説明

発光装置

【目的】 LDの出力を監視するモニタPDを裏面入射型あるいは表面入射型のPDとし、しかも基板上に実装容易な形態のLD・PD発光装置を提供する事。
【構成】 基板と、基板の表面の一部に形成され光を導くコアを有する光導波路層と、光導波路層の一部或いは全部を除いた基板面に設けられ前方光と後方光を生じ前方光は光導波路コアを伝送するようにしたLDと、LDの背後において基板を穿つことによって形成されLDの後方光を反射する光路変換溝と、LD後方光を検出するため光路変換溝の上に跨りLDより高い位置に固定されたモニタ用PDとを含む。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は光通信用の光送信装置、或いはこれと受信器を組み合わせた光送受信装置に関する。発光素子パワーの監視系に関する改良で光ファイバを通信媒体に用いた光通信に広く利用できる装置である。光通信には発光素子としてLDが使われるが、経年変化や温度変化などのためLDパワーが変動する恐れがある。そこでLDの背後にモニタ用のPDを設けてLDの出力を監視しフィードバックしてLDの出力を一定レベルに保持するようになっている。本発明はLDとモニタPDの結合に関する改善を提案する。
【0002】
【従来の技術】現在光通信の送信器として用いられているLDモジュール1を図1によって説明する。円形状金属のステム2の上に直立するマウント3がある。マウント3の側面にLDチップ4が固定される。LD4は上方向と下方向の両方に光を出す。LD4の直下にあたるステム上面にモニタPD5が固定される。円筒形の金属キャップ6がステム2の上面を覆うように設けられる。キャップ開口7からLD4の信号光が出るようになっている。円筒形レンズホルダ−8は中央開口部にレンズ9を保持する。レンズホルダ−8の上には金属製の円錐形のフェルールホルダ−10が溶接される。
【0003】信号を伝達する媒体である光ファイバ11の先端はフェルール12に把持される。フェルール12がフェルールホルダ−10の中央穴に差し込まれ固定されている。ステム2の直下にはピン13が突出している。LD4を発光させ光ファイバ端で出力を見ながら、レンズホルダ−8をxy方向(ステム面方向)にフェルール12をz方向(光ファイバ方向)に動かして最適の位置を決める。これを調芯と言う。
【0004】本発明はモニタ用PD5とLD4の関係を問題にする。モニタPD5は、LD4の後方(下方)に出る光量を常時監視している。LD4の前方に出る光が信号光で光ファイバを伝送されるが、これは後方光と一定比例関係にある。だから後方光を見てLDの出力が分かる。LD出力をPD5で監視しフィードバックし駆動電流を増減することによってLDのパワーを一定に保つ。
【0005】この例であるとLDの光はステム面と直角の軸方向(z方向)に出る。PD5はステム面に平行(xy面)であるからPD5の表面に直角にLD光が入る。表面入射型のPDで表面に直角に光が入るから効率良くLD出力をモニタできる。つまりLDの後方光の殆どをPDで受け取ることができるのである。モニタ光を効率良く集める事ができる。強いモニタ光を得る事ができる。このような配置はPD5をステムに直付けできて好都合である。パッケージが金属であるからシール性が優れノイズが出ないという長所がある。このように幾つかの利点がある。現状のLDモジュールはこのようなものを使っている。
【0006】しかし図1のような立体形状のLD装置は部品コスト、製造コストが嵩み高価である。それに光ファイバが出てゆく方向がステム面に直角であるからピン13を回路基板に付けると嵩高くなる。
【0007】そのような欠点があるから表面実装型のLDモジュールが鋭意開発研究されている。これは光路を基板面に平行にしデバイスを基板面に並列に配置する。図1は光路がz方向であったが、表面実装の場合光路がxy面方向になる。表面に実装するからplanar lightwave circuit(PLC)と言う。図2に表面実装型のLD送信器の例を示す。Si基板14がパッケージ15の上に戴置される。Si基板14の上には送信用のLD16がエピダウン(エピタキシャル層が下になる)で固定される。Si基板14の前方には光導波路17が形成されている。LDの後方のパッケージ面にはサブマウント18に固定されているモニタPD19が設けられる。PD19をサブマウントにまずボンディングしサブマウント18を横にしてパッケージ15に接着するのである。
【0008】光導波路17を図3によって説明する。これは光導波路17部分を直角に切った断面図である。Si基板14の上にSiOよりなる下クラッド層24、線状のコア21、SiOよりなる上クラッド層25が形成される。コアはSiOにGeのような屈折率を上げるドーパントを添加したものである。実際には下クラッド層(SiO)とGe−SiO層をスパッタリングなどによって形成し、リソグラフィによってGe−SiOの両側不要部を削除して狭いコア21とする。その上にSiOをスパッタリングして上クラッド層を作る。Si基板であるから酸化法によってもSiO層を形成できる。
【0009】光ファイバ20のコア、光導波路17のコア21、LD16の発光部(ストライプ)22、PDの受光領域23の中心は同じ高さにある。モニタPD19は表面入射型でありPDを横にしているから表面がLDの方を向いている。だからLDの後方光をうまく受容することができる。強いモニタ光を得る事ができる。表面入射型のPDは極めてありふれたものである。これには光ファイバ、LDを同一表面に乗せたこと、モニタ光が大きいこと、通常の表面入射型PDを使用できることなどの利点がある。
【0010】しかしなお欠点はある。LDの光を表面で受ける必要があるからPDは横向けにしなければならない。PDチップの側面を直にパッケージ15に固定できないからサブマウント18は必須である。LDの発光部22と同じ高さにするためSi基板14によってLD16を持ち上げる必要がある。反対に言えばPDをLDと同じ基板に乗せることはできない。PDはサブマウント(チップキャリヤ)に乗せてから、さらにパッケージに付ける必要がある。PDの取り付けだけでも2度手間になる。それにPDとLDの取り付け面が相違し完全な表面実装でない。PDとLDの調芯(位置決め)も必要になる。
【0011】表面入射型のPDによってLDをモニタしようとするとLDに対しPD面を直角にしなければならないから取り付け高さの違いをいかんともしがたい。そこでPD自体に工夫を凝らすことによってPDを同一平面に実装できるようにしたものもある。
