説明

立体視内視鏡装置

【課題】撮影する内視鏡装置及び映像を表示する表示素子をも含めたシステムにおいて表示素子の左右のばらつきを容易に調整し得る機能を有する立体視内視鏡装置を提供する。
【解決手段】
二系統の光学系11R,11Lを有する立体視内視鏡10と、光学系により形成される光学像を映像信号に変換する二台のCCU12R,12Lと、CCUからの出力信号を表示形式の電気信号に変換する制御装置15と、二つの表示部14R,14Lと表示部の表示画面を撮影する撮像装置16とを有する表示装置18と、調整の基準となる基準被写体パターンを備えた基準被写体治具22とを具備し、制御装置は、表示部に表示する映像信号を補正する手段と、二つの表示部の表示特性を調整する手段とを具備して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、立体視内視鏡装置、詳しくは二系統以上の光学系を有する立体視内視鏡において左右の映像のばらつきを調整し、良好な観察映像を得ることができるようにした立体視内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、細長の挿入部を体腔内に挿入して、直接目視できない被検部位を観察することのできる内視鏡装置が広く用いられている。
【0003】
また、近年においては、視差を有する光学像を得るために並列に設けた複数の観察光学系を備えることで、通常の内視鏡装置では遠近感のない平面としてしか見ることができない被検部位、例えば体腔壁表面等の微細に凹凸等を立体視することができように構成した立体視内視鏡装置について、例えば特開2000−85330号公報等によって種々の提案がなされている。
【0004】
このような立体視内視鏡装置によれば、通常の内視鏡装置では遠近感のない平面としてしか見ることができない被検部位、例えば体腔壁表面等の微細な凹凸等を観察することができることから、内視鏡観察による診断や各種処置の効率を向上させる得るものである。
【0005】
上記特開2002−85330号公報に記載の立体視内視鏡装置は、一対の撮像手段の撮像面に各々に視差が異なる一対の被検部位の像を結像させる光学系を有し、上記一対の撮像手段により結像された一対の被検部位の像を交互に又は同時に表示して立体画像を得る立体視内視鏡装置において、上記一対の被検部位の画像同士を比較する画像比較手段による比較結果に基づいて、上記一対の被検部位の像の大きさが略等しくなるように変倍光学系の変倍制御をおこなうように構成したものである。これにより、左右像の倍率を自動的に略等しくすることができ、良好な観察をおこなうことができるというものである。
【0006】
また、従来の立体視内視鏡においては、二系統以上の光学系と、これらの光学系に各対応する複数の撮像素子と、これらの各撮像素子によって撮像した各映像をそれぞれ表示する複数の表示素子等を具備し、視差を有する光学像が得られるように複数の光学系を配置することで、視差を有する複数の映像を撮像し、撮像された各映像を複数の表示素子に各別に表示し、各表示素子に表示される映像を観察者が左右の眼によって観察することで、観察部位を立体視し得るように構成した立体視内視鏡装置についてもさまざまな提案がなされている。
【特許文献1】特開2000−85330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、複数の表示素子を具備し、被検部位を三次元(3D:3Dimensional)映像として観察し得るようにした立体視内視鏡装置においては、使用者が観察する際に左右の映像が、例えば表示素子の特性に起因する輝度や色度の差が生じていると、使用者の目に負担がかかり、目が疲労しやすくなる場合がある。
【0008】
一般に表示素子は、同一の機種であっても輝度や色度の差があって、まったく同一の特性を有する表示素子というものはほとんど存在しないものである。そこで、従来の立体視内視鏡においては、特性に差異の少ない表示素子を選定して組み合わせたり、時間及び手間をかけて左右の映像が略同一の条件で表示することができるように調整をおこなう必要がある。
【0009】
また、通常の表示素子は、一般的に経年劣化を生じることから、その特性は使用するにしたがって変化してしまう。このことから、立体視内視鏡装置に用いられる左右の表示素子の表示状態を常に同様の状態で保持することは困難であるという問題点がある。
【0010】
一方、立体視内視鏡に用いられるCCD等の撮像素子を含む撮像系や光学系の光学部材にも、その特性のばらつきが存在する。したがって、左右の表示素子のみを単体で調整したとしても、これを立体視内視鏡と組み合わせて立体視内視鏡装置として使用する際には、左右の映像でばらつきが生じてしまうことがある。したがって、上述のような表示素子の調整は、個々の立体視内視鏡装置として個別に調整をおこなう必要がある。このことは、例えば立体視内視鏡(の撮像素子や光学系)または表示素子のいずれかが故障等に起因して部品交換をおこなう場合には、再度の調整作業等を実施する時間及び手間が生じることになるという問題点もある。
【0011】
なお、上述の特開2000−85330号公報に開示されている技術は、左右の表示素子に表示される被写体像のサイズを略等しく表示し得るようにすることについての提案であって、例えば、表示素子における色や輝度の特性と、表示素子の表示位置ずれを解決するための技術については、なんら言及していない。
【0012】
本発明は、上述した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、撮影する内視鏡装置及び映像を表示する表示素子までをも含めたシステムにおいて、表示素子の左右のばらつきを容易に調整し得る機能を有する立体視内視鏡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明による立体視内視鏡装置は、少なくとも二系統の光学系を有する立体視内視鏡と、上記二系統の光学系により形成される光学像のそれぞれを映像信号に変換する少なくとも二台のCCUと、上記二台のCCUからの出力信号を表示形式の電気信号に変換する制御装置と、少なくとも二つの表示部と上記表示部の表示画面を撮影する撮像装置とを有する表示装置と、調整の基準となる基準被写体パターンを備えた基準被写体治具とを具備し、上記制御装置は、上記表示部に表示する映像信号を補正する手段と、上記二つの表示部の表示特性を調整する手段と、を具備してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、撮影する内視鏡装置及び映像を表示する表示素子までをも含めたシステムにおいて、表示素子の左右のばらつきを容易に調整し得る機能を有する立体視内視鏡装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図示の実施の形態によって本発明を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の立体視内視鏡装置の全体構成図である。図2は、本実施形態の立体視内視鏡装置における比較装置の内部構成を示すブロック構成図である。