説明

田植機

【課題】植付部の前方に、回転運動によって圃場面を均す整地装置を具備した田植機においてミッションケース内に専用のPTO駆動機構を設けることなく整地装置への駆動伝達を確保するための技術を提供することである。
【解決手段】整地装置51の回転駆動力は後車輪12を駆動支持するリヤアクスルケース11より取り出す構造とし、該リヤアクスルケース11内の後車輪12駆動用の最終伝達軸(リヤ車軸14)に対して、動力伝達上手側の中間軸(リヤ中間軸24)より動力を分岐して前記整地装置51に駆動力を伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付部の前方に圃場面を均す整地装置を具備した田植機において、ミッションケース内に専用のPTO駆動機構を設けることなく整地装置への駆動伝達を確保するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機の一形態として、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、該植付部の前方に整地装置を具備した田植機は公知となっている(例えば「特許文献1」参照。)。
【特許文献1】特開平8−9730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記「特許文献1」によれば、整地装置への駆動伝達機構はミッションケース後部の左右中央部に設けられ、該駆動伝達機構に具備されるPTO出力軸を後方に延出し、ユニバーサルジョイントを介して整地装置の入力軸と連結することで構成されている。従って、この場合、ミッションケース内に駆動伝達機構を特段設ける必要があり、その分ミッションケースが大型化し、経済性に優れたコンパクトな機体レイアウトを構成する上で障害となっていた。
【0004】
とりわけ、小型四条クラスの田植機においては、上記比較的大型の田植機に比べて「最低地上高さ」も低く、また、ミッションケースの中央部近傍には植付部駆動用のPTO出力軸が配置されるため、整地装置用のPTO出力軸をミッションケースの左右中央部近傍、かつ、後部から後方に向かって延出する場合には、スペース的に余裕がなく、ミッションケース内に駆動伝達機構を設けることは困難であった。
【0005】
また、小型四条クラスの田植機においては、「最低地上高さ」が低いため、ミッションケースに駆動伝達機構を設けると、PTO出力軸がさらに低い配置で設けられ、圃場下方からの障害物と干渉する恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、植付部の前方に、回転運動によって圃場面を均す整地装置を具備した田植機において、ミッションケース内に専用のPTO駆動機構を設けることなく整地装置への駆動伝達を確保するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、植付部の前方に、回転運動によって圃場面を均す整地装置を具備した田植機において、該整地装置の回転駆動力は後車輪を駆動支持するリヤアクスルケースより取り出す構造とし、該リヤアクスルケース内の後車輪駆動用の最終伝達軸に対して、動力伝達上手側の中間軸より動力を分岐して前記整地装置に駆動力を伝達するものである。
【0009】
請求項2においては、前記リヤアクスルケースは左右方向に延出する中ケース体と、該中ケース体の左右両端部を塞ぐ外ケース体と、により構成し、一方の該外ケース体には開口部を設け、該開口部より前記中間軸の端部を該外ケース体の外側方向に貫通させて、整地装置の駆動力を取り出すものである。
【0010】
請求項3においては、前記一方の外ケース体と後車輪との間には中間ケースを設け、該中間ケースは側面視にて機体前方向の斜上方に延出した後、平面視にて機体左右方向内側に延出し、さらに、リヤアクスルケースの前記中間軸が挿通される部位を跨ぐように後方へと延出して、最終出力軸を取り出すものである。
【0011】
