説明

薄板搬送装置

【課題】 反りを有する薄板であっても簡易な構成により確実に高速搬送することができる薄板搬送装置を提供する。
【解決手段】 搬送体116と、搬送体116に設けられた一対の突状体121と、搬送体116の駆動により一対の突状体121を水平搬送する駆動手段とを備え、一対の突状体121間に平板状の薄板が保持される薄板搬送装置であって、一対の突状体121は、搬送方向に沿って互いに対向する傾斜面124をそれぞれ備え、傾斜面124には、複数の係止微細突起が傾斜方向に鋸歯状に連設されており、一対の突状体121の係止微細突起が薄板の搬送方向両側端面にそれぞれ当接して薄板を保持するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板搬送装置に関し、より詳しくは、太陽電池用ウエハ等の薄板を搬送するのに好適な薄板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや太陽電池セルなどの薄板を搬送する装置として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。この搬送装置は、太陽電池セルを搬送する搬送ベルトに多数の貫通孔が形成されており、搬送ベルトを支持する真空ボックスの内部を負圧にすることで、搬送ベルト上の太陽電池セルが貫通孔を介して吸引される。
【0003】
ところで、太陽電池用のセルやウエハは、最近では非常に薄型化される一方で高速搬送の必要性が高まっていることから、搬送装置に対しては、ウエハやセルを損傷することなく確実に保持できるように、所定の負圧で吸着することが要求される。このため、特許文献1の搬送装置は、真空ボックスの内部を始端側移載部、作業部および終端側移載部に区画して、搬送方向両側の始端側移載部および終端側移載部を負圧状態と大気圧状態に切り替え可能に構成されており、作業部における吸引力の維持を図っている。
【0004】
また、搬送ベルトの表面に配置された複数の突状体により薄板を保持する構成として、特許文献2から4に開示された構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−160397号公報
【特許文献2】特開2001−133160号公報
【特許文献3】特開2005−16906号公報
【特許文献4】特開2002−203888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1の発明によれば、真空ボックスを区画して吸引を個別に入切するための仕切りやバルブが必要になるため、装置構成が複雑なものとなる。
【0007】
また、搬送されるセルやウエハ等の薄板は完全に平坦ではなく反りを有することがあるため、ウエハを真空吸引して搬送する従来の方式では、反りの大きさに拘わらず確実に吸着するために高い吸引力が必要になる結果、反りの矯正力が過大になった薄板にクラックやワレが発生するおそれがあった。更に、高い真空吸引力によってウエハだけでなく搬送ベルトも吸引されるため、搬送ベルトの駆動に大きな動力が必要になるだけでなく、搬送ベルトに摩耗が生じ易く耐久性の面でも問題があった。
【0008】
一方、特許文献2から4の発明は、突状体により薄板を保持する構成であるため吸引による弊害は生じないが、いずれも焼成炉内での低速搬送に使用されるものであり、薄板を高速搬送する際の問題については十分検討されていない。すなわち、特許文献2および3の発明については、突状体が薄板の搬送方向両側を保持する構成であるため、加速または減速により薄板に対して搬送方向に大きな力が作用した場合に、薄板が突状体から脱落するおそれがある。また、特許文献4の発明は突状体がワイヤ等から構成されているため、やはり薄板の保持力が十分でなく、高速搬送には適さないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、反りを有する薄板であっても簡易な構成により確実に高速搬送することができる薄板搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の前記目的は、搬送体と、前記搬送体に設けられた一対の突状体と、前記搬送体の駆動により一対の前記突状体を水平搬送する駆動手段とを備え、一対の前記突状体間に平板状の薄板が保持される薄板搬送装置であって、一対の前記突状体は、搬送方向に沿って互いに対向する傾斜面をそれぞれ備え、前記傾斜面には、複数の係止微細突起が傾斜方向に連設されており、一対の前記突状体の前記係止微細突起が薄板の搬送方向両側端面にそれぞれ当接して薄板を保持するように構成されている薄板搬送装置により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反りを有する薄板であっても簡易な構成により確実に高速搬送することができる薄板搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る薄板搬送装置の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】突状体による薄板の保持状態を示す側面図である。
