説明

苗移植機

【課題】つる苗100の苗茎部100aを一対の板状の植付爪28で挟持して畝土に突入するときの土圧を軽減させて、苗茎部の損傷を防止する。
【解決手段】一対の植付爪28で苗茎部100aを植付杆29の先端部位29aと実質上平行状にて挟持されると、この一対の植付爪28の断面方向において、下辺28b側には、前記先端部位29aと苗茎部100aとの間に、植付爪28の板厚さに略等しい切欠き凹所28cが下方向に開放されて形成されることになる。従って、植付け時に一対の植付爪28が畝上面18に突入したときに、その畝土が前記左右切欠き凹所28c内の苗茎部100aの下面に当たると、その土圧力で苗茎部100aが前記左右いずれか一方の切欠き凹所28c方向に逃げるように、苗茎部100aは撓むことができ、当該苗茎部100aが畝土で潰されたり、破断するなどの損傷を受けることを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つる苗を畝に植え付ける苗移植機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、甘薯の苗等のつる苗を苗供給機構によって植付装置の近傍まで搬送し、苗茎端部を一対の植付体の先端部である作用片(挟持片)で掴み、該植付体を上下方向に揺動させ、一対の植付体の先端を圃場(畝土)に突入させることによって、植付作業を行う苗移植機は公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、両植付体は、その上下揺動に連動させた植付駆動アームのカム機構によって開閉する構成としていた。また、特許文献2では、マルチフィルムを被装した圃場において、つる苗の植付け時に、各植付体の先端部の作用片である挟持片がマルチフィルムを走行機体の前後方向の筋状に円滑に突き破る(切断する)ことができるように、当該挟持片の先端部に鋭角状の刃体が形成されていた。
【0004】
また、植付け作業により上記挟持片の内面(挟持面)及び外面に泥土やマルチフィルムの切れ端などが付着し、次に苗茎端部を一対の挟持片にて掴む(把持する)ときの苗茎端部の挟持姿勢が不安定になったり、挟持力がうまく発揮できなくなる。さらには、挟持片によるマルチフィルムの突き破り孔が大きくなり過ぎるという問題を解消するため、特許文献2では、たわし状や挟持片の通過を許容するスリットを備えたスクレーパ手段が、走行機体の後部であって、一対の植付体の上昇行程の把持片の内外面に摺接できるように位置固定的にぶら下げて配置されていた。
【特許文献1】特開2004−113077号公報
【特許文献2】特開2005− 80620号公報(段落番号0035〜0038、図7、図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の構成では、スクレーパ手段が位置固定的であるため、植付体における挟持片が走行機体の前側上部位置から後側下降位置に向かって、船底状の軌跡を描くように、植付体を昇降往復動するためのリンク機構が挟持片よりも走行機体の後部側に配置されていると、スクレーパ手段とリンク機構若しくは植付体とが位置的に干渉しあうことになり、このような構成の植付体昇降往復動機構のものに適用できないという問題があった。
【0006】
また、スクレーパ手段おけるスクレーパ体を吊支する支持体が上下に長いと、挟持片の運動軌跡に合うようにスクレーパ体を固定するように剛性を与えると、大型になって、かえって邪魔になるという問題があった。
【0007】
本願発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、スクレーパ体の姿勢を植付体の戻り上昇行程のうちの一時的にのみ挟持片に摺接させ、その他の行程時には、スクレーパ体が挟持片から離れさせて、作業の邪魔にならず、且つコンパクトな構造としたスクレーパし備えたつる苗移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、苗を苗供給機構によって植付装置の近傍まで搬送し、苗の茎端部を左右一対の植付体にて掴んで苗取りを行い、植付体往復動機構によって前記一対の植付体を上下方向に揺動させて圃場に突入させることにより、苗の植付作業を行う苗移植機において、前記一対の植付体における苗の挟持片を払拭するためのスクレーパ手段を備え、このスクレーパ手段におけるスクレーパ体は、前記植付体の植付後の戻り上昇行程中に前記左右一対の挟持片の内面に摺接する姿勢と、前記戻り上昇行程以外のとき前記挟持片から離間位置を保持する姿勢とに変更する連動機構を介して駆動されるものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の苗移植機において、前記連動機構は、前記植付体往復動機構の駆動軸の回転に同期して作動するものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の苗移植機において、前記連動機構は、前記駆動軸と一体的に回転するカム体と、揺動リンクに設けられたカムフォロアとを備え、前記揺動リンクに連結されて、前記スクレーパ手段におけるスクレーパ体を揺動可能となるように構成されているものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の苗移植機において、前記植付体は前記駆動軸よりも走行機体の前方に配置された苗供給機構との前後間にて上下往復運動を行い、前記スクレーパ体は前記植付体における前記挟持片よりも前方に離間するように構成されているものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の苗移植機において、前記一対の植付体の植付けサイクルに同期して畝面に押圧する押圧体が備えられた押圧手段を更に備え、前記押圧体は、畝面との当接面が平坦面に形成されているものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、スクレーパ手段におけるスクレーパ体は一対の挟持片である植付爪の昇降往復移動の運動に連動(同期)して、上昇行程中の後半では一対の植付爪の内面間に位置し、最上位置から下降行程中及び植付け後の上昇行程の開始領域(前半部)では、スクレーパ体が一対の植付爪から前方且つ上方に離間するように連動するので、一対の植付爪による苗茎部の把持(挟持)や畝土への植付け作業時に、スクレーパ体が邪魔にならず、且つ植付けた苗を傷付けないという効果を奏する。
