説明

簡易便器

【課題】本発明は、手間を要することなく、傾き調節作業を簡単に行なうことができる簡易便器を提供することを課題とする。
【解決手段】便器本体枠5の上面に座枠6を取り付け、該座枠6内に便バケツを挿入懸架し、該座枠6上には便座を載置した簡易便器1であって、該座枠6の前端部を該便器本体枠5に軸着し、該座枠6の前端部の軸着部を回動中心として該座枠6を水平状態から前傾状態まで回動可能にし、該便器本体枠5の背板4の上縁部には横倒し状態から起立状態まで回動可能な回動ブロック18を取り付け、該座枠6の前傾状態において該回動ブロック18を起立させて該座枠6の後端を支持する簡易便器1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として高齢者や体の不自由な人が室内で使用する簡易便器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高齢者や体の不自由な人などが簡易便器を使用する場合には、前傾姿勢をとるほうが排便しやすいとされている。そこで、従来、使用者が容易に前傾姿勢をとることができるように、座部の傾きを調節することができる可搬便器が提供されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−135308号公報(第2−3頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の構成では、座部の傾きを調節する場合に、雄螺子を雌螺子孔から一旦外して、別の雌螺子孔に再び螺合する必要があるため、傾き調節作業に手間がかかるという問題があった。
また上記従来の構成では、座部の傾きを調節する場合に、雌螺子孔を外部から目視することができないため、雄螺子を螺合する際に手探りで雌螺子孔を探さなければならず、傾き調節作業を簡単に行なうことができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、便器本体枠5の上面に座枠6を取り付け、該座枠6内に便バケツ7を挿入懸架し、該座枠6上には便座8を載置した簡易便器1であって、該座枠6の前端部を該便器本体枠5に軸着し、該座枠6の前端部の軸着部13を回動中心として該座枠6を水平状態から前傾状態まで回動可能にし、該便器本体枠5の背板4の上縁部には横倒し状態から起立状態まで回動可能な回動ブロック18を取り付け、該座枠6の前傾状態において該回動ブロック18を起立させて該座枠6の後端を支持する簡易便器1を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の簡易便器1では、座枠6の前端部の軸着部13を回動中心として該座枠6を水平状態から前傾状態に回動させるとともに、回動ブロック18を横倒し状態から起立状態まで回動させて、該起立させた回動ブロック18で該座枠6の後端を支持することができ、したがって、該座枠6の傾き調節作業に手間を要することがなく、該座枠6の傾き調節作業を簡単に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図8に示す一実施例によって説明する。
図1および図2に示すように、本実施例の簡易便器1は、前板2と左右側板3と背板4とからなる木製の便器本体枠5と、該便器本体枠5の上面に取り付けられる木製の座枠6と、該座枠6内に挿入懸架される便バケツ7と、該座枠6の後端部に跳ね上げ可能に枢着される便座8と、該便座8上において該便器本体枠5の後部上端に跳ね上げ可能に枢着される便蓋9と、該便器本体枠5の左右側板3に取り付けられる左右一対の肘掛け枠10と、該便器本体枠5の左右側板3の後端上部から立設される背もたれ枠11と、該便器本体枠5の左右側板3の下部に取り付けられる左右一対の脚枠12とからなる。
【0008】
該座枠6の左右側面の前端部には軸着部である軸着ピン13が外側に向けてそれぞれ凸設されており、該座枠6は該軸着ピン13を介して該便器本体枠5の左右側枠の前端部に軸着されている。そして、該座枠6は該軸着ピン13を回動中心として、図2〜図4に示す水平状態から図5〜図7に示す前傾状態まで回動可能とされている。
また、該座枠6の左右中央部にはボルト挿通孔14が設けられており、一方、該便器本体枠5の左右側板3の上部左右中央部には、該座部が水平状態のときに固定ボルト15が螺着される下側ボルト孔16と、該座部が前傾状態のときに該固定ボルト15が螺着される上側ボルト孔17が設けられている。
【0009】
該便器本体枠5の背板4の上縁部には、左右一対の回動ブロック18が取り付けられており、図8に示すように、該回動ブロック18は支持部19と取付け部20とからなる断面L字状とされている。該回動ブロック18の取付け部20の中央部には、長手方向に沿って摺動スリット21が設けられており、該摺動スリット21を介して固定ボルト22を該便器本体枠5の背板4のボルト孔(図示せず)に螺着することによって、該回動ブロック18は、横倒し状態から起立状態まで回動可能、かつ、長手方向に摺動可能とされている。そして、該回動ブロック18を横倒し状態とした場合には、該回動ブロック18の支持部19は便器本体枠5の背板4の上部の凹部23に収納される。
【0010】
該便蓋9は前後に二つ折り可能とされており、該便蓋9を跳ね上げた状態で該背もたれ枠11の下部を通り抜けて折畳み可能とされている。また、該便蓋9の上面にはクッション部材24が取り付けられており、該便蓋9は座部として兼用することができるようにされている。
