説明

自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ

本発明は、自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ(1)であって、ブレーキキャリパが設けられている形式のものに関する。本発明によれば、ブレーキキャリパ(2)が、粗成形によって、ディスクブレーキ(1)の作動装置の電気機械部分(8,9,10)のためのケーシング(7)を備えた1部材で製造され、この場合ケーシング(7)は、形状安定性の中空体を成す。ケーシング(7)は、小さな肉厚で、高い曲げ−ねじり剛性を有するブレーキキャリパ(2)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の、自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキに関する。
【0002】
従来技術
電気機械式ディスクブレーキは公知である。電気機械式ディスクブレーキは、電気機械式作動装置を備えており、作動装置によって、ブレーキディスクを作動させるために、要するに制動するために、摩擦ブレーキパッドが、ブレーキディスクに押付可能である。電気機械式作動装置は、一般的に電動モータを備えており、電動モータによって、回転/並進−変換装置、たとえばねじ山伝動装置を介して、摩擦ブレーキパッドは、ブレーキディスクに押し付けられる。多種多様の形式で、電動モータと回転/並進−変換装置との間に、伝達装置が介在されている。回転/並進−変換装置の別の可能性も存在し、たとえば電動モータ、有利には伝達装置によって、カムが旋回され、カムは、摩擦ブレーキパッドを、ブレーキディスクに押し付けるか、またはラック伝動装置が用いられ、ここでは歯車が、ラックを運動させ、ラックは、摩擦ブレーキパッドを移動させる。ラックは、真っ直ぐでなくてもよい。
【0003】
自己増幅を得るために、ランプまたはランプセットを備えたランプ機構が公知であり、ランプ機構は、ブレーキディスクに関して勾配(斜度)を有しており、要するに単数または複数のランプとブレーキディスクとの間の距離は、ブレーキディスクの接線方向または周方向で漸減する。ランプは、たとえば螺旋状の経過を有することができる。単数または複数のランプの勾配は、単数または複数のランプの延在経過で変化させることができ、これによってディスクブレーキの作動時に自己増幅の大きさが変化する。したがって単数または複数のランプは、始端部で、比較的大きな勾配を有しており、これによって摩擦ブレーキパッドとブレーキディスクとの間の空隙は、作動開始段階で、迅速に克服することができ、終端部で、単数または複数のランプは、比較的小さな勾配を有しており、これによって比較的高い作動−制動力で高い自己増幅が得られる。単数または複数のランプが長さにわたって一定の勾配を有していると、単数または複数のくさびおよびくさび機構とも呼ばれる。単数または複数のランプは、ブレーキキャリパおよび/または摩擦ブレーキパッドの、有利にはブレーキディスクとは反対側の背面に配置することができる。
【0004】
摩擦ブレーキパッドは、単数または複数のランプを介してディスクブレーキのブレーキキャリパに支持されている。ディスクブレーキを作動させるために、摩擦ブレーキパッドは、電気機械式作動装置によって、単数または複数のランプに沿って移動され、それもブレーキディスクに接触して、ブレーキディスクに押し付けられるまで移動される。回転するブレーキディスクは、摩擦力を摩擦ブレーキパッドに及ぼし、摩擦力は、摩擦ブレーキパッドを、単数または複数の上りのランプに向かって負荷する。単数または複数のランプにおける摩擦ブレーキパッドの支持によって、くさび原理に従って、ランプに対する垂直力が摩擦ブレーキパッドに及ぼされ、垂直力は、ブレーキディスクに対する垂直力成分を摩擦ブレーキパッドに及ぼし、摩擦ブレーキパッドを、作動装置によって及ぼされる押圧力に対して追加的にブレーキディスクに押し付ける。ブレーキディスクの押圧−制動力は、これによって増幅される。
【0005】
公知のディスクブレーキは、ブレーキキャリパを備えており、ブレーキキャリパに、ディスクブレーキの電気機械部分が取り付けられており、この場合電気機械部分として、作動装置の構成部材や自己増幅装置の構成部材が挙げられる。
【0006】
