説明

脱穀装置

【課題】揺動選別棚上での被選別物の詰まりの発生を少なくして脱穀作業の能率を向上させると共に、被選別物中に含まれる穀粒が外部へ排出されるような収穫損失を少なくして選別精度を向上させる。
【解決手段】揺動選別棚(37)における揺動移送方向上手側から移送棚(37a)と第1シーブ群(37b)と第2シーブ群(37c)とを連続的に配置すると共に該第1シーブ群(37b)乃至第2シーブ群(37c)の下側に選別網(37e)を設ける。揺動選別棚(37)上の被選別物の量を検出する被選別物量検出手段(50)の検出結果に基づいて移送棚(37a)から第1シーブ群(37b)への連続性を断って該移送棚(37a)上の被選別物を第1シーブ(37b)上に引き継ぐことなく該被選別物を前記選別網(37e)上へ案内することができるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等に装備する脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に例示するように、コンバインに装備する脱穀装置として、扱胴を内装する扱室の下側に揺動選別棚を設け、該揺動選別棚の下側において被選別物の揺動移送方向上手側から主唐箕と一番移送螺旋と二番移送螺旋とを配置し、前記揺動選別棚における揺動移送方向上手側から移送棚とシーブ群とを連続的に配置すると共に該シーブ群の下側に選別網を設け、移送棚の下側から第1シーブと選別網との間へ送風する副唐箕を設けた構成のものが知られている。
【0003】
また、特許文献2に例示するように、揺動選別棚上の被選別物の量を検出する被選別物量検出手段を設け、該被選別物量検出手段の検出結果に基づいてシーブ群の開度を自動調節する技術も知られている。
【特許文献1】特開平7−255259号公報
【特許文献2】特開平7−274687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来の脱穀装置において、脱穀処理量の増加によって扱室から揺動選別棚上へ漏下する被選別物量が増大し、移送棚上からシーブ群上へ引き継がれる被選別物量が該シーブ群の隙間から漏下できないほどに増加した場合(シーブ群による漏下選別能力を超えてしまった場合)には、該シーブ群上において被選別物の詰まりが発生し、被選別物中に含まれる穀粒までもが藁屑と共に揺動選別棚の移送終端部から外部へ排出されて収穫損失を来したり、脱穀作業を続行することができなくなる問題が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上述の如き課題を解決するために、次のような技術的手段を講じる。
即ち、請求項1記載の発明は、扱胴(29)を内装する扱室(26)の下側に揺動選別棚(37)を設け、該揺動選別棚(37)の下側において被選別物の揺動移送方向上手側から主唐箕(33)と一番移送螺旋(34)と二番移送螺旋(36)とを配置した脱穀装置において、前記揺動選別棚(37)における揺動移送方向上手側から移送棚(37a)と第1シーブ群(37b)と第2シーブ群(37c)とを連続的に配置すると共に該第1シーブ群(37b)乃至第2シーブ群(37c)の下側に選別網(37e)を設け、前記揺動選別棚(37)上の被選別物の量を検出する被選別物量検出手段(50)を設けて、該被選別物量検出手段(50)の検出結果に基づいて前記移送棚(37a)から第1シーブ群(37b)への連続性を断って該移送棚(37a)上の被選別物を第1シーブ(37b)上に引き継ぐことなく該被選別物を前記選別網(37e)上へ案内することができるように構成したことを特徴とする脱穀装置としたものである。
【0006】
しかして、扱胴29によって脱粒された穀粒及び藁屑等は、扱室26から揺動選別棚37上へ漏下する。そして、この揺動選別棚37の移送棚37a上に漏下した被選別物は、この移送棚37aの移送作用によって下手側へ移送されて第1シーブ群37b上に引き継がれ、該第1シーブ群37bによって選別された後、第2シーブ群37c上へ引き継がれて選別される。
【0007】
