説明

畦成形機

【課題】従来圃場隅部の作業を行なう作業機は、圃場隅部における畦方向への成形圧力が減少するため堅固な畦を形成できない課題がある。
【課題手段】装着フレーム1から斜め後方へ固定されて延設される支持フレーム2と、支持フレーム2に設けられるとともに、装着フレーム1との距離を伸縮させる水平移動手段4によって支持フレーム2に沿って装着フレーム1に対して遠近移動可能であり、かつ遠近移動可能である1つの水平回動軸54を中心に水平回動手段6又は自由回動によって水平方向に回動可能である畦成形作業部5と、畦成形作業部5の前側に設けられる前部案内輪7と、畦成形作業部5の後側に設けられる後部案内輪8とを有し、支持フレーム2に沿って装着フレーム1に対して遠近移動する畦成形作業部5の水平回動軸54が、常に前部案内輪7と後部案内輪8との間に位置するように設けられる畦成形機による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ等の走行機に連結されて牽引され水田等の畦成形作業を行う畦成形機に関する。詳細には水田の畦成形を圃場の直線部から圃場の隅部まで連続的に行なうことのできる畦成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田等の圃場の畦成形作業において、トラクタ等の走行機に連結されて、走行機の進行方向に沿って進行し畦成形作業を行う畦成形機は、様々な形態が知られている。従来技術としては、走行機の進行方向に対して水平方向に180°回転する畦成形機や、畦成形機が走行機の進行方向に対して側方にオフセットした位置で作業する畦成形機などが公知である。
【0003】
水田等の畦成形においてトラクタに連結して側方に位置させた作業部の畦成形作業では、作業部はトラクタの側方後部にあるためトラクタが直線的に行き止まりになる圃場隅部になると連続的に隅部の畦成形作業はできなかった。そのため残りの隅部の畦成形作業としては、畦成形作業部をトラクタ進行方向に対して180°角水平方向に回動させ、更にトラクタも前後180°回転させて方向転換した後、トラクタを後進させて残りの隅部の畦成形作業を行っていた(従来技術1)。
【0004】
また、作業機が走行機の進行方向に対して側方にオフセットした位置で作業する作業機としては、以下のような公知例がある。特開2004−254522号公報(従来技術2)には、「オフセット作業方法」として、「走行機体にオフセット作業が行えるように装着された作業機による作業方法であって、作業機は水平面内での回動及び移動の自由度を有し、作業機自体の直進性を維持しながら、走行機体が圃場を走行しつつ作業を行う作業部分から走行機体が旋回する圃場隅部分までの仕上げ作業を行う。作業機は、走行機体から見て少なくとも2以上の水平回動、あるいは水平移動と水平回動の自由度を有し、直進性を制御し、前作業跡を基準に作業を行う作業装置、作業機自身の作業跡を基準に行う作業装置、作業機自身の回動角度を基準に行う作業装置などを備えている。」が開示されている。
【0005】
更に、特開2004−267012号公報(従来技術3)には、「オフセット作業機」として「作業部のオフセット位置を調整自在にしたオフセット位置調整機構と、作業部の作業方向を回動調整自在にした作業方向調整機構と、作業部と作業部によって作業がなされる基準作業線との位置関係を検出する検出部と、検出部からの検出信号に基づいて、オフセット位置調整機構を動作させて作業部のオフセット位置を調整すると共に作業方向調整機構を動作させて作業部の作業方向を調整する制御手段とを備え、作業部の作業位置と作業方向を基準作業線に沿うように制御する」作業機が開示されている。
【0006】