電気機械式ディスクブレーキのブレーキキャリパは、一般的に、もちろん絶対ではないが、浮動キャリパとして形成されており、つまりブレーキキャリパは、ブレーキディスクに対して横向きに移動される。ブレーキディスクの片側に摩擦ブレーキパッドが押し付けられると、ブレーキキャリパは、ブレーキディスクに対して横向きに移動され、別の摩擦ブレーキパッドをブレーキディスクの別の片側に押し付けるので、両方の摩擦ブレーキパッドを押し付けるために、単に1つの作動装置および自己増幅装置しか必要とされない。作動装置および自己増幅装置は、ブレーキディスクの同じ側に配置する必要はない。
【0007】
発明の効果
本発明による、請求項1に記載の構成を有する、自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキには、ブレーキキャリパおよびケーシングが設けられており、ケーシング内に、ブレーキキャリパの電気機械部分が取り付けられている。ケーシングは、ブレーキキャリパの一部であり、特にケーシングは、ブレーキキャリパと一体的になっているか、または複数部分から成るブレーキキャリパでは、ブレーキキャリパの一部と一体的になっている。本発明によるディスクブレーキのケーシングは、形状安定性の中空体を成しており、中空体は、ブレーキキャリパを、曲げおよび/またはねじりに対して補強している。したがって本発明の思想は、ブレーキキャリパを、同時にディスクブレーキの電気機械部分のためのケーシングとして形成することであり、これによってブレーキキャリパは、空間的な形状を有し、またこれによって肉厚の比較的小さな場合でも形状付与によって安定性を有しており、特に曲げおよびねじりに対して安定性を有している。ブレーキキャリパもしくはケーシングの形状安定性の構造は、自己支持作用を有する自動車車体と比肩し得るものであり、車体は、自重下で曲がるような、極めて小さな曲げ−ねじり剛性を有する薄い金属薄板から製作されているにもかかわらず、高い曲げ−ねじり剛性ならびに形状安定性を有している。本発明によって、同時に高い安定性を有する、ブレーキキャリパの軽量の構造形式が実現される。接合に起因する製造誤差は、回避されるか、一連の製造誤差と同様に低減される。同様に取付コストも削減される。
【0008】
従属請求項には、請求項1に記載した本発明の実施形態の、有利な形態および改良形を記載した。
【0009】
請求項2によれば、ディスクブレーキが、ランプ機構を有する自己増幅装置を備えている。この場合、ランプ機構の少なくとも1つのランプが、ケーシングと一体的に形成されていて、かつケーシングの補強リブを形成している。ケーシングおよびブレーキキャリパは、追加的に自己増幅に必要な、ランプ機構の単数または複数のランプによって補強される。本発明のこのような実施形態は、ケーシングの形状付与によるブレーキキャリパの更なる補強に寄与する。
【0010】
請求項3によれば、ランプ機構の少なくとも1つのランプが、ディスクブレーキの作動装置の伝動装置の伝動軸のための支承ブロックを成している。これによって、2つの機能が1つの構成部材にまとめられる。
【0011】
請求項4は、形状付与によって安定性を得るブレーキキャリパに関する、本発明の根底を成す思想を表しており、請求項4によれば、単数または複数のランプおよび/または支承ブロックが協働して、ケーシングの補強リブを形成しており、補強リブは、ケーシングをたとえば縦方向で貫通している。これによって、ケーシングの縦方向、つまりディスクブレーキに関する周方向もしくは割線方向で高い曲げ剛性が得られ、ひいてはディスクブレーキの作動時に一般的に高い曲げ負荷にさらされる方向で得られる。
【0012】
請求項5によれば、ケーシングの補強リブは、互いに、かつ/またはケーシング壁に対して当接して配置されている。このためにたとえばT形または交差する方向での当接(突き合わせ)が考慮され、当接は、直角でなくてよい。これによってケーシングは、横断面でみてダブルT形支持体として形成することができ、これによって極めて高い形状安定性を有し、かつ高い剛性を有して形成することができる。
【0013】
総括すると、本発明は、ケーシングもしくはブレーキキャリパのリブ形成を目的としており、これによって比較的小さな肉厚、僅かな材料使用量かつ僅かな重量で、高い形状安定性および高い剛性を得ることができ、この場合特にいずれにせよ必要とされる構成要素、たとえば自己増幅装置のランプ機構のランプが補強リブとして利用される。
【0014】
請求項6によれば、ケーシングは、粗成形部分であり、たとえば鋳造、焼結または鍛造によって製作される。これによって本発明によるブレーキディスクのケーシングひいてはブレーキキャリパの簡単で安価な製造が、同時に高い形状付与自由度を有して実現される。