このような脱穀作業において、被選別物量検出手段50によって揺動選別棚37上の被選別物量が所定の量を超えて増加したことが検出されると、例えば第1シーブ群37bが上昇回動するなどにより、移送棚37aから第1シーブ群37bへの連続性が断たれ、該移送棚37a上の被選別物は第1シーブ群37b上に引き継がれることなく、選別網37e上へ案内されて該選別網37eによって選別され、穀粒は一番移送螺旋34側に取り込まれる。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記移送棚(37a)の下側から第1シーブ(37b)と選別網(37e)との間へ送風する副唐箕(35)を設けると共に、該副唐箕(35)の送風量を前記被選別物量検出手段(50)の検出結果に基づいて増減させることができるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置としたものである。
【0009】
しかして、上述のように、被選別物量検出手段50によって揺動選別棚37上の被選別物量が所定の量を超えて増加したことが検出されると、例えば第1シーブ群37bが上昇回動するなどにより、移送棚37aから第1シーブ群37bへの連続性が断たれると共に副唐箕35の送風量が増加して該選別網37e上での被選別物の選別能力が高まり、該移送棚37a上の被選別物は第1シーブ群37b上に引き継がれることなく選別網37e上へ案内されて増加した副唐箕35からの選別風を受けながら該選別網37eによって選別され、穀粒は一番移送螺旋34側に取り込まれる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によると、脱穀処理量が増加して揺動選別棚37の選別能力を超えてしまった場合に、移送棚37a上の被選別物を第1シーブ群37b上に引き継がずに選別網37e上へ案内して選別することにより、揺動選別棚37上での被選別物の詰まりの発生を少なくして脱穀作業の能率を向上させることができると共に、被選別物中に含まれる穀粒が外部へ排出されるような収穫損失を少なくして選別精度を向上させることができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明によると、脱穀処理量が増加して揺動選別棚37の選別能力を超えてしまった場合に、移送棚37a上の被選別物を第1シーブ群37b上に引き継がずに選別網37e上へ案内して選別することにより、揺動選別棚37上での被選別物の詰まりの発生を少なくして脱穀作業の能率を向上させることができると共に、被選別物中に含まれる穀粒が外部へ排出されるような収穫損失を少なくして選別精度を向上させることができる。また、移送棚37a上の被選別物を第1シーブ群37b上に引き継がずに選別網37e上へ案内して選別する際に、副唐箕35からの選別風量が増加して該選別網37eによる選別能力が高まるため、該選別網37e上での被選別物の詰まりが発生しにくく、脱穀作業の能率を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明における脱穀装置の実施の形態を、自脱型コンバインに搭載した構成を例示して説明する。
図1から図4に示すように、コンバインは、機台1の下側に走行装置2を設け、該機台1の上側において脱穀装置3と穀粒貯留装置4とを左右に併設し、該脱穀装置3の前側に刈取装置5を配置し、前記穀粒貯留装置4の前側に操縦部6を配置して構成する。
【0013】
前記走行装置2は、機台1の左右両下面から外側下方へ向けて延設したフレームフット7,7の下端部に、左右の転輪フレーム8,8を取り付け、該転輪フレーム8,8に軸支した多数の転輪9,9と後端部の緊張輪10,10と走行ミッションケース11から駆動される左右の駆動輪12,12とにわたって無限軌道帯であるクローラ13,13を巻き掛けて構成する。
【0014】
前記刈取装置5は、機台1の前部に設置した刈取懸架台14の上部にアトフレーム15の後端部を上下回動自在に軸支し、該アトフレーム15の前端部に左右方向のギヤケース16を連結し、該ギヤケース16から前方へ分草フレーム17を延設し、該分草フレーム17の前端部に複数の分草体18を取り付け、該分草フレーム17における前記分草体18の後側に引起装置19の下部を固定し、該引起装置19の上部と前記ギヤケース16から立ち上げた引起伝動軸20の上端部とを連結し、前記分草フレーム17の後部下側に刈刃21を取り付け、該刈刃21の上側に掻込スターホイルを回転自在に配置し、該掻込スターホイルの上側から後方に向けて株元搬送チェンを架設し、該株元搬送チェンの後部に続いて穂先側供給搬送装置24と扱ぎ深さ調節機能を有する株元側供給搬送装置25とを上下に配置して構成する。
