説明

複合成形品の製造方法

【課題】成形サイクル時間の短縮が可能であり、安定的に良好な密着性を有する液晶性ポリマーと金属の複合成形品を提供する。
【解決手段】液晶性ポリマーと金属部品との複合成形品の製造方法であって、
(1)成形用金型が、成形機との連動性を制御するための主型と、温度制御のための加熱用回路と冷却用回路を有する液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分を内部に包含する駒型に分割され、
(2)成形用金型の成形時に樹脂が流入して接する部分が十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以下に表面処理され、駒型の容積を60cm以下にし、駒型の主型に接する外周部が断熱処理された状態で主型に駒型が埋め込まれた成形用金型を用い、
(3)成形用金型内に金属部品を設置し、駒型の金型温度を特定範囲に加熱した状態で液晶性ポリマーを射出充填し、成形用金型内に液晶性ポリマーが充填完了した後、直ちに駒型の加熱用回路を遮断すると共に駒型の冷却用回路により7℃/秒以上の冷却速度で急速冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性ポリマーと金属部品との複合成形品の製造方法に関し、詳しくは、液晶性ポリマー−金属部品間の優れた密着性を確保すると共に成形サイクルを向上させた複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インサート成形品に代表される樹脂と金属とから構成される複合成形品は、電機・電子部品、自動車部品等の製造に利用されている。しかし、金属インサートと樹脂界面の密着は通常の成形法では充分ではなく抜け落ちや界面からの気体・液体の漏れの原因となってしまう。このような欠点を改善するために、金属を表面処理することにより凹凸を形成させ、そこに溶融樹脂を射出する方法が知られている。この方法によれば、界面の密着性に優れた樹脂と金属の複合成形品が得られるが、表面処理に薬品を使用することから、設備導入や薬液の管理など、実質的な導入にはコストアップ等から難しい点が多い。
【0003】
また、インサート加熱による密着性の向上手法として、1)予め加熱した金属を金型に収めた後、射出成形を実施する、2)金型内で電気ヒーターや電磁誘導等の加熱手段を利用してインサート金属を加熱し、射出成形を実施する、3)金型温度を高温に保持し、射出成形後に冷却に切り替える成形方法、などが提案されているが、1)、2)では加熱完了後の射出までの時間によってインサート金属の温度が低下しやすく、特に小物、薄物のインサートではその効果を得ることが困難であった。また、3)については、加熱冷却において、金型全体の温度をコントロールする必要があり、熱容量の大きなヒーターと冷却システムを要すると共に、成形が非常に長くなることが問題となっていた。
【0004】
更に、特許文献1では、インサート加熱方法によって、融点以上に加熱した系内に溶融樹脂を流し込み、圧力を保持し、更に温度を低下させると共に負荷圧力を上げるというコントロールの実施により、樹脂と金属の密着性を向上させる手法が提案されているが、温度や圧力を厳密に制御することが求められ、付帯設備も増加する傾向にあり、実用性に富むものとは言えない。また、特許文献1は、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン等を想定したものであり、液晶性ポリマーの場合は、特許文献1の方法では樹脂と金属の密着性の良好な複合成形品を得ることができない。
【0005】
一方、特許文献2には、ダイヤモンド状炭素被膜により表面処理された金型を用いることにより、金属−樹脂間の密着強度を向上することが提案されているが、実用的な成形サイクル時間で成形することができないという課題があった。
【特許文献1】特開2001−1382号公報
【特許文献2】特開2005−342922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解決し、成形サイクル時間の短縮が可能であり、安定的に良好な密着性を有する樹脂と金属の複合成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、成形用金型の温度等を特定条件に制御して成形すること、及びそのためには特定構造の成形用金型を用いることが極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、液晶性ポリマーと金属部品との複合成形品の製造方法であって、
(1)成形用金型が、成形機との連動性を制御するための主型と、温度制御のための加熱用回路と冷却用回路を有する液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分を内部に包含する駒型に分割され、
