脱穀部の拡散装置
【課題】脱穀部により脱穀された後の排藁の内部又は上部に含まれるささり粒を回収することが可能な脱穀部の拡散装置を提供するものである。
【解決手段】穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェン7と、フィードチェン7により搬送される穀稈を脱穀する扱胴8と、を具備するコンバイン1の脱穀部5内に設けられ、扱胴8によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置40であって、扱胴8の扱胴入力軸8bと水平方向に略直交する拡散装置入力軸40aを有し、拡散装置入力軸40aより放射状に延びる羽根体42・42・42・42・42・42を有する拡散胴41を具備するとともに、拡散胴41は、搬送される穀稈に対して羽根体42が搬送下流側から衝突する方向に回転する。
【解決手段】穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェン7と、フィードチェン7により搬送される穀稈を脱穀する扱胴8と、を具備するコンバイン1の脱穀部5内に設けられ、扱胴8によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置40であって、扱胴8の扱胴入力軸8bと水平方向に略直交する拡散装置入力軸40aを有し、拡散装置入力軸40aより放射状に延びる羽根体42・42・42・42・42・42を有する拡散胴41を具備するとともに、拡散胴41は、搬送される穀稈に対して羽根体42が搬送下流側から衝突する方向に回転する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェンと、該フィードチェンにより搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、を具備するコンバインの脱穀部内に設けられ、該扱胴によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀部において、扱室内に扱胴を回動自在に設け、該扱胴の外周面に複数の扱歯を植設して、回動する扱胴の外周面下側に沿わせて穀稈を搬送することにより、該穀稈を前記扱歯によって脱穀する構成が周知である。
しかし、上記の如き構成のコンバインの脱穀部において、穀稈を脱穀した扱歯が、穀粒を持ち回って、その後搬送されてくる穀稈上に乗る又は穀稈にささり、いわゆる「ささり粒」となって排藁と一緒に排出されて穀粒の回収率が低下する場合がある。
【0003】
係る問題点を鑑み、例えば、扱室内に扱胴を設け、該扱胴の終端部からの被処理物を受け入れて処理する処理胴を設けた排塵処理室を設け、前記扱室及び排塵処理室より漏下する被処理物を揺動選別棚にて揺動選別する脱穀装置において、前記排塵処理室終端部から落下してきた被処理物を受けて処理する排塵ラックを設けるにあたり、該排塵ラックを前記揺動選別棚と一体的に設けたこととした脱穀装置の技術は公知となっている(特許文献1参照)。
また、扱胴の扱口を形成する上下の扱口板と、両扱口板の間に、穀稈に対応して上下移動可能に支持され、かつ下方に向かって付勢され、該穀稈の間に入り込む「ささり粒」を除去するささり粒防止体と、を設けた脱穀装置において、前記ささり粒防止体を、最下降時に先端が下方側の扱口板の扱胴回転軌跡の近傍位置に当接又は近接するように設けたささり粒防止体の構成技術は公知となっている(特許文献2参照)。
【0004】
上述した特許文献1に開示された構成では、排塵処理室終端部から落下した被処理物は、排塵ラック上に落ちて揺動選別棚と一体的に揺動されてほぐされ、ささり粒を回収できる。しかし、排藁中に混じるささり粒を回収できない点、揺動選別棚の終端部上方に排塵ラックを設けることで、該揺動選別棚前方に設けられる唐箕ファンからの選別風の流れを妨害し、選別効率の低下を招く点で不利がある。
また、上述した特許文献2に開示された構成では、ささり粒防止体が穀稈をガードして扱室内を回転飛散して穀稈の上に降りかかる穀粒を除去し、ささり粒を防止できる。しかし、扱胴の扱歯の回転軌跡より外側にささり粒防止体が配設されるため、扱胴外周面近傍から落下するささり粒を除去できない点で不利がある。
【特許文献1】特開2006−304706号公報
【特許文献2】特開2006−14604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、脱穀部により脱穀された後の排藁の内部又は上部に含まれるささり粒を回収することが可能な脱穀部の拡散装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェンと、該フィードチェンにより搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、を具備するコンバインの脱穀部内に設けられ、該扱胴によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置であって、該扱胴の回転軸と水平方向に略直交する回転軸を有し、該回転軸より放射状に延びる羽根体を複数有する回転体を具備するとともに、該回転体は、搬送される穀稈に対して該羽根体が搬送下流側から衝突する方向に回転するものである。
【0008】
請求項2においては、前記回転体は、前記扱胴の終端部下方に具備される排稈ラックの上方に配設されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、該回転体の長手方向全域に亘る板状の部材であるものである。
【0010】
請求項4においては、前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、排藁の穂先側に具備される棒状の部材であるものである。
【0011】
請求項5においては、前記回転体は、エンジンからの動力を二番コンベヤに伝達する伝達機構により駆動されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1の如く構成される回転体の回転により、扱胴により脱穀された後の排藁を拡散することによってその内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、ささり粒を回収することができる。
【0014】
請求項2の如く構成したので、ささり粒を含む排稈を排稈ラック上に落とすことができ、該排稈ラック上で風選別を受け、藁屑と穀粒とに選別されることにより、選別効率を上げることができる。
【0015】
請求項3の如く構成される回転体の回転により、扱胴により脱穀された後の排藁に羽根体が接触し、該排藁を拡散することによって、その内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、ささり粒を回収することができる。
【0016】
請求項4の如く構成される回転体の回転により、扱胴により脱穀された後の排藁の穂先側と羽根体が接触して、該排藁の穂先側が開かれることによって、その内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、ささり粒を回収することができる。
【0017】
請求項5の如く構成したので、コンバイン全体の動力伝達機構を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る脱穀部の拡散装置を具備するコンバイン1について、図面を参照して説明する。
なお、以下において、図中における矢印Aの指す方向を前とし、前後方向を規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0019】
まず、図1乃至図6を参照して本発明に係る拡散装置40を具備するコンバイン1の全体構成について説明する。
【0020】
図1及び図2に示す如く、コンバイン1は、クローラ式走行装置2上に機体3が配設される。機体3の前部には、刈取部4が配設される。機体3上の左側には、揺動選別装置6、フィードチェン7、扱胴8等を具備する脱穀部5が配設される。脱穀部5には、揺動選別装置6の前下方に唐箕ファン9が配設される。
【0021】
