説明

田植機におけるロータリー式苗植付け機構

【課題】エンジンの動力を、走行機体の株間変速機構を介して苗植付け機構に伝達するように構成して成る田植機において,前記株間変速機機構を,疎植え又は標準植えに操作したときと,密植えに操作したときとの両方において,苗植えが最適にできるようにする。
【解決手段】前記株間変速機構28から前記苗植え付機構へのPTO動力伝達機構の途中に,前記苗植え付機構を,その一回転のうち各苗植体が下死点前後付近における位相にあるときにおいて部分的に速くするというように不等速に回転するための不等速回転機構29を設け,前記PTO動力伝達機構のうち前記不等速回転機構より下流側において不等速回転する部分を,前記株間変速機構にて疎植え又は標準植えにしたときの回転数と,前記前記株間変速機構にて密植えにしたときの回転数との間の回転数において共振回転させる田植機におけるロータリー式苗植付け機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,田植機において,一つの回転ケースに,分割爪を備えた苗植体を少なくとも二つ設けて,この各苗植体を,当該苗植体が前方の苗載台の方向を向いたた姿勢のままで回転ケースの回転によって前記苗載台と圃場面との間を上下に往復動するように構成して成るロータリー式の苗植付け機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のロータリー式苗植付け機構は,例えば,特許文献1等に記載されているように,田植機における伝動ケースに横向きに軸支した駆動軸に回転ケースを固着し,この回転ケースのうち前記駆動軸を中心とする円周上の少なくとも等分二箇所に,分割爪を備えた苗植体を取付ける一方,前記回転ケースに,当該回転ケースにおける一回の公転苗に前記各苗植体が逆方向に一回だけ自転するようにした連動機構を設けて,前記各苗植体を,その分割爪が前方に位置する苗載台の方向を向いた姿勢で苗載台と圃場面との間を往復動するに際して,前記連動機構を,前記回転ケースの公転に伴う前記各苗植体における逆方向への自転を,当該苗植体における下死点前後付近において遅らせるという不等速連動機構にすることにより,前記各苗植体における分割爪の先端が,上下に長い楕円状の閉ループの運動軌跡を描くように構成している。
【0003】
また,ロータリー式苗植付け機構を備えた田植機による田植え作業に際しては,圃場面に対して,単位面積当たりの植付け株数を50〜60株以下にするという疎植え又は標準植えにする場合と,単位面積当たりの植付け株数を前記よりも多くするという密植えにする場合とがある。
【0004】
この場合,前記した植付け株数の変更は,前記回転ケースにおける回転速度を,株間変速機構によって,田植機における前進走行速度に対して相対的に,疎植え又は標準植えの場合において遅くし,密植えの場合において速くすることによって行うという構成にしている。
【特許文献1】特開2000−139146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし,前記各苗植体の分割爪の先端における運動軌跡は,回転ケースにおける不等速連動機構によって設定されることにより,この回転ケースにおける不等速連動機構による運動軌跡を,前記回転ケースにおける回転速度を田植機の前進走行速度に対して相対的に遅くしての疎植え又は標準植えに合わせて,この疎植え又は標準植えの場合に最適になるように,つまり,前記分割爪が圃場面からの抜け上昇するときの速度を,当該分割爪が圃場面に差し込まれた状態での前方への引きずりを少なくするように設定すると,前記回転ケースの回転速度を田植機の前進走行速度に対して相対的に速くすることによって密植えにした場合において,前記分割爪が圃場面から抜け上昇が,前記回転ケースの回転速度を速くした分だけ,疎植え又は標準植えの場合よりも速くなるから,当該分割爪による泥土の後方へのはね上げが増大することにより,圃場面には,植付け苗の後側に大きな掘り起こし穴があくことになる。
【0006】
さりとて,前記回転ケースにおける不等速連動機構による運動軌跡を,前記回転ケースにおける回転速度を田植機の前進走行速度に対して相対的に速くしての密植えに合わせて,この密植えの場合に最適になるように,つまり,前記分割爪が圃場面からの抜け上昇するときの速度を,当該分割爪が圃場面から抜け上昇するときにおける泥土の後方へのはね上げを少なくするように設定すると,前記回転ケースの回転速度を田植機の前進走行速度に対して相対的に遅くすることによって疎植え又は標準植えにした場合において,前記分割爪における圃場面からの抜け上昇が,前記回転ケースの回転速度を遅くした分だけ,密植えの場合によりも遅くなるから,当該分割爪が圃場面に差し込まれた状態で前方に引きずられることになって,圃場面には,植付け苗の前側に大きな掘り起こし穴があくことになる。