(2)成形用金型の成形時に樹脂が流入して接する部分が十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以下に表面処理され、駒型の容積を60cm以下にし、駒型の主型に接する外周部が断熱処理された状態で主型に駒型が埋め込まれた成形用金型を用い、
(3)成形用金型内に金属部品を設置し、駒型の金型温度Tを(液晶性ポリマーの融点−95℃)≦T<(液晶性ポリマーの融点)の温度範囲に加熱した状態で液晶性ポリマーを射出充填し、成形用金型内に液晶性ポリマーが充填完了した後、直ちに駒型の加熱用回路を遮断すると共に駒型の冷却用回路により7℃/秒以上の冷却速度で急速冷却する
ことを特徴とする複合成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来手法では不十分であった液晶性ポリマー−金属間の密着性の改良された複合成形品を製造することが可能になった。また、従来手法よりも簡便な温度制御により、より短い成形サイクルで、液晶性ポリマー−金属間の優れた密着性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[金属部品]
本発明で使用する金属部品は、材質には特に制限はなく、銅、アルミ、鉄などの金属、燐青銅、ステンレスなどの合金、異種金属の貼合わせ体、これらのメッキ処理品などが挙げられる。ステンレスは、マルテンサイト系、オーステナイト系などが挙げられる。
【0011】
本発明で使用する金属部品は、所定形状に加工された形状物であって、その形状に特に制限はない。また、金属部品がインサート部品である場合にも、その形状には特に制限はなく、一つのインサート部品の両端が成形品の外部に露出あるいは突出しているもの、例えば電気・電子部品の端子などが挙げられる。
【0012】
金属部品は、一般的に、圧延板等ではそのものが細かい凹凸を有しており、特別な粗化処理を行わなくても密着が可能であるが、表面を粗化処理等することにより更に密着性を良くするための表面加工を施すことはより好ましい。粗化処理としては、表面研磨や、メッキやエッチング処理などによる多孔質状にする処理方法が挙げられる。
[金型]
本発明では、成形用金型として、成形機との連動性を制御するための主型と、温度制御のための加熱用回路と冷却用回路を有する液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分を内部に包含する駒型に分割して構成されたものを用いる。
【0013】
液晶性ポリマー−金属間の密着性を向上させるには、液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分の金属部品の温度制御が重要であり、その温度制御を駒型を通して制御するため、液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分を内部に包含するように駒型を設計する必要がある。
【0014】
主型と駒型を分割し、主型はある一定の温度に保持しておき、駒型のみを温度制御することにより、瞬時の温度変化が可能となり、成形サイクルの短縮が可能となるのである。ここで、主型と駒型を分割するだけでは、目的の成形サイクルの短縮は図れず、駒型の容積を60cm以下にし、駒型の主型に接する外周部を断熱処理する必要がある。断熱処理としては、断熱層を設ける等の方法が簡便である。駒型の容積が60cmを超えると通常の設備では成形サイクルが長くなり好ましくない。
【0015】
また、駒型が主型に駒型が埋め込まれた状態で成形されるのであるが、断熱層を設けないと、駒型の瞬時の温度変化が不可能で、成形サイクルの短縮が図れない。
【0016】
通常、断熱層としては断熱板が用いられるが、エアキャップ等の断熱層であっても構わず、特にこの方法に限定されるものではない。断熱板としては、ガラス強化ポリエステル、ガラスエポキシ積層板、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0017】
また、本発明で使用する成形用金型は、主型及び駒型の成形時に樹脂が流入して接する部分が十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以下に表面処理されていることが必要である。十点平均粗さ(Rz)が0.5μmより大きいと、樹脂が金型(駒型)に密着してしまい、離型不良により良好な複合成形品が得られない。表面処理の方法としては、表面粗さが上記範囲内になれば、何れの表面処理でも良いが、具体的にはダイヤモンド状炭素被膜(DLC)、CrN、Crメッキ等の表面処理が挙げられ、耐蝕耐磨性等からダイヤモンド状炭素被膜による表面処理が好ましい。
[金属部品の加熱]
