蓄電池制御システム及び蓄電池制御方法
【課題】電力系統に接続される複数の蓄電池を有効に使用すること。
【解決手段】
蓄電池制御システムは、電力系統に設けられる複数の蓄電池120と、蓄電池制御装置110を備える。蓄電池制御装置は、複数の蓄電池と電力管理装置30とに通信可能に接続される。蓄電池制御装置は、各蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し(112)、電力管理装置から、所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し(115、116)、蓄電池情報と電力需給予測情報とに基づいて、各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し(114)、決定された個別充放電量を各蓄電池に送信する(111)。各蓄電池は、蓄電池制御装置から受信した個別充放電量に基づいてそれぞれ作動する。
【解決手段】
蓄電池制御システムは、電力系統に設けられる複数の蓄電池120と、蓄電池制御装置110を備える。蓄電池制御装置は、複数の蓄電池と電力管理装置30とに通信可能に接続される。蓄電池制御装置は、各蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し(112)、電力管理装置から、所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し(115、116)、蓄電池情報と電力需給予測情報とに基づいて、各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し(114)、決定された個別充放電量を各蓄電池に送信する(111)。各蓄電池は、蓄電池制御装置から受信した個別充放電量に基づいてそれぞれ作動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池制御システム及び蓄電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、電力系統に複数の蓄電池を接続するシステムが提案されている。電力系統に接続する蓄電池に関する技術ではないが、異なる種類の電池を用いて共通の負荷に電力を供給する技術は知られている(特許文献1)。また、選択された負荷に二次電池の余剰電力を給電することで電力を有効に活用し、かつ、二次電池の健全性を高める技術が知られている(特許文献2)。さらに、電力系統に接続する蓄電池に関する技術ではないが、電動車両に出力密度の大きな蓄電池とエネルギー密度の大きな蓄電池を搭載し、いずれか一方の蓄電池から電力を供給する技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246211号公報
【特許文献2】特開平10−322924号公報
【特許文献3】特開平9−298806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力系統に接続された複数の蓄電池を利用して、電力系統を安定的かつ効率的に運用するためには、電力の需給予測を踏まえて、各蓄電池を計画的に制御する必要がある。しかし、特許文献1及び特許文献3は、電力系統に接続された複数の蓄電池を個別に制御する技術ではなく、蓄電池の充放電を計画的に制御するものではない。特許文献2は、或る特定の二次電池の健全性を保つ技術であり、複数の蓄電池の充放電を制御して電力系統の安定的かつ効率的な運用を図るものではない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電力系統に設置された複数の蓄電池を有効利用し、電力系統の安定的かつ効率的な運用を実現できるようにした蓄電池制御システム及び蓄電池制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る蓄電池制御システムは、電力系統に接続される蓄電池の作動を制御する蓄電池制御システムであって、電力系統に設けられる複数の蓄電池と、複数の蓄電池の充放電を制御するための蓄電池制御装置であって、複数の蓄電池と電力管理装置とにそれぞれ通信可能に接続される蓄電池制御装置とを備え、蓄電池制御装置は、各蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、所定範囲の電力需給を管理する電力管理装置から、所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、蓄電池情報と電力需給予測情報とに基づいて、各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、決定された個別充放電量を各蓄電池に送信し、各蓄電池は、蓄電池制御装置から受信した個別充放電量に基づいてそれぞれ作動する。
【0007】
充放電性能には、単位時間あたりの充電量を示す充電性能と、単位時間あたりの放電量を示す放電性能と、最大電池容量とが含まれてもよい。
【0008】
電力管理装置は、所定範囲に存在する需要家の電力消費量に基づいて、単位時間よりも長く設定される所定期間における、所定範囲での電力需要を予測し、予測した電力需要に基づいて、各蓄電池の全体に対して要求する合計充放電量を算出し、算出した合計充放電量を電力需給予測情報に含めて、蓄電池制御装置に送信することができる。
【0009】
電力管理装置は、予測した電力需要に基づいて、電力需要の変化の傾向を示す負荷予測情報を算出し、算出した負荷予測情報を電力需給予測情報に含めて、蓄電池制御装置に送信することもできる。
【0010】
蓄電池制御装置は、電力管理装置から受信する負荷予測情報に基づいて、電力需要と電力供給とがバランスしているバランスモード、電力需要の方が電力供給よりも多い放電優先モード、または、電力供給が電力需要よりも多い充電優先モードのいずれであるのか、を判定し、判定されたモードに基づいて各蓄電池毎の個別充放電量を決定するための制御パターンを選択することもできる。
【0011】
蓄電池制御装置は、バランスモードの場合、各蓄電池の電池残量を当該各蓄電池の最大電池容量の半分に近づけさせるように個別充放電量を決定するためのバランス制御パターンを選択し、放電優先モードの場合、各蓄電池のうち放電性能の低い蓄電池から各蓄電池のうち放電性能の高い蓄電池に充電させるように個別充放電量を決定するための放電制御パターンを選択し、充電優先モードの場合、各蓄電池のうち充電性能の高い蓄電池から各蓄電池のうち充電性能の低い蓄電池に充電させるように個別充放電量を決定するための充電制御パターンを選択する、こともできる。
【0012】
蓄電池制御装置は、制御パターンの候補が複数存在する場合、所定の選択基準に基づいて、候補の中からいずれか一つを制御パターンとして選択してもよい。
【0013】
本発明の構成の少なくとも一部は、コンピュータプログラムまたはハードウェア回路として実現できるであろう。コンピュータプログラムは、例えば、インターネットのような通信媒体、ハードディスクまたはフラッシュメモリデバイスのような記録媒体を介して、配布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、蓄電池制御システムの全体構成図である。
【図2】図2は、蓄電池制御処理のフローチャートである。
【図3】図3は、図2のフローチャートの一部の詳細を示す。
【図4】図4は、蓄電量情報の構成を示す。
【図5】図5は、充放電性能情報の構成を示す。
【図6】図6は、時間と充電性能の関係を示すテーブルである。
【図7】図7は、時間と放電性能の関係を示すテーブルである。
【図8】図8は、蓄電池の充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図9】図9は、バランスモードの制御パターンを実行する前と後の、蓄電量情報の変化を示す。
【図10】図10は、バランスモードの制御パターンを実行する前の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図11】図11は、バランスモードの制御パターンを実行した後の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図12】図12は、放電優先モードの制御パターンを実行した後の、蓄電量情報の変化を示す。
【図13】図13は、放電優先モードの制御パターンを実行した後の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図14】図14は、充電優先モードの制御パターンを実行した後の、蓄電量情報の変化を示す。
【図15】図15は、充電優先モードの制御パターンを実行した後の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図16】図16は、第2実施例に係る蓄電池制御システムの全体構成図。
【図17】図17は、第3実施例に係る蓄電池制御システムの全体構成図。
【図18】図18は、第4実施例に係り、充放電性能の時間変化を示すグラフ。
【図19】図19は、第5実施例に係る蓄電池制御システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の蓄電池制御システムは、以下に詳述するように、電力系統の需給予測情報を提供する電力管理装置30と、電力系統に接続された、充放電制御可能な複数の蓄電池120と、蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御装置110を備える。図中、蓄電池を「VT」または「電池」と略記したり、省略したりする場合がある。
【0016】
蓄電池制御装置は、電力管理装置からの需給予測情報を受信し、さらに、各蓄電池から蓄電池情報を受信する。蓄電池制御装置は、電力需要の予測に応じた制御パターンに基づいて、各蓄電池毎に充放電を指示する。
【0017】
これにより、本実施形態では、各蓄電池の充放電性能を電力需給予測にマッチングさせて、各蓄電池を計画的に充放電させる。つまり、各蓄電池の蓄電量は、電力需給予測に対応して調整される。
【0018】
従って、多くの放電が求められる場合には、速やかに蓄電池に貯えた電力を電力系統に供給することができる。逆に、多くの充電が求められる場合には、速やかに電力系統からの余剰電力を蓄電池に貯えることができる。電力の需要と供給がバランスしている場合は、蓄電池のSOC(State Of Charge)を50%に近づくように事前に調整することで、電力の需給バランスをできるだけ維持できるようにする。
【0019】
このように、本実施形態によれば、計画的に各蓄電池の蓄電量を調整して、蓄電池を有効活用するため、電力系統を安定的かつ効率的に運用することができる。以下、本実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図15を参照して第1実施例を説明する。図1は、蓄電池制御システム10を含む、低圧系統側の電力制御システムの全体構成を示す。この電力制御システムは、例えば、少なくとも一つの蓄電池制御システム10と、複数の需要家20(1)、20(2)と、少なくとも一つの電力管理装置30と、少なくとも一つの柱上変圧器40と、少なくとも一つの低圧側電力系統41とを含むことができる。
【0021】
柱上変圧器40から出る低圧側の電力系統(配電線)41には、複数の需要家20(1)、20(2)と、複数の蓄電池120(1)、120(2)、120(3)、120(4)とが接続されている。特に区別しない場合、蓄電池120(1)〜120(4)を蓄電池120と呼ぶことがある。
【0022】
需要家20(1)、20(2)は、例えば、一般個人住宅、集合住宅、工場、商業施設、病院等である。特に区別する必要がない場合、需要家20(1)、20(2)を需要家20と呼ぶことがある。需要家20は、例えば、照明装置、空調装置、温水器、乗客コンベア装置等の、電力を消費する各種電気的負荷を有する。需要家20は、さらに、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置等の発電装置を備えることもできる。
【0023】
需要家20での電力消費量(および発電量)は、電力計測部21により、所定周期で計測される。電力計測部21は、計測した電力消費量の情報を、通信ネットワークCN1を介して、電力管理装置30に送信する。通信ネットワークCN1は、例えば、無線通信を利用する通信ネットワーク、電力線を利用する通信ネットワーク、インターネット、LAN(Local Area Network)のいずれか一つまたは複数を用いて構成される。
【0024】
電力管理装置30は、所定範囲の電力需給を管理するための装置である。電力管理装置30は、マイクロプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータとして構成される。メモリに格納された所定のコンピュータプログラムをマイクロプロセッサが実行することで、負荷予測部31と、充放電要請量決定部32とがそれぞれ実現される。
【0025】
負荷予測部31は、需要家20の電力消費量の履歴等に基づいて、今後の負荷(電力需要)の予測を示す負荷予測情報を生成する。負荷の予測方法としては種々考えられるが、例えば、過去の同日の同時刻に計測された電力消費量の平均値から、対応する時刻の電力消費量を予測することができる。さらに、電力消費量の履歴データと過去の気象データ及び天気予報を参考にして、電力消費量を予測することもできる。
【0026】
本実施例の負荷予測情報は、「負荷が増加する傾向」にあるか、「負荷が減少する傾向」にあるか、「負荷が現状維持の傾向」にあるかを判定するための情報を含む。負荷予測情報は、例えば、「−」、「+」、「0」のような負荷の変動傾向を端的に表す記号または英数字から構成してもよい。負荷予測情報は、例えば、「−20%」、「+15%」、「プラスマイナス0」のような負荷の変動傾向と変動量の両方を含んでもよい。
【0027】
負荷とは、所定範囲の電力需要(各需要家20の電力消費量の合計値)である。後述のように、負荷が増加する傾向にある場合、負荷の増加に備えて、蓄電池120の蓄電量が事前に調整される。負荷が減少する傾向にある場合、負荷の減少に備えて、蓄電池120の蓄電量が事前に調整される。負荷が現状維持の傾向にある場合、そのバランスをできるだけ維持すべく、蓄電池120の蓄電量が事前に調整される。
【0028】
蓄電池充放電要請量決定部(図中、充放電要請量決定部)32は、複数の蓄電池120の全体に対して要求する、充電量または放電量を決定する機能である。以下、充放電要請量決定部32と呼ぶ。
【0029】
充放電要請量決定部32は、負荷予測部31で生成される負荷予測情報と、電力計測部21で計測される各需要家20の電力消費量とに基づいて、蓄電池120全体としての充放電要請量を決定する。決定された充放電要請量は、通信ネットワークCN1を介して、蓄電池制御装置110に送信される。
【0030】
上述の通り、充放電要請量は、複数の蓄電池120の全体に対して要求する値であり、「合計充放電量」に相当する。つまり、充放電要請量は、複数の蓄電池120から成る一つの仮想的な蓄電池に対して要求する、充電量または放電量である。
【0031】
充放電要請量を決定する方法の一例を説明する。例えば、柱上変圧器40における電力需要(負荷)の目標値を設定し、各需要家20の電力消費量の合計値と目標値との差分を、蓄電池120の全体に対する、充電量または放電量とする。
【0032】
つまり、柱上変圧器40の低圧側系統(配電線)41の総需要が目標値(目標負荷)よりも大きい場合、各蓄電池120のいずれか一つまたは複数から低圧側系統41に、電力を供給させる。反対に、低圧側系統の総需要が目標値よりも少ない場合、各蓄電池120のいずれか一つまたは複数に、低圧側系統41の余剰電力を蓄えさせる。
【0033】
蓄電池制御システム10の構成を説明する。蓄電池制御システム10は、低圧側系統41に接続される複数の蓄電池120(1)〜120(4)と、それら蓄電池120(1)〜120(4)に通信ネットワークCN2を介して接続される蓄電池制御装置(図中、VT制御装置)110とを備える。
【0034】
図中では、4個の蓄電池120(1)〜120(4)を示すが、2個、3個、5個以上の蓄電池を設ける構成でもよい。本実施例では、各蓄電池120(1)〜120(4)は、それぞれ電気的特性の異なる蓄電池である場合を説明する。しかし、各蓄電池120(1)〜120(4)の電気的特性が同一の場合も、本実施例を適用できる。
【0035】
