説明

複合シールド組立体、蒸着チャンバー及び高出力蒸着装置

【課題】ワークピースの配置場所を画成する蒸着装置において長期の高出力作動が可能となるシールド組立体を提供する。
【解決手段】複合シールド組立体10は、ワークピースの配置場所の周囲に置かれる第1シールド要素13と、第1シールド要素13の周りに延在して第1シールド要素13を保持する第2シールド要素14であって、第1シールド要素13の熱伝導率が当該第2シールド要素14の熱伝導率よりも大きく、第1シールド要素13及び当該第2シールド要素14が、熱的接触を密接にするように配置される、第2シールド要素14とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シールド組立体、蒸着チャンバー及び高出力蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド設計はPVD工具の信頼性の高い作動において重要な一つの要因である。シールドは、蒸着材料を閉じ込めることによって、例えばチャンバー壁上の蒸着を回避し、できるだけ長い間、理想的には全目標寿命の間、パーティクルを放出することなくこの材料を保持しなければならず、且つ、取り替えが容易で、安価であり、ウエハー上のフィルムコーティングに悪影響を与えないことが必要である。
【0003】
典型的には、ステンレス鋼シールドが、構築されうる堅固且つ比較的複雑な組立体としてPVDシステムにおいて使用され、この組立体は、プロセスチャンバー内に容易に設置されることができ、且つ、洗浄されて再使用されることができるので比較的コスト効率が良い。
【0004】
高出力すなわち30kWよりも大きな出力の蒸着プロセスが実行されると、(ステンレス鋼が、比較的弱い熱伝導体であるという事実のせいで)ステンレス鋼シールドにおける熱負荷によって歪みが生じることがあり、次いで歪みはパーティクルがシールドから放出されることを引き起こす。このことは標準的な作動条件にとって許容されない。シールドが、より良好な熱特性を有する金属、例えばアルミニウムから作られうるが、このことは、製造コストを高くし、且つ洗浄するのに実際的ではない傾向がある。アルミニウムを洗浄することは困難であり、(例えばウエハー上にフィルムを均一に維持すべく)厳しい寸法公差が重要であるとき、材料を再使用することは実際的ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複合シールド組立体を使用することによって高出力蒸着プロセスについての実際的な解決策を提供しようとする。複合シールド組立体はステンレス鋼部品及びアルミニウム部品の両方を使用し、これら両部品はシステム内に設置されると単一の組立体として振る舞う。熱負荷が高い領域では、アルミニウムが使用される。このことによって、優れたプロセス性能を維持しつつ長期の高出力作動が可能となる。シールドが交換されるべきとき、アルミニウム部分は廃棄されることができ、一方、ステンレス鋼組立体は洗浄されて再使用される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明の第1態様では、ワークピースの配置場所を画成する蒸着装置において使用される複合シールド組立体であって、
ワークピースの配置場所の周囲に置かれる第1シールド要素と、
第1シールド要素の周りに延在して第1シールド要素を保持する第2シールド要素であって、第1シールド要素の熱伝導率が当該第2シールド要素の熱伝導率よりも大きく、第1シールド要素及び当該第2シールド要素が、熱的接触を密接にするように配置される、第2シールド要素と
を含む、複合シールド組立体が提供される。
【0007】
シールド要素がバルク構造(bulk structure)であり只のコーティングではないことが理解されるであろう。
【0008】
第1シールド要素はアルミニウム又はアルミニウム合金であり、第2シールド要素はステンレス鋼でありうる。第1シールド要素は第2シールド要素内に圧入され又は摩擦嵌合されうる。
【0009】
本発明は、ワークピースの配置場所と、上記に定義されたような組立体とを含む蒸着チャンバーも含む。
【0010】
第2シールド要素は第1シールド要素をチャンバーの壁上に取り付けうる。第1シールド要素は、シャドーシールドを構築すべくワークピースの配置場所の周囲に位置しうる。第2シールド要素はチャンバーの一部についてシールドを形成しうる。
【0011】
本発明が上記に定義されてきたが、本発明が、上述された特徴又は以下の説明における特徴のあらゆる独創的な組合せを含むことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、物理気相成長(PVD)チャンバーの一部の半分を通した鉛直断面図である。
【図2a】図2aは、シールド組立体のアルミニウム要素の斜視図である。
【図2b】図2bは、シールド組立体の上方からの図である。
【図2c】図2cは、図2bにおける線A−Aの断面図である。
【図3】図3は、目標寿命の関数としての厚さ均一性のグラフである。
