説明

画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラム

【課題】背景が含まれる場合であっても、背景の明るさの影響を低減して検査対象物表面の明るさを自動的に調整することができる画像処理装置、該画像処理装置で実行する画像処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、撮像領域を前記撮像部で撮像した画像に対して画像処理を実行する画像処理部とを備える。画像処理部は、撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出する。算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背景の明るさの影響を排除し、検査対象物の表面の明るさを自動的に調整することができる画像処理装置、該画像処理装置で実行する画像処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の外観検査を実行する場合、検査対象物に照射する照明の光量を調整しないと、検査対象物の明るい部分が飽和し、表面の詳細を確認することができないという問題点があった。そこで、外観検査を実行する場合、検査対象物に照射する照明の光量を自動調整する技術が多々開発されている。
【0003】
例えば特許文献1では、CCDラインセンサからの出力信号に基づいて、信号レベルの最大値、最小値、平均値等に基づく評価値を算出し、算出した評価値が一定範囲内に存在する場合にのみ照明の光量を調整する欠陥検査方法が開示されている。この他にも、エリアセンサからの出力信号のうち、特定領域の明るさの平均値が目標値となるように調整する技術、所定の閾値以上(以下)の明るさの画素数が所定の割合以上(以下)となるよう調整する技術等も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−121368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、画像全体、あるいは検査対象物と背景との両方を含めた領域の明るさを自動で調整する場合、背景の明るさによって調整後の明るさが変化してしまう。したがって、背景の明るさによっては、手動で明るさを調整することが必要となるという問題点があった。また、特定の領域の明るさの平均値が目標値になるように調整する場合であっても、必ずしも特定の領域に背景が含まれないとは限らず、背景の明るさが特定の領域の明るさの平均値自体を押し上げたり、あるいは押し下げたりすることから、背景の明るさの影響を排除することが困難であるという問題点もあった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、背景が含まれる場合であっても、背景の明るさの影響を低減して検査対象物表面の明るさを自動的に調整することができる画像処理装置、該画像処理装置で実行する画像処理方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために第1発明に係る画像処理装置は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、該撮像部で撮像領域を撮像した画像に対して画像処理を実行する画像処理部とを備える画像処理装置において、前記画像処理部は、前記撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出する特徴量算出部と、算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出する評価値算出部と、算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力する調整信号出力部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、第2発明に係る画像処理装置は、第1発明において、前記評価値算出部は、前記複数の小領域すべてから算出した特徴量に基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする。
【0009】
また、第3発明に係る画像処理装置は、第1発明において、前記評価値算出部は、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみに基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする。
【0010】
また、第4発明に係る画像処理装置は、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記調整信号出力部から出力された調整信号に基づいて、前記撮像領域に光を照射する照明部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第5発明に係る画像処理装置は、第1乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記撮像部は、前記調整信号出力部から出力された調整信号に基づいて、前記撮像領域を撮像する場合に用いる露光時間又はゲインを調整することを特徴とする。
【0012】
また、第6発明に係る画像処理装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記評価値算出部は、算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を前記小領域ごとに算出する重み係数算出部を備え、算出した重み係数を用いて前記評価値を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
また、第7発明に係る画像処理装置は、第6発明において、前記評価値算出部は、前記小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出する飽和画素割合算出部を備え、算出した飽和画素の割合に基づいて前記評価値を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
また、第8発明に係る画像処理装置は、第7発明において、前記撮像部は、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換するHDR変換部を有し、前記画像処理部は、前記飽和画素の割合が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上であると判断した場合、前記HDR変換部を動作させるよう制御することを特徴とする。
【0015】
また、第9発明に係る画像処理装置は、第1乃至第8発明のいずれか1つにおいて、前記小領域を生成する小領域生成部を備え、該小領域生成部は、隣接する前記小領域の少なくとも一部が重なり合うよう前記小領域を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
また、第10発明に係る画像処理装置は、第9発明において、前記小領域生成部は、隣接する前記小領域の半分が重なり合うよう前記小領域を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
また、第11発明に係る画像処理装置は、第1乃至第10発明のいずれか1つにおいて、前記特徴量は、画素の画素値の分散として算出するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