【図5】突状体による薄板の他の保持状態を示す側面図である。
【図6】突状体の変形例を示す側面図である。
【図7】突状体の要部を拡大して示す側面図である。
【図8】図7の突状体による薄板の保持状態を示す要部拡大図である。
【図9】図7の突状体の変形例を示す平面図である。
【図10】図9の突状体を矢示A方向に見た図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る薄板搬送装置を搬送方向後方側から見た図である。
【図12】図11に示す薄板搬送装置の要部を示す側面図である。
【図13】図11に示す薄板搬送装置の他の要部を示す側面図である。
【図14】図11に示す薄板搬送装置の更に他の要部を示す側面図である。
【図15】図11に示す薄板搬送装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る薄板搬送装置の側面図であり、図2は、図1の平面図である。図1に示すように、薄板搬送装置100は、駆動プーリ112および従動プーリ114に無端状の搬送ベルト116が巻き掛けられたベルトコンベア110と、搬送ベルト116の表面に複数設けられた薄板保持部120とを備えている。薄板保持部120は、搬送ベルト116の全周にわたって、長手方向に沿って等間隔に配置されている。薄板搬送装置100の搬送方向両側には、搬送ベルト116の直上に位置するように、薄板搬入装置151および薄板搬出装置152が設けられている。薄板搬入装置151および薄板搬出装置152は、吸盤やベルヌーイチャック等の薄板吸着部151a,152aを備えており、薄板吸着部151a,152aの上下動により、薄板搬送装置100に対して薄板の搬入および搬出を行うことができる。
【0014】
薄板保持部120は、搬送ベルト116の搬送方向(矢示A方向)に間隔をあけて配置された一対の突状体121,121を備えている。突状体121,121は、図2に示すように、薄板Tの搬送方向前後の縁部中央を保持する。駆動プーリ112は、搬送ベルト116を駆動して一対の突状体121,121を水平搬送する。
【0015】
図3は、図1の要部拡大図であり、薄板保持部120の一つを示している。突状体121は、本体部122の上面にシート体123が着脱可能に貼着されて構成されており、本体部122の傾斜する上面に沿ってシート体123が貼着されることで、シート体123の表面が傾斜面124を構成している。図3においては明記していないが、傾斜面124には、段差が0.1mm程度の微細な階段状となるように複数の係止微細突起が形成されている。この係止微細突起については、後に詳述する。
【0016】
本体部122は、歯付きベルトからなる搬送ベルト116の歯部116aと略同じ幅を有する取付部122aを下面側に備えており、取付部122aが搬送ベルト116の表面に溶着等により固定されている。搬送ベルト116が例えばウレタンベルトである場合、本体部122も同じ材料であることが好ましく、溶着により本体部122を搬送ベルト116に確実に固定することができる。一方、シート体123は、ウエハを確実に保持できるようにウエハとの間に適度な摩擦力が生じる材料が好ましく、例えばエチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)を好適に使用することができる。シート体123は、摩擦力の低下や摩耗などが生じた場合に交換できるように本体部122に着脱自在としているが、本体部122に分離不能に設けてもよい。また、シート体123は必須のものではなく、本体部122にウエハが直接載置されるように、本体部122の上面を傾斜面124としてもよい。この場合、本体部122自体が、耐振ゴム等のゴム材や樹脂のように薄板Tとの摩擦抵抗が大きい材質からなることが好ましい。
【0017】
各傾斜面124,124は、搬送方向に沿って互いに対向するように、すなわち突状体121,121の基部側(搬送ベルト116側)から先端側に向けて互いの間隔が拡がるように、傾斜しており、搬送ベルト116の表面に対する傾斜角度が一定となるように(側面視で直線状に傾斜するように)、テーパ状に形成されている。傾斜面124,124の基部側は、本実施形態では搬送ベルト116の表面に対して垂直な起立部122b,122bと連接しており、突状体121,121の側面視が台形状に形成されている。突状体121は、例えば側面視が三角形状に形成されていてもよく、薄板Tの縁部を保持する傾斜面124を備える構成であれば、形状は特に限定されない。