【0014】
請求項2に記載の発明では、前記植付体の植付後の戻り上昇行程中に前記左右一対の挟持片の内面に摺接する姿勢と、前記戻り上昇行程以外のとき前記挟持片から離間位置を保持する姿勢とに変更する連動機構は、前記植付体の往復動機構の回転に同期して駆動する共通の駆動軸であるため、構成が簡単になり、且つ製造コストも低減できるという効果を奏する。
【0015】
請求項3に記載の発明では、前記連動機構は、前記駆動軸と一体的に回転するカム体と、揺動リンクに設けられたカムフォロアとを備え、前記揺動リンクに連結されて、前記スクレーパ手段におけるスクレーパ体を揺動可能となるように構成されているものであるので、スクレーパ体を前記連動機構により強制的に移動させるため、一対の挟持片(植付爪)に付着した土を取り除いた後、当該一対の挟持片からスクレーパ体を逃がす(離間する)ことができるという効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載の発明では、前記植付体は前記駆動軸よりも走行機体の前方に配置された苗供給機構との前後間にて上下往復運動を行い、前記スクレーパ体は前記植付体における前記挟持片よりも前方に離間するように構成されているものであるので、挟持片(植付爪)が最上位置から下降行程中及び植付け後の上昇行程の開始領域(前半部)では、スクレーパ体が一対の植付爪から前方且つ上方に離間するように連動するので、一対の植付爪による苗茎部の把持(挟持)や畝土への植付け作業時に、スクレーパ体が邪魔にならず、且つ植付けた苗を傷付けないという効果を奏する。
【0017】
請求項5に記載の発明では、前記一対の植付体の植付けサイクルに同期して畝面に押圧する押圧体が備えられた押圧手段を更に備えているので、一対の植付体による植付け直後のみ、鎮圧体が畝上面に落下し、その他の行程時には、鎮圧体が上昇した位置にあるので、畝の必要箇所以外を鎮圧せず、畝土を無闇に締めつけない。そして、前記押圧体は、畝面との当接面が平坦面に形成されているものであるので、従来のようなローラ状の鎮圧体の場合のように鎮圧面が円弧状に凹むことがなく、本願の鎮圧体は、畝上面との当接面(下面)が平坦面に形成されているので、苗植付け部位の畝上面を広範囲に均平に押圧できて、苗の移植後の根付きが良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施例である苗移植機を示す全体側面図、図2は同じく平面図、図3は苗供給機構の背面図、図4は同じく平面図、図5(a)は苗茎部を把持するホルダ部の平面図、図5(b)は同じく背面図、図6(a)は植付爪により苗茎部が挟持された状態の側面図、図6(b)は図6(a)におけるVIb −VIb 線矢視図、図6(c)は図6(a)におけるVIc −VIc 線矢視断面図、図7は植付駆動軸への動力伝達を示す平面図、図8はスクレーパ手段及び鎮圧手段の同期駆動部の平面図、図9は植付体往復動機構を示す側面図、図10は植付体による畝土への植付け状態を示す図、図11は植付体が開いた状態の植付体開閉ローラ機構を示す背面図、図12は同じく閉じた状態を示す背面図、図13は植付体の上昇行程中にスクレーパ体が一対の植付杆の間に位置するスクレーパ手段の作用準備姿勢を示す側面図、図14はスクレーパ体が一対の植付爪の間に位置して第1の清掃作用を受ける状態を示す側面図、図15はスクレーパ体が一対の植付爪の間から前方に離間した状態(非作用姿勢)を示す側面図、図16は図13の植付体の上昇位置及びスクレーパ体の作用準備姿勢に対応するタイミングでの鎮圧体の姿勢(上昇保持位置)を示す側面図、図17は植付爪が最下降下したタイミングでの鎮圧体の姿勢(上昇保持位置)を示す側面図、図18は植付爪による苗茎部の把持解除姿勢のタイミングでの鎮圧体の落下姿勢を示す側面図、図19は鎮圧体の上昇開始姿勢を示す側面図である。
【0019】
苗移植機1の全体構成について説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、苗移植機1は、畝に沿って走行しながら、自動的に苗100を畝中に植え付ける歩行型の自走式作業機であり、畝間の谷部17を走行する左右一対の前輪2、2および後輪3、3と、畝上面18の上方に位置する走行機体4と、を備えている。
【0021】
本発明の苗移植機1が植え付ける苗の種類は限定するものでないが、以下の本実施例においては、つる苗100の一種である甘藷苗を例に挙げて説明を行なう。
【0022】
走行機体4のメインフレームは、エンジン10が搭載された前側のエンジンフレーム5と、中央部のミッションケース6と、後側のハンドルフレーム7とを、前後方向に連結固定して構成されており、このメインフレーム上に各種装置が支持されている。
【0023】
走行機体4には、前記各種装置として、走行方向の前方より後方に向けて、畝ガイド装置8、前輪支持装置9、エンジン10、後輪支持装置11、前記ミッションケース6、畝高さ検出装置16、苗供給機構12、植付装置13、鎮圧装置14、運転操作部15、が備えられている。
【0024】
なお、これらの各種装置において、ミッションケース6より前側に配置される装置はエンジンフレーム5に支持され、ミッションケース6より後側に配置される装置はハンドルフレーム7に支持されている。
【0025】
畝ガイド装置8は、畝に沿って走行する苗移植機1の走行方向を案内するための装置であり、畝の左右側面(斜面)に当接させるための畝ガイドローラ8a、8aを左右一対備えている。これらの畝ガイドローラ8a、8a間に畝を挟み込み、または、斜面に当接させながら転動させて、この状態で苗移植機1を走行させることで、苗移植機1を運転操作により方向制御することなく、畝に沿って走行させることが可能である。
【0026】
前輪支持装置9には、エンジンフレーム5に回動可能に係止されている上前輪支持軸9aと、上前輪支持軸9aの軸方向にスライド自在で、各前輪2を支持する前輪アーム9b、9bと、が備えられている(図1、図2参照)。
【0027】
後輪支持装置11も、前輪支持装置9と同様の構成であり、ミッションケース6に対して回動可能に係止されている後輪支持軸11aと、後輪支持軸11aの軸方向にスライド自在で、各後輪3を支持するチェンケース11b、11bと、が備えられている。
【0028】