【0007】
つまり,前記ロータリー式苗植付け機構においては,その植付け性能を,回転ケースの回転数を株間変速機構にて遅くしての疎植え又は標準植えに適合するように設定すると,回転ケースの回転数を株間変速機構にて速くして密植えにした場合に適切な苗植付けができず,勿論,その植付け性能を,回転ケースの回転数を株間変速機構にて速くしての密植えに合わせて設定すると,回転ケースの回転数を株間変速機構にて遅くして疎植え又は標準植えにした場合に適切な苗植付けができないという問題があった。
【0008】
本発明は,動力伝達機構を,不等速回転して,特定の回転数において共振するように構成した場合に,前記不等速回転における位相が,共振回転数を挟んでこれよりも低い側と高い側とにおいて,略反転するするように回転方向にずれることに着目して,このことを利用して,前記問題を解消したロータリー式苗植付け機構を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この技術的課題を達成するため本発明の請求項1は,
「動力源から株間変速機構を経て動力伝達される横向きの駆動軸に回転ケースを固着し,この回転ケースのうち前記駆動軸を中心とする円周上の少なくとも等分二箇所に,分割爪を備えた苗植体を設ける一方,前記回転ケースに,当該回転ケースにおける一回の公転中に前記苗植体を逆方向に一回だけ自転して前記各苗植体をその分割爪が苗載台の方向を向いた姿勢で上下に往復動し,且つ,前記各苗植体における自転をその往復動のうち下死点前後付近において遅らせるようにした不等速連動機構を設けて成るロータリー式苗植付け機構において,
前記株間変速機構から前記駆動軸へのPTO動力伝達機構の途中に,前記回転ケースを,当該回転ケースの一回転のうち前記各苗植体が下死点前後付近における位相にあるときにおいて部分的に速くするというように不等速に回転するための不等速回転機構を設け,前記PTO動力伝達機構のうち前記不等速回転機構より下流側において不等速回転する部分を,前記株間変速機構にて疎植え又は標準植えにしたときの回転数と,前記前記株間変速機構にて密植えにしたときの回転数との間の回転数において共振するように構成した。」
ことを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記不等速回転機構が,互いに噛合する一対の非円形歯車である。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
前記請求項1に記載した構成において,前記回転ケースの回転数を前記株間変速機構にて疎植え又は標準植えにするように遅くした状態においては,前記前記PTO動力伝達機構のうち前記不等速回転機構より下流側において不等速回転する部分における回転数は,当該不等速回転する部分における共振回転数を越えていないことにより,前記回転ケースの回転数をその不等速回転機構にて回転速度を速くする位相は,前記回転ケースの苗植体における下死点前後付近のままである。
【0012】
この場合において,前記分割爪が圃場面から抜け上昇するときの速度を,前記回転ケースにおける不等速連動機構及び前記不等速回転機構にて,疎植え又は標準植えに合わせて,泥土の前方へのはね上げ及び分割爪の引きずりを少なくするように設定することにより,疎植え又は標準植えを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を小さくした状態のもとで安定して行うことができる。
【0013】
次に,前記回転ケースの回転数を前記株間変速機構にて密植えにするように速くした状態においては,前記PTO動力伝達機構のうち前記不等速回転機構より下流側において不等速回転する部分における回転数は,当該不等速回転する部分における共振回転数を越えていることにより,前記不等速回転機構による不等速回転の位相は,前記共振回転数を越えていない場合における不等速回転の位相に対して略逆転するというように,不等速回転のうち回転速度が速くなる位相が,前記回転ケースの苗植体における下死点前後付近から回転方向に適宜回転角度だけ自動的にずれることになる。
【0014】
これにより,前記分割爪が圃場面から抜け上昇するときの速度が,回転ケースにおける回転数を密植えにすべく速くしたことによって応じて速くなることを確実に回避できて,前記抜け上昇するときの速度を,前記疎植え又は標準植えの場合に近い値に維持することができるから,密植えを,分割爪の後方への引きずりを少なくして、植付け苗の前後における掘り起こし穴を小さくした状態のもとで安定して行うことができる。