本実施例では、各蓄電池120(1)〜120(4)の電気的特性は異なるが、基本的構成は共通する。そこで、各蓄電池120(1)〜120(4)を蓄電池120と呼ぶことにする。各蓄電池120は、例えば、通信部121と、蓄電池本体122と、充放電制御部123とを備える。
【0036】
通信部(図中、I/F)121は、通信ネットワークCN2を介して、蓄電池制御装置110と通信するための回路である。通信ネットワークCN2は、各蓄電池120と蓄電池制御装置110とが通信するためのネットワークであり、例えば、無線通信ネットワーク、PLC(Power Line Communications)、インターネットのいずれかまたは複数を利用して構成可能である。通信部121は、蓄電池制御装置110から通信ネットワークCN2を介して、後述の充放電制御信号を受信する。通信部121は、受信した充放電制御信号を充放電制御部123に渡す。さらに、通信部121は、通信ネットワークCN2を介して蓄電池制御装置110に、後述の蓄電量等を送信することもできる。
【0037】
蓄電池本体122は、電極及び電解質を有するセルを複数個接続して構成される。蓄電池本体122は、例えば、リチウムイオン蓄電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ナトリウム・硫黄蓄電池から構成することができる。さらに、蓄電池120は、蓄電池本体122のほかに、電気二重槽コンデンサ等のキャパシタを備えてもよい。
【0038】
充放電制御部123は、蓄電池本体122への充電、及び、蓄電池本体122からの放電を制御するための制御回路である。充放電制御部123は、例えば、インバータ回路とマイクロコンピュータ回路等を含んで構成することができる。
【0039】
充電時に、充放電制御部123は、電力系統41からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池本体122に充電する。放電時に、充放電制御部123は、蓄電池本体122の直流電力を交流電力に変換して、電力系統41に供給する。
【0040】
充放電制御部123は、蓄電池制御装置110から受信する充放電制御信号に従って、蓄電池本体122に充電または放電させる。充放電制御部123は、蓄電池本体122の蓄電量(現在の電池残量)を管理している。充放電制御部123は、蓄電量を蓄電池制御装置110に定期的にまたは不定期に送信することができる。
【0041】
蓄電池制御装置110の構成を説明する。蓄電池制御装置110は、電力系統の電力需給状態に基づいて、各蓄電池120の充放電を個別に制御する。蓄電池制御装置110は、マイクロプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータ装置として構成できる。蓄電池制御装置110は、電力管理装置30と一体化してもよい。
【0042】
蓄電池制御装置110は、例えば、充電ステーション等に設置してもよい。充電ステーションとは、複数の蓄電池120を有しており、所定の地域に電力を供給したり、所定の地域で生じた余剰電力を蓄えたりするための施設である。
【0043】
蓄電池制御装置110のマイクロプロセッサは、メモリに格納された所定のコンピュータプログラムを実行することで、以下の各機能111〜116を実現する。
【0044】
蓄電量受信部112は、各蓄電池120から送信される蓄電量を受信する。受信した蓄電量は、蓄電池管理データベース(図中、VT管理DB)113に保存される。
【0045】
蓄電量受信部112は、所定の周期で、各蓄電池120から蓄電量を受信し、蓄電池管理DB113を更新することができる。または、最新の蓄電量が必要になった場合に、蓄電池制御装置110から各蓄電池120に蓄電量の送信を要求する構成でもよい。
【0046】
負荷予測受信部115は、電力管理装置30の負荷予測部31から送信される負荷予測情報を受信する。
【0047】
蓄電池制御量受信部116は、電力管理装置30の充放電要請量決定部32から送信される充放電要請量情報を受信する。充放電要請量情報は、蓄電池制御装置110の制御対象である各蓄電池120の全体に対して要求される充電量または放電量の情報と、今後の負荷予測の情報とを含んでいる。
【0048】
蓄電池管理データベース113は、各蓄電池120の蓄電量を示す情報と、各蓄電池120の充放電性能を示す情報とを格納する。
【0049】
充放電量演算部114は、各蓄電池120毎の個別の充放電量を算出する。充放電量演算部114は、各蓄電池120の蓄電量情報と、各蓄電池120の充放電性能情報と、電力管理装置30から送信される充放電要請量情報及び負荷予測情報とに基づいて、各蓄電池120毎の個別の充放電量を演算する。その演算結果である個別の充放電量は、制御情報送信部111に渡される。個別の充放電量は、各蓄電池120の充放電を制御するための制御量であるから、充放電制御量と呼ぶこともできる。
【0050】
制御情報送信部111は、各蓄電池120毎に生成された充放電量(充放電制御量)を充放電制御信号に変換し、各蓄電池120に送信する。
【0051】
ここで、図4及び図5を参照し、蓄電池管理データベース113に格納される、蓄電量情報T10及び充放電性能情報T20について説明する。
【0052】
図4に蓄電量情報T10の例を示す。蓄電量情報T10は、例えば、電池ID C100と、蓄電量C101と、SOC C102とを対応付けて管理する。図3の蓄電量情報T10は、各蓄電池120のSOCが50%になっている場合の状態を示す。
【0053】
電池ID C100は、各蓄電池120を識別するための情報である。蓄電池制御システム10内で各蓄電池120を一意に識別できればよい。蓄電量C101は、蓄電池120に蓄えられている電力量を示す情報である。SOC C102は、蓄電池120の充電率を示す情報である。SOCは、蓄電量を最大電池容量で割った値として求めることができる(SOC=(蓄電量/最大電池容量)×100%)。
【0054】
例えば、図中「VT1」として示す蓄電池120(1)に着目すると、蓄電量が5kWhであり、SOCが50%であることがわかる。「VT2」として示す蓄電池120(2)に着目すると、蓄電量が8kWhであり、SOCが50%であることがわかる。「VT3」として示す蓄電池120(3)に着目すると、蓄電量が9kWhであり、SOCが50%であることがわかる。「VT4」として示す蓄電池120(4)に着目すると、蓄電量が5kWhであり、SOCが50%であることがわかる。
【0055】
図5に充放電性能情報T20の例を示す。充放電性能情報T20は、各蓄電池120の充電性能及び放電性能を管理する。充放電性能情報T20は、例えば、電池ID C200と、最大電池容量C201と、充電性能C202と、放電性能C203とを対応付けて管理する。
【0056】
最大電池容量C201は、蓄電容量の最大値を示す情報である。充電性能C202は、単位時間あたりに充電可能な電力量(kW/h)を示す情報である。放電性能C203は、単位時間あたりに放電可能な電力量(kW/h)を示す情報である。
【0057】
蓄電池120(1)に着目すると、その最大電池容量は10kWh、充電性能は5kW/h、放電性能は5kW/hであることがわかる。以下同様に、蓄電池120(2)に着目すると、最大電池容量が16kWh、充電性能が4kW/h、放電性能が4kW/hであることがわかる。蓄電池120(3)に着目すると、最大電池容量が18kWh、充電性能が3kW/h、放電性能が3kW/hであることがわかる。蓄電池120(4)に着目すると、最大電池容量が10kWh、充電性能が1kW/h、放電性能が1kW/hであることがわかる。
【0058】
図2及び図3のフローチャートを参照して、充放電制御信号を作成するための制御情報算出処理を説明する。図2及び図3の処理は、主に、充放電量演算部114により実行される。蓄電池120の制御周期が1時間の場合を例に挙げて説明する。1時間よりも短い制御周期、または、1時間よりも長い制御周期でもよい。1時間以外の制御周期の場合は、その制御周期に充放電可能な電力量に換算して、下記の処理を実施すればよい。
【0059】
充放電量演算部114は、最初に、電力管理装置30から充放電要請量情報を取得する(S10)。充放電要請量情報には、蓄電池制御装置110が管理する各蓄電池120の全体で充電もしくは放電する必要がある電力量と、負荷予測情報とが含まれる。
【0060】
充放電量演算部114は、蓄電池管理DB113から、各蓄電池120の蓄電池情報を取得する。蓄電池情報には、蓄電量情報T10及び充放電性能情報T20が含まれる(S11)。即ち、蓄電池情報には、各蓄電池120の、最大電池容量、放電性能、充電性能、蓄電量が含まれる。
【0061】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の蓄電量と放電性能および充電性能から、現在時刻からの時間経過に応じた充電能力及び放電能力をそれぞれ算出する(S12)。時間経過に応じた充電能力とは、現在時刻からの時間が経過するにつれて、充電能力(充電性能)がどのように変化するかを示す情報である。同様に、時間経過に応じた放電能力とは、現在時刻からの時間が経過するにつれて、放電能力(放電性能)がどのように変化するかを示す情報である。
【0062】
時間経過に応じた充電能力は、「時間−充電能力」のグラフとして図8等に示される。同様に、時間経過に応じた放電能力は、「時間−放電能力」のグラフとして図8等に示される。
【0063】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の充電能力及び放電能力を制御周期毎に加算することで、時間あたりの充電能力の合計値と時間あたりの放電能力の合計値をそれぞれ算出する。
【0064】
時間あたりの充電能力および時間あたりの放電能力とは、現在の蓄電量で蓄電池120の充放電性能を最大に発揮した場合にどれだけ充放電可能であるかを、制御周期時間毎に算出したものである。
【0065】
図5に示す充放電性能を有する蓄電池120が、図4に示す蓄電量を有する場合を例に挙げて説明する。図6は、単位時間あたりの充電能力が時間の経過に応じて変化する様子を示すテーブルT30である。図7は、単位時間あたりの放電能力が時間の経過に応じて変化する様子を示すテーブルT40である。
【0066】
蓄電池120(1)の時間あたりの充電能力は、図6に示すように変化する。即ち、蓄電池120(1)は、最初の1時間では、充電性能通りの5kWhの電力量を充電可能である。蓄電量が5kWhの状態で5kWhを充電すると、その蓄電量は10kWhに達し、最大電池容量になる。従って、最初の1時間を経過した後は、蓄電池120(1)に充電可能な電力は、0kWhとなる。
【0067】
以下同様に、蓄電池120(2)に着目する。蓄電池120(2)の蓄電量は8kWhであり、最初の1時間に4kWhの電力量が充電され、次の1時間でも4kWhの電力量が充電される。この結果、蓄電池120(2)の蓄電量は、最大電池容量である16kWhに達する。従って、3時間目以降では、蓄電池120(2)に充電することはできなくなる。
【0068】
蓄電池120(3)に着目する。蓄電池120(3)の蓄電量は9kWhであり、最初の1時間で、充電性能通りに3kWhの電力が充電される。2時間目及び3時間目においても、蓄電池120(3)には、3kWhずつの電力が充電される。その結果、蓄電池120(3)の蓄電量は、最大電池容量である18kWhに達する。従って、4時間目以降では、蓄電池120(3)に充電することはできなくなる。
【0069】
蓄電池120(4)に着目する。蓄電池120(4)の蓄電量は5kWhであり、1時間目で、充電性能通りに1kWhの電力が充電される。2時間目、3時間目、4時間目及び5時間目においても、蓄電池120(3)に1kWhずつの電力が充電される。その結果、蓄電池120(4)の蓄電量は、最大電池容量である10kWhに達する。従って、6時間目以降では、蓄電池120(4)に充電することはできなくなる。
【0070】
各単位時間(制御周期)毎の充電量を合計すると、1時間目は13kWh、2時間目は8kWh、3時間目は4kWh、4時間目は1kwh、5時間目は1kWhとなる。6時間目以降の充電量の合計値は0kWhである。
【0071】
図7を参照して、放電能力の単位時間あたりの変化を説明する。図7は、図4及び図5に示す値を前提条件として作成されている。
【0072】
蓄電池120(1)に着目する。蓄電池120(1)は、蓄電量が5kWhであり、放電能力は5kWh/hである。蓄電池120(1)は、最初の1時間目で5kWhの電力を放電するため、蓄電量が0kWhとなる。従って、蓄電池120(1)は、2時間目以降、放電することができない。
【0073】
蓄電池120(2)に着目する。蓄電池120(2)は、蓄電量が8kWhであり、放電能力は4kW/hである。蓄電池120(2)は、最初の1時間目で4kWhの電力を放電し、次の2時間目でも4kWhの電力を放電する。この時点で、蓄電池120(2)の蓄電量は0kWhとなる。従って、蓄電池120(2)は、3時間目以降、放電することができない。
【0074】
蓄電池120(3)に着目する。蓄電池120(3)は、蓄電量が9kWhであり、放電能力は3kW/hである。蓄電池120(3)は、1時間目で3kWhの電力を放電し、2時間目及び3時間目でも3kWhずつ電力を放電する。3時間目が終了した時点で、蓄電池120(3)の蓄電量は0kWhとなる。従って、蓄電池120(3)は、4時間目以降、放電することができない。
【0075】
蓄電池120(4)に着目する。蓄電池120(4)は、蓄電量が5kWhであり、放電能力は1kW/hである。蓄電池120(4)は、1時間目から5時間目まで1kWhずつ電力を放電する。5時間目の終了時点で、蓄電池120(4)の蓄電量は0kWhとなる。従って、蓄電池120(5)は、6時間目以降、放電することができない。
【0076】
各単位時間(制御周期)毎の放電量を合計すると、1時間目は13kWh、2時間目は8kWh、3時間目は4kWh、4時間目は1kwh、5時間目は1kWhとなる。6時間目以降の充電量の合計値は0kWhである。
【0077】
図8(a)は、図6のテーブルT30及び図7のテーブルT40の数値をグラフ表示したものである。図8の縦軸は、充放電の電力量を示し、1目盛りは1kWを示す。図8の横軸は、現在時刻からの経過時間を示し、一目盛りは1時間を示す。横軸の中央が現在時刻を示し、左右の両端に向かうにつれて時間が経過する。現在時刻から右側の領域は、充電能力の時間変化を示し、図6のテーブルT30に対応する。現在時刻から左側の領域は、放電能力の時間変化を示し、図7のテーブルT40に対応する。
【0078】
また、グラフの一番上の領域は、蓄電池120(1)に関する充放電の時間変化を示す第1蓄電池表示領域である。その次の領域は、蓄電池120(2)に関する充放電の時間変化を示す第2蓄電池表示領域である。さらに次の領域は、蓄電池120(3)に関する充放電の時間変化を示す第3蓄電池表示領域である。さらに次の領域は、蓄電池120(4)に関する充放電の時間変化を示す第4蓄電池表示領域である。
【0079】
図2のフローチャートに戻る。充放電量演算部114は、ステップS10で取得した充放電要請量を、各蓄電池120に割り当てるための制御計画(制御パターン)を立案する(S13)。
【0080】
割当て方法としては種々考えられるが、例えば、充放電性能の低いものから順番に、要請された充放電量を割り当てる。一般的に、蓄電池は充放電を繰り返すほど劣化するという技術的特徴を有する。さらに、一般的には、高性能の蓄電池ほど高価であり、低性能の蓄電池ほど安価である。
【0081】
本実施例では、図5のテーブルT20に示した通り、第1蓄電池120(1)が最も高性能であり、第2蓄電池120(2)が次に高性能である。第4蓄電池120(4)は最も低性能であり、第3蓄電池120(3)は、その次に低性能である。
【0082】
従って、できるだけ低性能な蓄電池120を用いて、電力管理装置30からの要請に応える方が、蓄電池制御システム10の運用コストを低下させることができる。そこで、本実施例では、一つの例として、要請された充放電量が小さい場合は、できるだけ安価な低性能の蓄電池120(3)、120(4)で対応し、要請充放電量が大きい場合は、高価な高性能の蓄電池120(1)、120(2)を利用する。これにより、高性能の蓄電池120(1)、120(2)の使用頻度をできるだけ少なくして、劣化を遅らせる。
【0083】
従って、本実施例では、割当ての優先順位は、蓄電池120(4)、蓄電池120(3)、蓄電池120(2)、蓄電池120(1)の順になる。最も低性能の蓄電池120(4)が優先して使用され、最も高性能の蓄電池120(1)は使用される可能性が少なくなっている。
【0084】