なお、後輪支持軸11aの内部には、後輪3、3の駆動軸が内蔵されており、この駆動軸の回転駆動が、左右それぞれで、チェンケース11b内のチェンを介して、後輪3に伝達される。
【0029】
走行機体4は次の構成により、前輪2、2および後輪3、3に対する高さ位置の調整、つまり畝上面18に対する高さ位置の調整が可能となっている。
【0030】
図1及び図2に示すように、前輪アーム9bとチェンケース11bとは図示せぬ連結軸を介して連結されており、前輪アーム9bおよびチェンケース11bが平行リンクに構成されている。そして、前輪アーム9bまたはチェンケース11bを回転させることで、前輪2、2および後輪3、3に対する走行機体4の上下高さが可変である。
【0031】
本実施例の形態では、チェンケース11bを走行機体4に対して回転させる手段として、エンジンフレーム5とチェンケース11bとを連結して伸縮させるアクチュエータ19が設けられている。このアクチュエータ19を伸縮させることにより、前記平行リンクの作動を介して、前輪2、2および後輪3、3に対して、走行機体4が上下動する。
【0032】
図1及び図2に示すように、走行機体4の上下動は、前記畝高さ検出装置16による畝高さの検出に基づいて行なわれるものである。前記畝高さ検出装置16には、畝上面18と接触するセンサローラ16aと、センサローラ16aを支持しエンジンフレーム5に回動自在に設けられるセンサアーム16bと、が備えられている。
【0033】
このセンサアーム16bの傾斜角度は、エンジンフレーム5と畝上面18との離間距離に関する情報を与えるものである。そして、このセンサアーム16bの傾動に応じて、油圧バルブのスプールが押し引きされて、油圧式とした前記アクチュエータ19の作動が制御され、エンジンフレーム5と畝上面18との離間距離が一定に保たれるように、走行機体4の高さ位置が制御される。
【0034】
次に苗供給機構12について説明する。図1及び図2に示すように、苗供給機構12は、走行機体4のメインフレーム(エンジンフレーム5、ミッションケース6、ハンドルフレーム7)とは別体で構成されており、このメインフレームを主とする本体の組立後に、取り付けることが可能である。苗供給機構12の配設位置は、ミッションケース6の後方かつハンドルフレーム7の上方位置である。
【0035】
この苗供給機構12には、ミッションケース6のPTO軸6aからの動力が伝達される構成であり、ミッションケース6内において該PTO軸6aと後述する出力軸81とが連動して、即ち搬送ベルト21の駆動と後述する植付装置13とが連動して、搬送ベルト21が間欠的に回転駆動されるように構成されている。
【0036】
また、この苗供給機構12は、前記メインフレームに支持される構成であるが、前記PTO軸6aの接続部を解除するだけで、取り外しが可能に構成されており、該メインフレームへの着脱が容易である。図3及び図4に示すように、苗供給機構12は、図示せぬ苗収容ケースに収容されている苗100を適宜所定の間隔で載置して、後述する苗取部21dに搬送し、この苗取部21dにて植付装置13に備える左右一対の植付体20L、20Rにより挟持(把持)して取り出される装置である。
【0037】
苗供給機構12には、後面視(図3)において時計まわりに回転する帯状の搬送ベルト21が備えられている。詳しくは、図3及び図4に示すように、搬送ベルト21は、機体上部側で左右一方向に送る上部横送り部21aと、該上部横送り部21aに続いて下方向に送る下降送り部21bと、該下降送り部21bに続いて上方向に送り前記上部横送り部21aの送り始端側に戻す上昇送り部21cとから構成されており、背面視略逆三角形に保持されている。
【0038】
搬送ベルト21の上面である上部横送り部21aは、前記苗収容ケースから取り出した苗を保持させる載置部である。下降送り部21bと上昇送り部21cの境目は、搬送ベルト21の下端位置となり、植付体20L、20Rに苗を引き継ぐ苗取位置(苗取り部)21dとなっている(図3参照)。
【0039】
搬送ベルト21の外周には、平ベルトからなる搬送ベルト21の外周外方に向けて矩形プレート状の複数の仕切り板21eが搬送ベルト21の幅方向の前後方向(搬送方向と直交する方向)に平行となるように且つ搬送ベルト21の搬送方向に沿って一定間隔で突設されており、作業者は該仕切り板21eの間に苗100を載置し、該苗100の苗茎部100aを後述するホルダ部22に把持させていく。
【0040】
搬送ベルト21の幅方向の前部及び後部には、搬送方向に沿って一定間隔にて係止孔21fが形成されており、搬送ベルト21の右端部(図3の右端部)において、後述する搬送ベルト駆動プーリ68、68の外周に設けられた係止突起が係止孔21f(図4参照)に嵌入されるようになっている。
【0041】
そして、この搬送ベルト21外周の搬送方向と直交する方向の後端部(走行機体4の後端側)には、前記仕切り板21eの間毎にホルダ部22が設けられている。図5(a)、図5(b)に示すように、各ホルダ部22は、プラスチック製等の上向きコ字状の枠体22aの内部にスポンジ等の合成樹脂製で構成した一対の弾性把持体22bが固設されて構成されている。一対の弾性把持体22bは搬送ベルト21の搬送方向の前後(下流側と上流側)とに苗100の茎部を弾性的に把持できる程度に隙間H1をあけて配置されている。また、各弾性把持体22bの上面は前記隙間H1に向かって下向きに傾斜する傾斜面を有し、且つ弾性把持体22bの苗把持部位が搬送ベルト21の幅方向に凸湾曲面を有して、把持するために作業者が挿入したときの苗茎部100aに傷が付かないよう配慮されている。なお、各弾性把持体22bは中空状に形成されており、これにより、各弾性把持体22bの弾性変形量を多くすることができ、苗茎部100aの直径に大小あっても、一対の弾性把持体22bによる苗茎部100aを確実に把持できる範囲を広げることができるものである。
【0042】
さらに、前記ホルダ部22に隣接し、且つ植付体20L、20Rの通過する側に近い部位には、前記枠体22aの一片を上向きに立設させてなるガイド体27が設けられており、このガイド体27には、前記隙間H1に連通する苗茎部100aを案内するための案内溝27aが切欠き形成され、案内溝27aは挿入側が上向きにV字状に広がる実質上Y字状に形成されている。この構成により、つる苗100の苗茎部100aをホルダ部22に手作業で挿入するときの案内が容易になるという効果を奏する。
