説明

蓄電モジュール及び作業機械

【課題】 蓄電セルの電極タブの位置合わせを容易に行うことができる蓄電モジュールを提供する。
【解決手段】 複数の蓄電セルが積層されている。蓄電セルの各々は、スリットが形成された第1及び第2の電極タブを含む。相互に隣り合う2枚の蓄電セルの一方の第1の電極タブと、他方の第2の電極タブとが相互に重なって接続されている。相互に接続された第1の電極タブのスリットと、第2の電極タブのスリットとが噛み合っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電セルを重ね合わせて直列接続した蓄電モジュール、及びそれを搭載した作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
充電可能な二次電池や電気二重層キャパシタ等の蓄電セルを用いたハイブリッド型作業機械の開発が進められている。ハイブリッド型作業機械に採用される蓄電セルとして、蓄電要素をフィルムで包み込んだ板状の蓄電セルが提案されている。正電極及び負電極が、蓄電セルの外周部から導出される。
【0003】
複数の蓄電セルを積み重ねて直列接続することにより、蓄電モジュールが形成される。積層方向に隣り合う蓄電セルの電極タブは、溶接やカシメ等によって電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−185733号公報
【特許文献2】特開2005−268138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓄電セルの電極タブを溶接等によって接続する際に、接続すべき2つの電極タブの位置合わせを行う必要がある。電極タブの接続部において位置ずれが生じると、複数枚の蓄電セルを積み重ねたときに、位置ずれが重畳されて大きくなる。特に、蓄電セルの容器にラミネートフィルムを用いる場合には、電極タブとラミネートフィルムとの位置関係が常に一定であるとは限らない。このため、ラミネートフィルムの縁を位置合わせの基準として利用することは好ましくない。
【0006】
本発明の目的は、蓄電セルの電極タブの位置合わせを容易に行うことができる蓄電モジュールを提供することである。本発明の他の目的は、その蓄電モジュールを搭載した作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
積層された複数の蓄電セルを有し、
前記蓄電セルの各々は、スリットが形成された第1及び第2の電極タブを含み、相互に隣り合う2枚の蓄電セルの一方の第1の電極タブと、他方の第2の電極タブとが相互に重なって接続されており、相互に接続された第1の電極タブのスリットと、第2の電極タブのスリットとが噛み合っている蓄電モジュールが提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、上記蓄電モジュール、及び蓄電モジュールからの電力で駆動される電動機を有する作業機械が提供される。
【発明の効果】
【0009】
スリットを噛み合わせることにより、第1の電極タブと第2の電極タブとを、容易に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは、実施例1による蓄電モジュールに用いられる蓄電セルの平面図であり、図1Bは、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図であり、図1Cは、蓄電要素の断面図である。
【図2】図2は、実施例1による蓄電モジュールの断面図である。
【図3】図3Aは、電極タブの接続箇所の斜視図であり、図3Bは、その平面図である。
【図4】図4は、実施例1の変形例による蓄電モジュールの断面図である。
【図5】図5Aは、実施例2による蓄電モジュールに用いられる蓄電セルの平面図であり、図5Bは、電極タブの接続箇所の平面図である。
【図6】図6は、実施例3による蓄電モジュールに用いられる蓄電セルの平面図である。
【図7】図7は、実施例3による蓄電モジュールの断面図である。
【図8】図8は、電極タブの接続箇所の斜視図である。
【図9】図9は、実施例3の変形例による蓄電モジュールの断面図である。
【図10】図10は、実施例4による蓄電モジュールに用いられる蓄電セルの平面図である。
【図11】図11は、実施例4による蓄電モジュールの断面図である。
【図12】図12A及び図12Bは、電極タブの接続箇所の平面図である。
【図13】図13A及び図13Bは、実施例5による蓄電モジュールに用いられる蓄電セルの平面図である。
【図14】図14は、実施例5による蓄電モジュールの断面図である。
【図15】図15A及び図15Bは、実施例6による蓄電モジュールの断面図である。
【図16】図16は、実施例7によるハイブリッド型掘削機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施例1]