【0015】
以下に、図面につき本発明の実施例を詳しく説明する。
【0016】
実施例の説明
図1に示した、本発明による自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ1は、ブレーキキャリパ2を備えており、ブレーキキャリパ2は、浮動キャリパとして形成されており、つまりブレーキキャリパ2は、ブレーキディスクに対して横方向で移動可能にガイドされている。ブレーキキャリパ2の摺動ガイドは、図面では、ブレーキキャリパ2のウェブ4によって覆われていて、看取されない。そのような摺動ガイドは、公知であり、したがってここでは詳しい説明は省略する。
【0017】
ブレーキキャリパ2は、相互間隔を有して互いに平行に配置されたプレート5,6を備えており、プレート5,6は、ブレーキディスク3の両側に位置していて、ブレーキディスク3に対して平行に配置されている。両方のプレート5,6は、縦方向端部でウェブ4によって、互いに一体的に結合されている。ウェブ4は、ブレーキディスク3に対して横向きに延びていて、かつブレーキディスク3の周の外側に配置されている。ウェブ4は、プレート5,6のほぼ縦中央部分に設けられており(図2参照)、これによってウェブ4は、ディスクブレーキ2の作動時に、実質的に専ら引張負荷され、場合によっては僅かに曲げ負荷され、プレート5,6は、互いに平行に維持され、ディスクブレーキ1の作動力または引張力によって互いに斜めに押圧されることはない。ブレーキディスク3の両側に配置されたプレート5,6は、ウェブ4によって相互結合されており、プレート5,6によって、ブレーキキャリパ2は、いわゆる浮動キャリパ(Rahmensattel;スライディングキャリパ)を成す。
【0018】
ブレーキキャリパ2の2つのプレートのうちの一方5は、ケーシング7を備えており、ケーシング7は、プレート5の平面から突出し、かつ成形(形状付与)によって形状安定性の3次元的な中空体を形成する(図2参照)。ケーシング7は、プレート5と一体的であり、つまりケーシング7は、ブレーキキャリパ2の一体的な構成部材である。両方のプレート5,6とプレート5,6を結合するウェブ4とケーシング7とを備えたブレーキキャリパ2は、1部材で粗成形部分として金属ダイカストによって製作されている。ケーシング7は、プレート5を補強し、特にプレート5は、ケーシング7によって、僅かな肉厚およびプレート厚でも高い曲げ剛性および高いねじり剛性を有している。
【0019】
ケーシング7には、電動モータ8が配置されており、電動モータ8によって、大歯車9が駆動可能である。電動モータ8の駆動ピニオンは、電動モータ8の、図面にみられる側とは反対側の端面に位置しており、したがって図面では看取されない。大歯車9は、軸を介してピニオン10と相対回動不能に(つまり一緒に回転するように)結合されており、ピニオン10は、中歯車11と噛み合い、中歯車11は、軸を介して小歯車12と相対回動不能に結合されている。電動モータ8、ピニオン10および大歯車9は、大部分でブレーキキャリパ2のプレート5の、ブレーキディスク3とは反対側の外側に位置しており、電動モータ8、ピニオン10および大歯車9は、ケーシング7内に取り付けられている。
【0020】
小歯車12および中歯車11は、大部分で、プレート5の、ブレーキディスク3に向いた内側に位置する。大歯車9および中歯車11は、図面から看取されないスリットを通ってプレート5を貫通している。電動モータ8、大歯車9およびピニオン10は、ディスクブレーキ1の、ケーシング7内に取り付けられた電気機械部分であり、それゆえケーシング7は、モータ−伝動装置ケーシングとも呼ばれる。
【0021】
図2には、図1の矢印II方向からみたブレーキキャリパ2の端面を示した。ブレーキキャリパ2は、ウェブ4で中断して図示しており、プレート6は図示していない。図2には、個々の構成部材を省いてブレーキキャリパ2だけを示しており、要するに電気機械部分6〜8は図示していない。ケーシング7とあとで説明するランプ17とを備えたプレート5が看取される。
【0022】
ブレーキキャリパ2のプレート5の、ブレーキディスク3に向いた内側で、摩擦ブレーキパッド14を備えたパッド支持プレート13が、ブレーキディスク3の近くで、プレート5から間隔を有して配置されている。摩擦ブレーキパッド14を備えたパッド支持プレート13は、プレート5およびブレーキキャリパ2に対して運動可能である。パッド支持プレート13は、ブレーキディスク3とは反対側の背面にラック15を備えており、ラック15と小歯車12とが噛み合う。ラック15は、ブレーキディスク3に対して角度を成して斜めに延びていて、しかもブレーキディスク3の回転軸線を中心に円弧状に延びており、つまりラック15の延伸経過は、螺旋状である。
