説明

記録装置

【課題】被記録材の持ち忘れや保管場所の失念、紛失等の虞を少なくすることができるとともに、持ち運び中や保管中に被記録材の反りや折れ曲がり等が生じてしまったり、被記録材が傷付いてしまったりすることを防止することができる記録装置を実現する。
【解決手段】プリンタカバー10は、内蓋12を閉じた状態において内部に構成される、複数の記録紙Pを積重して収容可能な「収容部」が設けられている。「収容部」は、複数の記録紙Pを収容可能な略密閉された空間であり、内蓋12を閉じた状態において、カバー本体11の内壁面112及び側壁部15並びに内蓋12の内壁面121及び側壁部122で構成される。閉じた状態の内蓋12を符号Cで示した方向へ回動させて開いた状態とすることによって、プリンタカバー10の内部への記録紙Pの出し入れが可能な状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材への記録を実行可能な記録実行手段を備えた記録装置の蓋体及び該蓋体を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録材への記録を実行可能な記録実行手段を備えた記録装置として、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、熱転写プリンタ等が公知である。一般的なこれらの記録装置は、記録装置内部の記録実行手段へ被記録材を給送する方式で分類すると、被記録材を収容した箱状の給送用カセットを記録装置に装着する方式と記録装置に設けられた給送用トレイ(手差しトレイ等)に被記録材をそのまま載置する方式とに大別することができる。
【0003】
給送用カセットを装着する方式の記録装置は(例えば、特許文献1を参照)、被記録材が給送用カセットに収容された状態で紫外線や埃等から保護されるので、記録装置を長期間使用しないときでも被記録材を取り出す必要がないという利点がある反面、構造上、記録装置全体を小型化するのが難しい。それに対して、給送用トレイに被記録材をそのまま載置する方式の記録装置は、給送用カセットが無い分だけ小型化が容易であるという利点がある反面、給送用トレイに載置された被記録材は紫外線や埃等にさらされるため、記録装置を長期間使用しないときは被記録材を給送用トレイから取り出して収容袋等に収容しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−128287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、小型で持ち運びが容易であり、バッテリ駆動も可能なモバイル用途向けの小型で高性能なカラープリンタが広く普及しつつある。このような小型の記録装置においては、より小型で軽量の記録装置を実現するという観点からすれば、給送用カセット方式より給送用トレイに被記録材をそのまま載置する方式に分があると言える。
【0006】
しかしながら、給送用トレイに被記録材をそのまま載置する方式を採用した小型の記録装置は、持ち運びの際に、記録装置と被記録材とをそれぞれ別個に持ち運びしなければならないため、ユーザにとって煩わしいばかりでなく、被記録材を持ち忘れる虞がある。また、ユーザが被記録材の保管場所を失念してしまったり、被記録材を紛失してしまったりする虞もある。さらに、市販の一般的な被記録材の収容袋は、薄いビニルや紙等からなる袋であることが多いため、持ち運び中や保管中に被記録材の反りや折れ曲がり等が生じてしまったり、被記録材が傷付いてしまったりする虞がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、被記録材の持ち忘れや保管場所の失念、紛失等の虞を少なくすることができるとともに、持ち運び中や保管中に被記録材の反りや折れ曲がり等が生じてしまったり、被記録材が傷付いてしまったりすることを防止することができる記録装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、被記録材への記録を実行可能な記録実行手段を備えた記録装置の蓋体であって、前記蓋体の内部に複数の被記録材を積重して収容可能な収容部が設けられており、前記収容部に収容されている被記録材を挟持する被記録材狭持手段を備えている、ことを特徴とした蓋体である。