請求項4においては、前記中間ケースは側面視にて機体前方向の斜上方に延出する第一ケースと、前記リヤアクスルケースと平行に配設する第二ケースと、機体後方向に延出する第三ケースと、により連設構成され、前記整地装置の回転駆動力を断接する切替手段を前記第一ケースに設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、リヤアクスルケースを具備するミッションケース内に専用のPTO駆動機構が設けられていなくても、整地装置への駆動源を確保することができ、ミッションケース自身の大型化を防止することができる。また、整地装置は機体の進行に対する「圃場面での引き摺り」、すなわち、抵抗となって整地装置が圃場面を削る現象を防止する理由から、後車輪より速い周速によって回転させる必要がある。そこで、請求項1において、後車輪駆動用の伝達軸の増速側、つまり、動力伝達上手側の中間軸より回転駆動力を取り出すこととしため、整地装置に至るまでの伝動中間部位をコンパクトに構成することが実現でき、たとえば、駆動系の途中において設けられる増減速ケース(駆動伝達機構)の小型化を図ることができ、経済的である。
【0014】
請求項2においても、前記請求項1と同様に、ミッションケース自身の大型化の防止、および、伝導中間部位のコンパクト化を図ることができ、経済的である。
【0015】
請求項3においては、中間ケースを後車輪とリヤアクスルケースとの間に配設し、かつ、リヤアクスルケースの上方を跨ぐように設けたことにより、該中間ケースの左右方向、および、下方向からの障害物に対して、整地装置への駆動伝達機構を保護することができる。
【0016】
請求項4においては、整地装置の伝動上手側である、比較的回転速度の低い箇所で切替手段であるクラッチ機構を設けるため、オン・オフの切替動作を円滑に行うことができる。また、前記クラッチ機構はリヤアクスルケースの斜上方に配設されるため、後車輪の外側から作業者の手が届き易く、微調整やメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施例に係る田植機の全体構成を示す側面図、図2はリヤアクスルケース全体を示す平面断面図、図3は整地装置への動力取出機構を示す平面断面図、図4は同じく図3に示す矢印B方向から見た側面断面図、図5は整地装置への動力取出機構の近傍を前斜上方から見た斜視図、図6は同じく後斜上方から見た斜視図である。
【0019】
[田植機1の全体構成]
まず、本発明の一実施例に係る田植機1の全体構成について、図1を用いて説明する。なお、以下の説明では図中に示す矢印Aの方向を前方向とする。
【0020】
図1に示すように、田植機1は走行部2と植付部3とを備え、走行部2の後部において、植付部3を昇降機構4により昇降可能に連結して構成されている。走行部2は機体フレーム5を備え、その前部に設けたボンネット7内にエンジンが搭載され、その後下方には走行用ミッション8が配設されている。
【0021】
走行用ミッション8の左右両側方には、図示せぬフロントアクスルケースが配設されており、該フロントアクスルケースの左右両側にそれぞれ前車輪10・10が取り付けられている。また、機体フレーム5の後部にはリヤアクスルケース11が設けられ、該リヤアクスルケース11の左右両側にそれぞれ後車輪12・12が取り付けられている。
【0022】
そして、エンジンと走行用ミッション8とが伝動ベルトを介して連動連結され、さらに走行用ミッション8と前車輪10とがフロントアクスルケース内の動力伝達機構を介して連動連結されるとともに、該走行用ミッション8と後車輪12とが、走行用ミッション8内の伝達機構や、リヤアクスルケース11内の動力伝達機構を介して連動連結されている。
【0023】
なお、本実施例においては、ミッションケース6(図2を参照。)と、リヤアクスルケース11と、は一体的に形成されており、このような構成からなる伝動ケース内において、エンジンの動力は前車輪10、および、後車輪12へと伝達される。
【0024】
すなわち、エンジンの動力が走行用ミッション8に伝達され、次いで走行用ミッション8で変速された動力が前車輪10と後車輪12とにそれぞれ伝達されて、これらの前車輪10および後車輪12が駆動されるように構成されている。これにより、走行部2が前進または後進走行可能とされている。なお、前述のミッションケース6とリヤアクスルケース11と、を別体に形成してもよく、この場合、ミッションケース6よりドライブシャフト等をリヤアクスルケース11側に連結させて、エンジンの動力を後車輪12側へ伝達される構成としてもよい。
【0025】
また、走行部2には、機体フレーム5の前後中央部に運転操作部15が配置されている。この運転操作部15では、前部に走行部2の操向操作を行うためのステアリングハンドル16や、走行部2の変速操作を行うための変速ペダルなどが設けられる一方、後部に座席17が設けられ、走行部2または植付部3に対して各種操作が可能とされている。