機体3上の前部右側には、運転席11及びステアリングハンドル12等を具備する運転部10が配設される。運転部10の下方であって、機体3上の前部右側には、エンジン13が配設され、運転部10の後方であって、機体3上の後部右側には、グレンタンク14が配設される。グレンタンク14の底部には、排出コンベヤ15が前後方向に配設され、グレンタンク14の後部には、排出オーガ16の縦送りオーガ16aが立設される。グレンタンク14に貯溜された穀粒は、排出コンベヤ15により後方に搬送され、排出オーガ16先端部の排出口からトラック等へ排出される。グレンタンク14は、縦送りオーガ16aを中心として、機体側方へ開放回動可能に構成される。
【0022】
フィードチェン7の後端には、排藁チェーン17が配設され、この排藁チェーン17後部下方には、排藁カッター18、拡散コンベヤ等からなる排藁処理部19が配設され、排藁が切断されて藁片にされた後、拡散されながら圃場に均一に放出される。
【0023】
以下では、図3及び図4を参照して脱穀部5について説明する。
【0024】
図3及び図4に示す如く、脱穀部5には、扱室20内に、扱胴8が前後方向に横架され、扱胴8の下方には、扱胴8の下部周囲を覆うように受網21が設けられる。また、扱胴8の側方下方であって、グレンタンク14側に二番処理室22が形成され、該二番処理室22内に、二番処理胴23が前記扱胴8と平行に機体の前後方向に横架される。また、二番処理胴23の終端部には放出羽根23bが設けられる。
【0025】
脱穀部5において、フィードチェン7により、株元部が挟扼されて、機体後方に搬送された穀稈は、その先端部が扱胴9の下方に挿入されて、扱胴9の回転により脱穀され、籾等が扱胴9の下方に配設される受網21を通過して下方へ漏下される。
【0026】
受網21を通過して下方へ漏下された籾等は揺動選別装置6による揺動選別と、唐箕ファン9による風選別とが行なわれ、一番物と二番物と藁屑等に分別されるように構成される。前記一番物は、一番回収樋33内に回収されて、一番コンベヤ31、揚穀コンベヤ35等を介して、グレンタンク14内に搬送される。他方、扱胴9で処理できなかった枝梗付着粒等の未処理物(二番物)は、二番回収樋34に回収されて、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36等を介して、二番処理室22内に搬送されて二番処理胴23により、藁屑に絡まった籾、枝梗付きの籾が分離されて、二番処理胴23先端部より下方の揺動選別装置6(篩線26上)に落下される。
【0027】
図3に示す如く、揺動選別装置6の前部には、前フィードパン24が設けられ、前フィードパン24の後下方には、後フィードパン25が設けられる。前後フィードパン24・25は、波形に成形された板状部材で構成され、受網21を通過した籾等は前後フィードパン24・25上に落下し、揺動選別装置6の揺動により後方に搬送される。
【0028】
前フィードパン24の後部には、篩線26が設けられる。篩線26の下方より後方に向けて第一の選別部である櫛状のチャフシーブ27が配設され、後フィードパン25の後部には、第二の選別部である網状のグレンシーブ28が配設され、チャフシーブ27の後方にはストローラック29が配設される。
【0029】
揺動選別装置6の前下方には、唐箕ファン9が配設され、チャフシーブ27及びグレンシーブ28に選別風を送風するように構成される。また、揺動選別装置6の後部上方には、吸引ファン30が揺動選別装置6の全幅(左右方向)に亘り、脱穀部5の機枠全域に横設され(図5参照)、唐箕ファン9からの選別風に乗ってきた塵挨が吸引されて機外に排出される。
【0030】
揺動選別装置6下方の前後中途部であって、唐箕ファン9の後方には、一番コンベヤ31が左右方向に横設され、一番コンベヤ31の後方には、二番コンベヤ32が左右方向に横設される。一番コンベヤ31は、唐箕ファンケースの後端から流穀板を介して連設される凹状の一番回収樋33内に横設され、二番コンベヤ32は、一番回収樋33の後部に連設される凹状の二番回収樋34内に横設される。
【0031】
一番コンベヤ31には、搬送方向が略上下方向とされる揚穀コンベヤ35が連結され、揚穀コンベヤ35の上端は、グレンタンク14内と連通される。二番コンベヤ32には、搬送方向が上下方向とされる還元コンベヤ36が連結される。還元コンベヤ36の上端には回転羽根36cが設けられ、回転羽根36cの側方より二番処理胴23が連結される。
図3に示す如く、二番処理室22の下部は、二番処理胴23の搬送方向上流側(コンバイン1後方側)より、無孔式のケーシング22a、クリンプ網22b、放出部22cから構成される。すなわち、二番処理胴23による二番処理の前半は、網等による濾過が行なわれず、二番処理中途部よりクリンプ網22bによる濾過が行なわれ、二番処理終了後は放出羽根23b下方の放出部22cから下方へ落下される構成である。図4に示す如く、放出部22cの開口部は、揺動選別装置6の左右略中央部まで延設され、二番処理胴23により処理された後の二番物は、該開口部より篩線26の左右略中央部に放出される。
【0032】
以上の如く構成される脱穀部5により、チャフシーブ27の隙間を通過した籾や細かい藁屑等は、グレンシーブ28上に落下する。一方、チャフシーブ27の隙間を通過しなかった藁屑等は、揺動選別装置6の揺動により後方に搬送されて、ストローラック29を経て機外に放出される。グレンシーブ28上に落下した穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒及び細かい藁屑等の内、穀粒、未熟穀粒、細かい藁屑等は、グレンシーブ28を通過して下方に落下する。その際、チャフシーブ27及びグレンシーブ28には、唐箕ファン9からの選別風が送風され、細かい藁屑等の一部は、後方に吹き飛ばされて穀粒と分離される。
【0033】
重量が大きい穀粒は、前記選別風により後方に吹き飛ばされずに、手前側の一番回収樋33に回収され、一番コンベヤ31、揚穀コンベヤ35を経て、グレンタンク14に搬送される。他方、未熟穀粒や枝梗付着粒等は、前記選別風により後方へ吹き飛ばされて、奥側の二番回収樋34に回収され、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36、回転羽根36cを経て、二番処理胴23に搬送され、二番処理胴23により枝梗が処理された後、篩線26の左右略中途部に放出される。篩線26上に分散される処理物は唐箕ファン9により風選別される。また、吸引ファン30を揺動選別幅に対して全幅となるように構成したので、藁屑や塵挨等の吸引を助長でき、選別効率を上げることができる。
【0034】
以下では、図6を参照して、本実施例に係るコンバイン1の動力伝達構成について説明する。
【0035】
図6に示す如く、エンジン13の左右方向に出力軸100が突設される。エンジン13の左側の出力軸100には、駆動プーリ101・102・103が設けられる。駆動プーリ101より動力伝達機構を介して、エンジン13からの動力がクローラ式走行装置2に伝達可能に構成される。
【0036】
エンジン13の右側の出力軸100には、駆動プーリ104が設けられる。駆動プーリ104より動力伝達機構を介して、エンジン13からの動力が排出コンベヤ15と、排出コンベヤ15に連動連結される排出オーガ16に伝達可能に構成される。
【0037】
駆動プーリ102と、唐箕軸9aの一端に設けられる従動プーリ105と、にはベルト106が巻回され、このベルト106に脱穀クラッチ107が設けられる。これらのプーリ102・105とベルト106から動力伝達機構108・116を介して脱穀部5への動力伝達が可能に構成され、脱穀部5は脱穀クラッチ107の断接操作により駆動又は停止されるように構成される。
【0038】
唐箕軸9aの他端にはプーリ109が設けられ、一番コンベヤ入力軸31aの一端にはプーリ110が設けられ、二番コンベヤ入力軸32aの一端にはプーリ111が設けられ、揺動駆動軸6aの一端にはプーリ112aが設けられ、吸引駆動軸30aの一端にはプーリ113aが設けられる。これらのプーリ109・110・111・112a・113aにはベルト114が巻回される。
【0039】
プーリ110、一番コンベヤ入力軸31aを経て、一番コンベヤ31にエンジン13からの動力が伝達可能に構成され、一番コンベヤ軸31aの他端側よりベベルギア等を介して揚穀コンベヤ35にエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。
【0040】