【0009】
ここで、記録装置の蓋体とは、記録装置を使用しないときや持ち運び時等にその記録装置の液晶ディスプレイや操作ボタン類等を保護するために、閉じた状態でこれらを覆い隠すことができる開閉蓋等をいう。
【0010】
本発明の第1の態様に記載の蓋体は、内部に複数の被記録材を積重して収容可能な収容部が設けられているので、記録装置の蓋体に被記録材を収容して持ち運ぶことができる。すなわち、記録装置と被記録材とを一体にして持ち運ぶことができるので、持ち運び時に被記録材を持ち忘れる虞を少なくすることができるとともに、被記録材の保管場所を失念してしまったり被記録材を紛失してしまったりする虞を少なくすることができる。また、蓋体の収容部に収容された状態で被記録材が保護されるので、被記録材が紫外線や埃等から保護されるとともに、被記録材が折れ曲がったり傷付いてしまったりすることを防止することができる。そして、記録装置の蓋体を被記録材の収容部として利用するので、記録装置を大型化することなく、被記録材の収容部を記録装置に設けることができる。
【0011】
さらに、被記録材挟持手段によって、蓋体の収容部に収容されている被記録材が挟持されるので、その挟持圧力によって、周囲の温度や湿度の変化等に起因する被記録材の反り等が生ずることを防止することができるとともに、既に反った状態の被記録材を真っ直ぐに矯正することもできる。また、記録装置の移動中等における振動や衝撃が作用したときに、収容部の内壁面に被記録材の端部が衝突して折れ曲がってしまったり、被記録材同士が擦れ合って記録面に傷が付いてしまったりすることも防止することができる。
【0012】
これにより、本発明の第1の態様に記載の蓋体によれば、記録装置において、被記録材の持ち忘れや保管場所の失念、紛失等の虞を少なくすることができるとともに、持ち運び中や保管中に被記録材の反りや折れ曲がり等が生じてしまったり、被記録材が傷付いてしまったりすることを防止することができるという作用効果が得られる。
【0013】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様に記載の蓋体において、収容部に複数の被記録材を収容するための開閉部を有し、前記開閉部を閉じた状態では前記収容部に収容されている被記録材が前記被記録材挟持手段により挟持され、前記開閉部を開いた状態では前記被記録材挟持手段による被記録材の挟持が解除される、ことを特徴とした蓋体である。
【0014】
このように、開閉部を開いた状態では被記録材挟持手段による被記録材の挟持が解除されるので、ユーザは、収容部への被記録材の収容及び収容部からの被記録材の取り出しを容易かつスムーズに行うことができるという作用効果が得られる。また、収容部に被記録材を収容した状態で開閉部を閉じれば、自動的に被記録材挟持手段により被記録材が挟持された状態となる。したがって、ユーザは、開閉部の開閉操作のみを行えば良く、被記録材挟持手段を別途操作等する必要がない。それによって、使い勝手が向上するとともに、開閉部を閉じた状態で収容部内の被記録材が被記録材挟持手段により挟持されていない状態となってしまうことを未然に防止することができるという作用効果が得られる。
【0015】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様又は第2の態様に記載の蓋体において、前記被記録材狭持手段は、前記収容部の内壁面に対面して変位可能に配設された挟持板と、前記挟持板を当該内壁面へ付勢する付勢手段とを有し、前記収容部に収容されている被記録材を前記挟持板と当該内壁面とで挟持する、ことを特徴とした蓋体である。
【0016】
このように、収容部に収容されている被記録材は、収容部の内壁面に対面して変位可能に配設された挟持板とその内壁面とで挟持されるので、表面及び裏面の全面に挟持圧が作用する。したがって、被記録材の略全面にわたって反りを防止又は矯正する挟持圧を作用させることができる。また、挟持板は、収容部の内壁面に対して変位可能に配設されているとともに、その内壁面へ付勢手段により付勢されている。それによって、挟持板は、収容されている被記録材の数量に応じて付勢手段の付勢力により変位しながら、収容部内の被記録材を内壁面との間で挟持することができる。したがって、収容部内の被記録材をその数量にかかわりなく常に一定以上の挟持圧で挟持することができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、前述した第3の態様において、前記挟持板の挟持面と前記内壁面は、いずれか一方が凹面で、他方が前記凹面と対応する凸面である、ことを特徴とした蓋体である。