【0026】
植付部3は植付フレーム21や植付用ミッション22や伝動軸ケース23や植付伝動ケース25などからなる植付フレーム体等から構成されており、走行部2の後方に植付フレーム21が配設され、該植付フレーム21の中央下部に植付用ミッション22が設けられている。この植付用ミッション22から伝動軸ケース23が左右方向に延設され、該伝動軸ケース23から複数の植付伝動ケース25が適切な間隔をもって後方へ延設されている。植付伝動ケース25の後部にはロータリケース27を介して植付爪28が設けられている。
【0027】
そして、植付用ミッション22と各植付伝動ケース25の植付爪28とが伝動軸ケース23や植付伝動ケース25内の動力伝達機構を介して連動連結されて、走行部2のエンジンからPTO伝動軸66(図2、および、図6参照。)などを介して植付用ミッション22に伝達された動力が、該植付用ミッション22から植付爪28に伝達されて、該植付爪28が駆動されるように構成されている。
【0028】
植付伝動ケース25の上方には苗載台29が配置され、植付フレーム21の後部に左右往復動可能に取り付けられている。こうして、苗載台29が適宜の位置に左右方向に移動された後、植付爪28により当該苗載台29上に載置された苗マットから苗株が切り取られて、圃場に植え付けられるようになっている。
【0029】
また、植付伝動ケース25の下方にはフロート装置が設けられている。フロート装置では、センターフロート31とサイドフロート32・32とが備えられ、センサーフロートとなるセンターフロート31が左右中央に位置し、サイドフロート32・32が当該センターフロート31の左右両側に位置するように配置されている。これらのセンターフロート31とサイドフロート32・32とは後部で伝動軸ケース23と平行に左右方向に延設されたフロート支持体を介して上下方向に揺動可能に支持されている。
【0030】
走行部2と植付部3との間には、昇降機構4が設けられている。昇降機構4ではリヤアクスルケース11に立設された支持フレーム67と植付フレーム21の前下部に左右揺動自在に連結された支持ブラケットとの間にトップリンク42とロワリンク43とが架設され、該ロワリンク43の前部と走行部2との間に昇降用シリンダ44が連結されている。この昇降用シリンダ44が伸縮作動することによって、トップリンク42とロワリンク43とを介して植付部3が走行部2に対して昇降するように構成されている。
【0031】
ここで、昇降用シリンダ44は図示しない油圧駆動部の油圧バルブを切り換えることにより伸縮作動する構成とされている。そして、この油圧バルブと植付部3のセンターフロート31の前端部との間には、連動ワイヤが介設されており、該連動ワイヤによりセンターフロート31の揺動に連動して油圧バルブが作動され、昇降用シリンダ44が伸縮作動されるようになっている。これにより、センターフロート31で感知した圃場の植付面Gの高さに応じて植付部3を適宜昇降させて、苗の植付深さを一定に保持することができるようになっている。
【0032】
また、後車輪12とフロート31・32との間における昇降機構4の下方には、整地装置51が設けられている。整地装置51は植付部3のセンターフロート31やサイドフロート32の前方に配設され、機体左右方向に延出する整地ローラ52を具備し、走行部2のリヤアクスルケース11に設けられた動力取出機構35を介して、連動連結されている。
【0033】
ここで、植付フレーム21には、その左右両側に具備するブラケット(図示せず。)を介して、回動支軸55が回動自在に横架されており、該回動支軸55の下方には複数のリンク機構からなる支持材57が下方に延出して設けられている。そして、該支持材57の下端部には、整地装置51が支持されており、支持材57が昇降動することにより整地装置51は昇降可動される。
【0034】
また、回動支軸55の中央部には機体前方に延出する昇降操作レバー56が取付けられ、該昇降操作レバー56を前後方向に回動することにより、支持材57を介して整地装置51を昇降させることができる。すなわち、昇降操作レバー56を前方へ回動すると、整地装置51は上昇し、逆に昇降操作レバー56を後方へ回動すると、整地装置51は下降する。
【0035】
こうして、リヤアクスルケース11に伝達された動力が動力取出機構35を介して整地ローラ52に伝達されて、該整地ローラ52が回転駆動されるように構成されている。これにより、整地装置51で圃場の枕地等の整地が行われるようになっている。