図3は、本実施形態の立体視内視鏡装置における制御装置の内部構成を示すブロック構成図である。図4及び図5は、本実施形態の立体視内視鏡装置における基準被写体治具を示し、図4は当該基準被写体治具の外観を示す斜視図である。図5は当該基準被写体治具の内部に設けられる基準被写体パターンを示す図であって、図4の矢印A方向から見た図である。図6及び図7は、本実施形態の立体視内視鏡装置における表示装置を示し、図6は当該表示装置の概略的な内部構成と、当該表示装置における撮像素子部組の撮像視野を示す図である。図7は当該表示装置における撮像素子部組によって撮影される基準被写体パターンの映像を示す図である。図8及び図9は、本実施形態の立体視内視鏡における表示装置の観察映像の左右調整をおこなう際の作用を示すフローチャートである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の立体視内視鏡装置1は、被写体像を結像させるべく並べて配置される二系統の光学系である立体用対物レンズ11R,11Lによって結像される二つの光学像をそれぞれ別に光電変換するCCD等の撮像素子12R,12L等を具備して構成される立体視内視鏡10と、この立体視内視鏡10の撮像素子12R,12Lからの出力信号を受けて所定の形態の映像信号に変換するCCU13R,13Lと、表示部である表示素子14R,14Lや接眼部17R,17Lや撮像素子部組16等を具備して構成される表示装置18と、上記CCU13R,13Lからの出力信号(映像信号)を受けて上記表示装置18の上記表示素子14R,14Lを用いて映像を表示するのに適する形態(表示形式)の映像信号(表示用信号)に変換する制御装置15と、左右調整を開始する信号を発生させるバランスSW19や左右バランス調整の実行中である旨を表示するための発光ダイオード(LED)20等を具備し上記表示装置18の撮像素子部組16からの信号を比較する比較装置21と、左右調整を実行するのに際して上記立体視内視鏡10の先端部分を覆い隠すように配設され内部には基準被写体パターンが表示される基準被写体治具22と、この基準被写体治具22を立体視内視鏡10の側から照明するための光源装置23等によって主に構成されている。
【0017】
表示装置18は、液晶表示装置(LCD)等からなる表示部である表示素子14R及び表示素子14Lと、この表示素子14R及び表示素子14Lをそれぞれ観察するための接眼部17R及び接眼部17Lと、表示素子14R,14Lを同時に一画面で撮影することができかつ接眼部17R,17Lからの観察時に視野を妨げない位置に配置される撮像素子部組16等によって構成されている。
【0018】
上記撮像素子部組16は、表示素子14R,14Lの表示画面を撮像するために設けられる撮像装置である。そのために、当該撮像素子部組16は、撮像素子や光学レンズ等の構成部材等によって構成されているユニットである。なお、その内部構成については、従来の一般的な撮像素子部組と略同様のものが適用されるものとして、その詳細は省略する。
【0019】
上記比較装置21は、図2に示すように上記LED20と、上記バランスSW19と、撮像素子部組16からの映像信号を受けてアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器30と、上記バランスSW19の指示入力を受けて上記LED20を点滅させる制御をおこなうと共に後述するTG31へのタイミング発生命令信号(以下、タイミング信号という)の出力制御をおこなうコントローラ29と、上記コントローラ29からの制御によってタイミング信号を発生させるタイミングジェネレータ(以下、TGと略記する)31と、右側の表示素子14Rの表示情報を記録する画像メモリ32Rと、左側の表示素子14Lの表示情報を記録する画像メモリ32Lと、基準位置情報が予め記録されており当該基準位置情報と画像メモリ32R,32Lの特定アドレスの値(位置情報)とを比較する位置比較用の比較器33と、基準W(白)色情報が予め記録されており当該基準W色情報と画像メモリ32R,32Lの特定アドレスの値(W色情報)とを比較する比較器34と、基準R(赤)色情報が予め記録されており当該基準R色情報と画像メモリ32R,32Lの特定アドレスの値(R色情報)とを比較する比較器35と、基準G(緑)色情報が予め記録されており当該基準G色情報と画像メモリ32R,32Lの特定アドレスの値(G色情報)とを比較する比較器36と、基準B(青)色情報が予め記録されており当該基準B色情報と画像メモリ32R,32Lの特定アドレスの値(B色情報)とを比較する比較器37と、上記位置,W色,R色,G色,B色の各比較器33〜37の出力結果(比較結果)を格納するメモリ38等を具備して構成されている。
【0020】
制御装置15は、図3に示すようにCCU13R,13Lからの映像信号(アナログ信号)が入力されるA/D40R,40L及びTG41R,41Lと、上記A/D40R,40Lからの映像信号(デジタル信号)を受けて表示素子14R,14Lで表示するのに最適な形態の表示信号に変換するスケーラ42R,42Lと、このスケーラ42R,42Lの出力信号を格納する画像メモリ43R,43Lと、この画像メモリ43R,43Lを制御するメモリコントローラ44R,44Lと、上記比較装置21のメモリ38からの信号が入力されるR用位置補正データLUT45R(以下、LUT45Rと表記する)及びL用位置補正データLUT45L(以下、LUT45Lと表記する)と、上記比較装置21のメモリ38からの信号のうちW色,R色,G色,B色に関するデータと画像メモリ43R,43Lのデータとを加算する加算器47R,47L等によって構成されている。
【0021】
基準被写体治具22は、図4に示すように一端部に開口を有する略円筒形状に形成されている。この基準被写体治具22の内径寸法は、上記立体視内視鏡10の外径寸法と概ね同径に形成されている。これにより、当該基準被写体治具22は、上記立体視内視鏡10の先端部を覆うように配置し固設し得る形態となっている。
【0022】
そして、基準被写体治具22の内周面上には、図4及び図5に示すようなストッパ部22aが内方に向けて突設されている。このストッパ部22aは、立体視内視鏡10の先端部に対して当該基準被写体治具22を配設した場合において、立体視内視鏡10の最先端部分が当該基準被写体治具22の底部分に抵触しないようにする役目をしている。
【0023】
基準被写体治具22の他端部の底部には、その内側の面に図5に示すような基準被写体パターンを表わす所定の図形が表示されている。図5に示す基準被写体パターンの図形はその一例である。即ち、本例における基準被写体パターンは、略中央部近傍の部位に示される十字マーク91と、W色,R色,G色,B色の各基準色を表わすチャート92,93,94,95とによって形成されている。
【0024】
このように構成される本実施形態の立体視内視鏡装置1において、立体視内視鏡10の左右の映像の調整をおこなう際の作用を以下に説明する。
【0025】