次に、上記目的を達成するために第12発明に係る画像処理方法は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、該撮像部で撮像領域を前記撮像部で撮像した画像に対して画像処理を実行する画像処理部とを備える画像処理装置で実行することが可能な画像処理方法において、前記画像処理部は、前記撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出し、算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力することを特徴とする。
【0019】
また、第13発明に係る画像処理方法は、第12発明において、前記複数の小領域すべてから算出した特徴量に基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする。
【0020】
また、第14発明に係る画像処理方法は、第12発明において、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみに基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする。
【0021】
また、第15発明に係る画像処理方法は、第12乃至第14発明のいずれか1つにおいて、前記撮像部は、出力された調整信号に基づいて、前記撮像領域を撮像する場合に用いる露光時間又はゲインを調整することを特徴とする。
【0022】
また、第16発明に係る画像処理方法は、第12乃至第15発明のいずれか1つにおいて、算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を前記小領域ごとに算出し、算出した重み係数を用いて前記評価値を算出することを特徴とする。
【0023】
また、第17発明に係る画像処理方法は、第16発明において、前記小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出し、算出した飽和画素の割合に基づいて前記評価値を算出することを特徴とする。
【0024】
また、第18発明に係る画像処理方法は、第17発明において、前記撮像部は、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換し、前記画像処理部は、前記飽和画素の割合が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上であると判断した場合に、前記変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換するよう制御することを特徴とする。
【0025】
また、第19発明に係る画像処理方法は、第12乃至第18発明のいずれか1つにおいて、隣接する前記小領域の少なくとも一部が重なり合うよう前記小領域を生成することを特徴とする。
【0026】
また、第20発明に係る画像処理方法は、第19発明において、隣接する前記小領域の半分が重なり合うよう前記小領域を生成することを特徴とする。
【0027】
また、第21発明に係る画像処理方法は、第12乃至第20発明のいずれか1つにおいて、前記特徴量は、画素の画素値の分散として算出することを特徴とする。
【0028】
次に、上記目的を達成するために第22発明に係るコンピュータプログラムは、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、該撮像部で撮像領域を撮像した画像に対して画像処理を実行する画像処理部とを備える画像処理装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記画像処理部を、前記撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出する特徴量算出手段、算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出する評価値算出手段、及び算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力する調整信号出力手段として機能させることを特徴とする。
【0029】
また、第23発明に係るコンピュータプログラムは、第22発明において、前記評価値算出手段を、前記複数の小領域すべてから算出した特徴量に基づいて、画像の明るさの評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする。
【0030】
また、第24発明に係るコンピュータプログラムは、第22発明において、前記評価値算出手段を、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみに基づいて、画像の明るさの評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする。
【0031】
また、第25発明に係るコンピュータプログラムは、第22乃至第24発明のいずれか1つにおいて、前記評価値算出手段を、算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を前記小領域ごとに算出する重み係数算出手段、及び算出した重み係数を用いて前記評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする。
【0032】
また、第26発明に係るコンピュータプログラムは、第25発明において、前記評価値算出手段を、前記小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出する飽和画素割合算出手段、及び算出した飽和画素の割合に基づいて前記評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする。
【0033】
また、第27発明に係るコンピュータプログラムは、第26発明において、前記画像処理部を、前記飽和画素の割合が所定値以上であるか否かを判断する手段、及び所定値以上であると判断した場合、前記撮像部を、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換する手段として機能させることを特徴とする。
【0034】
第1発明、第12発明及び第22発明では、撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出する。算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出し、算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力する。これにより、背景の明るさの影響を低減しつつ、検査対象物が撮像されている領域の明るさを最適に調整することが可能となる。
【0035】
第2発明、第13発明及び第23発明では、複数の小領域すべてから算出した特徴量に基づいて、画像の明るさの評価値を算出する。これにより、小領域すべてから算出した特徴量を考慮して、背景の明るさの影響を低減しつつ、検査対象物が撮像されている領域の明るさを最適に調整することが可能となる。
【0036】
第3発明、第14発明及び第24発明では、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみに基づいて、画像の明るさの評価値を算出する。これにより、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみを用いるので、全体として演算処理負荷を軽減することが可能となる。
【0037】
第4発明では、調整信号出力部から出力された調整信号に基づいて、撮像領域に光を照射する照明部を備えるので、背景の明るさの影響を低減しつつ、検査対象物が撮像されている領域の明るさを最適に調整することが可能となる。