【0012】■ 山本毅、山本直樹、佐々木誠美、乗松正明、田中一弘、小林正宏、三浦和則、矢野光博「PLC平面実装による高均一光出力モニタ特性」1997年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会C−3−97、206頁
【0013】■ Gohji Nakagawa, Seimi Sasaki, Naoki Yamamoto, Kazuhiro Tanaka, Kazunori Miura, and Mitsuhiro Yano,"High Power and High Sensitivity PLC Module Using A Novel Corner-illuminated PIN Photodiode", 1997 Electronic Components and Technology Conference, p607 (1997), 特にFig.10
【0014】これを図4に示す。Si基板26は平坦でパッケージ27の上に戴置される。Si基板26の上にエピダウンでLD28が取り付けてある。その後方には特殊な側面形状のモニタPD29が固定される。LD28の前方には光導波路30がある。これは図3のような構造を持つ直線導波路あるいは彎曲導波路である。導波路30の直前に光ファイバ31が接合してある。PD29は側面から光を入射するために底面を面取りしてある。傾斜底面33となっているのである。傾斜底面33は光を上へ屈折させるための巧みな工夫である。LD28の発光部36から出た後方光は傾斜底面33に当たり屈折して上方に向かい、受光面34に至る。「面取り入射型PD」と言っている。
【0015】LD28の前方光は発光部36から光導波路コア35を通り光ファイバコア36に入る。これはLD28、モニタPD29を同じ高さに取り付けることができて表面実装の利点を遺憾なく引き出しているということができる。しかし実際には面取り底面の形成が難しい。傾斜角や切りとり長さの最適値のトレランスが狭くてPDの製造が難しい。側面から入射するから受光面に至る光量が必ずしも多くないという難点もあろう。このような特殊なPDは使いにくいという事がある。
【0016】モニタPDの3番目の工夫を述べよう。やはりPDの構造を工夫することによって側面から直接に光を入射できるようにしているものである。導波路型PDと呼ばれる特殊なPDを利用して平面構造の利益をさらに追求したものである。
【0017】■ M.Shishikura, H.Nakamura, S.Tanaka, Y. Matsuoka, T. Ono, T.Miyazaki,and S. Tsuji,"A symmetric double-core InGaAlAs waveguide photodiode forhybrid integration on optical platforms", LEOS'96, 9th annual meeting,1996, 18-21, November 1996 (IEEE Lasers and Electro-Optics Society 1996Annual Meeting)
【0018】端面入射型PDを用いるもので図5によって説明する。Si基板37は平坦な表面を持っている。Si基板37はパッケージ38に固定される。Si基板37の上にLD39、モニタPD40が同一平面上に配列される。光導波路41がSi基板37の上に形成してある。LD39の発光部43から前方に出る信号光は光導波路コア44、光ファイバコア45を通って伝送される。LD39から出た後方光は直接にモニタPD40の端面から導波路型受光層46に入る。同じ高さにLDの発光部43とPDの導波路型受光層46とが並ぶ。余分なスペーサなどが要らない。平面実装の理想とも言える配置である。優れた発光監視PDの構造のように見える。■はそのための新規なPDを述べている。たしかに優れた構想である。が、PDの構造が複雑である。歩留まり低く簡単には製造できないし入手困難である。かえってコスト高になってしまう。
【0019】このように端面入射型PDや、側面斜め入射型PDなど新規なPDを使うものは思想としての卓越性は否定しないがPD自体が製造困難で性能も安定せず時期尚早と思われる。現在容易に製造でき入手できるのは表面入射型のPD(図1、図2)か、裏面入射型PDである。これらの安価で安定した信頼性の高いPDをなんとか利用したい。
【0020】■ ドイツ特許DE43 13 492 C1「電気光学的発光素子に対する電気光学的受光素子の結合構造」発明者Bernhard Schwanderer, Albrecht Kuke
【0021】これは裏面入射型のPDによってLDの出力をモニタするような発光装置を提案している。図20に示すように、Si基板200に傾斜壁201、水平壁202、傾斜壁203等よりなる長溝204を穿つ。穴204の畔にLD205をエピダウンで設ける。穴204の途中に裏面入射型のPD206を少し斜めに固定する。裏面入射型というのは裏面のn電極が円環状で底面から光が入るようにしたものである。受光面208は上部に存在する。PD206の底面のほとんどが穴204の上に存在するようにする。LD205とPD206の底面は同じ高さにある。だからスペーサのようなものは無用である。エピダウンで取り付けてあるからLDの発光部207はSi基板面にごく近い。LD205から後方向に出た光は上下に広がる。下方に出た光(L、L、L)209は傾斜面203、水平面202によって反射され、底面からPD206に入り受光面208に至って光電流を生じる。水平光(L)211と上方に出た光(L)210はPD206の側面に当たり反射される。これは感受されず損失となる。PD側面に50%程度の光が当たるがこれはみな損失である。PDが傾いているのは側面反射光がLDに戻ってLD発振を擾乱させないためである。これはLDを光源とする場合の常套の工夫である。入手容易な裏面入射型PDを利用し表面実装可能であるから優れた着想であると言える。