図1Aに、実施例1による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル20の平面図を示す。蓄電セル20は、電気エネルギを蓄積する機能を持つ板状部分16、及び板状部分16の縁から、相互に反対向きに引き出された第1の電極タブ12、及び第2の電極タブ13を含む。板状部分16は、蓄電要素11、及び蓄電要素11を収容する蓄電容器10を含む。板状部分16の平面形状は、例えば、頂点がやや丸みを帯びた長方形である。
【0012】
第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13は、蓄電容器10の内側から、蓄電容器10の縁と交差して、蓄電容器10の外側まで引き出されている。第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13は、相互に逆極性の電極として作用する。
【0013】
第1の電極タブ12の先端側の縁から基部に向かってスリット14が形成され、第2の電極タブ13の先端側の縁から基部に向かってスリット15が形成されている。スリット14と15とは、1本の仮想直線上に配置される。
【0014】
図1Bに、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図を示す。蓄電容器10は、2枚のアルミラミネートフィルム10A、10Bを含む。ラミネートフィルム10A、10Bは、蓄電要素11を挟み、蓄電要素11を密封する。一方のラミネートフィルム10Bは、ほぼ平坦であり、他方のラミネートフィルム10Aは、蓄電要素11の形状を反映して変形している。
【0015】
図1Cに蓄電要素11の部分断面図を示す。第1の集電極21の両面に、第1の分極性電極27が形成されており、第2の集電極22の両面に、第2の分極性電極28が形成されている。第1の集電極21及び第2の集電極22には、例えばアルミニウム箔が用いられる。第1の分極性電極27は、例えば、活性炭粒子が混錬されたバインダを含むスラリーを、第1の集電極21の表面に塗布した後、加熱して定着させることにより形成することができる。第2の分極性電極28も同様の方法で形成することができる。
【0016】
両面に第1の分極性電極27が形成された第1の集電極21と、両面に第2の分極性電極28が形成された第2の集電極22とが交互に積層されている。第1の分極性電極27と第2の分極性電極28との間に、セパレータ23が配置されている。セパレータ23には、例えばセルロース紙が用いられる。このセルロール紙に、電解液が含浸されている。電解液の溶媒には、例えば分極性有機溶剤、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート等が用いられる。電解質(支持塩)として、4級アンモニウム塩、例えばSBPB(スピロビピロリジニウムテトラフルオロボレート)が用いられる。セパレータ23は、第1の分極性電極27と第2の分極性電極28との短絡、及び第1の集電極21と第2の集電極22との短絡を防止する。第1の集電極21、第2の分極性電極28、及びセパレータ23により、電気二重層キャパシタが構成される。
【0017】
なお、蓄電セル20として、電気二重層キャパシタの他に、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池等を用いてもよい。
【0018】
図1Bに戻って説明を続ける。図1Bでは、セパレータ23、第1の分極性電極27、及び第2の分極性電極28の記載を省略している。
【0019】
第1の集電極21及び第2の集電極22は、それぞれ両者の重なり領域から、相互に反対向き(図1Bにおいて、左向き及び右向き)に伸びた延伸部分21A、22Aを有する。複数の第1の集電極21の延伸部分21Aが重ね合わされ、第1の電極タブ12に超音波溶接されている。複数の第2の集電極22の延伸部分22Aが重ね合わされ、第2の電極タブ13に超音波溶接されている。第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13には、例えばアルミニウム板が用いられる。
【0020】
第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13は、ラミネートフィルム10Aとラミネートフィルム10Bとの間を通って、蓄電容器10の外側まで導出されている。第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13は、導出箇所において、ラミネートフィルム10Aとラミネートフィルム10Bとに熱溶着されている。なお、第1の電極タブ12とラミネートフィルム10A、10Bとの間、及び第2の電極タブ13とラミネートフィルム10A、10Bとの間に、タブフィルムを挟んでもよい。タブフィルムは、シール強度を向上させる。
【0021】
蓄電容器10内は、真空排気されている。このため、ラミネートフィルム10A、10Bは、大気圧により、蓄電要素11の外形に沿うように、変形している。第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13は、蓄電セル20の厚さ方向に関して、中央よりもラミネートフィルム10Bの側に偏った位置に取り付けられる。本明細書において、平坦に近いラミネートフィルム10Bの表面を「背面」ということとする。蓄電要素11の外形を反映して変形しているラミネートフィルム10Aの表面を「腹面」ということとする。