【0023】
パッド支持プレート13は、パッド支持プレート13の裏面に配置されていて、かつ回動可能に支承された3つの転動体(ローラ)16を介して、テーパ(Keile)とも呼ばれるランプ17に支承されており、ランプ17は、ブレーキキャリパ2のプレート5の、ブレーキディスク3に向いた内側に配置されている。ランプ17は、ラック15と同等の勾配(ピッチ)で、螺旋状に、つまりブレーキディスク3の回転軸線を中心にブレーキディスク3に対して角度を成して延びている。転動体16は、長い底辺を有する仮想の三角形の頂点に配置されており、2つの転動体16および2つのランプ17は、ブレーキディスク3に関して、所属のランプを有する第3の転動体16としての第3または中央の転動体および所属のランプよりも半径方向外側に位置しており(図2参照)、第3の転動体および所属ランプは、ブレーキディスク3の周方向で、つまりブレーキキャリパ2のプレート5の縦方向で、両方の別の転動体16および両方の別のランプ17の間に位置する。これによってブレーキキャリパ2において、パッド支持プレート13の静止した規定の3点支持が形成される。図2から看取されるように、ランプ17は、横勾配を有しており、この場合外向きの、半径方向で内側に位置する中央のランプ17の横勾配は、内向きの、半径方向外側のランプ17の横勾配に対向している。これによってパッド支持プレート13の縦ガイドが実現される。原則として、逆に、中央のランプ17を、ブレーキディスク3に関して、両方の別のランプ17よりも半径方向外側に配置し、かつ/またはランプ17の横勾配を逆にすることもできる(図示していない)。
【0024】
ディスクブレーキ2の作動は、電動モータ8によって行われ、電動モータ8は、伝達装置(減速装置)を成す歯車9,11,12およびピニオン10を介して、ラック15ひいてはパッド支持プレート13を、周方向で、または正確に述べるとブレーキディスク3に対して螺旋状の軌道に沿って運動させる。この場合パッド支持プレート13の転動体16は、ブレーキキャリパ2のランプ17に沿って転動する。摩擦ブレーキパッド14は、ブレーキディスク3に押し付けられ、浮動キャリパとして形成されたブレーキキャリパ2を、ブレーキディスク3に対して横向きに移動させるので、ブレーキキャリパ2の別のプレート6の、ブレーキディスク3に向いた内側に配置された固定的な第2の摩擦ブレーキパッド18が、ブレーキディスク3の別の面に押し付けられる。ブレーキディスク3は、制動される。回転するブレーキディスク3は、摩擦力を、周方向で、ブレーキディスク3に押し付けられる摩擦ブレーキパッド14,18に及ぼすので、摩擦ブレーキパッド14,18は、パッド支持プレート13を、移動方向で負荷する。ブレーキキャリパ2のランプ17に沿った、転動体16によるパッド支持プレート13の支持は、いわゆるくさび原理(Keilprinzip)に従って、ランプ17の、ブレーキディスク3に対して斜めの延伸経過に基づいて、ランプ17に対する垂直力を及ぼし、この力は、転動体16に作用する。ランプ17に対する垂直力は、ブレーキディスク3に対して横向きの成分を有しており、横向きの成分は、摩擦ブレーキパッド14を備えたパッド支持プレート13を、電動モータ8によって形成される押圧力に対して追加的に、ブレーキディスク3に押し付ける。これによって制動力は高められる。転動体16およびランプ17は、ディスクブレーキ2の自己増幅装置を成す。歯車9,11,12およびピニオン10は、伝達装置を成し、伝達装置は、電動モータ8およびラック15と協働して、ディスクブレーキ2の電気機械式作動装置を成す。記載の構成部材は、ディスクブレーキ2の電気機械部分8〜12を成し、これらの電気機械部分8〜12は、一部でディスクブレーキ2のケーシング7内に取り付けられている。
【0025】