【0015】
また,前記分割爪が圃場面から抜け上昇するときの速度を,疎植え又は標準植えに合わせて設定することに代えて,密植えに設定した場合においても,前記株間変速機構を疎植え又は標準植えに操作することにより,前記分割爪が圃場面から抜け上昇するときの速度を,自動的に,前記疎植え又は標準植えに合わせることができる。
【0016】
つまり,本発明によると,前記株間変速機構を密植え又は疎植え及び密植えいずれに操作するたけで,自動的に,前記株間変速機構を密植え又は疎植え及び密植えの場合においても,略同じの最適な植付け状態にして行うことができる。
【0017】
また,請求項2に記載した構成にすることにより,前記不等速回転機構を,その構成を簡単にして小型・軽量化できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,本発明の実施の形態を,乗用型の多条植え田植機に適用した場合の図面について説明する。
【0019】
図1及び図2において,符号1は,8条植えの乗用型田植機を示し,この田植機1は,左右一対の前輪3及び後輪4にて支持された走行機体2と,この走行機体2の後部に昇降可能に装着されて圃場面5に対して苗植付けを行う苗植装置6とを備え,前記走行機体2には,エンジン7が搭載されるとともに,操縦座席8が設けられ,更に,前記エンジン7からの動力を適宜変速して前記各車輪3,4に伝達するための走行ミッション9が搭載され,矢印Aで示す方向に適宜速度で前進走行するように構成され,加えて,前記走行機体2のうち前記操縦座席8の後部に隣接する部分には,前記圃場面5のうち前記苗植装置6による苗植えの直前の部分に肥料を散布するための肥料散布機構10が搭載されている。
【0020】
この場合において,前記走行機体2には,その前部に前記走行ミッション9を備えたフロントアクスル11が,その後部に前記フロントアクセル11に筒型フレーム12を介して連結したリアアクスル13が各々取付けられている。
【0021】
また,前記両前輪3は前記フロントアクスル11に,前記両後輪4は前記リアアクスル13に各々取付けられ,前記エンジン7からの動力は,先ず前記走行ミッション9にて適宜変速したのち前記フロントアクスル11内に車軸(図示せず)を介して前記両前輪3に伝達されると同時に,前記筒型フレーム12内の軸(図示せず)及び前記リアアクスル13内の車軸(図示せず)を介して前記両後輪4に伝達される。
【0022】
前記苗植装置6は,前記エンジン7から動力伝達される伝動ケース14と,この伝動ケース14に横方向に適宜の条間隔で並列に配設した8個のロータリー式苗植付け機構15と,左右往復移動するように後方下向き傾斜配設された苗載台16と,前記各苗植付け機構15の間において前記圃場面5の表面を滑走するように配設した複数個のフロート17とによって構成されている。
【0023】
前記伝動ケース14は,図6に示すように,前記エンジン7からの動力入力軸18を備えた第1ケース19と,この第1ケース19から横方向に延びるパイプ状の第2ケース20と,この第2ケース20から横方向に適宜間隔を隔てて後方に延びる四つの第3ケース21とから成り,前記各苗植付け機構15は,前記各第3ケース21の後端に水平横向きに軸支した駆動軸22の左右両端に取付けられる一方,前記第2ケース20内には,前記各第3ケース21における駆動軸22に軸23を介して動力伝達するための伝達軸24が設けられ,また,前記第1ケース19内には,前記動力入力軸18から傘歯車機構25を介して動力伝達される主動軸26と,この主動軸26から前記伝達軸24への動力伝機構27が設けられている。また,前記主動軸26から図示しない苗載台横送り機構に動力伝達される。
【0024】
一方,前記走行機体2における走行ミッション9には,前記エンジン7から分岐した動力を入力とする株間変速機構28が設けられており,また,前記リアアクスル13の上面には,詳しくは後述する不等速回転機構29が取付けられ,前記株間変速機構28からの第1PTO動力伝達軸30が,前記不等速回転機構29における入力軸31に連結され,この不等速回転機構29における出力軸32に,前記苗植装置6における動力入力軸18が,両端に自在軸継ぎ手を有する第2PTO動力伝達軸33を介して連結されており,前記各苗植付け機構15における駆動軸22の回転速度を,前記株間変速機構28にて適宜変速するように構成されている。
【0025】
前記各苗植付け機構15は,図5〜図8に示すように構成されている。
【0026】