【0018】
このように、挟持板の挟持面と収容部の内壁面は、いずれか一方が凹面で、他方が前記凹面と対応する同形状の凸面であることから、挟持板の挟持面と収容部の内壁面とで挟持された被記録材は、その凹面及び凸面に沿って反った状態で挟持されることになる。すなわち、被記録材に対して一定の反りを積極的に付与することができる。それによって、例えば、搬送ローラ等で搬送される被記録材が記録ヘッドに接触しにくい方向の反りを予め被記録材に積極的に付与しておき、被記録材が記録実行手段へ供給されて記録が実行される際にいわゆるヘッド擦れ等が生ずることをより確実に防止する、といったことが可能になる。
【0019】
本発明の第5の態様は、被記録材への記録を実行可能な記録実行手段を備えた記録装置であって、前述した第1〜第4の態様のいずれかに記載の蓋体を備えている、ことを特徴とした記録装置である。
本発明の第5の態様に記載の記録装置によれば、被記録材への記録を実行可能な記録実行手段において、前述した第1〜第4の態様のいずれかに記載の発明による作用効果を得ることができる。
【0020】
本発明の第6の態様は、前述した第5の態様に記載の記録装置において、前記蓋体は、前記記録装置に回動可能に支持され、第1の回動位置では、被記録材を前記記録実行手段へ供給するための開口部を覆い、第2の回動位置では、被記録材を前記開口部から前記記録実行手段へ供給可能な状態で載置可能な被記録材載置面を構成する、ことを特徴とした記録装置である。
【0021】
第1の回動位置においては、被記録材を記録実行手段へ供給するための開口部が蓋体で覆われるので、記録装置の持ち運び中や長期間使用しないときに、その開口部から記録装置内部に埃や異物等が進入してしまうことを防止することができる。他方、第2の回動位置においては、被記録材を開口部から記録実行手段へ供給可能な状態で載置可能な被記録材載置面が蓋体によって構成される。すなわち、第2の回動位置において、蓋体は、被記録材載置面を構成する給送用トレイ等として利用されるので、蓋体と別個に給送用トレイ等を記録装置に設ける必要がない。したがって、前述した第5の態様に記載の記録装置において、記録装置をさらに小型化することができるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】インクジェットプリンタの外観斜視図。
【図2】プリンタカバーを開いたインクジェットプリンタの外観斜視図。
【図3】開いたプリンタカバーに記録紙を載置した状態。
【図4】インクジェットプリンタの要部側断面図。
【図5】プリンタカバーの内蓋を開いた状態を図示したもの。
【図6】内蓋を開いた状態で複数の記録紙を載置した状態の斜視図。
【図7】内蓋を開いた状態で複数の記録紙を載置した状態の側面図。
【図8】記録紙を収容して内蓋を閉じた状態のプリンタカバーの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<インクジェットプリンタの概略構成>
まず、本発明に係る「記録装置」としてのインクジェットプリンタ50の概略構成について説明する。
図1は、インクジェットプリンタ50の外観斜視図である。図2は、プリンタカバー10を開いた状態のインクジェットプリンタ50の外観斜視図である。図3は、開いたプリンタカバー10に記録紙Pを載置した状態のインクジェットプリンタ50の外観斜視図である。図4は、インクジェットプリンタ50の要部側断面図である。
【0025】
インクジェットプリンタ50は、図示の如く略箱形状のプリンタ本体1と本発明に係る「蓋体」としてのプリンタカバー10とで構成されている。プリンタ本体1の上面には、「記録実行手段」に「被記録材」としての記録紙Pを供給するための「開口部」としての給送用開口部2及び操作パネル4が設けられている。操作パネル4には、図示していない操作ボタン類や液晶ディスプレイ等が配設されている。プリンタカバー10は、プリンタ本体1の軸受部5に回動軸111が係合した状態で、プリンタ本体1に回動可能に支持されている。
