンズ内モータを駆動して焦点制御を行ってもよい。
【0008】
[焦点制御の動作説明]
図2は、本実施形態における焦点制御の動作を示す流れ図である。以下、図2に示すステップ番号に沿って、この動作を説明する。
【0009】
ステップS101: 主電源が投入されると、CPU17は、メモリ22内の被写体が動体であることを示す動体フラグ、および焦点調節制御を禁止していることを示す合焦ロックフラグを初期状態にリセットする。さらに、CPU17は、メモリ22内のAF制御モードを示す変数に、合焦判定に従って焦点制御を禁止するONESHOTモードをセットする。
【0010】
ステップS102: CPU17は、レリーズ釦21が操作されてAF起動スイッチがオンとなる所謂半押し状態となったか否かの判定を行う。半押し状態が検出されない場合、CPU17はステップS101に動作を戻す。一方、半押し状態が検出されると、CPU17はステップS103に動作を移行する。
【0011】
ステップS103: 撮影レンズ11を通過する被写体光束の一部は、レンズ群12、メインミラー13、およびサブミラー14を介して瞳分割方式の焦点検出光学系を有するAFモジュール15に導かれる。この光束は、AFモジュール15内において、公知の瞳分割方式の再結像光学系を通過して、AFセンサのセンサ面に、撮影レンズの射出瞳面上の異なる部分を通過する光束による一対の被写体像(瞳分割像)を形成する。CPU17は、センサ駆動回路16を介してAFセンサを制御し、瞳分割像を光電変換した電気信号を生成する。
【0012】
ステップS104: この電気信号は、A/D変換された後、CPU17に入力される。
このような処理と併せて、CPU17は、モータエンコーダ20やレンズ情報通信部23などから、AFセンサの電荷蓄積時刻(以下、蓄積時刻T[0]という。)における平均レンズ位置(レンズ群12内の焦点調節用レンズの平均位置)を情報取得する。
さらに、CPU17は、蓄積時刻T[0]におけるレンズ駆動量の変換パラメータLD[0]を、レンズ情報通信部23から情報取得する。
【0013】
ステップS105: CPU17は、A/D変換された電気信号に基づいて、瞳分割像の相対的なずれ量を検出する。CPU17は、このずれ量に基づいて、撮影レンズ11のデフォーカス量DF[0]を求める。
【0014】
ステップS106: CPU17は、デフォーカス量DF[0]から、変換パラメータLD[0]に基づいて、被写体に合焦するためのレンズの目標駆動位置P[0]を求める。
【0015】
ステップS107: 半押し状態の期間中は、上述した処理が繰り返される。その結果得られる、複数時刻のデフォーカス量と目標駆動位置は、履歴情報としてメモリ22に記録される。
CPU107は、この履歴情報から前回の目標駆動位置P [1]を読み出し、最新の目標駆動位置P [0]との移動量から、現時点の像面移動速度V [0]を算出する。この像面移動速度V [0]も、履歴情報としてメモリ22に記憶される。
【0016】
ステップS108: CPU17は、メモリ22内の履歴情報(像面移動速度、被写体位置など)の連続性を判断することにより、前回と今回とで被写体が同一か否かを判定する。
【0017】
ステップS109: CPU17は、メモリ22内の履歴情報(像面移動速度、被写体位置など)に基づいて、焦点検出対象の被写体が動体か否かを判定する。この判定に従って、CPU17は、動体フラグの設定を行う。
【0018】
ステップS110: 続いて、CPU17は、後から詳述するAF制御モードの自動切り換えルーチンを実施し、必要に応じてAF制御モードの切り換えを行う。
【0019】
ステップS111: CPU17は、ステップS110で決定されたAF制御モードが、ONESHOTモードか否かを判断する。ONESHOTモードの場合、CPU17はステップS112に動作を移行する。一方、ONESHOTモードではなく、一旦合焦した後も焦点調節制御を継続するモードの場合、CPU17はステップS116に動作を移行する。
【0020】
ステップS112: CPU17は、メモリ22内の合焦ロックフラグを参照して、合焦ロック中か否かを判定する。合焦ロック中の場合、CPU17は、焦点制御を禁止したまま、ステップS102に動作を戻す。一方、合焦ロック中でない場合、CPU17は、ステップS113に動作を移行する。
【0021】
ステップS113: CPU17は、最新のデフォーカス量DF[0]に基づいて、合焦状態か否かを判定する。合焦状態と判定された場合、CPU17はステップS114に動作を移行する。非合焦状態と判定された場合、CPU17はステップS116に動作を移行する。
