説明

蓄電装置およびこれを備えた建設機械

【課題】状態確認を確実にでき、かつ防水性能を向上させることができる蓄電装置を提供すること。
【解決手段】複数の蓄電用セルとしてのキャパシタセルと、キャパシタセルが収容された筐体122とを備え、筐体122には、内部に設けられた状態表示手段としてのLED137,138を視認可能な確認窓40が設けられ、確認窓40は、筐体122を貫通する貫通孔41と、貫通孔41を筐体122の内側から塞ぐ透過性を有した樹脂プレート43と、樹脂プレート43と筐体122の内面での貫通孔41の周囲との間に介装されるシール部材42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ等の蓄電装置およびこれを備えた建設機械に係り、特にハイブリッド建設機械に搭載される蓄電装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械として、エンジンによって発電電動機と油圧ポンプとを駆動するとともに、発電電動機で発電された電力により、キャブ等が設けられた上部旋回体用の電動モータを駆動し、また、油圧ポンプからの圧油によって作業機の油圧アクチュエータや走行装置の油圧モータを駆動するハイブリッド建設機械が知られている。発電電動機で発電された電力は、蓄電装置としてのキャパシタに充電され、キャパシタからインバータを介して電動モータに出力される。
【0003】
このようなハイブリッド建設機械において、種々のメンテナンスを行う場合には、保安上、キャパシタの電圧が所定のレベルまで下がっている必要があるうえ、キャパシタからの出力部分に設けられたコンタクタがオフ(オープン)になっている必要があり、キャパシタに充電された電力が出力されないよう、細心の注意が必要である。
【0004】
このため、キャパシタを構成する筐体の外面には、キャパシタの充電量およびコンタクタの状態を確認する確認窓が設けられており、この確認窓を通して視認されるLED(light emitting diode) の点灯状態を確認することで、コンタクタの状態およびキャパシタの充電状態を把握できるようになっている。このような確認窓としては、ハイブリッド建設機械用ではないが、電源パッケージのアッパーケースに設けられた確認窓(透過窓部)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1では、確認窓がケース内部に収容されたバッテリ液残量計を確認するために設けられる他、バッテリ比重計など、バッテリの種々の状態を確認するために設けられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−114775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、確認窓の具体的な構造は全く開示されておらず、このような確認窓を、高い防水性能が要求される建設機械のキャパシタに容易には適用できない。すなわち、建設機械で用いられるキャパシタでは、視認性の関係でキャパシタを構成する筐体自身の外面に確認窓が設けられるのであり、確認窓から視認されるLEDを有した回路基板がキャパシタの内部に配置される。このため、例えば、筐体の上面に確認窓を設けた場合には、回路基板が確認窓の直下に位置することから、確認窓から浸み入った水滴がそのまま回路基板上に滴下してしまい、不具合が生じ易い。
さらに、回路基板の下方には、多数のキャパシタセルが配置されているのであり、滴下した水滴がキャパシタセルの電極と筐体との間に介在するようになると、キャパシタ内部で電気的な障害が生じ、電動モータの駆動制御に支障を来す場合がある。
【0008】
また、従来、透明な樹脂製のキャップを貫通孔にスナップフィット式(爪引っ掛けタイプ)で取り付け、筐体の表面とこれに対向するキャップのフランジ部分との間にオーリングを介装させたり、あるいは貫通孔に挿入されるキャップの筒状部分回りにオーリングを嵌め込み、貫通孔の内周面との間でシールしたりすることがあるが、キャップの爪引っ掛けが十分でないこともあり、防水性が不十分である。
【0009】
本発明の目的は、状態確認を確実にでき、かつ防水性能を向上させることができる蓄電装置およびこれを備えた建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る蓄電装置は、複数の蓄電用セルと、前記蓄電用セルが収容された筐体とを備え、前記筐体には、内部に設けられた状態表示手段を視認可能な確認窓が設けられ、前記確認窓は、前記筐体を貫通する貫通孔と、前記貫通孔を前記筐体の内側から塞ぐ透過性を有したプレートと、前記プレートと前記筐体の内面での前記貫通孔の周囲との間に介装されるシール部材とを備えていることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る蓄電装置では、前記透光性を有するプレートは樹脂プレートであり、前記樹脂プレートの前記状態表示部と対向する面には金属プレートがあてがわれ、前記樹脂プレートおよび前記金属プレートが同一のスクリューで前記筐体に固定されていることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る蓄電装置では、前記貫通孔には、透光性を有するボルトが螺入されていることを特徴とする。