【0026】
プリンタカバー10は、「第1の回動位置」において閉じた状態となり(図1)、プリンタ本体1の上面を覆う。インクジェットプリンタ50の持ち運び中や長期間使用しないときには、プリンタカバー10を閉じた状態とすることによって、操作パネル4が保護されるとともに、給送用開口部2から埃や異物等が進入することが防止される。他方、プリンタカバー10は、符号Bで示した方向へ回動させた「第2の回動位置」において、開いた状態となり(図2)、記録紙Pを給送用開口部2から「記録実行手段」へ供給可能な状態で載置可能な「被記録材載置面」を構成する。つまり、開いた状態のプリンタカバー10は、給送用トレイとして機能する(図3)。したがって、プリンタカバー10と別個に給送用トレイ等をインクジェットプリンタ50に設ける必要がないので、インクジェットプリンタ50をより小型化することができる。
【0027】
インクジェットプリンタ50は、記録紙Pに記録を実行する「記録実行手段」として、搬送駆動ローラ51、搬送従動ローラ52、プラテン53、排出駆動ローラ54、排出従動ローラ55、キャリッジ61及び記録ヘッド62をプリンタ本体1内に備えている(図4)。また、インクジェットプリンタ50は、「記録実行手段」へ向けて記録紙Pを一ずつ自動給送する「自動給送装置」を構成する載置部71、エッジガイド72、給送用ローラ73及びリタードローラ74を備えている(図4)。
【0028】
載置部71は、給送用開口部2に臨む位置に配設されている。公知のエッジガイド72は、記録紙Pの幅方向Xへスライド可能に載置部71に配設されており、記録紙Pのサイズに応じて記録紙Pの幅方向Xの載置位置を規定することができる。開いた状態のプリンタカバー10に載置された記録紙Pは、図示していないホッパにより給送用ローラ73の外周面に押圧され、給送用ローラ73の駆動回転により、搬送駆動ローラ51へ向けて給送される。このとき、公知のリタードローラ74の従動回転抵抗によって、最上位の記録紙Pから他の記録紙Pが分離され、記録紙Pの重送が防止される。
【0029】
給送用ローラ73の駆動回転により給送された記録紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持され、搬送駆動ローラ51の駆動回転により搬送方向Yへ所定の搬送量でプラテン53上を搬送される。キャリッジ61の底部には、記録ヘッド62が配設されている。キャリッジ61は、記録ヘッド62のヘッド面とプラテン53上の記録紙Pの記録面とが略平行で一定の間隔となる状態を維持しながら搬送方向Yと略直交する方向(幅方向X)へ往復動可能に支持されている。
【0030】
プラテン53上を搬送される記録紙Pは、キャリッジ61が搬送方向Yと略直交する方向(幅方向X)へ往復動しながら記録ヘッド62のヘッド面から記録紙Pの記録面へインクを噴射する動作と、搬送駆動ローラ51の駆動回転により搬送方向Yへ所定の搬送量で記録紙Pを搬送する動作とが交互に繰り返されることによって、記録面への記録が実行される。インク噴射後の記録紙Pは、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とで挟持され、排出駆動ローラ54の駆動回転により搬送方向Yへ搬送され、記録実行後の記録紙Pは、開いた状態の排出トレイ3上に排出される。
【0031】
<プリンタカバーの構成>
つづいて、本発明に係る「蓋体」としてのプリンタカバー10の構成について説明する。
【0032】
図5は、インクジェットプリンタ50の外観斜視図であり、プリンタカバー10の「開閉部」としての内蓋12を開いた状態を図示したものである。
図6は、インクジェットプリンタ50の外観斜視図であり、プリンタカバー10の内蓋12を開いた状態で複数の記録紙Pを挟持板13の挟持面131に載置した状態を図示したものであり、図7は、その側面図である。尚、図7においては、より発明の理解を容易にするためにカバー本体11のみ断面図示してある。