【0015】
図5、図6に示すように、前記脱穀装置3は、上側の扱室26と下側の選別室27とから構成する。即ち、前記扱室26には外側一側にフィードチェン28を配置し、該扱室26内には扱胴29と後述する二番移送螺旋から送られてくる処理物を再処理する二番処理胴30と該二番処理胴30と同軸で回転して前記扱胴29側から送られてくる脱粒物を排塵処理する排塵処理胴31とを軸架して設け、前記扱胴29の後側上部にフィードチェン28から脱穀済みの排藁を引き継いで機外へ搬送する排藁搬送チェン32を設け、該排藁搬送チェン32の下側に排塵ファン43を配置して構成する。また、前記選別室27は、前側から副唐箕44と主唐箕33と一番移送螺旋34と副唐箕35と二番移送螺旋36とを配置し、これらの上側に揺動選別棚37を揺動自在に設けて構成する。また、前記一番移送螺旋34から一番揚穀螺旋38を介して前記穀粒貯留装置4へ穀粒を投入するように構成し、前記二番移送螺旋36から二番還元螺旋39を介して前記二番処理胴30の始端部へ二番物を還元するように構成する。また、前記二番処理胴30の下周には、盲目板を設置し、該盲目板の前端部を開口させて、二番処理胴30によって処理されながら前方へ移送されてきた被処理物を、該開口部から揺動選別棚37の移送棚37a上に落下させる構成とする。また、前記排塵処理胴31を内装する排塵処理室43の前端部一側を前記扱室26の後端部一側に連通させて、扱室26内で発生した排塵物を排塵処理室43内へ引き継いで処理し、該排塵処理室43の後端部から揺動選別棚37の後端部ないし脱穀装置3外部へ排出するように構成する。また、前記排塵処理胴31の下側周囲には排塵処理網44(格子状の枠体でもよい。)を設置し、該排塵処理網44の下側に、還元螺旋胴45を駆動回転自在に設ける。これにより、前記排塵処理室43内で発生した被選別物のうち前記排塵処理網44から漏下するものは、還元螺旋胴45及び該還元螺旋胴45の下側外周に設けた受樋46に取り込まれて前方へ移送され、該受樋46の前端部にから揺動選別棚37の第1シーブ群37bの始端部上に供給される。
【0016】
尚、前記穀粒貯留装置4は、底面を谷状に形成し、該谷底部に底部搬送螺旋40を設け、該底部搬送螺旋40の終端部(穀粒貯留装置4の外部)に揚穀螺旋筒41を接続し、該揚穀螺旋筒41の上端部に排出螺旋筒42を上下回動自在に接続して穀粒排出装置を構成する。
【0017】
しかして、前記揺動選別棚37は、揺動移送方向上手側から移送棚37aと第1シーブ群37bと第2シーブ群37cと排藁ラック37dを連続的に配置すると共に該第1シーブ群37b乃至第2シーブ群37cの下側に選別網37eを設けて、前後及び上下に揺動駆動されるように構成する。前記第1シーブ群37b及び第2シーブ群37cのうち、少なくもと第2シーブ群37cの漏下間隔を変更自在に構成する。
【0018】
そして、前記第1シーブ群37bは9枚のシーブを一つのアッセンブリとして、後端部に設けた横軸37fを中心として前部側が上方回動するように揺動選別棚37の側壁に対して軸着して取り付ける。そして、該第1シーブ群37bを有するアッセンブリと一体の回動アーム37gを設け、該回動アーム37gを、脱穀装置3の前方に設けたシーブ用電動モータ47から操作アーム48および操作ワイヤ49を介して強制回動させられるように連繋する。これにより、シーブ用電動モータ47が駆動すると、前記第1シーブ群37bを有するアッセンブリが、横軸37fを中心として前部側が上昇回動する構成である。
【0019】
また、前記第2シーブ群37cの上側には、被選別物量検出手段として、該第2シーブ群37c上に堆積した被選別物の層厚を検出する層厚センサ50を設ける。該被選別物量検出手段は、該層厚センサに限らず、扱室26の扱網から漏下する漏下物の流量を検出するセンサなど、被選別物の量を検出できるものであれば種類を限定しない。