第4発明に係る蓄電装置では、前記筐体には、表面から膨出した膨出部が設けられ、前記膨出部には、所定幅および所定深さを有した切り通し状の凹部が設けられ、前記凹部に前記貫通孔が設けられているとともに、前記ボルトの頭部が前記膨出部の上部よりも低い位置にあることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る建設機械は、以上に説明したいずれかの蓄電装置が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1、第5発明によれば、状態表示部を視認するための貫通孔を筐体の内部から透光性を有したプレートで塞ぎ、このプレートと貫通孔回りの筐体内面との間をシール部材でシールするので、プレート自身を筐体の外部に設置する必要がなく、プレートが外部から故意に外されたり、工具等がぶつかって損傷したりするといったことがなく、蓄電装置での防水性を確実に確保できる。
【0015】
第2発明によれば、樹脂プレートには強度的に優位な金属プレートがあてがわれ、この金属プレートを通して樹脂プレートがスクリュー止めされることになるから、スクリューの頭部や金属ワッシャ等が直接的に樹脂プレートに当接することがなく、スクリューの締付操作によってその頭部や金属ワッシャ等が樹脂プレートに食い込んでしまうのを防止できる。従って、スクリューの締付具合にばらつきが生じ難く、シール部材全体を均等に圧できて、防水性を一層良好にできる。また、樹脂プレートへの応力を緩和することができるので、樹脂プレートの破損を抑制できる。
【0016】
第3発明によれば、貫通孔が透光性を有するボルトで塞がれることになるから、防水性をさらに向上させることができる。なお、この際には、ボルトを貫通孔に接着剤で固定すれば、ボルトを抜き取られるといったいたずら等を防止できる。
【0017】
第4発明によれば、膨出部が凹部の両側に残り、この膨出部の上部よりも低い位置にボルトの頭部があるので、メンテナンスマンが誤って工具等を確認窓に落とした場合でも、ボルトが膨出部によってガードされ、工具がボルトにぶつかって損傷するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド油圧ショベルを示す斜視図。
【図2】ハイブリッド油圧ショベルの駆動系の全体構成を示す図。
【図3】ハイブリッド油圧ショベルの旋回体の内部構成を示す図。
【図4】ハイブリッド油圧ショベルに搭載されたインバータおよびキャパシタを示す斜視図。
【図5】電気制御ユニットを構成しているキャパシタおよびヒューズボックスを示す分解斜視図。
【図6】キャパシタユニットの概念を示す斜視図。
【図7】キャパシタの確認窓部分の断面部。
【図8】図7のVIII-VIII矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態に係る作業機械としてのハイブリッド油圧ショベル1が示されている。このハイブリッド油圧ショベル1は、車両本体2と作業機3とを備えている。
【0020】
車両本体2は、走行体21と、走行体21上に旋回可能に設けられた旋回体22とを備えている。走行体21は、一対の走行装置211を備えている。各走行装置211は、履帯212を備え、後述する油圧モータ213で履帯212を駆動することによってハイブリッド油圧ショベル1を走行させる。
【0021】
旋回体22は、キャブ23、カウンタウェイト24、およびエンジンルーム25を備えている。カウンタウェイト24は、作業機3との重量バランス用に設けられ、内部に重量物が充填されている。エンジンルーム25を覆うエンジンフード26には、格子状の開口部261が設けられ、外部からの冷却空気が開口部261を通してエンジンルーム25内に取り込まれる。
【0022】
作業機3は、旋回体22の前部中央位置に取り付けられており、ブーム31、アーム32、バケット33、ブームシリンダ34、アームシリンダ35、およびバケットシリンダ36を備えている。ブーム31の基端部は、旋回体22に回転可能に連結されている。また、ブーム31の先端部は、アーム32の基端部に回転可能に連結されている。アーム32の先端部は、バケット33に回転可能に連結されている。
【0023】
ブームシリンダ34、アームシリンダ35、およびバケットシリンダ36は、油圧ポンプ6から吐出された作動油によって駆動される油圧シリンダである。そして、ブームシリンダ34はブーム31を動作させ、アームシリンダ35はアーム32を動作させる。バケットシリンダ36は、バケット33を動作させる。
【0024】
図2には、ハイブリッド油圧ショベル1の駆動系の全体構成が示されている。
図2において、ハイブリッド油圧ショベル1は、駆動源としてエンジン4を備えている。エンジン4の出力軸には、発電電動機5および一対の油圧ポンプ6,6が直列に連結され、それぞれエンジン4によって駆動される。