また、特開2005−46040号公報(従来技術4)には、「圃場の隅まで連続的に畦塗り作業を行う畦塗り機及びその作業部位置調整方法」の開示がある。従来技術4の畦塗り機は、「作業部30を旧畦の一辺Faに沿うように設置可能な作業部位置調整装置61を有し、作業部位置調整装置61は、オフセットフレーム10の後端部に回動自在に設けられた作業部30が旧畦の設置位置に設置されたか否かを走行体機体から目視確認可能な第1マーカ62と、作業部30の向きが一辺Faと略平行にあるか否かを走行体機体から目視確認可能な第2マーカ64と、オフセットフレーム10を旋回回動させる旋回シリンダ13及び作業部30を回動させる回動シリンダ57の動作を操作可能なアクチュエータ操作装置67を有している。そして走行機体80に搭乗した作業者Mは、第1マーカ62及び第2マーカ64を目視して作業部30が設置位置に設置され且つ作業部30の向きが一辺Faと平行になるようにアクチュエータ操作手段67を操作する。」との記載がある。
【0007】
更に、特開2004−275188号公報(従来技術5)には、「オフセット作業機」として「走行機体に装着され、該走行機体の走行にともなって進行して前記走行機対の走行位置に対して側方にオフセットした位置を作業する作業部を備えたオフセット作業機であって、水平回動のみ又は水平移動のみ若しくは水平回動と水平移動の組合せにより構成される少なくとも2以上の自由度を有し、前記2以上の自由度を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記2以上の自由度における回動量又は移動量を無段階に制御可能であり、且つ圃場隅部における走行機体の姿勢変化に対応して前記回動量又は移動量を調整可能としたことを特徴とするオフセット作業機」の開示がある。
【特許文献1】特開2004−254522号公報(従来技術2)
【特許文献2】特開2004−267012号公報(従来技術3)
【特許文献3】特開2005−46040号公報(従来技術4)
【特許文献4】特開2004−275188号公報(従来技術5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術1のように水田等の圃場の作業残隅部の作業処理を行うために、トラクタ進行方向に対して作業部を180°角水平方向に回動させ、更にトラクタも前後180°回転させて方向転換した後、トラクタを後進させるという複数の面倒な作業を行なわなければならないという問題点があった。特に、トラクタを後進させて残隅部の作業処理を行う場合は、作業者は後方を見ながらトラクタの後進操作を行うため運転技術や作業などに熟練を要するという課題があり、誰でもが容易に作業を行い難いという課題があった。
【0009】
更に、従来技術2乃至4に係る作業機は、畦等の被作業面に対して作業部のオフセット位置を調整したり、作業部の作業方向を調整したりする制御手段を有する技術であるが、走行機、あるいは機枠(装着フレーム)と作業部との間の距離は一定しており、作業部を機枠に対して水平方向に回動させることにより、被作業面と作業部の間隔を調整する装置又は方法である。しかしながら従来技術2乃至5には圃場隅部において走行機が旋回始めた場合、畦成形機の直進性を確保する部材や装置がなく、直進の安定性がないという課題があった。
【0010】
また、従来技術5は、「オフセットアーム5を枢支部Aを揺動中心として水平方向に回動させ、オフセットアーム5の先端部に枢支された作業部51がトラクタ2から左右に移動できる[特許文献4の0047欄]」という「枢支部A」と、「支持・伝動フレーム7を水平回動させ垂直方向に延びる水平回動軸54からなる枢支部B」という2つの水平回動軸を介して、走行機(本体フレーム4)と作業部51とが連結されている。そのため、圃場隅部において、走行機が回転し始めると、特許文献4の図2に示されるように2つの枢支部Aの回動方向と枢支部Bの回動方向が逆になり、この2つの枢支部Aと枢支部Bとを介して連結している作業部51の畦方向への圧力は、非常に小さくなる課題があった。
【0011】
そのため、従来技術5においては、圃場隅部における畦方向への成形圧力が減少するため、圃場の土質などの影響を受けやすく堅固な畦を形成できない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、装着フレームと、盛土部及び成畦部とを有する畦成形作業部を具備し、トラクタ等の走行機に装着され作業する畦成形機において、