二番コンベヤ入力軸32aの他端にはプーリ122が設けられ、還元コンベヤ駆動軸36aの一端にプーリ123が設けられる。プーリ122とプーリ123とにはベルトが巻回される。還元コンベヤ駆動軸36aの他端にはベベルギア124が設けられ、ベベルギア124の他端側には還元コンベヤ入力軸36bが設けられる。還元コンベヤ入力軸36bの他端にはベベルギア125が設けられ、ベベルギア125の他端側には拡散装置入力軸40aが設けられる。拡散装置入力軸40aの中途部にはベベルギア126が設けられ、ベベルギア126の他端側には二番処理胴入力軸23aが設けられる。
プーリ111、二番コンベヤ入力軸32aを経て、二番コンベヤ32にエンジン13からの動力が伝達可能に構成され、二番コンベヤ入力軸32aの他端側よりプーリ122、プーリ123、ベベルギア124、ベベルギア125、ベベルギア126を介して、還元コンベヤ36、二番処理胴23、拡散装置40にエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。
【0041】
揺動駆動軸6aの他端にはプーリ112bが設けられ、揺動選別装置6の揺動入力軸6bの一端にはプーリ112cが設けられ、これらのプーリ112b・112cにはベルトが巻回されて、揺動駆動軸6aからの動力が揺動入力軸6bに伝達可能に構成される。
【0042】
吸引駆動軸30aの他端にはプーリ113bが設けられ、吸引入力軸30bの一端にはプーリ113cが設けられ、これらのプーリ113b・113cにはベルトが巻回されて、吸引駆動軸30aからの動力が吸引ファン30の吸引入力軸30bに伝達可能に構成される。
【0043】
唐箕軸9aの左右中途部にはプーリ115が設けられ、扱胴駆動軸8aの一端にはプーリ116が設けられる。これらのプーリ115・116にはベルトが巻回される。
【0044】
扱胴駆動軸8aの他端側よりベベルギア等を介して、扱胴入力軸8bにエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。また、扱胴入力軸8bよりプーリ、ベベルギア等を介して排藁チェーン17の排藁チェーン入力軸17aにエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。
【0045】
駆動プーリ103と従動プーリ117との間にはベルト118が巻回される。従動プーリ117の支持軸は変速ケース120内に挿入され、高低変速可能としている。該変速ケース120から刈取入力軸4aが突出され、刈取入力軸4aの一端には刈取プーリ119が設けられ、この刈取プーリ119よりベルトを介して刈取部4へ動力伝達を可能としている。刈取プーリ119に巻回されるベルトには、ベルトテンション式の刈取クラッチ121が設けられる。こうしてプーリ103、刈取クラッチ121、ベルト118、従動プーリ117等の動力伝達機構を介して刈取部4への動力伝達が可能に構成され、刈取部4は刈取クラッチ121の断接操作により駆動又は停止されるように構成される。
【0046】
また、前記変速ケース120からフィードチェン入力軸7aが突出され、該フィードチェン入力軸7aから変速ギア、フィードチェンクラッチ7bを経てフィードチェン7にエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。フィードチェン7はフィードチェンクラッチ7bの入切操作により駆動又は停止されるように構成される。
【0047】
図3及び図4に示す如く、脱穀部5において、扱室20の終端部下方に排稈ラック38が揺動選別装置6と一体的に設けられる。排稈ラック38は扱室20の終端部下方を始端部(前端部)とし、吸引ファン30の始端部下方を終端部(後端部)とする部材であり、扱胴8によって脱穀される穀稈の排稈が扱室20終端部より排稈ラック38に落下され、これを排稈ラック38上で揺動選別することにより該排稈に含まれる穀粒が下方に落とされ、回収される構成である。
【0048】
以下では、図4、図7及び図8(a)を参照して、本発明に係る拡散装置の実施の一形態である拡散装置40について説明する。
【0049】
図4、図7及び図8(a)に示す如く、拡散装置40は、回転体となる拡散胴41と、拡散胴41の外周面より放射状に突設される複数の羽根体42・42・42・42・42・42(本実施例では六個)と、から構成され、上述の如く扱胴8の回転軸である扱胴入力軸8bと水平方向に直交する拡散装置入力軸40aの回転により回転駆動される。拡散胴41は左右方向に軸方向を有する拡散装置入力軸40aの周囲に固設される略円筒形状の部材である。羽根体42は樹脂等により構成される板状の部材であり、その長手方向(左右方向)の長さは拡散胴41と同一に構成される。
また、図4に示す如く、拡散装置40の上下位置は、二番処理胴23と略同じであり、フィードチェン7に株元を挟扼されて搬送される穀稈(排藁)は拡散装置40の上部(羽根体42)に接触しながら排藁チェーン17へと受け継がれる構成であり、拡散胴41の回転方向は、図7及び図8(a)中矢印Bの指す方向(図7中における反時計回り)である。この場合排藁を戻す方向となり、排藁を大きく曲げてささり粒を落とすことが可能となる。但し、前記穀稈(排藁)が拡散装置40の下部に接触しながら排藁チェーン17へと受け継がれる構成でもよく、係る場合には拡散胴41の回転方向は上述の場合と反対方向(図7中における時計回り)とする。この場合、拡散胴41の回転数がフィードチェン7による送り速度よりも速くすることで、排藁を排藁チェーン17側へ送りながらささり粒を落とす構成となり、詰まりを防止でき、拡散胴41の回転数がフィードチェンによる送り速度よりも遅くすることで、排藁に抵抗を与えながらささり粒を落とすことになる。また、この拡散胴41の回転数は無段変速装置を介して駆動するように構成することで、任意に変更可能に構成することもできる。この場合、穀稈量や作物の種類や作業速度等に合わせて変更でき、収穫効率を向上できる。
なお、本実施例に係る拡散装置において、拡散装置40を回転駆動する回転軸である拡散装置入力軸40aは、扱胴入力軸8bと水平方向に直交する構成であるが、例えば拡散装置40をフィードチェン7により搬送される穀稈の株元側より穂先側が先に接触するように、又は穂先側より株元側が先に接触するように、拡散装置入力軸40aを水平方向で前後に傾ける構成としてもよい。
また、図9(a)に示す如く、羽根体42の先端部を波型に形成してもよい。
【0050】
以上の如く構成される拡散胴41の回転により、扱胴8により脱穀された後にフィードチェン7によりさらに搬送される排藁の下方(又は上方)に羽根体42が接触し、該排藁を拡散することによって、その内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、拡散装置40の下方に配置される揺動選別装置6により、再度選別されることで、ささり粒を回収することができる。
【0051】
図7に示す如く、拡散装置40は排稈ラック38終端部の上方に配置される。
【0052】
以上の如く構成される拡散装置40によって排藁は拡散され、ささり粒を含む排稈を排稈ラック38に落とすことができ、排稈ラック38上で風選別を受け、排藁と穀粒とに選別された後に排稈ラック38より穀粒が下方のチャフシーブ27、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36、二番処理胴23を経て再度選別されることにより、ささり粒を回収することができ、穀粒の回収率を上げることができる。
【0053】
また、上述の如く、拡散装置40(拡散胴41)は、プーリ111、二番コンベヤ入力軸32aを経て、二番コンベヤ入力軸32aの他端側よりプーリ122、プーリ123、ベベルギア124、ベベルギア125、ベベルギア126を介して、エンジン13からの動力が伝達可能に構成される(図6参照)。
【0054】
以上の如く構成される拡散装置40により、脱穀部5後部の動力伝達機構を、二番コンベヤ32を駆動させる系統に統一することができるので、コンバイン1の動力伝達機構を簡素化できる。
【0055】
以下では、図8(b)を参照して本発明に係る拡散装置の別実施例である拡散装置50について説明する。
【0056】
図8(b)に示す如く、拡散装置50は、回転体となる拡散胴51と、拡散胴51の外周面より放射状に突設される複数の羽根体52・52・52・52・52・52(本実施例では六個)と、から構成され、上述と同様に拡散装置入力軸40aの回転により回転駆動される。羽根体52は棒状部材で構成され、本実施例では1列配置しているが、図9(b)に示す如く、複数列(例えば、3列の場合を図示)配置する構成であってもよい。拡散胴51は左右方向に軸方向を有する拡散装置入力軸40aの周囲に固設される略円筒形状の部材である。羽根体52は樹脂等により構成される棒状の部材であり、羽根体52・52・52・52・52・52は、フィードチェン7により搬送される排藁の穂先(先端)部分に接触可能な左右位置に配設される。