【0022】しかし、これにもなお問題があると思う。エピダウンとしてもLDの発光部207は、基板面からなお10μm程度高くならざるをえない。LDから出る光は発光部から直進するものが最も強い。つまり水平光211が最も強力である。水平光211はPD側面の10μmの高さのところに当たるからこれは損失になる。つまり最も強いLD光をこのPDは見逃してしまうということである。だから図1のような場合に比べ、図20の場合PDの受光層に入るパワーは1/5程度にしかならない。モニタ光であって信号光でないが、それでもモニタ光の入力は多い方が良い。LDからの後方光の20%しか感受できないのでは心許ない。それに最強力光211がLD205へ戻らないようにPD側面を軸と直角にならないように傾けないといけない。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】LD出力を監視するモニタPDは光通信では必須であるが表面入射型の場合はLDとPDの方向や取り付け面が異なり部品コスト実装コストが掛かりすぎる。端面入射型、側面入射型のPDの場合はPD自体が特殊であってPDコストが嵩む。またLDから出る光量の僅かな部分だけを感受するから効率が悪い。モニタPDの電流が小さいと言ってもよい。裏面入射型PDを使うものはLDから出た光の1/5程度しか感受できず問題である。つまり、これもモニタPD電流が弱いという難点がある。表面実装型であって、しかもモニタ電流を大きくできるようにした通信用の発光装置を提供することが本発明の目的である。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明の発光装置は、基板と、基板の表面の一部に形成され光を導くコアを有する光導波路層と、光導波路層の一部或いは全部を除いた基板面に設けられ前方光と後方光を生じ前方光は光導波路コアを伝送するようにしたLDと、LDの背後において基板を穿つことによって形成されLDの後方光を反射する光路変換溝と、LD後方光を検出するため光路変換溝の上に跨ってLDより高い位置に固定されたモニタ用PDとを含むことを特徴とする。
【0025】基板の上に一旦光導波路層を設け、モニタPDは導波路層の上に、LDは導波路層の全体、一部を除いた面に取り付ける。PDはLDよりも上方にある。光路変換溝によってLD後方光を反射するが、PDが上方にあるからLDの後方光の50%以上が光路変換溝に入る。最も強い水平光がPD端面にあたらず光路変換溝にあたって反射される。ためにPDに入る光量が増強される。モニタ光量が増えるのでPD、その他の回路の設計の自由度が増える。より精密にLDパワーを制御できる。PDの位置をLDより上に上げたところが本発明の特徴であるが、もともと存在する光導波路を使ってPDを嵩上げするから工程が増えない。
【0026】
【発明の実施の形態】図6によって本発明の発光素子モジュールを説明する。基板47の上に光導波路層48、49が形成してある。これは図3に示したように、下クラッド層(SiO)とコアと上クラッド層(SiO)よりなる3層構造のものである。厚みは10μm〜30μm程度にある。シングルモードのコアの厚さの範囲は波長によって決まる。波長は1.3μmとか1.55μmの近赤外光であることが多い。コア厚に上下のクラッド厚が加わるから光導波路層の合計の厚みは15μm〜30μm程度である。基板の一部に光路変換溝50を穿つ。これによって光導波路が前後に分割される。前方の光導波路はさらに一部が除去されて基板面を露呈させる。ストライプ(発光部)が光導波路コアに合致するように光導波路に近接させLD51を基板面にエピダウンで固定する。光路変換溝50の上に跨るように裏面入射型のPD52を正立に固定する。
【0027】LD51の信号光(前方光)はすぐ前方の光導波路48のコアを伝わってさらに光ファイバ(図に表れない)へと進行する。モニタ用の後方光はLD51の発光部53からほぼ水平に出て光路変換溝50の面に当たり反射されてPD52の裏面に入り上方の受光層54に至る。受光層54で光量に比例した光電流を発生する。これによってLDの出力がわかるから、これを一定に保持するようにLD駆動電流を加減する。
【0028】従来例の■に似ているが本発明はそれを越える長所がある。本発明の第1の利点は基板の上の全体に光導波路を作るが、これを一部利用してPDをLDよりも上方に位置させるということである。光導波路は15μm〜30μmの厚みがあるからPDは15μm〜30μm、LDよりも高くなる。LDからの出射光L、L、Lが反射されPDに入る。これらはほぼ水平の光と下向き光である。上向き光LはPDに入らず損失となる。LDから出た後方光をより効率的に集めることができるということである。モニタ電流が増強される。■は基板の上に光導波路を形成しないから、そのような光導波路の2重利用は不可能である。本発明の第2の利点はLD光を直接に光導波路に入れるからレンズは不要で調芯も容易だということである。入手し易く安価な裏面入射型PDを利用できるということである。第3の長所は同じ基板面にPD、LDをそのまま実装できるということである。サブマウントに乗せる必要がない。
【0029】
【実施例】[実施例1(基板直付け、図6)]本発明の実施例にかかるモジュールの製造の順序を図7〜図9によって説明する。これは絶縁性の高い基板に適する構造である。基板47は例えば(001)Si単結晶基板或いはセラミック基板とすることができる。Si基板を使うと異方性エッチングによって簡単に光路変換溝を形成することができる。セラミック基板の場合は機械加工によって光路変換溝を作製する。基板47の上にSiOを主体とする光導波路層48、49を形成する。一直線状のコアを持つ導波路層を基板上一様に形成する。図3のような断面構造の光導波路である。
【0030】下クラッド層24と上クラッド25によって細いコア21を挟んだような構造となっている。コアだけを光が伝搬する。コアの部分はGeなどをドープして屈折率を局所的に上げる。クラッド層の部分はSiOである。コア、クラッドはスパッタリングや火炎堆積法、CVD法によって形成する。先に述べたように、下クラッド層24、コア層21を作り、コア層の一部を残して除去し、さらに上クラッド層25によって全体を覆うようにする。光導波路層48、49の厚みは15μm〜30μmの程度である。
【0031】次に図7のようにレジストよりなる第1マスクパターン60を試料の上に付けマスク露光し現像して第1開口部61を開ける。第1マスクパターン60の上からSiO層だけをエッチング除去する。リアクティブイオンエッチング(RIE)のような乾式のエッチング法を用いることもできる。Siを残し選択的にSiOだけを除くのでフッ酸による湿式エッチングでもよい。第1開口部61のところだけSiが露呈する。
【0032】この段階で第1マスクを除かない。露呈した部分の一部にレジストよりなる第2マスクパターン62を付ける。基板の一部は第2マスクパターン62により、光導波路は第1マスクパターン60によって覆われている。マスクによって覆われない第2開口部62がある。第2開口部62は矩形状で目的の光路変換溝と同じ寸法であるようにする。基板が(001)の場合は、ここで異方性エッチングを行う。異方性エッチングというのは結晶方位によって速度の異なるエッチングのことである。ここでは(001)基板を使っているから、{111}面のエッチング速度が遅いようなエッチング液を利用してエッチングを行う。(001)面には4つの{111}面が交差するから4つの面を持つ溝が自動的に生ずる。図8、図9に光路変換溝50が現れる。図9のように、光路変換溝50は互いに一定角で交差する4面55、57、63、64を持つ。そのままの面であってもよいが、反射率をさらに高めるために傾斜面57、63、64に金、アルミなどの金属を蒸着する、或いは誘電体被膜を被覆することもできる(以下の実施例でも同様)。異方性エッチングの場合、傾斜面の基板面に対する角度は54.7度である。