すなわち,前記駆動軸22のうち前記第3ケース21から突出する両端には,側面視で小判型にした回転ケース34を着脱可能に固着して,この回転ケース34を,前記駆動軸22によって田植機1の側面視において矢印Bで示すように,反時計方向に回転(公転)するもので,この回転ケース34内における前記駆動軸22上には,太陽歯車35が回転自在に被嵌され,この太陽歯車35は,前記第3ケース21に対して連結部材36を介して回転不能に係止されている。
【0027】
前記回転ケース34の外周部,つまり,左右両端部には,前記駆動軸22からの距離が等しい位置に,後述する押し出し具用の作動軸37が駆動軸22と平行に軸支されている。また,前記回転ケース34内における両作動軸37上には,中空状の植付け軸38が回転自在に被嵌されている。
【0028】
この植付け軸38及び前記作動軸37の各端部を回転ケース34の側面から外に突出して,この各植付け軸38の突出端の各々に,アルミ合金等の軽合金にて上面に開放するように中空状にした苗植体39をボルト40にて取付け,この各苗植体39の先端におけるボス部39aには,分割爪40が前記苗載台16に向かう姿勢位置にして固着されている一方,前記作動軸37の先端は,前記苗植体39の中空部内に突出して,この部分に,押し出し作動用のカム41が固着されている。
【0029】
そして,前記各植付け軸38上には,前記太陽歯車35と同歯数の遊星歯車42が嵌着されている一方,前記回転ケース34内には,前記太陽歯車35と前記遊星歯車42とに同時に噛合する中間歯車43を設けて,歯車列機構を構成して,この歯車列機構にて,前記回転ケース34が反時計方向の一回だけ公転するとき,前記各植付け軸38を時計方向に一回だけ自転することにより,前記各苗植体39を,その分割爪40が苗載台16に向かう姿勢を保持した状態で,前記苗載台16と圃場面5との間を往復動するように構成している。
【0030】
前記歯車列機構を構成する前記太陽歯車35,前記遊星歯車42及び前記中間歯車43を,例えば特公昭63−20486号公報及び特開昭63−74413号公報等に記載されているように,偏芯歯車等の非円形歯車に構成することにより,前記各苗植体39における分割爪40の先端が,図5に図示したように,上下方向に長い楕円状閉ループの運動軌跡44を描くように構成している。
【0031】
前記各苗植体39におけるボス部39aには,押し出し具を構成する押し出し軸45が,前記分割爪40の長手方向と平行に延びる軸線方向に摺動自在に貫通するように設けられ,その下端には断面U字状にした押し出し片46が,前記分割爪40の後面に近接するように固定されており,前記押し出し軸46の上端は苗植体39内に突出され,この押し出し軸45の上端に,前記苗植体39内に上下方向に揺動回動するようにピン46にて枢着して成る押し出しレバー47の先端が,当該押し出しレバー47における下向き回動により前記押し出し軸45が分割爪40の先端部に向かう方向に前進動し,当該押し出しレバー47における上向き回動により前記押し出し軸45が分割爪40の先端部から根元部の方向に後退動するように,連結片48を介して連結されている。
【0032】
また,前記苗植体39内には,前記押し出しレバー47を下向き方向に付勢するばね手段49が設けられている一方,前記押し出しレバー47における基端を,前記押し出し作動用カム41の外周面に接当することにより,前記回転ケース34の回転に連動して,前記各苗植体39における分割爪40の先端が回転ケース34の回転に伴ってその往復動のうち下降下限における下死点の近傍に来たとき,前記押し出しレバー47が前記ばね手段49の押圧付勢によって下向きに回動し,各苗植体39が回転ケース34の回転に伴ってその往復動のうち下死点から上昇動するとき,前記押し出しレバー47が前記ばね手段49に抗して上向きに回動するように構成している。
【0033】
更にまた,前記苗植体39における底面板には,当該苗植体39内に突出するボス部50を一体的に設け,このボス部50内に,ゴム等の軟質弾性体51を,着脱可能に装填して,この軟質弾性体51の上面に,前記押し出しレバー47がその下向き回動の終端において接当するように構成する。
【0034】
一方,前記不等速回転機構29は,図9及び図10に示すように構成されている。
【0035】
すなわち,歯車ケース53内に,前記入力軸31及び出力軸32を適宜軸間距離を隔てて平行に軸支するとともに,前記入力軸31と出力軸32との間に中間軸53を平行に軸支し,この中間軸53と,前記入力軸31とを,互いに噛合する一対の歯車54,55にて前記入力軸31の回転が同じ回転数で前記中間軸53に伝達するように連動するように構成している一方,前記中間軸53と,前記出力軸32とを,互いに噛合する一対の歯車56,57にて前記中間軸53の回転が同じ回転数で前記出力軸32に伝達するように連動するように構成している。
【0036】