【0022】
ステップS114: CPU17は、メモリ22内の合焦ロックフラグをセットし、焦点制御を禁止する。
【0023】
ステップS115: CPU17は、この合焦ロックの設定直後、レンズ情報通信部23とデータ通信を行い、下記の情報(1)〜(4)を検出する。検出した情報は、メモリ22に記憶される。
(1)撮影レンズ11の撮影倍率
(2)撮影距離
(3)撮影レンズ11の焦点距離
(4)合焦ロックした時点のレンズ位置Plock
この動作の後、CPU17は、焦点制御を行わずに、ステップS102に動作を戻す。
【0024】
ステップS116: CPU17は、モータ駆動回路18を介してレンズ移動機構24を駆動し、レンズ群12内の焦点調節用レンズを、ステップS106で求めた目標駆動位置P[0]に移動させる。このような焦点制御の後、CPU17は、動作をステップS102に戻す。
【0025】
[AF制御モードの自動切り換えルーチン]
図3は、上述したAF制御モードの自動切り換え動作を具体的に説明する流れ図である。以下、図3に示すステップ番号に沿ってこの動作を説明する。
【0026】
ステップS201: CPU17は、ステップS105で求めたデフォーカス量DF[0]の計算データから、焦点検出結果の信頼度を求める。例えば、CPU17は、AFモジュール15から出力される瞳分割像を互いにずらしながら相関度を計算する。このとき、ずらし量に対する相関度を結ぶ線の形状が急峻であるほど、焦点検出結果の信頼度が高いと判断することが好ましい。
CPU17は、この信頼度に基づいて、焦点検出が不能であると判定すると、AF制御モードの自動切り換えルーチンを終了する。この場合、AF制御モードの自動切り換えは行われず、前回のAF制御モードが維持される。
一方、CPU17は、焦点検出が可能と判断した場合、ステップS202に動作を移行する。
【0027】
ステップS202: CPU17は、ステップS108の判定結果に基づいて、焦点検出中の被写体が、前回と同一か否かを判定する。
CPU17は、被写体が前回と異なると判断した場合、AF制御モードの自動切り換えルーチンを終了する。この動作によって、被写体の手前を物体が瞬間的に横切る場合などに、AF制御モードを不用意に切り換えることがなくなる。
一方、CPU17は、被写体が前回と同一と判断した場合、ステップS203に動作を移行する。
【0028】
ステップS203: CPU17は、メモリ22内のAF制御モードを示す変数を参照し、現時点のAF制御モードが、ONESHOTモード/CONTINUOUSモードのいずれであるかを判定する。ONESHOTモードは、合焦状態を検出すると合焦ロックをかけるモードである。CONTINUOUSモードは、合焦状態を検出しても焦点制御を継続するモードである。
ここで、CONTINUOUSモードの場合、AF制御モードの自動切り換えルーチンを終了する。この場合、AF制御モードの自動切り換えは行われず、前回のAF制御モードが維持される。
一方、ONESHOTモードの場合、CPU17はステップS204に動作を移行する。
【0029】
ステップS204: CPU17は、メモリ22内の合焦ロックフラグを参照して、現時点において合焦ロック中か否かを判定する。
合焦ロック中の場合、CPU17はステップS206に動作を移行する。
一方、合焦ロック中ではない場合、CPU17はステップS205に動作を移行する。
【0030】
ステップS205: CPU17は、メモリ22内の動体フラグを参照し、被写体が動体であるか否かを判断する。
動体被写体の場合、CPU17は、ステップS211に動作を移行する。この動作では、動体被写体に対応するため、AF制御モードがCONTINUOUSモードに切り換えられる。
一方、静止被写体の場合、CPU17は、AF制御モードの自動切り換えルーチンを終了する。この場合、AF制御モードの自動切り換えは行われず、前回のAF制御モードが維持される。
【0031】
ステップS206: CPU17は、合焦ロックの設定時点のレンズ位置Plockをメモリ22から読み出す。さらに、CPU17は、ステップS106で求めた目標駆動位置P [0]をメモリ22から読み出す。CPU17は、これらの値を用いて、前回合焦していた被写体がどれだけ移動したかを示す量(以下、合焦位置差dpという)を算出する。
dp = Plock − P [0]
なお、この合焦位置差dpは、後ピン状態において正の値をとり、前ピン状態において負の値をとるものとする。
【0032】