【0043】
なお、搬送ベルト21の外周に沿って右方から下方にかけて、下降送り部21bには、つる苗100の葉及び苗茎部100aの垂れ下がりを防止するための板状のカバー体58が配設されている(図3参照)。これは、下降送り部21bにおける隣接する仕切り21eの間に位置する苗100の苗茎部100aが、ホルダ部22の一対の弾性把持体22bにて把持(挟持)されているときに、苗100の葉側がぶら下がって、苗100が折れ曲がったりしないように、苗100を受けてガイドするためである。
【0044】
苗供給機構12における搬送ベルト21の下降送り部(下降行程)21bから苗取り部21dまでに亙って延設される丸棒状のガイドレール59が、ホルダ部22及びガイド体27よりも、苗茎部100aの突出側(植付体20L、20Rの通過する側に近い部位)に配置されているものである(図3参照)。この構成により、搬送ベルト21の下降送り部(下降行程)21bにてホルダ部22及びガイド体27により把持(挟持)されている苗茎部100aが重力に垂れ下がって曲がって苗100の姿勢が乱れたり、苗茎部100aがホルダ部22から外れるのを防止し、苗取位置(苗取り部)21dでの植付体20L、20Rによる苗引き継ぎ作業を確実にすることができる。
【0045】
次に、苗供給機構12の駆動力伝達について説明する。図1、図2、図3に示すように、ミッションケース6から後方へ前記PTO軸6aが延設されている。このPTO軸6aの後端部には、ギヤ61が固設されており、該ギヤ61と噛合するギヤ62の支持軸上にはスプロケット57が固設されており、該スプロケット57に苗搬送駆動チェン63の一端が巻回されている。該PTO軸6a後端部と、ギヤ61、62と、ギヤ62とスプロケット57とを軸着する支持軸の前端部は、ギヤボックス64に収納されている。
【0046】
そして、該苗搬送駆動チェン63の他端は、搬送ベルト駆動軸60に遊嵌されるスプロケット(図示せず)に巻回されている。
【0047】
そして、本実施例では、苗搬送駆動チェン63からスプロケットに伝達された駆動力を、図示しないワンウェイカム付きワンウェイクラッチを介して、搬送ベルト駆動軸60へと伝達する構成となっている。
【0048】
そして、メンテナンスや空送りしたい場合などで、苗数本分の搬送ベルト21を回動したい場合などでは、エンジン10を駆動して苗供給機構12を駆動したり、搬送ベルト21を進めるのに時間がかかってしまい、またタイミングを合せることも難しいが、このようにワンウェイカム付きワンウェイクラッチを設けることで、エンジン停止時に、搬送ベルト21を持って搬送方向(図3中、矢印A方向)に回動すると、スプロケットは停止しているが、搬送ベルト21が苗100の配設間隔毎回動されることになる。
【0049】
このようにして、手動で搬送ベルト21を送ることができるから、エンジン10を始動し作業スイッチを「ON」にして空運転をしなくても、搬送ベルト21に配設した苗を苗取位置(苗取り部)21dまで送ることができる。また、植付作業を終了し、エンジン10を停止した後でも、手動で搬送ベルト21を送ることができるので、植付装置13を駆動させることなく容易に搬送ベルト21に残った苗100を取り除ける。
【0050】
次に、図6〜図10を用いて、植付装置13を説明する。
【0051】
植付装置13は、左右一対の植付体20L、20Rと、植付体20L、20Rを苗取位置(苗取り部)21dから畝中まで往復運動させる植付体往復動機構24と、カム機構によって植付体20L、20Rを開閉させる周知の構成の植付体開閉カム機構40とから構成されている。上記周知の植付体開閉カム機構40は、特開2001−103810号公報における苗取出し爪の開閉機構を適用したものであり、ここでは詳述しない。
【0052】
植付体20L、20Rは、苗供給機構12の苗取位置(苗取り部)21dより受け渡されたつる苗100を畝中に移植するものであり、左右の植付体20L、20Rの開閉により、つる苗100の苗茎部100aの保持や、保持した苗100の解放が可能となっている。
【0053】
本発明における各植付体20L、20Rはその先端部に苗の挟持片としての植付爪28を有する。即ち、各植付体20L、20Rは実質上金属製の丸棒を側面視で実質上L字状に屈曲させて左右対称の形状に形成された植付杆29と、各植付杆29の下端(先端)部に固設された板状の植付爪(把持片)28とを備える(図6(a)、図9参照)。
【0054】
より詳しく説明すると、図6(a)〜図6(c)に示すように、各植付爪28の先端縁が側面視で鋭角状(横向きV字状、尖頭形状)の刃物部28aに形成され、刃物部28aの先端縁の上下部位が刃部の断面形状になっている。また、植付爪28の下辺28bには、下向き開放する切欠き凹所28cが下辺28bに沿って適宜長さL1に亙って形成されている。
【0055】
下辺28bの後端部(刃物部)28aから最も離間した部位には、側面視下向き三角形若しくは下辺が短い台形状の刃体28dが一体的に設けられている。なお、この刃体28dの板厚さH3は植付爪28の板厚さH2より若干薄く形成されている。
【0056】
植付杆29の適宜長さの先端部位29aは、各植付爪28の外側面にて前記下辺28bに略沿って配置され、且つ植付杆29の先端部位29aが切欠き凹所28cを外側から覆うようにして溶接などにより固定されている(図6(a)、図6(c)参照)。
【0057】
一対の植付爪28で苗茎部100aを植付杆29の先端部位29aの延びる方向と実質上平行状にて挟持されると、この一対の植付爪28の断面方向において(図6(c)参照)、下辺28b側には、前記先端部位29aと苗茎部100aとの間に、植付爪28の板厚さH2に略等しい切欠き凹所28cが下方向に開放されて形成されるので、植付け時に一対の植付爪28が畝上面18に突入(貫入)したときに、その畝土が前記左右切欠き凹所28c内の苗茎部100aの下面に当たると、その作用力で苗茎部100aが前記左右いずれか一方の切欠き凹所28c方向に逃げるように、苗茎部100aは撓むことができる。また、畝上面18に突入(貫入)したときの畝土が大きい容積である左右両切欠き凹所28c内に入り込むことができる。即ち、苗茎部100aを挟持した状態で、一対の植付爪28が畝上面18に突入(貫入)しても、その苗茎部100aの下面側に衝突時の畝土による大きい衝撃力(植付け抵抗力)が直接的に作用しないから、一対の植付爪28と苗茎部100aとの挟持部の境界部分で、当該苗茎部100aが畝土で潰されたり、破断するなどの損傷(破損)を受けることを低減できるのである。