装着フレームから斜め後方へ固定されて延設される支持フレームと、
支持フレームに移動可能に設けられるとともに、装着フレームとの距離を伸縮させる水平移動手段によって支持フレームに沿って装着フレームに対して遠近移動可能であり、かつ遠近移動可能である1つの水平回動軸を中心に水平回動手段又は自由回動によって水平方向に回動可能である畦成形作業部と、
畦成形作業部の作業時走行方向前側に設けられ作業時走行方向とは略直交する方向に設けられる回転軸に回転可能な円板状面を有して周端部が土中に貫入するように設けられる前部案内輪と、
畦成形作業部の作業時走行方向後側に設けられ作業時走行方向とは略直交する方向に設けられる回転軸に回転可能な円板状面を有して周端部が土中に貫入するように設けられる後部案内輪とを有し、
支持フレームに沿って装着フレームに対して遠近移動する畦成形作業部の水平回動軸が、常に前部案内輪と後部案内輪との間に位置するように設けられることを特徴とする畦成形機を提案する。
【0013】
また、畦成形作業部の水平回動手段が、畦成形作業部を任意の位置に回動させ固定保持可能であるとともに、畦成形作業部の回動が自由となる回動フリー状態とすることが可能な畦成形作業部の水平回動手段である0012欄に記載の畦成形機を提案する。
【0014】
更に、畦成形作業部の水平移動手段が、畦成形作業部を任意の位置に遠近移動させ固定保持可能であるとともに、畦成形作業部の遠近移動が自由となる移動フリー状態とすることが可能な畦成形作業部の水平移動手段である0012欄又は0013欄に記載の畦成形機を提案する。
【0015】
更に又、畦成形作業部の水平回動手段及び畦成形作業部の水平移動手段が、畦成形機の走行機の運転席より遠隔操作可能な制御部によって制御されるとともに、制御部は走行機が畦と平行に走行する場合の作業モードと、走行機が畦から離れる方向に走行する場合の方向変換モードを有している制御部である0012欄又は0013欄又は0014欄に記載の畦成形機を提案する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、畦成形作業部が装着フレームに対して水平方向に回動する水平回動軸が1つしか設けられておらず、かつ畦成形作業部の水平回動軸が、前部案内輪と後部案内輪の間に位置するため、圃場隅部において畦成形作業部に対して走行機が旋回を始めても畦成形作業部の姿勢(方向)の変化が起こりにくいとともに、畦成形作業部の畦方向への畦成形圧力も極端に減少することがなく、スムースに圃場隅部の畦の成形が可能となった。
【0017】
また、板状面を有する前部案内輪及び後部案内輪を設けることで、前部案内輪により盛土部のロータ(掘削爪)の掘削により発生する抵抗や振動を安定させ進行方向前方の直進性を安定させる。この直進性は、案内輪が前後に間隔をおいて設けてあるため安定するとともに、畦成形時に成形される畦から畦成形作業部が受ける反力を前後で分散して受けることができる。また、前部案内輪と後部案内輪を有するため、畦からの反力を受け止めて畦成形作業部が、圃場側へ逃げることを防ぐため硬い畦が成形できる効果がある。
【0018】
更に、この発明によれば、支持フレームが斜め後方へ固定されて設けられるとともに、支持フレームに畦成形作業部が移動可能に設けられ、遠近移動のみにより畦成形作業部の前後左右の位置調整が可能なため、走行機の進路変更による走行方向の変化に対応して畦成形作業部の姿勢をコントロールする場合、遠近移動のみでオフセット量と前後方向の位置を調整することが可能であるため、制御部のプログラミングが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の実施形態の畦成形機について、この発明の畦成形機の実施形態の平面説明図である図1及び図2、同じく正面図を示す図3、同じく側面図を示す図4、同じく畦成形作業部への動力伝達装置を示す一部切欠して内部を開示した平面部分断面である図5、この発明の畦成形機が圃場直線部から圃場隅部に至り、更に曲がって直線畦を形成する作業説明平面図である図6に基づいて説明する。