【0025】
油圧ポンプ6から圧送された作動油は、コントロールバルブ7を介して作業機3に供給され、作業機3が油圧によって動作する。また、走行体21は、クローラに噛合するスプロケットを駆動するための油圧モータ213を有しており、これらの油圧モータ213に対して、油圧ポンプ6からの作動油がコントロールバルブ7を介して供給される。
【0026】
一方、発電電動機5には、ターミナルボックス8を介してパワーケーブル9が接続されている。発電電動機5で発電された電力は、パワーケーブル9を介してインバータ10に送電される。インバータ10には別のパワーケーブル9の一端が接続されており、パワーケーブル9の他端が、旋回体22を駆動するための旋回電動モータ11に接続されている。これにより、発電電動機5で発電された電力は、インバータ10を通して、旋回電動モータ11へ供給される。また、発電電動機5は、必要に応じて電動機として使用され、エンジン4を補助する。
【0027】
また、インバータ10には蓄電装置としてのキャパシタ12が接続されており、発電電動機5で発電された電力は、インバータ10を通してキャパシタ12に蓄電される。キャパシタ12に充電された電力は、昇圧器10Aで昇圧されるとともに、旋回操作時にキャパシタ12からインバータ10を通して旋回電動モータ11に供給される。旋回電動モータ11は、遊星歯車機構等を有した減速機11Aを介して、走行体21の上部に旋回自在に設置された旋回体22を駆動する。また、キャパシタ12の電力は、必要に応じて発電電動機5に供給され、発電電動機5を電動機として動作させる。
【0028】
図3には、旋回体22の内部構成が示されている。
図3において、インバータ10およびキャパシタ12は、旋回体22の車両前方側に設けられている。また、旋回電動モータ11は、旋回体22の中央部に設けられている。旋回体22の車両後方側には、エンジンルーム25が設けられ、エンジンルーム25のさらに後方にカウンタウェイト24が設けられている。エンジンルーム25内には、エンジン4、発電電動機5、および油圧ポンプ6が、それぞれカウンタウェイト24に沿って並設されている。
【0029】
これらのうち、具体的にインバータ10およびキャパシタ12は、図4に示すように、旋回体22の車両前方右側に設けられた箱状の収容部13内に収容されている。収容部13の上面部分は、上方に開閉自在な開閉カバー130になっている。このような開閉カバー130はステップとされ、その前方にあるステップ221と共に、オペレータのエンジンルーム25側へのアクセス時に利用される。
【0030】
ここで、インバータ10は、キャパシタ12の上部に設けられた複数のボス121上に搭載される。キャパシタ12には、インバータ10の他、ヒューズボックス14が取り付けられている。ヒューズボックス14内部のプラスラインおよびマイナスラインは、コネクタ15およびパワーケーブル16を介して、インバータ10に一体に設けられたターミナルボックス17内の各ラインに接続されている。
【0031】
車両のメンテナンスを行う際には、収容部13の開閉カバー130を開け、キャパシタ12の状態を確認してから行うことになる。このため、キャパシタ12には、その状態を確認するための確認窓40が設けられている。この確認窓40の詳細については後述する。
【0032】
図5には、キャパシタ12およびヒューズボックス14の内部構成が示されている。
図5において、キャパシタ12は、アルミ製の筐体122で複数(本実施形態では12個)のキャパシタユニット123を覆った構成である。
筐体122は、有底箱状のケース124と、ケース124の上部を覆うカバー125とで構成され、カバー125の周囲が上方からの図示しない多数のボルトによってケース124の周囲に固定される。
【0033】
ケース124の四方の角部には、収容部13内にゴムマウント等を介して設置される設置部126が設けられている。ケース124の側面には、クレーンによるキャパシタ12全体の吊り込み作業を行うための吊りボルト127が設けられている。ケース124の内部には、各キャパシタユニット123を直列に接続するためのターミナルブロック128が設けられている。
【0034】
ケース124の底部分には、内部を冷却水が流通する冷却水路129(図6)が形成されており、各キャパシタユニット123のキャパシタセル50が冷却されるようになっている。キャパシタユニット123は、本実施形態では、蓄電用セルとして12個のキャパシタセル50を有している。冷却水路129は、外部の冷却水循環用の冷却水ポンプに対して冷却水流入用ホースおよび流出用ホースにて接続されている。
【0035】
カバー125には、前述のボス121の他、ヒューズボックス14が固定される固定部131が設けられている。固定部131は、カバー125の上面から一段高い位置に設けられている。従って、カバー125の裏側では、固定部131に対応した天井部分が一段高い空間になっている。固定部131の裏側の部分には、回路基板132が下方からのスクリュー止めによって固定されている。