プリンタカバー10は、カバー本体11,内蓋12、挟持板13及び二つの板ばね14で構成されている。カバー本体11は、プリンタ本体1の軸受部5に回動軸111が係合した状態で、プリンタ本体1に回動可能に支持されている。内蓋12は、カバー本体11に回動軸16で回動可能に軸支されている。「被記録材狭持手段」としての挟持板13は、カバー本体11の内壁面112に形成されている側壁面15に設けられた長孔151に、挟持板13の両側部に設けられた軸部133が係合した状態で配設されている。すなわち、挟持板13は、軸部133を揺動中心として符号E(図7)で示した方向へ揺動可能に軸支されているとともに、長孔151に沿って符号F(図7)で示した方向へ変位可能に支持されている。挟持板13は、内蓋12と対面する面が挟持面131となる。
【0033】
挟持板13の「付勢手段」としての板ばね14は、カバー本体11の内壁面112と挟持板13との間に配設されている。挟持板13は、その板ばね14のばね力によって内蓋12側へ向けて符号Dで示した方向(図7)へ付勢されている。尚、挟持板13の「付勢手段」は、特に板ばね14に限定されるものではなく、内蓋12側へ向けて符号Dで示した方向(図7)へ付勢することが可能な付勢手段であれば、どのような付勢手段でも良い。例えば、棒ばねやねじりコイルばね等のばね類の他、ゴム材等の弾性体を利用して付勢手段を構成しても良い。
【0034】
プリンタカバー10は、内蓋12を閉じた状態において内部に構成される、複数の記録紙Pを積重して収容可能な「収容部」が設けられている。「収容部」は、複数の記録紙Pを収容可能な略密閉された空間であり、内蓋12を閉じた状態(図2に図示した状態)において、カバー本体11の内壁面112及び側壁部15並びに内蓋12の内壁面121及び側壁部122で構成される。また、内蓋12を符号Cで示した方向へ回動させて開いた状態とすることによって、図示の如くプリンタカバー10の内部への記録紙Pの出し入れが可能な状態となる(図6及び図7)。挟持板13に設けられた凹状の切り欠き部132は(図5)、ユーザによる記録紙Pの出し入れをより容易にするためのものである。
【0035】
このように、インクジェットプリンタ50は、プリンタカバー10の内部に複数の記録紙Pを積重して収容可能な「収容部」が設けられているので、記録紙Pを収容して持ち運ぶことができる。すなわち、インクジェットプリンタ50と記録紙Pとを一体にして持ち運ぶことができるので、持ち運び時に記録紙Pを持ち忘れる虞を少なくすることができるとともに、記録紙Pの保管場所を失念してしまったり記録紙Pを紛失してしまったりする虞を少なくすることができる。
【0036】
また、プリンタカバー10の「収容部」に収容された状態で記録紙Pが保護されるので、記録紙Pが紫外線や埃等から保護されるとともに、記録紙Pが折れ曲がったり傷付いてしまったりすることを防止することができる。そして、インクジェットプリンタ50のプリンタカバー10を記録紙Pの「収容部」として利用するので、インクジェットプリンタ50を大型化することなく、記録紙Pの「収容部」をインクジェットプリンタ50に設けることができる。
【0037】
図8は、プリンタカバー10の内部に記録紙Pを収容して内蓋12を閉じた状態の側面図である。尚、図8においては、より発明の理解を容易にするためにカバー本体11及び内蓋12を断面図示してある。
プリンタカバー10は、図示の如く、符号Gで示した方向へ回動させて内蓋12を閉じた状態においては、「収容部」に収容されている記録紙Pが、内蓋12の内壁面121と挟持板13の挟持面131とで挟持された状態となる。より具体的には、内蓋12を閉じた状態における挟持板13は、板ばね14のばね力で記録紙Pへ押圧されることによって(符号D)、記録紙Pに面接触するように、符号Eで示した方向へ揺動しつつ符号Fで示した方向へ変位する。それによって、「収容部」に収容された記録紙Pは、内蓋12の内壁面121と挟持板13の挟持面131とに面接触して挟持された状態となる。
【0038】
このように、プリンタカバー10の「収容部」に収容されている記録紙Pが挟持されるので、その挟持圧力によって、周囲の温度や湿度の変化等に起因する記録紙Pの反り等が生ずることを防止することができるとともに、既に反った状態の記録紙Pを真っ直ぐに矯正することもできる。また、「収容部」に収容されている記録紙Pは、内蓋12の内壁面121と挟持板13の挟持面131とにそれぞれ面接触した状態で、その内蓋12の内壁面121と挟持板13の挟持面131とで挟持される。それによって、記録紙Pの表面及び裏面の全面に挟持圧が作用するので、記録紙Pの略全面にわたって反りを防止又は矯正する挟持圧を作用させることができる。
