説明

緩衝器

【課題】振動減衰性を向上することが可能な緩衝器を提供することである。
【解決手段】伸側室R1と圧側室R2とを連通するとともに減衰力発生要素6,7を備えた通路4,5を迂回する二つのバイパス路8,9と、一方のバイパス路8の途中に設けた伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する一方側逆止弁10と、他方のバイパス路9の途中に設けた圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する他方側逆止弁11と、圧縮作動時に一方のバイパス路8を開放して他方のバイパス路9を閉塞する圧側ポジション14と伸長作動時に一方のバイパス路8を閉塞して他方のバイパス路9を開放する伸側ポジション15とを有する切換弁12と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝器としては、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されたピストンと、シリンダにピストンを介して移動自在に挿通されるロッドとを備えたものが知られている。
【0003】
また、シリンダ内に充填される作動流体を気体とする緩衝器の場合にあっても、ピストン部の通路で伸側室と圧側室とを連通する他、シリンダの外方に外筒を設けてシリンダと外筒との間の隙間を介して伸側室と圧側室とを連通し、シリンダ内に気体とともに封入した少量の潤滑油を緩衝器の振動運動によってポンプの要領で圧側室と伸側室とに循環させるようにして、ピストンとシリンダの当接部位およびピストンロッドとシリンダ下端に設けた封止部材との当接部位である摺動部の摺動性の確保するようにはしているが、この他の構造は油圧緩衝器の構造と略同様とされており、従来の緩衝器の減衰力発生用の弁も油圧緩衝器と同様の構造とされる(たとえば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2004−132429号公報
【特許文献2】特開2004−132428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来緩衝器では、摺動性を確保することで作動流体の種類によらず、緩衝器としての機能を発揮できるようになっているが、以下の問題があると指摘される可能性がある。
【0005】
すなわち、緩衝器では、振動速度変化に対してシリンダ内圧力が略線形的に変化すると、発生減衰力も振動速度に線形となるので好ましいが、油圧を利用した緩衝器にあっても高周波振動に対しては作動油の圧縮性によって伸縮速度変化に対してシリンダ内圧力の変化に遅れを生じ、速度に対する発生減衰力がヒステリシスを持つ特性となる。特に、作動流体を圧縮性に富む気体とする緩衝器では、この傾向が顕著となり、図9に示すように、速度と発生減衰力との関係である速度減衰力特性におけるヒステリシス、つまり、上述のヒステリシスが大きくなる。
【0006】
そして、このように従来の緩衝器は、高周波振動に対しては作動流体の如何を問わず、速度に対する発生減衰力に大きなヒステリシスを持つことから、減衰力を発揮する以外にもバネとして機能することになり、このバネ成分の影響によって減衰性が悪化してしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、振動減衰性を向上することが可能な緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、シリンダと、シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、伸側室と圧側とを連通する通路と、通路の途中に設けた減衰力発生要素とを備えた緩衝器において、通路を迂回し伸側室と圧側室とを連通する二つのバイパス路と、一方のバイパス路の途中に設けた伸側室から圧側室へ向かう流れのみを許容する一方側逆止弁と、他方のバイパス路の途中に設けた圧側室から伸側室へ向かう流れのみを許容する他方側逆止弁と、圧縮作動時に一方のバイパス路を開放して他方のバイパス路を閉塞する圧側ポジションと伸長作動時に一方のバイパス路を閉塞して他方のバイパス路を開放する伸側ポジションとを有する切換弁と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の緩衝器によれば、シリンダに対するピストンの移動方向の切換りに際して、伸側室あるいは圧側室のうちそれまで圧縮されていた室内の圧力を膨張されていた室内へ逃がし、今度は圧縮されることになる膨張側の室内の速やかなる圧力上昇と膨張されることになる圧縮側の室内の速やかなる圧力減少を促すことができるので、伸側室と圧側室の差圧変化の振動速度の変化に対する反応が早まる。
【0010】
つまり、この緩衝器にあっては、緩衝器における振動速度変化に対する伸側室および圧側室の圧力変化の位相遅れを緩和することができるので、緩衝器の振動減衰性を向上することができ、車両における乗心地を飛躍的に向上することが可能であり、特に、高周波数振動時における速度に対する発生減衰力のヒステリシスを低減することができる。つまり、本実施の形態の緩衝器によれば、従来の緩衝器のように速度減衰力特性に大きなヒステリシスを持ってしまい振動減衰性が悪化してしまうといった不具合を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のバルブ構造を図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態における緩衝器の概略縦断面図である。図2は、一実施の形態の緩衝器の圧縮作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。図3は、一実施の形態の緩衝器の伸長作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。図4は、一実施の形態における緩衝器の速度減衰力特性を示した図である。図5は、圧縮作動時における一実施の形態の緩衝器の切換弁の具体的構成を示した図である。図6は、伸長作動時における一実施の形態の緩衝器の切換弁の具体的構成を示した図である。図7は、他の実施の形態の緩衝器の伸長作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。図8は、他の実施の形態の緩衝器の圧縮作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。
【0012】
一実施の形態における緩衝器D1は、図1および図2に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、シリンダ1内に挿通されるとともにピストン2に連結されるピストンロッド3と、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路4,5と、通路4,5を開閉する減衰力発生要素たるリーフバルブ6,7と、通路4,5を迂回し伸側室R1と圧側室R2とを連通する二つのバイパス路8,9と、一方のバイパス路8の途中に設けた伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する一方側逆止弁10と、他方のバイパス路9の途中に設けた圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する他方側逆止弁11と、圧縮作動時に一方のバイパス路8を開放して他方のバイパス路9を閉塞する圧側ポジション14と伸長作動時に一方のバイパス路8を閉塞して他方のバイパス路9を開放する伸側ポジション15とを有する切換弁12と、を備えて構成されている。
【0013】