まず、基準被写体治具22を立体視内視鏡10の先端部に取り付ける。このとき、基準被写体治具22にはストッパ部22aが形成されているので、立体視内視鏡10の先端は、基準被写体治具22の底部の基準被写体パターンに接触してしまうことはない。また、基準被写体治具22の内径は、立体視内視鏡10の外径と略同径としているので、ガタなく取り付け固定することができる。
【0026】
なお、ストッパ部22aの位置、即ち基準被写体治具22の底部からストッパ部22aまでの距離と、立体視内視鏡10のピントが合う距離とをほぼ等しくなるように設定してある。したがって、立体視内視鏡10の先端部を基準被写体治具22の一端部の開口から挿入し止まる位置まで押し込むのみで、底部の基準被写体パターンを合焦状態で観察し得る状態とすることができる。
【0027】
また、これとは別に、立体視内視鏡10にピント調整機構がある場合には、立体視内視鏡10のピントが合う最小距離以上の位置からピントが合う最大距離以下の位置までの範囲内にストッパ部22aを設けるようにすればよい。
【0028】
この状態で、当該立体視内視鏡10による撮影動作を実行する。この撮影動作が実行されると、光源装置23の照明光が基準被写体治具22の底部の基準被写体パターンを照らし、立体視内視鏡10の撮像素子12R,12Lによって基準被写体治具22の基準被写体パターンである十字マーク91やW色,R色,G色,B色の基準色チャート92〜95のそれぞれを表わす光学像が電気信号として取得される。
【0029】
こうして上記撮像素子12R,12Lにより取得された電気信号は、CCU13R,13Lによって各種の信号処理が施されることによって、基準被写体パターンを表わす映像信号に変換される。
【0030】
この映像信号は、制御装置15によって表示装置18の表示素子14R,14Lで表示するのに最適な形態の表示信号に変換されて、表示装置18へと伝送される。
【0031】
これを受けて表示装置18の表示素子14R,14Lの表示部には、基準被写体治具22の基準被写体パターンの映像が表示される。
【0032】
次に、この状態で、表示素子14R,14Lに表示されている映像を表示装置18の撮像素子部組16を用いて撮影する動作を実行する。
【0033】
この場合において、撮像素子部組16により撮影される基準被写体パターンの図形の映像は、図5に示す例のようなものとなる。
【0034】
なお、本実施形態においては、二つの表示素子14R,14Lを同時に一画面で撮影するような構成としている。しかし、これに限らず、例えば撮像素子部組16を所定の駆動手段を用いて移動又は回転させることで、二つの表示素子14R,14Lを別々にそれぞれ撮影するように、つまり複数回の撮影動作をおこなうようにする。
【0035】
撮像素子部組16による撮影動作によって取得した映像信号は比較装置21に向けて出力される。ここで、同比較装置21のバランスSW19を押圧する等の操作をおこなうと、比較装置21による比較処理が実行される。
【0036】
ここで、本実施形態の立体視内視鏡装置1において、立体視内視鏡10の左右の映像の調整をおこなう場合の比較装置21による比較処理のシーケンスを図8及び図9のフローチャートによって、以下に説明する。
【0037】
上述したように、バランスSW19からの左右調整動作の開始信号が発生すると、これを受けて比較装置21のコントローラ29は、図8のステップS1において、TG31を駆動させるタイミング信号を発生させる。これと同時に、コントローラ29は、LED20の点滅制御を開始する。その後、ステップS1の処理に進む。
【0038】
なお、本実施形態においては、LED20を点滅させることによって調整中である旨を表示するようにしている。したがって、LED20に代えて、例えば液晶表示装置(LCD)などを適用し、同LCDにその旨の表示をおこなうようにしてもよい。
【0039】
次いで、画像メモリ32R,32Lと比較器33〜37との値の比較をおこなうことで、撮影された映像信号(画像メモリ32R,32Lの内容)と、位置情報及びW色,R色,G色,B色の各色の基準情報とを、比較器33〜37を用いて比較する。
【0040】
即ち、ステップS2において、A/D変換器30は、撮像素子部組16からの入力信号(アナログ信号)を受けて、これをA/D変換処理し、変換後のデジタル信号を画像メモリ32R,32Lに向けて出力する。このとき、A/D変換器30は、TG31からのタイミング信号に基づいて、撮像素子部組16の水平走査時間の二分の一(1/2)の時間で画像メモリ32R,32Lの切り換えをおこなう。これにより、表示素子14Rの表示画像を撮影した映像信号は画像メモリ32Rへ出力され、表示素子14Lの表示画像を撮影した映像信号は画像メモリ32Lへ出力される。これを受けて、画像メモリ32R,32Lは入力される映像信号を記録する。
【0041】
そして、コントローラ29は、画像メモリ32R,32Lに記録された映像信号から十字マーク91のアドレス(位置情報)を検出する。その後、ステップS3の処理に進む。
【0042】
ステップS3において、コントローラ29は、比較器33を制御して、十字マーク91が記録されている画像メモリ32R,32Lのアドレスと比較器33の基準位置情報とを比較する比較処理を実行する。
【0043】
そして、その処理結果について、画像メモリ32R,32Lのアドレスと比較器33の基準位置情報との間に差があると判断された場合には、ステップS4の処理に進む。また、差が無いと判断された場合には、ステップS5の処理に進む。
【0044】
上述のステップS3の処理で、両者の間に差があると判断されてステップS4の処理に進むと、このステップS4において、比較器33の比較結果の差データがメモリ38へと出力され、これに記録されると同時に制御装置15へと出力される。そして、制御装置15において、所定のデータ補正処理がおこなわれる。この制御装置15によっておこなわれる処理シーケンスについては後述する。
【0045】
一方、上述のステップS3の処理で、両者の間に差が無いと判断されてステップS5の処理に進むと、このステップS5において、コントローラ29は、画像メモリ32R,32Lの記録データからW色の基準色チャート92のアドレスを検出し、これと比較器34の基準W色情報との比較処理を、比較器34において実行する。
【0046】
そして、その処理結果について、画像メモリ32R,32Lのアドレスと比較器34の基準W色情報との間に差があると判断された場合には、ステップS6の処理に進む。また、差が無いと判断された場合には、ステップS7の処理に進む。
【0047】
上述のステップS5の処理で、両者の間に差があると判断されてステップS6の処理に進むと、このステップS6において、比較器34の比較結果の差データがメモリ38へと出力され、これに記録されると同時に制御装置15へと出力される。そして、制御装置15において、所定のデータ補正処理がおこなわれる。この制御装置15によっておこなわれる処理シーケンスについては後述する。
【0048】
一方、上述のステップS5の処理で、両者の間に差が無いと判断されてステップS7の処理に進むと、このステップS7において、コントローラ29は、画像メモリ32R,32Lの記録データからR色の基準色チャート93のアドレスを検出し、これと比較器35の基準R色情報との比較処理を、比較器35において実行する。