【0033】第1マスクパターン60、第2マスクパターン62の両方を除去する。光導波路48とSi基板47の面が露出する。Si基板47の露呈した面にLD51取付用のメタライズパターンを設け、後方の光導波路49が露呈した部分にPD52取付用のメタライズパターンを設けると同時に、その他の配線パターンを印刷或いは蒸着・エッチングによって設ける。
【0034】基板面のLD取付用メタライズパターンにLDチップ51をボンドする。LDは例えばInGaAsPの活性層を持つ1.3μm−MQW(Multiquantum Well)−LDを採用することができる。チップサイズは例えば長さ300μm、幅300μm、厚み100μmである。エピダウンで取り付けるから発光層はSi基板面の近くにある。後方の光導波路49の上にあるPD用メタライズ面に裏面入射型のPD52をボンディングする。チップサイズは例えば、550μm×550μm×200μmである。上面近くの受光部54(p領域)は正方形状で250μm×250μmである。光を受けることができればよいので受光部54の形状は円形でも楕円形でも差し支えない。これはLDの光の半分以上を光路変換溝50に当ててPDに背面入射している。
【0035】図6に示したように水平近くの強いビームLをPDに導くことができる。実際に図2の表面入射型横置きのものと比べると、これの約50%の光電流を得る事ができた。図2は殆ど全部のLD光を受けることができるので、その50%ということはLDから出る光の50%近くを感受できるということである。ここで基板はSi基板の例を説明したがセラミック等の絶縁基板であってもよい。LDを直付けするから抵抗率が高い基板が適する。Si基板の場合は特に高抵抗率のものを用いる。それでも足りない場合は、LDの部分だけ絶縁膜を付けるようにする。
【0036】[実施例2(下地層を残してLDを付ける、図10)]実施例1においてLDは基板に直付けするが、その場合基板は絶縁性の高い物である必要がある。LDのストライプ電極を基板から絶縁しなければならないからである。都合の良い事に光導波路の一部を有効利用してLDを基板から絶縁できる。図10は第2の実施例を示す。これは光導波路の下クラッド層24を残してその上にLD51を付けたものである。LD51のストライプ電極がエピダウンに戴置した場合Si基板に接触しないように絶縁する必要がある。LD取り付け部分において、光導波路の構造の内、下クラッド層(アンダークラッド層)24を残す。光導波路48との間に狭い隙間65が生ずる。結合効率からいえば隙間は狭いほど良い。下クラッド層24の上にLD51を乗せる。光導波路はSiOよりなり絶縁体であるから基板とLD51を絶縁できる。このようにすると光導波路の一部でLDを絶縁できて好都合である。その他の点では実施例1と同じである。
【0037】[実施例3(石英ガラス基板、ダイシング加工、図11)]実施例3は基板47を石英ガラスとする。図11に断面図を示す。この場合はSi単結晶のような異方性エッチングが適用できない。そこでダイシングによって光路変換溝50を形成する。機械加工だから光導波路49も傾斜面66になる。傾斜角は54.7度に限らず任意の角度とすることができる。光路変換溝50には金などを蒸着し反射率を上げるようにする。これもLD51は、残した下クラッド層24の上にある。しかし、この下クラッド層24は除去しても良い。石英は絶縁体であるからLDをクラッド層で絶縁する必要はない。ただしLDの発光部53の高さ調整のために残すこともある。図11はそれを示す。この実施例の最も優れた点は機械加工であるから光導波路49の縁をも傾斜面66とすることができる、ということである。最も強い水平ビームLが対岸の光導波路49の傾斜面66によって反射されPD52に入る。Lが余計にPDに導かれるからモニタ用光電流が増大する。実施例3は、実施例1、2に比較してPDの光電流は約10%増加した。
【0038】[実施例4(端面に光ファイバ接合、図12R>2)]実施例1〜3は発光装置のうちLDとPDの部分だけに関する区別であり図面もその部分だけを示した。しかし、それだけでは装置として完成していない。信号を伝送するものは光ファイバである。基板に光ファイバを付け樹脂でモールドして素子に仕上げる必要がある。光ファイバと基板の結合について、いくつかの異なる構造があり得る。
【0039】実施例4は図12のように光ファイバ70の端面を基板47の端面に直接に接着したものである。光導波路48のコアと光ファイバ70のコアが軸心を一致させるように両者を樹脂によって接合する。このようにするとLD51から出た前方光(送信光)は光導波路48のコアを通り光ファイバ70のコアに入るようになる。その他の構造はこれまでに述べたものと同様である。PD52は光導波路層49の上にあるからLD51よりも高い位置にある。
【0040】[実施例5(V溝を切って光ファイバ先端保持、図13)]実施例5は図13のように、基板の先端部にV溝71を設け、光ファイバ70の先端部をV溝71で保持したものである。ファイバは接着剤によってV溝71に固定してある。また透光性の樹脂72によって光導波路48の端、LD51とPD52を覆っている。透光性というのはLDの出す光(例えば1.3μm光)に対して透明な樹脂ということである。LD光は樹脂を通り導波路とPDに至ることができる。後に不透明の樹脂によって全体を被覆するからLD51と光導波路48、PD52の間が不透明樹脂で遮断されないように透明樹脂で覆う必要がある。
【0041】それだけでなくて透光性樹脂には次のような作用がある。シリコーン系樹脂(透光性樹脂の例)はLD光に対して屈折率が1.4〜1.5である。空気だと屈折率は1しかないが、透光性樹脂は屈折率がより高いからLDの後方光を軸中心へ集めてPDへ入射する光を強める。屈折率が空気より高いからチップと空間との界面での反射を減らすことができる。そういう光学的な効果の他にチップを外界の影響から保護するなどの機械的作用がある。図12の実施例4でも同様に透光性樹脂72によって、LD、PD、導波路端を覆う必要がある。その他の点ではこれまでの実施例と同じである。LDよりもPDの取り付け位置が高くなっている。これは本発明の共通の特徴であり図12にも現れる。