【0020】
この発明の1つの実施形態である畦成形機は、トラクタ等の走行機Tに連結される装着フレーム1と、装着フレーム1から斜め後方へ角度を有して固定されて延設される支持フレーム2と、支持フレーム2に移動可能に設けられ、装着フレーム1との距離を伸縮させる水平移動手段4によって装着フレーム1に対して遠近移動可能な作業部移動部3と、作業部移動部3に設けられた水平回動軸54を中心に水平回動手段6によって水平方向に対して回動自在な畦成形作業部5と、畦成形作業部5の作業時走行方向前側に設けられ作業時走行方向とは略直交する方向に設けられる前部案内輪回転軸70に回転可能な円板状面を有して周端部が土中に貫入するように設けられる前部案内輪7と、畦成形作業部5の作業時走行方向後側に設けられ作業時走行方向とは略直交する方向に設けられる後部案内輪回転軸80に回転可能な円板状面を有して周端部が土中に貫入するように設けられる後部案内輪8と、トラクタからの動力を伝達する動力伝達装置9とを有する。
【0021】
装着フレーム1は、トラクタTとの装着部であるロアピン10とトップブラケット11によってトラクタ後部の三点リンクヒッチに連結され、走行機によって牽引走行される場合走行方向に対して直角方向に設けられているフレーム枠12とからなる。装着フレーム1は、反トラクタ側に斜め後方へ角度を有して固定されて延設される支持フレーム2を設ける。
【0022】
支持フレーム2は、装着フレーム1のフレーム枠12の長手方向に対して約30〜50度角程度の角度を有して斜め後方に固定される。支持フレーム2は、この実施形態では装着フレーム1のフレーム枠12の長手方向に対して約45度角程度の角度を有し後方に向かって左側斜め後方に固定されて設けられ、略水平に平行な2本のフレームからなる。他の実施形態としては1本、又は3本以上のフレーム、あるいは板状体で形成してもよい。
【0023】
支持フレーム2には、作業部移動部3を支持フレーム2に沿って移動可能に設ける。作業部移動部3は、支持フレーム2に移動可能に設けた移動板状体30と移動板状体30から下方に設けられる移動垂直枠31とからなる。移動垂直枠31には後述する伝動移動枠93を連結して設けている。作業部移動部3は、支持フレーム2の側方に設けた水平移動手段4によって移動され装着フレーム1との距離を伸縮させる。作業部移動部3は、移動板状体30に畦成形作業部5の水平回動軸54を垂直方向へ設けている。
【0024】
水平移動手段は、この実施形態では油圧シリンダーからなる遠近スライドシリンダー4からなる。遠近スライドシリンダー4は、そのシリンダー本体40の後端部を装着フレーム1の左端部に固定して設け、シリンダーロッド41の前端部を作業部移動部3に固定して設けられており、装着フレーム1に取り付けられている油圧ポンプ42によって図示しない油圧バルブを介して作動される。水平移動手段は、他の実施形態では電動シリンダー、エアシリンダー等で構成されてもよく、伸縮移動可能な装置であればよい。作業部移動部3は、水平移動手段である遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41の伸長によって装着フレーム1から離れる方向に移動し、シリンダーロッド41の短縮によって装着フレーム1へ近づく方向へ移動される。
【0025】
畦成形作業部5は、作業部移動部3の下方に延設される水平回動軸54を中心に水平方向に水平回動手段又は自由回動によって回動可能である。水平回動手段は、この実施形態では油圧シリンダーからなる回動シリンダー6からなる。回動シリンダー6は、そのシリンダー本体60の後端部を移動垂直枠31の水平回動軸54の近傍から延設されるシリンダーフレーム32に回動可能に設け、シリンダーロッド61の前端部を畦成形作業部5の作業部フレーム53に回動可能に連結しており、装着フレーム1に取り付けられている油圧ポンプ42によって図示しない油圧バルブを介して作動される。水平回動手段は、電動シリンダー、エアシリンダー等で構成されてもよく、伸縮移動可能な装置であればよい。畦成形作業部5は、水平回動手段である回動シリンダー6のシリンダーロッド61の伸縮によって水平回動軸54を回動中心として回動する。