【0020】
また、前記副唐箕35の駆動を入り切りするクラッチを設けると共に、該クラッチを入り切り操作する副唐箕用電動モータ51を設ける。
そして、図7に示すように、コントローラ52に対して、その入力側に、自動制御入り切りスイッチ53と前記層厚センサ50とを接続する一方、その出力側に、前記シーブ用電動モータ47と副唐箕用電動モータ51とを接続する。
【0021】
以上の構成により、脱穀作業においては、扱胴29によって脱粒された穀粒及び藁屑等は、扱室26から揺動選別棚37上へ漏下する。そして、この揺動選別棚37の移送棚37a上に漏下した被選別物は、この移送棚37aの移送作用によって下手側へ移送されて第1シーブ群37b上に引き継がれ、該第1シーブ群37bによって選別された後、第2シーブ群37c上へ引き継がれて選別される。
【0022】
このような脱穀作業において、層厚センサ50によって揺動選別棚37上の被選別物量が所定の量を超えて増加したことが検出されると、コントローラ52からシーブ用電動モータ47へ出力がなされて、第1シーブ群37bが所定量だけ上昇回動して停止し、移送棚37aから第1シーブ群37bへの連続性が断たれると共に副唐箕35が起動して該選別網37e上での被選別物の選別能力が高まり、該移送棚37a上の被選別物は第1シーブ群37b上に引き継がれることなく選別網37e上へ案内されて副唐箕35からの選別風を受けながら該選別網37eによって選別され、穀粒は一番移送螺旋34側に取り込まれる。
【0023】
これにより、脱穀処理量が増加して揺動選別棚37の選別能力を超えてしまった場合に、移送棚37e上の被選別物を第1シーブ群37b上に引き継がずに選別網37e上へ案内して選別することにより、揺動選別棚37上での被選別物の詰まりの発生を少なくして脱穀作業の能率を向上させることができると共に、被選別物中に含まれる穀粒が外部へ排出されるような収穫損失を少なくして選別精度を向上させることができる。また、移送棚37e上の被選別物を第1シーブ群37b上に引き継がずに選別網37e上へ案内して選別する際に、副唐箕35からの選別風によって該選別網37eによる選別能力が高まるため、該選別網37e上での被選別物の詰まりが発生しにくく、脱穀作業の能率を更に向上させることができる。尚、前記副唐箕35は、クラッチによって駆動状態と停止状態とに切り換える構成のものであったが、これに限らず、該副唐箕35を変速装置によって無段階に変速できる構成とし、層厚センサ50の検出結果に応じて副唐箕35からの送風量を無段階に制御するように構成してもよい。また、副唐箕35の外気吸引口側にシャッターを設け、該シャッターの開度を前記層厚センサ50の検出結果に応じて無段階に調節するように構成してもよい。
【0024】
尚、図6に示すように、機台1に搭載したエンジン54の出力軸54aからベルトテンションクラッチ55を介して脱穀装置3側の入力軸3aに駆動力が入力され、これによって脱穀装置3の各部が連動して駆動される構成である。また、前記エンジン54の出力軸54aから静油圧式無段変速装置56のポンプ軸にベルト伝動し、該静油圧式無段変速装置56のモータ軸の出力を走行ミッションケース11に入力するように構成する。走行ミッションケース11に設ける入力軸11aとこの下手の刈取出力軸11bとの間に変速出力軸11cを設け、該変速出力軸11cからベルトテンションクラッチ11dを介して中間軸11eを駆動し、該中間軸11eからベルト伝動機構を介してフィードチェン28及び副唐箕35を分岐伝動する構成とする。即ち、前記ベルトテンションクラッチ11dが副唐箕35の駆動を入り切りするクラッチであり、該ベルトテンションクラッチ11dを前記副唐箕用電動モータ51によって入り切りさせる構成である。尚、前記副唐箕35への伝動上手側にワンウェイクラッチ11fを介装して、機体後進時に静油圧式無段変速装置56のモータ軸が逆転しても、副唐箕35が逆転しないように牽制している。また、前記刈取出力軸11bと該刈取出力軸11bの下手側の中間軸との間に副変速機構11gを構成し、該副変速機構11gの下手側に設けた左右のサイドクラッチ・サイドブレーキ機構11h,11hを介して左右のホイルスプロケット11i,11iを駆動するように構成する。