ここで、理解の便宜のために、図4のテーブルT10に示す例において、電力管理装置30が、これからの1時間で5kWhの電力を電力系統41に供給することを要請する場合を説明する。
【0085】
この場合、まず、4つの蓄電池120(1)〜120(4)のうち、最も優先順位の高い蓄電池120(4)を選択し、今後の一時間で放電可能な電力量である1kWhを、蓄電池120(4)の放電量として割り当てる。
【0086】
その結果、未割当ての放電量(電力管理装置30から要請された放電量)は、4kWhとなる。そこで、次に優先順位の高い蓄電池120(3)を選択し、今後の一時間で放電可能な電力量である3kWhを、蓄電池120(3)の放電量として割り当てる。
【0087】
その結果、未割当ての放電量は1kWhとなる。そこで、次に優先順位の高い蓄電池120(2)を選択する。蓄電池120(2)は、今後の一時間で4kWhの電力を放電可能である。しかし、未割当ての放電量は1kWhであるので、蓄電池120(2)の放電量には、1kWhが割り当てられる。
【0088】
その結果、未割当ての放電量は0となるため、最も優先順位の低い蓄電池120(1)は、使用されない。このようなに、制御計画(制御パターン)は、各蓄電池120にどれだけ充放電量させるかを個別に決定する(S13)。
【0089】
上述の割り当てが完了した場合の結果を、図8(b)に示す。図8(a)が割当て前の状態であり、図8(b)が割当てを実行した場合の状態である。
【0090】
高性能の蓄電池120(1)は、放電が指示されていないので変化していない。次に高性能の蓄電池120(2)には、1kWhの放電が割り当てられたので、蓄電池120(2)の今後の放電能力は、現時刻から1時間までは4kWhであるが、次の1時間では3kWhとなる。逆に、蓄電池120(2)の充電能力は、現時刻から1時間までは4kWhであるが、次の1時間は4kWh、さらに次の1時間は1kWhとなっている。
【0091】
蓄電池120(3)には、3kWhの放電が割り当てられたので、蓄電池120(3)の今後の放電能力は、現時刻から2時間が経過するまで、1時間に3kWずつ放電することができる。これに対し、蓄電池120(3)の充電能力は、現時刻から4時間が経過するまでは、1時間あたり3kWずつ充電することができる。
【0092】
蓄電池120(4)には、1kWhの放電が割り当てられたので、現時刻から4時間が経過するまで、1時間あたり1kWずつ放電できる。蓄電池120(4)の充電能力は、現時刻から6時間経過するまで1時間あたり1kWずつ放電可能である。
【0093】
図2のフローチャートに戻る。充放電量演算部114は、ステップS10で取得した負荷予測情報の内容に応じて制御モードを選択する(S14)。
【0094】
負荷予測情報の内容が、「負荷は現状維持の傾向」である場合、蓄電池120の充放電性能のバランスを優先した蓄電池制御モードを選択する(S15)。本実施例では、この制御モードをバランスモードと呼ぶ。
【0095】
負荷予測情報の内容が、「負荷は増加する傾向」の場合、蓄電池120の放電性能を優先した蓄電池制御モードを選択する(S16)。本実施例では、この制御モードを放電優先モードと呼ぶ。
【0096】
負荷予測情報の内容が、「負荷は減少する傾向」の場合、蓄電池120の充電性能を優先した蓄電池制御モードを選択する(S17)。本実施例では、この制御モードを充電優先モードと呼ぶ。
【0097】
充放電量演算部114は、選択した制御モードに応じて、各蓄電池120の充放電を制御するための計画(制御パターン)を作成する。
【0098】
図3に示すように、バランスモード(S15)では、ステップS11で取得した、各蓄電池120の蓄電量及び最大電池容量から、各蓄電池120のSOCを計算する(S150)。SOCの計算結果は、図4に示す蓄電池管理DB113のSOC C102に格納される。
【0099】
図9の上側には、蓄電量情報の他の例T10(2)が示されている。その蓄電量情報T10(2)を参照すると、蓄電池120(1)の最大電池容量10kWhであるが、蓄電量は0kWhである。従って、蓄電池120(1)のSOCは、0%となる(0kWh/10kWh)×100=0%)。
【0100】
以下同様に計算すると、蓄電池120(2)のSOCは100%、蓄電池120(3)のSOCは約33%、蓄電池120(4)のSOCは80%となる。図10は、図9の上側に示す蓄電量情報T10(2)をグラフ表示したものである。
【0101】
蓄電池120(1)は、全く充電されていないので、放電能力を失っている。しかし、蓄電池120(1)の蓄電量は0kWhのため、最大電池容量である10kWhになるまで、電力系統41で生じる余剰電力を蓄えることができる。
【0102】
蓄電池120(2)は、満杯まで充電されているため、これ以上充電することはできないが、最大電池容量である16kWhの電力を使い切るまで放電することができる。蓄電池120(3)、120(4)については説明を省略する。
【0103】
図9に戻る。充放電量演算部114は、各蓄電池120のSOCが50%となるのに必要な充放電量を計算する。
【0104】
図9の上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合、蓄電池120(1)は5kWhの充電を行えば、SOCが50%になる。蓄電池120(2)は、8kWhの放電を行えば、SOCが50%になる。蓄電池120(3)は、3kWhだけ充電すれば、SOCが50%になる。蓄電池120(4)は、3kWh放電すれば、SOCが50%になる。
【0105】
ここで、バランスモードの評価指標として、各蓄電池120のSOCがそれぞれ50%になるために必要な充放電量の絶対値の和を「必要充放電量」と呼ぶ。上記の例の必要充放電量は19kWhである(=5+8+3+3)。
【0106】
次に、充放電量演算部114は、SOC50%を実現するために必要な充放電量のうち、現時刻から1時間で充放電可能な電力量を計算する(S151)。
【0107】
図9の蓄電量情報T10(2)の例では、蓄電池120(1)は、SOC50%を実現するために5kWhの充電が必要である。蓄電池120(1)は、1時間で5kWh充電可能なので、必要な充電量は5kWhである。
【0108】
同様に、蓄電池120(2)は、SOC50%を実現するために8kWhの放電が必要である。蓄電池120(2)は、1時間で4kWh放電可能なため、必要な放電量は4kWhである。
【0109】
同様に、蓄電池120(3)は、SOC50%を実現するために3kWhの充電が必要である。蓄電池120(3)は、1時間で3kWhを充電可能なので、必要な充電量は3kWhである。
【0110】
蓄電池120(4)の場合は、SOC50%を実現するために3kWhの放電が必要である。蓄電池120(4)は、1時間で1kWhを放電可能なので、必要な放電量は1kWhである。
【0111】
なお、既にステップS13で割り当てた充放電を踏まえたうえで、本ステップS151での割り当てを実施しなくてはならない。例えば、もしもステップS13で、蓄電池120(1)に5kWhの充電が割り当てられていた場合、既に蓄電池120(1)の充放電能力に余裕は無いため、充放電可能な電力量は0になる (ステップS151) 。
【0112】
つまり、図2のステップS13は、電力管理装置30から要請された充放電量をさばくための割当てである。図3のステップS151は、負荷変動の傾向の予測に応じて、各蓄電池120の蓄電量を調整し、次の制御周期に備えるための割当てである。後述のステップS161、S171も、その目的はステップS151と同様である。
【0113】
このように、本実施例では、電力の需給状態に応じて各蓄電池120の充放電を個別に制御すると共に(S13)、負荷傾向の予測に応じて各蓄電池120の蓄電量を事前に調整する(S151)。従って、負荷変動の傾向の予測が大きく外れない限り、速やかに、かつ効率的に、各蓄電池120を使用することができる。
【0114】
図2のフローチャートの説明に戻る。充放電量演算部114は、ステップS151で算出した、現時刻から1時間での各蓄電池120の必要充放電量を、マッチングさせる(S152)。マッチングさせるとは、或る蓄電池120で放電される電力を、他の蓄電池120への充電に割り当ててることを意味する。
【0115】
即ち、充放電量演算部114は、或る蓄電池120でSOC50%を実現するために必要な1時間あたりの充電量と、他の蓄電池120でSOC50%を実現するために必要な1時間あたりの放電量とを、組み合わせる。
【0116】
マッチングについても、ステップS13で述べたのと同じ理由で、充放電性能の低いものから順に割り当てる。
【0117】
充放電要請量が0であり、負荷予測情報が「負荷は現状維持の傾向」であった場合のマッチング処理について、図9に示す蓄電量情報T10(2)を前提として説明する。
【0118】
蓄電池120(4)の1kWh放電量に対し、蓄電池120(3)の3kWh充電量のうちの1kWhを割り当てる。蓄電池120(3)の残った2kWhの充電量に、蓄電池120(2)の4kWh放電量のうちの2kWhを割り当てる。蓄電池120(2)の残った2kWhの放電量に対し、蓄電池120(1)の5kWhの充電量のうちの2kWhを割り当てる。蓄電池120(1)の残った3kWhの充電量は、マッチングできなかった電力量となる。
【0119】
以上のマッチング処理の結果、各蓄電池120の制御量は、蓄電池120(1)は2kWh充電、蓄電池120(2)は4kWh放電、蓄電池120(3)は3kWh充電、蓄電池120(4)は1kWh放電、となる。
【0120】
図9の下側には、マッチング処理後の蓄電量情報T10(3)を示す。各蓄電池120のSOCは、マッチング処理を実行する前に比べて、50%に近付いている。
【0121】
蓄電量情報T10(3)における必要充放電量を検討する。蓄電池120(1)の蓄電量は2kWh(=0+2)、その最大電池容量は10kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な充電量は3kWhとなる。
【0122】
蓄電池120(2)の蓄電量は12kWh(=16−4)であり、最大電池容量は16kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な放電量は4kWhである。
【0123】
蓄電池120(3)の蓄電量は9kWh(=6+3)であり、最大電池容量は18kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な電力は0である。
【0124】
蓄電池120(4)の蓄電量は7kWh(=8−1)であり、最大電池容量は10kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な放電量は2kWhである。
【0125】
上述した「必要充放電量」を計算すると、3+4+0+2=9となり、図9の上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合よりも改善している。「必要充放電量」指標を目的関数とし、この指標値をより少なくするように、数理計画等を用いてマッチング処理を実行してもよい。
【0126】
図11は、蓄電量情報T10(3)の場合において、時間経過と充放電能力との関係を示すグラフである。図中の黒枠の部分の電力量が、調整されている。つまり、蓄電池120(1)は、2kWh充電するため、その2kWhだけ放電能力が高まる。蓄電池120(2)は、4kWh放電するため、その4kWhだけ充電能力が高まる。蓄電池120(3)は、3kWh充電するため、その3kWhだけ放電能力が高まる。蓄電池120(4)は、1kWh放電するため、その1kWhだけ充電能力が高まる。
【0127】
図3のフローチャートに戻り、放電優先モード(S16)を説明する。放電優先モードでは、各蓄電池120の全体で、できるだけ高い放電性能を維持するように、各蓄電池120の蓄電量を事前に調整する。
【0128】
そのために、充放電量演算部114は、図2のステップS11で取得した各蓄電池120の放電性能を比較し、放電性能の高い順番を確認する(S160)。図5の例では、蓄電池120(1)、蓄電池120(2)、蓄電池120(3)、蓄電池120(4)、の順に放電性能が高い。
【0129】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の、単位時間が経過する毎の充放電能力を計算する(ステップS161)。
【0130】
充放電量演算部114は、放電優先の状態を実現させるべく、充放電量のマッチング処理を行う。放電優先のための充放電量のマッチング処理とは、各蓄電池120の全体としてできるだけ高い放電性能を継続できるように、各蓄電池120の蓄電量を事前に配分することである。
【0131】
本実施例では、複数の蓄電池120(1)〜120(4)を一つの仮想的蓄電池と見立てる。そして、蓄電池制御装置110は、放電優先モードを実行する場合、仮想的蓄電池の放電性能をできるだけ大きくするように、仮想的蓄電池を構成する各蓄電池120の蓄電量を個別に制御する。
【0132】
図5の充放電性能情報T20に示す場合、最初に、現在時刻から一時間が経過するまでの間で、合計の放電性能13kWhを実現できるように、蓄電池120間での充放電制御を実行する。さらに蓄電量に余裕がある場合、2時間目も合計13kWhの放電性能を実現できるように、各蓄電池120間で充放電させる。さらに蓄電量に余裕があるなら、3時間目で、合計8kWhの放電性能を持てるよう、蓄電池120間で充放電を行う。3時間目の合計放電性能が8kWhとなるのは、第1蓄電池120(1)の蓄電量が0になっている場合を想定するためである。
【0133】
図9上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合、時間経過時の充放電能力の変化は、図10のグラフに示した通りである。図10のグラフによれば、各蓄電池120の1時間目の放電能力は、蓄電池120(1)は0kWh、蓄電池120(2)は4kWh、蓄電池120(3)は3kWh、蓄電池120(4)は1kWhである。そこで、蓄電池120(1)への充電を考える。
【0134】
蓄電池120(4)の2時間目の放電能力は1kWh、蓄電池120(3)の2時間目の放電能力は3kWh、蓄電池120(2)の2時間目の放電能力は4kWhである。従って、放電性能の低い蓄電池120(4)からの放電量1kWhと、蓄電池120(3)からの放電量3kWhと、蓄電池120(2)からの放電量1kWhとの合計5kWhを、蓄電池120(1)に充電する。
【0135】
図12に、放電優先モードを実施した場合の蓄電量情報T10(4)を示す。図13に、放電優先モードを実施した場合の時間−充放電能力グラフを示す。蓄電池120(2)〜120(4)から放電された5kWhの電力を蓄電池120(1)に充電することで、結果的に、図13中、黒枠の部分の電力量が移動している(S162)。
【0136】
蓄電池120(4)からの1kWhを蓄電池120(1)に充電することで、図13中の黒枠に示すように、蓄電池120(4)から1kWh分の放電能力が失われる。その代わりに、黒枠から延びる矢印で示すように、蓄電池120(4)は、1kWh分の充電能力を得る。
【0137】
同様に、蓄電池120(3)からの3kWhを蓄電池120(1)に充電することで、黒枠に示すように、蓄電池120(3)から3kWh分の放電能力が失われる。その代わりに、矢印で示すように、蓄電池120(3)は、3kWh分の充電能力を得る。
【0138】
同様に、蓄電池120(2)からの1kWhを蓄電池120(1)に充電することで、黒枠に示すように、蓄電池120(2)から1kWh分の放電能力が失われる。その代わりに、矢印で示すように、蓄電池120(2)は、1kWh分の充電能力を得る。
【0139】
この結果、蓄電池120(1)には、現時刻から1時間で、合計5kWhの電力が充電される。従って、蓄電池120(1)は、黒枠で示すように5kWh分の充電能力を失う代わりに、矢印で示すように5kWh分の放電能力を得る。
【0140】
図3に戻り、充電優先モード(S17)を説明する。充電優先モードでは、各蓄電池120の全体で、できるだけ高い充電性能を維持するように、各蓄電池120の蓄電量を事前に調整する。
【0141】
そのために、充放電量演算部114は、図2のステップS11で取得した各蓄電池120の充電性能を比較し、充電性能の高い順番を確認する(S170)。図5の例では、蓄電池120(1)、蓄電池120(2)、蓄電池120(3)、蓄電池120(4)、の順に充電性能が高い。