【0042】[実施例6(大小V溝を切って光ファイバ、フェルール先端保持、図14)]実施例6は図14のように、基板の先端部に小さいV溝71と大きいV溝73を設ける。光ファイバ70の先端にフェルール74を取り付ける。フェルールから突き出た光ファイバ(コア+クラッド:直径125μm)70を小さいV溝71に当て、フェルール74を深いV溝73にあてる。その状態で接着剤によってフェルール74、光ファイバ70を接着する。LD51の前方光は光導波路48から光ファイバ70のコアに入る。透光性樹脂72をLD、PD、導波路端にポッティングするのは実施例5と同様である。その他は実施例5などと同様である。PDがLDより高いという特徴は共通に備える。
【0043】[実施例7(LD+PDの他に受信用PDを備える、図15、図16)]以上述べた物は光送信モジュールであった。本発明は送信部だけでなく受信部をも備えた送受信器にも適用する事ができる。図15、図1616によって本発明の送受信モジュールを説明する。Si基板47は長方形状であり中央の高台と、後方には光導波路(SiO)層がある。中央の光導波路層にはコア21が通っている。その終端がより低地になっておりLD51が取り付けられる。その後ろには光路変換溝50が穿たれ、さらに光導波路層の上にPD52がボンドされる。PD52、LD51などが透光性樹脂72によって覆われる。反対側では2段のV溝71、73が穿たれ、光ファイバ70、フェルール74が溝によって保持される。光ファイバ70のコアは直接に光導波路のコア21に当接する。このような構成はこれまで述べた実施例と同様である。
【0044】さらに中央部には受信用の裏面入射型のPD80が導波路コア21の上方のメタライズ面にボンドされる。その側方には増幅器(AMP)チップ81がボンドされている。受信信号を直接に増幅するためである。PD80のすぐ後ろには斜溝がありWDMフィルタ82が差し込まれている。LD51から前方へ出た信号光は導波路コア21に入りWDMフィルタ82を通り抜け、光ファイバ70に入射する。光ファイバ70から出た受信光はコア21に入りWDMフィルタ82によって上方へ反射されPD80に裏面から入射する。送信、受信の両方を同時的に行うことができる送受信モジュールである。基板やチップ、リードフレームの全体は固定用樹脂(例えばエポキシ樹脂)75によってモールドされる。モールドパッケージのデバイスとなる。
【0045】図17は出来上がった状態の素子の平面図である。前方にフェルール74あるいは光ファイバが突出している。パッケージの両側にはピン90、91が出ている。ピンの数を除けば、実施例1〜6でも完成状態はだいたい図17のようになる。
【0046】[実施例8(端面入射型受信用PDを用いる送受信モジュール、図18)]図18によって受信用PDが端面入射型の実施例を説明する。LD51が基板面にあり、背後に光路変換溝があってその後ろの小高い部位にモニタPD52があるという構造は共通する。直線導波路92に対して中央部近傍で分岐導波路93を新たに形成する。導波路の断面は図3のようなものである。分岐点に斜めにWDMフィルタ82を設ける。WDMフィルタ82で反射された受信光が分岐導波路93に入るようにする。分岐導波路93の終点に端面入射型の受信用PD84を設置する。これも送受信を同時に行うことができる。
【0047】[実施例9(端面傾斜モニタPD、図19R>9)]図19に示すようにモニタPD52の端面を10度〜20度傾斜させることもありうる。これはLD光がモニタPD52の端面によって反射されて戻ることを防ぐ意味がある。しかしPDはLDよりも10μm〜30μm高い位置にあるからLD光でPD端面に当たるものは上向き傾斜を持つビームであるからLDには殆ど戻る可能性がない。であるから図20の従来例より、PDを斜めにする必要性が小さいと言える。
【0048】[実施例10(上面入射型モニタPD、図2121)]図21に示すように本発明は上面入射型のモニタPDにも適用できる。上面入射型PDというのは基板の上面一部にp領域がありp電極はリング状の電極になっており、n電極は基板底面の全体を覆うようなPDである。LDや光路変換溝に関しては実施例1と似た構造であるがPDの構造が少し違う。上面入射型PDを逆さまにして(エピダウン)光路変換溝50にまたがるように取り付ける。LD51から出た光線L、L、Lは傾斜面57で反射されてPD52の上面の受光部54に入射する。このような上面入射型PDを使って、実施例2〜実施例9のような構造のモジュールをも作製することができる。煩雑になるからこれ以上説明しない。
【0049】[実施例11(平行底面をもつ光路変換溝を利用、図22〜図27)]これまで説明した光路変換溝はSiの異方性エッチングによって形成された{111}傾斜面を有するものであった。しかしそれに限らず、傾斜角は54.7度以外のものであってもよい。さらに楔型の溝とせずに平行底面が存在するような光路変換溝を利用しても良い。平行底面と4つの傾斜側面からなる溝を使うものは二つの利点がある。一つは製作上のものである。エッチングによって楔の奥底まで除去するには時間がかかるが浅い平行底面を残すのであればエッチング時間を短縮できる。もう一つの利点は反射光量をさらに増やすことができるという機能上の利点である。この点はわかりにくいので図22〜28で説明する。このような浅い光路変換溝構造はSiベンチに限らず、セラミック基板やガラス基板、プラスチック基板を用いる時にも同様に適用できる。
【0050】図22は有底光路変換溝の斜視図である。図23は有底光路変換溝の縦断面図である。光路変換溝50は、4方に傾斜側面55、57、58を有しさらに水平の底面59を有する。LDから出た光は底面59で反射してさらに後傾斜側面57で反射しPDに入る。あるいは後傾斜側面57で反射されてPDに入射する。LDの発光点をLとしてLを含み溝に直角の鉛直面で溝を切断した図が図22、23である。溝の切断線の角点をA、B、E、Fとする。傾斜面57、58、底面59はミラーとなる。傾斜面57は最も重要である。これをMとする。底面59はミラーMとする。これはMについで重要である。側面58はM、Mとする。レ−ザLDの発光点のミラーMに関する鏡像点をLとする。L点からでてMで反射された光は、鏡像点Lから直進した光と同視できる。図24は実施例11のモジュールの要部の平面図である。LD51とモニタPD52の間に光路変換溝があるが光路変換溝は底面59を備えている。実施例1とよく似ているがこの点で異なる。底面59を備えた光路変換溝は、実施例2〜実施例10にも同様に適用することができる。煩瑣になるからそれらの適用例のモジュールを図示しない。