また、シリンダ1内の伸側室R1および圧側室R2内には気体が充填されており、この緩衝器D1は、作動流体を気体とする空圧緩衝器として構成されている。そして、この緩衝器D1は、基本的には、シリンダ1に対してピストン1が図1中上下方向に移動して、通路4,5を介して作動流体たる気体が伸側室R1と圧側室R2とを行き来するときに、その気体の流れに対しそれぞれ対応するリーフバルブ6,7で抵抗を与えて所定の圧力損失を生じせしめて、所定の減衰力を発生して振動減衰機能を発揮するものである。
【0014】
以下、詳細に説明すると、シリンダ1は、筒状に形成され、その上下端は、それぞれヘッド部材20とボトム部材21によって閉塞されて気体が充填されるとともに、シリンダ1の外方に配置されてシリンダ1を覆う有底筒状の外筒22内に収容されている。なお、シリンダ1内には、緩衝器D1の摺動部位、つまり、シリンダ1とピストン2の接触部位およびシール23とピストンロッド3との接触部位を潤滑するために少量の潤滑油が気体と共に充填されている。
【0015】
そして、シリンダ1内は、摺動自在に挿入されるピストン2によってシリンダ1内は伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。このピストン2の図1中上端にはピストンロッド3が連結され、ピストンロッド3は環状のヘッド部材20の内周側に挿通されてシリンダ1外へ突出されている。すなわち、この緩衝器D1にあっては、いわゆる片ロッド型の緩衝器として構成されているが、両ロッド型の緩衝器として構成してもよく、これを妨げる趣旨ではない。
【0016】
また、ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路4,5が設けられ、この通路4,5はピストン2の図1および図2中上下に積層されて内周が固定される減衰力発生要素として機能する環状のリーフバルブ6,7によって開閉されるようになっている。
【0017】
詳しくは、通路4は、その出口端である図2中下端がリーフバルブ6によって開閉されるようになっており、伸側室R1から圧側室R2へ向かう気体の流れのみを許容する一方通行の通路とされ、通路5は、その出口端である図2中上端がリーフバルブ7によって開閉されるようになっており、圧側室R2から伸側室R1へ向かう気体の流れのみを許容する一方通行の通路とされている。
【0018】
したがって、この緩衝器D1にあっては、ピストン2がシリンダ1に対して図2中上方へ移動する伸長作動時には、気体は通路4を介して伸側室R1から圧側室R2へ移動し、この気体の流れにリーフバルブ6で抵抗を与えて伸側室R1と圧側室R2との圧力に差を生じせしめて緩衝器D1にピストン2のシリンダ1に対する上方へ移動を抑制する減衰力を発揮させ、逆に、ピストン2がシリンダ1に対して図2中下方へ移動する圧縮作動時には、気体は通路5を介して圧側室R2から伸側室R1へ移動し、この気体の流れにリーフバルブ7で抵抗を与えて圧側室R2と伸側室R1との圧力に差を生じせしめて緩衝器D1にピストン2のシリンダ1に対する下方へ移動を抑制する減衰力を発揮させるようになっている。
【0019】
さらに、ピストン2は、通路4,5を迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通する一方のバイパス路8と他方のバイパス路9とを備えており、一方のバイパス路8の途中には伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する一方側逆止弁10が設けられ、他方のバイパス路9の途中に設けた圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する他方側逆止弁11が設けられ、さらに、これらバイパス路8,9の途中には、切換弁12が設けられている。
【0020】
なお、この実施の形態の場合、一方のバイパス路8と他方のバイパス路9は、切換弁12より圧側室R2側が一つの流路17に集約されており、切換弁12は、3ポート2位置の切換弁として構成されている。また、この場合、一方のバイパス路8と他方のバイパス路9の切換弁12より圧側室R2側が一つの流路17に集約されているので、一方側逆止弁10は、一方のバイパス路8の切換弁12より伸側室R1側に配置され、同様に、他方側逆止弁11は、他方のバイパス路9の切換弁12より伸側室R1側に配置されている。なお、一方のバイパス路8と他方のバイパス路9が一つの流路に集約されていない場合には、一方側逆止弁10および他方側逆止弁11が切換弁を基準として伸側室R1側と圧側室R2側のどちらに配置されてもよく、その場合、切換弁12は、4ポート2位置の切換弁としておけばよい。
【0021】
切換弁12は、ピストンロッド3に連結されるピストン2に設けた弁孔2a内に収容されるとともに圧側ポジション14と伸側ポジション15とを備えてこれを選択的に切換える切換弁本体13と、シリンダ1の内周に摺接するとともにピストン2に対して軸方向に変位可能な摺接部材16とを備えて構成され、摺接部材16のピストン2に対する変位で切換弁本体13を圧側ポジション14と伸側ポジション15に切換動作させるようになっている。
【0022】
弁孔2aは、ピストン2の図2中下端から開口して底を有する袋穴とされ、ピストン2は、この場合、シリンダ1内に伸側室R1と圧側室R2とを区画するほか、切換弁12の切換弁本体13を内部に収容するハウジングとしても機能している。なお、ハウジングは、ピストン2と別体とされてもよい。
【0023】
また、この弁孔2aは、一方のバイパス路8および他方のバイパス路9の途中に交差するようになっており、一方のバイパス路8と他方のバイパス路9の途中を横断している。なお、上述のように、一方のバイパス路8と他方のバイパス路9の圧側室R2側が流路17に集約されているので、弁孔2aは、一つの流路17と、一方のバイパス路8と他方のバイパス路9の伸側室R1側の二つの流路の合計三つの流路に接続されている。
【0024】
つづいて、弁孔2a内に収容される切換弁本体13は、弁孔2aの内周に摺接して弁孔2aに対して変位することで圧側ポジション14と伸側ポジション15に切換可能とされており、圧側ポジション14は弁孔2aに対して図2中下方側に配置され、伸側ポジション15は弁孔2aに対して図2中上方側に配置されている。
【0025】
そして、この切換弁本体13の図2中下端は、小径な軸18を介して摺接部材16に連結されており、摺接部材16は、円盤状とされて外周に装着したゴム等の樹脂製のリング16aを介してシリンダ1の内周に摺接している。なお、リング16aとシリンダ1との間で生じる摩擦力は、切換弁本体13の弁孔2a内を摺動する際の摩擦力より大きくなるように設定されており、ピストン2がシリンダ1に対する変位しても摺接部材16はその場に留まろうとする。したがって、切換弁12が図2に示す圧側ポジション14と採っている状態からピストン2が上方へ移動すると、摺接部材16がピストン2の動きに追随せずに、ハウジングたるピストン2の摺接部材16に対する変位で切換弁12を図3に示す伸側ポジション15へ切換えることになり、逆に、ピストン2が図3に示す位置からピストン2が下方へ移動すると、摺接部材16がピストン2の動きに追随せずに、ハウジングたるピストン2の摺接部材16に対する変位で切換弁12を圧側ポジション14へ切換えることになる。
【0026】
そして、切換弁本体13および軸18の軸方向長さとなる図2中上下方向長さは、切換弁12が圧側ポジション14を採って切換弁本体13の上端が弁孔2aの底部に当接しても、リーフバルブ6やリーフバルブ6をピストン2に固定している固定部分に干渉しない長さに設定されており、リーフバルブ6の撓みを妨げず、また、通路4,5を摺接部材16で閉塞することが無いようになっている。
【0027】