【0142】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の、単位時間が経過する毎の充放電能力を計算する(ステップS171)。
【0143】
充放電量演算部114は、充電優先の状態を実現させるべく、充放電量のマッチング処理を行う(S172)。
【0144】
充電優先の充放電量マッチング処理とは、できるだけ高い充電性能が継続するように、各蓄電池120の蓄電量を配分することである。
【0145】
図5の充放電性能情報T20の場合、まず現在から1時間目までの合計充電性能13kWhを実現するように、各蓄電池120間での充放電制御を行う。さらに蓄電量に余裕がある場合、2時間目も合計13kWhの充電性能を維持できるように、各蓄電池120間で充放電させる。さらに蓄電量に余裕があるならば、3時間目においても、合計8kWhの充電性能を持てるよう、各蓄電池120間で充放電させる。
【0146】
図9上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合、上述の通り、時間経過時の充放電能力は、図10に示した通りである。
【0147】
図10によれば、各蓄電池の1時間目の充電能力は、蓄電池120(1)は5kWh、蓄電池120(2)は0kWh、蓄電池120(3)は3kWh、蓄電池120(4)は1kWhである。そこで、蓄電池120(2)からの放電を考える。
【0148】
蓄電池120(4)の2時間目の充電能力は1kWh、蓄電池120(3)の2時間目の充電能力は3kWh、蓄電池120(1)の2時間目の放電能力は5kWhである。従って、蓄電池120(2)から4kWhの電力量を放電させることで、、充電性能の低い蓄電池120(4)に1kWhを、次に充電性能の低い蓄電池120(3)に3kWhを、それぞれ充電させる。
【0149】
図14に、充電優先モードを実施した場合の蓄電量情報T10(5)を示す。図15は、充電優先モードを実施した場合の時間経過と充放電能力の関係を示すグラフである。図16中、黒枠の電力量が移動している(S172)。
【0150】
図2に戻る。充放電量演算部114は、ステップS15〜S17のいずれかの制御モードが実行された後、各蓄電池の制御量(充放電量)を各蓄電池120の制御部123に通知する(S18)。各蓄電池の制御量は、上述の通り、ステップS152またはステップS162またはステップS172のいずれかで決定される。
【0151】
充放電量演算部114は、制御量を各蓄電池120の制御部123に通知した後、所定の制御周期だけ待機し(S19)、再びステップS10に戻る。
【0152】
本実施例は、上述のように構成されるので、以下の効果を奏する。本実施例では、蓄電池制御装置110は、複数の蓄電池120をあたかも一つの仮想的な蓄電池のように取り扱うことができる。そして、本実施例では、電力需給の予測に対応できるように、各蓄電池120の蓄電量を制御する。従って、本実施例では、計画的に各蓄電池120の蓄電量を調整して、各蓄電池120を有効活用することができ、それにより、電力系統を安定的かつ効率的に運用することができる
本実施例では、バランスモード、放電優先モード、充電優先モードのいずれの制御モードに該当するかを予測し、各蓄電池120の蓄電量を、予測された制御モードに応じて事前に調整する。従って、電力需要の変動に速やかに対応することができる。
【0153】
本実施例では、充放電性能の低い順番に蓄電池120を使用するため、高価な蓄電池が劣化するのを抑制することができ、システムの運用コストを低減できる。
【実施例2】
【0154】
図16を参照して第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、第1実施例の変形例に相当する。従って、第1実施例との差異を中心に説明する。本実施例では、複数の蓄電池120のうちの一つを予備の蓄電池として使用する。
【0155】
図16は、本実施例による蓄電池制御システム10の全体構成を示す。蓄電池制御システム10は、複数の蓄電池120(1)、120(2)、120(3)、120(SP)を含み、それら蓄電池は蓄電池制御装置110に接続されている。
【0156】
蓄電池120(1)〜120(3)は、通常の蓄電池として使用される。蓄電池120(SP)は、予備の蓄電池として使用されるもので、通常時は使用されない。なお、図16では、便宜上、通常の蓄電池120(1)〜120(3)を3個、予備の蓄電池120(SP)を1個だけ示すが、個数はそれらに限らない。
【0157】
通常の蓄電池120(1)〜120(3)のいずれかがメンテナンス等により、機能を停止する場合、メンテナンス対象の蓄電池の代わりに、予備の蓄電池120(SP)が使用される。
【0158】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、予備の蓄電池120(SP)を備えている。従って、メンテナンスなどによって通常の蓄電池120(1)〜120(3)の機能が停止した場合でも、複数の蓄電池を効率的に使用して、電力系統41の制御を安定化させることができる。
【0159】
なお、予備の蓄電池120(SP)を設ける代わりに、例えば、メンテナンス中の電力料金を一時的に高く設定してもよい。これにより、蓄電池120のメンテナンス中における、需要家20の電力消費量を低減させることができる。
【実施例3】
【0160】
図17を参照して第3実施例を説明する。本実施例は、電気自動車120Aに搭載されている蓄電池を利用する。
【0161】
図17は、本実施例による蓄電池制御システム10Aを含む電力制御システムの全体構成図である。工場50は、複数の製造設備20A(1)、20A(2)と、電力管理装置(Factory Energy. Management System)30Aを備える。
【0162】
製造設備20A(1)、20A(2)は、第1実施例の需要家20に対応する。各製造設備20A(1)、20A(2)は、電力計測部21を備える。電力管理装置30Aは、第1実施例の電力管理装置30に対応する。図示は省略するが、電力管理装置30Aは、負荷予測部31及び充放電要請量決定部32を備える。
【0163】
蓄電池制御システム10Aは、複数の電気自動車120A(1)〜120A(4)と、蓄電池制御装置110Aとを備える。各電気自動車120Aは、電気プラグ42を介して、工場の電力系統41に接続される。各電気自動車120Aは、第1実施例の蓄電池120に対応し、通信部121と、蓄電池本体122と、制御部123を備える。
【0164】
従業員は、自分の保有する電気自動車120Aまたは会社から貸与された電気自動車120Aに乗って、工場50に出勤する。工場50の駐車場には、複数の電気プラグ42が設置されている。各電気自動車120Aは、電気プラグ42を介して、工場50の電力系統41に電気的に接続される。
【0165】
以下、第1実施例で述べたと同様に、工場50内の電力需要に応じて、電気自動車120Aの蓄電量を制御し、電力系統41を安定化させる。据え置き型の蓄電池と組み合わせてもよい。
【0166】
このように構成される本実施例も、第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、電気自動車120Aの有する蓄電池を有効に活用することができる。なお、工場50を例に挙げて説明したが、工場に限らず、例えば、オフィスビル、集合住宅、病院、市役所等にも適用できる。
【実施例4】
【0167】
図18を参照して第4実施例を説明する。本実施例は、充放電に要する時間の合計値に基づいて、制御パターンを決定する。
【0168】
バランスモード、放電優先モード、充電優先モードに応じて、蓄電量を調整するための制御パターンは、複数存在する可能性がある。第1実施例では、一つの選択基準として、充放電性能の低い順番で蓄電池120を使用することにしている。
【0169】
これに対し、本実施例では、応答性に着目する。本実施例では、図18のグラフに示すように、現時刻からの経過時間のタイムスロットに、現時刻からの経過時間が長くなるほど小さい点数となるように、評価点を設定する。例えば、現時刻から1時間以内のタイムスロットには1点、現時刻から2時間経過したタイムスロットには0.9点のように、現時刻から遅れるほど評価点が少なくなる。
【0170】
蓄電池制御装置110は、バランスモード、放電優先モード、充電優先モードに適応するための、各蓄電池120毎の充放電制御パターンを決定するに際し、複数候補の中から、合計評価点が最も少ない制御パターンを選択する。従って、本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、蓄電池120全体としての応答性能を高めて、電力需給の急激な変動にも速やかに対応できる。
【実施例5】
【0171】
図19を参照して第5実施例を説明する。本実施例では、需要家20の電力消費に対して、その需要家20に近い蓄電池120の蓄電量を割り当てる。
【0172】
図19は、本実施例による蓄電池制御システム10Bを含む電力制御システムの全体構成を締めす。各需要家20(1)、20(2)の位置に応じて、あらかじめ蓄電池120が割り当てられている。一方の需要家20(1)には、蓄電池120(1)と蓄電池120(2)が割り当てられている。それら蓄電池120(1)及び蓄電池120(2)は、第1蓄電池グループを構成する。他方の需要家20(2)には、蓄電池120(3)及び蓄電池120(4)が割り当てられている。それら蓄電池120(3)及び蓄電池120(4)は、第2蓄電池グループを構成する。
【0173】
ここでは、蓄電池120(1)は蓄電池120(2)よりも高性能であり、蓄電池120(3)は蓄電池120(4)よりも高性能であるとする。蓄電池120(1)と蓄電池120(3)の性能の優劣、及び、蓄電池120(2)と蓄電池120(4)の性能の優劣は、特に問わない。
【0174】
蓄電池制御装置110Bは、需要家20(1)の電力需要を満たすために、第1蓄電池グループの蓄電池120(1)、120(2)の充放電を利用する。同様に、蓄電池制御装置110Bは、需要家20(2)の電力需要を満たすために、第2蓄電池グループの蓄電池120(3)、120(4)の充放電を利用する。
【0175】
つまり、本実施例では、選択範囲1、選択範囲2として示す構成が、それぞれ仮想的な蓄電池を構成する。各仮想的蓄電池は、給電上の距離の近い所定の需要家20に対応付けられている。
【0176】
蓄電池制御装置110Bは、上記複数の制御パターンを決定するに際し、需要家へ電力を供給する距離の合計値が最も短くなるような制御パターンを選択する。これにより、送電距離を短くして、電圧降下を小さくできるため、より効率的に電力系統41の電力需給を安定化することができる。
【0177】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、蓄電池のコストに基づいて制御パターンを選択する構成でもよい。
【0178】
本発明は、例えば、以下のようにコンピュータプログラムの発明として表現することもできる。
電力系統に接続される蓄電池の作動をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラムであって、
電力系統に接続される複数の蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、
所定範囲の電力需給を管理する電力管理装置から、前記所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、
前記蓄電池情報と前記電力需給予測情報とに基づいて、前記各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、
決定された前記個別充放電量を前記各蓄電池に送信して、前記各蓄電池を、前記蓄電池制御装置から受信した前記個別充放電量に基づいてそれぞれ作動させる、
コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0179】
10、10A、10B:蓄電池制御システム
20(1)、20(2):需要家
20A(1)、20A(2):製造設備
30、30A:電力管理装置
110、110A、110B:蓄電池制御装置
120(1)〜120(4):蓄電池
120(SP):予備の蓄電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池制御システム及び蓄電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、電力系統に複数の蓄電池を接続するシステムが提案されている。電力系統に接続する蓄電池に関する技術ではないが、異なる種類の電池を用いて共通の負荷に電力を供給する技術は知られている(特許文献1)。また、選択された負荷に二次電池の余剰電力を給電することで電力を有効に活用し、かつ、二次電池の健全性を高める技術が知られている(特許文献2)。さらに、電力系統に接続する蓄電池に関する技術ではないが、電動車両に出力密度の大きな蓄電池とエネルギー密度の大きな蓄電池を搭載し、いずれか一方の蓄電池から電力を供給する技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246211号公報
【特許文献2】特開平10−322924号公報
【特許文献3】特開平9−298806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力系統に接続された複数の蓄電池を利用して、電力系統を安定的かつ効率的に運用するためには、電力の需給予測を踏まえて、各蓄電池を計画的に制御する必要がある。しかし、特許文献1及び特許文献3は、電力系統に接続された複数の蓄電池を個別に制御する技術ではなく、蓄電池の充放電を計画的に制御するものではない。特許文献2は、或る特定の二次電池の健全性を保つ技術であり、複数の蓄電池の充放電を制御して電力系統の安定的かつ効率的な運用を図るものではない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電力系統に設置された複数の蓄電池を有効利用し、電力系統の安定的かつ効率的な運用を実現できるようにした蓄電池制御システム及び蓄電池制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明に係る蓄電池制御システムは、電力系統に接続される蓄電池の作動を制御する蓄電池制御システムであって、電力系統に設けられる複数の蓄電池と、複数の蓄電池の充放電を制御するための蓄電池制御装置であって、複数の蓄電池と電力管理装置とにそれぞれ通信可能に接続される蓄電池制御装置とを備え、蓄電池制御装置は、各蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、所定範囲の電力需給を管理する電力管理装置から、所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、蓄電池情報と電力需給予測情報とに基づいて、各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、決定された個別充放電量を各蓄電池に送信し、各蓄電池は、蓄電池制御装置から受信した個別充放電量に基づいてそれぞれ作動する。
【0007】
充放電性能には、単位時間あたりの充電量を示す充電性能と、単位時間あたりの放電量を示す放電性能と、最大電池容量とが含まれてもよい。
【0008】
電力管理装置は、所定範囲に存在する需要家の電力消費量に基づいて、単位時間よりも長く設定される所定期間における、所定範囲での電力需要を予測し、予測した電力需要に基づいて、各蓄電池の全体に対して要求する合計充放電量を算出し、算出した合計充放電量を電力需給予測情報に含めて、蓄電池制御装置に送信することができる。
【0009】
電力管理装置は、予測した電力需要に基づいて、電力需要の変化の傾向を示す負荷予測情報を算出し、算出した負荷予測情報を電力需給予測情報に含めて、蓄電池制御装置に送信することもできる。
【0010】
蓄電池制御装置は、電力管理装置から受信する負荷予測情報に基づいて、電力需要と電力供給とがバランスしているバランスモード、電力需要の方が電力供給よりも多い放電優先モード、または、電力供給が電力需要よりも多い充電優先モードのいずれであるのか、を判定し、判定されたモードに基づいて各蓄電池毎の個別充放電量を決定するための制御パターンを選択することもできる。
【0011】