ステップS207: 続いて、CPU17は、後述する合焦ロック解除の判定基準とする所定量AFsevth2を下記の少なくとも一つの設定ルールに従って設定する。
【0033】
(1)設定ルールその1
CPU17は、ステップS115で求めた撮影倍率が相対的に大きい場合に、所定量AFsevth2を大きくする。例えば、撮影倍率が1/40倍よりも小さい場合、所定量AFsevth2に300μmに相当するパルス値を設定する。また、撮影倍率が1/40倍〜1/10倍の場合、所定量AFsevth2に600μmに相当するパルス値を設定する。さらに、撮影倍率が1/10倍よりも大きい場合、所定量AFsevth2に1mmに相当するパルス値を設定する。
【0034】
(2)設定ルールその2
CPU17は、ステップS115で求めた撮影距離が相対的に近い場合に、所定量AFsevth2を大きくする。例えば、焦点距離300mmの撮影レンズにおいて、撮影距離が12mよりも遠くなった場合(撮影倍率1/40倍未満に相当)、所定量AFsevth2に300μmに相当するパルス値を設定する。一方、撮影距離が12m〜3mの場合(撮影倍率1/40倍〜1/10倍に相当)、所定量AFsevth2に600μmに相当するパルス値を設定する。さらに、撮影距離が3m未満の場合(撮影倍率1/10倍以上に相当)、所定量AFsevth2に1mmに相当するパルス値を設定する。
【0035】
(3)設定ルールその3
CPU17は、ステップS115で求めた焦点距離が相対的に長い場合に、所定量AFsevth2を大きくする。例えば、撮影距離1.8mの状態において、焦点距離が44mmよりも短い場合(撮影倍率1/40倍未満に相当)、所定量AFsevth2に300μmに相当するパルス値を設定する。一方、焦点距離が44mm〜164mmの場合(撮影倍率1/40倍〜1/10倍に相当)、所定量AFsevth2に600μmに相当するパルス値を設定する。さらに、撮影距離が164mmより長い場合(撮影倍率1/10倍以上に相当)、所定量AFsevth2に1mmに相当するパルス値を設定する。
【0036】
ステップS208: 続いて、CPU17は、ステップS207で設定した所定量AFsevth2を下記の調整ルールに従って増減調整する。
【0037】
(1)調整ルールその1
CPU17は、撮影の際に制御される撮影レンズのF値が相対的に大きい場合、所定量AFsevth2を大きな値に調整する。この所定量AFsevth2の調整幅や調整段数については、撮影レンズごとの焦点深度の変化などを考慮しつつ実験的に設定することが好ましい。
この調整によって、撮影時の制御F値によって変化する焦点深度や被写界深度を踏まえながら、合焦ロック解除の是非を判断することができる。なお、一般的には、撮影時の制御F値と焦点深度は略比例関係を示す。そのため、後ピン判定の基準である所定量AFsevth2を、撮影時の制御F値に略比例するように増減調整することが好ましい。
【0038】
(2)調整ルールその2
CPU17は、ブレ補正機構30が非動作状態の場合、所定量AFsevth2を大きな値に調整する。
通常、ブレ補正機構30が動作状態では、手ブレの影響が軽減されるため、カメラの焦点検出エリアに被写体像が安定して 位置する。また、AFモジュール15内の瞳分割像もブレ軽減されるため、デフォーカス量の検出精度も高くなる。これらの理由から、ブレ補正機構30が動作状態にある場合、デフォーカス量および合焦位置差dpの変動は小さくなる。この変動の減少幅に従って、所定量AFsevth2を小さな値に調整することが好ましい。
逆に、ブレ補正機構30が非動作状態では、手ブレの影響が軽減されず、カメラの焦点検出エリアから被写体像が外れやすくなる。また、AFモジュール15内の瞳分割像にもブレが生じるため、デフォーカス量の検出精度が低くなる。これらの理由から、ブレ補正機構30が非動作状態にある場合、デフォーカス量および合焦位置差dpの変動は大きくなる。この変動の増加幅だけ余裕を見て、所定量AFsevth2を大きな値に調整することが好ましい。
【0039】
(3)調整ルールその3
CPU17は、ステップS201で求めた焦点検出結果の信頼度が低い場合、所定量AFsevth2を大きな値に調整する。
通常、信頼度が低いと判定される状況では、デフォーカス量および合焦位置差dpの変動は大きくなる。このような状況では、変動の増加幅だけ余裕を見て、所定量AFsevth2を大きな値に調整することが好ましい。
【0040】
ステップS209: CPU17は、合焦位置差dpが、所定量AFsevth2以上の後ピンを示すか否かを判定する。
ここで、合焦位置差dpが所定量AFsevth2より小さい場合、CPU17は合焦ロックを維持したまま、AF制御モードの自動切り換えルーチンを終了する。