【0038】
第5発明及び第15発明では、出力された調整信号に基づいて、撮像領域を撮像する場合に用いる露光時間又はゲインを調整することにより、背景の明るさの影響を低減しつつ、検査対象物が撮像されている領域の明るさを最適に調整することが可能となる。
【0039】
第6発明、第16発明及び第25発明では、算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を小領域ごとに算出し、算出した重み係数を用いて評価値を算出する。検査対象物が存在する領域に大きな重み係数を乗ずることにより、評価値を算出する場合に、検査対象物が存在する領域の明るさをより反映させることができ、より適切に明るさを調整することが可能となる。
【0040】
第7発明、第17発明及び第26発明では、小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出し、算出した飽和画素の割合に基づいて評価値を算出するので、飽和画素の割合に応じて適切に明るさを調整することが可能となる。
【0041】
第8発明、第18発明及び第27発明では、撮像部は、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換し、画像処理部は、飽和画素の割合が所定値以上であるか否かを判断し、所定値以上であると判断した場合に、変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換するよう制御する。これにより、ハレーションが発生している場合であっても、HDR画像に変換することで、ハレーションによる影響を低減したうえで評価値を算出することが可能となる。
【0042】
第9発明及び第19発明では、隣接する小領域の少なくとも一部が重なり合うよう小領域を生成してあるので、小領域の境界部分で画素値に大きな差が存在する場合であっても、特徴量を正しく評価して算出することができる。
【0043】
第10発明及び第20発明では、隣接する小領域の半分が重なり合うよう小領域を生成してあるので、小領域の境界部分で画素値に大きな差が存在する場合であっても、特徴量を過小に算出することを回避することができる。
【0044】
第11発明及び第21発明では、特徴量を、画素の画素値の分散として算出することにより、画素値のばらつき具合を考慮して明るさを調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0045】
本発明では、背景の明るさの影響を低減しつつ、検査対象物が撮像されている領域の明るさを最適に調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置の構成を示す外形図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置の構成を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のモード切り替え画面の例示図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置の設定画面の例示図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置の機能ブロック図である。
【図8】撮像領域への小領域の設定方法を具体的に示す例示図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のメイン基板のFPGAの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】検査対象物を撮像した画像の例示図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のメイン基板のFPGAの評価値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のメイン基板のFPGAの明るさ調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】ハレーションが発生している場合の検査対象物を撮像した画像の例示図である。
【図14】ダイナミックレンジを広げる変換特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理装置について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態の説明で参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。以下、画像処理装置として画像処理センサを例に挙げて説明する。
【0048】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態に係る画像処理センサは、撮像装置1と、撮像装置1とデータ通信することが可能に接続ケーブル3で接続されている表示装置2とで構成されている。もちろん、表示装置2の代わりに、ディスプレイを有する外部コンピュータであっても良い。なお、撮像装置1と表示装置2とが一体として構成されていても良い。
【0049】
撮像装置1は、内部に画像処理を実行するFPGA、DSP等を備えており、検査対象物を撮像する撮像素子を有するカメラモジュール(撮像部)と、検査対象物に対して光を照射する照明部とを備えている。撮像装置1をコンパクトにするべく、例えば図1に示すように、撮像装置1の正面の中央近傍にレンズ12を配置し、レンズ12の周囲を囲むように、照明部の複数のLED11を配置してある。なお、撮像装置1とは別に外部照明(リング照明等)を設けても良い。
【0050】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す外形図である。図2(a)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す正面図を、図2(b)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す平面図を、図2(c)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す背面図を、それぞれ示している。
【0051】
図2(a)に示すように、撮像装置1はレンズ12を正面の中央近傍に配置しており、レンズ12の周囲に複数のLED11を配置してある。撮像時には、複数のLED11を点灯させることにより、検査対象物に光を照射し、検査対象物を明瞭に撮像することができる。
【0052】
図2(b)及び図2(c)に示すように、撮像装置1の背面には、外部の電源から電力の供給を受ける電源ケーブルを接続する電源コネクタ102と、表示装置2とデータ通信する接続ケーブル3を接続することが可能な接続コネクタ103とを備えている。また、手動でフォーカスを調整することができるフォーカス調整ネジ101も背面に備えている。
【0053】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図3において、コネクタ基板16は、電源インタフェース161に設けてある電源コネクタ102(図2(b)及び図2(c)参照)を介して、外部の電源から電力の供給を受ける。電源基板18は、供給された電力を各基板に供給する。本実施の形態では、カメラモジュール14にはメイン基板13を介して電力を供給している。モータドライバ181は、カメラモジュール14のモータ141に駆動電力を供給し、オートフォーカスを実現している。
【0054】