【0026】
畦成形作業部5は、畦成形作業時に作業進行方向前方側に設けられる盛土部50と、盛土部50の後方向側に設けられる畦上面削土部51と、成畦部52とからなる。盛土部50は、掘削爪501を多数設けた盛土回転軸(盛土ロータリ)500を有する。盛土回転軸500は、成型畦と略直交する方向に設けられ、その回転はダウンカット方向(前進する方向)へ回転する。盛土回転軸500が、成型畦と略直交する方向に設けられているため、盛土回転軸が成形畦と平行方向に設けられた構成のものと比較して畦成形作業部5の直進性が良好である。畦畦上面削土部51は、中央回転軸510の軸周囲に設けた上面削土爪511とを有する。成畦部52は、畦斜面成形用の円錐面を有する畦形成体521と、畦成形回転軸520と、畦上面成形用の円筒面を有する上面ローラ522を有する。
【0027】
前部案内輪7は、回転可能な円板状面を少なくとも周辺部に有する薄い円板体であり、中央を前部案内輪支持フレーム71に設けた前部案内輪回転軸70を回転中心として回転可能に支持され、畦とは反対側の牽引機の走行する圃場側位置に設けられている。前部案内輪回転軸70は、作業時進行方向とは略直交する方向に設けられるとともに、盛土部50の盛土回転軸500の近傍に平行に設けられるが、畦成形時の反作用力に抗する方向に前後左右に若干の角度を持たせるように設けることもできる。前部案内輪7は、トラクタ等の走行機の操縦席からの遠隔操作により上下可動に設けることも可能である。
【0028】
後部案内輪8は、回転可能な円板状面を少なくとも周辺部に有する薄い円板体であり、中央を後部案内輪支持フレーム81に設けた後部案内輪回転軸80により回転可能に支持され、畦とは反対側の牽引機の走行する圃場側位置に設けられている。後部案内輪回転軸80は、作業時進行方向とは略直交する方向に設けられるとともに成畦部52の畦成形回転軸520の近傍に平行に設けられ、第2チェーンケース97に固定されている。82は、調整ハンドルである。調整ハンドル82を手動で回転させて、後部案内輪8の上下位置を変えることができ、この上下位置の調整により全体の水平姿勢も調節する。
【0029】
畦形成作業部5への動力伝達装置9は、図5に示すようにトラクタ等からの回転を入力する入力軸90から第1ジョイント91によって装着フレーム1のフレーム枠12の長手方向に対して約45度角程度の角度を有し後方に向かって左側斜め後方に曲げられて設けられる伝動シャフト92に連結している。回転可能な伝動シャフト92は、この実施例では六角シャフトから成る。伝動シャフト92には、伝動シャフト92の長手方向に移動可能な伝動移動枠93を設けており、伝動移動枠93は移動垂直枠31に取り付けられており、遠近スライドシリンダー4によって装着フレーム1に対して遠近移動する。
【0030】
伝動移動枠93の内部には、伝動シャフト92に沿って往復移動可能で、かつ回転を伝動可能な第1スプロケット930と、第1スプロケット930と第2スプロケット931とを連結し回転を伝動させる第1チェーン932と、第2スプロケット931の回転軸である移動回転軸94とを設けている。移動回転軸94は、角度の変更が可能な回動ジョイント95を介して畦成形作業部5の各回転軸である盛土部50の盛土回転軸(盛土ロータリ)500、畦上面削土部51の中央回転軸510及び成畦部52の畦成形回転軸520へ、それぞれ第1チェーンケース96、第2チェーンケース97内の各スプロケット及びチェーンを介して連結し、回転を伝動する。
【0031】
この発明の実施形態である遠近スライドシリンダー4及び回動シリンダー6の作動は、油圧ポンプ42,油圧バルブ等を介して行なわれるが、この作動の制御は走行機Tの運転席から操作できる制御部(図示せず)によって遠隔操作する。制御部は、走行機Tが畦Rと平行に走行する場合の作業モードと、走行機Tが畦Rから離れる方向に走行する場合の方向変換モードを有している。
