説明

負荷駆動装置

【課題】構成の大型化やコストの上昇を抑制して、PWM制御によりモータ負荷を高精度に駆動制御することを課題とする。
【解決手段】CPU10から与えられるPWM信号に基づいて負荷駆動電圧が負荷駆動回路12からモータ2に供給されてモータ2がPWM制御により駆動され、モータ2に供給されるモータ駆動電圧のパルス信号がパルス検出回路13で検出され、パルス検出回路13で検出されたモータ駆動電圧のパルス信号とCPU10から負荷駆動回路12に与えられるPWM信号とのパルス幅の差分がCPU10で算出され、この差分に基づいてCPU10から負荷駆動回路12に与えられるPWM信号のパルス幅が補正され、補正されてCPU10から負荷駆動回路12に与えられたPWM信号に基づいてモータ2が駆動制御されて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御により負荷電流を供給制御する負荷駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献には、車両用の電動パワーステアリング装置において、操向ハンドルの操舵力を補助するモータを駆動制御するモータ駆動回路の構成が開示されている。このモータ駆動回路は、従来公知のPWM制御によりHブリッジ回路を構成するFET(電界効果トランジスタ)をオン/オフ制御して、モータ(負荷)に供給される駆動電流(負荷電流)を制御している。
【0003】
このようなモータ駆動回路では、Hブリッジ回路に電流検出用抵抗を接続し、この電流検出用抵抗の電圧降下を検出し、検出した電圧降下に基づいてモータに供給されている実際の負荷電流を求め、求めた負荷電流に基づいて負荷電流が目標負荷電流となるようにフィードバック制御が行われている。これにより、負荷電流の精度が高められ、精度よくモータを駆動制御することが可能となる。
【特許文献1】特開平8−150946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上説明したように、従来の負荷(モータ)駆動装置においては、負荷電流を高精度に制御するために、電流検出用抵抗の両端の電圧を検出し、検出した電圧を増幅器で増幅し、増幅された検出電圧に基づいて負荷電流を求めていた。このため、電流検出用の耐電力性に優れた抵抗や増幅器が必要になり、構成の大型化やコストの上昇といった不具合を招いていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構成の大型化やコストの上昇を抑制して、負荷を高精度に駆動制御することを可能にした負荷駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御により負荷を駆動制御する負荷駆動装置において、パルス信号のPWM信号を受けて、このPWM信号のパルス幅に応じた負荷駆動電圧を前記負荷に供給して前記負荷を駆動する負荷駆動手段と、前記負荷駆動手段から前記負荷に供給される負荷駆動電圧のパルス信号を検出するパルス検出手段と、前記パルス検出手段で検出された負荷駆動電圧のパルス信号と、前記負荷駆動手段に与えるパルス信号のPWM信号とを比較し、比較結果に基づいて前記負荷駆動手段に与えるPWM信号のパルス幅を補正する補正値を算出し、この補正値に基づいて前記負荷駆動手段に与えるPWM信号のパルス幅を補正し、補正したパルス幅のPWM信号を前記負荷駆動手段に与え、前記負荷駆動手段が前記負荷に前記PWM信号に応じた負荷電流を供給するように前記負荷駆動手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
上記特徴の請求項1記載の発明によれば、構成の大型化やコストの上昇を招くことなく負荷に負荷電流を高精度に供給制御することが可能となる。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の負荷駆動装置において、前記補正値を記憶する記憶手段を備え、前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された補正値を用いて前記PWM信号のパルス幅を補正することを特徴とする。
【0009】
上記特徴の請求項2記載の発明によれば、毎回補正値を算出する必要はなくなり、演算負荷を軽減することができ、かつ補正値の算出時間も不要となり、速やかに補正動作を行うことが可能となる。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の負荷駆動装置において、前記制御手段は、前記比較結果において両信号のパルス幅の差分を補正値として算出し、算出した補正値に基づいて前記PWM信号のデューティ比を補正することを特徴とする。