【0039】
さらに、インクジェットプリンタ50の移動中等における振動や衝撃が作用したときに、「収容部」の記録紙Pの端部がカバー本体11の側壁部15に衝突して折れ曲がってしまったり、記録紙P同士が擦れ合って記録面に傷が付いてしまったりといったことも防止することができる。尚、内蓋12の内壁面121又は挟持板13の挟持面131には、記録紙Pの表面(記録面)に対応する側に、スポンジ等の軟らかい弾性体を付しておくのが好ましい。それによって、内蓋12の内壁面121又は挟持板13の挟持面131の微細な凹凸によって、挟持されている記録紙Pの表面(記録面)に小さな傷等が付いてしまうことを防止することができる。
【0040】
さらに、挟持板13は、内蓋12の内壁面121に対して符号Fで示した方向へ変位可能に配設されているので、収容されている記録紙Pの数量や厚みに応じて板ばね14のばね力により変位しながら、「収容部」の記録紙Pを内蓋12の内壁面121との間で挟持することができる。したがって、「収容部」の記録紙Pをその数量等にかかわりなく挟持することができる。尚、内蓋12を閉じたときに、内壁面121と交差するように長孔151を形成しておくことによって、「収容部」の記録紙Pが1枚だけのときでも内蓋12の内壁面121との間で挟持することが可能になる。
【0041】
さらに、内蓋12の内壁面121は、凹面となっており、挟持板13の挟持面131は、内蓋12の内壁面121の凹面形状に対応する略同形状の凸面になっている(図示せず)。それによって、内蓋12の内壁面121と挟持板13の挟持面131とで挟持された記録紙Pは、その凹面及び凸面に沿って反った状態で挟持されることになる。すなわち、記録紙Pを挟持しつつ、その記録紙Pに対して一定の反りを積極的に付与することができる。したがって、例えば、搬送駆動ローラ51の回転により搬送される記録紙Pが記録ヘッド62に接触しにくい方向の反りを予め記録紙Pに積極的に付与しておき、記録紙Pが「記録実行手段」へ供給されて記録が実行される際にいわゆるヘッド擦れ等が生ずることをより確実に防止する、といったことが可能になる。
【0042】
より具体的には、例えば、記録ヘッド62のヘッド面と対面して記録面となる面が凸面となるような反りを付与するのが好ましい。このような凸面状の反りを付与することによって、記録紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とで挟持されてプラテン53上を搬送方向Yへ搬送される際に、搬送方向Yの先端が排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55との挟持点に到達するまでの間、搬送方向Yの先端がプラテン53に押し付けられるように摺接しながら搬送されることになる。それによって、記録紙Pの先端近傍の浮き上がりを防止することができるので、記録紙Pの先端近傍が記録ヘッド62のヘッド面に接触してしまうことを防止することができる。
【0043】
また、凸面状の反りを付与した記録紙Pは、排出駆動ローラ54と排出従動ローラ55とで挟持されてプラテン53上を搬送方向Yへ搬送される際に、搬送方向Yの後端が搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52との挟持点を通過した後は、搬送方向Yの後端がプラテン53に押し付けられるように摺接しながら搬送されることになる。それによって、記録紙Pの後端近傍の浮き上がりを防止することができるので、記録紙Pの後端近傍が記録ヘッド62のヘッド面に接触してしまうことも防止することができる。
【0044】
尚、内蓋12の内壁面121を凸面、挟持板13の挟持面131を内蓋12の内壁面121の凸面形状に対応する略同形状の凹面としても同様の作用効果が得られるのは言うまでもない。
【0045】
以上説明したように、本発明に係るプリンタカバー10によれば、インクジェットプリンタ50において、記録紙Pの持ち忘れや保管場所の失念、紛失等の虞を少なくすることができるとともに、持ち運び中や保管中に記録紙Pの反りや折れ曲がり等が生じてしまったり、記録紙Pが傷付いてしまったりすることを防止することができる。