【0032】
畦成形作業部5への回転力の伝動は、図示されていないがトラクタ出力軸(PTO軸)から動力伝達装置9の入力軸90へ伝達され、第1ジョイント91を介して伝動シャフト92へ伝動され伝動シャフト92が回転する。伝動シャフト92には、伝動シャフト92の長手方向に移動可能な伝動移動枠93が設けられており遠近スライドシリンダー4によって装着フレーム1に対して遠近移動する。
【0033】
伝動シャフト92の回転は、伝動移動枠93の内部に設けられている第1スプロケット930から第1チェーン932を介して第2スプロケット931を回転させる。第2スプロケット931の回転により、回転軸である移動回転軸94を回転させ、角度の変更が可能な回動ジョイント95を介して畦成形作業部5の各回転軸である盛土部50の盛土回転軸(盛土ロータリ)500、畦上面削土部51の中央回転軸510及び成畦部52の畦成形回転軸520を回転させる。
【0034】
盛土部50の盛土回転軸500を回転させて掘削爪501により土を掘り上げ、中央回転軸510の回転により上面削土爪511が回転させ畦上面の削土を行ない、同時に畦成形部52の畦形成回転軸520を回転させ畦成形体521及び上面ローラ522を回転させ畦の斜面及び上面を形成する。
【0035】
次にこの発明の実施形態である畦成形機がトラクタTに牽引されて圃場の畦直線部から隅部へ連続して畦形成を行なう作動について平面説明図である図6に基づいて説明する。図6においてTはトラクタ、Rは畦部、2は支持フレーム、5は畦成形作業部、50は畦成形作業部5の水平回動軸であり、一点鎖線で分けたA部乃至G部へ連続走行について説明する。
【0036】
トラクタ等の走行機Tに牽引される畦成形機は、走行機Tが畦Rと平行に走行し成形作業を行なう場合、支持フレーム2は常に走行方向に向かって斜め後方、この実施形態では右斜め後方に固定されて延設された状態にある。
【0037】
A部は、通常の直線状畦R1を成形する状態を示し、畦成形作業部5は、走行機Tの走行方向後方斜め右側へオフセットした状態で作業する。この状態は、畦成形作業部5が遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41を比較的短縮させ、支持フレーム2の装着フレーム1に間隔をおいて近い位置に設け、畦成形作業部5を走行機T右側へオフセットした状態で回動シリンダー6を固定する。
【0038】
B部は、圃場隅部のおおよそ5〜6m手前で行なう走行機Tの予備ターンの開始を示す。予備ターンは、運転席の制御部にある予備ターンONスイッチを押してから運転者はハンドルを畦から遠ざかる方向へ切る。予備ターンスイッチがON状態では予め組み込まれた制御信号によって制御部は、回動シリンダー6の圧力を抜き、シリンダー圧をフリーにして回動シリンダー6のシリンダーロッド61の動きをフリーにさせ、畦成形作業部5の水平回動をフリーの状態にする。このとき前部案内輪7と後部案内輪8という前後の案内輪によって走行の直進が保たれる。これと同時に制御部により遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41の短縮とフリーとを交互に数回繰り返す。この実施例では各0.5秒×12回である。そして12回終了後にブザーが鳴り運転者はハンドルを戻す。
【0039】
C部は、走行機Tのハンドルが戻されると、走行機Tは畦から離れる方向へ斜め直進走行の状態となる。このとき、遠近スライドシリンダー4は制御部からの指示信号でシリンダーロッド41の伸長とフリーとを交互に数回繰り返す。この実施例では各0.7秒×15回である。更に遠近スライドシリンダー4は制御部からの指示信号でシリンダーロッド41の伸長と固定とを交互に数回繰り返す。この実施例では伸長0.5秒、固定1.0秒である。遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41が一番長く伸びた位置、又は予め設定した設定移動位置、又は一定時間シリンダーロッド41が同位置であることを検知してブザーがなる。