蓄電池制御装置は、バランスモードの場合、各蓄電池の電池残量を当該各蓄電池の最大電池容量の半分に近づけさせるように個別充放電量を決定するためのバランス制御パターンを選択し、放電優先モードの場合、各蓄電池のうち放電性能の低い蓄電池から各蓄電池のうち放電性能の高い蓄電池に充電させるように個別充放電量を決定するための放電制御パターンを選択し、充電優先モードの場合、各蓄電池のうち充電性能の高い蓄電池から各蓄電池のうち充電性能の低い蓄電池に充電させるように個別充放電量を決定するための充電制御パターンを選択する、こともできる。
【0012】
蓄電池制御装置は、制御パターンの候補が複数存在する場合、所定の選択基準に基づいて、候補の中からいずれか一つを制御パターンとして選択してもよい。
【0013】
本発明の構成の少なくとも一部は、コンピュータプログラムまたはハードウェア回路として実現できるであろう。コンピュータプログラムは、例えば、インターネットのような通信媒体、ハードディスクまたはフラッシュメモリデバイスのような記録媒体を介して、配布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、蓄電池制御システムの全体構成図である。
【図2】図2は、蓄電池制御処理のフローチャートである。
【図3】図3は、図2のフローチャートの一部の詳細を示す。
【図4】図4は、蓄電量情報の構成を示す。
【図5】図5は、充放電性能情報の構成を示す。
【図6】図6は、時間と充電性能の関係を示すテーブルである。
【図7】図7は、時間と放電性能の関係を示すテーブルである。
【図8】図8は、蓄電池の充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図9】図9は、バランスモードの制御パターンを実行する前と後の、蓄電量情報の変化を示す。
【図10】図10は、バランスモードの制御パターンを実行する前の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図11】図11は、バランスモードの制御パターンを実行した後の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図12】図12は、放電優先モードの制御パターンを実行した後の、蓄電量情報の変化を示す。
【図13】図13は、放電優先モードの制御パターンを実行した後の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図14】図14は、充電優先モードの制御パターンを実行した後の、蓄電量情報の変化を示す。
【図15】図15は、充電優先モードの制御パターンを実行した後の、充放電性能の時間変化を示すグラフである。
【図16】図16は、第2実施例に係る蓄電池制御システムの全体構成図。
【図17】図17は、第3実施例に係る蓄電池制御システムの全体構成図。
【図18】図18は、第4実施例に係り、充放電性能の時間変化を示すグラフ。
【図19】図19は、第5実施例に係る蓄電池制御システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の蓄電池制御システムは、以下に詳述するように、電力系統の需給予測情報を提供する電力管理装置30と、電力系統に接続された、充放電制御可能な複数の蓄電池120と、蓄電池の充放電を制御する蓄電池制御装置110を備える。図中、蓄電池を「VT」または「電池」と略記したり、省略したりする場合がある。
【0016】
蓄電池制御装置は、電力管理装置からの需給予測情報を受信し、さらに、各蓄電池から蓄電池情報を受信する。蓄電池制御装置は、電力需要の予測に応じた制御パターンに基づいて、各蓄電池毎に充放電を指示する。
【0017】
これにより、本実施形態では、各蓄電池の充放電性能を電力需給予測にマッチングさせて、各蓄電池を計画的に充放電させる。つまり、各蓄電池の蓄電量は、電力需給予測に対応して調整される。
【0018】
従って、多くの放電が求められる場合には、速やかに蓄電池に貯えた電力を電力系統に供給することができる。逆に、多くの充電が求められる場合には、速やかに電力系統からの余剰電力を蓄電池に貯えることができる。電力の需要と供給がバランスしている場合は、蓄電池のSOC(State Of Charge)を50%に近づくように事前に調整することで、電力の需給バランスをできるだけ維持できるようにする。
【0019】
このように、本実施形態によれば、計画的に各蓄電池の蓄電量を調整して、蓄電池を有効活用するため、電力系統を安定的かつ効率的に運用することができる。以下、本実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1〜図15を参照して第1実施例を説明する。図1は、蓄電池制御システム10を含む、低圧系統側の電力制御システムの全体構成を示す。この電力制御システムは、例えば、少なくとも一つの蓄電池制御システム10と、複数の需要家20(1)、20(2)と、少なくとも一つの電力管理装置30と、少なくとも一つの柱上変圧器40と、少なくとも一つの低圧側電力系統41とを含むことができる。
【0021】
柱上変圧器40から出る低圧側の電力系統(配電線)41には、複数の需要家20(1)、20(2)と、複数の蓄電池120(1)、120(2)、120(3)、120(4)とが接続されている。特に区別しない場合、蓄電池120(1)〜120(4)を蓄電池120と呼ぶことがある。
【0022】
需要家20(1)、20(2)は、例えば、一般個人住宅、集合住宅、工場、商業施設、病院等である。特に区別する必要がない場合、需要家20(1)、20(2)を需要家20と呼ぶことがある。需要家20は、例えば、照明装置、空調装置、温水器、乗客コンベア装置等の、電力を消費する各種電気的負荷を有する。需要家20は、さらに、例えば、太陽光発電装置、風力発電装置等の発電装置を備えることもできる。
【0023】
需要家20での電力消費量(および発電量)は、電力計測部21により、所定周期で計測される。電力計測部21は、計測した電力消費量の情報を、通信ネットワークCN1を介して、電力管理装置30に送信する。通信ネットワークCN1は、例えば、無線通信を利用する通信ネットワーク、電力線を利用する通信ネットワーク、インターネット、LAN(Local Area Network)のいずれか一つまたは複数を用いて構成される。
【0024】
電力管理装置30は、所定範囲の電力需給を管理するための装置である。電力管理装置30は、マイクロプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータとして構成される。メモリに格納された所定のコンピュータプログラムをマイクロプロセッサが実行することで、負荷予測部31と、充放電要請量決定部32とがそれぞれ実現される。
【0025】
負荷予測部31は、需要家20の電力消費量の履歴等に基づいて、今後の負荷(電力需要)の予測を示す負荷予測情報を生成する。負荷の予測方法としては種々考えられるが、例えば、過去の同日の同時刻に計測された電力消費量の平均値から、対応する時刻の電力消費量を予測することができる。さらに、電力消費量の履歴データと過去の気象データ及び天気予報を参考にして、電力消費量を予測することもできる。
【0026】
本実施例の負荷予測情報は、「負荷が増加する傾向」にあるか、「負荷が減少する傾向」にあるか、「負荷が現状維持の傾向」にあるかを判定するための情報を含む。負荷予測情報は、例えば、「−」、「+」、「0」のような負荷の変動傾向を端的に表す記号または英数字から構成してもよい。負荷予測情報は、例えば、「−20%」、「+15%」、「プラスマイナス0」のような負荷の変動傾向と変動量の両方を含んでもよい。
【0027】
負荷とは、所定範囲の電力需要(各需要家20の電力消費量の合計値)である。後述のように、負荷が増加する傾向にある場合、負荷の増加に備えて、蓄電池120の蓄電量が事前に調整される。負荷が減少する傾向にある場合、負荷の減少に備えて、蓄電池120の蓄電量が事前に調整される。負荷が現状維持の傾向にある場合、そのバランスをできるだけ維持すべく、蓄電池120の蓄電量が事前に調整される。
【0028】
蓄電池充放電要請量決定部(図中、充放電要請量決定部)32は、複数の蓄電池120の全体に対して要求する、充電量または放電量を決定する機能である。以下、充放電要請量決定部32と呼ぶ。
【0029】
充放電要請量決定部32は、負荷予測部31で生成される負荷予測情報と、電力計測部21で計測される各需要家20の電力消費量とに基づいて、蓄電池120全体としての充放電要請量を決定する。決定された充放電要請量は、通信ネットワークCN1を介して、蓄電池制御装置110に送信される。
【0030】
上述の通り、充放電要請量は、複数の蓄電池120の全体に対して要求する値であり、「合計充放電量」に相当する。つまり、充放電要請量は、複数の蓄電池120から成る一つの仮想的な蓄電池に対して要求する、充電量または放電量である。
【0031】
充放電要請量を決定する方法の一例を説明する。例えば、柱上変圧器40における電力需要(負荷)の目標値を設定し、各需要家20の電力消費量の合計値と目標値との差分を、蓄電池120の全体に対する、充電量または放電量とする。
【0032】
つまり、柱上変圧器40の低圧側系統(配電線)41の総需要が目標値(目標負荷)よりも大きい場合、各蓄電池120のいずれか一つまたは複数から低圧側系統41に、電力を供給させる。反対に、低圧側系統の総需要が目標値よりも少ない場合、各蓄電池120のいずれか一つまたは複数に、低圧側系統41の余剰電力を蓄えさせる。
【0033】
蓄電池制御システム10の構成を説明する。蓄電池制御システム10は、低圧側系統41に接続される複数の蓄電池120(1)〜120(4)と、それら蓄電池120(1)〜120(4)に通信ネットワークCN2を介して接続される蓄電池制御装置(図中、VT制御装置)110とを備える。
【0034】
図中では、4個の蓄電池120(1)〜120(4)を示すが、2個、3個、5個以上の蓄電池を設ける構成でもよい。本実施例では、各蓄電池120(1)〜120(4)は、それぞれ電気的特性の異なる蓄電池である場合を説明する。しかし、各蓄電池120(1)〜120(4)の電気的特性が同一の場合も、本実施例を適用できる。
【0035】
本実施例では、各蓄電池120(1)〜120(4)の電気的特性は異なるが、基本的構成は共通する。そこで、各蓄電池120(1)〜120(4)を蓄電池120と呼ぶことにする。各蓄電池120は、例えば、通信部121と、蓄電池本体122と、充放電制御部123とを備える。
【0036】
通信部(図中、I/F)121は、通信ネットワークCN2を介して、蓄電池制御装置110と通信するための回路である。通信ネットワークCN2は、各蓄電池120と蓄電池制御装置110とが通信するためのネットワークであり、例えば、無線通信ネットワーク、PLC(Power Line Communications)、インターネットのいずれかまたは複数を利用して構成可能である。通信部121は、蓄電池制御装置110から通信ネットワークCN2を介して、後述の充放電制御信号を受信する。通信部121は、受信した充放電制御信号を充放電制御部123に渡す。さらに、通信部121は、通信ネットワークCN2を介して蓄電池制御装置110に、後述の蓄電量等を送信することもできる。
【0037】
蓄電池本体122は、電極及び電解質を有するセルを複数個接続して構成される。蓄電池本体122は、例えば、リチウムイオン蓄電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ナトリウム・硫黄蓄電池から構成することができる。さらに、蓄電池120は、蓄電池本体122のほかに、電気二重槽コンデンサ等のキャパシタを備えてもよい。
【0038】
充放電制御部123は、蓄電池本体122への充電、及び、蓄電池本体122からの放電を制御するための制御回路である。充放電制御部123は、例えば、インバータ回路とマイクロコンピュータ回路等を含んで構成することができる。
【0039】
充電時に、充放電制御部123は、電力系統41からの交流電力を直流電力に変換して蓄電池本体122に充電する。放電時に、充放電制御部123は、蓄電池本体122の直流電力を交流電力に変換して、電力系統41に供給する。
【0040】
充放電制御部123は、蓄電池制御装置110から受信する充放電制御信号に従って、蓄電池本体122に充電または放電させる。充放電制御部123は、蓄電池本体122の蓄電量(現在の電池残量)を管理している。充放電制御部123は、蓄電量を蓄電池制御装置110に定期的にまたは不定期に送信することができる。
【0041】
蓄電池制御装置110の構成を説明する。蓄電池制御装置110は、電力系統の電力需給状態に基づいて、各蓄電池120の充放電を個別に制御する。蓄電池制御装置110は、マイクロプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータ装置として構成できる。蓄電池制御装置110は、電力管理装置30と一体化してもよい。
【0042】
蓄電池制御装置110は、例えば、充電ステーション等に設置してもよい。充電ステーションとは、複数の蓄電池120を有しており、所定の地域に電力を供給したり、所定の地域で生じた余剰電力を蓄えたりするための施設である。
【0043】
蓄電池制御装置110のマイクロプロセッサは、メモリに格納された所定のコンピュータプログラムを実行することで、以下の各機能111〜116を実現する。
【0044】
蓄電量受信部112は、各蓄電池120から送信される蓄電量を受信する。受信した蓄電量は、蓄電池管理データベース(図中、VT管理DB)113に保存される。
【0045】
蓄電量受信部112は、所定の周期で、各蓄電池120から蓄電量を受信し、蓄電池管理DB113を更新することができる。または、最新の蓄電量が必要になった場合に、蓄電池制御装置110から各蓄電池120に蓄電量の送信を要求する構成でもよい。
【0046】
負荷予測受信部115は、電力管理装置30の負荷予測部31から送信される負荷予測情報を受信する。
【0047】
蓄電池制御量受信部116は、電力管理装置30の充放電要請量決定部32から送信される充放電要請量情報を受信する。充放電要請量情報は、蓄電池制御装置110の制御対象である各蓄電池120の全体に対して要求される充電量または放電量の情報と、今後の負荷予測の情報とを含んでいる。
【0048】
蓄電池管理データベース113は、各蓄電池120の蓄電量を示す情報と、各蓄電池120の充放電性能を示す情報とを格納する。
【0049】
充放電量演算部114は、各蓄電池120毎の個別の充放電量を算出する。充放電量演算部114は、各蓄電池120の蓄電量情報と、各蓄電池120の充放電性能情報と、電力管理装置30から送信される充放電要請量情報及び負荷予測情報とに基づいて、各蓄電池120毎の個別の充放電量を演算する。その演算結果である個別の充放電量は、制御情報送信部111に渡される。個別の充放電量は、各蓄電池120の充放電を制御するための制御量であるから、充放電制御量と呼ぶこともできる。
【0050】
制御情報送信部111は、各蓄電池120毎に生成された充放電量(充放電制御量)を充放電制御信号に変換し、各蓄電池120に送信する。
【0051】
ここで、図4及び図5を参照し、蓄電池管理データベース113に格納される、蓄電量情報T10及び充放電性能情報T20について説明する。
【0052】
図4に蓄電量情報T10の例を示す。蓄電量情報T10は、例えば、電池ID C100と、蓄電量C101と、SOC C102とを対応付けて管理する。図3の蓄電量情報T10は、各蓄電池120のSOCが50%になっている場合の状態を示す。
【0053】
電池ID C100は、各蓄電池120を識別するための情報である。蓄電池制御システム10内で各蓄電池120を一意に識別できればよい。蓄電量C101は、蓄電池120に蓄えられている電力量を示す情報である。SOC C102は、蓄電池120の充電率を示す情報である。SOCは、蓄電量を最大電池容量で割った値として求めることができる(SOC=(蓄電量/最大電池容量)×100%)。
【0054】
例えば、図中「VT1」として示す蓄電池120(1)に着目すると、蓄電量が5kWhであり、SOCが50%であることがわかる。「VT2」として示す蓄電池120(2)に着目すると、蓄電量が8kWhであり、SOCが50%であることがわかる。「VT3」として示す蓄電池120(3)に着目すると、蓄電量が9kWhであり、SOCが50%であることがわかる。「VT4」として示す蓄電池120(4)に着目すると、蓄電量が5kWhであり、SOCが50%であることがわかる。
【0055】
図5に充放電性能情報T20の例を示す。充放電性能情報T20は、各蓄電池120の充電性能及び放電性能を管理する。充放電性能情報T20は、例えば、電池ID C200と、最大電池容量C201と、充電性能C202と、放電性能C203とを対応付けて管理する。