また、摺接部材16には、この摺接部材16とピストン2とで仕切られる空間Aを閉塞することが無いように圧側室R2に連通させる通孔16bを備えており、摺接部材16が、気体の伸側室R1と圧側室R2との行き来を妨げることが無いようになっている。なお、リング16aを設けずとも摺接部材16の外周とシリンダ1との間に上記切換弁12の動作を実現可能な程度に摩擦力が生じるのであれば、リング16aを省略することも可能であるが、リング16aによって、摺接部材16のシリンダ1に対する偏心を吸収して、シリンダ1との間に安定した摩擦力を生じる点でリング16aを設ける利点がある。また、リング16aを省略する場合には、通孔16bの代わりに摺接部材16の外周に切欠を設けてシリンダ1との間に隙間を形成して空間Aを圧方室R2に連通するようにしてもよい。
【0028】
さらに、軸18は、弁孔2aの図2中出口付近に嵌め込まれた筒19の内周に摺動自在に軸支され、切換弁12の弁孔2aからの脱落が防止されるとともに、この筒19と切換弁本体13の下端との衝合によって切換弁本体13の図2中下方への移動が規制され、切換弁本体13の下方への移動限界が設定されている。なお、上述したように、切換弁本体13は、その上端が弁孔2aの底部たる図2中下面に当接するまで図2中上方へ移動可能とされており、弁孔2aの底部によって切換弁12の上方への移動限界が設定されている。
【0029】
この場合、図示はしないが、切換弁本体13のピストン2に対する移動を妨げることが無いように、筒19と軸18との間に形成される空隙が密閉されないよう配慮される。具体的には、筒19の内周と軸18の外周の一方または両方に切欠溝を設けたり、ピストン2に筒19と切換弁本体13の下端との間に形成される空隙を圧側室R2へ連通するする通路を設けたりすればよい。また、筒19と切換弁本体13との間に形成される空隙を圧側室R2へ連通する通路、あるいは、筒19の内周と軸18の外周の一方または両方に設けられる切欠溝の流路面積を調整することで、ピストン2に対する切換弁12の動き易さをコントロールすることができる。この場合、流路面積を大きくすると空隙に対する気体の出入りの際の抵抗が小さくなるので、切換弁12がピストン2に対して動き易くなる。
【0030】
また、弁孔2aの底部は、上記集約した流路17の途中から分岐する分岐通路24によって圧側室R2へ連通され、切換弁12の圧力室R2内圧力を受ける図2中上下の受圧面積は同面積とされて、圧力室R2内圧力で切換弁12が移動せしめられることを防止している。
【0031】
このように構成された切換弁12は、上述したように、リング16aとシリンダ1との間で生じる摩擦力が、切換弁本体13と弁孔2a、軸18と筒19との間で生じる摩擦力を上回るように設定されており、図2中ピストン2がシリンダ1に対して上方へ移動する場合には、切換弁本体13の下端が筒19の上端に衝合するまではピストン2のシリンダ1に対する上方への移動に追随せず、ピストン2がシリンダ1に対して上方へ移動し続けると最終的には切換弁12は図2に示した圧側ポジション14から図3に示す伸側ポジション15へ切換り、反対に、図3に示す状態からピストン2がシリンダ1に対して下方へ移動する場合には、切換弁本体13の上端が弁孔2aの底部に衝合するまではピストン2のシリンダ1に対する下方への移動に追随せず、ピストン2がシリンダ1に対して下方へ移動し続けると最終的には切換弁12は伸側ポジション15から圧側ポジション14へ切換り、図2に示す状態となる。
【0032】
したがって、ピストン2がシリンダ1に対して下方へ移動する圧縮作動時では、切換弁12は図2に示す状態となって圧側ポジション14を維持し続け、転じて、ピストン2がシリンダ1に対して上方へ移動する伸長作動時では、切換弁12は図3に示す状態となって伸側ポジション15を維持し続ける。
【0033】
すなわち、この緩衝器D1にあっては、伸縮方向が切換ると、切換弁12が切換って、圧縮作動時には、一方のバイパス路8のみが開放され、伸長作動時には、他方のバイパス路9のみが開放されることになる。
【0034】
なお、上記したところでは、ピストン2の移動が継続する場合に切換弁本体13が筒19と弁孔2aの底部に衝合することにあるが、衝合時の衝撃を緩和するために、筒19と切換弁本体13との衝合部位の一方と弁孔2aと切換弁本体13との衝合部位の一方にクッションを設けるようにしてもよく、このようにすることで、各部の劣化を抑制することができる。
【0035】
つづいて、外筒22は、図1に示すように、有底筒状に形成され、この外筒22とシリンダ1との間に造られる環状の隙間で潤滑油を伸側室R1と圧側室R2とを循環させる循環通路25が形成され、当該循環通路25内には潤滑油が充填されている。
【0036】
転じて、ヘッド部材20は、上述のように環状とされてシリンダ1の図1中上端に嵌合しており、その内周側にはピストンロッド3を軸支する軸受26を備えるとともに、上端側から開口する凹部27が設けられている。また、ヘッド部材20には外周と凹部27とを連通する流路28と、下端と凹部27とを連通する流路29とを備えており、流路28の外周側の開口端28aは上述循環通路25に対向し、さらに、流路29の下端側の開口端は伸側室R1に対向している。すなわち、循環通路25の一端は、上記流路28、凹部27および流路29を介して伸側室R1に連通されている。
【0037】
他方、シリンダ1の図1中下端を閉塞するボトム部材21は、円盤状に成型されてシリンダ1の図1中下端に嵌合しており、その上端と外周とを連通する流路30を備えて構成されている。この流路30の上端側の開口端は圧側室R2に対向し、外周側の開口端は循環通路25に対向させてある。すなわち、循環通路25の他端は、上記流路30を介して圧側室R2に連通されている。また、この流路30の途中には、圧側室R2から循環通路25を介して伸側室R1へ向かう流れのみを許容する逆止弁31が設けられている。
【0038】
そして、このように構成されたヘッド部材20、ボトム部材21によって両端が閉塞されたシリンダ1を外筒22内に挿入して収容し、上記ヘッド部材20の図1中上面にピストンロッド3の外周に摺接する環状のシール23を保持する環状の封止部材32を積層し、外筒22の図中上端である開口端を加締め、これら封止部材32、ヘッド部材20、シリンダ1およびボトム部材21を外筒22内に収容固定して一体化してある。
【0039】
なお、上記した封止部材32における図1中、上下方向長さとなる軸方向長さは、上述のシール23の上下方向長さとなる軸方向長さより、短く設定されるととともに、シール23は、封止部材32の下端からシリンダ1の内方に向けて突出するように封止部材32によって保持されている。なお、上記したところでは、封止部材32はシール23を保持しているが、シール23を封止部材32に溶着して分離不能な状態としておくとしても差し支えない。
【0040】
そして、封止部材32から突出しているシール23の図1中下端は、ヘッド部材20の凹部27内に配置されており、この凹部27と封止部材32とで貯油室33が隔成され、この貯油室33内には潤滑油が充填されている。したがって、循環通路25は、上述の流路28によって貯油室33に接続され、これによって循環通路25は上記貯油室33を介して伸側室R1と圧側室R2とを連通している。
【0041】
さらに、シール23の内周側には、上述のように、シリンダ1から突出しヘッド部材20の軸受26内に摺動自在に挿入されるピストンロッド3が挿入され、このシール23は所定の緊迫力でピストンロッド3の外周に圧接されて、ピストンロッド3の外周をシールしている。なお、封止部材32の外周側には、この封止部材32の外周と外筒22との間をシールする図示しないシールが設けられており、このシールと上記のシール23によってシリンダ1および外筒22が気密状態に維持されている。
【0042】
そして、上述したところから明らかなように、ピストンロッド3は、貯油室33を貫いており、この貯油室33は、ピストンロッド3とシール23との摺動部34に臨むようになっている。
【0043】
ここで、流路29の貯油室33側の開口端29aは、上記凹部27の側壁部27aから開口しており、この開口端29aは、少なくともシール23の図1中最下端より上方に位置するように設定されており、貯油室33内に充填される潤滑油の油面35が常にシール23の下端に接している状態に維持されている。