【0011】
上記特徴の請求項3記載の発明によれば、構成の大型化やコストの上昇を招くことなく負荷に負荷電流を高精度に供給制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1に係る負荷駆動装置の構成を示す図である。図1に示す実施例1の負荷駆動装置は、エンジンで得られた駆動力で主駆動輪が駆動される車両の従駆動輪を駆動するモータ2を負荷とし、車両に搭載されたバッテリ3を電源とするコントローラ1でモータ2を駆動制御する装置として構成されている。
【0014】
コントローラ1は、CPU10、電源電圧モニタ回路11、負荷駆動回路12、パルス検出回路13ならびに記憶装置14を備え、前述したPWM制御によりモータ2に供給される負荷電流を制御している。
【0015】
CPU10は、モータ2を駆動制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な資源を備え、検出された信号を読み込み、読み込んだ信号ならびに予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、負荷駆動回路12に指令を送り、以下に説明する本実施例の特徴的な駆動制御動作を統括管理して制御する。このCPU10は、指示信号部100、演算部101、信号出力部102ならびにRAM部103を備えている。
【0016】
指示信号部100は、電源電圧モニタ回路11でモニタされたバッテリ3の電圧とモータ2に供給する目標負荷電流とに対応したデューティ比の指示PWM信号(パルス信号)を出力する。なお、バッテリ3の電圧ならびにモータ2の目標負荷電流と指示PWM信号のデューティ比との関係は、予め実験や机上検討により求め、それらの関係をCPU10が備えた記憶回路(図示せず)に記憶される。
【0017】
演算部101は、パルス検出回路13で検出されたパルス信号と、指示信号部100の出力の指示PWM信号とを比較し、比較結果として両者の差分(補正値)を演算する。すなわち、演算部101は、指示信号部100から出力された指示PWM信号のデューティ比とパルス検出回路13で検出されたパルス信号のデューティ比との差分を算出する。
【0018】
信号出力部102は、指示信号部100の出力の指示PWM信号と演算部101で得られた差分とに基づいて、指示PWM信号を補正し、補正して得られたPWM信号を負荷駆動回路12に与える。
【0019】
RAM部103は、演算部101で求められた比較結果の差分を一時的に記憶し、記憶された比較結果は演算部101ならび記憶装置14との間で転送される。
【0020】
電源電圧モニタ回路11は、バッテリ3の電圧をモニタし、モニタした電圧をCPU10の指示信号部100に与える。
【0021】
負荷駆動回路12は、ドライバ回路120と、Hブリッジ回路を構成するFET121〜FET124を備えている。ドライバ回路120は、CPU10の信号出力部102から与えられるPWM信号(PWM1信号〜PWM4信号)を受けて、これらのPWM信号でFET121〜124をスイッチング(オン/オフ)制御する。
【0022】
FET121はPチャネルの電界効果トランジスタで構成され、PWM1信号でスイッチング制御され、FET122はNチャネルの電界効果トランジスタで構成され、PWM2信号でスイッチング制御され、FET121とFET122とは、バッテリ3と接地電位との間に直列接続され、その直列接続点がモータ2の一方の接続端子MAに接続されている。
【0023】
FET123はPチャネルの電界効果トランジスタで構成され、PWM3信号でスイッチング制御され、FET124はNチャネルの電界効果トランジスタで構成され、PWM4信号でスイッチング制御され、FET123とFET124とは、バッテリ3と接地電位との間に直列接続され、その直列接続点がモータ2の他方の接続端子MBに接続されている。
【0024】
パルス検出回路13は、2つのパルス検出回路131と132とを有し、パルス検出回路131は、FET121とFET122との直列接続点、すなわちモータ2の一方の接続端子MAに与えられるモータ駆動電圧のパルス信号を検出し、検出したパルス信号をCPU10の演算部101に与える。パルス検出回路132は、FET123とFET124との直列接続点、すなわちモータ2の他方の接続端子MBに与えられるモータ駆動電圧のパルス信号を検出し、検出したパルス信号をCPU10の演算部101に与える。
【0025】