【0049】
そして、その処理結果について、画像メモリ32R,32Lのアドレスと比較器35の基準R色情報との間に差があると判断された場合には、ステップS8の処理に進む。また、差が無いと判断された場合には、図9のステップS9の処理に進む(図8及び図9の符号A参照)。
【0050】
上述のステップS7の処理で、両者の間に差があると判断されてステップS8の処理に進むと、このステップS8において、比較器35の比較結果の差データがメモリ38へと出力され、これに記録されると同時に制御装置15へと出力される。そして、制御装置15において、所定のデータ補正処理がおこなわれる。この制御装置15によっておこなわれる処理シーケンスについては後述する。
【0051】
一方、上述のステップS7の処理で、両者の間に差が無いと判断されて図9のステップS9の処理に進むと、このステップS9において、コントローラ29は、画像メモリ32R,32Lの記録データからG色の基準色チャート94のアドレスを検出し、これと比較器36の基準G色情報との比較処理を、比較器36において実行する。
【0052】
そして、その処理結果について、画像メモリ32R,32Lのアドレスと比較器36の基準G色情報との間に差があると判断された場合には、ステップS10の処理に進む。また、差が無いと判断された場合には、ステップS11の処理に進む。
【0053】
上述のステップS9の処理で、両者の間に差があると判断されてステップS10の処理に進むと、このステップS10において、比較器36の比較結果の差データがメモリ38へと出力され、これに記録されると同時に制御装置15へと出力される。そして、制御装置15において、所定のデータ補正処理がおこなわれる。この制御装置15によっておこなわれる処理シーケンスについては後述する。
【0054】
一方、上述のステップS9の処理で、両者の間に差が無いと判断されてステップS11の処理に進むと、このステップS11において、コントローラ29は、画像メモリ32R,32Lの記録データからB色の基準色チャート95のアドレスを検出し、これと比較器37の基準B色情報との比較処理を、比較器37において実行する。
【0055】
そして、その処理結果について、画像メモリ32R,32Lのアドレスと比較器37の基準B色情報との間に差があると判断された場合には、ステップS12の処理に進む。また、差が無いと判断された場合には、ステップS13の処理に進む。
【0056】
上述のステップS11の処理で、両者の間に差があると判断されてステップS12の処理に進むと、このステップS12において、比較器37の比較結果の差データがメモリ38へと出力され、これに記録されると同時に制御装置15へと出力される。そして、制御装置15において、所定のデータ補正処理がおこなわれる。この制御装置15によっておこなわれる処理シーケンスについては後述する。
【0057】
ステップS13において、コントローラ29は、LED20の点滅制御を終了し、同LED20を消灯させる。その後、一連の処理シーケンスを終了する。
【0058】
なお、上記比較装置21の比較処理は、比較器33〜37の演算結果によって、左右映像の差が解消するまで継続される。
【0059】
次に、上述のステップS4,S6,S8(図8)及びステップS10,S12の各処理でおこなわれる制御装置15によって実行されるデータ補正処理は、次のようなものである。
【0060】
まず、比較装置21のメモリ38から出力される比較器37の比較結果の差データは、制御装置15のLUT45R,45Lへと入力される。このLUT45R,45Lの値に基づいてメモリコントローラ44R,44Lは、画像メモリ43R,43Lの出力タイミングを変更し、表示素子14R,14Lの描画位置を変更することになる。
【0061】
次に、加算器47R,47Lは、比較装置21のメモリ38からの差データと画像メモリ43R,43Lの値とを加算する演算処理をおこなう。その結果得られた補正データに基づいて表示装置18の表示素子14R,14Lによる表示をおこなう。
【0062】
こうして補正データに基づいて表示素子14R,14Lに表示される映像を撮像素子部組16にて再度撮影し、同様の補正処理を繰り返すことによって左右の映像の表示特性は、比較装置21に予め保存されている所定の基準値に合致するように調整される。
【0063】
以上説明したように、上記第1の実施形態によれば、基準被写体治具22の基準被写体パターンを撮影し、その撮影結果に基づいて二台以上の表示素子(14R,14L)の調整をおこなうようにしているので、各光学系やCCUや表示素子等の全てを包括したシステム全体において、表示素子14R,14Lの各表示特性を概ね同様となるように調整することができる。
【0064】
本実施形態では、表示装置18の表示素子14R,14L自体の機械的な位置ずれを修正するのではなく、基準被写体パターンを撮影した映像を表示素子14R,14Lに表示させ、この表示素子14R,14Lの表示画面に表示される映像の表示位置を補正することによって、使用者(観察者)が左右の映像を同時に見る場合の左右映像の位置ずれを補正することができる。
【0065】
立体視内視鏡10の立体用対物レンズ11R,11L等の光学的なばらつきや、撮像素子12R,12LやCCU13R,13Lや表示素子14R,14L等のばらつき等々に起因して生じる左右の映像のばらつきを補正することにより、表示素子14R,14Lの表示位置の調整を実施するようにしている。
【0066】
したがって、これにより、比較装置21に予め保存されている基準の映像に合致する補正を常におこなうことができ、表示素子14R,14Lの表示特性のばらつきと表示位置の調整をおこなうことができる。そして、これにより、使用者が観察する映像の左右のばらつきを改善し、使用者の疲労を軽減することができる。
【0067】
なお、本実施形態においては、W色とR色とG色とB色との四色について、補正処理をおこなうようにしているが、これに限ることはなく、他の色を用いた補正処理をおこなうようにしてもよい。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態の立体視内視鏡装置について、図10〜図13を用いて以下に説明する。
【0069】
図10は、本発明の第2の実施形態の立体視内視鏡装置の全体構成図である。図11は、本実施形態の立体視内視鏡装置における比較装置の内部構成を示すブロック構成図である。図12は、本実施形態の立体視内視鏡装置における制御装置の内部構成を示すブロック構成図である。図13は、本実施形態の立体視内視鏡における表示装置の観察映像の左右調整をおこなう際の作用を示すフローチャートである。
【0070】
本実施形態は、基本的には上述の第1の実施形態と略同様の構成からなるものであって、比較装置21A及び制御装置15Aの内部構成が若干異なる。したがって、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を附してその説明は省略し異なる構成及び作用についてのみ、以下に説明する。
【0071】