【0036】
[リヤアクスルケース11]
次に、本発明に係る動力取出機構35を具備するリヤアクスルケース11の詳細について、図2を用いて説明する。なお、以下の説明では図中に示す矢印Aの方向を前方向とする。また、本実施例におけるリヤアクスルケース11は、機体の前後方向に配設されるミッションケース6と一体構造となっているが、これに限定されるものではなく、両部材が独立した構造としてもよい。
【0037】
リヤアクスルケース11は平面視左右方向に延出して設けられ、かつ、その中央部において左右に二分割され、ボルト等により左右のケースが固設されている。リヤアクスルケース11の左右各々の内部には、リヤ中間軸24、および、リヤ車軸14が左右方向に横架されて前後平行に配設されており、両軸24・14はギアを介して連動される。
【0038】
リヤ中間軸24はリヤ車軸14に対して伝動上手側に配設され、車体中央側の先端部にはリヤ中間ギア26が固設されると伴に、リヤアクスルケース11に軸受33を介して回転自在に軸支されている。また、他方側の端部においては、リヤ車軸14に固設されたファイナルギア(減速ギア)30と噛合するギア部24aが形成されており、該ギア部24aの外側の軸部は後述の外ケース体11bに軸受34を介して回転自在に軸支されている。さらに、リヤアクスルケース11の左右一方の側、すなわち、本実施例においては左側に配設されるリヤ中間軸24については、前記軸受34に軸支された後、外ケース体11bを貫通して外部に突出されている。
【0039】
リヤアクスルケース11は左右方向に延出する中ケース体11aと、該中ケース体11aの左右両端部の開口を塞ぐように配設される外ケース体11bと、により構成される。外ケース体11bは側面視において、中ケース体11aの左右両端部おける前記開口部の外形に沿った略楕円形状に形成され、前記リヤ車軸14の配置される箇所は、すり鉢状に外側に向かって膨出し、その端面に円形の開口部11cが設けられ、該開口部11cに軸受を介してリヤ車軸14を支持し、該リヤ車軸14の他端は外側に向かって突出されている。
【0040】
また、前記外ケース体11bの前記リヤ中間軸24が配置される箇所には、円形の開口部11dが設けられており、該開口部11dに軸受34を介してリヤ中間軸24を支持し、その端部が外側に向かって突出されている。なお、リヤ中間軸24の外側突出部の先端にはスプロケット38を固設することにより、後述の動力取出機構35を介して動力を取り出せるように構成している。
【0041】
ここで、動力取出機構35の配置は本実施例のようにリヤアクスルケース11の左側に限定されるものではなく、右側であってもよい。なお、本実施例においてはリヤアクスルケース11の右側には植付部3駆動用のPTO伝動軸66が設けられているので、左右バランスをとり、また、該PTO伝動軸66との干渉を避けるため動力取出機構35の配置を左側に配置している。
【0042】
リヤアクスルケース11の左右方向中央部では走行用ミッション8(図1参照。)からの駆動力を、サイドクラッチ機構68を介して前記リヤ中間ギア26へ伝達する構成としている。
【0043】
このようにして、リヤアクスルケース11は構成されており、エンジンの駆動力が伝達されると、まず、リヤ中間ギア26を介してリヤ中間軸24に伝達され、その後、ファイナルギア30を介してリヤ車軸14へと駆動力が伝わり、後車輪12が駆動回転される。そして、上述のとおり、リヤアクスルケース11の左右一方の側からは、外ケース体11bを貫通して、リヤ中間軸24の端部を突出させることにより、該突出部からエンジンの駆動力を取り出すことが可能となる。
【0044】
従って、整地装置51の回転駆動力は後車輪12を駆動支持するリヤアクスルケース11より取り出す構造とし、該リヤアクスルケース11内の後車輪12駆動用の最終伝達軸(リヤ車軸14)に対して、動力伝達上手側の中間軸(リヤ中間軸24)より動力を分岐して前記整地装置51に駆動力を伝達するため、リヤアクスルケース11を具備するミッションケース6内に専用のPTO駆動機構が設けられていなくても、整地装置51への駆動源を確保することができ、ミッションケース6自身の大型化を防止することができる。また、整地装置51は機体の進行に対する「圃場面での引き摺り」、すなわち、抵抗となって整地装置51が圃場面を削る現象を防止するため、後車輪12より速い周速によって回転させる必要がある所、リヤ車軸14の増速側、つまり、動力伝達上手側のリヤ中間軸24より回転駆動力を取り出すため、整地装置51に至るまでの伝導中間部位をコンパクトに構成することができ、経済的である。