通信基板17は、メイン基板13から出力された欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を示すOK/NG信号(判定信号)を表示装置2へ送信する。判定信号を受信した表示装置2は、判定結果を表示する。
【0055】
照明基板15は、検査対象物を撮像する撮像領域に光を照射する、複数のLED11が設けてあり、図示しないリフレクタはLED11の前方に設けてある。また、レンズ12は、短距離用又は長距離用のレンズユニットとして交換可能となっている。
【0056】
カメラモジュール(撮像部)14は、モータ141が駆動することにより、オートフォーカス動作の制御を行うことができる。メイン基板13からの撮像指示信号に応じて検査対象物を撮像する。本実施の形態では、撮像素子としてCMOS基板142を備えており、撮像したカラー画像は、CMOS基板142にてダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいてHDR画像に変換され、メイン基板13のFPGA131へ出力される。つまり、CMOS基板142は、HDR画像を生成・出力する機能を備えており、例えばHDRCMOS等がこれに該当する。なお、画像処理センサの撮像装置1には、CMOS基板142にてHDR画像を生成するか否かを切り替える切替部を設けても良い。切替部により、ハレーション等が発生しにくい検査対象物を撮像する場合に、HDR画像を生成しないよう切り替えることができ、ひいては演算処理負荷を軽減することができる。
【0057】
メイン基板13は、接続してある各基板の動作を制御する。例えば照明基板15に対しては、複数のLED11の点灯/消灯を制御する制御信号を、LEDドライバ151へ送信する。LEDドライバ151は、FPGA131からの制御信号に応じて、例えばLED11の点灯/消灯、光量等を調整する。また、カメラモジュール14のモータ141に対しては、電源基板18のモータドライバ181を介してオートフォーカス動作を制御する制御信号を、CMOS基板142に対しては、撮像開始信号等を、それぞれ送信する。
【0058】
メイン基板13のFPGA131は、照明制御、撮像制御をするとともに、取得した画像データに対する画像処理を実行する(画像処理部)。また、メイン基板13のDSP132は、画像データについて、エッジ検出処理、パターン検索処理等を実行する。パターン検索処理の結果として、欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を示すOK/NG信号(判定信号)を通信基板17へ出力する。演算処理結果等はメモリ133に記憶される。なお、本実施の形態では、エッジ検出処理、パターン検索処理等の比較的負荷の重い処理をDSP132により実行している。しかし、場合によってはFPGA131により実行するようにしても良い。要するに、画像処理部は、CMOS基板142で取得した画像データに対して何らかの画像処理を実行できれば、それで足りる。
【0059】
図4は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2の構成を示す正面図である。図4に示すように、表示装置2の前面の中央部分にはタッチパネル21が設けてあり、撮像した検査対象物のカラー画像を画面に表示するとともに、ユーザによる選択入力を受け付ける。つまり、表示装置2は、撮像装置1から出力された画像を表示する表示部の一例として機能する。
【0060】
また、表示装置2は、外部の電源から電力が供給される電源ケーブルを接続する電源コネクタ24と、撮像装置1とデータ通信する接続ケーブル3を接続することが可能な接続コネクタ25とを備えている。さらにUSBメモリ等と接続することが可能なUSBポート22を前面に設けてある。
【0061】
ユーザは、表示装置2のタッチパネル21の画面に表示されているボタンを選択することにより、画像処理センサの動作を制御する。そして、検査対象物の検査を実行する「検査モード」と、画像処理センサの条件設定を行う「設定モード」との切り替えを行うこともできる。言い換えると、本実施の形態に係る画像処理センサは、検査対象物の良否を判定する検査モード(Runモード)と、検査に用いる各種パラメータ(撮像パラメータ、照明パラメータ、画像処理パラメータ等)の設定を行う設定モード(非Runモード)とを切り替えるためのモード切替部を有している。図5は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のモード切り替え画面の例示図である。
【0062】
図5(a)は、「検査モード」の画面表示の例示図である。図5(a)に示すように、検査対象物表示領域51に、撮像装置1が撮像した検査対象物の画像を表示する。左下の「センサ設定」ボタン52がモード切替部として機能し、「センサ設定」ボタン52が選択された場合、「設定モード」へと切り替わり、図5(b)に示す画面へと画面遷移する。
【0063】
図5(b)は、「設定モード」の画面表示の例示図である。図5(b)に示すように、プログラム選択領域53にて、検査対象物の種類又は検査環境を選択する。ここで、「プログラム」とは、検査対象物の種類又は検査環境に応じて設定された一連のデータ群(パラメータ値の組み合わせ)を意味しており、検査対象物の種類又は検査環境ごとに異なるデータ群をプログラムとして記憶することができる。
【0064】
また、検査対象物と比較する基準となるマスタ画像が記憶されている場合、マスタ画像表示領域54にマスタ画像が表示される。「設定ナビ」ボタン55が選択された場合、詳細な設定を行う設定画面に画面遷移する。左下の「運転開始」ボタン56はモード切替部として機能し、「運転開始」ボタン56が選択された場合、「検査モード」へと切り替わり、図5(a)に示す画面へと画面遷移する。
【0065】
図6は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2の設定画面の例示図である。図6に示す設定画面を通じて、ユーザは、撮像条件の設定(図6(a))、パターンサーチする基準となるマスタ画像の登録(図6(b))、マスタ画像に対する輪郭サーチ等のツール設定(図6(c)〜図6(e))、出力割り当て(図6(f))、という流れで順次設定を行う。以下、詳細に説明する。図5(b)に示す「設定ナビ」ボタン55が選択された場合、まず図6(a)に示す撮像条件設定画面が表示される。撮像条件設定画面では、マスタ画像が記憶されている場合にはマスタ画像が主表示領域61に表示され、画面下部に撮像条件を設定する設定ボタン群が表示されている。例えば「トリガ条件」ボタンが選択された場合には、撮像装置1が検査対象物を撮像するタイミングを特定するトリガ条件を設定することができる。詳細な設定画面は省略するが、それぞれのボタンが選択された場合、それぞれの設定条件に応じて図4に示すタッチパネル21上に表示される。
【0066】
また、より詳細な設定をするには、図6(a)の「拡張機能」ボタン62を選択すれば良い。「拡張機能」ボタン62が選択された場合、詳細な設定を行うためのボタンが別途表示される。このように撮像条件設定画面では、明るさの調整、フォーカスの調整、撮像範囲、照明のオン/オフ、ズームのオン/オフ等を設定することができる。
【0067】
図6(a)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン63が選択された場合、図6(b)に示すマスタ画像登録画面が表示される。登録されたマスタ画像上に、以後、検査用の様々なツールを設定する。1つのマスタ画像に対して複数のプログラムを記憶することができる。つまり、同じマスタ画像に対して異なるツールを設定し、異なるプログラムとして記憶しておくことができる。
【0068】