なお、拡散装置50の上下位置は、上述の拡散装置と同じ位置であり、拡散胴51の回転方向についても上述と同様である。
【0057】
以上の如く構成される拡散装置50の回転によって、扱胴8により脱穀された後の排藁の穂先側に羽根体52が接触し、または、排藁束中に差し込んで、該排藁の穂先部分を開くことによって、その内部又は上部のささり粒を下方の排稈ラック38に落とすことができ、拡散装置50の下方に配置される揺動選別装置6により、再度選別されることで、ささり粒を回収することができる。
【0058】
以下では、図10を参照して本実施例に係る二番処理胴23の回動機構について説明する。
【0059】
上述の如く、二番処理胴23は、プーリ111、二番コンベヤ入力軸32aを経て、二番コンベヤ入力軸32aの他端側よりプーリ122、プーリ123、ベベルギア124、ベベルギア125、ベベルギア126を介して、エンジン13からの動力が伝達可能に構成される(図6参照)。
【0060】
図10に示す如く、二番処理胴23は、拡散装置入力軸40aを回動支軸とし、ベベルギア126(図10において不図示)等と一体的に上方に回動可能に構成される。
【0061】
以上の如く二番処理胴23は、上方に回動可能に構成されるので、脱穀部5内をメンテナンスする際には、グレンタンク14を、縦オーガ16aを回動支軸として側方に回動して、二番処理胴23を、拡散装置入力軸40aを回動支軸として上方に回動することで、二番処理胴23、及び二番処理胴23下方に配設されるクリンプ網(不図示)のメンテナンスが容易になる。
また、図11に示す如く、二番処理胴23を水平外方(右方)に回動可能に構成することも可能である。この場合回動支軸は、二番処理胴入力軸23aと拡散装置入力軸40aとの延長線の交点(図11中における点C)に配置される。この場合も前記同様に、二番処理胴23を回動支軸を中心に右方に回動することで、二番処理胴23、及び二番処理胴23下方に配設されるクリンプ網のメンテナンスが容易になる。
【0062】
以下では、図12を参照して本実施例に係るチャフシーブ27の開度制御機構について説明する。
【0063】
図12に示す如く、チャフシーブ27の開度を変更するチャフシーブ開度変更機構60は、回動可能に構成される開度変更体61、開度変更体61を回動させるアクチュエータとなる電動モータ62、開度変更体61と連動連結されるワイヤ63、等で構成される。ワイヤ63の一端は開度変更体61と連結され、ワイヤ63の他端はチャフシーブ27と連結される。そして、開度変更体61が電動モータ62により回動されると、開度変更体61と連結されたワイヤ63が引っ張られ、チャフシーブ27の開度が変更される構成である。
また、図12に示す如く、排藁量を検出する手段である排藁量検出機構70は、排藁チェーン17に沿って設けられる排藁挟扼ガイド71と、排藁挟扼ガイド71に垂設される検出棒72と、検出棒72の下端に当接可能、かつ、支持部73を中心として回動可能に設けられる検出片74、支持部73近傍に設けられ検出片74の回動角度を検出する手段となるポテンショメータ75、等で構成される。そして、排藁チェーン17と排藁挟扼ガイド71との間に挟持される排藁の層厚に応じて、排藁挟扼ガイド71が上下方向に作動し、それに従動して検出棒72が上下方向に作動して検出片74を回動させる。この回動角をポテンショメータ75により検出することで、排藁の層厚(つまり排藁量)を検出する構成である。
【0064】
電動モータ62及びポテンショメータ75は、コンバイン1の動作を制御するコントローラ80に接続され、ポテンショメータ75により検出された回動角がコントローラ80に入力される。コントローラ80は前記回動角の入力を受けて、該回動角に応じたチャフシーブ27の最適な開度を算出して電動モータ62に出力する値を決定し、係る出力により電動モータ62を作動させチャフシーブ27の開度を変更する構成である。
また、図12に示す如く、運転部10には収穫物の種類及びチャフシーブ27の設定開度を入力する選別操作ダイヤル81が設けられる。選別操作ダイヤル81はコントローラ80と接続され、その設定値がコントローラ80に出力される。
【0065】
以上の如く、穀稈の刈取・脱穀作業開始時にはコントローラ80にオペレータによる選別操作ダイヤル81の設定値(「初期設定チャフ開度」)が入力され、穀稈の刈取・脱穀作業時にはコントローラ80にポテンショメータ75より排藁量が入力され、該排藁量に適したチャフ開度が算出される(「算出チャフ開度」)。これら二つの入力を受けたコントローラ80は、(1)算出チャフ開度と初期設定チャフ開度のうちチャフシーブ27の開度が大きい方、(2)算出チャフ開度と初期設定チャフ開度のうちチャフシーブ27の開度が小さい方、(3)常に算出チャフ開度、(4)常に初期設定チャフ開度、のいずれかを、最終的に電動モータ62に出力可能に構成される。なお、この出力値は、運転部10に設けられる設定手段によって選択可能としてもよく、コントローラ80内にていずれかを予め設定しておいてもよい。
【0066】
以上の如く排藁量を検出する手段となる排藁量検出機構70は、排藁挟扼ガイド71と、排藁挟扼ガイド71の移動量の検知手段となるポテンショメータ75と、を具備し、ポテンショメータ75をコントローラ80と接続して、ポテンショメータ75の出力によってコントローラ80が排藁量を検知するように構成したので、排藁量検出機構を簡単な構成とすることができ、コストを低くできる。また、チャフシーブ27の開度を変更する手段となるチャフシーブ開度変更機構60は、開度変更体61と、アクチュエータとなる電動モータ62と、ワイヤ63と、を具備し、開度変更体61及び電動モータ62によってチャフシーブ27の開度を変更するように構成したので、例えばコンバイン1の回行時、条合わせ時等の排藁検出量がゼロになる時においても、チャフシーブ27を開状態に保持して選別作用を維持でき、係る状況における選別ロス(三番ロス)を防止できる。また、運転部10に選別操作ダイヤル81を設け、オペレータにより操作可能に構成したので、収穫物、圃場及び収穫の状況に応じたチャフシーブ27の開閉を設定でき、三番ロスを効率よく防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るコンバインの側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく脱穀部の側面断面図。
【図4】同じく背面図。
【図5】同じく概略平面図。
【図6】同じく動力伝達構成を示すスケルトン図。
【図7】本発明に係る拡散装置の側面拡大図。
【図8】(a)本発明の一実施例に係る拡散装置の斜視図(b)本発明の別実施例に係る拡散装置の斜視図。
【図9】(a)本発明の別実施例に係る拡散装置の斜視図(b)本発明の別実施例に係る拡散装置の斜視図。
【図10】本発明の一実施例に係る二番処理胴の回動機構を示す側面図。
【図11】本発明の一実施例に係る二番処理胴の回動機構を示すスケルトン図。
【図12】本発明の一実施例に係るチャフ開度の制御機構を示す側面図。
【符号の説明】
【0068】
1 コンバイン
5 脱穀部
13 エンジン
32 二番コンベヤ
38 排稈ラック
40 拡散装置
40a 拡散装置入力軸(回転軸)
41 拡散胴(回転体)
42 羽根体
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェンと、該フィードチェンにより搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、を具備するコンバインの脱穀部内に設けられ、該扱胴によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀部において、扱室内に扱胴を回動自在に設け、該扱胴の外周面に複数の扱歯を植設して、回動する扱胴の外周面下側に沿わせて穀稈を搬送することにより、該穀稈を前記扱歯によって脱穀する構成が周知である。
しかし、上記の如き構成のコンバインの脱穀部において、穀稈を脱穀した扱歯が、穀粒を持ち回って、その後搬送されてくる穀稈上に乗る又は穀稈にささり、いわゆる「ささり粒」となって排藁と一緒に排出されて穀粒の回収率が低下する場合がある。
【0003】