【0044】
したがって、この緩衝器D1にあっては、シリンダ1内には作動気体が封入されるとともに、貯油室33内および循環通路25内には潤滑油が充填されるが、本実施の形態の場合、ピストンロッド3とシール23との間の潤滑を確実なものとするため、貯油室33内の油の油面35が、流路29の開口端29aの位置によってシール23の最下端より下方に下がることがないように配慮されるとともに、それ以上の余分な潤滑油は伸側室R1へ排出されるようになっており、さらに、循環通路25内の潤滑油の油面36にあっても上記流路28の開口端28aより上方に位置するように設定されている。
【0045】
また、伸側室R1および圧側室R2内にも少量の潤滑油が充填されるが、伸側室R1内に充填される潤滑油は、緩衝器D1が振動動作を初めて行うときに、シリンダ1とピストン2と間の摺動部34を潤滑するためであり、圧側室R2内の潤滑油は、緩衝器D1の圧縮作動時に循環通路25内に気体に先んじて潤滑油を供給して貯油室33内の油面35の下降を防止するために充填される。
【0046】
そして、この緩衝器D1が圧縮作動する場合、圧側室R2内の圧力上昇によって、圧側室R2内の作動気体は、逆止弁31を押し開き、流路30を介して循環通路25に流入する。このとき、圧側室R2内の潤滑油は、作動気体より重たく、流路30の開口部に溜まった状態となることから、該潤滑油も作動気体とともに循環通路25に移動する。そうすると、循環通路25内および貯油室33は、圧側室R2と同様に加圧されることになるので、循環通路25内の潤滑油は、貯油室33内に流入し、さらに、貯油室33内の潤滑油の油面35が上昇することになる。
【0047】
すると、この油面35の上昇と貯油室33内の圧力上昇とによって、貯油室33内の潤滑油は、流路29を通過して伸側室R1内に作動気体とともに流入する。ここで、流路29の開口部29aの開口位置はシール23の最下端より上方に位置しているので、上記のごとく貯油室33から潤滑油が伸側室R1内に移動しても、貯油室33内の潤滑油の油面35は、必ずシール23の最下端より上方に位置することになり、貯油室33内の潤滑油は、ピストンロッド3とシール23との摺動部34の潤滑を維持しつづけ、さらに、ピストンロッド3と軸受26との間の摺動部をも同様に潤滑し続ける。
【0048】
なお、ボトム部材21の流路30の途中に逆止弁31が設けられており、この逆止弁31によって貯油室33側へ気体の逆流を防止できるため、流路28の途中には、凹部27から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する逆止弁を設けていないが、伸側室R1から凹部27への気体の逆流を確実に防止するためこれを設けておくようにしてもよい。
【0049】
このように、緩衝器D1が振動を繰り返しても、貯油室33内の潤滑油は、ピストンロッド3とシール23との摺動部34およびピストンロッド3と軸受26との間の摺動部の潤滑を維持しつづけることになり、また、振動によって潤滑油が伸側室R1と圧側室R2とを循環してシリンダ1とピストン2と間の摺動部37をも潤滑し続けるので、正立型に形成された緩衝器D1の円滑な振動作動が保証されて緩衝器D1の信頼性が向上する。
【0050】
また、本実施の形態における緩衝器D1では、ピストンロッド3の摺動部34に臨む貯油室33を設けて油面35を上記摺動部34の最下端より上方に位置させることで、上記摺動部34およびピストンロッド3と軸受26との間の摺動部の確実な潤滑が可能となるので、構造が複雑となることが無く、大幅なコスト上昇を伴わずに緩衝器を正立型とすることができる。
【0051】
さらに、上記したようにピストンロッド3の摺動部34およびピストンロッド3と軸受26との間の摺動部が確実に潤滑されるから、この点でも、緩衝器D1の円滑な振動作動が保証されて緩衝器D1の信頼性が向上するとともに、シール23の耐磨耗性が向上することから緩衝器D1の密封性も向上することになる。
【0052】
なお、緩衝器D1が、ピストンロッド3が下方に配置される倒立型に設定される場合には、潤滑油をシリンダ1の上方へ循環させる必要が無いので、上記した潤滑油の循環に必要な各部の設置を要しない。
【0053】
つづいて、上述のように構成された緩衝器D1の作動について説明する。まず、緩衝器D1におけるピストン2がシリンダ1に対して下方へ移動を継続する圧縮作動時には、切換弁12が図2に示す圧側ポジション14を採り、一方のバイパス路8のみが開放される。そして、この圧縮作動時には、ピストン2の下方への移動によって圧側室R2が圧縮され、伸側室R1が膨張させられるので、圧側室R2内の圧力が高まり、圧側室R2内の作動気体は通路5を通過して伸側室R1内に移動しようとする。
【0054】
このように、圧側室R2は圧縮されて圧側室R2内では圧力が上昇するので、気体は、通路5を閉塞しているリーフバルブ7を押し開いて伸側室R1へ移動することになり、緩衝器D1は所定の減衰力を発生する。また、一方側逆止弁10は、圧側室R2内の圧力の方が伸側室R1内の圧力より高くなっているため、開かず、切換弁12が一方のバイパス路8を開放状態に維持しても、一方のバイパス路8による伸側室R1と圧側室R2の連通を断つことになる。
【0055】
つづいて、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向が逆転してピストン2がシリンダ1に対して上方に移動するようになると、今度は伸側室R1が圧縮されて、圧側室R2が膨張させられるので、伸側室R1内の圧力が高まり、伸側室R1内の作動気体は通路4を通過して圧側室R2内に移動しようとする。これに加えて、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向が切換るので、切換弁12が図2に示した状態から図3に示す伸側ポジション15に切換り、今度は、他方のバイパス路9をのみを開放するようになる。
【0056】
ここで、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向が図中下方から上方に切換った直後には、圧側室R2内の圧力が未だ伸側室R1の圧力を上回っており、切換弁12の切換りによって開放される他方のバイパス路9における他方側逆止弁11が開いて、他方のバイパス路9は通路5を迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通させる。
【0057】
そして、他方のバイパス路9が開放されている間、気体は、通路5に比較して気体流れに抵抗を与えない他方のバイパス路9を優先的に通過して、圧側室R2から伸側室R1へ移動することになり、蓄圧された圧側室R2内の圧力を伸側室R1へ速やかに逃がし、圧側室R2内の圧力の速やかな下降と伸側室R1内の圧力の速やかな上昇を実現し、振動速度変化に対して伸側室R1と圧側室R2の圧力変化が位相遅れとなってしまうことを抑制する。
【0058】
また、圧側室R2内の圧力が充分下降して伸側室R1の圧力との間の差が小さくなると、他方側逆止弁11を開放状態に維持できなくなって、他方側逆止弁11が他方のバイパス路9を閉じることになり、緩衝器D1の伸長作動時における伸側室R1から圧側室R2への移動は通路4のみを介して行われるようになって、気体は、通路4を閉塞しているリーフバルブ6を押し開いて圧側室R2へ移動することになり、緩衝器D1は所定の減衰力を発生する。
【0059】
なお、この伸長作動時には、切換弁12は伸側ポジション15を維持し続けて、他方のバイパス路9を開放した状態に維持するが、ピストン2の移動方向が圧縮作動から伸長作動に切換った直後の他方側逆止弁11の作動によって圧側室R2を減圧したのちは、他方側逆止弁11は閉じたままとなって、その後の緩衝器D1の伸長作動に対しては他方のバイパス路9は閉塞状態に維持される。ちなみに、一方のバイパス路8は切換弁12によって閉塞されているのでこの圧縮作動時には何ら影響を与えない。