【0011】
該肘掛け枠10は、前後一対の肘掛け支板25が垂設されている下側短肘掛け26と、該下側短肘掛け26の上に跳ね上げ可能に取り付けられる上側長肘掛け27とからなる。該前後一対の肘掛け支板25の中央部には摺動スリット28がそれぞれ設けられており、該肘掛け枠10を該便器本体枠5に対して上下に摺動させて所望な高さに調節した後、該摺動スリット28を介して固定ボルト29を該便器本体枠5の左右側板3のボルト孔(図示せず)に螺着することによって、該肘掛け枠10は高さ調節可能とされている。
【0012】
該背もたれ枠11は、左右一対の背もたれ支柱30と、該左右一対の背もたれ支柱30の間に差し渡されるクッション性を有する背もたれ部材31とからなる。該背もたれ支柱30の上部には2個のボルト挿通孔32が縦列して設けられており、該背もたれ部材31の左右側面には4個のボルト孔33が縦列して設けられている。そして、該背もたれ部材31の4個のボルト孔33のうち2個のボルト孔33を選択し、該背もたれ部材31を該背もたれ支柱30に対して所望な高さに調節した後、該背もたれ支柱30のボルト挿通孔32を介して固定ボルト34を該選択したボルト孔33に螺着することによって、該背もたれ部材31は高さ調節可能とされている。
【0013】
該脚枠12は、後端部に移動用キャスター35が取り付けられている底板36と、該底板36から立設されている前後一対の脚板37とからなる。該前後一対の脚板37の中央部には摺動スリット38が設けられており、該脚枠12を該便器本体枠5に対して上下に摺動させて所望な高さに調節した後、該摺動スリット38を介して固定ボルト39を該便器本体枠5の左右側板3のボルト孔(図示せず)に螺着することによって、該便器本体枠5は高さ調節可能とされている。
【0014】
上記の簡易便器1を図2〜図4に示すような座枠水平状態で使用する場合には、座枠6の後端部の下面を便器本体枠5の背板4の上面で支持せしめる。このとき、回動ブロック18は横倒し状態とされており、該回動ブロック18の支持部19は便器本体枠5の背板4の凹部23に収納されている。また、水平状態とされた座枠6は、便器本体枠5の左右側板3の下側ボルト孔16に固定ボルト15を螺着することによって、安定に固定されている。
【0015】
上記の簡易便器1を図5〜図7に示すような座枠前傾状態で使用する場合には、座枠6の前端部の軸着ピン13を回動中心として該座枠6を水平状態から前傾状態に回動させるとともに、回動ブロック18を横倒し状態から起立状態まで回動させて、該起立させた回動ブロック18の支持部19の上面で該座枠6の後端を支持せしめる。その後、便器本体枠5の左右側板3の上側ボルト孔17に固定ボルト15を螺着することによって、前傾状態とした座枠6を安定に固定する。
【0016】
なお、図8(a)に示すように起立状態とされた回動ブロック18を再び横倒し状態とする場合には、図8(b)に示すように該回動ブロック18を上方に摺動させた後、図8(c)に示すように該回動ブロック18を横方向に回動させる。
【0017】
上記の簡易便器1では、座枠6の前端部の軸着ピン13を回動中心として該座枠6を水平状態から前傾状態に回動させるとともに、回動ブロック18を横倒し状態から起立状態まで回動させて、該起立させた回動ブロック18で該座枠6の後端を支持することができ、したがって、該座枠6の傾き調節作業に手間を要することがなく、該座枠6の傾き調節作業を簡単に行なうことができる。
【0018】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、手間を要することなく、傾き調節作業を簡単に行なうことができる簡易便器として、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】簡易便器の斜視図である。
【図2】簡易便器(座枠水平状態)の後側斜視図である。
【図3】簡易便器(座枠水平状態)の背面図である。
【図4】簡易便器(座枠水平状態)の説明側断面図である。
【図5】簡易便器(座枠前傾状態)の後側斜視図である。
【図6】簡易便器(座枠前傾状態)の背面図である。
【図7】簡易便器(座枠前傾状態)の説明側断面図である。
【図8】回動ブロックを回動させる様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 簡易便器
4 背板
5 便器本体枠
6 座枠
7 便バケツ
8 便座
13 軸着部(軸着ピン)
18 回動ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体枠の上面に座枠を取り付け、該座枠内に便バケツを挿入懸架し、該座枠上には便座を載置した簡易便器であって、
該座枠の前端部を該便器本体枠に軸着し、該座枠の前端部の軸着部を回動中心として該座枠を水平状態から前傾状態まで回動可能にし、該便器本体枠の背板の上縁部には横倒し状態から起立状態まで回動可能な回動ブロックを取り付け、該座枠の前傾状態において該回動ブロックを起立させて該座枠の後端を支持することを特徴とする簡易便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−87485(P2006−87485A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273423(P2004−273423)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】