本実施形態の立体視内視鏡装置1Aにおける比較装置21Aは、図11に示すように、LED20と、バランスSW19と、A/D変換器30と、コントローラ29と、TG31と、画像メモリ32R,32Lと、基準位置情報が予め記録されており当該基準位置情報と画像メモリ32R,32Lの特定アドレスの値(位置情報)とを比較する比較器33と、画像メモリ32Rと画像メモリ32Lとの対応する特定アドレスの値を比較するR/L比較用の比較器39と、比較器33及び比較器39の出力結果(比較結果)を格納するメモリ38等を具備して構成されている。
【0072】
なお、本実施形態では、画像メモリとして右用の画像メモリ32Rと左用の画像メモリ32Lとの二個つを備えて構成しているが、このような形態に限らず、例えばアドレスを指定することによって一つの画像メモリで構成することもできる。
【0073】
本実施形態の立体視内視鏡装置1Aにおける制御装置15Aは、図12に示すようにA/D40R,40Lと、TG41R,41Lと、スケーラ42R,42Lと、画像メモリ43R,43Lと、メモリコントローラ44R,44Lと、LUT45R,45Lと、加算器52と、比較装置21Aのメモリ38からの信号(W色,R色,G色,B色に関する差データ)を受けて左右いずれの表示素子14R,14Lの映像信号(画像メモリ43R,43Lからの信号)に対して補正処理をおこなうかを切り換える第一切替器53と、表示装置18へ出力する信号について表示素子14R,14Lのいずれへ出力するかを振り分ける第二切替器54等によって構成されている。
【0074】
第一切替器53及び第二切替器54には、比較装置21Aの比較器39からの信号が入力されるようになっている。この比較器39からの信号に基づいて、第一切替器53及び第二切替器54の出力が切り換わるようになっている。そのために、第一切替器53及び第二切替器54は、二入力二出力を有するスイッチを構成している。
【0075】
そして、第一切替器53には、上述した比較器39からの信号と、画像メモリ43R,43Lからの映像信号とが入力されるようになっている。一方、第一切替器53からの出力信号のうち一方は加算器52へと出力され、他方はスルーで第二切替器54へと出力されるようになっている。
【0076】
また、第二切替器54には、上述した比較器39からの信号と、第一切替器53をスルーした(画像メモリ43R,43Lからの)信号及び加算器52からの映像信号とが入力されるようになっている。一方、第二切替器54からは表示素子14R,14Lへの映像信号が出力されるようになっている。
【0077】
したがって、これにより画像メモリ43R,43Lからの左右の映像信号のうち一方に対してのみ補正処理をおこなった後、表示装置18へと映像信号が出力されるようになっている。その他の構成については上述の第1の実施形態と同様である。
【0078】
このように構成される本実施形態の立体視内視鏡装置1Aにおいて、立体視内視鏡10の左右の映像の調整をおこなう際の作用を、図13のフローチャートによって以下に説明する。
【0079】
まず、比較装置21Aの比較器39によって、画像メモリ32Rと画像メモリ32Lの画像の明るさが比較される。これにより、二つの表示素子14R,14Lのいずれの映像が明るいか又は暗いかが判断される。その比較結果を受けて、制御装置15Aは、暗いと判断された方の表示素子の調整をおこなう。
【0080】
なお、本実施形態では、以下に説明するように暗い方に合わせる調整を行なうことにしているが、これに限ることはなく、比較結果に基づいて明るい方に合わせる調整をおこなうようにしてもよい。また、常に左右いずれかの一方の側に合わせる調整をおこなうようにしてもよい。
【0081】
制御装置15Aは、まずステップS21において、メモリコントローラ44R,44Lにより出画タイミングを調整することで、左右の映像の位置補正処理を実施する。
【0082】
次いで、ステップS22において、W色,R色,G色,B色の調整処理の実行を開始する。
【0083】
まず、ステップS23においては、比較器39からの信号に基づいて表示素子14R,14Lのいずれが明るいかの判断がおこなわれる。ここで、表示素子14Rが明るいと判断された場合にはステップS24の処理へ進む。一方、表示素子14Lが明るいと判断された場合にはステップS28の処理へ進む。
【0084】
上述のステップS23において、表示素子14Rが明るいと判断されてステップS24の処理に進むと、このステップS24において、第一切替器53は、画像メモリ43Rからの映像信号と比較器39からの差データとを加算器52へ向けて出力する。同時に第一切替器53は、画像メモリ43Lからの映像信号をスルーして第二切替器54へ向けて出力する。
【0085】
次いで、ステップS25において、加算器52は、画像メモリ43Rからの映像信号と比較器39からの差データとを加算する加算処理をおこなった後、その処理結果を第二切替器54へと出力する。
【0086】
続いて、ステップS26において、第二切替器54は、加算器52からの出力信号(画像メモリ43Rの映像信号と比較器39の差データとが加算された信号)を表示素子14Rへと出力する。これと同時に、第二切替器54は、画像メモリ43Lから第一切替器53をスルーして入力される映像信号を表示素子14Lへと出力する。
【0087】
そして、ステップS27において、表示素子14Rは、比較器39の差データが加算された映像を表示する。一方、表示素子14Lは何の補正も施されていない映像を表示する。これにより一連の調整処理は終了する。
【0088】
一方、上述のステップS23において、表示素子14Lが明るいと判断されてステップS28の処理に進むと、このステップS28において、第一切替器53は、画像メモリ43Lからの映像信号と比較器39からの差データとを加算器52へ向けて出力する。同時に第一切替器53は、画像メモリ43Rからの映像信号をスルーして第二切替器54へ向けて出力する。
【0089】
次いで、ステップS29において、加算器52は、画像メモリ43Lからの映像信号と比較器39からの差データとを加算する加算処理をおこなった後、その処理結果を第二切替器54へと出力する。
【0090】
続いて、ステップS30において、第二切替器54は、加算器52からの出力信号(画像メモリ43Lの映像信号と比較器39の差データとが加算された信号)を表示素子14Lへと出力する。これと同時に、第二切替器54は、画像メモリ43Rから第一切替器53をスルーして入力される映像信号を表示素子14Rへと出力する。
【0091】
そして、ステップS31において、表示素子14Lは、比較器39の差データが加算された映像を表示する。一方、表示素子14Rは何の補正も施されていない映像を表示する。これにより一連の調整処理は終了する。
【0092】
以上説明したように、上記第2の実施形態によれば、上述の第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。これと共に、左右の表示素子14R,14Lに表示される映像信号を比較して、一方の側に合わせる調整をおこなうようにしているので、例えば所定の基準値(初期状態)を予め比較器に持たせておく必要がなく、構成の単純化に寄与することができる。