【0018】
上記の構成を有する薄板搬送装置100によれば、搬送対象となる太陽電池用ウエハ等の薄板Tを薄板保持部120に載置すると、薄板Tは、搬送方向前後の縁部がそれぞれ傾斜面124,124に位置する。このため、薄板Tに反りが生じていた場合でも、薄板Tの縁部端面を傾斜面124のいずれかの位置で係止微細突起に当接させることができるので、一対の突状体121,121間に薄板Tを確実に保持して搬送することができる。すなわち、図4(a)に示すように薄板Tが平坦である場合の水平方向長さL1に比べて、図4(b)および(c)に示すように薄板Tが上に凸または下に凸となる反りを有する場合の水平方向長さL2,L3は短くなるが、傾斜面124,124が基部側から先端側に向けて互いの間隔が拡がるように傾斜しているため、傾斜面124,124の間隔が水平方向長さL2,L3に等しい高さ位置に、薄板Tを保持することができる。また、大きさが異なる種々の薄板Tを搬送する場合でも、薄板Tの大きさに応じた高さ位置で、一対の突状体121,121間に薄板Tを保持することができる。したがって、薄板Tの大きさや搬送方向の反りの大きさに関わらず、一対の突状体121,121の係止微細突起を薄板Tの搬送方向両側端面に確実に当接させて、薄板Tを略水平な状態で搬送することができる。係止微細突起は、傾斜面124の全体に形成されていてもよく、或いは、傾斜面124において、薄板Tの縁部が通常配置される箇所の近傍に部分的に形成されていてもよい。
【0019】
また、本実施形態のように、傾斜面124,124の傾斜角度を一定にすることで、傾斜面124,124の基部側から先端側への間隔の拡がりも一定になるので、薄板Tの保持をより確実にすることができる。搬送ベルト116の表面に対する傾斜面124の傾斜角度(図3のα)は、大きくなるほど、薄板Tの縁部端面を傾斜面124の係止微細突起に当接させ易くなる一方で、薄板Tの搭載位置が前後にずれた時の薄板Tの傾きが大きくなり(例えば図5に示す状態)、図1に示す吸着面が水平な薄板吸着部152aによる薄板Tの搬出が困難になる。これに対し、傾斜角度αが小さくなるほど、薄板Tを水平な状態に保持し易く搬出が容易になる一方で、薄板Tの縁部端面が傾斜面124の係止微細突起に当接し難くなり、搬送ベルト116の加減速時に薄板Tの位置ずれが生じ易くなる。傾斜角度αは、5°以上であることが好ましく、傾斜角度αを10°以上に設定することで、従来の真空吸着方式の搬送装置と比較した場合に、同等の搬送時間で太陽電池用のウエハを確実に搬送することが可能である。一方、薄板Tの搬出にベルヌーイチャックを使用する場合には、負圧を生じさせるための空気流量をなるべく少なくして、薄板Tに発生する吸着時の衝撃や吸着中の応力を低減することが好ましいことから、傾斜角度αは15°以下が好ましく、10°以下がより好ましい。傾斜角度αを小さくすることは、薄板吸着部151a,152aの上下動ストロークを小さくして搬送効率を高める上でも好ましい。以上より、傾斜角度αは10°程度に設定することが好適である。
【0020】
但し、傾斜角度αは必ずしも一定である必要はなく、例えば、図6に示すように、傾斜面124を下に凸となるように円弧状に形成することで、薄板Tの反りの向きに関わらず、薄板Tの縁部を傾斜面124の係止微細突起に当接させ易くして、所定位置に確実に保持することもできる。
【0021】
図7は、一方の突状体121の要部を示す側面図であり、傾斜面124の搬送方向両端部の近傍を拡大して示している。図7に示す突状体121は、図3に示すシート体123を備えておらず、本体部122の上面が傾斜面124とされている。傾斜面124には、複数の係止微細突起128が設けられており、各係止微細突起128は、傾斜面124の傾斜方向に沿って鋸歯状に連設されている。各係止微細突起128の形状や大きさは、薄板の端面と当接可能であれば特に限定されず、複数の係止微細突起128間で互いに相違してもよいが、本実施形態の係止微細突起128のように、いずれも略同じ形状・大きさの側面視三角形状として、各頂部128cが傾斜面124に沿って等間隔に並ぶように形成することが好ましい。各係止微細突起128は、本実施形態のように連続して連なることが好ましいが、隣接する係止微細突起128の間に若干の隙間が形成されていてもよい。各係止微細突起128の大きさは特に限定されないが、薄板を確実に保持すると共に、薄板が保持される係止微細突起128が搬送中に万一ずれた場合にも薄板を略水平状態に維持できるように、搬送方向に沿った水平長さを0.5〜1mm程度に設定することが好ましい。
【0022】
係止微細突起128は、傾斜面124から立ち上がる当接面128aと、当接面128aの上縁から傾斜面124に向けて延びる受け面128bとを備えている。当接面128aおよび受け面128bは、本実施形態では平面状としているが、湾曲面であってもよい。