【0060】
引き続き、この状態から、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向が再度逆転してピストン2が図3中下方へ移動するようになると、切換弁12が図3に示した状態から図2に示す圧側ポジション14に再度切換り、今度は、一方のバイパス路8をのみを開放するようになる。
【0061】
そして、このピストン2の移動方向の切換りの直後には、それまで圧縮されていた伸側室R1内の圧力が未だ圧側室R2の圧力を上回っており、切換弁12の切換りによって開放される一方のバイパス路8における一方側逆止弁10が開いて、一方のバイパス路8は通路4を迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通させる。
【0062】
このように、一方のバイパス路8が開放されている間、気体は、通路4に比較して気体流れに抵抗を与えない一方のバイパス路8を優先的に通過して、伸側室R1から圧側室R2へ移動することになり、蓄圧された伸側室R1内の圧力を圧側室R2へ速やかに逃がし、伸側室R1内の圧力の速やかな下降と圧側室R2内の圧力の速やかな上昇を実現し、振動速度変化に対して圧側室R2と伸側室R1の圧力変化が位相遅れとなってしまうことを抑制する。
【0063】
また、伸側室R1内の圧力が充分下降して圧側室R2の圧力との間の差が小さくなると、一方側逆止弁10を開放状態に維持できなくなって、一方側逆止弁10が一方のバイパス路8を閉じることになり、緩衝器D1の圧縮作動時における圧側室R2から伸側室R1への移動は通路5のみを介して行われるようになって、気体は、通路5を閉塞しているリーフバルブ7を押し開いて伸側室R1へ移動することになり、緩衝器D1は所定の減衰力を発生する。
【0064】
なお、この圧縮作動時には、上述したように、切換弁12は圧側ポジション14を維持し続けて、一方のバイパス路8を開放した状態に維持するが、ピストン2の移動方向が伸長作動から圧縮作動に切換った直後の一方側逆止弁10の作動によって伸側室R1を減圧したのちは、一方側逆止弁10は閉じたままとなって、その後の緩衝器D1の圧縮作動に対しては一方のバイパス路8は閉塞状態に維持される。ちなみに、他方のバイパス路9は切換弁12によって閉塞されているのでこの圧縮作動時には何ら影響を与えない。
【0065】
したがって、この緩衝器D1によれば、図4に示すように、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向の切換りに際して、伸側室R1あるいは圧側室R2のうちそれまで圧縮されていた室内の圧力を膨張されていた室内へ逃がし、今度は圧縮されることになる膨張側の室内の速やかなる圧力上昇と膨張されることになる圧縮側の室内の速やかなる圧力減少を促すことができるので、伸側室R1と圧側室R2の差圧変化の振動速度の変化に対する反応が早まる。
【0066】
つまり、この緩衝器D1にあっては、緩衝器D1における振動速度変化に対する伸側室R1および圧側室R2の圧力変化の位相遅れを緩和することができるので、緩衝器D1の振動減衰性を向上することができ、車両における乗心地を飛躍的に向上することが可能であり、特に、高周波数振動時における速度に対する発生減衰力のヒステリシスを低減することができる。つまり、本実施の形態の緩衝器D1によれば、従来の緩衝器のように速度減衰力特性に大きなヒステリシスを持ってしまい振動減衰性が悪化してしまうといった不具合を解消することができる。
【0067】
また、切換弁12は、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向の切換時のみに各バイパス路8,9を開放するのではなく、圧縮作動時には、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する一方側逆止弁10が設けられる一方のバイパス路8を開放し続け、伸長作動時には、圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する他方側逆止弁11が設けられる他方のバイパス路9を開放し続けるので、伸側室R1あるいは圧側室R2のうち、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向の切換りによって圧縮されることになる膨張側の室内の圧力を確実に上昇させ、膨張されることになる圧縮側の室内の圧力を確実に減少させることができる。
【0068】
なお、緩衝器D1の圧縮作動時において、圧側室R2内に封入された気体がピストン2に設けた通路5を通過して伸側室R1に流入することから明らかなように、流路30、循環通路25、流路28および流路29の少なくとも一つ以上は、気体および油の流れにリーフバルブ7より大きな抵抗を与えるが、この抵抗は圧側室R2から流路30、循環通路25、流路28および流路29を介して伸側室R1へ至る間に弁を設けて与えるようにしてもよいし、圧側室R2から流路30、循環通路25、流路28および流路29を介して伸側室R1へ至る間の管路抵抗で与えてもよく、具体的にはたとえば、逆止弁31をリーフバルブとしたり、循環通路25の流路面積を極小さくしたりするようにしてもよい。
【0069】
また、上記したところでは、ピストン2に通路4,5を設けているが、シリンダ1の外方に通路を設けて、当該通路に減衰力発生要素を設けるようにしてもよい。
【0070】
つづいて、切換弁12の具体的な構成について説明する。この具体的な切換弁12は、図5に示すように、筒状の切換弁本体40と、切換弁本体40の一端たる図5中下端に連なる環状の摺接部材41とを備えて構成されている。
【0071】
切換弁本体40は、ピストンロッド3に固定されるハウジングたるピストン2に設けた弁孔2a内に摺動自在に挿入されている。なお、この緩衝器D1について、図5および図6を参照しながら説明するが、これら図5、6にあっては、通路4,5について記載すると図が複雑になるため、これら通路4,5の図示を省略している。
【0072】
また、ピストン2の弁孔2aの底部には、ピストンロッド3の挿通を許容する挿通孔2bが設けられており、ピストン2は、弁孔2a内に挿通されるピストンロッド3の外周に装着固定されるパイプ42とピストンロッド3に設けた段部3aとで挟持されてピストンロッド3に固定される。
【0073】
詳しくは、ピストンロッド3には、図5中上から順に、リーフバルブ7、ピストン2、パイプ42、ワッシャ50が装着され、図中最下端に螺着されるナット51によって、これらリーフバルブ7、ピストン2、パイプ42およびワッシャ50が組み付けられる。
【0074】
なお、図5中図示しない通路4の下端を閉塞するリーフバルブ6は、ピストン2の下端に設けたソケット2cの外周に固定されている。
【0075】