一方、合焦位置差dpが所定量AFsevth2より大きい場合、CPU17はステップS210に動作を移行する。
【0041】
ステップS210: ここでは、合焦位置差dpが所定量AFsevth2より大きいため、合焦ロックをかけた被写体が近づいてきて(もしくはカメラが近づいて)、後ピン状態になった判断できる。この場合、CPU17は、合焦ロックフラグをリセットして、焦点制御の禁止状態を解除する。
【0042】
ステップS211: さらに、CPU17は、メモリ22内のAF制御モードを示す変数に、CONTINUOUSモードを示す値をセットする。このような動作の後、AF制御モードの自動切り換えルーチンを終了する。
【0043】
[本実施形態の効果など]
本実施形態では、合焦ロック中に、所定量以上の後ピンを検出すると、合焦ロックを解除し、焦点制御を再開する。その結果、後ピンすなわち接近方向に移動する被写体に対して継続的にピントを合わせることが可能になる。
【0044】
また、本実施形態では、撮影倍率が大きい場合に、合焦ロック解除の判定基準である所定量を大きくする。その結果、被写体のわずかな光軸方向の移動によってピント変動が大きくなっても、合焦ロックを誤って解除するおそれが低くなる。
【0045】
さらに、本実施形態では、撮影距離(被写体距離)が近い被写体に合焦ロックすると、合焦ロック解除の判定基準である所定量を大きくする。その結果、同様にピント変動が大きく生じても、合焦ロックを誤って解除するおそれが低くなる。
【0046】
また、本実施形態では、撮影レンズの焦点距離が長い場合、合焦ロック解除の判定基準である所定量を大きくする。その結果、ピント変動が大きく生じても、合焦ロックを誤って解除するおそれが低くなる。
【0047】
さらに、本実施形態では、撮影時の制御F値が大きい場合、合焦ロック解除の判定基準である所定量を大きくする。その結果、撮影時の制御F値が大きいために焦点深度が深くなると予測される状況では、合焦ロックの不用意な解除を避けることが可能になる。
【0048】
また、本実施形態では、ブレ補正機構が動作していない場合、合焦ロック解除の判定基準である所定量を大きくする。その結果、手ブレなどの影響でデフォーカス量に大きなバラツキが生じても、合焦ロックを誤って解除するおそれが低くなる。
【0049】
さらに、本実施形態では、焦点調節状態の信頼度が低い場合、合焦ロック解除の判定基準である所定量を大きくする。その結果、被写体コントラストが低いなどの影響でデフォーカス量に大きなバラツキが生じても、合焦ロックを誤って解除するおそれが低くなる。
【0050】
[実施形態の補足事項]
なお、上述したAF制御モードの自動切り換えルーチンにおいて、静止被写体を検出した場合(例えば、動体フラグがリセットされた場合など)、CONTINUOUSモードからONESHOTモードへの自動切り換えを行っても良い。
【0051】
また、上述したAF制御モードの自動切り換えルーチンでは、合焦ロックの解除時に、AF制御モードをONESHOTモードからCONTINUOUSモードに切り換える(ステップS211参照)。この動作により、動体判定が困難なほど低速な被写体であっても、CONTINUOUSモードの焦点制御に移行することが可能になる。
【0052】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、合焦ロックの解除時に、AF制御モードをONESHOTモードにそのまま維持してもよい。この動作では、合焦ロックの解除後に合焦状態を検出すると、再び合焦ロックがかかる。例えば、動体判定が困難な低速の被写体では、このような動作により合焦ロックおよび合焦ロック解除を断続的に繰り返す。その結果、低速の被写体に対して、断続的な焦点制御を実施することが可能になる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、撮影レンズ11を合焦させた時のレンズ位置に基づいて撮影距離を求め、合焦ロック時の被写体距離と見なしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、撮影レンズのレンズ位置とデフォーカス量などから被写体距離を求めてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、瞳分割方式の焦点調節について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アクティブ測距方式、パッシブ測距方式その他の焦点調節に本発明を適用してもよい。