【0022】
図2に示すように、複数の蓄電セル20が、腹面が同一方向を向く姿勢で積み重ねられて、直列接続されている。積み重ね方向をz方向とするxyz直交座標系を定義する。蓄電セル20の腹面が向く方向をz軸の負の向きとする。第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13が引き出される方向を、x方向とする。
【0023】
1つの蓄電セル20の腹面と、それに隣り合う蓄電セル20の背面とが接触する。なお、相互に隣り合う蓄電セル20の間に、蓄電セルで発生した熱を放熱するための伝熱板を挟んでもよい。相互に隣り合う蓄電セル20のうち一方の蓄電セル20の第1の電極タブ12と、他方の蓄電セル20の第2の電極タブ13とが、同一の方向に向かって引き出されている。この第1の電極タブ12と第2の電極タブ13とは、相互に近づく向きに屈曲されており、屈曲箇所よりも先端の部分において相互に重なっている。重なり部分は、例えば超音波溶接される。なお、蓄電セル20に極性がない場合には、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13とを区別する必要はない。蓄電セル20の一対の電極タブのうち、一方を第1の電極タブ12に対応させ、他方を第2の電極タブ13に対応させればよい。
【0024】
図3Aに、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との接触部分の斜視図を示す。第1の電極タブ12の屈曲箇所より先端の部分と、第2の電極タブ13の屈曲箇所より先端の部分とが重ねられている。スリット14と15とが相互に噛み合っている。これにより、スリット14内に第2の電極タブ13が挿入され、スリット15内に第1の電極タブ12が挿入されている。スリット14と15とが噛み合うことにより、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13に、その厚さに相当する高さの斜面17が形成される。この斜面17同士が接触する。
【0025】
図3Bに、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との接触部分の平面図を示す。スリット14とスリット15とが、1本の仮想直線上に位置するように配置される。スリット14の内側の端部(開口端とは反対側の端部)とスリット15の内側の端部とが接触することにより、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13の、スリット15、14への挿入深さ、すなわちz方向の位置が規制される。また、図3Aに示した第1の電極タブ12の斜面17と、それに対向する第2の電極タブ13の斜面17とが接触することによっても、z方向の位置が規制される。さらに、斜面17同士が接触することにより、x軸に平行な軸を中心とした回転方向に関して、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との位置ずれが生じにくくなる。
【0026】
スリット14、15が沿う仮想直線の両側において、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との厚さ方向に関する位置関係(上限関係)が逆転している。
【0027】
図1及び図2では、電極セル20の一方の表面(背面)がほぼ平坦であり、他方の表面(腹面)が膨らんだ形状を有する例を示した。図4に示すように、電極セル20の厚さ方向のほぼ中央に、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13の基部が取り付けられている構造の電極セル20の接続にも、上記実施例1の接続構造を適用することが可能である。
【0028】
実施例1においては、スリット14、15同士を噛み合わせることにより、相互に接続された第1の電極タブ12と第2の電極タブ13とのy方向(図2、図4)に関する位置合わせを容易に行うことができる。また、挿入深さも規制されるため、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13とが重なった部分の面積を一定に維持することができる。
【0029】
[実施例2]
図5Aに、実施例2による蓄電セル20の平面図を示す。以下、図1Aに示した実施例1による蓄電セル20との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0030】
実施例1では、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13に、それぞれ1本のスリット14、15が形成されていた。実施例2においては、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13に、それぞれ複数、例えば2本のスリット14、15が形成されている。複数のスリット14と、複数のスリット15とは、1対1に対応している。
【0031】