両方の外側のランプ17は、相互結合されていて、ディスクブレーキ2の補強リブ18を成す。ランプ17ひいては補強リブ18は、ブレーキディスク3の回転軸線を中心に円筒状に延びており、補強リブ18の中央領域は、支承ブロックを成しており、支承ブロックに、中歯車11および小歯車12の軸が回動可能に支承されている。補強リブ18は、ブレーキキャリパ2のプレート5と一体的であり、補強リブ18は、ケーシング7と同様に、プレート5の、別の、つまりブレーキディスク3に向いた内側面から突出していて、かつケーシング7と同様に、ブレーキキャリパ2と、成形(形状付与)、たとえば金属ダイカストによって製作される。補強リブ18は、ブレーキディスク3の周方向で、かつブレーキキャリパ2のプレート5の縦方向で延びており、補強リブは、プレート5を特に曲げに対して補強する。補強リブ18は、ブレーキキャリパ2の補強機能以外に複数の機能を併せ持っており、補強リブ18は、大中小の歯車11,12,13の軸と、パッド支持プレート13を支持するためのランプ17との支承ブロックを成す。内側または中央のランプ17も同様に、ブレーキキャリパ2と一体的な補強リブおよび支承ブロックを成しており、支承ブロックに、中歯車11および小歯車12の軸が、第2の箇所で、回動可能に支承されている。この補強リブ17も複数の機能を併せ持つ。ブレーキキャリパ2を更に補強するために、ブレーキキャリパ2は、ケーシング7の外側面およびプレート5の外側面で、補強リブ18に対する横リブ19と縦リブ20とを備えている。ブレーキキャリパ2は、補強リブ形成と、中空体として形成されたケーシング7とによって、高い曲げ−ねじり剛性を有している。図2から判るように、補強リブ18および縦リブ20は、プレート5およびケーシング7の壁に突き合わせて配置されている。これによってブレーキキャリパ2は、ある種のダブルT形支持体(Doppel-T-Traeger)の形状、つまり高い曲げ−ねじり剛性を有する形状を備える。
【0026】
戻しばね21は、ブレーキキャリパ2にパッド支持プレート13を保持する。実施例では、戻しばね21として引張コイルばねが使用されており、引張コイルばねは、パッド支持プレート13とブレーキキャリパ2のドーム22に取り付けられている。ドーム22は、ブレーキキャリパ2と一体的に形成されている。
【0027】
ブレーキキャリパ2は、全体的に、または部分的にランプ17の走行面の領域およびラック15の領域で硬化することができる。実施例では、別の構成が選択されており、ランプ17は、個別部分として製作された、硬化されたストリップ状の走行面23を有している。図3に示したように、走行面23は、ランプ17の溝に取り付けることができ、または図4に示したように、ランプ17に被せ嵌めることができる。有利には、走行面23または転動体16は、位置製造誤差を補償するために湾曲しており、つまり転動体16の回動軸線は、ランプ17の走行面23の表面に対して正確には平行でない。ランプ17の走行面23の横勾配は、図3および4から良好に看取することができる。
【0028】
走行面23と同様に、ラック15も、実施例では、リブに沿って取り付けられた、硬化された耐摩耗性の個別的な構成部材である。(図5)。
【0029】
ブレーキキャリパ2のプレート5の、ブレーキディスク3に向いた内側で、ディスクブレーキ1の機械部分は、ゴムまたはプラスチックから成るベローズ24で包囲されている。ベローズ24は、楕円形の横断面を有するチューブ状に形成されており、ベローズ24は、プレート5からパッド支持プレート13まで延びているので、ディスクブレーキ1の機械可動部分は、完全にケーシング7、ベローズ24およびパッド支持プレート13に包囲されていて、水分および汚れから保護されている。プレート5に対するベローズ24の取付は、図6に示した。ベローズ24は、内向きに変形された、周方向で延びる縁部25を備えており、縁部25は、プレート5に接触している。楕円リング状の屈曲された押さえ26が、プレート5に取り付けられており、押さえ26は、ベローズ24の縁部25に係合して、縁部25をクランプしてプレート5に保持する。ベローズ24を固定する別の構成は、パッド支持プレート13に実現されている。ここではベローズ24は、パッド支持プレート13を周に沿って取り囲んでいて、かつ追加的に図面では看取されない、パイプクリップ(Rohrschelle)としてのベルトによって固定されている。確実な固定のために、ベローズ24は、パッド支持プレート13の、周方向で延びる隆起縁部に被さって係合するか、またはパッド支持プレート13の周方向溝に進入して係合し、追加的にベルトによって固定される(図示していない)。これによってベローズ24の解離に対する安全性は、大幅に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による、自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキを、半径方向外側からブレーキディスクに向かって示す図である。