【図4】図4は、ウエハーエッジに関する蒸着厚を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は様々な態様において行われることができ、以下、添付図面を参照して特定の実施形態が例によって記述される。
図1は、PVDプロセスチャンバー11における複合組立体10を示す。Alシールド要素13が、熱流束がシールドについて典型的には最大である領域において、ウエハー配置場所16のウエハー12よりも上に配置される。シールド要素13はシャドーシールドとして作用する。Alシールド要素13は、組立体10を形成すべくステンレス鋼シールド要素14によってそこに保持される。ステンレス鋼シールド要素14はチャンバー11の壁15に沿って延在し且つAlシールド要素13の下に延在する。複合材の全利点が実現されることを確実なものとすべく、部品は非常にきつく嵌合(図2において示されるような圧入(スペック+0.1mm〜+0.3mm))される必要がある。すなわち、Al13とステンレス鋼14との間の結合は密接になる(intimate)必要がある(シールドが熱くなるにつれて、Alシールド要素13はステンレス鋼要素14内に膨張して更に良好な熱的接触が提供される)。蒸着サイクルの間に発生せしめられる熱の最適な消散のために、外側のステンレス鋼シールドとプロセスチャンバーの内壁との間の接触が実現される必要がある。このことは、完全なシールドが単にAlのみから作られる場合、Alがプロセスチャンバー壁に溶接(例えば摩擦溶接)されてメンテナンス中に取り外されることが非常に困難である傾向があるので、深刻な問題となりうることに留意されたい。Alシールド要素13は、チャンバーの効率的なポンプ排水(pumping)を可能とすべく多数の開口15を有する。
【0014】
図3は、3μm、40kWの高出力Al(Cu)蒸着について、1100kWhrsに亘るシールドの優れた均一性能を示す。
【0015】
ウエハーエッジに近接したシールド(すなわちAlシールド要素13)の歪みはウエハーのエッジにおける蒸着の厚みに悪影響を及ぼすであろう。図4が均一性を示すように、エッジの均一性は5mmのエッジ排他値(exclusion value)で1100kWhrsに亘って所望の100%レベルに維持される。
【0016】
以下のことが留意されるべきである。
1)圧入部品は、一旦熱的に循環されると、単一部品のように振る舞う。
2)ウエハーに近接しているAlリングと、Alチャンバー壁15と接触しているステンレス鋼の配置場所とのおかげで、シールドの熱的性能は従来のステンレス鋼部品を超えて改善される。このことによって、高出力の蒸着プロセスが、斯かる設計ではない場合よりも長く稼働することが可能となる。
3)一旦シールドが交換される必要があると、Alシールド13は取り替えられ、一方、ステンレス鋼の外側シールドは洗浄されて再利用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの配置場所を画成する蒸着装置において使用される複合シールド組立体であって、
前記ワークピースの配置場所の周囲に置かれる第1シールド要素と、
該第1シールド要素の周りに延在して該第1シールド要素を保持する第2シールド要素であって、前記第1シールド要素の熱伝導率が当該第2シールド要素の熱伝導率よりも大きく、前記第1シールド要素及び当該第2シールド要素が、熱的接触を密接にするように配置される、第2シールド要素と
を含む、複合シールド組立体。
【請求項2】
前記第1シールド要素がアルミニウム又はアルミニウム合金であり、前記第2シールド要素がステンレス鋼である、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記第1シールド要素が前記第2シールド要素内に圧入され又は摩擦嵌合される、請求項1又は2に記載の組立体。
【請求項4】
ワークピースの配置場所と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組立体とを含む、蒸着チャンバー。
【請求項5】
前記第2シールド要素が前記第1シールド要素を当該チャンバーの壁上に取り付ける、請求項4に記載のチャンバー。
【請求項6】
前記第1シールド要素が、シャドーシールドを形成すべく前記ワークピースの配置場所の周囲に位置する、請求項4又は5に記載のチャンバー。
【請求項7】
前記第2シールド要素が当該チャンバー壁の一部についてシールドを形成する、請求項4〜6のいずれか1項に記載のチャンバー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組立体を含む、高出力蒸着装置。
【請求項9】
30kWよりも大きな供給のための出力供給源を有する、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−167369(P2012−167369A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27506(P2012−27506)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(512035033)エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】