【0036】
回路基板132には複数のシグナルケーブル133が接続されており、固定部131の裏側空間を通ることで、キャパシタユニット123に接触することなくヒューズボックス14まで配線される。
回路基板132は、キャパシタ12の充電圧の状態および後述するコンタクタ135の開閉状態を判定する状態判定手段と、状態判定手段による判定結果を表示する状態表示手段とを備えている。本実施形態において、状態表示手段は、複数(本実施形態では2個)のLED137,138で構成されている。
【0037】
ヒューズボックス14には、キャパシタ12とインバータ10と接続ライン上であって、キャパシタ12およびインバータ10にそれぞれ電気的に接続されたコンタクタ135が設けられている。コンタクタ135には、シグナルケーブル133の一部が接続されており、当該一部のシグナルケーブル133を介してコンタクタ135に回路基板132が接続されている。このため、例えば、コンタクタ135がオン(クローズ)状態にある時、回路基板132に実装された一方のLED(例えば、LED137(図7参照))が点灯する。
【0038】
ヒューズボックス14内ではまた、キャパシタ12のターミナルブロック128からのケーブルが別のシグナルケーブル133に接続されており、当該別のシグナルケーブル133を介してキャパシタ電圧が回路基板132に取り込まれる。このため、キャパシタ12の充電圧が例えば50V以上の場合、回路基板132に実装された他方のLED138が点灯する。これらLED137,138が共に消灯していることが確認された場合、ハイブリッド油圧ショベル1のメンテナンスが開始される。なお、LED137,138は、前述の確認窓40に対向する位置に設けられている。
【0039】
さらに、シグナルケーブル133は、ヒューズボックス14のコネクタ134に接続されている。コネクタ134は、ハイブリッド油圧ショベル1の主要部を制御する図示しないコントローラに接続される。
【0040】
図6には、キャパシタユニット123の一部が示されている。
図5、図6において、キャパシタユニット123は、2列に配置された計12個のキャパシタセル50と、キャパシタセル50の上部側を保持する樹脂製の上部保持部材51と、2列に配置されたキャパシタセル50間に列方向に連続して介装されたアルミ製のヒートシンク52と、ヒートシンク52の両側に配置された樹脂製の下部保持部材53,53と、上部保持部材51上に配置されたバランス回路基板54とを備えている。
【0041】
上部保持部材51が12個のキャパシタセル50の上部を一括して保持するのに対し、下部保持部材53は、ヒートシンク52との間でキャパシタセル50を挟持するようになっており、ヒートシンク52に対してボルト55によって固定される。ヒートシンク52は鉛直な長ボルト56によってケース124の底面に固定される。
【0042】
キャパシタセル50の上部にはプラス電極501が形成され、キャパシタセル50の外周部分はマイナス電極502になっている。隣接する一方のキャパシタセル50のプラス電極501と他方のキャパシタセル50のマイナス電極502とは、導通部材57にて電気的に接続されている。つまり、導通部材57には、一方のキャパシタセル50のプラス電極501と接触する舌片部571、および他方のキャパシタセル50のマイナス電極502をホールドする保持部572が形成されている。
【0043】
図示しないが、ターミナルブロック128に近接するキャパシタセル50からは、別の導通部材を介して電極が引き出されている。隣り合うキャパシタユニット123間でのキャパシタセル50同士の導通は、ターミナルブロック128に引き出された電極間を直線状の導通部材で接続して行う。
【0044】
キャパシタセル50のマイナス電極502は、必要部分がコーティング等により絶縁されることで、ヒートシンク52と接触している。キャパシタセル50内での損失により生じた熱はヒートシンク52に伝達されるが、ヒートシンク52はケース124の底面と接触していることで、冷却水路129を流れる冷却水にて冷却されているため、ヒートシンク52で熱交換されることになり、外部へは放熱されない。このことにより、キャパシタ12が所定温度に維持される。
【0045】
バランス回路基板54には、12個のキャパシタセル50の充放電のばらつきを抑制するための電気回路が形成されている。それぞれの導通部材57には、前記の舌片部571および保持部572とは別に、ピン状の部分(不図示)が一体に形成されており、バランス回路基板54のスルーホールに下方から挿通され、電気回路と導通している。
【0046】
ところで、キャパシタセル50の下端面もマイナス電極502の一部とされる場合があり、このような下端面とケース124の底面との間には隙間Sが形成される。しかし、確認窓40等の防水が不十分で、このような隙間Sに水滴が浸入すると、この水滴を介してマイナス電極502とケース124とが導通することになり、不具合の原因になる。また、確認窓40から浸み入った水滴は、回路基板132上に滴下することも考えられ、この場合も不具合が生じる可能性が高い。