【0056】
最大電池容量C201は、蓄電容量の最大値を示す情報である。充電性能C202は、単位時間あたりに充電可能な電力量(kW/h)を示す情報である。放電性能C203は、単位時間あたりに放電可能な電力量(kW/h)を示す情報である。
【0057】
蓄電池120(1)に着目すると、その最大電池容量は10kWh、充電性能は5kW/h、放電性能は5kW/hであることがわかる。以下同様に、蓄電池120(2)に着目すると、最大電池容量が16kWh、充電性能が4kW/h、放電性能が4kW/hであることがわかる。蓄電池120(3)に着目すると、最大電池容量が18kWh、充電性能が3kW/h、放電性能が3kW/hであることがわかる。蓄電池120(4)に着目すると、最大電池容量が10kWh、充電性能が1kW/h、放電性能が1kW/hであることがわかる。
【0058】
図2及び図3のフローチャートを参照して、充放電制御信号を作成するための制御情報算出処理を説明する。図2及び図3の処理は、主に、充放電量演算部114により実行される。蓄電池120の制御周期が1時間の場合を例に挙げて説明する。1時間よりも短い制御周期、または、1時間よりも長い制御周期でもよい。1時間以外の制御周期の場合は、その制御周期に充放電可能な電力量に換算して、下記の処理を実施すればよい。
【0059】
充放電量演算部114は、最初に、電力管理装置30から充放電要請量情報を取得する(S10)。充放電要請量情報には、蓄電池制御装置110が管理する各蓄電池120の全体で充電もしくは放電する必要がある電力量と、負荷予測情報とが含まれる。
【0060】
充放電量演算部114は、蓄電池管理DB113から、各蓄電池120の蓄電池情報を取得する。蓄電池情報には、蓄電量情報T10及び充放電性能情報T20が含まれる(S11)。即ち、蓄電池情報には、各蓄電池120の、最大電池容量、放電性能、充電性能、蓄電量が含まれる。
【0061】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の蓄電量と放電性能および充電性能から、現在時刻からの時間経過に応じた充電能力及び放電能力をそれぞれ算出する(S12)。時間経過に応じた充電能力とは、現在時刻からの時間が経過するにつれて、充電能力(充電性能)がどのように変化するかを示す情報である。同様に、時間経過に応じた放電能力とは、現在時刻からの時間が経過するにつれて、放電能力(放電性能)がどのように変化するかを示す情報である。
【0062】
時間経過に応じた充電能力は、「時間−充電能力」のグラフとして図8等に示される。同様に、時間経過に応じた放電能力は、「時間−放電能力」のグラフとして図8等に示される。
【0063】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の充電能力及び放電能力を制御周期毎に加算することで、時間あたりの充電能力の合計値と時間あたりの放電能力の合計値をそれぞれ算出する。
【0064】
時間あたりの充電能力および時間あたりの放電能力とは、現在の蓄電量で蓄電池120の充放電性能を最大に発揮した場合にどれだけ充放電可能であるかを、制御周期時間毎に算出したものである。
【0065】
図5に示す充放電性能を有する蓄電池120が、図4に示す蓄電量を有する場合を例に挙げて説明する。図6は、単位時間あたりの充電能力が時間の経過に応じて変化する様子を示すテーブルT30である。図7は、単位時間あたりの放電能力が時間の経過に応じて変化する様子を示すテーブルT40である。
【0066】
蓄電池120(1)の時間あたりの充電能力は、図6に示すように変化する。即ち、蓄電池120(1)は、最初の1時間では、充電性能通りの5kWhの電力量を充電可能である。蓄電量が5kWhの状態で5kWhを充電すると、その蓄電量は10kWhに達し、最大電池容量になる。従って、最初の1時間を経過した後は、蓄電池120(1)に充電可能な電力は、0kWhとなる。
【0067】
以下同様に、蓄電池120(2)に着目する。蓄電池120(2)の蓄電量は8kWhであり、最初の1時間に4kWhの電力量が充電され、次の1時間でも4kWhの電力量が充電される。この結果、蓄電池120(2)の蓄電量は、最大電池容量である16kWhに達する。従って、3時間目以降では、蓄電池120(2)に充電することはできなくなる。
【0068】
蓄電池120(3)に着目する。蓄電池120(3)の蓄電量は9kWhであり、最初の1時間で、充電性能通りに3kWhの電力が充電される。2時間目及び3時間目においても、蓄電池120(3)には、3kWhずつの電力が充電される。その結果、蓄電池120(3)の蓄電量は、最大電池容量である18kWhに達する。従って、4時間目以降では、蓄電池120(3)に充電することはできなくなる。
【0069】
蓄電池120(4)に着目する。蓄電池120(4)の蓄電量は5kWhであり、1時間目で、充電性能通りに1kWhの電力が充電される。2時間目、3時間目、4時間目及び5時間目においても、蓄電池120(3)に1kWhずつの電力が充電される。その結果、蓄電池120(4)の蓄電量は、最大電池容量である10kWhに達する。従って、6時間目以降では、蓄電池120(4)に充電することはできなくなる。
【0070】
各単位時間(制御周期)毎の充電量を合計すると、1時間目は13kWh、2時間目は8kWh、3時間目は4kWh、4時間目は1kwh、5時間目は1kWhとなる。6時間目以降の充電量の合計値は0kWhである。
【0071】
図7を参照して、放電能力の単位時間あたりの変化を説明する。図7は、図4及び図5に示す値を前提条件として作成されている。
【0072】
蓄電池120(1)に着目する。蓄電池120(1)は、蓄電量が5kWhであり、放電能力は5kWh/hである。蓄電池120(1)は、最初の1時間目で5kWhの電力を放電するため、蓄電量が0kWhとなる。従って、蓄電池120(1)は、2時間目以降、放電することができない。
【0073】
蓄電池120(2)に着目する。蓄電池120(2)は、蓄電量が8kWhであり、放電能力は4kW/hである。蓄電池120(2)は、最初の1時間目で4kWhの電力を放電し、次の2時間目でも4kWhの電力を放電する。この時点で、蓄電池120(2)の蓄電量は0kWhとなる。従って、蓄電池120(2)は、3時間目以降、放電することができない。
【0074】
蓄電池120(3)に着目する。蓄電池120(3)は、蓄電量が9kWhであり、放電能力は3kW/hである。蓄電池120(3)は、1時間目で3kWhの電力を放電し、2時間目及び3時間目でも3kWhずつ電力を放電する。3時間目が終了した時点で、蓄電池120(3)の蓄電量は0kWhとなる。従って、蓄電池120(3)は、4時間目以降、放電することができない。
【0075】
蓄電池120(4)に着目する。蓄電池120(4)は、蓄電量が5kWhであり、放電能力は1kW/hである。蓄電池120(4)は、1時間目から5時間目まで1kWhずつ電力を放電する。5時間目の終了時点で、蓄電池120(4)の蓄電量は0kWhとなる。従って、蓄電池120(5)は、6時間目以降、放電することができない。
【0076】
各単位時間(制御周期)毎の放電量を合計すると、1時間目は13kWh、2時間目は8kWh、3時間目は4kWh、4時間目は1kwh、5時間目は1kWhとなる。6時間目以降の充電量の合計値は0kWhである。
【0077】
図8(a)は、図6のテーブルT30及び図7のテーブルT40の数値をグラフ表示したものである。図8の縦軸は、充放電の電力量を示し、1目盛りは1kWを示す。図8の横軸は、現在時刻からの経過時間を示し、一目盛りは1時間を示す。横軸の中央が現在時刻を示し、左右の両端に向かうにつれて時間が経過する。現在時刻から右側の領域は、充電能力の時間変化を示し、図6のテーブルT30に対応する。現在時刻から左側の領域は、放電能力の時間変化を示し、図7のテーブルT40に対応する。
【0078】
また、グラフの一番上の領域は、蓄電池120(1)に関する充放電の時間変化を示す第1蓄電池表示領域である。その次の領域は、蓄電池120(2)に関する充放電の時間変化を示す第2蓄電池表示領域である。さらに次の領域は、蓄電池120(3)に関する充放電の時間変化を示す第3蓄電池表示領域である。さらに次の領域は、蓄電池120(4)に関する充放電の時間変化を示す第4蓄電池表示領域である。
【0079】
図2のフローチャートに戻る。充放電量演算部114は、ステップS10で取得した充放電要請量を、各蓄電池120に割り当てるための制御計画(制御パターン)を立案する(S13)。
【0080】
割当て方法としては種々考えられるが、例えば、充放電性能の低いものから順番に、要請された充放電量を割り当てる。一般的に、蓄電池は充放電を繰り返すほど劣化するという技術的特徴を有する。さらに、一般的には、高性能の蓄電池ほど高価であり、低性能の蓄電池ほど安価である。
【0081】
本実施例では、図5のテーブルT20に示した通り、第1蓄電池120(1)が最も高性能であり、第2蓄電池120(2)が次に高性能である。第4蓄電池120(4)は最も低性能であり、第3蓄電池120(3)は、その次に低性能である。
【0082】
従って、できるだけ低性能な蓄電池120を用いて、電力管理装置30からの要請に応える方が、蓄電池制御システム10の運用コストを低下させることができる。そこで、本実施例では、一つの例として、要請された充放電量が小さい場合は、できるだけ安価な低性能の蓄電池120(3)、120(4)で対応し、要請充放電量が大きい場合は、高価な高性能の蓄電池120(1)、120(2)を利用する。これにより、高性能の蓄電池120(1)、120(2)の使用頻度をできるだけ少なくして、劣化を遅らせる。
【0083】
従って、本実施例では、割当ての優先順位は、蓄電池120(4)、蓄電池120(3)、蓄電池120(2)、蓄電池120(1)の順になる。最も低性能の蓄電池120(4)が優先して使用され、最も高性能の蓄電池120(1)は使用される可能性が少なくなっている。
【0084】
ここで、理解の便宜のために、図4のテーブルT10に示す例において、電力管理装置30が、これからの1時間で5kWhの電力を電力系統41に供給することを要請する場合を説明する。
【0085】
この場合、まず、4つの蓄電池120(1)〜120(4)のうち、最も優先順位の高い蓄電池120(4)を選択し、今後の一時間で放電可能な電力量である1kWhを、蓄電池120(4)の放電量として割り当てる。
【0086】
その結果、未割当ての放電量(電力管理装置30から要請された放電量)は、4kWhとなる。そこで、次に優先順位の高い蓄電池120(3)を選択し、今後の一時間で放電可能な電力量である3kWhを、蓄電池120(3)の放電量として割り当てる。
【0087】
その結果、未割当ての放電量は1kWhとなる。そこで、次に優先順位の高い蓄電池120(2)を選択する。蓄電池120(2)は、今後の一時間で4kWhの電力を放電可能である。しかし、未割当ての放電量は1kWhであるので、蓄電池120(2)の放電量には、1kWhが割り当てられる。
【0088】
その結果、未割当ての放電量は0となるため、最も優先順位の低い蓄電池120(1)は、使用されない。このようなに、制御計画(制御パターン)は、各蓄電池120にどれだけ充放電量させるかを個別に決定する(S13)。
【0089】
上述の割り当てが完了した場合の結果を、図8(b)に示す。図8(a)が割当て前の状態であり、図8(b)が割当てを実行した場合の状態である。
【0090】
高性能の蓄電池120(1)は、放電が指示されていないので変化していない。次に高性能の蓄電池120(2)には、1kWhの放電が割り当てられたので、蓄電池120(2)の今後の放電能力は、現時刻から1時間までは4kWhであるが、次の1時間では3kWhとなる。逆に、蓄電池120(2)の充電能力は、現時刻から1時間までは4kWhであるが、次の1時間は4kWh、さらに次の1時間は1kWhとなっている。
【0091】
蓄電池120(3)には、3kWhの放電が割り当てられたので、蓄電池120(3)の今後の放電能力は、現時刻から2時間が経過するまで、1時間に3kWずつ放電することができる。これに対し、蓄電池120(3)の充電能力は、現時刻から4時間が経過するまでは、1時間あたり3kWずつ充電することができる。
【0092】
蓄電池120(4)には、1kWhの放電が割り当てられたので、現時刻から4時間が経過するまで、1時間あたり1kWずつ放電できる。蓄電池120(4)の充電能力は、現時刻から6時間経過するまで1時間あたり1kWずつ放電可能である。
【0093】
図2のフローチャートに戻る。充放電量演算部114は、ステップS10で取得した負荷予測情報の内容に応じて制御モードを選択する(S14)。
【0094】
負荷予測情報の内容が、「負荷は現状維持の傾向」である場合、蓄電池120の充放電性能のバランスを優先した蓄電池制御モードを選択する(S15)。本実施例では、この制御モードをバランスモードと呼ぶ。
【0095】
負荷予測情報の内容が、「負荷は増加する傾向」の場合、蓄電池120の放電性能を優先した蓄電池制御モードを選択する(S16)。本実施例では、この制御モードを放電優先モードと呼ぶ。
【0096】
負荷予測情報の内容が、「負荷は減少する傾向」の場合、蓄電池120の充電性能を優先した蓄電池制御モードを選択する(S17)。本実施例では、この制御モードを充電優先モードと呼ぶ。
【0097】
充放電量演算部114は、選択した制御モードに応じて、各蓄電池120の充放電を制御するための計画(制御パターン)を作成する。
【0098】
図3に示すように、バランスモード(S15)では、ステップS11で取得した、各蓄電池120の蓄電量及び最大電池容量から、各蓄電池120のSOCを計算する(S150)。SOCの計算結果は、図4に示す蓄電池管理DB113のSOC C102に格納される。
【0099】
図9の上側には、蓄電量情報の他の例T10(2)が示されている。その蓄電量情報T10(2)を参照すると、蓄電池120(1)の最大電池容量10kWhであるが、蓄電量は0kWhである。従って、蓄電池120(1)のSOCは、0%となる(0kWh/10kWh)×100=0%)。
【0100】
以下同様に計算すると、蓄電池120(2)のSOCは100%、蓄電池120(3)のSOCは約33%、蓄電池120(4)のSOCは80%となる。図10は、図9の上側に示す蓄電量情報T10(2)をグラフ表示したものである。
【0101】
蓄電池120(1)は、全く充電されていないので、放電能力を失っている。しかし、蓄電池120(1)の蓄電量は0kWhのため、最大電池容量である10kWhになるまで、電力系統41で生じる余剰電力を蓄えることができる。
【0102】
蓄電池120(2)は、満杯まで充電されているため、これ以上充電することはできないが、最大電池容量である16kWhの電力を使い切るまで放電することができる。蓄電池120(3)、120(4)については説明を省略する。
【0103】
図9に戻る。充放電量演算部114は、各蓄電池120のSOCが50%となるのに必要な充放電量を計算する。
【0104】
図9の上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合、蓄電池120(1)は5kWhの充電を行えば、SOCが50%になる。蓄電池120(2)は、8kWhの放電を行えば、SOCが50%になる。蓄電池120(3)は、3kWhだけ充電すれば、SOCが50%になる。蓄電池120(4)は、3kWh放電すれば、SOCが50%になる。
【0105】
ここで、バランスモードの評価指標として、各蓄電池120のSOCがそれぞれ50%になるために必要な充放電量の絶対値の和を「必要充放電量」と呼ぶ。上記の例の必要充放電量は19kWhである(=5+8+3+3)。
【0106】
次に、充放電量演算部114は、SOC50%を実現するために必要な充放電量のうち、現時刻から1時間で充放電可能な電力量を計算する(S151)。
【0107】
図9の蓄電量情報T10(2)の例では、蓄電池120(1)は、SOC50%を実現するために5kWhの充電が必要である。蓄電池120(1)は、1時間で5kWh充電可能なので、必要な充電量は5kWhである。
【0108】
同様に、蓄電池120(2)は、SOC50%を実現するために8kWhの放電が必要である。蓄電池120(2)は、1時間で4kWh放電可能なため、必要な放電量は4kWhである。
【0109】
同様に、蓄電池120(3)は、SOC50%を実現するために3kWhの充電が必要である。蓄電池120(3)は、1時間で3kWhを充電可能なので、必要な充電量は3kWhである。
【0110】