【0051】どのミラー面で反射された光がどの程度PDに入るか?ということは光路変換溝の長さ、深さ、傾斜角などに依存する。底面を有する実施例11の場合、底面の深さが溝幅と無関係に選ばれる。選択自由度がふえて設計がより楽になる。溝が浅いほど、底面59の役割は重要になる。溝が長いほど底面59の機能は重みを増す。反対に溝が深くて短いとMがより重要になる。これらのことは定性的に説明することができる。定量的にはLDの発光角度分布を正確に知って光線追跡法によってそれぞれのミラーで反射されPDにいたる光量を計算すべきである。
【0052】図25は光路変換溝の縦断面図を示すが、LDの発光点Lと面対称の位置に鏡像点Lができることを示す。LLはMによって垂直に二等分される。底面のミラーMで反射された光はLから出た直進光と等価である。MのためにLにもLDが存在すると仮想できる。図26は線分LLを含み軸方向に平行な面で切った断面図である。左側のL点はレ−ザ発光点で、L点は鏡像点である。後傾斜面がMである。Mに関する、L点L点の鏡像点をL’、L’とする。Mの上方にモニタPDが存在する。光導波路の厚みhだけPDが高みにあるから、Lから軸方向に延びた線よりもhだけ上方にPDが存在する。Mによってできる鏡像にもPDの像PD’が出現する。ここではL’点からのLD光と、L’点からのLD光を書いている。裏面入射型のPDの場合を図示しているが上面入射型でも同様である。裏面入射型の場合、厚みを、PDと周辺の樹脂の屈折率の比で縮めるとやはり直進する光線によって考えることができる。図27は断面図を示す。
【0053】(イ)M一回反射の場合…これが最も重要である。L点のMに関する鏡像点L’から光線が出るように見える。ほぼ水平光Lや下向き光LなどはPDに入射することができる。それだけでなく実施例3でhが大きい場合PD’が持ち上がっているから上向き光LもPDに入射できる。これが重要である。よほどの上向き光LはPD’で遮られるが、指向性のよいLDであるから、Lはごく弱い。
【0054】(ロ)M、M二回反射の場合…底面59(M)の付与がこのような多重反射を可能にしている。LのMによる鏡像点がLであり、そのMによる鏡像点がL’点である。その点から出た光はLm0、Lm1、Lm4などである。Lm0、Lm1は実際には存在しない。従ってLm4付近の光が溝の長さ、深さによってはPDに入ることができる。だからより有利になる。溝が短くて浅い場合L’点からの光を殆どすべてPDに導き入れることもできる。
【0055】(ハ)Mによる一回反射の場合…底面59(M)の形成がこのような可能性を与える。L点からの斜め下光Lm3’が、Mで反射されることなく直接にPDに入るということである。PDの底との角度が大きいからPD底で反射されるが一部は屈折して入る。溝が短く深いほどその比率は大きくなる。底面がないとそのような可能性はなかった。特に上面入射型の場合はこのような光を有効に感受できる。
【0056】
【発明の効果】本発明は基板上に光導波路を設け、光導波路の途中に光路変換溝を彫り、溝の一方の辺に光導波路層を除去してLDを設け、裏面入射型モニタPDを光導波路を除去せず光路変換溝に跨るように設置する。光導波路のコア層とLDの発光層が同じ高さになり、LDの前方光は光導波路を通じて出てゆく。LDの後方光は光路変換溝で反射してPDの裏面に入射する。裏面入射型のPDによってLDの出力をモニタするのであるが、光路変換溝によって両者を結合している。光導波路を一面に設けた基板の一部に光路変換溝を穿ち、その一方で導波路を除去しLDを設け、他方では光路変換溝を覆うようにPDを取り付ける。
【0057】光導波路はLDから外部の光ファイバなどへ光を導くために用いる。光導波路を基板の全体に一旦形成するのは容易なことである。その一部を除去するのもフォトリソグラフィによって容易にできる。そこへLDを乗せて、光導波路の上にPDを乗せる。そのようにすれば、PDの方がLDより光導波路の分だけ上にあるからLDの後方反射光の多くをPDに導入できる。モニタ光が増加するからより精密な制御を行うことができる。光導波路はLD光を光ファイバなどへ導くという役割とPDのスペーサとしての二重の役目を果たしている。
【0058】光導波路層を台に使ってPDを持ち上げたところに本発明の精妙な工夫がある。これまでにもその効果に触れたが、ここでより詳しく述べよう。
【0059】図28は光路変換溝50の概略の斜視図である。これによってLDの発光点と二つの斜鏡による発光点の虚像の存在を説明する。光路変換溝が底面59を持つ場合は先に説明した。ここでは底面がない場合を説明する。光路変換溝50は4つの斜面を含むが光学的に意味があるのは両側の傾斜面と突き当たりの後傾斜面57である。前傾斜面55や底稜線56はたいして意味がない。以下の説明でそのようなことも明らかになる。傾斜面はLD光を反射するミラーとして機能する。ミラーの定義はこれまでのものと同じとする。両側の傾斜面をM、Mとする。突き当たりの後傾斜面をMとする。LDはストライプ側を基板面に直付けする。つまり倒立(エピダウン)に付けるから発光点Lは基板面とほぼ同じ高さである。厳密には発光点LはLDの底面よりすこし上(下クラッド層分)にある。
【0060】発光点Lを通り基板面に平行の平面を想定し、その平面と光路変換溝面との交点をA、B、G、Kとする。発光点Lを通り軸と直角面と光路変換溝の交点をA、B、Cとする。AとBは溝の肩に近いが肩よりすこし(LDの上面と発光部の距離分)上である。Mの底を原点Oとする。底稜線56はCOである。MはAKOC面を、MはBGOC面を持つ。重要なMはKOG面を有する。
【0061】セラミック基板やガラス基板の場合は任意の傾斜角の斜面とすることができる。以下に述べる事は傾斜角によらず妥当することである。(001)Si単結晶を用い異方性エッチングで溝を掘るときは、Mは(111)面、Mは(−111)面、Mは(1−11)面となる。斜面ACOKと基板面となす角度は54.7度である。溝の初めA点での面の挟角は125.3度である。ABの中点にLDの発光点Lがある。
【0062】ここでは定性的な様子を知るためにM、M、Mによる一回反射又はM、Mによる反射ののち、Mで反射する光のみ考える。LのミラーMによる虚像がSである。LのミラーMによる虚像がHである。厳密にはLDの角度方向強度分布を知って光線追跡しビームごとに行方を追うべきであるが、幾何光学的な考察で全体的なことが分かる。すなわち発光点L、S、Hからの 光がどのようにPDに入射されるかを考える。