【0058】
また、後述するように、植付体往復動機構24を介して植付体20L、20Rの植付爪28の先端の軌跡が三日月状の経路(下降行程R1と上昇行程R2:図9の二点鎖線を参照)に沿って往復運動する。即ち、前記搬送ベルト21の下端部に位置する苗取位置(苗取り部)21dにある苗100を、植付体20L、20Rの一対の植付爪28が挟み込んで掴み取り、畝中にある前記往復運動の最下位置で、植付爪28が苗100を解放し、植付体20L、20Rが上方へ退くことで、畝中への苗100の移植が行なわれる。
【0059】
そして、一対の植付爪28の先端刃物部28aが畝上面18に突入するとき、当該畝上面18に敷設されたマルチフィルムMFを刃物部28aで切り裂き易くなり、マルチフィルムMFにより苗茎部100aが傷つけられることなく、畝土内へのつる苗100の植付け作業を確実に行える。
【0060】
さらに、前記植付体20L、20Rの植付爪28の先端部が植付体20L、20Rが三日月状の経路R(下降行程R1)に沿って船底状に畝土内に潜り込む際に、植付爪28の基端側で下面側に位置する刃体28dでマルチフィルムMFを筋状に引き裂く(切断する)ことができるから、植付爪28の先端部の刃物部28aで穿設したマルチフィルムMFの上面孔に連設して、走行機体の前進側のマルチフィルムMFに走行機体の進行方向に沿う切断筋MF1が形成される結果、植付爪28がマルチフィルムMFに進入した位置より遅れてマルチフィルムMF内に入る苗茎部100aがマルチフィルムMFに邪魔されることがなく、植付け時のつる苗100の枝葉部分を円滑にマルチフィルムMFの上面側に延ばすことができ、植付け作業時のつる苗100に対する損傷を大幅に低減できるという効果を奏する。また、つる苗100の苗茎部先端側を植付けた後、植付体20L、20Rが三日月状の経路Rの上昇行程R2に沿って上昇する時には、前記大きい切断筋の箇所を植付爪28が通過できるから、マルチフィルムMFを引っかけて当該マルチフィルムMFの敷設位置がみだりにずれないのである。
【0061】
なお、前記刃体28dや切欠き凹所28cは、左右一対の植付爪28のうちの一方にのみ設けても良い。さらに、上述の苗茎部100aを挟持した状態で、一対の植付爪28が畝上面18に突入(貫入)したとき、その苗茎部100aの左右両側または一方の切欠き凹所28cに作用する衝突時の畝土による大きい衝撃力を逃がして、植付け抵抗力を大幅に低減するため、切欠き凹所28cを植付爪28の外面に貫通させて良い。その実施形態として、植付杆29の先端部位29aより上方位置において、切欠き凹所28cと植付爪28の外面とを連通するための逃がし孔28eを設けるのである。
【0062】
前記植付体往復動機構24は、植付駆動軸25の回転運動を、苗供給機構12から畝中に至る植付体20L、20Rの往復運動に変換するクランク機構であり、詳しくは、植付駆動軸25の回転により植付体往復動機構24を介して植付体20L、20Rの植付爪28の先端の軌跡を三日月状の外周の経路R(図9の二点鎖線は走行機体の停止状態で示す軌跡である)に沿って、往復運動させるものである。
【0063】
そして、植付体支持枠31には、前記植付体往復動機構24による植付体20L、20Rの移動に連動して、植付体20L、20Rひいては一対の植付爪28を開閉運動させる植付体開閉カム機構40が設けられている(図7参照)。
【0064】
次に、前記植付駆動軸25への動力伝達について説明する。図7に示すように、本実施例の苗移植機1では、エンジン10からの駆動力を、ミッションケース6及びハンドルフレーム7を介して、伝動軸80によって植付装置13へと伝達している。
【0065】
即ち、ミッションケース6から左方(図7では右方)に出力軸81を延設し、該出力軸81の左端に出力ベベルギヤ82を固設し、該出力ベベルギヤ82と噛合する前ベベルギヤ83が固設された伝動軸80は一方の走行機体4のパイプフレーム80a(図8参照)内に挿通され、伝動軸80の後端部には、ギヤケース内にて後ベベルギヤ84が固設され、該後ベベルギヤ84に、植付駆動軸25の左端部に固設された入力ベベルギヤ85が噛合されることによって、エンジン10の駆動力を後方へと伝達するものである。
【0066】
このように、ミッションケース6から植付装置13までの駆動伝達を、ベベルギヤ82、83、84、85を介して、軸伝動によって行なうので、植付駆動軸25への駆動力伝達をチェンによって行う場合と比べて、植付装置13の作動を迅速に且つスムーズなものとすることができる。
【0067】
次に、植付体開閉ローラ機構90について説明する。図11及び図12に示すように、植付体開閉ローラ機構90は、前記苗供給機構12の搬送ベルト21の下端部に配設されるものであり、前記植付体開閉カム機構40だけで制御された場合と比べて、より正確に苗取位置(苗取り部)21dにて植付体20L、20Rを閉じるためのものである。
【0068】
つまり、植付体開閉ローラ機構90を具備していない場合であっても、植付体20L、20Rは、開いた状態で下方へ回動されて、搬送ベルト21の下端部の苗取位置(苗取り部)21dで閉じられるが、植付体20L、20Rの基部側で開閉操作が行われるため、植付体20L、20Rのたわみ等により、先端部(植付爪28)の箇所では開閉力が弱く不安定になるおそれがある。
【0069】
本実施形態においては、搬送ベルト21の下端部の苗取位置(苗取り部)21dに搬送された苗100の後方に、左右一対のローラ23L、23Rが枢支されており、該ローラ23L、23R間を前記植付体往復動機構24によって上下動する植付体20L、20Rが上から下へと通過する構成になっている。そして、搬送された苗100の苗取位置(苗取り部)21dの直下部における植付体20L、20Rの回動軌跡の両側にローラ23L、23Rを配置して、植付体20L、20Rを閉じて苗100を挟持した直後にローラ23L、23R間を通過させる。これによって、強制的に植付体20L、20Rの両側をローラ23L、23Rでガイドして閉じることにより、苗100を挟持したまま確実に下方へ搬送させるのである。なお、ローラ23Lとローラ23Rの隙間の間隔は、植付体20L、20Rが閉じた時の外側の幅より狭くしている。図17に示すように、ローラ23L、23Rの初期位置(植付体20L、20Rを挟んでいないローラ23L、23Rの位置)は、後述する摺動軸36L、36R側面上に形成されたピンの位置によって決められる。
