説明

粉粒状物散布作業機

【課題】収納袋体内に粉粒状物を詰入し、走行機体を撒布場所に移動し、運搬台を傾設し、走行機体の走行により収納袋体の出口部から流下し、粉粒状物の散布作業を行うことができ、この際、取付枠と運搬台との間に運搬台の傾動位置を規制可能な傾設機構を設けてなるから、運搬台の傾設位置を規制保持することができ、各種作業に対する融通性を高めることができる。
【解決手段】走行機体1に連結機構2により取付枠3を連結し、取付枠に運搬台9を傾設自在に設け、運搬台に籾殻や肥料等の粉粒状物Wを収納可能な収納袋体13を設け、収納袋体に出口部13aを形成してなり、取付枠と運搬台との間に運搬台の傾動位置を規制可能な傾設機構12を設け、かつ、収納袋体内に粉粒状物を出口部へ移送可能な移送部材15をもつ移送機構16を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば籾殻や肥料等の粉粒状物等の散布作業等に用いられる粉粒状物散布作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の粉粒状物散布作業機として、走行機体に取付枠を連結し、取付枠に運搬台を後方傾動自在に設け、該取付枠と該運搬台との間に係止部及び係止部材からなる解除可能な係止機構を設け、取付枠にすき体を前下がり状に取り付けて構成したものが知られている。
【0003】
しかして、例えば運搬台に籾殻や肥料を収納し、運搬台の底面から肥料を落下散布したり、収穫物や農作業機具を搭載して運搬作業を行ったり、又、すき体を前下り状に保持して走行機体を前進走行し、圃場面の高い所の土をすき体により削り取り、削り取られた土をすき体により運搬台内に導入案内し、走行機体を圃場の低い所に移動し、その位置で作業者が人為的に係止機構を解除し、運搬台を自重で後方傾動させ、運搬台内の土を圃場面の低い所に排出し、これにより圃場の整地作業を行うようにしている。
【特許文献1】特公昭59−3607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらこれら従来構造の場合、上記運搬台上に大重量となる多量の籾殻を積載することが厄介であり、それだけ、運搬作業性並びに散布作業性を低下させることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、走行機体に連結機構により取付枠を連結し、該取付枠に運搬台を傾設自在に設け、該運搬台に籾殻や肥料等の粉粒状物を収納可能な収納袋体を設け、該収納袋体に出口部を形成してなり、上記取付枠と上記運搬台との間に該運搬台の傾動位置を規制可能な傾設機構を設け、かつ、上記収納袋体内に上記粉粒状物を上記出口部へ移送可能な移送部材をもつ移送機構を設けてなることを特徴とする粉粒状物散布作業機にある。
【0006】
又、請求項2記載の発明は、上記移送機構は、上記移送部材としての複数個の掻出羽根体をもつ回転枠体と、該回転枠体を回転させる回転機構とからなることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記移送部材の上方位置に粉粒状物の移送方向前方位置への落下を防ぐ遮蔽部材を設けてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、収納袋体内に粉粒状物を詰入し、走行機体を撒布場所に移動し、運搬台を傾設し、走行機体の走行により収納袋体の出口部から流下し、粉粒状物の散布作業を行うことができ、この際、上記取付枠と上記運搬台との間に運搬台の傾動位置を規制可能な傾設機構を設けてなるから、運搬台の傾設位置を規制保持することができ、各種作業に対する融通性を高めることができ、かつ、上記収納袋体内に上記粉粒状物を上記出口部へ移送可能な移送部材をもつ移送機構を設けてなるから、収納袋体内の粉粒状物は移送部材の移送動作により上記出口部へ移送され、粉粒状物の出口部からの落下が円滑になされ、撒布作業性を高めることができる。
【0008】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記収納袋体内に上記粉粒状物を上記出口部へ移送可能な移送部材をもつ移送機構を設けているから、収納袋体内の粉粒状物は出口部へ移送され、収納袋体内の粉粒状物を出口部より確実に排出することができ、撒布作業性を高めることができる。