【0093】
また、表示素子の一方が故障等に起因して非常に暗くなってしまったような場合においても、左右の映像を合わせる調整をおこなうことができる。
【0094】
次に、本発明の第3の実施形態の立体視内視鏡装置について、図14〜図17を用いて以下に説明する。
【0095】
図14は、本発明の第3の実施形態の立体視内視鏡装置の全体構成図である。図15は、本実施形態の立体視内視鏡装置における比較装置の内部構成を示すブロック構成図である。図16は、本実施形態の立体視内視鏡装置における制御装置の内部構成を示すブロック構成図である。図17は、本実施形態の立体視内視鏡装置の表示装置において立体視映像と広角映像との表示切り換えがおこなわれる際の作用を示すフローチャートである。
【0096】
本実施形態は、基本的には上述の第2の実施形態と略同様の構成からなるものであって、立体視野像に加えてさらに広角視野像を取得し得るように構成される立体視内視鏡10Bと、これに対応するCCU13W等を有すると共に、広角視野像の映像信号に対応させた制御装置15Bと、比較装置21B及び制御装置15Bの制御とを異ならせて構成したものである。したがって、上述の第2の実施形態と同様の構成については、同じ符号を附してその説明は省略し異なる構成及び作用についてのみ、以下に説明する。
【0097】
図14に示すように、本実施形態の立体視内視鏡装置1Bは、立体用対物レンズ11R,11L及び広角視野用対物レンズ11Wと上記立体用対物レンズ11R,11Lによって結像される二つの光学像をそれぞれ別に電気信号に変換するCCD等の撮像素子12R,12Lと上記広角視野用対物レンズ11Wによって結像される光学像を電気信号に変換するCCD等の撮像素子12W等を具備して構成される立体視内視鏡10Bと、この立体視内視鏡10Bの撮像素子12R,12L,12Wからの出力信号を受けて所定の形態の映像信号に変換するCCU13R,13L,13Wと、CCU13R,13L,13Wからの出力信号(映像信号)を受けて表示形式の表示用信号(映像信号)に変換する制御装置15Bと、表示素子14R,14Lや接眼部17R,17Lや撮像素子部組16等を具備する表示装置18と、バランスSW19や発光ダイオード(LED)20等を具備し表示装置18の撮像素子部組16からの信号を比較する比較装置21Bと、基準被写体治具22と、光源装置23等によって主に構成されている。
【0098】
制御装置15Bは、上述したようにCCU13R,13L,13Wからの出力信号(映像信号)を受けて、それぞれを表示形式の表示用信号(映像信号)に変換する。そして、各映像信号は、切り換えによって表示素子14R,14Lへと出力されるようになっている。つまり、立体視による観察をおこなう際には、右用の表示形式の映像信号が表示素子14Rへと出力されると同時に、左用の表示形式の映像信号が表示素子14Lへと出力される。また、広角視野の観察をおこなう際には、CCU13Wからの出力信号に基づいて変換生成された表示形式の広角視野用の映像信号を表示素子14R,14Lの双方に出力し、両表示素子14R,14Lに同じ映像を表示させる。
【0099】
なお、これとは別に、例えば広角視野表示用の表示素子を表示装置18に設けるよう構成して、この広角視野表示用の表示素子に対して広角視野用の映像信号を表示させるようにしてもよい。
【0100】
本実施形態の立体視内視鏡装置1Bにおける比較装置21Bは、図15に示すように、LED20と、バランスSW19と、A/D変換器30と、コントローラ29Bと、TG31と、画像メモリ32R,32Lと、位置比較用の比較器33と、R/L比較用の比較器39と、メモリ38等を具備して構成されている。
【0101】
このうち、本比較装置21Bにおけるコントローラ29Bは、さらに制御装置15Bとの間で通信をおこなうことで、表示素子14R,14Lが広角視野用の映像(CCU13Wの映像)を表示しているか、または表示素子14R,14Lが立体視用の映像(CCU13R,13Lの映像)を表示しているかを検知することができるようになっている。
【0102】
その検知結果によって、制御装置15Bの第三切替器63R,63L(後述する)を制御して表示の切り換えをおこなったり、制御装置15Bの画像メモリ43R,43Lにより読出アドレスの切り換えをおこなうようになっている。
【0103】
また、コントローラ29Bは、制御装置15Bとの通信によって、比較装置21Bによるバランス調整処理の実施中であることを制御装置15Bへと送信するようになっている。
【0104】
本実施形態の立体視内視鏡装置1Bにおける制御装置15Bは、図16に示すように上述の第2の実施形態における制御装置15A(図13参照)の構成に加えて、CCU13R,13Lからの入力信号とCCU13Wからの入力信号とを切り換えて出力する第三切替器63R,63Lを具備して構成されている。そして、この第三切替器63R,63Lは、比較装置21Bのコントローラ29Bとの間で電気的な接続が確保されている。その他の構成については上述の第2の実施形態と全く同様である。
【0105】
このように構成される本実施形態の立体視内視鏡装置1Bにおいて、立体視内視鏡10Bの左右の映像の調整をおこなう際の作用は、上述の第2の実施形態と略同様である。したがって、その動作シーケンスを示すフローチャートは図13を参照する。
【0106】
ただし、本実施形態においては、表示装置18の表示素子14R,14Lに広角視野用の映像(CCU13Wの映像)を表示させて調整をおこなった後、これに続いて同表示素子14R,14Lの表示映像を立体視用の映像(CCU13R,13Lの映像)に切り換えて、この状態でも調整をおこなうこととする。
【0107】
この場合における作用は次の通りである。まず、使用者は比較装置21BのバランスSW19を操作して、調整動作を開始させる。
【0108】
これにより調整動作が開始すると、制御装置15Bは第三切替器63R,63Lを制御して表示装置18の表示素子14R,14Lに表示させる映像を広角視野用の映像とするための切り換え制御を実行する。
【0109】
すると、表示素子14R,14Lの双方には、同時に広角視野用の映像が表示される。これに対して上述の第2の実施形態と同様の調整処理(図13参照)を実行する。これにより、表示素子14R,14Lに表示される左右の映像が調整される。
【0110】
この調整処理が終了すると、続いて制御装置15Bは、第三切替器63R,63Lを制御して表示装置18の表示素子14R,14Lに表示させる映像を立体視用の映像とするための切り換え制御を実行する。
【0111】
これにより、表示素子14R,14Lには、立体視用の映像が表示される。これに対して上述の第2の実施形態と同様の調整処理(図13参照)を実行する。すると、表示素子14R,14Lに表示される左右の映像が調整される。
【0112】