【0040】
D部は、走行機Tの運転者がハンドルを畦方向に切った状態を示す。ハンドルが畦方向に切られ走行機Tの走行方向を畦Rと平行になると同時に運転者は、予備ターンOFFスイッチを押す。これにより畦成形作業部5の水平回動軸54の位置は、支持フレーム2の後方側で固定される。
【0041】
E部に示すように、走行機Tの走行位置はA部と比較すると畦Rからやや離れて畦Rと平行になる。しかし畦成形作業部5は装着フレーム1から遠く離れた位置に自動的に移動して作動する。そのため、走行機Tが畦Rから離れても畦成形作業部5は直線状畦Rに沿って、畦形成圧力を減じることなく、畦を直線状に成形できる。
【0042】
F部は圃場隅部においての作業である。装着フレーム1がF部の入口F1の位置にくると、運転者は、運転席から操作可能な位置にある旋回開始スイッチを押してON状態とし、同時にハンドルを最大に旋回操作し隅部の他の畦R2と平行となる方向へトラクタTを旋回させ始める。旋回開始スイッチがON状態となると、遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41は、短縮と固定を交互に数回繰り返す。この実施例では短縮0.7秒、固定1.0秒である。また旋回開始スイッチがON状態になると回動シリンダー6の圧力を抜き、シリンダー圧をフリーにして回動シリンダー6のシリンダーロッド61の動きをフリーにさせ、畦成形作業部5の水平回動をフリーの状態にする。尚、回動シリンダー6は、予備ターン開始からF部終了までフリー状態としてもよく、前部案内輪7と後部案内輪8という前後の案内輪によって走行の直進が保持される。
【0043】
遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41が一番短く短縮された位置、又は一定時間シリンダーロッド41が同位置であることを検知すると、遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41は、伸長とフリーを交互に数回繰り返す。この実施例では伸長0.5秒、フリー1.5秒である。
【0044】
装着フレーム1がF2地点に来て走行機Tの旋回角度が略45度に達すると、遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41を伸ばし始める。トラクタTの旋回角度を検知する検知部は、畦成形作業部5の水平回動軸54に設けられている。
【0045】
シリンダーロッド41を伸ばしながら、そのまま走行機Tを旋回させ、走行機Tの旋回角度が略90度に達したF3の位置で走行機Tを停止させる。遠近スライドシリンダー4のシリンダーロッド41は最長の位置まで伸びた状態となり、畦成形作業部5は圃場隅部の端部までの畦R1を成形できる。
【0046】
G部は、隅部から延長される他の直線状畦R2を成形する畦作業機を示す。F3地点で畦成形作業部5を回動させ、90度向きを変えA部の作業姿勢と同じにして畦R2を成形する。尚、E部の状態でA部から作業をすることにより、B部、C部、D部の工程を省くことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明は、水田等の矩形の圃場等の場所において、その周囲に設ける畦成形作業を行う場合に利用できる。特に、水田等の矩形の圃場の隅部を角まで直線で未作業部分がないように形成でき、非常に容易かつ短時間に畦成形作業を完了できるため作業効率が高く利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の畦成形機の実施形態の平面説明図
【図2】図1と同じく平面説明図であり、遠近スライドシリンダーのシリンダーロッドが図1より伸長した状態の平面説明図
【図3】同じく正面図
【図4】同じく側面図
【図5】同じく畦成形作業部への動力伝達装置を示す一部切欠して内部を開示した平面部分断面説明図