【0025】
また、前記コントローラ52の入力側に、機体の後進を検出できる車速センサ57を接続して、該車速センサ57によって機体の後進状態が検出されると、前記コントローラ52から副唐箕用電動モータ51及びシーブ用電動モータ47への出力ないし出力停止によって、副唐箕35の駆動を停止すると共に第1シーブ群37bを初期位置すなわち移送棚37aとの連続性を有する選別作業位置へ復帰させるように構成してもよい。即ち、後進走行時には刈取作業を中断しており、被選別物の量が減少している。このような状態では、副唐箕35の駆動を停止すると共に第1シーブ群37bを初期位置すなわち移送棚37aとの連続性を有する選別作業位置へ復帰させることにより、選別ロスが低減でき、選別精度を向上させることができる。
【0026】
また、図8に示すように、前記第1シーブ群37bを、第2移送棚37a2に代えて構成してもよい。これにより、移送棚37aの後側に第2移送棚37a2が連続的に配置され、層厚センサ50の検出結果に応じて、該第2移送棚37a2がシーブ用電動モータ47によって上昇回動する。また、機体後進時には、上記と同様、副唐箕35の駆動を停止すると共に第2移送棚37a2を初期位置すなわち移送棚37aとの連続性を有する移送作用位置へ復帰させることにより、選別ロスが低減でき、選別精度を向上させることができる。
【0027】
また、前記操縦部6の前側には、左右傾動操作によって左右のサイドクラッチ・サイドブレーキ機構11h,11hを作動させ、前後傾動操作によって刈取装置5を昇降させる操向レバー58を設ける。図9に示すように、該操向レバー58の把持部の上面には、前後に間隔をおいて刈取上げワンショットスイッチ58Uと刈取下げワンショットスイッチ58Dとを配置する。
【0028】
そして、図10に示すように、コントローラ59に対して、その入力側に、ワンショット移動量変更操作具59aと、機台1または地面に対する刈取装置5の高さを検出する刈取高さセンサ59bと、前記操向レバー58を前後傾動操作することによってONする刈取上げスイッチ59c及び刈取下げスイッチ59dと、前記刈取上げワンショットスイッチ58Uと、刈取下げワンショットスイッチ58Dと、車速センサ60とを接続する一方、コントローラ59の出力側に、刈取装置昇降用油圧シリンダ61を伸縮作動させるバルブを駆動する上げ比例ソレノイド62Uと下げ比例ソレノイド62Dとを接続する。前記取装置昇降用油圧シリンダ61を伸縮作動させる油圧回路は、オイルタンクからの作動油を吸引して吐出させる油圧ポンプ64の下手側に、2位置切換弁65を接続し、該2位置切換弁65の下手側の油路を上げ側の油路と下げ側の油路に分岐させ、該分岐後の両油路に、前記上げ比例ソレノイド62Uと下げ比例ソレノイド62Dとによって作動する上げ比例ソレノイドバルブ66U及び下げ比例ソレノイドバルブ66Dを夫々接続する。更に、該上げ比例ソレノイドバルブ66U及び下げ比例ソレノイドバルブ66Dの吐出側の油路を合流させ、ここに前記刈取装置昇降用油圧シリンダ61を接続する。
【0029】
以上の構成により、刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを1回押すことにより、コントローラ59から上げ比例ソレノイド62Uまたは下げ比例ソレノイド62Dへ、設定された短時間(例えば500msec)だけ出力がなされ、刈取装置昇降用油圧シリンダ61が微小ストロークだけ伸縮して停止する。これにより、刈取装置5が微少量だけ昇降して停止し、刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し続けても、前記の出力はなされず、停止したままとなるが、この刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを一旦離してから再度押すことにより、再び、コントローラ59から上げ比例ソレノイド62Uまたは下げ比例ソレノイド62Dへ、設定された短時間だけ出力がなされる。
【0030】