【0070】
以下、一対のローラ23L、23Rの支持方法について説明する。図11及び図12に示すように、ハンドルフレーム7、7にステー32L、32Rを固設し、該ステー32L、32Rによって、筒支持体33L、33Rを支持し、該筒支持体33L、33Rによって摺動筒35L、35Rを支持する。該摺動筒35L、35Rに対して摺動軸36L、36Rを摺動自在に挿入し、該摺動軸36L、36Rの苗取り部21dに近い側の端部には、ブラケット部材42L、42Rが固設され、該ブラケット部材42L、42Rには、ローラ23L、23Rが回動自在に枢支される。このローラ23L、23Rの回転支軸は搬送ベルト21の搬送方向と直交する方向に対して平行状に配置されている。そして、各ブラケット部材42L、42Rと各筒支持体33L、33Rとの間には、圧縮コイルバネのような弾性部材43L、43Rが配設されており、弾性部材43L、43Rの復元力によって前記摺動軸36L、36Rを苗100方向(植付体20L、20Rの左右中心方向)に付勢している。
【0071】
前記左ブラケット部材42R上部には、図11、図12において右方が解放されて苗案内路92bが形成された、正面視略「コ」の字状のガイド体92が固設されている。該ガイド体92は、苗取位置21dに搬送されてくる苗100が該ガイド体92の苗案内路92bに挟まれ易いように、苗案内路92bの開放側(図11及び図12においては、右側)が幅広に形成されている。ここで、該ガイド体92は、弾性を有する丸棒で構成することが望ましく、例えばピアノ線等で構成すると好適である。
【0072】
該植付体20L、20R上端部の間には、引張バネからなる植付体開きバネ93が配設されており、該植付体開きバネ93によって、植付体20L、20Rの下方が開く方向に付勢されている。
【0073】
そして、下部が開放状態となっている植付体20L、20Rが苗取位置21dへと下降し、ローラ23L、23R間に入ると、前記弾性部材43L、43Rの復元力に抗してローラ23L、23Rが押しのけられる。該ローラ23L、23Rの動きに連動して、摺動筒35L、35R内の摺動軸36L、36Rが反苗100方向に摺動し、該植付体20L、20Rが通過できるようにローラ23L、23R間の間隔が広がる。弾性部材43L、43Rの荷重や、ローラ23Lとローラ23Rの隙間の間隔の大小によって、植付体20L、20Rが苗100を挟む荷重を適正なものとしている。
【0074】
このように、苗100を苗供給機構12によって植付装置13の近傍まで搬送し、茎端部を左右一対の植付体20L、20Rで掴んで苗取を行い、植付体往復動機構24によって該植付体20L、20Rを上下方向に揺動させて圃場に突入させることによって、苗100の植付作業を行う苗移植機1において、前記苗取位置21d下方に左右一対のローラ23L、23Rを設け、該ローラ23L、23R間を該植付体20L、20Rが通過する構成としたので、植付体20L、20Rが高速で上下揺動する場合であっても、左右の植付体20L、20R下部に苗100がある時に確実にタイミングを合わせて、植付体20L、20Rを閉じて苗100を挟持することができる。
【0075】
つまり、植付体20L、20Rのたわみを防ぐために、過度に植付体20L、20Rの剛性を高めたり、特殊な材質、構造を採用する必要がない。
【0076】
また、搬送方向下流側のローラ23Lの上方に、苗100の茎端部を案内するガイド体92を設けたので、苗100の茎端部が左右の植付体20L、20Rの先端の一対の植付爪28の間に案内され易くなり、植付体20L、20Rの下部が苗100の苗茎端部100aを挟持し易くなる。つまり、苗100の苗茎端部100aが曲がっていても、そのような曲がりを矯正する役割を果たすことができる。
【0077】
植付体往復動機構24に植付体開閉カム機構40を設け、植付体20L、20Rがローラ23L、23R間を通過する間に、該植付体開閉カム機構40によって植付体20L、20Rを閉じる構成としたので、植付体20L、20Rがローラ23L、23R間を通過した後においても、植付体20L、20Rを閉じた状態で保持することができる。
【0078】
また、植付体20L、20Rは、弾性部材93によって植付体20L、20Rの先端側が開く方向に付勢されているので、植付体開閉ローラ機構90と植付体開閉カム機構40による植付体20L、20Rの閉状態が解除されると、弾性部材93によって自動的に植付体20L、20Rが開き、苗100を放すことができる。
【0079】
次に、図8、図13〜図15を参照しながら、一対の植付体20L、20Rにおける一対の植付爪28の内面を清掃するスクレーパ手段38の連動機構及び植付体20L、20Rの昇降動作とスクレーパ手段38におけるスクレーパ体41の姿勢変更との連動(同期)タイミングについて説明する。
【0080】
スクレーパ手段38は、図8及び図13に示すように、平面視及び側面視において前記植付体20L、20Rの側方に配置されるものであって、支持アーム38aとそれに取り付けられたゴム板性などの可撓性を有するスクレーパ体38bと、ベルクランクリンク44aと第1リンク44bと第2リンク44cと、カム手段45とを備えた連動機構を有する。カム手段45における回転カム板45aは、前記一方のハンドルフレーム7の近くに配置された前記駆動軸25と一体的に回転するように取付けられている。
【0081】
第2リンク44cとベルクランクリンク44aとが、長さ調節可能なターンバックルを備えた第1リンク44bを介して連結されており、ベルクランクリンク44aの先端部には平面視L型の支持アーム38aが固定されている。そして、平面視において(図8参照)、支持アーム38aの先端側上面に固定されたスクレーパ体38bは上記一対の植付爪28の内面の間に位置するように設定されている。
【0082】
前記一方のハンドルフレーム7側の支持フレーム7aに固定された横第1軸76には、側面視L型の第2リンク44cが回動可能に枢支され、支持フレーム7aに固定された横第2軸77には、側面視L型のベルクランクリンク44aが回動可能に枢支されている。第2リンク44cにはカム手段45における自由回転ローラ型のカムフォロア45bが枢支されている。また、付勢手段としての引張バネ46の一端が第2リンク44cに係止され、他端が支持フレーム7aに係止されて、カムフォロア45bは回転カム板45aの半径内方向(矢印B方向)に向かうように第2リンク44cが付勢されている。カムフォロア45bは回転カム板45aのカム形状となる外周端面に摺接可能となっている。
