説明

走行車両

【課題】旋回時の旋回半径を従来より小さくして旋回性と作業性を高めて農作業機を提供すること。
【解決手段】走行車両1のハンドル16をある一定角度以上旋回方向に切った時に、旋回外側後輪7の負荷が小さくても旋回時外側の後輪7だけ下降するように、旋回外側の油圧シリンダ92による伝動ケース24の押圧力を旋回内側となる後輪7側の油圧シリンダ24による伝動ケースの押圧力より強くするので、旋回外側後輪7側の車高が高くなり、旋回半径がより小さくなるので旋回性能が優れた農作業機が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、機体に設けた各一対の前輪と後輪と、前輪を旋回方向に操舵する旋回用ハンドルと、各後輪に動力を伝達する伝動機構を内蔵し、後輪の車軸より前側に設けた回動支点回りに上下に回動する左右各々の伝動ケースと、該伝動ケースを下側に付勢する圧縮スプリングからなる弾性体とを設け、通常の走行時には機体の自重で弾性体が縮んで後輪が上動状態となり、機体の前進で後輪に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により伝動ケースが下側へ回動して後輪が下動状態となるよう構成した農作業機の走行車両が知られている。
【特許文献1】特開2007−1380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の走行車両は、機体旋回時には一般的に旋回外側の駆動負荷が大きくなるから、旋回外側の後輪が下動して機体が旋回内側に傾斜し、小回り旋回をすることができるが、機体の旋回途中において地面の局所的な変化等により旋回外側の後輪の駆動負荷が変化して機体の左右傾斜姿勢が逐次変化するおそれがあり、その結果、機体の旋回半径が変化したりオペレータの居住性が悪くなったりして、円滑な旋回が行えないおそれがある。
本発明の課題は、旋回時の旋回半径を従来より小さくして旋回性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、機体に設けた各一対の前輪(6)と後輪(7)と、該前輪(6)を旋回方向に操舵する旋回用ハンドル(16)と、各後輪(7)に動力を伝達する伝動機構を内蔵し、後輪(7)の車軸(23)より前側に設けた回動支点(24a)回りに上下に回動する左右各々の伝動ケース(24)と、該伝動ケース(24)を強制的に下動させるアクチュエータ(92)と、伝動ケース(24)を下側に付勢する弾性体(96)とを設けた走行車両において、旋回用ハンドル(16)の操作で旋回外側となる後輪(7)側のアクチュエータ(92)による伝動ケース(24)の下動位置を旋回内側となる後輪(7)側のアクチュエータ(92)による伝動ケース(24)の下動位置より低くする制御装置(100)を備えた走行車両である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によれば、旋回用ハンドル(16)をある一定角度以上旋回方向に切った時に、旋回外側後輪(7)の負荷が小さくても、旋回時外側の後輪(7)が内側の後輪(7)より低く下降するように旋回外側後輪(7)のアクチュエータ(92)が強制的に作動するので、旋回中は常時旋回外側の車高が高くなり旋回半径がより小さくなるので、旋回性能が優れた走行車両が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明の農作業機の一実施例である8条植え乗用型田植機について図面に基づき詳細に説明する。
図1の側面図と図2の平面図に示すように、乗用型田植機は走行車両1に昇降用リンク装置2で作業装置の一種である苗植付装置3を装着すると共に施肥装置4を設け、全体で乗用施肥田植機として機能するように構成されている。走行車両1は、駆動輪である左右各一対の前輪6、6および後輪7、7を有する四輪駆動車両であり、また苗植付装置3の後方部位には除草剤散布装置8を設けている。
なお本明細書では田植機の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0007】
図1に示すように、メインフレーム10a、10bにミッションケース11とエンジン12が配設されており、該ミッションケース11の後部上面に油圧ポンプ(図示せず)が一体に組み付けられ、ミッションケース11の前部上方にステアリングポスト14が突設されている。
【0008】
そして、ステアリングポスト14の上端部にステアリングハンドル16が設けられている。機体の上部には操縦用のフロアとなるステップフロア19が取り付けられ、エンジン12の上方部に操縦席20が設置されている。ステアリングハンドル16の左側には変速レバー17、右側には植付昇降レバー21が設けられ、操縦席20の右側には畦クラッチレバー18が設けられている。前輪6、6は、ミッションケース11の側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース22、22に軸支されている。また、後輪7、7は、左右フレーム37の左右両端部に取り付けた後輪伝動ケース24、24に後輪支持体30を介して軸支されている。左右フレーム37はメインフレーム10a,10bの後端部に支持されている。
【0009】