パイプ42は、上下に分割されて上方パイプ43と下方パイプ44とを備え、上方パイプ43は、図5中下端が小径に設定されて小径部43aが形成されており、当該小径部43aの上端外周には他方の環状弁座として機能する樹脂リング45が装着され、下方パイプ44は、図5中上端が小径に設定されて小径部44aが形成されており、当該小径部44aの下端外周には一方の環状弁座として機能する樹脂リング46が装着されている。なお、これら上方パイプ43および下方パイプ44の内周には、シール部材47,48が装着されており、上方パイプ43とピストンロッド3とピストン2の間および下方パイプ44とピストンロッド3の間がそれぞれシールされている。なお、ワッシャ50を省略して、ナット51で直接にパイプ42を固定することも可能であるが、シール部材48が下方パイプ44の下端内周に装着されている関係で、ピストンロッド3のナット51が螺着される螺子部にシール部材48が干渉することを防止するべく、ワッシャ50が設けられている。シール部材48とピストンロッド3の螺子部との干渉を避けるほかの方策として、下方パイプ44の下端を避けてシール部材48を装着することも可能ではあるが、シール部材47は、上述のように、それ単体で、上方パイプ43とピストンロッド3とピストン2の間をシールすることができるよう上方パイプ43に上端内周に装着されるため、シール部材47の上方パイプ43に対する装着位置はそのままとするほうが好ましい。また、パイプ42が上方パイプ43と下方パイプ44に分割されずに一体とされる場合、切換弁本体40の凸部40cが環状弁座としての樹脂リング45,46間に入り込む関係上、組立ができなくなるため、パイプ42が上方パイプ43と下方パイプ44に分割されており、これら上方パイプ43と下方パイプ44の形状を同一にしておく方が製造コスト面で有利となる。ゆえに、下方パイプ44の下端内周にシール部材48を装着する構成を採用することで、上方パイプ43と下方パイプ44の形状を同一にでき、一つのシール部材47によって上方パイプ43とピストンロッド3とピストン2の間をシールすることができ、コスト面で有利となることから、ワッシャ50を設ける意義があるのである。
【0076】
戻って、切換弁12における切換弁本体40は、上方パイプ43および下方パイプ44に摺接することが可能なように、内周の上下が小径に設定されて二つの摺接部40a,40bが設けられるとともに、これら摺接部40a,40bの間に更に小径に設定される凸部40cが形成されている。この凸部40cの内径は、樹脂リング45,46の外形より小径に設定され、さらに、凸部40cの上端と下端はテーパ面とされており、当該凸部40cの上端で他方の弁体52が形成されるとともに凸部40cの下端で一方の弁体53が形成されている。
【0077】
そして、上記切換弁本体40は、図5に示すように、他方の弁体52を他方の環状弁座である樹脂リング45の下端外縁に着座させる状態では、一方の弁体53が一方の環状弁座である樹脂リング46の上端外縁から離座して一方の弁体53と樹脂リング46との間に隙間ができるようになっている。反対に、切換弁本体40が、図5に示す状態から、下方へ移動すると、図6に示すように、一方の弁体53を一方の環状弁座である樹脂リング46の上端外縁に着座させる状態では、他方の弁体52が他方の環状弁座である樹脂リング45の下端外縁から離座して他方の弁体52と樹脂リング45との間に隙間ができるようになっている。
【0078】
このように、切換弁12は、一方の弁体53と環状弁座でなる一方のポペット弁と他方の弁体52と環状弁座でなる他方のポペット弁とを備え、切換弁本体40の上下移動に応じて、一方のポペット弁を開放して他方のポペット弁を閉じる圧側ポジションと、他方のポペット弁を開放して一方のポペット弁を閉じる伸側ポジションとに切換るようになっている。また、上記したところから理解できるように、切換弁本体40は、凸部40cの樹脂リング45,46への当接によって上下への移動が規制されるとともに、弁孔2aからの脱落も同時に防止されている。
【0079】
また、切換弁本体40の上方側の摺動部40aと凸部40cとの間には、切換弁本体40の内外を連通するポート40dが、下方側の摺動部40bと凸部40cとの間には、切換弁本体40の内外を連通するポート40eが、切換弁本体40の外周と凸部40cの内周とを連通するポート40fがそれぞれ設けられている。
【0080】
そして、ポート40dは、他方のバイパス路9の伸側室R1側に接続され、ポート40eは、一方のバイパス路8の伸側室R1側に接続され、ポート40fは、流路17に接続され、これらポート40d,40e,40fは、切換弁本体40が上述のように圧側ポジションと伸側ポジションに切換動作しても、それぞれ対応する他方のバイパス路9、一方のバイパス路8および流路17への接続が保たれるようになっており、また、切換弁本体40が弁孔2aに対して円周方向に回転しても上記接続を保つため、切換弁本体40の外周であって各ポート40d,40e,40fの出口端には符示しない環状溝が設けられている。
【0081】
また、切換弁本体40の下端に連結される摺接部材41は、ナット51のピストンロッド3への螺着作業を許容すべく環状とされており、その外周には、リング41aが装着され、また、摺接部材41とピストン2とで仕切られる空間Aを圧側室R2へ連通する通孔41bが設けられている。
【0082】
なお、流路17は、分岐流路24を介して弁孔2aの底部に通じており、この具体的な切換弁12にあっても、圧側室R2内の圧力が作用する上下の受圧面が同一とされて、切換弁12の動きに圧側室R2の圧力が影響を与えないようになっている。
【0083】
つづき、一方のバイパス路8の途中であって切換弁12より伸側室R1側には、環状の弁座10aが設けられ、当該弁座10aにバネ10bで附勢されて弁座10aに着座するポペット型の弁体10cが収容されており、これら弁座10a、バネ10bおよび弁体10cで、伸側室R1から圧側室R2へ向かう流れのみを許容する一方側逆止弁10を形成している。また、他方のバイパス路9の途中であって切換弁12より伸側室R1側には、環状の弁座11aが設けられ、当該弁座11aにバネ11bで附勢されて弁座11aに着座するポペット型の弁体11cが収容されており、これら弁座11a、バネ11bおよび弁体11cで、圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れのみを許容する他方側逆止弁11を形成している。
【0084】
具体的な切換弁12は上述のように構成され、この切換弁12にあっても、上述したところと同様に、圧縮作動時では圧側ポジションを維持し続け、伸長作動時では伸側ポジションを維持し続ける。そして、一方側逆止弁10は緩衝器D1の作動が伸長作動から圧縮作動に切換った直後に開放動作し、他方側逆止弁11は緩衝器D1の作動が圧縮作動から伸長作動に切換った直後に開放動作する。
【0085】
したがって、この具体的な切換弁12を備えた緩衝器D1にあっても、上記したところと同様に、切換弁12、一方側逆止弁10および他方側逆止弁11の作動により、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向の切換りに際して、伸側室R1あるいは圧側室R2のうちそれまで圧縮されていた室内の圧力を膨張されていた室内へ逃がし、今度は圧縮されることになる膨張側の室内の速やかなる圧力上昇と膨張されることになる圧縮側の室内の速やかなる圧力減少を促すことができるので、伸側室R1と圧側室R2の差圧変化の振動速度の変化に対する反応が早まる。
【0086】
つまり、この図5に示した緩衝器D1にあっても、緩衝器D1における振動速度変化に対する伸側室R1および圧側室R2の圧力変化の位相遅れを緩和することができるので、緩衝器D1の振動減衰性を向上することができ、車両における乗心地を飛躍的に向上することが可能であり、特に、高周波数振動時における速度に対する発生減衰力のヒステリシスを低減することができる。つまり、本実施の形態の緩衝器D1によれば、従来の緩衝器のように速度減衰力特性に大きなヒステリシスを持ってしまい振動減衰性が悪化してしまうといった不具合を解消することができる。
【0087】
また、切換弁12、一方側逆止弁10および他方側逆止弁11は、ともにポペット弁とされているので、緩衝器D1の作動流体が気体であっても、閉塞時に気体の漏洩を確実に防止できるので、切換弁12、一方側逆止弁10および他方側逆止弁11が各バイパス路8,9を閉塞していても気体が漏れて緩衝器D1の発生減衰力が低下してしまうという虞が無い。なお、この実施の形態の場合、切換弁本体40の凸部40cの上下端面をテーパ面として弁体52,53を形成しているが、反対に、凸部40cの上下端面を水平面としておき、上方パイプ43および下方パイプ44側の環状弁座をテーパ状としてポペット弁を構成するようにしてもよい。
【0088】