【0083】
前記植付体20L、20Rの上下往復揺動運動と同期して駆動軸25は反時計回りに回転する(図9、図13〜図19参照)。カムフォロア45bが回転カム板45aの最大半径の円周面45a1に摺接しているときには(図15、図17の状態参照)、引張バネ46の付勢力に抗して第2リンク44cの先端が上向きになるように回動し、第1リンク44bを介してベルクランクリンク44aが図15において時計回りに回動して、スクレーパ体38b付きの支持アーム38aが一対の植付杆29(植付爪28)の間よりも走行機体の前方に離間している姿勢に変更される。他方、カムフォロア45bが回転カム板45aにおける側面視略L型の切欠き部45a2の領域に位置しているときには(図13及び図14参照)、引張バネ46で付勢された第2リンク44cは反時計回りに回動して、第1リンク44bを介してベルクランクリンク44aが図13において反時計回りに回動し、スクレーパ体38bが一対の植付杆29の間に入る位置に保持される。この位置保持のために、図13、図14に二点鎖線で示し、図8で実線で示すように、支持フレーム7aから突設した平面視略L字状のストッパー体47にベルクランクリンク44aの下面が当接し、それ以上ベルクランクリンク44aが時計回りに回動しない。また、カムフォロア45bは切欠き部45a2内で回転カム板25に摺接していない。
【0084】
なお、スクレーパ体38bが開いた状態の一対の植付杆29の間に入る位置に保持された状態において、植付体20L、20Rの一対の植付杆29がつる苗の植付け後の(戻り)上昇行程の後半中で上向き回動するにつれて、スクレーパ体38bの左右両側縁にて一対の植付爪28の基端側から先端方向に上半分の内面を擦って、泥土を落とすことになる(第1の清掃作用、図14の状態参照)。
【0085】
そして、一対の植付爪28が最上位置に来る寸前乃至最上位置に来たとき(図15の状態参照、図9の姿勢に対応するとき)、カムフォロア45bは切欠き部45a2の終端箇所(半径方向の摺接部)に摺接した後回転カム板45aの最大半径の円周面45a1の箇所へ迅速に乗り移るので、第2リンク44cは、急速に時計回りに回動する。その結果、ベルクランクリンク44aも急速に時計回りに回動するので、スクレーパ体38bは一対の植付爪28の先端部(刃先部)28aから抜け出るように前方向に回動し(図15の矢印C方向参照)、植付爪28の内面下半分にある泥土や引っ掛かているマルチフィルムMFの屑を擦り落とすことができる(第2の清掃作用、図15参照)。
【0086】
このようにして、植付体20L、20Rによるつる苗100の植付け後の上昇行程の後半中に一対の植付爪28の内面にスクレーパ体38bの側縁が摺接することで、植付爪28の内面に付着した泥土やマルチフィルムMFの屑を確実に除去でき、次の苗把持作業を確実且つ安定して行える。スクレーパ手段38の連動機構と植付体20L、20Rの往復動機構の回転に同期して駆動する共通の駆動軸25であるため、構成が簡単になり、且つ製造コストも低減できるという効果を奏する。
【0087】
その後、一対の植付爪28の間隔が狭まりながら、下降行程で、上述のようにつる苗の苗茎部100aを一対の植付爪28で掴んで植付け位置へと移動するのである。このようにして、スクレーパ手段38におけるスクレーパ体38bは一対の植付爪28の昇降往復移動の運動に連動(同期)して、上昇行程中の後半では一対の植付爪28の内面間に位置し、最上位置から下降行程中及び植付け後の上昇行程の開始領域(前半部)では、スクレーパ体38bが一対の植付爪28から前方且つ上方に離間するように連動するので、一対の植付爪28による苗茎部100aの把持(挟持)や畝土への植付け作業時に、スクレーパ体38bが邪魔にならず、且つ植付けた苗を傷付けないという効果を奏する。
【0088】
苗100の植付後に植付箇所を鎮圧する鎮圧装置14は、植付体20L、20Rが差し込まれた畝上面18を鎮圧して、植付体20L、20Rにより形成された植付孔を崩し、苗100の畝中への保持を確実とするように構成される。鎮圧装置14は、畝上面18に重力で落下当接させる平坦面を有する鎮圧体37と、この鎮圧体37を植付体20L、20Rによる苗の移植及び上記スクレーパ手段38の動きに連動(同期)して上下動させるカム式の鎮圧駆動機構78とが備えられている(図16〜図19参照)。
【0089】
鎮圧体37は、それ自身の重量が適度にあり、自重で畝上面18に落下したときマルチフィルムMFを破ることなく、植付体20L、20Rにより形成された植付孔を塞ぐことができる程度に水平の下面(平坦面)37aの面積を有した金属体にて構成されている。支持フレーム7aに横軸79cを介して基端が上下回動可能に枢着されたパイプ状の基礎アーム79aが植付体20L、20Rの昇降軌跡R及び昇降リンク機構よりも走行機体の後側に延びている。基礎アーム79aの後端に伸縮可能に挿入され、ボルトなどにて長さ保持できる下向きL型の吊りアーム79bの下端には横軸79dを介して鎮圧体37が回動可能に吊支されている。また、基礎アーム79a若しくは吊りアーム79bはハンドルフレーム7などに対してコイルバネなどの弾性吊支体80を介して連結されている。
【0090】
鎮圧体37は植付体20L、20Rの昇降リンク機構及び昇降軌跡Rよりも走行機体の後側に位置する。
【0091】
基礎アーム79aの前後方向中途部の下面に回転可能なローラ状のカムフォロア81が設けられており、鎮圧体37の自重によりカムフォロア81は上記カム手段である回転カム板45aの外周面に常時摺接可能に配置されている(図16〜図19参照)。
【0092】
従って、前記植付体20L、20Rの上下往復揺動運動と同期して駆動軸25は反時計回りに回転するとき、カムフォロア81が回転カム板45aの最大半径の円周面45a1に摺接しているときには(図15、図16、図17の状態参照)、鎮圧体37は最上位置にあるように、基礎アーム79aは引き上げられている。この行程は、つる苗100の植付け後の植付体20L、20Rの上昇行程の後半中であり、且つ一対の植付杆29の間にスクレーパ体38bが位置している状態である。また、一対の植付爪28が最上位置に来る寸前乃至最上位置の状態から、下降行程及び植付け動作中(図17参照)でも、鎮圧体37は最上位置に保持されている(図15参照)。