記憶装置14は、CPU10のRAM部103に記憶された演算部101の比較結果を不揮発に記憶し、記憶された比較結果は必要に応じて適宜RAM部103に与えられてRAM部103で記憶される。
【0026】
このような構成において、先ずモータ2の接続端子MA側から接続端子MB側に負荷電流を流してモータ2を駆動制御する場合(この場合のモータ2の回転方向を例えば正転とする)について説明する。このような場合には、ドライバ回路120を介して信号出力部102からバッテリ3の電圧と目標負荷電流に応じたデューティ比のPWM1信号がFET121に与えられ、ロウレベルのPWM2信号がFET122に与えられ、ハイレベルのPWM3信号がFET123に与えられ、ハイレベルのPWM4信号がFET124に与えられる。これにより、FET121はPWM1信号に基づいてスイッチング制御され、FET122,FET123はオフ状態となり、FET124はオン状態となり、図1の破線矢印で示すようにバッテリ3→FET121→モータ2→FET124→接地電位の経路でモータ2に負荷電流が流れる。
【0027】
このような状態においては、モータ2の接続端子MAにFET121のスイッチングに対応してパルス信号のモータ駆動電圧が生じる。このパルス信号はパルス検出回路131で検出され、検出されたパルス信号はCPU10の演算部101に与えられる。
【0028】
ここで、図2(a)に示すように、CPU10の信号出力部102から出力されてFET121に与えられるPWM1信号におけるハイレベルのパルス幅をTaとし、パルス検出回路131で検出されたパルス信号におけるハイレベルのパルス幅をTbとすると、両者のパルス幅Ta,Tbが演算部101で比較される。
【0029】
比較結果において、パルス幅Ta=Tbである場合は、CPU10の信号出力部102から出力されたPWM1信号のデューティ比に応じた目標負荷電流がモータ2に供給されることになり、PWM1信号のデューティ比を補正する必要はない。一方、比較結果において、図2(a)に示すように、ドライバ回路120やFET121の応答遅れ等により検出されたパルス信号のパルス幅TbがTb<Taである場合には、その差分Tc(=Ta−Tb)がPWM1信号のパルス幅(デューティ比)を補正する補正値として演算部101で算出される。
【0030】
その後、図2(b)に示すように、PWM1信号のパルス幅はそれまでのパルス幅Taに算出された差分Tcが加わり、PWM1信号の新たなパルス幅Ta’は(Ta+Tc)に補正されてCPU10の信号出力部102から出力される。これにより、パルス検出回路131で検出されるパルス信号は、それまでのパルス幅Tbが図2(b)に示すようにパルス幅Tb’(=Tb+Tc)に変化する。
【0031】
したがって、モータ2の接続端子MAに印加されるモータ駆動電圧のパルス信号のパルス幅は、図2(a)に示すパルス幅がTaのPWM1信号と同等となり、目標負荷電流に対応して設定された補正前のPWM1信号のデューティ比に応じた負荷電流がモータ2に供給されることになる。すなわち、目標負荷電流がモータ2に供給されてモータ2が駆動制御される。一方、パルス信号のパルス幅TbがTb>Taである場合でも両者の差分Tcを求めその差分に基づいて上述したと同様な手法でPWM1信号を補正することにより、同様に目標負荷電流がモータ2に供給される。
【0032】
これにより、モータ2に供給される負荷電流を精度よく制御することが可能となり、要求された所望のトルクを得ることができ、安定して車両を運転することができる。
【0033】
一方、PWM1信号のパルス幅Taとパルス検出回路131で検出されたパルス信号のパルス幅Tbとの間に差分Tcが生じるのは、上述したようにドライバ回路120やFET121〜124の応答遅れが主な要因と考えられ、これらの要因は温度やバッテリ3の電圧(電源電圧)によって変動するものと考えられる。しかし、応答遅れの変動をもたらす温度や電源電圧は、コントローラ1の動作時、すなわち車両のエンジンが運転中においては極端に変化することはなく、したがって上記差分Tcの変動も少ないものと想定される。
【0034】
そこで、上記PWM1信号におけるパルス幅の補正動作において、演算部101で上記差分Tcが算出された際に、算出された差分TcをRAM部103に格納して記憶させる。そして、次回PWM1信号を補正する際にこの記憶された差分Tcを用いる。このような手法を採用することで、補正の際に毎回差分Tcを算出する必要はなくなり、演算部101の演算負荷を軽減することができる。
【0035】