【0023】
当接面128aは、薄板の端面と当接して薄板を保持する。当接面128aは鉛直面Vと平行であってもよいが、図7に示すように、鉛直面Vに対して若干外方に拡がるように形成されることが好ましく、これによって当接面128aが薄板の端面に密着し過ぎることを防止して、薄板吸着部152a(図1参照)による搬出時に薄板をスムーズに引き上げることができる。すなわち、傾斜面124,124が互いに対向する一対の突状体121,121間で、それぞれの当接面128aが、傾斜面124に近い基部側から先端側に向けて互いの間隔が拡がるように形成されていることが好ましい。図7に示す鉛直面Vと当接面128aとのなす角度βは、小さすぎると、当接面128aと薄板端面との密着を抑制しにくくなる一方、大きすぎると、当接面128aによる薄板の保持力が弱まることから、0〜20°の範囲が好ましく、本実施形態では角度βを10°としている。
【0024】
受け面128bは、水平面Hと平行であってもよく、あるいは図7に示すように、外方に向けて斜め下方に傾斜するように形成してもよい。このような構成によれば、図8に示すように、水平な薄板Tの端面T1が、一の係止微細突起128の当接面128aに当接した状態で、この係止微細突起128と内方側(薄板側)に隣接する他の係止微細突起128により薄板Tの下面を支持することができる。したがって、突状体121による薄板Tの保持をより確実に行うことができる。
【0025】
また、図7に示すように、受け面128bを、外方に向けて斜め下方に傾斜するように形成することで、係止微細突起128の頂部128cが薄板Tの下面に当接し、薄板Tの下面と受け面128bとの間に空間sが形成される。したがって、薄板Tに付着していた微細な異物や薄板Tの欠け等により生じた粉状物等が傾斜面124に落下しても、これらの異物等を上記空間s内に確実に収容して薄板Tの保持の妨げとなるのを防止することができる。
【0026】
図7に示す水平面Hと受け面128bとのなす角度γは、小さすぎると、上記空間sの収容量が不十分になり易い一方、大きすぎると、薄板の端面を当接面128aに当接させ難くなることから、3〜20°の範囲が好ましく、本実施形態では角度βを10°としている。
【0027】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図2に示す一対の突状体121,121は、薄板Tの搬送方向両側端面の中央部を保持するように構成しているが、薄板Tの搬送方向両側端面の幅方向両側を保持するように構成することもできる。
【0028】
図9および図10は、このような構成を備える突状体121の一例を示しており、図9は矢示A方向に搬送される突状体121の平面図、図10は図9の突状体121を矢示A方向に見た図である。図9および図10に示すように、突状体121の上面には、搬送方向に向けて斜め上方に傾斜する傾斜面124が形成されており、複数の係止微細突起128が傾斜面124の傾斜方向に連設されている。突状体121の幅方向中央部には、搬送方向の全体にわたって切欠部129が形成されている。このように構成された突状体121は、図10に示すように、破線で示す薄板Tの搬送方向両側端面における幅方向両側を係止微細突起128に当接させることができるので、薄板Tに幅方向の反りが生じていた場合でも、薄板Tの幅方向両側を確実に保持して搬送することができる。
【0029】
また、上記各実施形態においては、搬送ベルト116に一対の突状体121,121を設けて、搬送ベルト116の駆動により一対の突状体121,121に保持された薄板Tを水平搬送するように構成しているが、一対の突状体121,121が設けられる搬送体としては、搬送ベルト116に限定されるものではなく、一対の突状体121,121を水平搬送可能な構成であれば、他の搬送体であってもよい。
【0030】
図11は、本発明の他の実施形態に係る薄板搬送装置を搬送方向後方側から見た図であり、所定のストロークで水平方向に往復動可能な搬送ビームを搬送体として用いた場合の一例を示すものである。また、図12、図13および図14は、図11における矢示X方向の要部側面図である。なお、図11においては、理解を容易にするために、一部の構成要素を省略して記載している。
【0031】
図11に示すように、薄板搬送装置1は、床面Fに設置されたフレーム2の上部に、太陽電池基板などの薄板Tを搬送方向(図面を貫通する方向)に移動させる搬送ビーム10と、この搬送ビーム10との間で薄板Tの受け渡しを行う受け台20とが、支持されている。搬送ビーム10は、搬送方向に沿って延びる上下動ビーム11と、上下動ビーム11に支持された往復動ビーム12とを備えている。
【0032】