マスタ画像は、現在撮像している画像を登録しても良いし、以前に撮像しておいた画像から選択して登録しても良い。現在撮像している画像を登録する場合、ユーザは「Live画像登録」ボタン64を選択すればよい。「Live画像登録」ボタン64が選択された時点で撮像されている画像がマスタ画像として登録される。
【0069】
図6(b)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン65が選択された場合、図6(c)に示すマスタ画像ごとのツール設定画面が表示される。マスタ画像上に、以後、検査用の様々なツールを設定する。
【0070】
ツール設定画面では、表示されているマスタ画像に、検査を実行するためのツールを追加設定する。図6(c)に示す「追加」ボタン66が選択された場合、図6(d)に示すツール選択画面が表示される。ツール選択画面で選択されたツールを追加設定する。例えば「輪郭サーチ」ボタン67が選択された場合、図6(e)に示す輪郭サーチ設定画面が表示される。輪郭サーチ設定画面で、マスタ画像のどの輪郭を撮像された検査対象物の画像と照合するのか設定しておくことにより、欠陥が検出したか否かで検査対象物の良否を判定することができる。以下、色面積、位置補正等の設定をすることができる。
【0071】
図6(c)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン68が選択された場合、図6(f)に示す出力割当画面が表示される。出力割当画面では、検査の結果として画面に表示される出力線が何を意味するのか設定することができる。「完了」ボタン69が選択された場合、図5(b)に示す「設定モード」の画面表示に戻る。このように、ユーザは、図4に示す表示装置2のタッチパネル21上で、「進む」と表示された「画面遷移」ボタン63、65、68を順に選択することで、簡単かつ短時間で、検査に用いる各種パラメータを設定することができる。また、画像処理センサに慣れていないユーザであっても、表示装置2のタッチパネル21上で次の操作へと誘導されるので、各種パラメータを容易に設定することができる。
【0072】
図7は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の機能ブロック図である。図7において、カラー画像取得部701は、カメラモジュール14のCMOS基板142で撮像されたカラー画像の画素値(色成分値)を取得する。最初の撮像時には、適当な明るさに調整して撮像している。
【0073】
小領域生成部703は、撮像装置1から出力された画像の撮像領域内に、各々が複数の画素を含む複数の小領域を生成する。図8は、撮像領域への小領域の設定方法を具体的に示す例示図である。図8(a)は、撮像領域への小領域の生成方法を具体的に示す例示図であり、図8(b)は、撮像領域へ小領域を事前に設定しておく場合の例示図である。
【0074】
図8(a)に示すように、例えばQVGAサイズの画像、すなわち320ピクセル×240ピクセルのサイズの画像に対して、Aピクセル×Aピクセル(Aは320以下の任意の数値)の小領域を左上から順次生成している。この時、順次、前に生成した小領域に半分重なり合うように次の小領域を生成している。小領域を重ね合わせることにより、小領域の境界部分で画素値に大きな差が存在する場合であっても、後述する特徴量を過小に算出することを回避することができる。
【0075】
もちろん、前に生成した小領域に半分重なり合うように次の小領域を生成することに限定されるものではなく、隣接する小領域の少なくとも一部が重なり合うよう小領域を生成すれば良い。小領域の境界部分で画素値に大きな差が存在する場合であっても、後述する特徴量を正しく評価して算出することができるからである。
【0076】
また、本実施の形態では、小領域としてAピクセル×Aピクセルの正方形領域を生成しているが、特にこれに限定されるものではなく、Aピクセル×Bピクセル(Bも320以下の任意の数値)の小領域を生成しても良い。また、本実施の形態では、小領域を重ね合わせることにより上述した効果を奏しているが、特にこれに限定されるものではなく、必ずしも小領域を重ね合わせなくても良い。
【0077】
さらに、小領域は、画像処理センサが自動的に生成するようにしても良いし、ユーザが表示装置2を介して例えば任意のウインドウを設定し、設定したウインドウに基づいて生成しても良く、生成方法は特に限定されるものではない。また、本発明は、図8(b)に示すように、表示装置2を介して事前に複数の小領域を設定しておき、小領域の生成処理を省略しても良い。その場合、小領域生成部703を備える必要はない。
【0078】
図7に戻って、特徴量算出部704は、生成した小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出する。算出する特徴量は、画素値のばらつきを示す数値であれば良く、例えば分散、偏差値等である。本実施の形態では、画素の画素値の分散を特徴量として算出する。なお、分散に限定されるものではなく、例えば、各小領域のエッジの多さ、各小領域の画素値の最大値と最小値との差等として特徴量を算出しても良い。要するに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量であれば、特に限定されるものではない。
【0079】
また、生成した小領域ごとに特徴量を算出しているが、生成処理を省略する場合は、表示装置2を介して事前に設定された小領域ごとに特徴量を算出する。要するに、画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出すれば良い。
【0080】
評価値算出部705は、算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出する。本実施の形態では、画素の画素値の分散σに応じて、各小領域の重み係数を算出し、背景の明るさと検査対象物の明るさとの比較に応じて、適切な重み付けをして明るさを調整している。
【0081】
重み係数は、例えば、画素値(色成分値)であるR値、G値、B値の分散の和を計算することによって算出することができる。また、算出した特徴量を一定の閾値と比較し、一定の閾値より大きい場合は0又は1の一方、一定の閾値より小さい場合は0又は1の他方を重み係数としても良い。この場合、重み係数0は、評価値の算出に使用しない小領域を特定するための係数を示し、重み係数1は、評価値の算出に使用する小領域を特定するための係数を示す。
【0082】
なお、重み係数は、画素値(色成分値)であるR値、G値、B値を、色の3要素であるH値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)に変換して算出しても良い。本実施の形態では、明度を示すV値を取り扱うので、V値を画素値の最大値として求めている。
【0083】
重み係数算出部706は、算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を小領域ごとに算出する。評価値算出部705は、算出した重み係数を用いて評価値を算出するので、評価値を算出する場合に、検査対象物が存在する領域の明るさをより反映させることができ、より適切に照明の光量を調整することが可能となる。
【0084】
また、飽和画素割合算出部707は、小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出する。評価値算出部705が、算出した飽和画素の割合に基づいて評価値を算出するので、飽和画素の割合に応じて適切に照明の光量を調整することが可能となる。
【0085】