図5Bに、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との重ね合わせ部分の平面図を示す。スリット14が、それぞれ対応するスリット15に噛み合っている。これにより、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との位置決め精度を高めることができる。
【0032】
[実施例3]
図6に、実施例3による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル20の平面図を示す。以下、図1Aに示した実施例1による蓄電セル20との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0033】
実施例1では、図1Aに示したように、第1の電極タブ12の先端の縁から基部に向かってスリット14が形成されていた。実施例3においては、第1の電極タブ12に、電極タブの引き出し方向に沿う一方の縁から、他方の縁に向かってスリット14aが形成されている。スリット14aに長さは、第2の電極タブ13の幅とほぼ等しい。このため、第1の電極タブ12の幅が、第2の電極タブ13の幅よりやや広くなっている。第2の電極タブ13に形成されたスリット15の構成は、実施例1のものと同一である。
【0034】
図7に、複数の蓄電セル20を積み重ねた蓄電モジュールの断面図を示す。相互に隣り合う蓄電セル20は、腹面同士、または背面同士を対向させた姿勢で積み重ねられている。隣り合う蓄電セル20の一方は、図1Aに示した構造を有し、他方の蓄電セル20は、図6に示した構造を有する。
【0035】
腹面同士を対向させた蓄電セル20の一方の第1の電極タブ12と、他方の第2の電極タブ13との接続構造は、図2、図3A、及び図3Bに示した実施例1による蓄電モジュールの接続構造と同一である。ただし、実施例3の場合には、相互に接続された第1の電極タブ12と第2の電極タブ13の基部同士の間隔L1が、実施例1における基部同士の間隔より広い。このため、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13とが重なっている領域(重ね代)を広く確保することができる。
【0036】
図8に、背面同士を対向させた蓄電セル20の一方の第1の電極タブ12と、他方の第2の電極タブ13との接続箇所の斜視図を示す。第1の電極タブ12と第2の電極タブ13とは、同一方向に屈曲しており、屈曲箇所より先端の部分において両者が重なっている。第1の電極タブ12のスリット14aと、第2の電極タブ13のスリット15とが、相互に直交する姿勢で噛み合っている。
【0037】
第2の電極タブ13の側方の縁が、スリット14aの内側の端部に接触することにより、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との幅方向(図7においてy方向)に関する位置決めを容易に行うことができる。第1の電極タブ12の、スリット14aの側面に現れている縁が、スリット15の内側の端部に接触することにより、挿入の深さが規制される。
【0038】
また、スリット14aに対応して、第2の電極タブ13に斜面が形成される。この斜面と、スリット14aの縁とが、直線18の部分で接触する。これにより、x軸に平行な軸を中心とする回転方向に関して、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13と位置ずれを防止することができる。
【0039】
図9に、実施例3の変形例による蓄電モジュールの断面図を示す。以下、図7に示した実施例3との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。この変形例では、蓄電セル20の腹面がz軸の負の方向を向く姿勢で積み重ねられている。x軸の負の向きに引き出された第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との接続構造は、図2、図3A、及び図3Bに示した実施例1による蓄電モジュールの接続構造と同一である。
【0040】
x軸の正の向きに引き出された第1の電極タブ12には、図6に示したスリット14aが形成されている。第2の電極タブ12と第2電極タブ13とは、相互に近づく向きに屈曲した後、さらにx軸の正の向きに屈曲している。x軸の正の向きに屈曲した箇所よりも先端の部分において、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13とが重なっている。重なった部分において、第1の電極タブ12のスリット14aと、第2の電極タブ13のスリット15とが噛み合っている。噛み合わせの構造は、図8に示した構造と同一である。
【0041】
この変形例においても、実施例3と同様に、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との幅方向(図9においてy方向)に関する位置決めを容易に行うことができ、挿入の深さを規制することができる。
【0042】
[実施例4]