そして、この構成を前提として、図11に示すように、機台1または地面に対する刈取装置5の高さを検出する刈取高さセンサ59bの検出結果に応じて、前記刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合における、コントローラ59から上げ比例ソレノイド62Uまたは下げ比例ソレノイド62Dへの出力時間が変更されるように構成する。即ち、刈取装置5が高い位置にあるほど、刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合における、コントローラ59から上げ比例ソレノイド62Uまたは下げ比例ソレノイド62Dへの出力時間が長くなり、刈取装置5の昇降量が大きくなるように構成する。これにより、刈取装置5が刈取作業高さにある場合に、刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dの押し操作による刈取装置5の昇降量が小さくなり、刈高さを微妙に調節することができ、操作性が向上する。また、刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合に、刈取装置5が地面に突っ込んで破損することが少なくなる。
【0031】
また、図12に示すように、前記車速センサ60の検出結果に応じて、前記刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合における、コントローラ59から上げ比例ソレノイド62Uまたは下げ比例ソレノイド62Dへの出力時間が変更されるように構成してもよい。即ち、車速が上昇するほど、刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合における、コントローラ59から上げ比例ソレノイド62Uまたは下げ比例ソレノイド62Dへの出力時間が長くなり、刈取装置5の昇降量が大きくなるように構成する。これにより、車速が低速の状態では、刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dの押し操作による刈取装置5の昇降量が小さくなり、刈高さを微妙に調節することができ、操作性が向上する。また、刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合に、刈取装置5が地面に突っ込んで破損することが少なくなる。また、車速が高速の状態では刈取装置5を迅速に昇降操作でき、操作性が向上する。
【0032】
また、図13に示すように、操縦部6に設けたワンショット移動量変更操作具59aの操作位置に応じて、前記刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合における、コントローラ59から上げ比例ソレノイド62Uまたは下げ比例ソレノイド62Dへの出力時間が変更されるように構成する。これにより、刈取上げワンショットスイッチ58Uまたは刈取下げワンショットスイッチ58Dの押し操作による刈取装置5の昇降量を任意に変更でき、操作性が向上する。また、不慣れな操縦者であっても、刈取下げワンショットスイッチ58Dを押し操作した場合に、刈取装置5が地面に突っ込んで破損することが少なくなる。また、上級者においては、刈取装置5の昇降量を大きくして刈高さ調節を迅速に行なえるようにすることで、刈取作業の能率を向上させることができる。
【0033】
また、図14に示すように、図10の実施例のブロック回路を前提として、コントローラ59の入力側に、後進走行状態を判定することのできる後進検出センサ67をも接続し、該後進検出センサ67によって機体の後進を検出した状態では、刈取上げワンショットスイッチ58U及び刈取下げワンショットスイッチ58Dの押し操作による刈取装置5の昇降を牽制するように構成してもよい。これにより、機体後進時の操作性が向上する。
【0034】
また、図15に示すように、刈取装置5がクローラ13の接地面よりも下側まで下がった所謂マイナス刈りの範囲では、刈取上げワンショットスイッチ58U及び刈取下げワンショットスイッチ58Dの押し操作による刈取装置5の昇降量が変化しないように構成してもよい。また、刈取上げワンショットスイッチ58U及び刈取下げワンショットスイッチ58Dの押し操作によって刈取装置5が昇降する昇降量を最小に設定する。これにより、操作性が向上する。