調整信号出力部708は、算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力する。照明の光量を調整する指示信号は、照明基板15のLEDドライバ151へ送信する。なお、本実施の形態では、照明の光量を調整することによって画像の明るさを調整しているが、その他にも、例えば撮像素子の露光時間の調整、画像処理部で乗算しているゲインの調整等により明るさ調整を行っても良い。つまり、画像の明るさの調整方法については、種々の方法が考えられる。
【0086】
図9は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のメイン基板13のFPGA131の処理手順を示すフローチャートである。図9において、撮像装置1のメイン基板13のFPGA131は、カメラモジュール14のCMOS基板141で撮像されたカラー画像の画像データを、画素ごとの画素値(色成分値)として取得する(ステップS901)。FPGA131は、取得した画像データの撮像領域内に、各々が複数の画素を含む複数の小領域を生成する(ステップS902)。
【0087】
なお、小領域は、撮像装置1で撮像された撮像領域を一定の大きさの小領域に分割して生成しても良いし、複数のウインドウを張り付けることで生成しても良い。また、撮像前に撮像領域内に小領域を生成しておいても良い。このようにすることで、例えば明るさ調整値Lを初期値に設定して検査対象物を含む撮像領域の画像データを取得し、事前に生成してある小領域の画素値の平均値が所定の範囲内に収束するまで明るさ調整値Lを変動させることができる。
【0088】
本実施の形態では、隣接する小領域の半分が重なり合うよう小領域を生成する。もちろん、隣接する小領域の少なくとも一部が重なり合うよう小領域を生成すれば良い。
【0089】
FPGA131は、生成した小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量として分散σを算出して、小領域ごとの画素値の分散の総和を算出する(ステップS903)。FPGA131は、算出した小領域ごとの分散σの総和に基づいて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数Wを小領域ごとに算出する(ステップS904)。本実施の形態では、R値、G値、B値の分散の総和をそのまま重み係数Wとしているが、例えば、R値、G値、B値の分散の総和に所定の係数を加算又は乗算した値を重み係数Wとしても良い。
【0090】
FPGA131は、標準画像用の評価値算出係数α、βを設定し(ステップS905)、算出した重み係数Wを用いて評価値Eを算出する(ステップS906)。ここで、標準画像とは、HDR変換されていない画像を意味する。
【0091】
算出される評価値は、特に限定されるものではなく、明るさの調整を行うための判断をすることができる値であれば何でも良い。本実施の形態では、評価値Eを、評価値算出係数α、βを用いて(式1)のように定義する。
【0092】
E=Va+α*Rs−β ・・・ (式1)
【0093】
(式1)において、Vaは重み付き明るさ平均値であり、画素値(色成分値)であるR値、G値、B値を、色の3要素であるH値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)に変換した場合の、明度を示すV値の平均値に重みづけをした値である。重み付き明るさ平均値Vaは、算出した重み係数Wを用いて(式2)で算出される。
【0094】
Va=Σ(W×V)/ΣW ・・・ (式2)
【0095】
また、(式1)において、Rsは飽和画素率を示している。飽和画素率Rsとは、小領域ごとに画素値が飽和状態(最大値)となっている画素の存在率を意味しており、各小領域の画素数をP、飽和画素数をSとすると、(式3)により算出することができる。
【0096】
Rs=Σ(W×S)/ΣW/P ・・・ (式3)
【0097】
明るさ調整値Lを順次変更していき、都度(式1)に基づいて算出した評価値Eの符号が正から負、又は負から正に変わる時点の明るさ調整値Lが、最適な明るさ調整値となる。図10は、検査対象物を撮像した画像の例示図である。
【0098】
図10(a)は背景が暗い画像データを、図10(b)は背景が明るい画像データを、それぞれ示している。図10(a)の画素値の平均値は‘80’であるのに対して図10(b)の画素値の平均値は‘172’である。したがって、従来のように画素値の平均値に基づいて画像の明るさ調整をする場合、図10(a)の画像に対しては、平均値が低いことから、より明るくなるよう調整するので、検査対象物の画像が飽和状態になり視認することができなくなるおそれがある。一方、図10(b)の画像に対しては、平均値が高いことから、より暗くなるよう調整するので、検査対象物の画像が見えにくくなるおそれがある。
【0099】
それに対して、本実施の形態で算出する重み付き明るさ平均値Vaは、図10(a)と図10(b)とでほぼ同一であるので、背景の明るさにかかわらず、検査対象物が撮像されている領域の明るさを調整することが可能となる。
【0100】
図11は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のメイン基板13のFPGA131の評価値算出処理の手順を示すフローチャートである。
【0101】
図11において、撮像装置1のメイン基板13のFPGA131は、図9のステップS906において、カメラモジュール14のCMOS基板141で撮像された画像データを、画素ごとの画素値(色成分値)として取得する(ステップS1101)。FPGA131は、(式2)に従って、重み付き明るさ平均値Vaを算出し(ステップS1102)、(式3)に従って、飽和画素率Rsを算出する(ステップS1103)。FPGA131は、(式1)に従って評価値Eを算出して(ステップS1104)、図9のステップS907へ処理を戻す。
【0102】
図9に戻って、撮像装置1のメイン基板13のFPGA131は、算出した評価値Eが目標値に十分に近づいたか否かを判断する(ステップS907)。具体的には、目標値を‘0’とし、算出した評価値Eの符号が正から負、又は負から正に変わった時点の明るさ調整値Lが、最適な明るさ調整値であると判断する。
【0103】
FPGA131が、算出した評価値Eが目標値にまだ近づいていないと判断した場合(ステップS907:NO)、FPGA131は、明るさ調整値Lを変更し、評価値Eを再算出し(ステップS908)、処理をステップS907へ戻す。
【0104】
図12は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のメイン基板13のFPGA131の明るさ調整処理の手順を示すフローチャートである。図12において、撮像装置1のメイン基板13のFPGA131は、ステップS907及びステップS908において、算出した評価値Eが負であるか否かを判断する(ステップS1201)。
【0105】
FPGA131が、算出した評価値Eが負ではないと判断した場合(ステップS1201:NO)、FPGA131は、明るさ調整値Lを‘1’デクリメントする(ステップS1202)。すなわち、画像の明るさを減じる方向に調整する。FPGA131が、算出した評価値Eが負であると判断した場合(ステップS1201:YES)、FPGA131は、明るさ調整値Lを‘1’インクリメントする(ステップS1203)。すなわち、画像の明るさを増す方向に調整する。
【0106】
FPGA131は、明るさ調整値Lを変更して、再度カメラモジュール14のCMOS基板141で、検査対象物を撮像したカラー画像の画像データを、画素ごとの画素値(色成分値)として取得する(ステップS1204)。FPGA131は、(式2)に従って、重み付き明るさ平均値Vaを算出し(ステップS1205)、(式3)に従って、飽和画素率Rsを算出する(ステップS1206)。FPGA131は、(式1)に従って評価値Eを算出して(ステップS1207)、評価値Eの符号が前回算出した場合の符号と逆転しているか否かを判断する(ステップS1208)。