画像メモリ43R,43Lの所定のアドレスには、表示素子14R,14Lに表示された広角視野用の映像について表示装置18の撮像素子部組16で撮影された映像に関するデータが保管されている。また、同画像メモリ43R,43Lの他のアドレスには、表示素子14R,14Lに表示された立体視用の映像について表示装置18の撮像素子部組16で撮影された映像に関するデータが保管される。したがって、これにより立体視映像と広角視野用映像との比較をおこなうことができるようになっている。
【0113】
なお、本実施形態においては、表示装置18の表示映像を、広角視野用の映像と立体視用の映像とを切り換えるのには、比較装置21BのバランスSW19の操作によっておこなうようにしている。しかしながら、実際には、例えば制御装置15Bの内部メモリ(特に図示せず)に参照データ(ルックアップテーブル;LUT;Look Up Table)を予め持たせておき、例えば手術用の器具や鉗子などの特定の形状や色を記憶させ、これらの器具類等が広角視野用の撮像素子12Wの撮像範囲内に入った時に、これを検知することで表示装置18の表示を立体視用の映像となるように切り換える構成としてもよい。
【0114】
このような構成とした場合において、表示装置18の表示映像の切り換えがおこなわれる際の作用を図17のフローチャートによって以下に説明する。
【0115】
まず、表示装置18の表示素子14R,14Lには、CCU13Wによる映像信号に基づく広角視野用の映像が表示されている状態にあるものとする。
【0116】
この状態おいて、制御装置15Bは、ステップS41において、制御装置15Bの内部メモリ(特に図示せず)に予め記憶されているデータ(LUT)とCCU13Wによる映像信号とを比較して、広角視野用の映像(広角像)内に鉗子等の器具類が存在するか否かの検知をおこなう。ここで、器具類が検知されない場合には、ステップS44の処理に進む。また、器具類が検知された場合には、ステップS42の処理に進む。
【0117】
ステップS42において、制御装置15Bは、CCU13Wからの広角視野用の映像信号を受けて所定の表示形式(広角像を表示する形式)の映像信号となるようにフォーマット変換をおこなう。これにより生成された表示形式の映像信号を、表示素子14R,14Lの双方に向けて出力する。
【0118】
次いで、ステップS43において、制御装置15Bは、自身の内部メモリ(特に図示せず)に予め記憶されているデータ(LUT)とCCU13R,13Lによる映像信号とを比較して、立体視用の映像(立体像)内に鉗子等の器具類が存在するか否かの検知をおこなう。ここで、器具類が検知されない場合には、ステップS42の処理に戻る。また、器具類が検知された場合には、ステップS44の処理に進む。
【0119】
続いて、ステップS44において、制御装置15Bは、CCU13R,13Lからの立体視用の映像信号を受けて所定の表示形式(3D像を表示する形式)の映像信号となるようにフォーマット変換をおこなう。これにより生成された表示形式の映像信号について、CCU13Rによる映像信号を表示素子14Rへ、CCU13Lによる映像信号を表示素子14Lへとそれぞれ出力する。その後、一連のシーケンスを終了する。
【0120】
また、上述の例とは別に、図18に示すような構成の鉗子とトロッカーとを用いることで、表示装置18の表示映像の切り換えタイミングを設定するようにしてもよい。
【0121】
図18に示すように、鉗子81の所定の部位には磁石が設けられている。図18に示す例では第一磁石83及び第二磁石84の二個の磁石を所定の間隔を置いて配設している。
【0122】
また、トロッカー82には、所定の部位に磁気センサー85が設けられている。
【0123】
そして、鉗子81をトロッカー82内に挿入したとき、鉗子81の磁石83,84が磁気センサー85の近傍を通過すると、所定の検知信号が発生するようになっている。
【0124】
ここで、鉗子81に複数の磁石83,84を設けているので、同鉗子81がトロッカー82内に挿入された際、その入り込んだ量を検出することができるようになっている。
【0125】
ところで、表示装置18の表示素子14R,14Lに広角視野用の映像を表示する場合、その映像は広範囲を表示することになるため、撮像範囲内における対象物は相対的に小さく表示されることになる。一方、立体視用の映像では、その撮像範囲内における対象物は広角視野用の映像の場合にくらべて相対的に大きく表示される。このことから、表示素子14R,14Lに表示する映像を、広角視野用の映像と立体視用の映像との間で切り換えた場合には、その映像を観察している者にとって若干の違和感が生じる場合がある。
【0126】
この場合における違和感を軽減するための工夫として、表示装置を次に示すような構成が考えられる。
【0127】
図19は、上述の第3の実施形態の立体視内視鏡装置において、広角視野用の映像と立体視用の映像とを切り換えた際の違和感を軽減する機構を備えた別の表示装置の構成を示す図である。また、図20は、図19の表示装置における接眼レンズ組とこれを駆動する駆動機構とを取り出して示す構成図であって、図19の矢印C方向から見た場合の状態を示している。
【0128】
本表示装置18Bは、基本的には上述の各実施形態の表示装置(18)と略同様の構成からなる。本表示装置18Bにおいては、上述の各実施形態の表示装置(18)における接眼部17R,17Lに代えて、表示素子14R,14Lを観察するための手段として、接眼レンズ組70及び第1ミラー64R,64L及び第2ミラー65R,65Lからなる観察手段を備え、これに加えて、観察手段の接眼レンズ組70を駆動する駆動機構と、表示素子14R,14Lを駆動するための駆動機構とを有して構成されている点が異なる。
【0129】
表示素子14R,14Lを観察するための観察手段の構成部材のうち第1ミラー64R,64Lは、表示素子14R,14Lの表示面に対向する位置において、その反射面を表示素子14R,14Lの表示面に対向させて配置され、かつ同位置において表示素子14R,14Lの表示面に対して角度略45度傾けて配置されている。
【0130】
この第1ミラー64R,64Lの反射面によって反射される光束の延長線上に第2ミラー65R,65Lが、その反射面を第1ミラー64R,64Lの反射面に向けて配置されている。この場合において、第2ミラー65R,65Lは、第1ミラー64R,64Lにより反射される光束に対して角度略45度傾けて、かつ第1ミラー64R,64Lに対しては略平行となるように配置されている。そして、第2ミラー65R,65Lの反射面により反射される光束の延長線上に接眼レンズ組み70が配置されている。
【0131】
このような構成により、表示素子14R,14Lの表示映像は、第1ミラー64R,64L及び第2ミラー65R,65Lによってそれぞれ反射した後、接眼レンズ組70へと入射するようになっている。したがって、これにより表示素子14R,14Lの表示映像は、図19の矢印Cの方向から観察することができるようになっている。
【0132】
また、接眼レンズ組70は、図19に示す矢印X1,X2方向に移動し得るようになっている。そのために接眼レンズ組70を駆動する駆動機構として、駆動モータ71及び駆動ギアー72が設けられている。
【0133】