係る問題点を鑑み、例えば、扱室内に扱胴を設け、該扱胴の終端部からの被処理物を受け入れて処理する処理胴を設けた排塵処理室を設け、前記扱室及び排塵処理室より漏下する被処理物を揺動選別棚にて揺動選別する脱穀装置において、前記排塵処理室終端部から落下してきた被処理物を受けて処理する排塵ラックを設けるにあたり、該排塵ラックを前記揺動選別棚と一体的に設けたこととした脱穀装置の技術は公知となっている(特許文献1参照)。
また、扱胴の扱口を形成する上下の扱口板と、両扱口板の間に、穀稈に対応して上下移動可能に支持され、かつ下方に向かって付勢され、該穀稈の間に入り込む「ささり粒」を除去するささり粒防止体と、を設けた脱穀装置において、前記ささり粒防止体を、最下降時に先端が下方側の扱口板の扱胴回転軌跡の近傍位置に当接又は近接するように設けたささり粒防止体の構成技術は公知となっている(特許文献2参照)。
【0004】
上述した特許文献1に開示された構成では、排塵処理室終端部から落下した被処理物は、排塵ラック上に落ちて揺動選別棚と一体的に揺動されてほぐされ、ささり粒を回収できる。しかし、排藁中に混じるささり粒を回収できない点、揺動選別棚の終端部上方に排塵ラックを設けることで、該揺動選別棚前方に設けられる唐箕ファンからの選別風の流れを妨害し、選別効率の低下を招く点で不利がある。
また、上述した特許文献2に開示された構成では、ささり粒防止体が穀稈をガードして扱室内を回転飛散して穀稈の上に降りかかる穀粒を除去し、ささり粒を防止できる。しかし、扱胴の扱歯の回転軌跡より外側にささり粒防止体が配設されるため、扱胴外周面近傍から落下するささり粒を除去できない点で不利がある。
【特許文献1】特開2006−304706号公報
【特許文献2】特開2006−14604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、脱穀部により脱穀された後の排藁の内部又は上部に含まれるささり粒を回収することが可能な脱穀部の拡散装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェンと、該フィードチェンにより搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、を具備するコンバインの脱穀部内に設けられ、該扱胴によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置であって、該扱胴の回転軸と水平方向に略直交する回転軸を有し、該回転軸より放射状に延びる羽根体を複数有する回転体を具備するとともに、該回転体は、搬送される穀稈に対して該羽根体が搬送下流側から衝突する方向に回転するものである。
【0008】
請求項2においては、前記回転体は、前記扱胴の終端部下方に具備される排稈ラックの上方に配設されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、該回転体の長手方向全域に亘る板状の部材であるものである。
【0010】
請求項4においては、前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、排藁の穂先側に具備される棒状の部材であるものである。
【0011】
請求項5においては、前記回転体は、エンジンからの動力を二番コンベヤに伝達する伝達機構により駆動されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1の如く構成される回転体の回転により、扱胴により脱穀された後の排藁を拡散することによってその内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、ささり粒を回収することができる。
【0014】
請求項2の如く構成したので、ささり粒を含む排稈を排稈ラック上に落とすことができ、該排稈ラック上で風選別を受け、藁屑と穀粒とに選別されることにより、選別効率を上げることができる。
【0015】
請求項3の如く構成される回転体の回転により、扱胴により脱穀された後の排藁に羽根体が接触し、該排藁を拡散することによって、その内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、ささり粒を回収することができる。
【0016】
請求項4の如く構成される回転体の回転により、扱胴により脱穀された後の排藁の穂先側と羽根体が接触して、該排藁の穂先側が開かれることによって、その内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、ささり粒を回収することができる。
【0017】
請求項5の如く構成したので、コンバイン全体の動力伝達機構を簡素化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る脱穀部の拡散装置を具備するコンバイン1について、図面を参照して説明する。
なお、以下において、図中における矢印Aの指す方向を前とし、前後方向を規定する。また、かかる前後方向と水平方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0019】
まず、図1乃至図6を参照して本発明に係る拡散装置40を具備するコンバイン1の全体構成について説明する。
【0020】
図1及び図2に示す如く、コンバイン1は、クローラ式走行装置2上に機体3が配設される。機体3の前部には、刈取部4が配設される。機体3上の左側には、揺動選別装置6、フィードチェン7、扱胴8等を具備する脱穀部5が配設される。脱穀部5には、揺動選別装置6の前下方に唐箕ファン9が配設される。
【0021】
機体3上の前部右側には、運転席11及びステアリングハンドル12等を具備する運転部10が配設される。運転部10の下方であって、機体3上の前部右側には、エンジン13が配設され、運転部10の後方であって、機体3上の後部右側には、グレンタンク14が配設される。グレンタンク14の底部には、排出コンベヤ15が前後方向に配設され、グレンタンク14の後部には、排出オーガ16の縦送りオーガ16aが立設される。グレンタンク14に貯溜された穀粒は、排出コンベヤ15により後方に搬送され、排出オーガ16先端部の排出口からトラック等へ排出される。グレンタンク14は、縦送りオーガ16aを中心として、機体側方へ開放回動可能に構成される。
【0022】
フィードチェン7の後端には、排藁チェーン17が配設され、この排藁チェーン17後部下方には、排藁カッター18、拡散コンベヤ等からなる排藁処理部19が配設され、排藁が切断されて藁片にされた後、拡散されながら圃場に均一に放出される。
【0023】
以下では、図3及び図4を参照して脱穀部5について説明する。
【0024】
図3及び図4に示す如く、脱穀部5には、扱室20内に、扱胴8が前後方向に横架され、扱胴8の下方には、扱胴8の下部周囲を覆うように受網21が設けられる。また、扱胴8の側方下方であって、グレンタンク14側に二番処理室22が形成され、該二番処理室22内に、二番処理胴23が前記扱胴8と平行に機体の前後方向に横架される。また、二番処理胴23の終端部には放出羽根23bが設けられる。
【0025】
脱穀部5において、フィードチェン7により、株元部が挟扼されて、機体後方に搬送された穀稈は、その先端部が扱胴9の下方に挿入されて、扱胴9の回転により脱穀され、籾等が扱胴9の下方に配設される受網21を通過して下方へ漏下される。
【0026】
受網21を通過して下方へ漏下された籾等は揺動選別装置6による揺動選別と、唐箕ファン9による風選別とが行なわれ、一番物と二番物と藁屑等に分別されるように構成される。前記一番物は、一番回収樋33内に回収されて、一番コンベヤ31、揚穀コンベヤ35等を介して、グレンタンク14内に搬送される。他方、扱胴9で処理できなかった枝梗付着粒等の未処理物(二番物)は、二番回収樋34に回収されて、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36等を介して、二番処理室22内に搬送されて二番処理胴23により、藁屑に絡まった籾、枝梗付きの籾が分離されて、二番処理胴23先端部より下方の揺動選別装置6(篩線26上)に落下される。
【0027】
図3に示す如く、揺動選別装置6の前部には、前フィードパン24が設けられ、前フィードパン24の後下方には、後フィードパン25が設けられる。前後フィードパン24・25は、波形に成形された板状部材で構成され、受網21を通過した籾等は前後フィードパン24・25上に落下し、揺動選別装置6の揺動により後方に搬送される。
【0028】