【0107】
FPGA131が、評価値Eの符号が前回算出した場合の符号と逆転していないと判断した場合(ステップS1208:NO)、FPGA131は、処理をステップS1201へ戻し(図9のステップS908に相当)、上述した処理を繰り返す。FPGA131が、評価値Eの符号が前回算出した場合の符号と逆転したと判断した場合(ステップS1208:YES)、FPGA131は、処理をステップS909へ進める。
【0108】
図9に戻って、撮像装置1のメイン基板13のFPGA131が、算出した評価値Eが目標値に十分に近づいたと判断した場合(ステップ907:YES)、FPGA131は、飽和画素の割合、すなわち飽和画素率Rsが所定値より小さいか否かを判断する(ステップS909)。FPGA131が、飽和画素率Rsが所定値より小さいと判断した場合(ステップS909:YES)、FPGA131は、見やすい明るさに調整が完了したと判断して処理を終了する。FPGA131が、飽和画素率Rsが所定値以上であると判断した場合(ステップS909:NO)、FPGA131は、HDR画像への変換機能を作動させているか否か、すなわちHDR変換部702が動作しているか否かを判断する(ステップS910)。ここで、HDR画像とは、取得したカラー画像の画素値(色成分値)を、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて変換した画像を意味する。
【0109】
FPGA131が、HDR画像への変換機能を作動させていると判断した場合(ステップS910:YES)、FPGA131は、これ以上明るさを調整する手段は無いと判断して、処理を終了する。
【0110】
FPGA131が、HDR画像への変換機能を作動させていないと判断した場合(ステップS910:NO)、FPGA131は、HDR画像用の評価値算出係数α、βを設定し(ステップS911)、HDR画像を生成する(ステップS912)。FPGA131は、処理をステップS906へ戻して、上述した処理を繰り返す。
【0111】
すなわち、ハレーションが発生している場合であっても、HDR画像に変換することでダイナミックレンジが広がり、ハレーションによる影響を低減したうえで評価値Eを算出することが可能となる。図13は、ハレーションが発生している場合の検査対象物を撮像した画像の例示図である。
【0112】
図13では、画素値の平均値は‘133’である。したがって、従来のように画素値の平均値に基づいて画像の明るさ調整をする場合、平均値が低いことから、より明るくなるよう調整するので、検査対象物の画像は飽和状態になり視認することができなくなる。一方、本実施の形態で算出する重み付き明るさ平均値Vaは、かなり大きめの値‘225’と算出されているので、これ以上明るさを増す方向に調整することはない。
【0113】
撮像した画像をHDR画像へ変換する、図7に示すHDR変換部702は、カメラモジュール14のCMOS基板142に備えている。したがって、飽和画素の割合が所定値以上である場合、FPGA131は、CMOS基板142に対して、HDR変換部702を動作させる指示信号を送信する。
【0114】
なお、HDR変換部702は、取得したカラー画像の画素値(色成分値)を、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて変換することにより、HDR画像を生成する。具体的には画素ごとに変換特性に応じた画素値へと変換する。
【0115】
図14は、ダイナミックレンジを広げる変換特性を示すグラフである。図14では、縦軸(x軸)に変換前の画素値(8ビット)を、横軸(y軸)に変換後の画素値(10ビット)を、それぞれ示している。HDR変換部702は、取得したカラー画像の画素値(色成分値)xを図8に示す変換特性に応じて画素値(色成分値)yへと変換する。
【0116】
以上のように本実施の形態によれば、背景の明るさの影響を低減しつつ、検査対象物が撮像されている領域の明るさを最適に調整することが可能となる。特に、検査対象物の位置検出処理は実行していないので、例えばフォーカスが合っていない状態、すなわち撮像された画像自体が鮮明ではない状態であっても、明度のみで明るさを自動的に調整することが可能となる。
【0117】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変更、改良等が可能である。例えば撮像装置1と表示装置2とは、接続ケーブル3で直結されている形態に限定されるものではなく、LAN、WAN等のネットワーク網を介して接続されていても良いことは言うまでもない。また、本実施の形態では撮像装置1と表示装置2とは別体となっているが、両者が一体として構成された画像処理センサであっても良い。
【符号の説明】
【0118】
1 撮像装置
2 表示装置
3 接続ケーブル
13 メイン基板
14 カメラモジュール(撮像部)
15 照明基板(照明部)
21 タッチパネル
131 FPGA(画像処理部)
701 カラー画像取得部
702 HDR変換部
703 小領域生成部
704 特徴量算出部
705 評価値算出部
706 重み係数算出部
707 飽和画素割合算出部
708 調整信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、
該撮像部で撮像領域を撮像した画像に対して画像処理を実行する画像処理部と
を備える画像処理装置において、
前記画像処理部は、
前記撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出する特徴量算出部と、
算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出する評価値算出部と、
算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力する調整信号出力部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記評価値算出部は、前記複数の小領域すべてから算出した特徴量に基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記評価値算出部は、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみに基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記調整信号出力部から出力された調整信号に基づいて、前記撮像領域に光を照射する照明部を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記撮像部は、前記調整信号出力部から出力された調整信号に基づいて、前記撮像領域を撮像する場合に用いる露光時間又はゲインを調整することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記評価値算出部は、算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を前記小領域ごとに算出する重み係数算出部を備え、
算出した重み係数を用いて前記評価値を算出するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記評価値算出部は、前記小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出する飽和画素割合算出部を備え、