【0009】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記移送機構は、上記移送部材としての複数個の掻出羽根体をもつ回転枠体と、回転枠体を回転させる回転機構とからなるので、回転枠体の回転により収納袋体内の粉粒状物は掻出羽根体によって出口部へ移送され、収納袋体内の粉粒状物を出口部より確実に排出することができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記移送部材の上方位置に粉粒状物の移送方向前方位置への落下を防ぐ遮蔽部材を設けてなるから、粉粒状物を出口部より確実に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図11は本発明の実施の形態例を示し、図1乃至図9は第一形態例、図10、図11は第二形態例である。
【0011】
図1乃至図9の第一形態例において、1は走行機体であって、この場合、トラクタが用いられ、この走行機体1の後部には連結機構2により取付枠3を連結している。
【0012】
この連結機構2は、この場合、図2、図3の如く、走行機体1の左右両側部下部に突設した下部リンク4と、走行機体1の左右両側部上部に突設した揺動アーム5と、揺動アーム5と下部リンク4の中程部を連結する吊上リンク6と、走行機体の上部に突設した上部リンク7とで構成されており、上記下部リンク4の先端部と上部リンク7の先端部を連結ピン8により取付枠3に連結し、取付枠3を油圧により揺動する揺動アーム5によって上下動自在に構成している。
【0013】
9は運搬台であって、この場合、図3、図4の如く、上記取付枠3を左右一対の縦杆3a及び縦杆3aの下端部から後方に突設した水平杆3bからなる側面略L形状に形成し、運搬台9は、長方形状の底板9aの前辺部に前板9bを立設し、前板9bに前杆9cを取り付け、底板9aの左右両側に側板9g・9gを着脱自在に配設すると共に底板9aの後部に後板9hを軸9jにより自重により揺動自在に設け、底板9aの底面に補強杆9dを取り付け、底板9a及び補強杆9dの後方縁部に断面三角形状の掬杆9fを取り付けて略L形状にしてなり、この縦杆3aに前杆9cが当接した状態で補強杆9dに水平杆3bを支点軸10により枢着連結し、取付枠3に対して運搬台9を支点軸10を中心として後方傾動自在に設けて構成している。
【0014】
11は係止機構であって、この場合、図5,図6、図7の如く、運搬台9の前杆9cの上部間に上部杆9eを取付け、上部杆9eの上面中央位置に支持片11aを二個並列状態で取付け、支持片11a間にピン状の係止部11bを架設し、一方縦杆3a間に架設した横杆3cに支持片11cを並列状態に取付け、支持片11c間に支点ピン11dを架設し、支点ピン11dにレバー状の係止部材11eを揺動自在に枢着し、係止部材11eの基端部に横杆3cの上面に当接可能なストッパー部11fを形成すると共に係止部材11eの先端部に上記係止部11bに引掛係止可能な鉤状部11gを形成し、係止部材11eと横杆3cとの間に係止部材11eの先端部を下方に弾引可能な係止用バネ11hを掛架し、係止部材11eに操作レバー11jを突設して構成している。
【0015】
しかして、係止部材11eを支点ピン11dを中心として上向き揺動させることにより係止部材11eの鉤状部11gが係止部11bより離脱し、これにより運搬台9は支点軸10を中心として自重後方傾動することになり、また、運搬台9を傾動状態から起立させると係止部材11eの鉤状部11gは係止部11bに当接して係止用バネ11hに抗して乗り上げ動作したのち乗り越え動作し、係止部11bは係止部材11eの鉤状部11gに係止され、これにより運搬台9の支点軸10を中心とする自重後方傾動が阻止されることになる。
【0016】
12は傾設機構であって、この場合、図5乃至図7の如く、上記取付枠3の横杆3cに引掛部材12aを取り付け、運搬台9の上部杆9eに止部材12bを取り付け、止部材12bに複数個の環体12cを交互に直角状をなして連結してなる鎖体12dの一方端部を止着し、引掛部材12aに鎖体12dの線径よりやや幅広にして交互の環体12cに引掛可能な引掛溝12eを形成し、鎖体12dの他方端部を引掛部材12aから離反することにより運搬台9の後方傾動を可能とし、鎖体12dの他方端部を引掛部材12aの引掛溝12eに掛止することにより、運搬台9の後方傾設位置を規制すると共に複数個の環体12cと引掛溝12eとの選択により運搬台9の傾設位置を可変自在に設けて構成している。