図1と図2に後輪7への動力伝動機構の一部を示すように、エンジン12の回転動力は、プーリ27、ベルト28及びプーリ29を順次経由して油圧式無段変速装置(HST)31の入力軸32aに伝えられ、HST31の出力軸32bからミッションケース11内に伝えられる。
【0010】
リヤ出力軸11a、11aの後端部はミッションケース11の後方に突出し、この突出端部に前記後輪伝動ケース24、24に伝動する左右後輪伝動軸35,35が接続されている。そして、この左右後輪伝動軸35,35により各々左右後輪7,7が駆動回転される構成となっている。
苗植付装置3は、走行車両1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されている。
【0011】
走行車両1に基部が回動自在に設けられた一般的なリフトシリンダー36(図1)のピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車両1に設けた油圧ポンプにて昇降バルブ(図示せず)を介してリフトシリンダー36に圧油を供給・排出して、リフトシリンダー36のピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植付装置3が上下動されるように構成されている。
【0012】
苗植付装置3は、左右フレーム37を介して昇降用リンク装置2の後部にローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース38と、該植付伝動ケース38に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台39と、植付伝動ケース38の後端部に装着され、苗載台39の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける苗植付具41と、植付伝動ケース38の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンター(センサー)フロート42とサイドフロート43等にて構成されている。センターフロート42とサイドフロート43は、圃場を整地すると共に苗植付具41にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0013】
PTO伝動軸45(図1)は両端にユニバーサルジョイントを有し、ミッションケース11内の動力を苗植付装置3の植付伝動ケース38に伝達すべく設けている。また、昇降リンクセンサ51(図5)は、メインフレーム10a,10bに立設した昇降リンク基部フレーム15と昇降用リンク装置2の上下動する昇降用の平行リンク部材2a、2bの間に設けられ、リンク74の動きを検出するポテンショメータであり、手動操作等により苗植付装置3を最上昇位置へ上昇したことを検出できる。
【0014】
そして、センターフロート42の前部に設けられた図5に示す迎い角センサ52は、苗植付装置3の対地高さを検出するものであり、該迎い角センサ52の検出値に基づいて、図5に示す制御装置100により昇降バルブを制御してリフトシリンダー36にて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0015】
即ち、センターフロート42の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられたことを迎い角センサ52により検出した時には油圧ポンプにてミッションケース11内から汲み出された圧油をリフトシリンダー36に送り込んでピストンを突出させて昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート42の前部が適正範囲以上に下がったことを迎い角センサ52により検出した時にはリフトシリンダー36内の圧油をミッションケース11内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。
【0016】
そして、センターフロート42の前部が適正範囲にあるとき(迎い角センサ52の検出値が適正範囲にあり、苗植付装置3が適正な対地高さである時)にはリフトシリンダー36内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持せしめるべく設けられている。このように、センターフロート42を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサーとして用いている。
【0017】
苗植付装置3には4条植の構成で、フレームを兼ねる植付伝動ケース38、苗を載せて左右往復動し苗を一株づつ各条の苗取出口39a(図2)に供給する苗載台39、苗取出口39aに供給された苗を圃場に植付ける苗植付具41等を備えている。
【0018】
図1に示すように、センタフロート42の前方にはロータ70aが配置され、該ロータ70aはサイドフロート43の前方にあるロータ70bより前方に配置されている。ロータ70aは後輪7の伝動ケース24内のギアから伝動軸25を介して動力が伝達され、ロータ70bは両方のロータ70a,70aの駆動軸からそれぞれ動力が伝達される左右一対のチェーンケース71,71内の一対のチェーン(図示せず)から動力伝達される。
また、ロータ70aは梁部材73に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
【0019】