本発明では、成形用金型内に金属部品を設置し、液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分を内部に包含する駒型の金型温度Tを(液晶性ポリマーの融点−95℃)≦T<(液晶性ポリマーの融点)の温度範囲に加熱した状態で液晶性ポリマーを射出充填する。駒型の金型温度Tを(液晶性ポリマーの融点−95℃)≦T<(液晶性ポリマーの融点)の温度範囲にすることにより、十分な液晶性ポリマー−金属間の密着性を得ることができる。駒型の金型温度が(液晶性ポリマーの融点−95℃)より低いと液晶性ポリマーと金属部品の密着性が低下し、液晶性ポリマーの融点以上の場合は、金型内で樹脂が固化しにくくなり、成形工程上問題が生じる場合があり好ましくない。
【0018】
また、液晶性ポリマーが金属部品の周囲に充填され、液晶性ポリマーが加熱された金属部品に射出圧力で十分押し付けられる必要があり、その前に、金属部品の温度が上記温度より低下すると、液晶性ポリマーと金属部品との間の密着力が不十分となる問題が生じる。そのため、液晶性ポリマーを射出充填し、成形用金型内に液晶性ポリマーが充填完了した後に、直ちに駒型の加熱用回路を遮断すると共に駒型の冷却用回路により7℃/秒以上の冷却速度で急速冷却することが必要である。これにより短時間で液晶性ポリマーと金属部品を密着させることが可能となる。
[成形用金型の加熱方法]
成形機との連動性を制御するための主型、温度制御のための加熱用回路と冷却用回路を有する駒型とも、加熱方法としては、通常金型を加熱する方法である発熱体により加熱する方法、熱媒体により加熱する方法等が挙げられる。
【0019】
発熱体により加熱する方法としては、金型と電気絶縁されたヒータ、電磁誘導加熱ヒータ又は熱媒体により加熱する方法が挙げられる。金型と電気絶縁されたヒータにより加熱する方法としては、シース線ヒータなどを金型内に埋め込んだり、ヒータの埋め込まれた加熱板を金型表面に取り付ける方法などが例示される。
【0020】
熱媒体により加熱する方法としては、金型内に熱媒体流路を設け、所定の温度の熱媒体を外部から供給し、排出させる方法が挙げられる。熱媒体としては、特に制限はなく、油、水、空気、窒素、燃焼ガスなどの流体が挙げられ、蒸気の場合には液体への凝縮伝熱でもよい。
【0021】
一定の温度を保つ主型については特に制限はないが、瞬時の温度制御をする必要のある駒型の加熱方法としては、ヒータ等の発熱体による加熱方法が好ましく用いられる。
[駒型の冷却方法]
本発明では、成形用金型内に液晶性ポリマーが充填完了した後、直ちに駒型の加熱用回路を遮断すると共に駒型の冷却用回路により7℃/秒以上の冷却速度で急速冷却する。主型と駒型を分割し、駒型のみを温度制御することによって、以上の範囲での急速冷却が可能となるであり、駒型の冷却方法としては、瞬時に冷却可能な方法であれば、通常の冷却方法を用いてもよい。熱媒体として特に制限はなく、油、水、空気、窒素、燃焼ガス等の流体が挙げられるが、好ましくは、冷却用回路として駒型内に冷却用流路を設け、その流路に空気中の水分が結露状態あるいは水分が固化し氷結状態にある低温空気を通過させ、氷分の融解熱あるいは水分の気化熱によって金属部品が接する駒型を冷却する方法等が挙げられる。
[成形品及び成形用金型]
本発明で用いられる金属部品及び複合成形品の形状の一例を、図2及び3に示す。
【0022】
図1は、本発明の手法により複合成形品を製造するために金属部品を保持するための駒型の一例を示す図である。図1は、金属部品全体を包含する駒型形状となっているが、金属部品全体を包含する必要はなく、液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分を内部に包含すれば、良好な密着性の複合成形品を得ることができる。
【0023】
図1の駒型は、主型に、図1に示すように断熱板4が設けられ、主型(図示省略)に埋め込まれて成形用金型として用いられる。
【0024】
加熱部品(棒ヒータ)3は、加熱用回路として、駒型を所定温度に昇温させるヒータである。
【0025】
流路2は、冷却用回路として、空気中の水分が結露状態あるいは水分が固化し氷結状態にある低温空気を通過させ、氷分の融解熱あるいは水分の気化熱によって駒型を冷却させる低温空気の流路となっている。
【0026】
流路2の出口からは、低温空気中の水分が駒型の熱を奪い蒸発気化したスチームの形で排出される。排出は、大気中への放出であっても、排出配管としても構わない。
[樹脂]
本発明に用いられる液晶性ポリマーは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指し、溶融状態で剪断応力を受けることによりポリマー分子鎖が規則的な平行配列をとる性質を有したポリマーである。具体的には、例えば全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルカーボネート、全芳香族又は半芳香族ポリエステルアミド等が挙げられる。液晶性ポリマーは、市場から容易に入手可能であり、ポリプラスチックス(株)のベクトラ、住友化学工業(株)のスミカスーパー、新日本石油(株)のザイダー、東レ(株)のシベラス等、種々の製品が市販されているが、いずれも使用可能である。したがって、液晶性ポリマーは、各種の充填剤及び樹脂添加剤を含んだ各種市販の液晶性ポリマーが使用可能である。