【0045】
また、前記リヤアクスルケース11は左右方向に延出する中ケース体11aと、該中ケース体11aの左右両端部を塞ぐ外ケース体11b・11bと、により構成し、一方の該外ケース体11bの外側方側には開口部11dを設け、該開口部11dより前記リヤ中間軸24の端部を該外ケース体11bの外側方向に貫通させて、整地装置51の駆動力を取り出すこととするため、上述と同様、ミッションケース6自身の大型化を防止することができ、伝導中間部位をコンパクトに構成することが可能なため、経済的である。
【0046】
[動力取出機構35]
次に、本発明に係る動力取出機構35の詳細について、図2、乃至、図6を用いて説明する。なお、以下の説明では図中に示す矢印Aの方向を前方向とする。
動力取出機構35は後車輪12の駆動用動力の一部を取り出し、整地装置51へ駆動伝達する機構であり、前記リヤ中間軸24の外側突出部と連結するべく、リヤアクスルケース11の左前端部に設けられる。
【0047】
動力取出機構35はリヤ中間軸24の外側突出部に固設したスプロケット38や、リヤ中間軸24と平行に配置される動力伝動シャフト19や、該動力伝動シャフト19の一端に配設されるスプロケット39や、該スプロケット39と前記スプロケット38との間に巻回する駆動チェン20や、前記動力伝動シャフト19の他端側に固設したベベルギア36を介して駆動連結される整地用出力軸9や、整地用出力軸9への動力伝達の切替を行うクラッチ機構37や、さらには、これら構成部位を保持し、外部の衝撃等から保護する中間ケース18等を備える。
【0048】
前記動力伝動シャフト19は前記リヤ中間軸24と平行に左右方向に設けられ、かつ、リヤアクスルケース11の前斜上方に配設されている。また、動力伝動シャフト19の左端部にはスプロケット39が軸支されており、駆動チェン20を介してリヤ中間軸24と駆動連結される。一方、動力伝動シャフト19の右端部にはベベルギア36が固設されており、整地用出力軸9に設けたベベルギア40と噛合されている。
【0049】
[クラッチ機構37]
前記スプロケット39と動力伝動シャフト19の間にはクラッチ機構37が設けられており、リヤ中間軸24から取出された駆動力の伝達を、容易に断接可能としている。但し、動力伝動シャフト19とベベルギア36の間、または、スプロケット38とリヤ中間軸24との間にクラッチ機構を配置することも可能である。また、前記クラッチ機構37は本実施例ではクラッチ爪の咬合により断接する構成としているが、ドッグ式や多板式等であってもよく限定するものではない。
ここで、クラッチ機構37について図3、および、図4を用いて説明する。クラッチ機構37は摺動体45や、フォーク体46や、操作レバー47等により構成される。
【0050】
前記摺動体45は筒状部材から形成され、動力伝動シャフト19の左端部に軸心方向に摺動可能、かつ、相対回転不能にスプライン嵌合されている。該摺動体45の前記スプロケット39側端部側には、爪部45aが設けられる一方、前記スプロケット39の摺動体45側には前記爪部45aと咬合する爪部39aが形成されている。該スプロケット39はブッシュ41を介して動力伝動シャフト19に回転自在に枢支されている。
【0051】
前記摺動体45の内周部において、動力伝動シャフト19の断付き部19aが設けられる側、すなわち、図3に示す右側と、前記動力伝動シャフト19に設けられた断付き部19aとの間には圧縮バネ48が設けられ、該圧縮バネ48によって摺動体45は常時、スプロケット39側に付勢されている。一方、摺動体45の爪部45aの外周部には嵌合溝45bが形成され、該嵌合溝45bにフォーク体46が嵌合されている。
【0052】
前記フォーク体46の基部は前記操作レバー47のレバー軸47aの一側に固設され、該レバー軸47aの他端は中間ケース18を貫通して前方外側に突出されると伴に、該中間ケース18に対して回動自在に軸支されている。
【0053】
このような構成において、操作レバー47を回動して摺動体45の爪部45aとスプロケット39の爪部39aを咬合させることにより、クラッチ機構37が「接」となり、リヤ中間軸24からスプロケット38、駆動チェン20、スプロケット39、摺動体45から動力伝動シャフト19へと動力が伝達されるのである。また、操作レバー47を逆方向に回動すると、前記圧縮バネ48の付勢力に抗して摺動体45が摺動されて、爪部45aと爪部39aの咬合が解除され、スプロケット39は動力伝動シャフト19上で空回りすることとなり、リヤアクスルケース11からの駆動力が断たれるのである。