図10に、実施例4による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル20の平面図を示す。以下、図1Aに示した実施例1による蓄電セル20との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0043】
第1の電極タブ12に、その引き出し方向に沿う一方の縁(引出方向とほぼ平行な一方の縁)から、反対側の縁に向かって、スリット14bが形成されている。同様に、第2の電極タブ13にも、その引き出し方向に沿う一方の縁から、反対側の縁に向かって、スリット15bが形成されている。第1の電極タブ12の幅と第2の電極タブ13の幅とは等しく、スリット14b及びスリット15bの長さは、第1の電極タブ12の幅の約半分である。スリット14bとスリット15bとは、蓄電セル20の中心に関して点対称になる位置に形成されている。
【0044】
図11に、蓄電セル20を積み重ねた蓄電モジュールの断面図を示す。相互に隣り合う蓄電セル20は、腹面同士、または背面同士を対向させた姿勢で積み重ねられている。
【0045】
腹面同士を対向させた蓄電セル20の一方の第1の電極タブ12と、他方の第2の電極タブ13は、相互に近づく向きに屈曲し、屈曲箇所より先端の部分において相互に重なっている。背面同士を対向させた蓄電セル20の一方の第1の電極タブ12と、他方の第2の電極タブ13は、同一方向に屈曲し、屈曲箇所より先端の部分において相互に重なっている。
【0046】
図12Aに、腹面同士を対向させた蓄電セル20の電極接続部分の平面図を示す。第1の電極タブ12のスリット14bと、第2の電極タブ13のスリット15bとが噛み合っている。スリット14bとスリット15bとは、1本の仮想直線上に位置するように配置される。この仮想直線の両側において、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との厚さ方向に関する位置関係(上下関係)が逆転している。
【0047】
第1の電極タブ12の、スリット14bより先端の部分が、第2の電極タブ13の、スリット15bより基部側の部分に接触している。同様に、第2の電極タブ13の、スリット15bより先端の部分が、第1の電極タブ12の、スリット14bより基部側の部分に接触している。
【0048】
図12Bに、背面同士を対向させた蓄電セル20の電極接続部分の平面図を示す。図12Aの接続構造と同様に、第1の電極タブ12のスリット14bと、第2の電極タブ13のスリット15bとが噛み合っている。図12Aとの相違点は、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13の、先端の部分同士が接触し、基部側の部分同士が接触している点である。
【0049】
図12A及び図12Bのいずれにおいても、スリット14bの内側の端部と、スリット15bの内側の端部とが接触することにより、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との幅方向(図12A及び図12Bにおいて上下方向)に関する位置決めが行われる。
【0050】
なお、実施例4による電極タブの接続構造は、図2に示したように、蓄電セル20が、腹面を同一方向に向けた姿勢で積み重ねられている場合、及び図4に示したように、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13の基部が、蓄電セル20の厚さ方向の中央に取り付けられている場合にも適用可能である。
【0051】
[実施例5]
図13A及び図13Bに、実施例5による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル20の平面図を示す。以下、図10に示した実施例4による蓄電セル20との相違点に着目して説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0052】
実施例10では、蓄電容器10の相互に反対側の縁から、第1及び第2の電極タブ12、13が引き出されていた。実施例5では、第1及び第2の電極タブ12、13が、同一の縁から同一方向に引き出されている。
【0053】
第1の電極タブ12に、その引き出し方向に沿う一方の縁(引出方向とほぼ平行な一方の縁)から、反対側の縁に向かって、スリット14bが形成されている。同様に、第2の電極タブ13にも、その引き出し方向に沿う一方の縁から、反対側の縁に向かって、スリット15bが形成されている。第1の電極タブ12の幅と第2の電極タブ13の幅とは等しく、スリット14b及びスリット15bの長さは、第1の電極タブ12の幅の約半分である。スリット14bとスリット15bとの開口端は、同一方向を向く。図13Aに示した蓄電セル20においては、第1及び第2の電極タブ12、13を上方に向けて、腹面側から見たとき、スリット14b、15bの開口端が右方を向く。図13Bに示した蓄電セル20においては、第1及び第2の電極タブ12、13を上方に向けて、腹面側から見たとき、スリット14b、15bの開口端が左方を向く。
【0054】