【0017】
13は収納袋体であって、図2、図3の如く、上記運搬台9の底板上に収納枠体14を取付け、この収納枠体14内に籾殻や肥料等の粉粒状物Wを収納可能にして開閉可能な出口部13aをもつ合成樹脂製の収納袋体13を設けてなり、この場合、収納枠体14は、運搬台9の底板9aに載置された底部材14a、底部材14a上に立設された複数個の支柱杆14b及び横杆14cからなり、又、この収納袋体13は、上部にファスナーにより開閉可能な袋口部13bを設けると共に下部前後部にファスナーにより開閉可能な出口部13aを設け、収納袋体13の上部に網目部分13cを設け、収納枠体14と収納袋体13とを留め具13dにより連結するように構成している。尚、この場合、収納枠体14は運搬台9と別体に形成され、運搬台9上に載置固定される構造となっているが、収納枠体14を運搬台9の底板9a上に一体的に取り付ける構造とすることもある。
【0018】
15は移送部材、16は移送機構であって、この場合、図3、図4、図8の如く、上記移送機構16は、上記移送部材15としての複数個の掻出羽根体15aをもつ回転枠体15bと、該回転枠体15bを回転させる回転機構16aとからなり、上記収納枠体14の左右両側位置の横杆14cに取付板材16b・16bを取付け、取付板材16b・16bの間に回転軸16cを回転自在に架設し、一方の取付板材16bに走行機体1の駆動源により駆動される油圧モータ16dを取付け、油圧モータ16dにより回転軸16cをギヤ機構16eを介して駆動し、回転軸16cに円筒枠状の上記回転枠体15bを取付け、回転枠体15bの外周部分に長方形板状の上記掻出羽根体15aを四個取り付けて構成している。
【0019】
しかして、上記移送部材15は移送機構16としての回転機構16aにより図中、反時計回りに回転し、この回転により運搬台9上の粉粒状物Wは走行機体1の進行方向前方位置である移送方向後方位置から出口部13a側たる移送方向前方位置へと移送されることになる。
【0020】
17は遮蔽部材であって、上記収納枠体14に取り付けられ、上記移送部材15により移送される上記粉粒状物Wの移送方向前方位置の上方位置に前下り状に斜設され、上記収納袋体13内の粉粒状物Wの移送方向前方位置への落下を防ぐように構成している。
【0021】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、例えば、図1、図2、図3の如く、走行機体1を籾摺機の設置場所の近傍位置に走行移動し、籾摺機の排塵筒を収納袋体13の袋口部13bに挿入し、排塵筒内を流れる排気流により籾殻は排出され、排塵筒から排出されてくる籾殻は収納袋体13内に詰入されると共に排気流は上部の網目部分13cから外に排出され、これにより収納袋体13の袋口部13bを介して粉粒状物Wとしての籾殻を詰入し、詰入が完了したら、走行機体1を例えば圃場等の撒布場所に移動し、圃場内において、図4、図5の係止状態から図7、図9の如く、係止機構11の係止部材11eを引き上げて係止部11bから外して解除状態にすることにより運搬台9は支点軸10を中心として後方に傾動し、後板9hは軸9jを中心として揺動して後板9hの下端部と底板9aの上面との間を開口し、この場合、傾設機構12の鎖体12dにより、図9に示す傾設角度に規制され、そして、収納袋体13の前側の出口部13aを開口することにより粉粒状物Wである籾殻は出口部13aから流下し、走行機体1の走行により圃場内への粉粒状物Wたる籾殻の散布作業を行うことができる。
【0022】
この際、上記取付枠3と運搬台9との間に上記運搬台9の傾動位置を規制可能な傾設機構12を設けてなるから、運搬台9の傾設位置を規制保持することができ、各種作業に対する融通性を高めることができ、かつ、上記収納袋体13内に上記粉粒状物Wを上記出口部13bへ移送可能な移送部材15をもつ移送機構16を設けているから、収納袋体13内の粉粒状物Wは出口部13aへ移送され、収納袋体13内の粉粒状物Wを出口部13bより確実に排出することができ、撒布作業性を高めることができる。
【0023】
この場合、上記移送機構16は、上記移送部材15としての複数個の掻出羽根体15aをもつ回転枠体15bと、回転枠体15bを回転させる回転機構16aとからなるので、回転枠体15bの回転により収納袋体13内の粉粒状物Wは掻出羽根体15aによって出口部13aへ移送され、収納袋体13内の粉粒状物Wを出口部13bより確実に排出することができ、又、この場合、上記移送部材15の上方位置に粉粒状物Wの移送方向前方位置への落下を防ぐ遮蔽部材17を設けてなるから、粉粒状物Wを出口部13bより確実に排出することができる。