【図6】この発明の実施形態である畦成形機が、圃場の畦直線部から圃場隅部に至り、更に曲がって直線畦を形成する作業説明平面図
【符号の説明】
【0049】
1 装着フレーム(機枠)
10 ロアピン
11 トップブラケット
12 フレーム枠
2 支持フレーム
3 作業部移動部
30 移動板状体
31 垂直移動枠
32 シリンダーフレーム
4 遠近スライドシリンダー
40 シリンダー本体
41 シリンダーロッド
42 油圧ポンプ
5 畦成形作業部
50 盛土部
500 盛土回転軸
501 掘削爪
51 上面削土部
510 中央回転軸
511 上面削土爪
52 成畦部
520 畦成形回転軸
521 畦成形円錐体
522 上面ローラ
53 作業部フレーム
54 水平回動軸
6 回動シリンダー
60 シリンダー本体
61 シリンダーロッド
7 前部案内輪
70 前部案内輪回転軸
71 前部案内輪フレーム
8 後部案内輪
80 後部案内輪回軸
81 前部案内輪フレーム
82 調整ハンドル
9 動力伝達装置
90 入力軸
91 第1ジョイント
92 伝動シャフト(六角シャフト)
93 伝動移動枠
930 第1スプロケット
931 第2スプロケット
932 第1チェーン
94 伝動軸
95 第2ジョイント
96 第1チェーンケース
97 第2チェーンケース
T 走行機(トラクタ)
R1、R2 水田等の直線状畦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着フレームと、盛土部及び成畦部とを有する畦成形作業部を具備し、トラクタ等の走行機に装着され作業する畦成形機において、
装着フレームから斜め後方へ固定されて延設される支持フレームと、
支持フレームに移動可能に設けられるとともに、装着フレームとの距離を伸縮させる水平移動手段によって支持フレームに沿って装着フレームに対して遠近移動可能であり、かつ遠近移動可能である1つの水平回動軸を中心に水平回動手段又は自由回動によって水平方向に回動可能である畦成形作業部と、
畦成形作業部の作業時走行方向前側に設けられ作業時走行方向とは略直交する方向に設けられる回転軸に回転可能な円板状面を有して周端部が土中に貫入するように設けられる前部案内輪と、
畦成形作業部の作業時走行方向後側に設けられ作業時走行方向とは略直交する方向に設けられる回転軸に回転可能な円板状面を有して周端部が土中に貫入するように設けられる後部案内輪とを有し、
支持フレームに沿って装着フレームに対して遠近移動する畦成形作業部の水平回動軸が、常に前部案内輪と後部案内輪との間に位置するように設けられることを特徴とする畦成形機。
【請求項2】
畦成形作業部の水平回動手段が、畦成形作業部を任意の位置に回動させ固定保持可能であるとともに、畦成形作業部の回動が自由となる回動フリー状態とすることが可能な畦成形作業部の水平回動手段である請求項1記載の畦成形機。
【請求項3】
畦成形作業部の水平移動手段が、畦成形作業部を任意の位置に遠近移動させ固定保持可能であるとともに、畦成形作業部の遠近移動が自由となる移動フリー状態とすることが可能な畦成形作業部の水平移動手段である請求項1又は請求項2記載の畦成形機。
【請求項4】
畦成形作業部の水平回動手段及び畦成形作業部の水平移動手段が、畦成形機の走行機の運転席より遠隔操作可能な制御部によって制御されるとともに、制御部は走行機が畦と平行に走行する場合の作業モードと、走行機が畦から離れる方向に走行する場合の方向変換モードを有している制御部である請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の畦成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−263788(P2008−263788A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106824(P2007−106824)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】