接眼レンズ組70は、図20に示すように表示装置18Bの内部における固定部材に対して回動自在に設けられる円板状のレンズ支持体70dと、このレンズ支持体70dの周状に配設される三対のレンズ群(等倍レンズ70aと拡大レンズ70bと縮小レンズ70cとの各一対)とによって構成されている。そして、レンズ支持体70dの外周縁部の一部には、ギアー部70eが形成されている。
【0134】
また、上記接眼レンズ組70を駆動する駆動機構は、表示装置18Bの内部に固設され正逆回転自在に構成される駆動モータ71と、この駆動モータ71の駆動軸に固設される駆動ギアー72とによって構成されている。この場合において、駆動ギアー72の外周に形成されるギアー部は、上述の接眼レンズ組70のギアー部70eに噛合している。
【0135】
したがって、この構成により、駆動モータ71が駆動されると、駆動ギアー72が正逆何れかの方向に回転する。すると、駆動ギアー72が同方向に回転するので、これに噛合しているレンズ支持体70dが所定の方向へと回転する。これにより、接眼レンズ組70の三対のレンズ群のいずれかを所定の観察位置へと任意に移動させることができるようになっている。
【0136】
一方、表示素子14R及び表示素子14Lを駆動するための駆動機構は、正逆回転自在に構成される駆動モータ67R,67Lと、切り欠きのあるシャフト68R,68Lとによって構成される。
【0137】
駆動モータ67R,67Lの駆動軸に固設される小ギアーは、シャフト68R,68Lに螺合している。これにより、駆動モータ67R,67Lが回転するとシャフト68R,68Lも回転するようになっている。
【0138】
また、シャフト68R,68Lの切り欠きには、表示素子14R,14Lの所定の部位が係合している。これにより、駆動モータ67R,67Lの回転に伴ってシャフト68R,68Lが回転すると、表示素子14R,14Lは、図19に示す矢印X1,X2方向に移動するようになっている。その他の構成については上述の各実施形態と同様である。
【0139】
このように構成される表示装置18Bを用いる場合において、通常は、接眼レンズ組70の等倍レンズ70aを介して表示素子14R,14Lを観察する。
【0140】
この状態から拡大又は縮小観察をおこないたい場合には、駆動モータ71を回転駆動させて接眼レンズ組70を回転させることにより、拡大レンズ70b又は縮小レンズ70cを所定の位置に配置する。
【0141】
これにより、拡大レンズ70bを介して表示素子14R,14Lを観察すれば拡大観察をおこなうことができる。また、縮小レンズ70cを介して表示素子14R,14Lを観察すれば縮小観察をおこなうことができる。
【0142】
また、拡大観察時等に、さらに拡大して観察をおこないたいときには、駆動モータ67R,67Lを回転回転させることにより、表示素子14R,14Lを矢印X1方向へと移動させる、つまり接眼レンズ組70から遠ざける方向へ移動させればよい。
【0143】
そして、接眼レンズ組70の切り換え動作を、表示素子14R,14Lに表示する映像の切り換え時に連動するように制御すれば、立体視映像と広角視野用映像とが切り換わっても、表示映像を光学的に拡大又は縮小して観察することができるので、違和感なく観察を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の第1の実施形態の立体視内視鏡装置の全体構成図。
【図2】図1の立体視内視鏡装置における比較装置の内部構成を示すブロック構成図。
【図3】図1の立体視内視鏡装置における制御装置の内部構成を示すブロック構成図。
【図4】図1の立体視内視鏡装置における基準被写体治具の外観を示す斜視図。
【図5】図1の立体視内視鏡装置における基準被写体治具の内部に設けられる基準被写体パターンを示し、図4の矢印A方向から見た図。
【図6】図1の立体視内視鏡装置における表示装置の概略的な内部構成と、当該表示装置における撮像素子部組の撮像視野を示す図。
【図7】図1の立体視内視鏡装置の表示装置における撮像素子部組によって撮影される基準被写体パターンの映像を示す図。
【図8】図1の立体視内視鏡における表示装置の観察映像の左右調整をおこなう際の作用を示すフローチャート。
【図9】図1の立体視内視鏡における表示装置の観察映像の左右調整をおこなう際の作用を示すフローチャート。
【図10】本発明の第2の実施形態の立体視内視鏡装置の全体構成図。
【図11】図10の立体視内視鏡装置における比較装置の内部構成を示すブロック構成図。
【図12】図10の立体視内視鏡装置における制御装置の内部構成を示すブロック構成図。
【図13】図10の立体視内視鏡における表示装置の観察映像の左右調整をおこなう際の作用を示すフローチャート。
【図14】本発明の第3の実施形態の立体視内視鏡装置の全体構成図。
【図15】図14の立体視内視鏡装置における比較装置の内部構成を示すブロック構成図。
【図16】図14の立体視内視鏡装置における制御装置の内部構成を示すブロック構成図。
【図17】図14の立体視内視鏡装置の表示装置において立体視映像と広角映像との表示切り換えがおこなわれる際の作用を示すフローチャート。
【図18】図14の立体視内視鏡装置において表示装置の表示映像の切り換えタイミングを設定する手段を備えた鉗子及びトロッカーを示す図。
【図19】図14の立体視内視鏡装置において、広角視野用の映像と立体視用の映像とを切り換えた際の違和感を軽減する機構を備えた別の表示装置の構成を示す図。
【図20】図19の表示装置における接眼レンズ組とこれを駆動する駆動機構とを取り出して示す構成図であって、図19の矢印C方向から見た場合の状態を示す図。
【符号の説明】
【0145】
1,1A,1B……立体視内視鏡装置
10,10B……立体視内視鏡
11R,11L……立体用対物レンズ
11W……広角視野用対物レンズ
12R,12L,12W……撮像素子
14R,14L……表示素子
15,15A,15B……制御装置
16……撮像素子部組
17R,17L……接眼部
18,18B……表示装置
21,21A,21B……比較装置
22……基準被写体治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二系統の光学系を有する立体視内視鏡と、
上記二系統の光学系により形成される光学像のそれぞれを映像信号に変換する少なくとも二台のCCUと、
上記二台のCCUからの出力信号を表示形式の電気信号に変換する制御装置と、
少なくとも二つの表示部と上記表示部の表示画面を撮影する撮像装置とを有する表示装置と、
調整の基準となる基準被写体パターンを備えた基準被写体治具と、
を具備し、
上記制御装置は、上記表示部に表示する映像信号を補正する手段と、上記二つの表示部の表示特性を調整する手段と、を具備してなることを特徴とする立体視内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−44153(P2007−44153A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229860(P2005−229860)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】