前フィードパン24の後部には、篩線26が設けられる。篩線26の下方より後方に向けて第一の選別部である櫛状のチャフシーブ27が配設され、後フィードパン25の後部には、第二の選別部である網状のグレンシーブ28が配設され、チャフシーブ27の後方にはストローラック29が配設される。
【0029】
揺動選別装置6の前下方には、唐箕ファン9が配設され、チャフシーブ27及びグレンシーブ28に選別風を送風するように構成される。また、揺動選別装置6の後部上方には、吸引ファン30が揺動選別装置6の全幅(左右方向)に亘り、脱穀部5の機枠全域に横設され(図5参照)、唐箕ファン9からの選別風に乗ってきた塵挨が吸引されて機外に排出される。
【0030】
揺動選別装置6下方の前後中途部であって、唐箕ファン9の後方には、一番コンベヤ31が左右方向に横設され、一番コンベヤ31の後方には、二番コンベヤ32が左右方向に横設される。一番コンベヤ31は、唐箕ファンケースの後端から流穀板を介して連設される凹状の一番回収樋33内に横設され、二番コンベヤ32は、一番回収樋33の後部に連設される凹状の二番回収樋34内に横設される。
【0031】
一番コンベヤ31には、搬送方向が略上下方向とされる揚穀コンベヤ35が連結され、揚穀コンベヤ35の上端は、グレンタンク14内と連通される。二番コンベヤ32には、搬送方向が上下方向とされる還元コンベヤ36が連結される。還元コンベヤ36の上端には回転羽根36cが設けられ、回転羽根36cの側方より二番処理胴23が連結される。
図3に示す如く、二番処理室22の下部は、二番処理胴23の搬送方向上流側(コンバイン1後方側)より、無孔式のケーシング22a、クリンプ網22b、放出部22cから構成される。すなわち、二番処理胴23による二番処理の前半は、網等による濾過が行なわれず、二番処理中途部よりクリンプ網22bによる濾過が行なわれ、二番処理終了後は放出羽根23b下方の放出部22cから下方へ落下される構成である。図4に示す如く、放出部22cの開口部は、揺動選別装置6の左右略中央部まで延設され、二番処理胴23により処理された後の二番物は、該開口部より篩線26の左右略中央部に放出される。
【0032】
以上の如く構成される脱穀部5により、チャフシーブ27の隙間を通過した籾や細かい藁屑等は、グレンシーブ28上に落下する。一方、チャフシーブ27の隙間を通過しなかった藁屑等は、揺動選別装置6の揺動により後方に搬送されて、ストローラック29を経て機外に放出される。グレンシーブ28上に落下した穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒及び細かい藁屑等の内、穀粒、未熟穀粒、細かい藁屑等は、グレンシーブ28を通過して下方に落下する。その際、チャフシーブ27及びグレンシーブ28には、唐箕ファン9からの選別風が送風され、細かい藁屑等の一部は、後方に吹き飛ばされて穀粒と分離される。
【0033】
重量が大きい穀粒は、前記選別風により後方に吹き飛ばされずに、手前側の一番回収樋33に回収され、一番コンベヤ31、揚穀コンベヤ35を経て、グレンタンク14に搬送される。他方、未熟穀粒や枝梗付着粒等は、前記選別風により後方へ吹き飛ばされて、奥側の二番回収樋34に回収され、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36、回転羽根36cを経て、二番処理胴23に搬送され、二番処理胴23により枝梗が処理された後、篩線26の左右略中途部に放出される。篩線26上に分散される処理物は唐箕ファン9により風選別される。また、吸引ファン30を揺動選別幅に対して全幅となるように構成したので、藁屑や塵挨等の吸引を助長でき、選別効率を上げることができる。
【0034】
以下では、図6を参照して、本実施例に係るコンバイン1の動力伝達構成について説明する。
【0035】
図6に示す如く、エンジン13の左右方向に出力軸100が突設される。エンジン13の左側の出力軸100には、駆動プーリ101・102・103が設けられる。駆動プーリ101より動力伝達機構を介して、エンジン13からの動力がクローラ式走行装置2に伝達可能に構成される。
【0036】
エンジン13の右側の出力軸100には、駆動プーリ104が設けられる。駆動プーリ104より動力伝達機構を介して、エンジン13からの動力が排出コンベヤ15と、排出コンベヤ15に連動連結される排出オーガ16に伝達可能に構成される。
【0037】
駆動プーリ102と、唐箕軸9aの一端に設けられる従動プーリ105と、にはベルト106が巻回され、このベルト106に脱穀クラッチ107が設けられる。これらのプーリ102・105とベルト106から動力伝達機構108・116を介して脱穀部5への動力伝達が可能に構成され、脱穀部5は脱穀クラッチ107の断接操作により駆動又は停止されるように構成される。
【0038】
唐箕軸9aの他端にはプーリ109が設けられ、一番コンベヤ入力軸31aの一端にはプーリ110が設けられ、二番コンベヤ入力軸32aの一端にはプーリ111が設けられ、揺動駆動軸6aの一端にはプーリ112aが設けられ、吸引駆動軸30aの一端にはプーリ113aが設けられる。これらのプーリ109・110・111・112a・113aにはベルト114が巻回される。
【0039】
プーリ110、一番コンベヤ入力軸31aを経て、一番コンベヤ31にエンジン13からの動力が伝達可能に構成され、一番コンベヤ軸31aの他端側よりベベルギア等を介して揚穀コンベヤ35にエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。
【0040】
二番コンベヤ入力軸32aの他端にはプーリ122が設けられ、還元コンベヤ駆動軸36aの一端にプーリ123が設けられる。プーリ122とプーリ123とにはベルトが巻回される。還元コンベヤ駆動軸36aの他端にはベベルギア124が設けられ、ベベルギア124の他端側には還元コンベヤ入力軸36bが設けられる。還元コンベヤ入力軸36bの他端にはベベルギア125が設けられ、ベベルギア125の他端側には拡散装置入力軸40aが設けられる。拡散装置入力軸40aの中途部にはベベルギア126が設けられ、ベベルギア126の他端側には二番処理胴入力軸23aが設けられる。
プーリ111、二番コンベヤ入力軸32aを経て、二番コンベヤ32にエンジン13からの動力が伝達可能に構成され、二番コンベヤ入力軸32aの他端側よりプーリ122、プーリ123、ベベルギア124、ベベルギア125、ベベルギア126を介して、還元コンベヤ36、二番処理胴23、拡散装置40にエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。
【0041】
揺動駆動軸6aの他端にはプーリ112bが設けられ、揺動選別装置6の揺動入力軸6bの一端にはプーリ112cが設けられ、これらのプーリ112b・112cにはベルトが巻回されて、揺動駆動軸6aからの動力が揺動入力軸6bに伝達可能に構成される。
【0042】
吸引駆動軸30aの他端にはプーリ113bが設けられ、吸引入力軸30bの一端にはプーリ113cが設けられ、これらのプーリ113b・113cにはベルトが巻回されて、吸引駆動軸30aからの動力が吸引ファン30の吸引入力軸30bに伝達可能に構成される。
【0043】
唐箕軸9aの左右中途部にはプーリ115が設けられ、扱胴駆動軸8aの一端にはプーリ116が設けられる。これらのプーリ115・116にはベルトが巻回される。
【0044】
扱胴駆動軸8aの他端側よりベベルギア等を介して、扱胴入力軸8bにエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。また、扱胴入力軸8bよりプーリ、ベベルギア等を介して排藁チェーン17の排藁チェーン入力軸17aにエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。
【0045】
駆動プーリ103と従動プーリ117との間にはベルト118が巻回される。従動プーリ117の支持軸は変速ケース120内に挿入され、高低変速可能としている。該変速ケース120から刈取入力軸4aが突出され、刈取入力軸4aの一端には刈取プーリ119が設けられ、この刈取プーリ119よりベルトを介して刈取部4へ動力伝達を可能としている。刈取プーリ119に巻回されるベルトには、ベルトテンション式の刈取クラッチ121が設けられる。こうしてプーリ103、刈取クラッチ121、ベルト118、従動プーリ117等の動力伝達機構を介して刈取部4への動力伝達が可能に構成され、刈取部4は刈取クラッチ121の断接操作により駆動又は停止されるように構成される。