【0047】
ハイブリッド油圧ショベル1にとっては、特にキャパシタ12やインバータ10等のハイブリッド機器類での不具合を未然に防止することが重要であり、その対策が要求される。従って、本実施形態では、従来にない防水性能に優れた確認窓40を採用しているのであり、以下には、その確認窓40について詳説する。
【0048】
図7、図8には、確認窓40が示されている。
図7、図8において、確認窓40は、キャパシタ12のカバー125において、固定部131の表裏を貫通する一対の貫通孔41を有している。固定部131の表面には、さらに一段上方に膨出させた膨出部139が設けられ、膨出部139には、固定部131の表面から一段高い段差部141を僅かに残すように切削加工を施して、所定幅および所定深さを有した凹部としての切り通し状の切削部142(図5をも参照)が設けられ、この切削部142の平坦な底面143(段差部141の上面)に貫通孔41が設けられている。切削部142は、貫通孔41の並設方向に沿って長く形成されている。また、貫通孔41は、回路基板132上のLED137,138に対応している。
【0049】
一方、固定部131の裏面側には、膨出部139に対応した最も高い位置の第1天井部144が設けられ、第1天井部144には平坦な取付面145が設けられている。取付面145にはさらに、両方の貫通孔41の外側を全体的に囲むように円環状のシール溝146が設けられている。シール溝146には、オーリング等のシール部材42が嵌め込まれ、この状態で取付面145には、平面視四角形の透明な樹脂プレート43があてがわれ、下方からの四隅のスクリュー44にて取り付けられている。なお、回路基板132は、固定部131に対応して形成された一段低い第2天井部147の取付面148に取り付けられている。
【0050】
このように、カバー125の内面と樹脂プレート43との間には、シール部材42が介装され、基本的にはこのシール部材42によりシールされることで、貫通孔41からキャパシタ12内への水滴等の浸入を防いでいる。樹脂プレート43が透明であることから、貫通孔41を上方からのぞき込むことで、LED137,138の点灯状態を確認でき、キャパシタ12の状態を判断できる。また、樹脂プレート43は、キャパシタ12内でスクリュー止めされているので、故意にスクリュー44および樹脂プレート43を外部から取り外すことができないようになっている。
【0051】
さらに、樹脂プレート43の下面、すなわちLED137,138と対向する面には、平面視で略同じ外径寸法を有した金属プレート45があてがわれている。スクリュー44はこの金属プレート45をも貫通し、金属プレート45を樹脂プレート43に固定している。
ここで、金属プレート45を用いず、スクリュー44の頭部を金属ワッシャ等を介して樹脂プレート43に対して締め込むと、樹脂プレート43の強度が低いことで、樹脂プレート43が損傷したり、金属ワッシャが樹脂プレート43の表面に食い込んだりする。この結果、4本のスクリュー44の締付トルクが一様にならず、シール部材42が均等に押圧されずにシール性が損なわれる可能性がある。
【0052】
このために本実施形態では、スクリュー44の締付に対して変形しない金属プレート45を十分な当接面積を有してあてがい、樹脂プレート43への応力を緩和することとして、金属ワッシャが樹脂プレート43に食い込むのを防止し、スクリュー44を適正な締付トルクで均等に締め付けることができるようにしてある。また、金属プレート45には、LED137,138に対応した丸孔開口46が設けられており、LED137,138を視認できるようになっている。
【0053】
加えて本実施形態では、貫通孔41内に透明な樹脂ボルト47が螺入されている。樹脂ボルト47の雄ねじ部分と貫通孔41の雌ねじ部分とは、透明あるいは半透明な接着剤にて固定され、樹脂ボルト47が容易に抜き取られないようになっている。このような樹脂ボルト47によって貫通孔41を埋めることにより、貫通孔41の水、泥、土等の浸入による視認性低下への耐性をさらに向上させている。樹脂ボルト47が透明であることから、LED137,138の点灯状態を確認できるうえ、樹脂ボルト47の頭部471で光が拡散し、頭部471全体を通して大きく点灯させることが可能であり、斜め方向からの視認性も向上する。
【0054】
樹脂ボルト47の頭部471は、切削部142の狭い幅内に収まっており、両側の膨出部139の上部よりも低い位置に存在している。従って、メンテナンスマンが確認窓40での確認中に、工具等を確認窓40に落とすようなことがあっても、工具が膨出部139に当たることになるから、頭部471に当たり難くでき、樹脂ボルト47の損傷を防止できる。
【0055】
しかも、切削部142の底面143は、固定部131からは高い位置にある段差部141を残して平坦に設けられているので、切削部142の底面143上に落ちた水滴等を、その両側から固定部131上に流れ落とすことができ、底面143上に留まるのを防ぐことで、防水性能を一層向上させることができる。