蓄電池120(4)の場合は、SOC50%を実現するために3kWhの放電が必要である。蓄電池120(4)は、1時間で1kWhを放電可能なので、必要な放電量は1kWhである。
【0111】
なお、既にステップS13で割り当てた充放電を踏まえたうえで、本ステップS151での割り当てを実施しなくてはならない。例えば、もしもステップS13で、蓄電池120(1)に5kWhの充電が割り当てられていた場合、既に蓄電池120(1)の充放電能力に余裕は無いため、充放電可能な電力量は0になる (ステップS151) 。
【0112】
つまり、図2のステップS13は、電力管理装置30から要請された充放電量をさばくための割当てである。図3のステップS151は、負荷変動の傾向の予測に応じて、各蓄電池120の蓄電量を調整し、次の制御周期に備えるための割当てである。後述のステップS161、S171も、その目的はステップS151と同様である。
【0113】
このように、本実施例では、電力の需給状態に応じて各蓄電池120の充放電を個別に制御すると共に(S13)、負荷傾向の予測に応じて各蓄電池120の蓄電量を事前に調整する(S151)。従って、負荷変動の傾向の予測が大きく外れない限り、速やかに、かつ効率的に、各蓄電池120を使用することができる。
【0114】
図2のフローチャートの説明に戻る。充放電量演算部114は、ステップS151で算出した、現時刻から1時間での各蓄電池120の必要充放電量を、マッチングさせる(S152)。マッチングさせるとは、或る蓄電池120で放電される電力を、他の蓄電池120への充電に割り当ててることを意味する。
【0115】
即ち、充放電量演算部114は、或る蓄電池120でSOC50%を実現するために必要な1時間あたりの充電量と、他の蓄電池120でSOC50%を実現するために必要な1時間あたりの放電量とを、組み合わせる。
【0116】
マッチングについても、ステップS13で述べたのと同じ理由で、充放電性能の低いものから順に割り当てる。
【0117】
充放電要請量が0であり、負荷予測情報が「負荷は現状維持の傾向」であった場合のマッチング処理について、図9に示す蓄電量情報T10(2)を前提として説明する。
【0118】
蓄電池120(4)の1kWh放電量に対し、蓄電池120(3)の3kWh充電量のうちの1kWhを割り当てる。蓄電池120(3)の残った2kWhの充電量に、蓄電池120(2)の4kWh放電量のうちの2kWhを割り当てる。蓄電池120(2)の残った2kWhの放電量に対し、蓄電池120(1)の5kWhの充電量のうちの2kWhを割り当てる。蓄電池120(1)の残った3kWhの充電量は、マッチングできなかった電力量となる。
【0119】
以上のマッチング処理の結果、各蓄電池120の制御量は、蓄電池120(1)は2kWh充電、蓄電池120(2)は4kWh放電、蓄電池120(3)は3kWh充電、蓄電池120(4)は1kWh放電、となる。
【0120】
図9の下側には、マッチング処理後の蓄電量情報T10(3)を示す。各蓄電池120のSOCは、マッチング処理を実行する前に比べて、50%に近付いている。
【0121】
蓄電量情報T10(3)における必要充放電量を検討する。蓄電池120(1)の蓄電量は2kWh(=0+2)、その最大電池容量は10kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な充電量は3kWhとなる。
【0122】
蓄電池120(2)の蓄電量は12kWh(=16−4)であり、最大電池容量は16kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な放電量は4kWhである。
【0123】
蓄電池120(3)の蓄電量は9kWh(=6+3)であり、最大電池容量は18kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な電力は0である。
【0124】
蓄電池120(4)の蓄電量は7kWh(=8−1)であり、最大電池容量は10kWhであるから、SOC50%を実現するために必要な放電量は2kWhである。
【0125】
上述した「必要充放電量」を計算すると、3+4+0+2=9となり、図9の上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合よりも改善している。「必要充放電量」指標を目的関数とし、この指標値をより少なくするように、数理計画等を用いてマッチング処理を実行してもよい。
【0126】
図11は、蓄電量情報T10(3)の場合において、時間経過と充放電能力との関係を示すグラフである。図中の黒枠の部分の電力量が、調整されている。つまり、蓄電池120(1)は、2kWh充電するため、その2kWhだけ放電能力が高まる。蓄電池120(2)は、4kWh放電するため、その4kWhだけ充電能力が高まる。蓄電池120(3)は、3kWh充電するため、その3kWhだけ放電能力が高まる。蓄電池120(4)は、1kWh放電するため、その1kWhだけ充電能力が高まる。
【0127】
図3のフローチャートに戻り、放電優先モード(S16)を説明する。放電優先モードでは、各蓄電池120の全体で、できるだけ高い放電性能を維持するように、各蓄電池120の蓄電量を事前に調整する。
【0128】
そのために、充放電量演算部114は、図2のステップS11で取得した各蓄電池120の放電性能を比較し、放電性能の高い順番を確認する(S160)。図5の例では、蓄電池120(1)、蓄電池120(2)、蓄電池120(3)、蓄電池120(4)、の順に放電性能が高い。
【0129】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の、単位時間が経過する毎の充放電能力を計算する(ステップS161)。
【0130】
充放電量演算部114は、放電優先の状態を実現させるべく、充放電量のマッチング処理を行う。放電優先のための充放電量のマッチング処理とは、各蓄電池120の全体としてできるだけ高い放電性能を継続できるように、各蓄電池120の蓄電量を事前に配分することである。
【0131】
本実施例では、複数の蓄電池120(1)〜120(4)を一つの仮想的蓄電池と見立てる。そして、蓄電池制御装置110は、放電優先モードを実行する場合、仮想的蓄電池の放電性能をできるだけ大きくするように、仮想的蓄電池を構成する各蓄電池120の蓄電量を個別に制御する。
【0132】
図5の充放電性能情報T20に示す場合、最初に、現在時刻から一時間が経過するまでの間で、合計の放電性能13kWhを実現できるように、蓄電池120間での充放電制御を実行する。さらに蓄電量に余裕がある場合、2時間目も合計13kWhの放電性能を実現できるように、各蓄電池120間で充放電させる。さらに蓄電量に余裕があるなら、3時間目で、合計8kWhの放電性能を持てるよう、蓄電池120間で充放電を行う。3時間目の合計放電性能が8kWhとなるのは、第1蓄電池120(1)の蓄電量が0になっている場合を想定するためである。
【0133】
図9上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合、時間経過時の充放電能力の変化は、図10のグラフに示した通りである。図10のグラフによれば、各蓄電池120の1時間目の放電能力は、蓄電池120(1)は0kWh、蓄電池120(2)は4kWh、蓄電池120(3)は3kWh、蓄電池120(4)は1kWhである。そこで、蓄電池120(1)への充電を考える。
【0134】
蓄電池120(4)の2時間目の放電能力は1kWh、蓄電池120(3)の2時間目の放電能力は3kWh、蓄電池120(2)の2時間目の放電能力は4kWhである。従って、放電性能の低い蓄電池120(4)からの放電量1kWhと、蓄電池120(3)からの放電量3kWhと、蓄電池120(2)からの放電量1kWhとの合計5kWhを、蓄電池120(1)に充電する。
【0135】
図12に、放電優先モードを実施した場合の蓄電量情報T10(4)を示す。図13に、放電優先モードを実施した場合の時間−充放電能力グラフを示す。蓄電池120(2)〜120(4)から放電された5kWhの電力を蓄電池120(1)に充電することで、結果的に、図13中、黒枠の部分の電力量が移動している(S162)。
【0136】
蓄電池120(4)からの1kWhを蓄電池120(1)に充電することで、図13中の黒枠に示すように、蓄電池120(4)から1kWh分の放電能力が失われる。その代わりに、黒枠から延びる矢印で示すように、蓄電池120(4)は、1kWh分の充電能力を得る。
【0137】
同様に、蓄電池120(3)からの3kWhを蓄電池120(1)に充電することで、黒枠に示すように、蓄電池120(3)から3kWh分の放電能力が失われる。その代わりに、矢印で示すように、蓄電池120(3)は、3kWh分の充電能力を得る。
【0138】
同様に、蓄電池120(2)からの1kWhを蓄電池120(1)に充電することで、黒枠に示すように、蓄電池120(2)から1kWh分の放電能力が失われる。その代わりに、矢印で示すように、蓄電池120(2)は、1kWh分の充電能力を得る。
【0139】
この結果、蓄電池120(1)には、現時刻から1時間で、合計5kWhの電力が充電される。従って、蓄電池120(1)は、黒枠で示すように5kWh分の充電能力を失う代わりに、矢印で示すように5kWh分の放電能力を得る。
【0140】
図3に戻り、充電優先モード(S17)を説明する。充電優先モードでは、各蓄電池120の全体で、できるだけ高い充電性能を維持するように、各蓄電池120の蓄電量を事前に調整する。
【0141】
そのために、充放電量演算部114は、図2のステップS11で取得した各蓄電池120の充電性能を比較し、充電性能の高い順番を確認する(S170)。図5の例では、蓄電池120(1)、蓄電池120(2)、蓄電池120(3)、蓄電池120(4)、の順に充電性能が高い。
【0142】
充放電量演算部114は、各蓄電池120の、単位時間が経過する毎の充放電能力を計算する(ステップS171)。
【0143】
充放電量演算部114は、充電優先の状態を実現させるべく、充放電量のマッチング処理を行う(S172)。
【0144】
充電優先の充放電量マッチング処理とは、できるだけ高い充電性能が継続するように、各蓄電池120の蓄電量を配分することである。
【0145】
図5の充放電性能情報T20の場合、まず現在から1時間目までの合計充電性能13kWhを実現するように、各蓄電池120間での充放電制御を行う。さらに蓄電量に余裕がある場合、2時間目も合計13kWhの充電性能を維持できるように、各蓄電池120間で充放電させる。さらに蓄電量に余裕があるならば、3時間目においても、合計8kWhの充電性能を持てるよう、各蓄電池120間で充放電させる。
【0146】
図9上側に示す蓄電量情報T10(2)の場合、上述の通り、時間経過時の充放電能力は、図10に示した通りである。
【0147】
図10によれば、各蓄電池の1時間目の充電能力は、蓄電池120(1)は5kWh、蓄電池120(2)は0kWh、蓄電池120(3)は3kWh、蓄電池120(4)は1kWhである。そこで、蓄電池120(2)からの放電を考える。
【0148】
蓄電池120(4)の2時間目の充電能力は1kWh、蓄電池120(3)の2時間目の充電能力は3kWh、蓄電池120(1)の2時間目の放電能力は5kWhである。従って、蓄電池120(2)から4kWhの電力量を放電させることで、、充電性能の低い蓄電池120(4)に1kWhを、次に充電性能の低い蓄電池120(3)に3kWhを、それぞれ充電させる。
【0149】
図14に、充電優先モードを実施した場合の蓄電量情報T10(5)を示す。図15は、充電優先モードを実施した場合の時間経過と充放電能力の関係を示すグラフである。図16中、黒枠の電力量が移動している(S172)。
【0150】
図2に戻る。充放電量演算部114は、ステップS15〜S17のいずれかの制御モードが実行された後、各蓄電池の制御量(充放電量)を各蓄電池120の制御部123に通知する(S18)。各蓄電池の制御量は、上述の通り、ステップS152またはステップS162またはステップS172のいずれかで決定される。
【0151】
充放電量演算部114は、制御量を各蓄電池120の制御部123に通知した後、所定の制御周期だけ待機し(S19)、再びステップS10に戻る。
【0152】
本実施例は、上述のように構成されるので、以下の効果を奏する。本実施例では、蓄電池制御装置110は、複数の蓄電池120をあたかも一つの仮想的な蓄電池のように取り扱うことができる。そして、本実施例では、電力需給の予測に対応できるように、各蓄電池120の蓄電量を制御する。従って、本実施例では、計画的に各蓄電池120の蓄電量を調整して、各蓄電池120を有効活用することができ、それにより、電力系統を安定的かつ効率的に運用することができる
本実施例では、バランスモード、放電優先モード、充電優先モードのいずれの制御モードに該当するかを予測し、各蓄電池120の蓄電量を、予測された制御モードに応じて事前に調整する。従って、電力需要の変動に速やかに対応することができる。
【0153】
本実施例では、充放電性能の低い順番に蓄電池120を使用するため、高価な蓄電池が劣化するのを抑制することができ、システムの運用コストを低減できる。
【実施例2】
【0154】
図16を参照して第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例は、第1実施例の変形例に相当する。従って、第1実施例との差異を中心に説明する。本実施例では、複数の蓄電池120のうちの一つを予備の蓄電池として使用する。
【0155】
図16は、本実施例による蓄電池制御システム10の全体構成を示す。蓄電池制御システム10は、複数の蓄電池120(1)、120(2)、120(3)、120(SP)を含み、それら蓄電池は蓄電池制御装置110に接続されている。
【0156】
蓄電池120(1)〜120(3)は、通常の蓄電池として使用される。蓄電池120(SP)は、予備の蓄電池として使用されるもので、通常時は使用されない。なお、図16では、便宜上、通常の蓄電池120(1)〜120(3)を3個、予備の蓄電池120(SP)を1個だけ示すが、個数はそれらに限らない。
【0157】
通常の蓄電池120(1)〜120(3)のいずれかがメンテナンス等により、機能を停止する場合、メンテナンス対象の蓄電池の代わりに、予備の蓄電池120(SP)が使用される。
【0158】
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、予備の蓄電池120(SP)を備えている。従って、メンテナンスなどによって通常の蓄電池120(1)〜120(3)の機能が停止した場合でも、複数の蓄電池を効率的に使用して、電力系統41の制御を安定化させることができる。
【0159】
なお、予備の蓄電池120(SP)を設ける代わりに、例えば、メンテナンス中の電力料金を一時的に高く設定してもよい。これにより、蓄電池120のメンテナンス中における、需要家20の電力消費量を低減させることができる。
【実施例3】
【0160】
図17を参照して第3実施例を説明する。本実施例は、電気自動車120Aに搭載されている蓄電池を利用する。
【0161】
図17は、本実施例による蓄電池制御システム10Aを含む電力制御システムの全体構成図である。工場50は、複数の製造設備20A(1)、20A(2)と、電力管理装置(Factory Energy. Management System)30Aを備える。
【0162】
製造設備20A(1)、20A(2)は、第1実施例の需要家20に対応する。各製造設備20A(1)、20A(2)は、電力計測部21を備える。電力管理装置30Aは、第1実施例の電力管理装置30に対応する。図示は省略するが、電力管理装置30Aは、負荷予測部31及び充放電要請量決定部32を備える。
【0163】
蓄電池制御システム10Aは、複数の電気自動車120A(1)〜120A(4)と、蓄電池制御装置110Aとを備える。各電気自動車120Aは、電気プラグ42を介して、工場の電力系統41に接続される。各電気自動車120Aは、第1実施例の蓄電池120に対応し、通信部121と、蓄電池本体122と、制御部123を備える。
【0164】
従業員は、自分の保有する電気自動車120Aまたは会社から貸与された電気自動車120Aに乗って、工場50に出勤する。工場50の駐車場には、複数の電気プラグ42が設置されている。各電気自動車120Aは、電気プラグ42を介して、工場50の電力系統41に電気的に接続される。
【0165】