さらに、切換弁12は、圧縮作動時に一方のバイパス路8を開放して他方のバイパス路9を閉塞しつづけ、伸長作動時に一方のバイパス路8を閉塞して他方のバイパス路9を開放しつづけるようになっており、緩衝器D1の伸縮方向の切換わり時に瞬間的にバイパス路を開放する構成を採用していないから、切換弁12の上下方向へのストローク量を極めて小さくすることができ、切換弁12のみならずハウジングをも小型にすることができる。
【0089】
また、切換弁12は、一方のバイパス路8の途中に設けた一方の環状弁座に離着座する一方の弁体52とでなる一方のポペット弁と、他方のバイパス路9との途中に設けた環状弁座に離着座する他方の弁体53とでなる他方のポペット弁とを備えて構成されており、切換弁12のストローク量を極めて小さくすることができるので、緩衝器D1が小振幅しか振動せずとも、ヒステリシスを低減できるという上記作用効果を享受することができる。
【0090】
さらに、ハウジング、この場合にあってはピストン2が、切換弁本体40を収容するとともに底を有する弁孔2aを備え、弁孔2a内を貫くピストンロッド3の外周に固定されるパイプ42によってピストンロッド3に固定され、さらに、パイプ42の外周に一方および他方の環状弁座を設けて、切換弁12が内周に一方の弁体52と他方の弁体53を備えた筒状の切換弁本体40と、切換弁本体40の一端に連なる環状の摺接部材41とを備えているので、切換弁12およびハウジングをピストンロッド3に容易に組み付けることができる。また、ピストンロッド3周りに切換弁12を配置することができ、弁孔2aが形成されるハウジングの大型化を招くことがないので、緩衝器D1の外径の無用な大型化を阻止できる。
【0091】
そしてさらに、環状弁座として樹脂リング45,46を用いているので、切換弁12における弁体52,53が環状弁座に着座する際の打音を小さくすることができるとともに、密閉性も向上するが、樹脂リング45,46を廃して上方パイプ43と下方パイプ44の外周に形成された段部を直接環状弁座として機能させるようにしてもよい。
【0092】
最後に、図7に示した他の実施の形態における緩衝器D2について説明する。この緩衝器D2が上述した緩衝器D1と異なるのは、ピストン2に設けた弁孔2aがピストン2の図7中側方から開口して、切換弁60がいわゆる横置きに設定され、また、切換弁12における摺接部材62がピストン2の外周に装着されている点である。
【0093】
なお、緩衝器D2の他の構成は、上述の緩衝器D1の構成と同様であるので、緩衝器D2において緩衝器D1と同様の構成部材については説明が重複するので、同じ符号を付するのみとしてその詳しい説明を省略することとする。また、この緩衝器D2について、図7および図8を参照しながら説明するが、図7,8では図が複雑になるため、これら通路4,5の図示を省略している。
【0094】
この実施の形態における切換弁60は、ピストン2の側方から開口して一方のバイパス路8および他方のバイパス路9に交差する弁孔2a内に摺動自在に挿入される切換弁本体61と、切換弁本体61の一端と弁孔2aの底部との間に介装されて切換弁本体61を弁孔2a内から突出させる方向へ附勢するバネ63と、ピストン2の外周に軸方向へ移動可能に装着される筒状の摺接部材62とを備えて構成されている。なお、この実施の形態にあっても、一方のバイパス路8および他方のバイパス路9の切換弁60より圧側室R2側が一つの流路17に集約されている。
【0095】
切換弁本体61は、一方のバイパス路8を開放するとともに他方のバイパス路9を閉塞する圧側ポジション61aと、他方のバイパス路9を開放するとともに一方のバイパス路8を閉塞する伸側ポジション61bとを備え、図7中左端となる他端に設けた操作軸61cを摺接部材62の内周に当接させている。
【0096】
摺接部材62は、内周に凹部62aを備えており、当該凹部62aは、下方へ向かうほど内径が小さくなるようなテーパ面を備え、当該テーパ面が切換弁本体61の図7中左端に当接している。また、摺接部材62の内周であって凹部62aより圧側室R2側とピストン2の外周との間にはシール部材64が装着されており、ピストン2の外周側を介して伸側室R1と圧側室R2とが連通されてしまうことが無いようになっている。
【0097】
また、ピストン2の上下外周には、摺接部材62が衝合可能な鍔2d,2eが設けられており、これら鍔2d,2eによって摺接部材62の軸方向の移動範囲の規制とピストン2からの脱落を防止している。
【0098】
また、摺接部材62の外周には、シリンダ1の内周に摺接するリング65が装着され、摺接部材62とシリンダ1との間の摩擦抵抗は、摺接部材とピストン2との間の摩擦抵抗より大きく設定されて、摺接部材62は、ピストン2の鍔2d,2eに衝合する前ではピストン2のシリンダ1に対する変位に追随しないようになっている。
【0099】
なお、摺接部材62の上端内周には、切欠62bが設けられており、摺接部材62とピストン2との間に伸側室R1内の圧力が導入されるようになっており、また、弁孔2aの底部は流路66によって伸側室R1へ連通され、切換弁本体61の両端に伸側室R1の圧力が作用するので、伸側室R1の圧力が切換弁60の作動に影響を与えないようになっている。
【0100】
そして、ピストン2がシリンダ1に対して上方へ移動する伸長作動時には、図7に示すように、摺接部材62がピストン2の下方の鍔2eに当接するまでは、ピストン2の上記上方移動に追随せず、ピストン2がそれ以上に上方へ移動すると、摺接部材62が鍔2eに当接した状態でピストン2とともに上方へ移動する。そして、このとき、切換弁本体61はバネ63に押圧されて、操作軸61cが摺接部材62の凹部62aの最深部側に配され、切換弁60は、他方のバイパス路9のみを連通させる伸側ポジション61bを採ることになる。なお、切換弁本体61の摺接部材62の内周の凹部62aに当接する操作軸61cの左端は、彎曲面を備えており、凹部62a上を滑りやすくなっている。
【0101】
反対に、緩衝器D2の伸縮方向が逆転して、ピストン2がシリンダ1に対して下方へ移動する圧縮作動時には、摺接部材62がピストン2の上方の鍔2dに当接するまでは、ピストン2の上記下方移動に追随せず、ピストン2がそれ以上に下方へ移動すると、図7に示す状態から図8に示す状態へ変遷し、摺接部材62が鍔2dに当接した状態でピストン2とともに下方へ移動する。そして、切換弁本体61は、摺接部材62のピストン2に対する変位により、テーパ面状の凹部62aによって操作軸61cを介しバネ63の附勢力に抗して右方へ押圧され、操作軸61cが摺接部材62の凹部62aの最浅部側に配され、切換弁60は、一方のバイパス路8のみを連通させる圧側ポジション61aに切換る。なお、切換弁本体61の左端を直接に凹部62aに当接しても、切換弁60を切換動作させることができるので、操作軸61cを廃止してもよい。
【0102】
この緩衝器D2における切換弁60にあっても、上述した各実施の形態と同様に、圧縮作動時では圧側ポジション61aを維持し続け、伸長作動時では伸側ポジション61bを維持し続ける。そして、一方側逆止弁10は緩衝器D2の作動が伸長作動から圧縮作動に切換った直後に開放動作し、他方側逆止弁11は緩衝器D2の作動が圧縮作動から伸長作動に切換った直後に開放動作する。
【0103】
したがって、この緩衝器D2にあっても、上記したところと同様に、切換弁60、一方側逆止弁10および他方側逆止弁11の作動により、ピストン2のシリンダ1に対する移動方向の切換りに際して、伸側室R1あるいは圧側室R2のうちそれまで圧縮されていた室内の圧力を膨張されていた室内へ逃がし、今度は圧縮されることになる膨張側の室内の速やかなる圧力上昇と膨張されることになる圧縮側の室内の速やかなる圧力減少を促すことができるので、伸側室R1と圧側室R2の差圧変化の振動速度の変化に対する反応が早まる。
【0104】