また、バッテリ3からCPU10への給電が停止すると、RAM部103に記憶されていた上記差分Tcの情報が消去されてしまう。そこで、RAM部103に記憶された情報をCPU10外の記憶装置14に一時的に退避させて不揮発に記憶するようにする。これにより、CPU10への給電が再開されてCPU10が動作状態になった際に、前回算出されて記憶装置14に記憶された上記差分TcをRAM部103に転送することで、PWM1信号を補正する際に差分Tcを算出する必要はなくなる。したがって、演算負荷を軽減できることに加えて、迅速にPWM1信号を補正することが可能になるので、エンジンの始動後、速やかかつ的確にモータ2が駆動制御されて安定して車両を運転することができる。
【0036】
一方、上述した図1の破線矢印に示す経路でモータ2に負荷電流を供給した際のモータ2の回転方向と逆の回転方向でモータ2を駆動制御する場合、すなわちFET121をオフ状態とし、FET122をオン状態とし、FET123にPWM3信号を与えてスイッチング制御し、FET124をオフ状態として、バッテリ3→FET123→モータ2→FET122→接地電位の経路でモータ2の接続端子MB側から接続端子MA側へ負荷電流を流した場合であっても、接続端子MBに与えられるモータ駆動電圧のパルス信号をパルス検出回路132で検出することで、モータ2の正転時のPWM1信号と同様にPWM3信号を補正することができる。また、このモータ2の逆転時の差分Tcを正転時と区別してRAM部103や記憶装置14に記憶することで、逆転時においても正転時と同様の効果を得ることができる。
【0037】
なお、本発明の負荷駆動装置が駆動制御する負荷は、車両を駆動するモータに限ることはなく、PWM制御によって電流制御される例えばソレノイド等の他の様々な負荷に対しても適用できることは、当業者であれば上記の説明から容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1に係る負荷駆動装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す装置のPWM制御に係わる信号のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1…コントローラ
2…モータ
3…バッテリ
10…CPU
11…電源電圧モニタ回路
12…負荷駆動回路
13,131,132…パルス検出回路
14…記憶装置
100…指示信号部
101…演算部
102…信号出力部
103…RAM部
120…ドライバ回路
121〜124…FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御により負荷を駆動制御する負荷駆動装置において、
パルス信号のPWM信号を受けて、このPWM信号のパルス幅に応じた負荷駆動電圧を前記負荷に供給して前記負荷を駆動する負荷駆動手段と、
前記負荷駆動手段から前記負荷に供給される負荷駆動電圧のパルス信号を検出するパルス検出手段と、
前記パルス検出手段で検出された負荷駆動電圧のパルス信号と、前記負荷駆動手段に与えるパルス信号のPWM信号とを比較し、比較結果に基づいて前記負荷駆動手段に与えるPWM信号のパルス幅を補正する補正値を算出し、この補正値に基づいて前記負荷駆動手段に与えるPWM信号のパルス幅を補正し、補正したパルス幅のPWM信号を前記負荷駆動手段に与え、前記負荷駆動手段が前記負荷に前記PWM信号に応じた負荷電流を供給するように前記負荷駆動手段を制御する制御手段と
を有することを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
前記補正値を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された補正値を用いて前記PWM信号のパルス幅を補正する
ことを特徴とする請求項1記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記比較結果において両信号のパルス幅の差分を補正値として算出し、算出した補正値に基づいて前記PWM信号のデューティ比を補正する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の負荷駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−29083(P2008−29083A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196863(P2006−196863)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】