【図2】図1の矢印II方向でみた、ディスクブレーキのブレーキキャリパを示す図である。
【図3】図1に示したディスクブレーキのランプを示す横断面図である。
【図4】図3に示したランプの変化実施例を示す図である。
【図5】図1に示したディスクブレーキのラックを示す横断面図である。
【図6】図1のVIで示した部分の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ(1)であって、
ブレーキキャリパ(2)およびケーシング(7)が設けられており、該ケーシング(7)内に、ディスクブレーキ(1)の電気機械部分(8,9,10)が取り付けられている形式のものにおいて、
ケーシング(7)が、ブレーキキャリパ(2)の一部分であり、ケーシング(7)が、形状安定性の中空体であり、該中空体が、ブレーキキャリパ(2)を、曲げおよび/またはねじりに対して補強していることを特徴とする、自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項2】
ブレーキディスク(1)が、ランプ機構を有する自己増幅装置(16,17)を備えており、ランプ機構の少なくとも1つのランプ(17)が、ケーシング(7)と一体的に形成されていて、かつケーシング(7)の補強リブ(18)を形成している、請求項1記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項3】
ブレーキディスク(1)が、ランプ機構を有する自己増幅装置(16,17)を備えており、ランプ機構の少なくとも1つのランプ(17)が、ディスクブレーキ(1)の伝動装置の伝動軸のための支承ブロックを成している、請求項1記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項4】
ランプ(17)が、別のランプ(17)および/または支承ブロックと協働して、ケーシング(7)の補強リブ(18)を形成している、請求項2記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項5】
ケーシング(7)の補強リブ(17)が、互いに、かつ/またはケーシング壁に当接して配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項6】
ケーシング(7)が、粗成形部分である、請求項1記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項7】
ブレーキディスク(1)が、ランプ機構を有する自己増幅装置(16,17)を備えており、ランプ機構の少なくとも1つのランプ(17)が、独立した構成部材として形成された走行面(23)を備えている、請求項1記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項8】
ディスクブレーキ(1)が、伝動装置の一部としてラック(15)を備えており、該ラック(15)が、独立した構成部材として形成されていて、かつケーシング(7)内に取り付けられている、請求項1記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項9】
ディスクブレーキ(1)が、ベローズ(24)を備えており、該ベローズ(24)が、押さえ(26)によって、ブレーキキャリパ(2)またはケーシング(7)に固定されている、請求項1記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。
【請求項10】
ブレーキディスク(1)が、ランプ機構を有する自己増幅装置(16,17)を備えており、ランプ機構の転動体(16)および/または走行面(23)が、湾曲した走行面を備えている、請求項1記載の自己増幅型の電気機械式ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−503393(P2009−503393A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523279(P2008−523279)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063200
【国際公開番号】WO2007/012523
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】