つまり、この図7に示した緩衝器D2にあっても、緩衝器D2における振動速度変化に対する伸側室R1および圧側室R2の圧力変化の位相遅れを緩和することができるので、緩衝器D2の振動減衰性を向上することができ、車両における乗心地を飛躍的に向上することが可能であり、特に、高周波数振動時における速度に対する発生減衰力のヒステリシスを低減することができる。つまり、本実施の形態の緩衝器D1によれば、従来の緩衝器のように速度減衰力特性に大きなヒステリシスを持ってしまい振動減衰性が悪化してしまうといった不具合を解消することができる。
【0105】
そして、この他の実施の形態の緩衝器D2にあっては、切換弁60を切換駆動する摺接部材62がピストン2の外周に装着されているので、切換弁60を含めたピストン部の図中上下方向となる軸方向の長さを長大化させることがなく、緩衝器D2のストローク長の確保が容易となる。
【0106】
なお、上述したところでは、緩衝器を空圧緩衝器として説明しているが、作動流体を油や他の液体としても、高周波振動に対しては速度減衰力特性にヒステリシスを持つようになるので、本発明を適用すれば当該ヒステリシスを低減できるので、本発明の作用効果が失われることは無い。
【0107】
また、上記した各実施の形態においては、バイパス路8,9がピストン2に設けられて、切換弁12,60がピストン2に設けた弁孔2aに対して移動してバイパス路8,9の連通と遮断を切換えるように構成されているので、緩衝器D1,D2のストローク長の確保が容易である利点があるが、ピストンロッド3にピストン2とは別途連結されるハウジングにバイパス路8,9と弁孔を設けるようにしてもよいし、また、シリンダ1外にバイパス路8,9と切換弁12,60を設けるようにしてもよい。
【0108】
そしてさらに、上記したところでは、減衰力発生要素としてリーフバルブ6,7を用いているが、減衰力発生要素は絞り弁等の他の減衰弁とされてもよい。
【0109】
また、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】一実施の形態における緩衝器の概略縦断面図である。
【図2】一実施の形態の緩衝器の圧縮作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。
【図3】一実施の形態の緩衝器の伸長作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。
【図4】一実施の形態における緩衝器の速度減衰力特性を示した図である。
【図5】圧縮作動時における一実施の形態の緩衝器の切換弁の具体的構成を示した図である。
【図6】伸長作動時における一実施の形態の緩衝器の切換弁の具体的構成を示した図である。
【図7】他の実施の形態の緩衝器の伸長作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。
【図8】他の実施の形態の緩衝器の圧縮作動時におけるピストン部の概略縦断面図である。
【図9】従来の緩衝器の速度減衰力特性を示した図である。
【符号の説明】
【0111】
A 空間
D1,D2 緩衝器
R1 伸側室
R2 圧側室
1 シリンダ
2 ハウジングたるピストン
2a ピストンにおける弁孔
2b ピストンにおける挿通孔
2c ピストンにおけるソケット
2d,2e 鍔
3 ピストンロッド
4,5 通路
6,7 減衰力発生要素たるリーフバルブ
8 一方のバイパス路
9 他方のバイパス路
10 一方側逆止弁
10a 一方側逆止弁における弁座
10b 一方側逆止弁におけるバネ
10c 一方側逆止弁における弁体
11 他方側逆止弁
11a 他方側逆止弁における弁座
11b 他方側逆止弁におけるバネ
11c 他方側逆止弁における弁体
12,60 切換弁
13,40,61 切換弁本体
14,61a 圧側ポジション
15,61b 伸側ポジション
16,41,62 摺接部材
16a,41a,65 リング
16b,41b 通孔
17,28,29,30,66 流路
18 軸
19 筒
20 ヘッド部材
21 ボトム部材
22 外筒
23 シール
24 分岐通路
25 循環通路
26 ヘッド部材における軸受
27 ヘッド部材における凹部
27a 凹部における側壁部
28a,29a 流路における開口端
31 逆止弁
32 封止部材
33 貯油室
34 ピストンロッドとシールとの摺動部
35,36 油面
37 シリンダとピストンと間の摺動部
40a,40b 切換弁本体における摺接部
40c 切換弁本体における凸部
40d,40e,40f 切換弁本体におけるポート
42 パイプ
43 上方パイプ
43a 上方パイプにおける小径部
44 下方パイプ
44a 下方パイプにおける小径部
45,46 樹脂リング
47,48,64 シール部材
50 ワッシャ
51 ナット
52 他方の弁体
53 一方の弁体
61c 操作軸
62a 摺接部材における凹部
63 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、伸側室と圧側とを連通する通路と、通路の途中に設けた減衰力発生要素とを備えた緩衝器において、通路を迂回し伸側室と圧側室とを連通する二つのバイパス路と、一方のバイパス路の途中に設けた伸側室から圧側室へ向かう流れのみを許容する一方側逆止弁と、他方のバイパス路の途中に設けた圧側室から伸側室へ向かう流れのみを許容する他方側逆止弁と、圧縮作動時に一方のバイパス路を開放して他方のバイパス路を閉塞する圧側ポジションと伸長作動時に一方のバイパス路を閉塞して他方のバイパス路を開放する伸側ポジションとを有する切換弁と、を備えたことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
一方側逆止弁および他方側逆止弁はともにポペット弁とされ、切換弁は、一方のバイパス路の途中に設けた一方の環状弁座に離着座する一方の弁体とでなる一方のポペット弁と、他方のバイパス路との途中に設けた環状弁座に離着座する他方の弁体とでなる他方のポペット弁とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
切換弁は、ピストンロッドに連結されるハウジング内に収容されるとともに圧側ポジションと伸側ポジションとを選択的に切換える切換弁本体と、シリンダの内周に摺接するとともにハウジングに対して軸方向に変位可能な摺接部材とを備え、ハウジングの摺接部材に対する変位で切換弁本体を圧側ポジションと伸側ポジションに切換動作させることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。
【請求項4】
ハウジングは、切換弁本体を収容するとともに底を有する弁孔を備え、弁孔内を貫くピストンロッドの外周に固定されるパイプによってピストンロッドに固定されてなり、パイプは、外周に一方および他方の環状弁座を備え、切換弁は、内周に一方の弁体と他方の弁体を備えた筒状の切換弁本体と、切換弁本体の一端に連なる環状の摺接部材とを備えてなることを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項5】
ハウジングは、切換弁本体を収容するとともに底を有する弁孔を備え、摺接部材は、筒状に形成されてハウジングの外周に軸方向に変位可能に装着されるとともに、内周側にテーパ面を備え、切換弁本体の一端と弁孔の底部との間にバネ要素を介装し、切換弁本体の他端をテーパ面に当接させてなることを特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項6】
一方および他方のバイパス路がハウジングに形成されるとともに、ハウジング内に一方側逆止弁および他方側逆止弁が収容されてなること特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−204085(P2009−204085A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47227(P2008−47227)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】