【0046】
また、本発明に係るプリンタカバー10は、内蓋12を開いた状態では、内蓋12の内壁面121と挟持板13の挟持面131とによる記録紙Pの挟持が解除されるので、ユーザは、「収容部」への記録紙Pの収容及び収容部からの記録紙Pの取り出しを容易かつスムーズに行うことができる。そして、「収容部」に記録紙Pを収容した状態で内蓋12を閉じれば、自動的に内蓋12の内壁面121と挟持板13の挟持面131とにより記録紙Pが挟持された状態となる。したがって、ユーザは、内蓋12の開閉操作のみを行えば良いので、使い勝手が向上するとともに、内蓋12を閉じた状態でありながら「収容部」の記録紙Pが挟持されていない状態となってしまうことを未然に防止することができる。
【0047】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 プリンタ本体、2 給送用開口部、3 排出トレイ、4 操作パネル、10 プリンタカバー、11 カバー本体、12 内蓋、13 挟持板、14 板ばね、50 インクジェットプリンタ、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排出駆動ローラ、55 排出従動ローラ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、71 載置部、72 エッジガイド、73 給送用ローラ、74 リタードローラ、P 記録紙、X 記録紙の幅方向、Y 記録紙の搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材への記録を実行可能な記録実行手段を備えた記録装置の蓋体であって、
前記蓋体の内部に複数の被記録材を積重して収容可能な収容部が設けられており、
前記収容部に収容されている被記録材を挟持する被記録材狭持手段を備えている、ことを特徴とした蓋体。
【請求項2】
請求項1に記載の蓋体において、収容部に複数の被記録材を収容するための開閉部を有し、前記開閉部を閉じた状態では前記収容部に収容されている被記録材が前記被記録材挟持手段により挟持され、前記開閉部を開いた状態では前記被記録材挟持手段による被記録材の挟持が解除される、ことを特徴とした蓋体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蓋体において、前記被記録材狭持手段は、前記収容部の内壁面に対面して変位可能に配設された挟持板と、前記挟持板を当該内壁面へ付勢する付勢手段とを有し、前記収容部に収容されている被記録材を前記挟持板と当該内壁面とで挟持する、ことを特徴とした蓋体。
【請求項4】
請求項3に記載の蓋体において、前記挟持板の挟持面と前記内壁面は、いずれか一方が凹面で、他方が前記凹面と対応する凸面である、ことを特徴とした蓋体。
【請求項5】
被記録材への記録を実行可能な記録実行手段を備えた記録装置であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓋体を備えている、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載の記録装置において、前記蓋体は、
前記記録装置に回動可能に支持され、
第1の回動位置では、被記録材を前記記録実行手段へ供給するための開口部を覆い、
第2の回動位置では、被記録材を前記開口部から前記記録実行手段へ供給可能な状態で載置可能な被記録材載置面を構成する、ことを特徴とした記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−35629(P2012−35629A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204880(P2011−204880)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2007−174820(P2007−174820)の分割
【原出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】