そして、そのような膨出部139は、スクリュー44のねじ穴に対応させて設けられている。このことから、ねじ穴をより長く形成でき、スクリュー44をより緩みにくくできて、防水性能を良好に維持するために有効である。
【0056】
また、以上に説明した確認窓40が設けられたカバー125では、確認窓40用の樹脂ボルト47については、カバー125の表面側から螺入して組み付けるが、その他のシール部材42、樹脂プレート43、金属プレート45、スクリュー44、回路基板132は全てカバー125の内側から組み付けることができ、組立性が良好である。
【0057】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、確認窓40がキャパシタ12のカバー125に設けられていたが、収容部13の構造によっては、ケース124の側面に設けられていてもよく、確認窓を設ける位置はその実施にあたって適宜決められてよい。
前記実施形態では、各LED137,138に対応して一対の貫通孔41が設けられていたが、より大きい径の1つの貫通孔を設け、この貫通孔から複数のLEDを視認できるようにしてもよい。
【0058】
前記実施形態では、膨出部139での切削部142や、金属プレート45、樹脂ボルト47が用いられていたが、そのような部分や部材等を採用しない場合でも、本発明に含まれる。要するに、前記実施形態のように、視認用の貫通孔41を筐体122の内側からシール部材42を介して透明な樹脂プレート43で塞げば、本発明に含まれる。
【0059】
前記実施形態では、膨出部139に切削加工を施して切削部142を設けていたが、膨出部139に設ける凹部としては切削加工によるものに限られず、例えば、鋳抜き等により凹部を形成してもよい。
前記実施形態では、状態表示手段としてLED137,138が用いられていたが、これに限定されず、小型の液晶表示部などで構成されていてもよい。
【0060】
前記実施形態では、透過性を有するプレートおよびボルトとして、透明な樹脂プレート43および樹脂ボルト47が用いられていたが、それらのプレートおよびボルトとしては、透過性を有していればよく、透明に限定されない。
前記実施形態では、本発明に係る蓄電装置をキャパシタにて説明したが、蓄電装置としては、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ハイブリッド油圧ショベル以外のハイブリッド建設機械、あるいは電動式の建設機械に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1…建設機械であるハイブリッド油圧ショベル、12…蓄電装置であるキャパシタ、40…確認窓、41…貫通孔、42…シール部材、43…プレートである樹脂プレート、44…スクリュー、45…金属プレート、47…ボルトである樹脂ボルト、50…蓄電用セルであるキャパシタセル、122…筐体、137,138…状態表示手段であるLED、139…膨出部、142…凹部である切削部、147…頭部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電用セルと、
前記蓄電用セルが収容された筐体とを備え、
前記筐体には、内部に設けられた状態表示手段を視認可能な確認窓が設けられ、
前記確認窓は、
前記筐体を貫通する貫通孔と、
前記貫通孔を前記筐体の内側から塞ぐ透過性を有したプレートと、
前記プレートと前記筐体の内面での前記貫通孔の周囲との間に介装されるシール部材とを備えている
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置において、
前記透光性を有するプレートは樹脂プレートであり、
前記樹脂プレートの前記状態表示部と対向する面には金属プレートがあてがわれ、
前記樹脂プレートおよび前記金属プレートが同一のスクリューで前記筐体に固定されている
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の蓄電装置において、
前記貫通孔には、透光性を有するボルトが螺入されている
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電装置において、
前記筐体には、表面から膨出した膨出部が設けられ、
前記膨出部には、所定幅および所定深さを有した切り通し状の凹部が設けられ、
前記凹部に前記貫通孔が設けられているとともに、
前記ボルトの頭部が前記膨出部の上部よりも低い位置にある
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の蓄電装置が搭載されている
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−209467(P2012−209467A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74869(P2011−74869)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】