図13Aに示した蓄電セル20と、図13Bに示した蓄電セル20とを、腹面が同一方向を向く姿勢で重ね合わせたとき、一方の蓄電セル20のスリット14bと、他方の蓄電セル20のスリット15bとを噛み合せることができる。噛み合わせ部分の構造は、実施例4の図12Aまたは図12Bの構造と同一である。
【0055】
図14に、蓄電セル20を積層して、スリット14bと15bとを噛み合わせて構成された蓄電モジュールの断面図を示す。図14の上方において、二組の電極タブ12、13が接続されている。なお、図14には、一組の電極タブ12、13のみが現れており、図14に示された断面とは異なる断面において、もう一組の電極タブ12、13が接続されている。
【0056】
図14では、噛みあわせ部分の構造として、図12Bに示された構造を採用したが、図12Aに示された構造を採用してもよい。
【0057】
実施例5においても、実施例4と同様に、第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との位置決めを容易に行うことができる。
【0058】
[実施例6]
図15Aに、実施例6による蓄電モジュールの断面図を示す。複数の蓄電セル20が、その厚さ方向に積層されている。蓄電セル20の厚さ方向(積層方向)をz軸方向とするxyz直交座標系を定義する。蓄電セル20の構成、及び蓄電セル20が積層される姿勢は、実施例1〜実施例4のいずれかに示したものと同一である。z方向に隣り合う蓄電セル20の間に、伝熱板25が配置されている。
【0059】
伝熱板25には、例えばアルミニウムが用いられる。伝熱板25は、y方向(図2のy方向に相当)、すなわち第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13が引き出されている方向(x方向)とは異なる方向に、蓄電セル20の縁よりも外側まで広がっている。
【0060】
加圧機構40が、蓄電セル20及び伝熱板25からなる積層体に、積層方向(z方向)の圧縮力を加えている。加圧機構40は、一対の押さえ板41、4本のタイロッド43、及びナット42を含む。押さえ板41は、蓄電セル20と伝熱板25とからなる積層体の両端に配置されている。タイロッド43が、一方の押さえ板41から他方の押さえ板41まで貫通し、一対の押さえ板41に、両者の間隔が狭まる向きの力を加える。タイロッド43は、xy面内において、伝熱板25と空間的に干渉しない位置に配置される。
【0061】
壁板31及び32が、蓄電セル20及び伝熱板25を含む積層体を、y方向に挟む。壁板31、32は、y軸に垂直な姿勢で配置され、押さえ板41にボルトで固定されている。壁板31、32は、伝熱板25の端面において、伝熱板25に熱的に結合している。例えば、壁板31、32と伝熱板25とを直接接触させてもよいし、両者を熱伝導性接着剤で固定してもよいし、両者の間に伝熱ゴムシートを挟んでもよい。蓄電セル20で発生した熱が、伝熱板25を経由して、壁板31、32に伝導される。壁板31、32を水冷等で強制的に冷却することにより、蓄電セル20の温度上昇を軽減することができる。
【0062】
図15Bに、図15Aの一点鎖線15B−15Bにおける断面図を示す。図15Bの一点鎖線15A−15Aにおける断面図が図15Aに相当する。積層された複数の蓄電セル20が、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13によって直列接続されている。第1の電極タブ12と第2の電極タブ13との接続構造は、実施例1〜実施例4のいずれかの構造と同一である。なお、第1の電極タブ12及び第2の電極タブ13は、伝熱板25と接触しないように屈曲している。
【0063】
壁板33及び34が、蓄電セル20及び伝熱板25を含む積層体をx方向に挟む。壁板33及び34は、ボルトにより押さえ板41に固定される。また、図15Bには現れていないが、壁板31、32(図15A)にもボルトにより固定される。押さえ板41及び壁板31、32、33、34が、平行六面体の筐体を構成する。
【0064】
壁板33、34に、それぞれ窓33A、34Aが設けられている。窓33A、34A内に、それぞれ強制空冷機構48、49が配置されている。強制空冷装置48、49は、筐体内を強制的に空冷する。
【0065】
[実施例7]
実施例7では、実施例1〜実施例6の少なくとも一つの蓄電モジュールを搭載したハイブリッド型掘削機が例示される。
【0066】
図16に、実施例7によるハイブリッド型掘削機の概略平面図を示す。旋回体70に、旋回軸受け73を介して、走行装置71が取り付けられている。旋回体70に、エンジン74、油圧ポンプ75、電動モータ76、油タンク77、冷却ファン78、座席79、蓄電モジュール80、及び電動発電機83が搭載されている。エンジン74、油圧ポンプ75、及び電動発電機83が、トルク伝達機構81を介して相互にトルクの送受を行う。油圧ポンプ75は、ブーム82等の油圧シリンダに圧油を供給する。
【0067】
電動発電機83は、エンジン74の動力によって駆動され、発電を行う(発電運転)。発電された電力は、蓄電モジュール80に供給され、蓄電モジュール80が充電される。また、電動発電機83は、蓄電モジュール80からの電力によって駆動され、エンジン74をアシストするための動力を発生する(アシスト運転)。油タンク77は、油圧回路の油を貯蔵する。冷却ファン78は、油圧回路の油温の上昇を抑制する。操作者は、座席79に着座して、ハイブリッド型掘削機を操作する。