[用途]
本発明により得られた複合成形品は、電機・電子部品、自動車部品等に広く使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
図1に示す加熱用回路と冷却用回路を有する駒型が埋め込まれた成形機との連動性を制御するための主型からなる成形用金型を用い、主型の温度を150℃に保った状態で、図2に示す金属部品を駒型にセット後、直ちに駒型の温度を150℃から所定温度(245℃)まで昇温した。245℃まで9.5秒かかった。同時に成形用金型を閉めた後、下記条件で液晶性ポリマーを射出成形することにより図3のような複合成形品を得た。
【0029】
液晶性ポリマーとしては、ポリプラスチックス(株)製、ベクトラA460(融点280℃)を使用した。尚、融点は、示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製DSC7)にて、20℃/分の昇温条件で測定した。
【0030】
[成形条件]
駒型の表面処理;鋼材SUS420J2上に、ダイヤモンド状炭素被膜(DLC)を厚み1.0μmにコーティング処理した。表面粗さは、樹脂流動方向;十点平均粗さ(Rz)0.45μm、算術平均粗さ(Ra)0.1μmである。
気密性評価用試験品形状;幅10mm×長さ10mm×高さ3mm(図3参照)
成形機;ソディックプラステック(株)製TR40VR
金属部品;銅製リードフレーム(詳細については図2参照)
断熱板;ガラスエポキシ積層板
金型温度;主型は150℃
駒型容積;15cm
射出成形時の駒型温度;245℃
射出時間(保圧時間を含む);3秒
射出速度;200mm/秒
保圧;100MPa
冷却速度;10℃/秒
冷却時の駒型冷却方法;成形用金型内に液晶性ポリマーが充填完了後、直ちに加熱用棒ヒータの電源をオフにし、空気中の水分が結露状態にある極低温圧縮空気−30℃、0.6MPaを流路2に流す。
【0031】
成形品を成形用金型から取り出す際に、複合成形品の変形又は破壊が発生しない最短成形サイクル時間は24.6秒であった。成形した得た複合成形品を成形後48時間以上常温下に放置した後、下記気密試験を行い、液晶性ポリマー−金属間の気密性を評価した。尚、成形サイクル時間は、金属部品を駒型にセット完了した時点から複合成形品を取り出す時点までの時間を言う。
【0032】
[気密性評価]
複合成形品を図4に示す装置にセットし、評価装置全体を水の中に入れた後、配管によりエアー加圧を行い、複合成形品の金属部品と液晶性ポリマーの界面からのエアー(気泡)の漏れが発生する最大のエアー圧力を測定した。エアー圧力の数値が大きいほど、気密性が高いことになる。
【0033】
実施例2
液晶性ポリマーとして、ポリプラスチックス(株)製、ベクトラE473i(融点330℃)を使用した以外は実施例1と同様にして成形し、評価した。
【0034】
比較例1
主型と駒型の間に断熱板を使用しない以外は実施例1と同様にして成形し、評価した。245℃まで昇温するのに10分以上を要した。
【0035】
比較例2
駒型の容積を250cmとした以外は実施例1と同様にして成形し、評価した。245℃まで昇温するのに10分以上を要した。
【0036】
比較例3
駒型の表面処理をせず、十点平均粗さ(Rz)3.0μmのままの駒型を用いた以外は実施例1と同様にして成形したが、離型不良により試験品を得ることができなかった。
【0037】
これらの結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例3
図5に示す加熱用回路と冷却用回路を有する駒型が埋め込まれた成形機との連動性を制御するための主型からなる成形用金型を用い、主型の温度を150℃に保った状態で、厚さ1mm、50mm×50mmの金属板を駒型にセット後、直ちに駒型の温度を150℃から所定温度(220℃)まで昇温した。220℃まで10.0秒かかった。同時に成形用金型を閉めた後、下記条件で液晶性ポリマーを射出成形することにより図6のような複合成形品を得た。
【0040】
液晶性ポリマーとしては、ポリプラスチックス(株)製、ベクトラA460(融点280℃)を使用した。尚、融点は、示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製DSC7)にて、20℃/分の昇温条件で測定した。
【0041】
[成形条件]
駒型の表面処理;鋼材SUS420J2上に、ダイヤモンド状炭素被膜(DLC)を厚み1.0μmにコーティング処理した。表面粗さは、樹脂流動方向;十点平均粗さ(Rz)0.35μm、算術平均粗さ(Ra)0.09μmである。
密着強度評価用試験品形状;図6参照
成形機;ソディックプラステック(株)製TR40VR
金属部品;厚さ1mm、50mm×50mmの金属板
断熱板;ガラスエポキシ積層板
金型温度;主型は150℃
駒型容積;50cm
射出成形時の駒型温度;220℃