【0063】図29はACB面での縦断面図である。Si基板を異方性エッチングで加工した場合、M、Mの水平に対する傾きは54.7度である。M、Mの底稜線での挟角は70.5度である。M、Mで囲まれる突き当たりがMである。L点はAB線上にある。
【0064】L点のミラーM、Mによる鏡像点(虚像)SとHも記入した。平面鏡は物体点Lの面対称の位置に鏡像点を作るものである。レ−ザ発光点LのMによる虚像はH点である。∠LCH=70.5度である。LのMに関する鏡像点はSである。
【0065】Mは54.7度の角度をなすから斜め下方に発光点L、H、Sの鏡像点L’、H’、S’を作る。図30にこれを示す。図30は従来例■の場合のようにPD底面とLD発光点の高さの差hが0の場合を示している。PDのMによる鏡像PD’も書き込んである。PD’は光を遮る作用があるので斜線を付した。Mによる反射光は鏡像点L’、H’、S’からの直進光に置き換えることができる。
【0066】さらにPDの屈折率をnとすると、PDの底面でスネル法則にしたがって上向きに屈折する。全て直進光で考えたい。PDの屈折率nと媒質の屈折率nの比をn=n/n(>1)として、PDを底面に向かって1/nに高さを減らしたものを想定する。受光層(破斜線)が1/nの高さに来るようにする。そのようにすれば鏡像点からの直線ビームだけを考えれば良いということになる。
【0067】ここでPDの高さhが問題になる。LD発光点を基準としてPD底面高さを決める。従来例■は光導波路を作らないからh=0である。図30でPDの鏡像PD’がL’点の直前にあり最強のビーム(水平ビーム)Lを遮る。上向き光LもPD’で遮断される。下向き光LなどはPD受光層に入る。また、H’、S’からのH光などはPD受光層に入る。
【0068】すなわちLD光の半分はPD’で遮られる。ビーム強度分布はLで最も強いのであるがこれがPD’で遮られている。結局受光層をどのように置いてもL’から受光層に入る光量は半分以下である。これはミラーの傾斜が54.7゜ということによらない。セラミック基板、ガラス基板でその他の斜角を選んでも同様である。
【0069】本発明の場合を実施例3を例にとって図31R>1によって示す。PDがLDの発光部の高さより高い(h)ので、図31のようにPDのMによる鏡像PD’がhだけ斜め上にずれる。L’点からのビームは殆どが受光層に到達することができる。PD’が後退しているから受光層がPD’の影にならない。L’のビームのうち最強のLは受光層に入る。上向きビームLも受光層に入る。下向きビームL、Lは当然に受光層に至る。またH’、S’からのHの光も受光層に入る。本発明はPDをLDより上に(h>0)とするから、L’からのビームを有効に受光層へ導く事ができる。PDを上にずらすのはPD’をLラインより上げることによってPDでの遮断損失を減らすのと、PDの位置を上げてL’の中心Lビームを受光層の中心近くに導入するという二重の利益がある。これによって、モニタ光電流を大いに増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来例にかかる金属パッケージ縦型のLDモジュールの縦断面図。
【図2】上面入射型モニタ用PDをサブマウントに固定しサブマウントを横にして基板に取り付けることによってLDの後方光を上面入射型PDに入射させるようにした従来例にかかる表面実装型の発光装置の断面図。
【図3】Si基板の上にSiO系光導波路を設けたものの断面図。
【図4】従来例にかかる、底面隅部を面取りしたPDを用いたLD・PD同一平面実装型の発光素子の断面図。
【図5】従来例にかかる、導波路型PDを逆さまに取り付けてLD・PD同一平面実装型の発光素子の断面図。
【図6】LDとモニタPDと光路変換溝を含む本発明の発光装置の縦断面図。
【図7】基板の上に光導波路層を形成し、その上に第1マスクパターン(レジスト)を乗せた状態の断面図。
【図8】第1マスクパターンを通して光導波路層だけをエッチング除去しLDを実装すべき部位に第2マスクパターンを設けた状態の断面図。
【図9】第1、第2マスクパターンを通して異方性エッチングすることによって光路変換溝を形成し、マスクパターンを除去し、基板面上にLDを導波路層にPDを搭載した状態の実施例1の発光装置の平面図。
【図10】LDを戴置すべき部位において、光導波路層の下クラッド層(アンダークラッド層)を残してエッチングし下クラッド層の上にLDを搭載することによって基板とLD電極を絶縁した実施例2の発光装置の断面図。
【図11】石英ガラスを基板として光路変換溝を機械的手段によって形成し光導波路端面も傾斜面に形成した実施例3の発光装置の断面図。
【図12】光ファイバ端面を基板の端面に接合した形態の実施例4のモジュールの断面図。
【図13】基板の前端にV溝を切って光ファイバ端部をV溝に挿入固定した形態の実施例5のモジュールの断面図。
【図14】基板の前端に深いV溝と浅いV溝を設け、フェルールは深いV溝に、光ファイバ(コア+クラッド)は浅いV溝に挿入固定した形態の実施例6の断面図。
【図15】基板の前端に深いV溝と浅いV溝を設け、フェルールは深いV溝に、光ファイバ(コア+クラッド)は浅いV溝に挿入固定し、基板中央部に受信用PDと増幅用AMPを設けた送受信用にかかる実施例7の平面図。
【図16】基板の前端に深いV溝と浅いV溝を設け、フェルールは深いV溝に、光ファイバ(コア+クラッド)は浅いV溝に挿入固定し、基板中央部に受信用PDと増幅用AMPを設けた送受信用にかかる実施例7の断面図。
【図17】実施例7のモジュールをプラスチックモールドパッケージに収容した状態の平面図。
【図18】基板中央に、送信光は直進させ受信光は反射するWDMフィルタを設け光導波路の側方に受信用PDを設けて送受信用にした実施例8の平面図。
【図19】モニタ用PDの端面を光路変換溝の軸直角面に対して10度〜20度傾けた実施例9の概略平面図。
【図20】ドイツ特許DE43 13 492 C1「電気光学的発光素子に対する電気光学的受光素子の結合構造」によって提案されたLDとモニタPDの結合構造の断面図。
【図21】上面入射型PDをエピダウンで取り付けた実施例10の縦断面図。
【図22】光路変換溝の傾斜側面の真ん中に底面を付与した実施例11のモジュールの光路変換溝の斜視図。
【図23】実施例11の光路変換溝の縦断面図。
【図24】底面を有する光路変換溝を有する実施例11のモジュールの概略の平面図。
【図25】底面を有する光路変換溝においてLDの発光点LのMに関する鏡像点Lを示す説明図。
【図26】LDの点Lからの直接光、底面での反射光(L)が、Mで反射されたときに、Mの鏡像点L’、L’からPDに向かって直進するビームに置き換えて考えるためのビーム面と垂直の方向から見た説明図。