【0035】
また、図16に示すように、刈取装置5における集中注油の構成において、洗浄用オイルタンク68aと潤滑用オイルタンク68bとを設け、各タンク夫々にオイルポンプ69a,69bを設け、切換バルブ70の操作によって株元搬送チェン71aと供給搬送チェン71bと引起しチェン71cと刈刃71dとへ、洗浄用オイルと潤滑用オイルとを選択して送油できるように構成するとよい。
【0036】
また、図17に示すように、刈取装置5における集中注油の構成において、洗浄用オイルタンク68aと潤滑用オイルタンク68bとを設け、切換バルブ70の切換操作によって、単一のオイルポンプ69によって刈取装置5の各部への共通の注油配管に送油できるように構成してもよい。即ち、複数のオイルタンク68a,68bにそれぞれ粘度の異なるオイルを充填しておき、切換バルブ70の切り換えにより、粘度の異なるオイルを同一の送油経路から刈取各部に注油することができる。尚、注油する際に、注油を受ける各部あ、予め泥や藁屑を除去していることが望ましい。泥や藁屑が付着したまま粘度の高いオイルを注油すると、摺動部に泥や藁屑が入り込み落下しないので、摺動部の耐久性が低下してしまうが、この構成によると、一方の洗浄用オイルタンク68aには粘度の低い洗浄オイルを入れておいて洗浄用とし利用し、他方の潤滑用オイルタンク68bには潤滑性の高いマシンオイルを入れておいて刈取各部へ注油することによって該刈取各部の耐久性を損なうことが少なくなり、また、単一のオイルポンプ69で各部共通の注油配管に送油する構成であるために、製造コストを低減することができる。
【0037】
尚、図18に示すように、前記洗浄用オイルタンク68aと潤滑用オイルタンク68bとを単一のタンクに形成して内部を隔壁で仕切った構成とすれば、より安価に提供することができる。
【0038】
また、図19に示すように、分離した洗浄用オイルタンク68aと潤滑用オイルタンク68b、および一体化した洗浄用オイルタンク68aと潤滑用オイルタンク68bとを並列に接続し、切換バルブ70から単一のオイルポンプ69を介し、更に注油を、株元搬送チェン71aと供給搬送チェン71bと引起しチェン71cとへ注油する方向と刈刃71dのみに注油する状態とに切り換える第2切換バルブ72を設けて構成してもよい。即ち、刈刃71dは地面に近く、他の刈取各部よりも泥等が付着しやすい。しかしながら、上記のように構成すれば、刈刃71dを注油前に洗浄して泥等を取り除くことができる。また、単一のオイルポンプ69によって構成できるため、製造コストを低減して安価に提供することができる。また、前記切換バルブ70と第2切換バルブ72との切換を連動させてもよい。
【0039】
また、図20に示すように、2つのオイルポンプ69a,69bを設けて、株元搬送チェン71aと供給搬送チェン71bと引起しチェン71cとへの注油と刈刃71dへの注油とを独立して行なえるように構成してもよい。
【0040】
また、図21に示すように、洗浄用オイルタンク68aからオイルポンプ69bを介し更に切換バルブ73を介して、潤滑用オイルタンク68bから刈刃71dへの注油経路に合流させるように構成してもよい。この場合、潤滑用オイルタンク68bからオイルポンプ69aを介して刈取各部へ至る送油経路と、オイルポンプ69bから切換バルブ73に至る送油経路とからパイロット圧を導き、このパイロット圧によって前記切換バルブ73が切り換わるように構成してもよい。これにより、注油作業の操作性が向上する。
【0041】
また、前記穀粒貯留装置4を、底部搬送螺旋41を内装した鉄板製の下部樋体7aと、該下部樋体7aの上に嵌合状態で載置する樹脂タンク7bとから構成し、上部の樹脂タンク7bのみを強制的に振動させて、貯留穀粒の密度を上げて該穀粒貯留装置4内の穀粒貯留量を増大させることができる。尚、前記下部樋体7aの上部内側面と樹脂タンク7bの下部外側面との間に弾性体75を介在させ、上部の樹脂タンク7bが振動しやすいように構成するとよい。
【0042】
また、前記樹脂タンク7bの上部側面の穀粒投入口部と一番揚穀螺旋38筒の吐出口38aとの間を、長孔を介して融通連結して、樹脂タンク7bの振動を安定させ、樹脂タンク7bの姿勢をも安定させることができる。