上下動ビーム11は、上方に突出するガイド部11aを備えている。また、往復動ビーム12は、ガイド部11aを収容する溝12aを備えており、上下動ビーム11の長手方向に沿って摺動可能とされている。往復動ビーム12の上面には、一対の突状体121,121を備える薄板保持部120が、長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。一対の突状体121,121の構成については、上記各実施形態で示したように、搬送ベルト116に設ける場合と同様の構成を採用することができる。
【0033】
受け台20は、搬送ビーム10の両側に沿って延びる一対のビーム台21,21と、これらビーム台21,21を支持する上向きコ字状のブラケット22とを備えている。ビーム台21には、上方に突出する支持突起21aが複数設けられており、一対のビーム台21,21により薄板Tの周縁部を4点で支持できるように構成されている。
【0034】
上下動ビーム11、往復動ビーム12および受け台20は、一端側にタイミングプーリ3が設けられたカム軸4の回転によって駆動される。
【0035】
図11および図12に示すように、カム軸4には、上下動カム41(図12では基礎円を2点鎖線で示す)が取り付けられており、主レバー411に設けられたカムフォロア412が上下動カム41に外接するように構成されている。
【0036】
主レバー411は、カム軸4の上方に配置された上側レバー軸413に対してベアリング(図示せず)を介して空転するように取り付けられており、上側レバー軸413を中心として図12の矢示方向に揺動し、垂直バー414を介して上下動ビーム11を上下動させる。また、主レバー411は、水平バー415を介して副レバー416(図11では不図示)に連結されており、副レバー416は、主レバー411の揺動に伴い固定支点417を中心として揺動し、垂直バー418を介して上下動ビーム11を上下動させる。こうして、上下動カム41の回転により、上下動ビーム11の長手方向全体が上下動する。
【0037】
図12に示すように、タイミングプーリ3には、タイミングベルト5を介して駆動モータ6に連結されており、駆動モータ6の作動によりカム軸4が回転駆動される。
【0038】
また、図11および図13に示すように、カム軸4には、第1往復動カム42および第2往復動カム43(図13ではそれぞれの基礎円を2点鎖線で示す)が取り付けられており、第1往復動カム42には第1レバー421のカムフォロア422が外接し、第2往復動カム43には第2レバー423のカムフォロア424が外接するように構成されている。第1レバー421および第2レバー423は、カム軸4の下方に配置された下側レバー軸425に一体的に取り付けられており、第1レバー421と第2レバー423との間が側面視において一定の角度を維持したまま、下側レバー軸425を回転中心として図13の矢示方向に揺動する。
【0039】
下側レバー軸425には、長尺レバー426の一端側が取り付けられており、長尺レバー426の他端側には係合突部426aが設けられている。係合突部426aは、往復動ビーム12から垂下するブラケット12cの長孔12dに係合する。これにより、第1レバー421と第2レバー423の揺動に伴い長尺レバー426も揺動し、往復動ビーム12が上下動ビーム11に沿って図13の矢示方向に往復動する。
【0040】
また、図11および図14に示すように、カム軸4には、受け台カム44(図14では基礎円を2点鎖線で示す)が取り付けられており、主レバー441に設けられたカムフォロア442が受け台カム44に外接するように構成されている。
【0041】
主レバー441は、上側レバー軸413に取り付けられており、同じく上側レバー軸413に取り付けられた副レバー443と一体的に回転する。副レバー443は、上側レバー軸413を中心として揺動し、垂直バー444を介して支持バー445を上下動させる。支持バー445の上面には、フレーム2に支持されたガイド筒2a,2aを貫通する複数の上下動ロッド446,446が設けられており、上下動ロッド446の先端は、受け台20のブラケット22の下面に連結されている。また、主レバー441は、水平バー447を介して他の副レバー448(図11では不図示)に連結されており、副レバー448は、固定支点449を中心として揺動し、垂直バー450を介して支持テーブル445に連結されている。こうして、受け台カム44の回転により、受け台20が図14の矢示方向に上下動する。
【0042】
本実施形態の搬送装置1によれば、共通するカム軸4に取り付けられた上下動カム41、第1往復動カム42および第2往復動カム43、および、受け台カム44によって、上下動ビーム11の上下動、往復動ビーム12の往復動、および、受け台20の上下動が、一定のタイミングで行われる。この動作を、図15に示すタイミングチャートに基づき説明する。なお、図15の横軸は、カム軸4が一回転する間の角度位置を表している。