該一対のリンク部材76,77は、梁部材73に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク部材76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と図示しない補強部材に回動自在に支持された取付片との間に前記スプリング78が接続している。
【0020】
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部は支持枠体72に回動自在に支持されている。第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ70aを上方に上げることができる。詳細は省略するが、ロータ70aを上方に移動させると、ロータ70bも同時に上方に移動する機構になっている。
【0021】
施肥装置4は、肥料タンク67内の肥料を肥料繰出部68によって一定量づつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料をブロア69により施肥ホース62を通して施肥ガイド80まで移送し、該施肥ガイド80の前側に設けた作溝体82によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。
【0022】
また、ペダル86はメインクラッチと左右後輪ブレーキ装置(図示せず)を共に操作することができ、ステアリングハンドル16の右下側に配置されており、このペダル86を踏み込むとメインクラッチが切れ、続いて左右後輪ブレーキがかかり、機体は停止する。
【0023】
また、本実施例の乗用型田植機では、後輪7は左右が機体にそれぞれ独立懸架されるが、図3に左側の後輪7とその車軸部分の側面図を示す。なお右側の後輪7の部分の構成は図3のミラー対称構造であることは言うまでもない。
【0024】
後輪7の伝動ケース24は左右フレーム37の左右両端部に取り付けて、後輪支持体30に軸支されている。
昇降リンク基部フレーム15には後輪強制下降用の油圧シリンダ92の一端が連結されている。該油圧シリンダ92のピストン92aの先端部は伝動ケース24に係止されている。
後輪伝動ケース24の回動により後輪7の車軸23は後輪伝動ケース24と一体で上下動する。なお後輪伝動ケース24にはミッションケース11から左右後輪伝動軸35を介して動力が伝達される。
【0025】
また、左右の後輪支持体30に後方に向けて取り付けられた弾性ゴム支持アーム93の先端と後輪伝動ケース24の上面との間にスプリング94を設け、該アーム93と後輪伝動ケース24の上方部位との間に弾性ゴム体96を取り付ける。
従って前進高負荷時に後輪7を左右独立して進行方向に回動させる際に生じる駆動反力(矢印A)により、後輪伝動ケース24が回動支点軸24aを中心に下方に駆動されて自動的に作業車両1の後部側が上昇する。
【0026】
例えば、登り坂での走行時又は畦際での旋回時など前進高負荷時に後輪7に働く駆動反力(図3の矢印A方向に作用)により後輪伝動ケース24が回動支点軸24aの回りに回動しようとするが、この力が後輪7を路面に押圧する圧力は後輪支持体30に設けた弾性ゴム体96でさらに付勢され、後輪伝動ケース24が下側に回動する。
【0027】
この後輪7を路面に押圧する力を弾性ゴム体96で付勢することで作業車両1の後部が持ち上げられ、これにより作業車両1の前部が浮き上がるのを抑制して、前後輪6,7が確実に路面をとらえることができる。こうして前進高負荷時における田植機の走行性が良くなり、特に湿田時の泥押し防止効果が高い。
また、上記構成は機体重量が大きくても前記駆動反力を弾性ゴム体96が補うので後輪7を十分下動させることができる。
【0028】
また、アーム93の先端と後輪伝動ケース24の上面との間に設けたスプリング94が伝動ケース24の後部上面を弾性的に支持し、該スプリング94の先端には弾性ゴム支持アーム93の先端を貫通するケーブル98が連結している。このスプリング94は後輪7の上下動を伝動ケース24を介して走行車両1側に伝達し易くしたり(張力小のとき)、し難くする(張力大のとき)機能がある。
【0029】
弾性ゴム体96は下向きに伝動ケース24を押圧しているが、スプリング94は上向きに伝動ケース24を押圧している。また、ケーブル98でスプリング94を引っ張ると後輪7が下降し難くなる。
上記構成で、本実施例の走行車両1のハンドル16をある一定角度以上旋回方向に切った時に、旋回外側後輪7の負荷が小さくても、旋回時外側の後輪7だけ下降するように強制的に動かす制御を行うことができる。
【0030】
従来の構成では、旋回時に外側後輪7の負荷が小さいと、駆動負荷によるだけで外側後輪7を下降させて車高を上げるだけであったため駆動が不安定になりやすかったか、本実施例では小回り旋回を安定的に行うことができる。
【0031】
また、昇降用リンク装置2のリンク2a又は2bと後輪伝動ケース24との間にスプリング94’(図示せず)を設け、苗植付作業時にはケーブル98でスプリング94’を上側に引っ張る構成とすると、後輪7がスイングし難くなり、また、苗植付装置3がリフトしたら後輪7が下動しやすくなる。
左右独立懸架方式の機体で後輪7が下方に付勢される力を抑えるスプリング94を設けた前記構成において、そのスプリング94を図3に示すように油圧シリンダ92の近傍に設けているので、後輪7が通常状態である苗植付状態(植付装置3は下げ)で機体の後部が上昇しにくい。一方、苗植付装置3を上昇させた場合は機体の後部が上昇しやすくなる。