【0024】
又、この場合、上記取付枠3と上記運搬台9との間に係止部11b及び係止部材11eからなる解除可能な係止機構11を設けてなるから、運搬台9の水平保持及び傾動を容易に行うことができる。
【0025】
図10、図11の第二形態例は別例構造を示し、上記第一形態例と同一態様部分には同符合を付して説明すると、この場合、上記移送部材15・15は前後位置に二組配置され、即ち、移送部材15としての複数個の掻出羽根体15aをもつ回転枠体15bを二個並設し、一方の取付板材16bに走行機体1の駆動源により駆動される油圧モータ16dを取付け、油圧モータ16dにより回転軸16cをギヤ機構16eを介して駆動し、並列する回転軸16c・16cにチェーン伝動機構18を架設し、かつ、各移送部材15・15の上方位置に粉粒状物Wの移送方向前方位置への落下を防ぐ遮蔽部材17・17を設けて構成している。
【0026】
この第二形態例は上記構成であるから、上記第一形態例と同様な作用効果を得ることができると共に移送部材15・15の小型化を図ることができる。
【0027】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、例えば、籾殻に限らず肥料、その他の粉粒状物の散布にも適用することができ、又、移送機構16として、走行機体のバッテリーなどの電気駆動源により電動モータや電動シリンダを駆動し、電気モータにより移送部材15を回転させたり、電動シリンダにより移送部材を押送りの移送動作させたりすることもでき、又、移送部材15の形状、移送機構16の構造等は適宜変更して設計されるものである。
【0028】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の第一形態例の全体側面図である。
【図2】本発明の実施の第一形態例の平面図である。
【図3】本発明の実施の第一形態例の部分側面図である。
【図4】本発明の実施の第一形態例の部分拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の第一形態例の部分拡大側面図である。
【図6】本発明の実施の第一形態例の部分拡大側面図である。
【図7】本発明の実施の第一形態例の部分拡大側面図である。
【図8】本発明の実施の第一形態例の部分側断面図である。
【図9】本発明の実施の第位置形態例の使用状態の側面図である。
【図10】本発明の実施の第二形態例の部分側面図である。
【図11】本発明の実施の第三形態例の部分平断面図である。
【符号の説明】
【0030】
W 粉粒状物
1 走行機体
9 運搬台
12 傾設機構
13 収納袋体
13a 出口部
15 移送部材
15a 掻出羽根体
15b 回転枠体
16 移送機構
16a 回転機構
17 遮蔽部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に連結機構により取付枠を連結し、該取付枠に運搬台を傾設自在に設け、該運搬台に籾殻や肥料等の粉粒状物を収納可能な収納袋体を設け、該収納袋体に出口部を形成してなり、上記取付枠と上記運搬台との間に該運搬台の傾動位置を規制可能な傾設機構を設け、かつ、上記収納袋体内に上記粉粒状物を上記出口部へ移送可能な移送部材をもつ移送機構を設けてなることを特徴とする粉粒状物散布作業機。
【請求項2】
上記移送機構は、上記移送部材としての複数個の掻出羽根体をもつ回転枠体と、該回転枠体を回転させる回転機構とからなることを特徴とする請求項1記載の粉粒状物散布作業機。
【請求項3】
上記移送部材の上方位置に粉粒状物の移送方向前方位置への落下を防ぐ遮蔽部材を設けてなることを特徴とする請求項1又は2記載の粉粒状物散布作業機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−193993(P2008−193993A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34564(P2007−34564)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(395008849)株式会社富士トレーラー製作所 (32)
【Fターム(参考)】