射出時間(保圧時間を含む);3秒
射出速度;200mm/秒
保圧;100MPa
冷却速度;8℃/秒
冷却時の駒型冷却方法;成形用金型内に液晶性ポリマーが充填完了後、直ちに加熱用棒ヒータの電源をオフにし、空気中の水分が結露状態にある極低温圧縮空気−30℃、0.6MPaを流路2に流す。
【0042】
[密着強度評価]
図6の密着強度評価用試験品を、オリエンテック製テンシロンRTC−1325Aを用いて、押し込む速度を1mm/minとして、図7に示す方法で剥離強度を測定した。
【0043】
実施例4
射出成形時の駒型の温度を200℃とした以外は実施例3と同様にして成形し、評価した。尚、駒型を150℃から200℃まで昇温するのに7.1秒を要した。
【0044】
実施例5
液晶性ポリマーとして、ポリプラスチックス(株)製、ベクトラE473i(融点330℃)を使用し、射出成形時の駒型の温度を240℃とした以外は実施例3と同様にして成形し、評価した。尚、駒型を150℃から240℃まで昇温するのに12.9秒を要した。
【0045】
比較例4〜5
射出成形時の駒型の温度を160℃、180℃とした以外は実施例3と同様にして成形し、評価した。尚、駒型を150℃から160℃まで昇温するのに1.4秒、180℃まで昇温するのに4.3秒を要した。
【0046】
比較例6〜7
射出成形時の駒型の温度を200℃、220℃とした以外は実施例5と同様にして成形し、評価した。尚、駒型を150℃から200℃まで昇温するのに7.1秒、220℃まで昇温するのに10.0秒を要した。
【0047】
これらの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は本発明に使用する駒型の1例を示す図で、(a) は金属部品セット側の駒型の上面図、(b) は同じく側面断面図、(c) は金属部品反セット側の駒型の上面図、(d) は同じく側面断面図である。
【図2】図2は本発明に使用する金属部品の1例を示す図である。
【図3】図3は本発明により得られる複合成形品の1例を示す図であり、(a) 上面図、(b) は下面図、(c) は側面図、(d) は側面断面図である。
【図4】図4は気密性評価の状況を示す模式図であり、(a) は略示断面図、(b) は略示斜視図である。
【図5】図1は本発明に使用する駒型の別の1例を示す図で、(a) は金属部品セット側の駒型の上面図、(b) は同じく側面断面図、(c) は金属部品反セット側の駒型の上面図、(d) は同じく側面断面図である。
【図6】図6は本発明により得られる複合成形品の別の1例を示す図であり、(a) 上面図、(b) は側面図である。
【図7】図7は密着強度評価の状況を示す模式図であり、(a) は略示側面図、(b) は略示正面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 金属部品位置決めピン
2 冷却エアー流路
3 棒ヒータ
4 断熱板
5 金属部品保持ピン
6 複合成形品
7 圧縮エアー挿入孔
8 エアー漏れ測定箇所
9 金属板セット部
10 ボス
11 試験品固定部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性ポリマーと金属部品との複合成形品の製造方法であって、
(1)成形用金型が、成形機との連動性を制御するための主型と、温度制御のための加熱用回路と冷却用回路を有する液晶性ポリマーと金属部品とが接する部分を内部に包含する駒型に分割され、
(2)成形用金型の成形時に樹脂が流入して接する部分が十点平均粗さ(Rz)が0.5μm以下に表面処理され、駒型の容積を60cm以下にし、駒型の主型に接する外周部が断熱処理された状態で主型に駒型が埋め込まれた成形用金型を用い、
(3)成形用金型内に金属部品を設置し、駒型の金型温度Tを(液晶性ポリマーの融点−95℃)≦T<(液晶性ポリマーの融点)の温度範囲に加熱した状態で液晶性ポリマーを射出充填し、成形用金型内に液晶性ポリマーが充填完了した後、直ちに駒型の加熱用回路を遮断すると共に駒型の冷却用回路により7℃/秒以上の冷却速度で急速冷却する
ことを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項2】
成形用金型の駒型の成形時に樹脂が流入して接する部分が、ダイヤモンド状炭素被膜により表面処理されたものである請求項1記載の複合成形品の製造方法。
【請求項3】
急速冷却が、空気中の水分が結露状態あるいは水分が固化し氷結状態にある低温空気を用いるものである請求項1又は2記載の複合成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190293(P2009−190293A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34015(P2008−34015)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】