【0054】
また、前記操作レバー47の上端部には連結ピン49が挿嵌されており、該連結ピン49に連動ワイヤ50(図5、および、図6参照。)の一端が連結されている。
【0055】
該連動ワイヤ50の他端は植付部3側に延設されて、前記整地装置51を昇降するための回動支軸55に設けられるワイヤ連結片55a(図1を参照。)と連結され、植付部3に設けた昇降操作レバー56を回動して整地装置51を下降して作業位置とすると、前記クラッチ機構37が「接」となって前述のように動力が伝達される構成としている。なお、連動ワイヤ50は途中、中間ケース18に固設された支持部材53によって支持され、アウターワイヤ54によって外部が被覆されている。
【0056】
即ち、昇降操作レバー56を後方へ回動すると、前述のとおり、支持材57を介して整地装置51が下降すると同時に、連動ワイヤ50に加わっていた引張力が開放され、摺動体45は圧縮バネ48によってスプロケット39側に付勢され、動力伝動シャフト19に駆動力が伝達される。また、昇降操作レバー56を前方へ回動すると、逆に支持材57を介して整地装置51は上昇し、連動ワイヤ50を介して操作レバー47が機体中心方向へと回動され、これに付随して連動ワイヤ50が引っ張られ、摺動体45はフォーク体46によって圧縮バネ48側に押され、動力伝動シャフト19への駆動伝達が断たれる。
【0057】
次に、動力伝動シャフト19、および、整地用出力軸9等の配置構成について説明する。動力伝動シャフト19は上述の通り、リヤアクスルケース11の前斜上方において、機体左右方向に沿って設けられており、その左端部は平面視において、リヤ中間軸24の左端部と左右方向略同位置に配置される一方、右端は車体中央に向かって水平に延出するよう設けられている。
【0058】
動力伝動シャフト19の右端近傍には整地用出力軸9が配設されており、該整地用出力軸9は平面視にて動力伝動シャフト19に対して直交方向、かつ、側面視において後斜下方に傾いた状態で、後方に延出して設けられている。
【0059】
整地用出力軸9の前端部にはベベルギア40が固設されており、動力伝動シャフト19の右端部に設けられたベベルギア36と噛合される。
【0060】
また、前記中間ケース18は、リヤ中間軸24の端部から動力伝動シャフト19端部までの間を覆い支持する第一ケース体58と、動力伝動シャフト19を覆い支持する第二ケース体59と、整地用出力軸9を覆い支持する第三ケース体60と、により構成されており、これらケース体58・59・60は各々ボルト等により組み付けられている。
【0061】
第一ケース体58は側面視にて略長方形状、あるいは、楕円形状からなる箱形のケース体であり、リヤアクスルケース11の左方において、前斜上方に向かって延出するよう配置され、後端の上下両部より後方に向かって突出する支持部58c・58cによって、ボルト等を介して外ケース体11bに組み付けられている。
【0062】
第一ケース体58は平面視において左右両側に二分割されており、機体中心側に配置される本体部58a、および、機体外側に配置される外蓋部58bは互いにボルト等を介して着脱可能に固設されている。
【0063】
本体部58aの後部において、リヤアクスルケース11側の側面には、略筒状の突出部58fが設けられており、外ケース体11bを貫通して外部に突出したリヤ中間軸24の端部が、前記突出部58fを介して第一ケース体58の内部に挿入されている。
【0064】
また、本体部58aの前部において、リヤアクスルケース11側の側面には矩形状の膨出部58dが設けられており、その中央部の貫通孔58eを介して動力伝動シャフト19の一端部が挿入されると同時に、上述のクラッチ機構37が配設されている。
【0065】
このように、前記中間ケース18は側面視にて機体前方向の斜上方に延出する第一ケース体58と、前記リヤアクスルケース11と平行に配設する第二ケース体59と、機体後方向に延出する第三ケース体60と、により連設構成され、前記整地装置51の回転駆動力を断接する切替手段(クラッチ機構37)を前記第一ケース体58の前部に設けたことにより、整地装置51の伝動上手側である、比較的回転速度の低い箇所で切替手段であるクラッチ機構37を設けるため、オン・オフの切替動作を円滑に行うことができる。また、前記クラッチ機構37はリヤアクスルケース11の斜上方に配設されるため、後車輪12の外側から作業者の手が届き易く、微調整やメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0066】