【0093】
そして、図18に示すように、植付体20L、20Rによるつる苗100の植付けの直後に一対の植付爪28が苗茎部100aの挟持を開放して、上昇行程開始する時点で、カムフォロア81が回転カム板45aの切欠き部45a2に来ると、鎮圧体37の自重により畝上面18に落下し、畝土中に埋まった苗茎部100aの上方の土をマルチフィルムMFの上から叩くので、一対の植付爪28が通過した畝土中の空所を略均一に埋めることができ、つる苗100の移植後の根付きが良好となる。
【0094】
次いで、一対の植付爪28が畝上面18から抜け出る上昇行程に連れて、カムフォロア81が回転カム板45aの切欠き部45a2から円周面45a1に移ると(図19参照)、これにより、基礎アーム79aひいては鎮圧体37が引き上げられるのであり、これに連動(同期)して、上記スクレーパ体38bが下降して、一対の植付杆29の間に位置するというサイクルを実行するのである。
【0095】
上述のように、一対の植付体20L、20Rの植付けサイクルに同期して畝面(畝上面)18に押圧する鎮圧体(押圧体)37が備えられた押圧手段を更に備えているので、一対の植付体20L、20Rによる植付け直後のみ、鎮圧体37が畝上面に落下し、その他の行程時には、鎮圧体37が上昇した位置にあるので、畝の必要箇所以外を鎮圧せず、畝土を無闇に締めつけず、且つ従来のようなローラ状の鎮圧体の場合のように鎮圧面が円弧状に凹むことがなく、本願の鎮圧体37は、畝上面18との当接面(下面)37aが平坦面に形成されているので、苗植付け部位の畝上面18を広範囲に均平に押圧できて、苗100の移植後の根付きが良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施例である苗移植機を示す全体側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】苗供給機構の背面図である。
【図4】同じく平面図である。
【図5】(a)は苗茎部を把持するホルダ部の平面図、(b)は同じく背面図である。
【図6】(a)は植付爪により苗茎部が挟持された状態の側面図、(b)は図6(a)におけるVIb −VIb 線矢視図、(c)は図6(a)におけるVIc −VIc 線矢視断面図係合ピン周辺を示す背面図である。
【図7】植付駆動軸への動力伝達を示す平面図である。
【図8】スクレーパ手段及び鎮圧手段の同期駆動部の平面図である。
【図9】植付体往復動機構を示す側面図である。
【図10】植付体による畝土への植付け状態を示す側面図である。
【図11】植付体が開いた状態の植付体開閉ローラ機構を示す背面図である。
【図12】同じく閉じた状態を示す背面図である。
【図13】植付体の上昇行程中にスクレーパ体が一対の植付杆の間に位置するスクレーパ手段の作用準備姿勢を示す側面図である。
【図14】スクレーパ体が一対の植付爪の間に位置して第1の清掃作用を受ける状態を示す側面図である。
【図15】スクレーパ体が一対の植付爪の間から前方に離間した状態(非作用姿勢)を示す側面図である。
【図16】図13の植付体の上昇位置及びスクレーパ体の作用準備姿勢に対応するタイミングでの鎮圧体の姿勢(上昇保持位置)を示す側面図である。
【図17】植付爪が最下降下したタイミングでの鎮圧体の姿勢(上昇保持位置)を示す側面図である。
【図18】植付爪による苗茎部の把持解除姿勢のタイミングでの鎮圧体の落下姿勢を示す側面図である。
【図19】鎮圧体の上昇開始姿勢を示す側面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 苗移植機
12 苗供給機構
20L、20R 植付体
22 ホルダ部
22a 枠体
22b 弾性把持体
23L、23R ローラ
27 ガイド体
27a 案内溝
28 植付爪
28a 刃物部
28c 切欠き凹所
28d 刃体
29 植付杆
29a 先端部
100 つる苗
100a 苗茎部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗を苗供給機構によって植付装置の近傍まで搬送し、苗の茎端部を左右一対の植付体にて掴んで苗取りを行い、植付体往復動機構によって前記一対の植付体を上下方向に揺動させて圃場に突入させることにより、苗の植付作業を行う苗移植機において、
前記一対の植付体における苗の挟持片を払拭するためのスクレーパ手段を備え、
このスクレーパ手段におけるスクレーパ体は、前記植付体の植付後の戻り上昇行程中に前記左右一対の挟持片の内面に摺接する姿勢と、前記戻り上昇行程以外のとき前記挟持片から離間位置を保持する姿勢とに変更する連動機構を介して駆動されることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記連動機構は、前記植付体往復動機構の駆動軸の回転に同期して作動することを特徴とする請求項1に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記連動機構は、前記駆動軸と一体的に回転するカム体と、揺動リンクに設けられたカムフォロアとを備え、前記揺動リンクに連結されて、前記スクレーパ手段におけるスクレーパ体を揺動可能となるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記植付体は前記駆動軸よりも走行機体の前方に配置された苗供給機構との前後間にて上下往復運動を行い、前記スクレーパ体は前記植付体における前記挟持片よりも前方に離間するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の苗移植機。
【請求項5】
前記一対の植付体の植付けサイクルに同期して畝面に押圧する押圧体が備えられた押圧手段を更に備え、
前記押圧体は、畝面との当接面が平坦面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−67661(P2008−67661A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250942(P2006−250942)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】