【図27】光路変換溝の傾斜側面の真ん中に底面を付与した実施例11のモジュールの断面図。
【図28】LD発光点と光路変換溝の近傍のみの断面斜視図。
【図29】光路変換溝の稜線に直角な面で切断した縦断面図。
【図30】 LDビーム中心線からのPD底面の距離をhとして、h=0の時のLD発光点L、その虚像点H、J、S、Tのミラー面Mによる虚像(鏡像)点L’、H’、J’、S’、T’と、虚像点からの光線とPDの受光部54の関係をMに平行な方向から見た説明図。
【図31】LDビーム中心線からのPD底面の距離をhとして、h>0の時のLD発光点L、その虚像点H、J、S、Tのミラー面Mによる虚像点L’、H’、J’、S’、T’と、虚像点からの光線とPDの受光部54の関係をMに平行な方向から見た説明図。
【符号の説明】
1 LDモジュール
2 ステム
3 マウント
4 LDチップ
5 モニタPDチップ
6 キャップ
7 開口
8 レンズホルダ−
9 レンズ
10 フェルールホルダ−
11 光ファイバ
12 フェルール
13 ピン
14 Si基板
15 パッケージ
16 LD
17 光導波路
18 サブマウント
19 モニタPD
20 光ファイバ
21 コア
22 発光層
23 受光領域
24 下クラッド層
25 上クラッド層
26 Si基板
27 パッケージ
28 LD
29 モニタPD
30 光導波路
31 光ファイバ
32 PD底面
33 傾斜底面
34 受光面
35 光導波路コア
36 光ファイバコア
37 Si基板
38 パッケージ
39 LD
40 モニタPD
41 光導波路
42 光ファイバ
43 発光部
44 光導波路コア
45 光ファイバコア
46 導波路型受光層
47 基板
48 光導波路層
49 光導波路層
50 光路変換溝
51 LD
52 PD
53 発光部
54 受光層
55 前傾斜面
56 底稜線
57 後傾斜面
58 傾斜面
59 底面
60 第1マスクパターン
61 第1開口部
62 第2マスクパターン
63 傾斜面
64 傾斜面
65 隙間
66 光導波路傾斜面
70 光ファイバ
71 V溝
72 透光性樹脂
73 V溝
74 フェルール
75 固定用樹脂
80 受信用PD
81 AMPチップ
82 WDMフィルタ
84 受信用PD
90、91 ピン
92 導波路
93 導波路
200 Si基板
201 傾斜壁
202 水平壁
203 傾斜壁
204 長溝
205 LD
206 PD
207 発光部
208 受光面
209 下方光
210 上方光
211 水平光

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板と、基板の表面の一部に形成され光を導くコアを有する光導波路層と、光導波路層の一部或いは全部を除いた基板面に設けられ前方光と後方光を生じ前方光は光導波路コアを伝送するようにしたLDと、LDの背後において基板を穿つことによって形成されLDの後方光を反射する光路変換溝と、LD後方光を検出するため光路変換溝の上方でLD底面より高い位置に固定されたモニタ用PDとを含むことを特徴とする発光装置。
【請求項2】 モニタ用PDは光導波路層の上に固定され、LDは光導波路の全部或いは一部を除去した面に固定され、導波路層の全体厚みあるいは一部厚みの分だけPDがLDより高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】 基板が、Si基板、GaAs基板或いはInP基板の何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】 基板が、ガラス基板或いはセラミック基板であり、基板の光路変換溝に続く光導波路も斜めに研磨加工され反射を増強した事を特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】 光路変換溝は、傾斜した側面の組み合わせ、或いは傾斜した側面と底面の組み合わせからなり、側面又は側面と底面に反射率を上げるためにAu、Alの金属被膜或いは誘電体被膜を被覆した事を特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の発光装置。
【請求項6】 光路変換溝、LD、PD、光導波路端を含む部分を透光性樹脂によって覆った事を特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の発光装置。
【請求項7】 光導波路がSiO系の導波路である事を特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の発光装置。
【請求項8】 PDが裏面入射型で受光面が上側に設けられることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の発光装置。
【請求項9】 PDが上面入射型であって受光面が下を向くように設けられている事を特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の発光装置。
【請求項10】 LDがエピダウンで基板に取り付けられている事を特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の発光装置。
【請求項11】 基板の上に受信用PDが設けられ、光導波路の途中に設けたWDMフィルタによって受信光を分離して受信用PDへ導くようにしたことを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の発光装置。
【請求項12】 基板の端に大小のV溝を切り、大V溝にフェルールを小V溝にファイバの先端を固定したことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図29】
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【図26】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2001−203419(P2001−203419A)
【公開日】平成13年7月27日(2001.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−12857(P2000−12857)
【出願日】平成12年1月21日(2000.1.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】