説明

短下肢装具

【課題】 下肢痙性麻痺者には、両側支柱付短下肢装具が広く用いられている。この短下肢装具は、両側の支柱により側方安定性、耐久性とも優れているが、踵接地期に足関節を底屈させない構造のため、不自然な歩行になっていた。また、デザイン面から、特に女性に敬遠されていた。
【解決手段】 靴底内部に設けた▲1▼背屈については弱い制動力または、抵抗なく可動し、立ち座り動作を制限しない、▲2▼歩行周期の踵接地期に生じる強い底屈モーメントに対しては足関節の底屈を許す、▲3▼足底全接地期以後は底屈を強く制限する本発明の機構により、軽度から高度の下肢痙性麻痺者に対して、自然に近い歩行を可能にすると同時に、足継手の機構が靴底内部にあることにより、下腿支えの形状に制限が少なく、よりデザイン性の高い短下肢装具の作製を可能にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下肢痙性麻痺者の歩行をより自然な歩行に近づけるとともに、足継手機構を靴底内部に設けることで、下腿支え部分の形状の制約を少なくした下肢装具である。
【背景技術】
【0002】
従来用いられている底背屈を制動する短下肢装具には、足継手付プラスチック性短下肢装具、両側支柱付短下肢装具などがあるが、これらの装具は、足関節の底屈を制限するため、歩行が不自然であることと、支柱の途中に足継手が設けられ、下腿支え部分の形状に制約があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
下肢痙性麻痺者の短下肢装具は、▲1▼背屈については弱い制動力または、抵抗なく可動し、立ち座り動作を制限しない、▲2▼歩行周期の踵接地期に生じる強い底屈モーメントに対しては足関節の底屈を許す、▲3▼足底全接地期以後は底屈を強く制限する特性が必要であるとともに、装具は身体に常時身につけるものであり、装着による心理的負担を少なくするためのデザイン性が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
下肢痙性麻痺者の短下肢装具に要求される上記の特性を得るための機構を靴底内部に設けることで、下腿支え部分の形状の制約を少なくした下肢装具である。
【0005】
図1のシャンク1とシャフト2を軸受け3で連結し、シャフトに固定した底屈制動用ねじりばね4、背屈制動用ねじりばね5により、支柱6を適切な強度で底背屈できるようにしたものである。
【0006】
また、図3は、強い底屈制動を軽量な機構で得るために、シャフト7を弾力性の高い材料で作製したトーションバネにしものである。
【発明の効果】
【0007】
靴底内部に設けた▲1▼背屈については弱い制動力または、抵抗なく可動し、立ち座り動作を制限しない、▲2▼歩行周期の踵接地期に生じる強い底屈モーメントに対しては足関節の底屈を許す、▲3▼足底全接地期以後は底屈を強く制限する本発明の機構により、軽度から高度の下肢痙性麻痺者に対して、自然に近い歩行を可能にすると同時に、足継手の機構が靴底内部にあることにより、下腿支えの形状に制限が少なく、よりデザイン性の高い短下肢装具の作製を可能にしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図1に基づいて説明する。
【0009】
図において、1は靴底に固定されるシャンクである。従来の短下肢装具は、シャンク1と支柱6は固定され可動性がない。
【0010】
本発明は、シャンク1と支柱6との間に回転するシャフト2を設け、シャフト2は、軸受け3により、シャンク1と連結され、シャフト2には、底屈制動用ねじりばね4、背屈制動用ねじりばね5が固定され、支柱6を底屈および背屈に可動できるようにしたものである。
【0011】
ねじりばねの特性を選択することにより、痙性麻痺の状態に応じた、最適な底背屈特性を得ることが可能である。
【0012】
また、従来の短下肢装具にある足関節内外果部周辺の足継手が不要となることで、下腿支え部の形状に制約が少なくなり、デザイン性の高い下肢装具が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の底面図
【図2】図1の正面図
【図3】本発明のシャフトをトーションバネにした底面図
【図4】図3の正面図
【図5】本発明の機構を靴底内部に組み入れた短下肢装具の側面図
【図6】図5の動き
【図7】図3において、シャンクと軸受けに角度をつけた図
【符号の説明】
【0014】
1 シャンク
2 シャフト
3 軸受け
4 底屈制動ねじりばね
5 背屈制動ねじりばね
6 支柱
7 バネ座金
8 袋ナット
9 止金
10 シャフト(トーションバネ)
11 固定金具
12 固定ピン
13 下腿支え

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳卒中、脊髄損傷など痙性麻痺により、足部に内反・尖足を生じる。歩き易くする為に、足関節の内外反と底屈を制限する短下肢装具が用いられ、屋外歩行には、両側支柱付短下肢装具が広く用いられている。両側支柱付短下肢装具は、足関節の内外反を制限し、足関節の底背屈の可動範囲を調整する機能に優れているが、調整した角度より足関節を底屈させることは困難な構造になっている。痙性麻痺者では、歩行周期の踵接地期から足底全接地期までに装具に強い底屈モーメントが生じる。本装具は、この強い底屈モーメントに対しては、底屈を許し、より自然な歩行に近づけるとともに、その機構を靴底内部に設けることにより、下腿支え部分の形状の制約を少なくした下肢装具。
【請求項2】
請求項1の機能を得るために、装具の靴底内部にシャンクと軸受けで連結されたシャフトを設け、シャフトに底屈制動用、背屈制動用のねじりばねをつけることにより、足関節の痙性の程度に応じた底背屈特性を提供できる下肢装具。
【請求項3】
請求項2の機構で、より強度な底屈制動を得るために、シャフト自体をトーションバネとした下肢装具。
【請求項4】
請求項2、請求項3の機構において、シャンク(靴底に固定する金属板)と軸受けの方向に角度をつけることで、下腿支えの動きを生理的な方向に近づけた下肢装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−239361(P2006−239361A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99674(P2005−99674)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(505019242)
【Fターム(参考)】