【0068】
蓄電モジュール80には、上記実施例1〜実施例6のいずれかの蓄電モジュールが用いられる。蓄電モジュール80から供給される電力によって、旋回モータ76が駆動される。旋回モータ76は、旋回体70を旋回させる。また、旋回モータ76は、運動エネルギを電気エネルギに変換することによって回生電力を発生する。発生した回生電力によって、蓄電モジュール80が充電される。
【0069】
図16には、実施例1または実施例2の蓄電モジュールを適用したハイブリッド型掘削機を示したが、実施例1または実施例2の蓄電モジュールは、その他のハイブリッド型作業機械、例えば、ハイブリッド型ホイルローダ、ハイブリッド型ブルドーザに適用することも可能である。さらに、電動作業機械に適用することも可能である。
【0070】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0071】
10 蓄電容器
10A、10B ラミネートフィルム
11 蓄電要素
12 第1の電極タブ
13 第2の電極タブ
14、15 スリット
16 板状部分
17 斜面領域
18 接触する直線部分
20 蓄電セル
21 第1の集電極
21A 延伸部分
22 第2の集電極
22A 延伸部分
23 セパレータ
25 伝熱板
27 第1の分極性電極
28 第2の分極性電極
31、32、33、34 壁板
33A、34A 窓
40 加圧機構
41 押さえ板
42 ナット
43 タイロッド
48、49 強制空冷装置
70 旋回体
71 走行装置
73 旋回軸受け
74 エンジン
75 油圧ポンプ
76 旋回モータ
77 油タンク
78 冷却ファン
79 座席
80 蓄電モジュール
81 トルク伝達機構
82 ブーム
83 電動発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の蓄電セルを有し、
前記蓄電セルの各々は、スリットが形成された第1及び第2の電極タブを含み、相互に隣り合う2枚の蓄電セルの一方の第1の電極タブと、他方の第2の電極タブとが相互に重なって接続されており、相互に接続された第1の電極タブのスリットと、第2の電極タブのスリットとが噛み合っている蓄電モジュール。
【請求項2】
相互に接続された前記第1の電極タブのスリットと、前記第2の電極タブのスリットとが、1本の直線に沿う姿勢で配置され、前記第1の電極タブのスリットの端部に、前記第2の電極タブのスリットの端部が接触することにより、挿入の深さが規制されている請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第1及び第2の電極タブに、それぞれ前記スリットが相互に平行に複数本形成されており、前記第1の電極タブのスリットと前記第2の電極タブのスリットとが1対1に対応し、相互に対応するスリット同士が噛み合っている請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記蓄電セルは、板状の蓄電構造体を収容する蓄電容器と、前記蓄電容器の縁から引き出された前記第1及び第2の電極タブとを含み、
前記第1の電極タブ及び前記第2の電極タブに形成されたスリットは、先端から基部に向かって形成されており、
相互に隣り合う前記蓄電セルは、一方の蓄電セルの前記第1の電極タブと、他方の蓄電セルの前記第2の電極タブとが同一方向に引き出される姿勢で積み重ねられており、前記第1の電極タブと第2の電極タブとは、相互に近づく向きに屈曲し、屈曲部分よりも先端の部分において重なっている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記蓄電セルは、板状の蓄電構造体を収容する蓄電容器と、前記蓄電容器の縁から引き出された前記第1及び第2の電極タブとを含み、
前記第1の電極タブ及び前記第2の電極タブに形成されたスリットは、引き出された方向に沿う一方の縁から、反対側の縁に向かって形成されている請求項1または2に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
蓄電モジュールと、
前記蓄電モジュールから供給される電力によって駆動される電動機と
を有する作業機械であって、
前記蓄電モジュールは、積層された複数の蓄電セルを有し、
前記蓄電セルの各々は、スリットが形成された第1及び第2の電極タブを含み、相互に隣り合う2枚の蓄電セルの一方の第1の電極タブと、他方の第2の電極タブとが相互に重なって接続されており、相互に接続された第1の電極タブのスリットと、第2の電極タブのスリットとが噛み合っている作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−256650(P2012−256650A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127637(P2011−127637)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】