【0055】
なお、上述した実施形態では、合焦位置差dpについて後ピン判定を行い、その判定結果に基づいて合焦ロック解除を決定している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。デフォーカス量などから後ピン判定を行い、その判定結果に基づいて合焦ロック解除を決定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、焦点調節装置などに利用可能な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】カメラのブロック図である。
【図2】焦点制御の動作を示す流れ図である。
【図3】AF制御モードの自動切り換え動作を説明する流れ図である。
【符号の説明】
【0058】
10…カメラボディ,11…撮影レンズ,12…レンズ群,13…メインミラー,14…サブミラー,15…AFモジュール,16…センサ駆動回路,17…CPU,18…モータ駆動回路,19…モータ,20…モータエンコーダ,21…操作部,22…メモリ,23…レンズ情報通信部,24…レンズ移動機構,30…ブレ補正機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズの焦点調節状態を繰り返し検出する焦点検出部と、
前記焦点調節状態に基づいて、前記撮影レンズの焦点制御を行う焦点制御部と、
前記焦点調節状態に基づいて前記撮影レンズが合焦していると見なせる場合に、前記焦点制御を禁止する禁止部と、
前記焦点制御が禁止されている状態で、前記焦点調節状態が所定量以上の後ピンを示す場合に、前記焦点制御の禁止を解除する解除部と、
被写体の撮影倍率に関する情報を検出する情報検出部とを備え、
前記解除部は、前記情報が前記撮影倍率が大きいことを示す場合は、前記撮影倍率が小さいことを示す場合に比べて前記所定量を大きくする
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点調節装置において、
前記情報検出部は、前記情報として前記被写体の距離を検出し、
前記解除部は、前記距離が近いことを示す場合は、前記距離が遠いことを示す場合に比べて前記所定量を大きくする
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項3】
請求項2に記載の焦点調節装置において、
前記距離は、前記撮影レンズに設定された撮影距離である
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項4】
請求項1に記載の焦点調節装置において、
前記情報検出部は、前記情報として前記撮影レンズの焦点距離を検出し、
前記解除部は、前記焦点距離が長いことを示す場合は、前記焦点距離が短いことを示す場合に比べて前記所定量を大きくする
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の焦点調節装置において、
前記解除部は、
前記撮影レンズの撮影時に制御されるF値を検出し、
前記撮影F値が大きいことを示す場合は、前記撮影時に制御されるF値が小さいことを示す場合に比べて前記所定量を大きくする
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の焦点調節装置において、
前記解除部は、
撮影レンズによる像のブレを補正するブレ補正機構の動作状態を検出し、
前記ブレ補正機構が動作していない場合は、前記ブレ補正機構が動作している場合よりも前記所定量を大きくする
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の焦点調節装置において、
前記解除部は、
前記焦点調節状態の信頼度を検出し、
前記信頼度が低いことを示す場合は、前記信頼度が高いことを示す場合に比べて、前記所定量を大きくする
ことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の焦点調節装置を搭載した
ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−122696(P2008−122696A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306857(P2006−306857)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】