第一ケース体58内部の前後部には、本体部58a、および、外蓋部58bの壁部を利用して、軸受61・61・・・が固設されており、挿入されたリヤ中間軸24、および、動力伝動シャフト19の端部は、各々、前記軸受61・61・・・を介して軸支されると伴に、前記第一ケース体58の内部において、両軸19・24にスプロケット38・39を介して駆動チェン20が巻回され、駆動連結される。
【0067】
このように、第一ケース体58の厚み、すなわち、平面視における横幅は、ほぼ両シャフト間19・24に設けられたスプロケット38・39や軸受を配設するのに十分な寸法を確保できれば足りるため、第一ケース体58は機体横方向に大きく突出することなく、リヤアクスルケース11と後車輪12と間に設けることができ、かつ、後述の通り第二、第三ケース体59・60は各々第一ケース体58より機体中心側に設けられるため、中間ケース18全体として後車輪12より機体方向内側に配設することができる。
【0068】
第一ケース体58前部の膨出部58d中央には第二ケース体59が固設される。第二ケース体59は筒状のケース体からなり、その両端部には板部材が貫通して固着されている。また、第二ケース体59の両端部は板部材を貫通した後、さらに僅かに延出し、突出部を形成している。
【0069】
第二ケース体59は動力伝動シャフト19と、中心軸をともにして配設され、前記端部の突出部を膨出部58dの貫通孔58eに挿嵌すると伴に、板部材を介して、ボルト等により第一ケース体58と固設される。
【0070】
このような構造により第二ケース体59を組付けることで、第一ケース体58に対する第二ケース体59の組付け位置の再現性を向上することができ、かつ、外部からの衝撃等をボルト等だけでなく、端部の突出部でも同時に保持することとなり、剛性力を高めることができる。また、第二ケース体59の他方側の端部には、第三ケース体60が固設され、第二ケース体59は、第一、および、第三ケース体58・60を連結する支持部材としての役割を有する。
【0071】
第三ケース体60は略長方形状の箱部材からなり、長手方向を機体前後方向に向けて後方へと延出し、かつ、リヤアクスルケース11の上方を跨ぐようにして配設される。第三ケース体60はその前側面部が分割構造とされており、当該分割部材からなる外蓋部60aと、その他の部材からなる本体部60bとにより構成される。
【0072】
本体部60bの左側面部、および、後面部には各々貫通孔60c・60dが設けられており、左側面部の貫通孔60cを介して、第二ケース体59の端部が固設されている。すなわち、第二ケース体59端部の突出部を前記貫通孔60cに挿嵌すると同時に、板部材を介して、ボルト等を用いて第三ケース体60の左側面部と固設されている。
【0073】
このような構造により第二ケース体59を組付けることで、上述と同様、第三ケース体60に対する第二ケース体59の組付け位置の再現性を向上することができ、かつ、外部からの衝撃等をボルト等だけでなく、端部の突出部でも同時に保持することとなり、剛性力を高めることができる。
【0074】
なお、外蓋部60aの前面右上部には、機体中心側へと延出する支持部材64が設けられており、その先端部はミッションケース6に設けられたブラケット65とボルト等を介して固設されている。
【0075】
本体部60bの内部において、後側面部の貫通孔60dには軸受62が固設され、かつ、外蓋部60aの内面にも前記軸受62と軸心を同じくする軸受63が設けられている。そして、これら軸受62・63を介して、整地用出力軸9は軸支されており、平面視にて前後方向に配設され、その後端部は貫通孔60dを介して、後方へ突出されている。
【0076】
また、本体部60bの左側面部の貫通孔60cを介して、動力伝動シャフト19の端部が第三ケース体60の内部に挿入されており、前記端部に固設されたベベルギア36を介して、貫通孔60cに設けられた軸受69により、動力伝動シャフト19の一端部は軸支されている。
【0077】
そして、第三ケース体60の内部には機体方向左側から整地用出力軸9の右先端部が、また、機体方向後側から動力伝動シャフト19の前部が各々挿入され、前先端部に固設されたベベルギア40を介して、整地用出力軸9は動力伝動シャフト19のベベルギア36と噛合し、駆動連結されている。