以下、第1実施例で述べたと同様に、工場50内の電力需要に応じて、電気自動車120Aの蓄電量を制御し、電力系統41を安定化させる。据え置き型の蓄電池と組み合わせてもよい。
【0166】
このように構成される本実施例も、第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、電気自動車120Aの有する蓄電池を有効に活用することができる。なお、工場50を例に挙げて説明したが、工場に限らず、例えば、オフィスビル、集合住宅、病院、市役所等にも適用できる。
【実施例4】
【0167】
図18を参照して第4実施例を説明する。本実施例は、充放電に要する時間の合計値に基づいて、制御パターンを決定する。
【0168】
バランスモード、放電優先モード、充電優先モードに応じて、蓄電量を調整するための制御パターンは、複数存在する可能性がある。第1実施例では、一つの選択基準として、充放電性能の低い順番で蓄電池120を使用することにしている。
【0169】
これに対し、本実施例では、応答性に着目する。本実施例では、図18のグラフに示すように、現時刻からの経過時間のタイムスロットに、現時刻からの経過時間が長くなるほど小さい点数となるように、評価点を設定する。例えば、現時刻から1時間以内のタイムスロットには1点、現時刻から2時間経過したタイムスロットには0.9点のように、現時刻から遅れるほど評価点が少なくなる。
【0170】
蓄電池制御装置110は、バランスモード、放電優先モード、充電優先モードに適応するための、各蓄電池120毎の充放電制御パターンを決定するに際し、複数候補の中から、合計評価点が最も少ない制御パターンを選択する。従って、本実施例も第1実施例と同様の効果を奏する。さらに、本実施例では、蓄電池120全体としての応答性能を高めて、電力需給の急激な変動にも速やかに対応できる。
【実施例5】
【0171】
図19を参照して第5実施例を説明する。本実施例では、需要家20の電力消費に対して、その需要家20に近い蓄電池120の蓄電量を割り当てる。
【0172】
図19は、本実施例による蓄電池制御システム10Bを含む電力制御システムの全体構成を締めす。各需要家20(1)、20(2)の位置に応じて、あらかじめ蓄電池120が割り当てられている。一方の需要家20(1)には、蓄電池120(1)と蓄電池120(2)が割り当てられている。それら蓄電池120(1)及び蓄電池120(2)は、第1蓄電池グループを構成する。他方の需要家20(2)には、蓄電池120(3)及び蓄電池120(4)が割り当てられている。それら蓄電池120(3)及び蓄電池120(4)は、第2蓄電池グループを構成する。
【0173】
ここでは、蓄電池120(1)は蓄電池120(2)よりも高性能であり、蓄電池120(3)は蓄電池120(4)よりも高性能であるとする。蓄電池120(1)と蓄電池120(3)の性能の優劣、及び、蓄電池120(2)と蓄電池120(4)の性能の優劣は、特に問わない。
【0174】
蓄電池制御装置110Bは、需要家20(1)の電力需要を満たすために、第1蓄電池グループの蓄電池120(1)、120(2)の充放電を利用する。同様に、蓄電池制御装置110Bは、需要家20(2)の電力需要を満たすために、第2蓄電池グループの蓄電池120(3)、120(4)の充放電を利用する。
【0175】
つまり、本実施例では、選択範囲1、選択範囲2として示す構成が、それぞれ仮想的な蓄電池を構成する。各仮想的蓄電池は、給電上の距離の近い所定の需要家20に対応付けられている。
【0176】
蓄電池制御装置110Bは、上記複数の制御パターンを決定するに際し、需要家へ電力を供給する距離の合計値が最も短くなるような制御パターンを選択する。これにより、送電距離を短くして、電圧降下を小さくできるため、より効率的に電力系統41の電力需給を安定化することができる。
【0177】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。例えば、蓄電池のコストに基づいて制御パターンを選択する構成でもよい。
【0178】
本発明は、例えば、以下のようにコンピュータプログラムの発明として表現することもできる。
電力系統に接続される蓄電池の作動をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラムであって、
電力系統に接続される複数の蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、
所定範囲の電力需給を管理する電力管理装置から、前記所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、
前記蓄電池情報と前記電力需給予測情報とに基づいて、前記各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、
決定された前記個別充放電量を前記各蓄電池に送信して、前記各蓄電池を、前記蓄電池制御装置から受信した前記個別充放電量に基づいてそれぞれ作動させる、
コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0179】
10、10A、10B:蓄電池制御システム
20(1)、20(2):需要家
20A(1)、20A(2):製造設備
30、30A:電力管理装置
110、110A、110B:蓄電池制御装置
120(1)〜120(4):蓄電池
120(SP):予備の蓄電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される蓄電池の作動を制御する蓄電池制御システムであって、
電力系統に設けられる複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池の充放電を制御するための蓄電池制御装置であって、前記複数の蓄電池と電力管理装置とにそれぞれ通信可能に接続される蓄電池制御装置とを備え、
前記蓄電池制御装置は、
前記各蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、
所定範囲の電力需給を管理する前記電力管理装置から、前記所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、
前記蓄電池情報と前記電力需給予測情報とに基づいて、前記各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、
決定された前記個別充放電量を前記各蓄電池に送信し、
前記各蓄電池は、前記蓄電池制御装置から受信した前記個別充放電量に基づいてそれぞれ作動する、
蓄電池制御システム。
【請求項2】
前記充放電性能には、単位時間あたりの充電量を示す充電性能と、単位時間あたりの放電量を示す放電性能と、最大電池容量とが含まれている、
請求項1に記載の蓄電池制御システム。
【請求項3】
前記電力管理装置は、
前記所定範囲に存在する需要家の電力消費量に基づいて、前記単位時間よりも長く設定される所定期間における、前記所定範囲での電力需要を予測し、
予測した前記電力需要に基づいて、前記各蓄電池の全体に対して要求する合計充放電量を算出し、
算出した前記合計充放電量を前記電力需給予測情報に含めて、前記蓄電池制御装置に送信する、
請求項2に記載の蓄電池制御システム。
【請求項4】
前記電力管理装置は、
予測した前記電力需要に基づいて、前記電力需要の変化の傾向を示す負荷予測情報を算出し、
算出した前記負荷予測情報を前記電力需給予測情報に含めて、前記蓄電池制御装置に送信する、
請求項3に記載の蓄電池制御システム。
【請求項5】
前記蓄電池制御装置は、
前記電力管理装置から受信する前記負荷予測情報に基づいて、電力需要と電力供給とがバランスしているバランスモード、電力需要の方が電力供給よりも多い放電優先モード、または、電力供給が電力需要よりも多い充電優先モードのいずれであるのか、を判定し、
判定されたモードに基づいて前記各蓄電池毎の前記個別充放電量を決定するための制御パターンを選択する、
請求項4に記載の蓄電池制御システム。
【請求項6】
前記蓄電池制御装置は、
前記バランスモードの場合、前記各蓄電池の電池残量を当該各蓄電池の前記最大電池容量の半分に近づけさせるように前記個別充放電量を決定するためのバランス制御パターンを選択し、
前記放電優先モードの場合、前記各蓄電池のうち放電性能の低い蓄電池から前記各蓄電池のうち放電性能の高い蓄電池に充電させるように前記個別充放電量を決定するための放電制御パターンを選択し、
前記充電優先モードの場合、前記各蓄電池のうち充電性能の高い蓄電池から前記各蓄電池のうち充電性能の低い蓄電池に充電させるように前記個別充放電量を決定するための充電制御パターンを選択する、
請求項5に記載の蓄電池制御システム。
【請求項7】
前記蓄電池制御装置は、前記制御パターンの候補が複数存在する場合、予め設定された所定の選択基準に基づいて、前記候補の中からいずれか一つを前記制御パターンとして選択する、
請求項6に記載の蓄電池制御システム。
【請求項8】
前記所定の選択基準は、前記複数の候補のうち、需要家と当該需要家へ電力を供給する蓄電池との距離の合計値が最も短い候補を選択する、
請求項7に記載の蓄電池制御システム。
【請求項9】
前記所定の選択基準は、前記複数の候補のうち、電力の充放電に要する時間の合計値が最も短い候補を選択する、
請求項7に記載の蓄電池制御システム。
【請求項10】
前記所定範囲の電力需給とは、配電変電所の低圧側の系統における電力需給である、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項11】
前記所定範囲の電力需給とは、柱上変圧器の低圧側の系統における電力需給である、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項12】
前記所定範囲の電力需給とは、需要家の電気設備内の電力需給である、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項13】
前記複数の蓄電池は、それぞれ別の電気自動車に搭載されている、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項14】
電力系統に接続される蓄電池の作動を制御する蓄電池制御方法であって、
電力系統に接続される複数の蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、
所定範囲の電力需給を管理する電力管理装置から、前記所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、
前記蓄電池情報と前記電力需給予測情報とに基づいて、前記各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、
決定された前記個別充放電量を前記各蓄電池に送信し、
前記各蓄電池を、前記蓄電池制御装置から受信した前記個別充放電量に基づいてそれぞれ作動させる、
蓄電池制御方法。
【請求項1】
電力系統に接続される蓄電池の作動を制御する蓄電池制御システムであって、
電力系統に設けられる複数の蓄電池と、
前記複数の蓄電池の充放電を制御するための蓄電池制御装置であって、前記複数の蓄電池と電力管理装置とにそれぞれ通信可能に接続される蓄電池制御装置とを備え、
前記蓄電池制御装置は、
前記各蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、
所定範囲の電力需給を管理する前記電力管理装置から、前記所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、
前記蓄電池情報と前記電力需給予測情報とに基づいて、前記各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、
決定された前記個別充放電量を前記各蓄電池に送信し、
前記各蓄電池は、前記蓄電池制御装置から受信した前記個別充放電量に基づいてそれぞれ作動する、
蓄電池制御システム。
【請求項2】
前記充放電性能には、単位時間あたりの充電量を示す充電性能と、単位時間あたりの放電量を示す放電性能と、最大電池容量とが含まれている、
請求項1に記載の蓄電池制御システム。
【請求項3】
前記電力管理装置は、
前記所定範囲に存在する需要家の電力消費量に基づいて、前記単位時間よりも長く設定される所定期間における、前記所定範囲での電力需要を予測し、
予測した前記電力需要に基づいて、前記各蓄電池の全体に対して要求する合計充放電量を算出し、
算出した前記合計充放電量を前記電力需給予測情報に含めて、前記蓄電池制御装置に送信する、
請求項2に記載の蓄電池制御システム。
【請求項4】
前記電力管理装置は、
予測した前記電力需要に基づいて、前記電力需要の変化の傾向を示す負荷予測情報を算出し、
算出した前記負荷予測情報を前記電力需給予測情報に含めて、前記蓄電池制御装置に送信する、
請求項3に記載の蓄電池制御システム。
【請求項5】
前記蓄電池制御装置は、
前記電力管理装置から受信する前記負荷予測情報に基づいて、電力需要と電力供給とがバランスしているバランスモード、電力需要の方が電力供給よりも多い放電優先モード、または、電力供給が電力需要よりも多い充電優先モードのいずれであるのか、を判定し、
判定されたモードに基づいて前記各蓄電池毎の前記個別充放電量を決定するための制御パターンを選択する、
請求項4に記載の蓄電池制御システム。
【請求項6】
前記蓄電池制御装置は、
前記バランスモードの場合、前記各蓄電池の電池残量を当該各蓄電池の前記最大電池容量の半分に近づけさせるように前記個別充放電量を決定するためのバランス制御パターンを選択し、
前記放電優先モードの場合、前記各蓄電池のうち放電性能の低い蓄電池から前記各蓄電池のうち放電性能の高い蓄電池に充電させるように前記個別充放電量を決定するための放電制御パターンを選択し、
前記充電優先モードの場合、前記各蓄電池のうち充電性能の高い蓄電池から前記各蓄電池のうち充電性能の低い蓄電池に充電させるように前記個別充放電量を決定するための充電制御パターンを選択する、
請求項5に記載の蓄電池制御システム。
【請求項7】
前記蓄電池制御装置は、前記制御パターンの候補が複数存在する場合、予め設定された所定の選択基準に基づいて、前記候補の中からいずれか一つを前記制御パターンとして選択する、
請求項6に記載の蓄電池制御システム。
【請求項8】
前記所定の選択基準は、前記複数の候補のうち、需要家と当該需要家へ電力を供給する蓄電池との距離の合計値が最も短い候補を選択する、
請求項7に記載の蓄電池制御システム。
【請求項9】
前記所定の選択基準は、前記複数の候補のうち、電力の充放電に要する時間の合計値が最も短い候補を選択する、
請求項7に記載の蓄電池制御システム。
【請求項10】
前記所定範囲の電力需給とは、配電変電所の低圧側の系統における電力需給である、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項11】
前記所定範囲の電力需給とは、柱上変圧器の低圧側の系統における電力需給である、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項12】
前記所定範囲の電力需給とは、需要家の電気設備内の電力需給である、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項13】
前記複数の蓄電池は、それぞれ別の電気自動車に搭載されている、
請求項1〜9のいずれかに記載の蓄電池制御システム。
【請求項14】
電力系統に接続される蓄電池の作動を制御する蓄電池制御方法であって、
電力系統に接続される複数の蓄電池から、充放電性能及び電池残量を含む蓄電池情報を取得し、
所定範囲の電力需給を管理する電力管理装置から、前記所定範囲の電力需給の予測を示す電力需給予測情報を取得し、
前記蓄電池情報と前記電力需給予測情報とに基づいて、前記各蓄電池毎に個別充放電量をそれぞれ決定し、
決定された前記個別充放電量を前記各蓄電池に送信し、
前記各蓄電池を、前記蓄電池制御装置から受信した前記個別充放電量に基づいてそれぞれ作動させる、
蓄電池制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−106372(P2013−106372A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246554(P2011−246554)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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