【0043】
また、前記下部樋体7aの一側部と樹脂タンク7bの一側との間を加振用油圧シリンダ76によって接続し、該加振用油圧シリンダ76の伸縮作動を反復して行なわせることにより、樹脂タンク7bが振動するように構成するものである。樹脂タンク7bの内側上端部に設置した満杯センサ74が穀粒の堆積を検出すると、前記加振用油圧シリンダ76が伸縮作動を開始するように構成する。尚、この樹脂タンク7bの振動は、刈取脱穀作業中に行わせ、穀粒排出作業時には停止させて、貯留穀粒の密度が上がらないように構成するとよい。
【0044】
また、前記下部樋体7aの底部に設ける底部搬送螺旋41の上側に設ける流し板77をエンジン54の駆動力によって往復揺動させるように構成してもよい。これにより、貯留穀粒を排出する際に、この流し板77を往復揺動させて、穀粒が底部搬送螺旋41側へ流下しないでブリッジする現象を少なくすることができ、穀粒の排出作業能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】コンバインの正面図。
【図2】コンバインの左側面図。
【図3】コンバインの右側面図。
【図4】コンバインの平面図。
【図5】脱穀装置の説明用側面図。
【図6】コンバインの主要部の説明用平面図。
【図7】制御用のブロック回路図。
【図8】脱穀装置の説明用側面図。
【図9】操向レバー部の側面図。
【図10】制御システム説明図。
【図11】刈高さと刈取部移動量(刈取装置の昇降量)との関係を示すグラフ。
【図12】車速と刈取部移動量(刈取装置の昇降量)との関係を示すグラフ。
【図13】ダイヤル(ワンショット移動量変更操作具)の操作位置と刈取部移動量(刈取装置の昇降量)との関係を示すグラフ。
【図14】制御システム説明図。
【図15】刈高さと刈取部移動量(刈取装置の昇降量)との関係を示すグラフ。
【図16】集中注油回路の説明図。
【図17】集中注油回路の説明図。
【図18】集中注油回路の説明図。
【図19】集中注油回路の説明図。
【図20】集中注油回路の説明図。
【図21】集中注油回路の説明図。
【図22】穀粒貯留装置の説明用正面図。
【符号の説明】
【0046】
26 室
29 胴
33 唐箕
34 番移送螺旋
35 副唐箕
36 番移送螺旋
37 動選別棚
37a 移送棚
37b 第1シーブ群
37c 第2シーブ群
37e 選別網
50 被選別物量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(29)を内装する扱室(26)の下側に揺動選別棚(37)を設け、該揺動選別棚(37)の下側において被選別物の揺動移送方向上手側から主唐箕(33)と一番移送螺旋(34)と二番移送螺旋(36)とを配置した脱穀装置において、前記揺動選別棚(37)における揺動移送方向上手側から移送棚(37a)と第1シーブ群(37b)と第2シーブ群(37c)とを連続的に配置すると共に該第1シーブ群(37b)乃至第2シーブ群(37c)の下側に選別網(37e)を設け、前記揺動選別棚(37)上の被選別物の量を検出する被選別物量検出手段(50)を設けて、該被選別物量検出手段(50)の検出結果に基づいて前記移送棚(37a)から第1シーブ群(37b)への連続性を断って該移送棚(37a)上の被選別物を第1シーブ(37b)上に引き継ぐことなく該被選別物を前記選別網(37e)上へ案内することができるように構成したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記移送棚(37a)の下側から第1シーブ(37b)と選別網(37e)との間へ送風する副唐箕(35)を設けると共に、該副唐箕(35)の送風量を前記被選別物量検出手段(50)の検出結果に基づいて増減させることができるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−86251(P2008−86251A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270228(P2006−270228)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】