算出した飽和画素の割合に基づいて前記評価値を算出するようにしてあることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記撮像部は、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換するHDR変換部を有し、
前記画像処理部は、
前記飽和画素の割合が所定値以上であるか否かを判断し、
所定値以上であると判断した場合、前記HDR変換部を動作させるよう制御することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記小領域を生成する小領域生成部を備え、
該小領域生成部は、隣接する前記小領域の少なくとも一部が重なり合うよう前記小領域を生成するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記小領域生成部は、隣接する前記小領域の半分が重なり合うよう前記小領域を生成するようにしてあることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記特徴量は、画素の画素値の分散として算出するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、
該撮像部で撮像領域を前記撮像部で撮像した画像に対して画像処理を実行する画像処理部と
を備える画像処理装置で実行することが可能な画像処理方法において、
前記画像処理部は、
前記撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出し、
算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出し、
算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力することを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
前記複数の小領域すべてから算出した特徴量に基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項14】
検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみに基づいて、画像の明るさの評価値を算出することを特徴とする請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項15】
前記撮像部は、出力された調整信号に基づいて、前記撮像領域を撮像する場合に用いる露光時間又はゲインを調整することを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項16】
算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を前記小領域ごとに算出し、
算出した重み係数を用いて前記評価値を算出することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項17】
前記小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出し、
算出した飽和画素の割合に基づいて前記評価値を算出することを特徴とする請求項16に記載の画像処理方法。
【請求項18】
前記撮像部は、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換し、
前記画像処理部は、
前記飽和画素の割合が所定値以上であるか否かを判断し、
所定値以上であると判断した場合に、前記変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換するよう制御することを特徴とする請求項17に記載の画像処理方法。
【請求項19】
隣接する前記小領域の少なくとも一部が重なり合うよう前記小領域を生成することを特徴とする請求項12乃至18のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項20】
隣接する前記小領域の半分が重なり合うよう前記小領域を生成することを特徴とする請求項19に記載の画像処理方法。
【請求項21】
前記特徴量は、画素の画素値の分散として算出することを特徴とする請求項12乃至20のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項22】
検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、
該撮像部で撮像領域を撮像した画像に対して画像処理を実行する画像処理部と
を備える画像処理装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記画像処理部を、
前記撮像部から出力された画像の撮像領域内に設けられ、各々が複数の画素を含む複数の小領域ごとに、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を算出する特徴量算出手段、
算出した特徴量に基づいて、少なくとも検査対象物を含む画像の明るさの評価値を算出する評価値算出手段、及び
算出した評価値に基づいて、画像の明るさを調整するための調整信号を出力する調整信号出力手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項23】
前記評価値算出手段を、前記複数の小領域すべてから算出した特徴量に基づいて、画像の明るさの評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする請求項22に記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
前記評価値算出手段を、検査対象物が存在する可能性を示す特徴量を有する小領域から算出した特徴量のみに基づいて、画像の明るさの評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする請求項22に記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
前記評価値算出手段を、算出した特徴量に応じて、検査対象物が存在する領域を特定するための重み係数を前記小領域ごとに算出する重み係数算出手段、及び
算出した重み係数を用いて前記評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする請求項22乃至24のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記評価値算出手段を、前記小領域ごとの重み係数に基づいて飽和画素の割合を算出する飽和画素割合算出手段、及び
算出した飽和画素の割合に基づいて前記評価値を算出する手段として機能させることを特徴とする請求項25に記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
前記画像処理部を、
前記飽和画素の割合が所定値以上であるか否かを判断する手段、及び
所定値以上であると判断した場合、前記撮像部を、ダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいて、撮像した画像をHDR画像に変換する手段として機能させることを特徴とする請求項26に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−108885(P2013−108885A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254983(P2011−254983)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】