【0043】
往復動ビーム12と受け台20との間における薄板Tの受け渡しは、上下動ビーム11および受け台20がいずれも上方位置にあるときに行われる。このとき、受け台20は、図11に示す位置から上昇して支持突起21aが薄板Tの下面に当接しており、薄板Tが、一対の突状体121,121および支持突起21aにより支持された状態になる(状態a)。状態aでは、往復動ビーム12は後方位置にある。
【0044】
カム軸4が状態aから角度θ1だけ回転すると、受け台20が下降を開始する。受け台20が下方位置に到達した状態(状態b)では、図11に示すように、薄板Tが一対の突状体121,121のみに保持される。
【0045】
状態bからカム軸4が角度θ2だけ回転すると、往復動ビーム12は前方へ移動し、薄板Tが1ストローク分搬送される。薄板Tが前方位置まで移動すると(状態c)、受け台20が上昇を開始する。こうして、受け台20が上方位置に到達すると(状態d)、薄板Tが、一対の突状体121,121および支持突起21aにより再び支持され、薄板Tの受け渡しが可能になる。
【0046】
カム軸4が状態dから角度θ3だけ回転すると、上下動ビーム11が下降を開始し、薄板Tが受け台20のみにより支持された状態になる。上下動ビーム11が下方位置に到達すると(状態e)、往復動ビーム12は後方へ移動する。そして、往復動ビーム12が後方位置まで移動すると(状態f)、上下動ビーム11が上昇して再び状態aになる。
【0047】
このように、本実施形態の薄板搬送装置1によれば、一対の突状体121,121と受け台20との間における薄板Tの受け渡しを、それぞれが静止した状態(図15の状態aおよび状態d)で行うことができるので、受け渡し時に薄板Tが衝撃を受けるおそれがなく、薄板Tの損傷を防止することができる。
【0048】
また、一対の突状体121,121は、薄板Tを確実に保持して水平搬送することができるので、従来のように薄板Tを吸引保持するための真空ポンプやバルブ等の構成が不要であり、構成を簡素化しつつ薄板Tを高速搬送することができる。
【0049】
一対の突状体121,121が設けられる搬送ビームは、上述した構成のものに限られず、固定ビームと搬送ビームとの間で薄板の受け渡しを行いながら水平搬送を行う公知のウォーキングビーム式搬送装置において、水平方向に往復動可能な搬送ビームに一対の突状体121,121を設けることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1,100 薄板搬送装置
10 搬送ビーム
110 ベルトコンベア
112 駆動プーリ
114 従動プーリ
116 搬送ベルト
120 薄板保持部
121 突状体
124 傾斜部
128 係止微細突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送体と、前記搬送体に設けられた一対の突状体と、前記搬送体の駆動により一対の前記突状体を水平搬送する駆動手段とを備え、一対の前記突状体間に平板状の薄板が保持される薄板搬送装置であって、
一対の前記突状体は、搬送方向に沿って互いに対向する傾斜面をそれぞれ備え、
前記傾斜面には、複数の係止微細突起が傾斜方向に連設されており、
一対の前記突状体の前記係止微細突起が薄板の搬送方向両側端面にそれぞれ当接して薄板を保持するように構成されている薄板搬送装置。
【請求項2】
一対の前記突状体の前記係止微細突起は、薄板の端面とそれぞれ当接する当接面が、基部側から先端側に向けて互いの間隔が拡がるように形成されている請求項1に記載の薄板搬送装置。
【請求項3】
複数の前記係止微細突起は、一の前記係止微細突起が薄板の端面と当接した状態で、他の一の前記係止微細突起が薄板との間に空間を形成して薄板の下面を支持するように配置されている請求項1または2に記載の薄板搬送装置。
【請求項4】
前記搬送体は、駆動プーリおよび従動プーリに巻き掛けられた無端状の搬送ベルトである請求項1から3のいずれかに記載の薄板搬送装置。
【請求項5】
前記搬送体は、所定のストロークで水平方向に往復動可能な搬送ビームである請求項1から3のいずれかに記載の薄板搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−184196(P2011−184196A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170032(P2010−170032)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【特許番号】特許第4628496号(P4628496)
【特許公報発行日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(505095224)
【Fターム(参考)】