【0078】
このように、リヤアクスルケース11の左右一方の外ケース体11bと後車輪12との間には中間ケース18を設け、該中間ケース18は側面視にて機体前方向の斜上方に延出した後、平面視にて機体左右方向内側に延出し、さらに、リヤアクスルケース11の前記リヤ中間軸24が挿通される部位を跨ぐように後方へと延出して、最終出力軸である整地用出力軸9を後方へ取り出すこととしたことにより、該中間ケース18の左右方向、および、下方向からの衝撃に対して保護することができる。すなわち、左右方向の外部からの衝撃については、後車輪12やリヤアクスルケース11、あるいは、該リヤアクスルケース11の前部に設けられるミッションケース6によって保護され、かつ、上下方向の外部からの衝撃についてはリヤアクスルケース11や、さらに上方に配設される機体フレーム5等によって、保護される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施例に係る田植機の全体構成を示す側面図。
【図2】リヤアクスルケース全体を示す平面断面図。
【図3】整地装置への動力取出機構を示す平面断面図。
【図4】同じく図3に示す矢印B方向から見た側面断面図。
【図5】整地装置への動力取出機構の近傍を前斜上方から見た斜視図。
【図6】同じく後斜上方から見た斜視図。
【符号の説明】
【0080】
6 ミッションケース
9 整地用出力軸
11 リヤアクスルケース
11a 中ケース体
11b 外ケース体
11c 開口部
11d 開口部
12 後車輪
14 リヤ車軸
18 中間ケース
19 動力伝動シャフト
20 駆動チェン
24 リヤ中間軸
24a ギア部
26 リヤ中間ギア
30 ファイナルギア
33 軸受
34 軸受
35 動力取出機構
36 ベベルギア
37 クラッチ機構
38 スプロケット
39 スプロケット
47 操作レバー
51 整地装置
58 第一ケース体
58a 本体部
58b 外蓋部
58f 突出部
58d 膨出部
58e 貫通孔
59 第二ケース体
60 第三ケース体
61 軸受
64 支持部材
66 PTO伝動軸
68 サイドクラッチ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付部の前方に、回転運動によって圃場面を均す整地装置を具備した田植機において、該整地装置の回転駆動力は後車輪を駆動支持するリヤアクスルケースより取り出す構造とし、該リヤアクスルケース内の後車輪駆動用の最終伝達軸に対して、動力伝達上手側の中間軸より動力を分岐して前記整地装置に駆動力を伝達する、ことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記リヤアクスルケースは左右方向に延出する中ケース体と、該中ケース体の左右両端部を塞ぐ外ケース体と、により構成し、一方の該外ケース体には開口部を設け、該開口部より前記中間軸の端部を該外ケース体の外側方向に貫通させて、前記整地装置の駆動力を取り出す、ことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記一方の外ケース体と後車輪との間には中間ケースを設け、該中間ケースは側面視にて機体前方向の斜上方に延出した後、平面視にて機体左右方向内側に延出し、さらに、リヤアクスルケースの前記中間軸が挿通される部位を跨ぐように後方へと延出して、最終出力軸を取り出す、ことを特徴とする請求項1、または、請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記中間ケースは側面視にて機体前方向の斜上方に延出する第一ケースと、前記リヤアクスルケースと平行に配設する第二ケースと、機体後方向に延出する第三ケースと、により連設構成され、前記整地装置の回転駆動力を断接する切替手段を前記第一ケースに設けた、ことを特徴とする請求項3に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−100682(P2009−100682A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275822(P2007−275822)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】