そして,前記中間軸54と前記出力軸32との間において互いに噛合する一対の歯車56,57を,図10に示すように,その中心O1を各々における軸の中心から適宜寸法eだけ偏芯した偏芯歯車等の非円形歯車に構成することにより,前記回転ケース34を,当該回転ケース34における回転速度がその一回転のうち前記各苗植体39が下死点前後付近における位相位置にあるときにおいて部分的に速くなるように不等速に回転するように構成する。
【0037】
また,前記不等速回転機構29は,前記走行ミッション9における株間変速機構28からの第1PTO動力伝達軸30が,平面視(図4)において走行方向に真っ直ぐに延びるように,片側にずれた部位において前記リアアクスル13における上面に対して着脱可能に取付けられ,前記リアアクスル13の上面のうち前記不等速回転機構29と反対側にずれた部位には,前記肥料散布機構10のうち送風フアン10aが設けられている。
【0038】
前記回転ケース34の矢印B方向への回転(公転)に伴って,その公転の回転角度と同じ回転角度だけ矢印B方向とは逆向きの方向に植付け軸38を中心として苗植体39が自転するから,各苗植体39は,その分割爪40が苗載台16の方向を向いた状態で上下方向に往復動するように旋回運動することになり,この旋回運動中において,苗載台16の上面に面する側において上から下に下降するとき,先端の分割爪40にて苗載台16上の苗マットから苗を一株だけ分割したのち,この一株の苗を,その下降下限の下死点近傍において分割爪40の先端が圃場面5中に進入する。
【0039】
このとき,前記苗植体39内における押し出しレバー47が,ばね手段49のばね力にて下向きに回動することにより,押し出し片46が分割爪40の先端に向かって前進動するから,前記分割爪40の先端における一株の苗は,押し出されるようにして圃場面5に植付けられる。
【0040】
この苗の植付けが終わると,前記押し出し片47が後退動すると同時に,分割爪40は,圃場面5より抜けるように上昇動する。
【0041】
そして,この田植え作業を,3.3平方メートル当たりの植付け株数を50〜60株より少ない疎植え又は標準植えにして行う場合は,前記回転ケース34における回転数を,前記株間変更機構28における変速操作にて当該疎植え又は標準植えのときにおける回転数N1にする一方,前記田植え作業を,3.3平方メートル当たりの植付け株数が前記疎植え又は標準植えより多い密植えにして行う場合は,前記回転ケース34における回転数を,前記株間変更機構28における変速操作にて当該密植えのときにおける回転数N2に速くする。
【0042】
この田植え作業に際して,前記回転ケース34は,前記不等速回転機構29によって,,その回転速度がその一回転のうち前記各苗植体39が下死点前後付近における位相位置にあるときにおいて部分的に速くなるように不等速に回転される。
【0043】
そこで,前記回転ケース34の各苗植体39における自転が下死点前後付近において速くなることで,その分割爪41が圃場面5から抜き上昇するときの速度を,前記回転ケース34における非円形歯車機構35,42,43及び前記不等速回転機構29における非円形歯車56,57によって,前記回転ケース34における回転数N1の疎植え又は標準植えにした場合に,泥土の後方へのはね上げ及び分割爪の引きずりを少なくするように設定することにより,前記分割爪40の先端は,図5に符号44′で示すような走行運動軌跡を描くから,前記疎植え又は標準植えを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を小さくした状態のもとで安定して行うことができる。
【0044】
次に,前記株間変更機構28から前記苗植装置6に至るPTO動力伝達機構のうち前記不等速回転機構29より下流側において不等速回転する部分,つまり,前記第2PTO動力伝達軸33,前記動力入力軸18,前記伝達軸24及び前記軸23を,前記疎植え又は標準植えの回転数N1と,前記密植えの回転数N2との間における回転数において,共振するように構成する。
【0045】
なお,前記苗植装置6へのPTO動力伝達機構のうち前記不等速回転機構29より下流側において不等速回転する部分を,前記疎植え又は標準植えの回転数N1と前記密植えの回転数N2との間における回転数において共振するに際しては,前記各軸33,18,24,23における軸径及び/又は長さの設定,これら軸受け部に剛性の設定,軸受け部のガタ付きの設定,伝動ケース14にの剛性の設定を採用することかできるほか,これらのうち二種以上の組み合わせを採用することができる。
【0046】