【0046】
また、前記変速ケース120からフィードチェン入力軸7aが突出され、該フィードチェン入力軸7aから変速ギア、フィードチェンクラッチ7bを経てフィードチェン7にエンジン13からの動力が伝達可能に構成される。フィードチェン7はフィードチェンクラッチ7bの入切操作により駆動又は停止されるように構成される。
【0047】
図3及び図4に示す如く、脱穀部5において、扱室20の終端部下方に排稈ラック38が揺動選別装置6と一体的に設けられる。排稈ラック38は扱室20の終端部下方を始端部(前端部)とし、吸引ファン30の始端部下方を終端部(後端部)とする部材であり、扱胴8によって脱穀される穀稈の排稈が扱室20終端部より排稈ラック38に落下され、これを排稈ラック38上で揺動選別することにより該排稈に含まれる穀粒が下方に落とされ、回収される構成である。
【0048】
以下では、図4、図7及び図8(a)を参照して、本発明に係る拡散装置の実施の一形態である拡散装置40について説明する。
【0049】
図4、図7及び図8(a)に示す如く、拡散装置40は、回転体となる拡散胴41と、拡散胴41の外周面より放射状に突設される複数の羽根体42・42・42・42・42・42(本実施例では六個)と、から構成され、上述の如く扱胴8の回転軸である扱胴入力軸8bと水平方向に直交する拡散装置入力軸40aの回転により回転駆動される。拡散胴41は左右方向に軸方向を有する拡散装置入力軸40aの周囲に固設される略円筒形状の部材である。羽根体42は樹脂等により構成される板状の部材であり、その長手方向(左右方向)の長さは拡散胴41と同一に構成される。
また、図4に示す如く、拡散装置40の上下位置は、二番処理胴23と略同じであり、フィードチェン7に株元を挟扼されて搬送される穀稈(排藁)は拡散装置40の上部(羽根体42)に接触しながら排藁チェーン17へと受け継がれる構成であり、拡散胴41の回転方向は、図7及び図8(a)中矢印Bの指す方向(図7中における反時計回り)である。この場合排藁を戻す方向となり、排藁を大きく曲げてささり粒を落とすことが可能となる。但し、前記穀稈(排藁)が拡散装置40の下部に接触しながら排藁チェーン17へと受け継がれる構成でもよく、係る場合には拡散胴41の回転方向は上述の場合と反対方向(図7中における時計回り)とする。この場合、拡散胴41の回転数がフィードチェン7による送り速度よりも速くすることで、排藁を排藁チェーン17側へ送りながらささり粒を落とす構成となり、詰まりを防止でき、拡散胴41の回転数がフィードチェンによる送り速度よりも遅くすることで、排藁に抵抗を与えながらささり粒を落とすことになる。また、この拡散胴41の回転数は無段変速装置を介して駆動するように構成することで、任意に変更可能に構成することもできる。この場合、穀稈量や作物の種類や作業速度等に合わせて変更でき、収穫効率を向上できる。
なお、本実施例に係る拡散装置において、拡散装置40を回転駆動する回転軸である拡散装置入力軸40aは、扱胴入力軸8bと水平方向に直交する構成であるが、例えば拡散装置40をフィードチェン7により搬送される穀稈の株元側より穂先側が先に接触するように、又は穂先側より株元側が先に接触するように、拡散装置入力軸40aを水平方向で前後に傾ける構成としてもよい。
また、図9(a)に示す如く、羽根体42の先端部を波型に形成してもよい。
【0050】
以上の如く構成される拡散胴41の回転により、扱胴8により脱穀された後にフィードチェン7によりさらに搬送される排藁の下方(又は上方)に羽根体42が接触し、該排藁を拡散することによって、その内部又は上部のささり粒を下方に落とすことができ、拡散装置40の下方に配置される揺動選別装置6により、再度選別されることで、ささり粒を回収することができる。
【0051】
図7に示す如く、拡散装置40は排稈ラック38終端部の上方に配置される。
【0052】
以上の如く構成される拡散装置40によって排藁は拡散され、ささり粒を含む排稈を排稈ラック38に落とすことができ、排稈ラック38上で風選別を受け、排藁と穀粒とに選別された後に排稈ラック38より穀粒が下方のチャフシーブ27、二番コンベヤ32、還元コンベヤ36、二番処理胴23を経て再度選別されることにより、ささり粒を回収することができ、穀粒の回収率を上げることができる。
【0053】
また、上述の如く、拡散装置40(拡散胴41)は、プーリ111、二番コンベヤ入力軸32aを経て、二番コンベヤ入力軸32aの他端側よりプーリ122、プーリ123、ベベルギア124、ベベルギア125、ベベルギア126を介して、エンジン13からの動力が伝達可能に構成される(図6参照)。
【0054】
以上の如く構成される拡散装置40により、脱穀部5後部の動力伝達機構を、二番コンベヤ32を駆動させる系統に統一することができるので、コンバイン1の動力伝達機構を簡素化できる。
【0055】
以下では、図8(b)を参照して本発明に係る拡散装置の別実施例である拡散装置50について説明する。
【0056】
図8(b)に示す如く、拡散装置50は、回転体となる拡散胴51と、拡散胴51の外周面より放射状に突設される複数の羽根体52・52・52・52・52・52(本実施例では六個)と、から構成され、上述と同様に拡散装置入力軸40aの回転により回転駆動される。羽根体52は棒状部材で構成され、本実施例では1列配置しているが、図9(b)に示す如く、複数列(例えば、3列の場合を図示)配置する構成であってもよい。拡散胴51は左右方向に軸方向を有する拡散装置入力軸40aの周囲に固設される略円筒形状の部材である。羽根体52は樹脂等により構成される棒状の部材であり、羽根体52・52・52・52・52・52は、フィードチェン7により搬送される排藁の穂先(先端)部分に接触可能な左右位置に配設される。
なお、拡散装置50の上下位置は、上述の拡散装置と同じ位置であり、拡散胴51の回転方向についても上述と同様である。
【0057】
以上の如く構成される拡散装置50の回転によって、扱胴8により脱穀された後の排藁の穂先側に羽根体52が接触し、または、排藁束中に差し込んで、該排藁の穂先部分を開くことによって、その内部又は上部のささり粒を下方の排稈ラック38に落とすことができ、拡散装置50の下方に配置される揺動選別装置6により、再度選別されることで、ささり粒を回収することができる。
【0058】
以下では、図10を参照して本実施例に係る二番処理胴23の回動機構について説明する。
【0059】
上述の如く、二番処理胴23は、プーリ111、二番コンベヤ入力軸32aを経て、二番コンベヤ入力軸32aの他端側よりプーリ122、プーリ123、ベベルギア124、ベベルギア125、ベベルギア126を介して、エンジン13からの動力が伝達可能に構成される(図6参照)。
【0060】
図10に示す如く、二番処理胴23は、拡散装置入力軸40aを回動支軸とし、ベベルギア126(図10において不図示)等と一体的に上方に回動可能に構成される。
【0061】
以上の如く二番処理胴23は、上方に回動可能に構成されるので、脱穀部5内をメンテナンスする際には、グレンタンク14を、縦オーガ16aを回動支軸として側方に回動して、二番処理胴23を、拡散装置入力軸40aを回動支軸として上方に回動することで、二番処理胴23、及び二番処理胴23下方に配設されるクリンプ網(不図示)のメンテナンスが容易になる。
また、図11に示す如く、二番処理胴23を水平外方(右方)に回動可能に構成することも可能である。この場合回動支軸は、二番処理胴入力軸23aと拡散装置入力軸40aとの延長線の交点(図11中における点C)に配置される。この場合も前記同様に、二番処理胴23を回動支軸を中心に右方に回動することで、二番処理胴23、及び二番処理胴23下方に配設されるクリンプ網のメンテナンスが容易になる。
【0062】
以下では、図12を参照して本実施例に係るチャフシーブ27の開度制御機構について説明する。
【0063】
図12に示す如く、チャフシーブ27の開度を変更するチャフシーブ開度変更機構60は、回動可能に構成される開度変更体61、開度変更体61を回動させるアクチュエータとなる電動モータ62、開度変更体61と連動連結されるワイヤ63、等で構成される。ワイヤ63の一端は開度変更体61と連結され、ワイヤ63の他端はチャフシーブ27と連結される。そして、開度変更体61が電動モータ62により回動されると、開度変更体61と連結されたワイヤ63が引っ張られ、チャフシーブ27の開度が変更される構成である。
また、図12に示す如く、排藁量を検出する手段である排藁量検出機構70は、排藁チェーン17に沿って設けられる排藁挟扼ガイド71と、排藁挟扼ガイド71に垂設される検出棒72と、検出棒72の下端に当接可能、かつ、支持部73を中心として回動可能に設けられる検出片74、支持部73近傍に設けられ検出片74の回動角度を検出する手段となるポテンショメータ75、等で構成される。そして、排藁チェーン17と排藁挟扼ガイド71との間に挟持される排藁の層厚に応じて、排藁挟扼ガイド71が上下方向に作動し、それに従動して検出棒72が上下方向に作動して検出片74を回動させる。この回動角をポテンショメータ75により検出することで、排藁の層厚(つまり排藁量)を検出する構成である。
【0064】
電動モータ62及びポテンショメータ75は、コンバイン1の動作を制御するコントローラ80に接続され、ポテンショメータ75により検出された回動角がコントローラ80に入力される。コントローラ80は前記回動角の入力を受けて、該回動角に応じたチャフシーブ27の最適な開度を算出して電動モータ62に出力する値を決定し、係る出力により電動モータ62を作動させチャフシーブ27の開度を変更する構成である。
また、図12に示す如く、運転部10には収穫物の種類及びチャフシーブ27の設定開度を入力する選別操作ダイヤル81が設けられる。選別操作ダイヤル81はコントローラ80と接続され、その設定値がコントローラ80に出力される。
【0065】
以上の如く、穀稈の刈取・脱穀作業開始時にはコントローラ80にオペレータによる選別操作ダイヤル81の設定値(「初期設定チャフ開度」)が入力され、穀稈の刈取・脱穀作業時にはコントローラ80にポテンショメータ75より排藁量が入力され、該排藁量に適したチャフ開度が算出される(「算出チャフ開度」)。これら二つの入力を受けたコントローラ80は、(1)算出チャフ開度と初期設定チャフ開度のうちチャフシーブ27の開度が大きい方、(2)算出チャフ開度と初期設定チャフ開度のうちチャフシーブ27の開度が小さい方、(3)常に算出チャフ開度、(4)常に初期設定チャフ開度、のいずれかを、最終的に電動モータ62に出力可能に構成される。なお、この出力値は、運転部10に設けられる設定手段によって選択可能としてもよく、コントローラ80内にていずれかを予め設定しておいてもよい。
【0066】
以上の如く排藁量を検出する手段となる排藁量検出機構70は、排藁挟扼ガイド71と、排藁挟扼ガイド71の移動量の検知手段となるポテンショメータ75と、を具備し、ポテンショメータ75をコントローラ80と接続して、ポテンショメータ75の出力によってコントローラ80が排藁量を検知するように構成したので、排藁量検出機構を簡単な構成とすることができ、コストを低くできる。また、チャフシーブ27の開度を変更する手段となるチャフシーブ開度変更機構60は、開度変更体61と、アクチュエータとなる電動モータ62と、ワイヤ63と、を具備し、開度変更体61及び電動モータ62によってチャフシーブ27の開度を変更するように構成したので、例えばコンバイン1の回行時、条合わせ時等の排藁検出量がゼロになる時においても、チャフシーブ27を開状態に保持して選別作用を維持でき、係る状況における選別ロス(三番ロス)を防止できる。また、運転部10に選別操作ダイヤル81を設け、オペレータにより操作可能に構成したので、収穫物、圃場及び収穫の状況に応じたチャフシーブ27の開閉を設定でき、三番ロスを効率よく防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るコンバインの側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく脱穀部の側面断面図。
【図4】同じく背面図。
【図5】同じく概略平面図。
【図6】同じく動力伝達構成を示すスケルトン図。
【図7】本発明に係る拡散装置の側面拡大図。
【図8】(a)本発明の一実施例に係る拡散装置の斜視図(b)本発明の別実施例に係る拡散装置の斜視図。
【図9】(a)本発明の別実施例に係る拡散装置の斜視図(b)本発明の別実施例に係る拡散装置の斜視図。
【図10】本発明の一実施例に係る二番処理胴の回動機構を示す側面図。
【図11】本発明の一実施例に係る二番処理胴の回動機構を示すスケルトン図。
【図12】本発明の一実施例に係るチャフ開度の制御機構を示す側面図。
【符号の説明】
【0068】
1 コンバイン
5 脱穀部
13 エンジン
32 二番コンベヤ
38 排稈ラック
40 拡散装置
40a 拡散装置入力軸(回転軸)
41 拡散胴(回転体)
42 羽根体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェンと、該フィードチェンにより搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、を具備するコンバインの脱穀部内に設けられ、該扱胴によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置であって、
該扱胴の回転軸と水平方向に略直交する回転軸を有し、該回転軸より放射状に延びる羽根体を複数有する回転体を具備するとともに、該回転体は、搬送される穀稈に対して該羽根体が搬送下流側から衝突する方向に回転する、
ことを特徴とする脱穀部の拡散装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記扱胴の終端部下方に具備される排稈ラックの上方に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の脱穀部の拡散装置。
【請求項3】
前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、該回転体の長手方向全域に亘る板状の部材である、
ことを特徴とする請求項2に記載の脱穀部の拡散装置。
【請求項4】
前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、排藁の穂先側に具備される棒状の部材である、
ことを特徴とする請求項2に記載の脱穀部の拡散装置。
【請求項5】
前記回転体は、エンジンからの動力を二番コンベヤに伝達する伝達機構により駆動される、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の脱穀部の拡散装置。
【請求項1】
穀稈の株元を挟扼して搬送するフィードチェンと、該フィードチェンにより搬送される穀稈を脱穀する扱胴と、を具備するコンバインの脱穀部内に設けられ、該扱胴によって脱穀された後の排藁を拡散する脱穀部の拡散装置であって、
該扱胴の回転軸と水平方向に略直交する回転軸を有し、該回転軸より放射状に延びる羽根体を複数有する回転体を具備するとともに、該回転体は、搬送される穀稈に対して該羽根体が搬送下流側から衝突する方向に回転する、
ことを特徴とする脱穀部の拡散装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記扱胴の終端部下方に具備される排稈ラックの上方に配設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の脱穀部の拡散装置。
【請求項3】
前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、該回転体の長手方向全域に亘る板状の部材である、
ことを特徴とする請求項2に記載の脱穀部の拡散装置。
【請求項4】
前記羽根体は、該回転体の外周面上に、放射状に延び、かつ、排藁の穂先側に具備される棒状の部材である、
ことを特徴とする請求項2に記載の脱穀部の拡散装置。
【請求項5】
前記回転体は、エンジンからの動力を二番コンベヤに伝達する伝達機構により駆動される、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の脱穀部の拡散装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−38(P2009−38A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162940(P2007−162940)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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