このように構成することにより,前記回転ケース34回転数を前記株間変速機構28にて密植えにするようにN2と速くした状態においては,前記第2PTO動力伝達軸33,動力入力軸18,伝達軸24及び軸23を含む動力伝達部が不等速回転するときにおける回転数は,当該動力伝達部における共振回転数を越えていることにより,前記不等速回転機構29による不等速回転の位相は,前記共振回転数を越えていない場合における不等速回転の位相に対して略逆転するというように,不等速回転のうち回転速度が速くなる位相が,前記回転ケース34の苗植体39における下死点前後付近から回転方向に適宜回転角度だけ自動的にずれることになる。
【0047】
これにより,前記分割爪40が圃場面5から抜け上昇するときの速度が,回転ケース34における回転数を密植えにすべく速くしたことによって応じて速くなることを確実に回避できて,前記抜け上昇するときの速度を,前記疎植え又は標準植えの場合に近い値に維持することができ,従って,前記密植えしたときにおける前記分割爪40の先端における走行運動軌跡を,前記疎植え又は標準植えにしたときの走行運動軌跡44′に近似することかできる,密植えを,植付け苗の前後における掘り起こし穴を小さくした状態のもとで安定して行うことができる。
【0048】
なお,前記分割爪40が圃場面5から抜け上昇するときの速度を,疎植え又は標準植えに合わせて設定することに代えて,密植えに設定することによって,前記株間変速機構28における疎植え又は標準植えへの操作をすることにより,前記分割爪40が圃場面5から抜け上昇するときの速度を,自動的に,前記疎植え又は標準植えに合わせることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】乗用型田植機の平面図である。
【図3】走行機体の側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】図1における苗植装置の要部拡大側面図である。
【図6】図5のVI−VI視断面図である。
【図7】図5のVII −VII 視拡大断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII視拡大断面図である。
【図9】不等速回転機構の拡大縦断正面図である。
【図10】図9のX−X視断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 田植機
2 走行機体
3,4 車輪
5 圃場面
6 苗植装置
9 走行ミッション
14 伝動ケース
15 苗植付け機構
16 苗載台
17 フロート
22 駆動軸
28 株間変速機構
29 不等速回転機構
30 第1PTO動力伝達軸
31 不等速回転機構への入力軸
32 不等速回転機構からの出力軸
33 第2PTO動力伝達軸
34 回転ケース
35 太陽歯車
39 苗植体
40 分割爪
42 遊星歯車
43 中間歯車
56,57 非円形歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源から株間変速機構を経て動力伝達される横向きの駆動軸に回転ケースを固着し,この回転ケースのうち前記駆動軸を中心とする円周上の少なくとも等分二箇所に,分割爪を備えた苗植体を設ける一方,前記回転ケースに,当該回転ケースにおける一回の公転中に前記苗植体を逆方向に一回だけ自転して前記各苗植体をその分割爪が苗載台の方向を向いた姿勢で上下に往復動し,且つ,前記各苗植体における自転をその往復動のうち下死点前後付近において遅らせるようにした不等速連動機構を設けて成るロータリー式苗植付け機構において,
前記株間変速機構から前記駆動軸へのPTO動力伝達機構の途中に,前記回転ケースを,当該回転ケースの一回転のうち前記各苗植体が下死点前後付近における位相にあるときにおいて部分的に速くするというように不等速に回転するための不等速回転機構を設け,前記PTO動力伝達機構のうち前記不等速回転機構より下流側において不等速回転する部分を,前記株間変速機構にて疎植え又は標準植えにしたときの回転数と,前記前記株間変速機構にて密植えにしたときの回転数との間の回転数において共振するように構成したことを特徴とする田植機におけるロータリー式苗植付け機構。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記不等速回転機構が,互いに噛合する一対の非円形歯車であることを特徴とする田植機におけるロータリー式苗植付け機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−211949(P2006−211949A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27754(P2005−27754)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】