【0032】
苗植付時に機体の後部が上下動すると(苗植付時に後輪7が下がると)、センタフロート42の迎い角センサ52(図5)の検出値が変化し、苗植付装置3の昇降制御が不安定になったり、該昇降制御の制御感度が不安定になったり、植付姿勢が傾いたりする問題があった。
【0033】
また、補助苗枠99に苗の有無を感知するセンサ53(図5)を設けているが、補助苗枠99に苗を積み込む程、機体の前方が重くなるので、前記感知センサ53はケーブル98を作動させて左右後輪7,7が下動しにくいようにして、機体後方が浮き上がり過ぎないようにした構成とする。
また、こうして機体の前後方向の傾きを少なくし、前後の機体バランスを保ち、また、苗植付装置3の前後方向の傾きも減らすことにより、農作業機の整地性、苗植付性を向上させることができる。
【0034】
苗載台39に設けた苗減少量が所定値になると作動する苗減少スイッチ54(図5)が作動し、苗載台39の苗が小さくなると機体後方が軽くなるので、前記ケーブル98を作動させて左右後輪7,7が下動しにくいようにし、機体後方が上がりすぎないように連動した構成とすることもできる。
【0035】
また、施肥タンク67に肥料が入っているときは、機体後方が重くなるので、前記ケーブル98を作動させて左右後輪7,7が下動しやすいようにし、機体後方が上がりやすくなるようにした構成としても良い。このとき施肥タンク67内の肥料が残り少ないことを感知する肥料切れセンサ55(図5)で肥料量を感知させる。
こうして、施肥タンク67の肥料が多いほど後方が重くなり、機体が後傾になろうとするが、上記構成により不具合を解消できる。
【0036】
さらに、苗植付装置3の後方に取り付ける除草剤散布装置8内に、除草剤が多く入っている場合は後方が重くなるので、前記ケーブル98を作動させて左右後輪7,7が下動しやすいようにし、機体後方が上がりやすくするように連動構成とした。
【0037】
また図4に示す構成でステアリングハンドル16を操作することで後輪7の高さ位置を変更し、旋回性能を向上させることができる。この構成と機能を以下説明する。
平面視で二等辺三角形状のピットマンアーム83の回動支点83aと、該ピットマンアーム83の三角形状の2つの先端部がそれぞれ当接する左右のアーム84,84の各回動支点84a,84aが、機体に固定されている。また左右のアーム84,84の回動支点84a,84aとは反対側の端部は互いに重ねた状態で連結し、該端部に後輪連結ロッド85,85が回動自在にそれぞれ設けられている。さらの左右のアーム84,84の後輪連結ロッド85,85との連結部側の一方には長穴84bがあり、他方のアーム84に設けた連結ピン84cが該長穴84b内を摺動可能に挿入されている。
ステアリングハンドル16を切る操作に比例してピットマンアーム83が回動し、該ピットマンアーム83の回動でアーム84を介して前側に左右の後輪連結ロッド85が引かれて作動する。
【0038】
こうして、旋回外側後輪7の負荷が小さくても外側後輪7が下降して車高が上がるため旋回時に確実に外側後輪7を浮かせて、旋回内側後輪7を該後輪7へ伝動するサイドクラッチを断つことによりフリー回転とすることで機体が下がって、小回りができるようになる。
また、片側車輪が深みにはまった時にも、片側車輪の深みへの下降に応じて車高が高くなり、脱出が容易となる。
【0039】
さらに、前記連結ピン84cを長穴84bから外せば、左右のアーム84,84が独立して回動することになるので、ピットマンアーム83の回動で旋回外側のアーム84のみが押されて前側へ回動し、旋回外側の後輪7のみ強制的に下降させることができる。これにより、機体が旋回内側に傾くことになり、小回り旋回が可能になると共に、オペレータが旋回の遠心力に抗して旋回内側に体を傾け易くなるため居住性が向上し、機体の旋回を円滑に行える。
従って、上記構成により、旋回時に、左右の後輪7,7を共に強制的に下降させる状態と、旋回外側の後輪7のみを強制的に下降させる状態とに切り替えることができる。なお、前記連結ピン84cは、切替手段となる。
【0040】
図2の平面図に示すように本実施例ではエンジン12のリコイル12a(手動でエンジンをかける部材)の取出口を操縦席20の下方に位置するカバーとなるエンジンカバー12bの前面部と右側の側面部との間の隅部の下位置に平面視で斜め前方向へ向けて配置して、機体の前方からでも右側の側方からでも容易にリコイル12aを引き操作できるようにして操作し易くした。
【0041】
これにより、作業者が座席20に座る状態でも、降車して機体前方にいる状態でも、降車して機体の右側の側方にいる状態でも、リコイル12aを容易に操作できてエンジン12の始動を容易に行える。なお、リコイル12aは、上記構成に加えて斜め上に向くように配置すれば、座席20にいる作業者が上向きに容易に操作することができる。
【0042】
また、図示しないが畦越えやトラックの積み込み等、危険を伴うときに降車して機体を操縦するための遠隔操作器となるリモコン操作器を止めるホルダを操縦席20の近辺の機体上のホルダに装着している。リモコン操作器を機体のホルダに装着するとリモコン操作器では田植機の操作ができなくなる構成にすると安全であり、リモコン操作器のボタンに触れて誤操作をする心配がない。
【0043】
ところで、乗用田植機などの農作業機に乗降するための取っ手がないと、高齢者は乗り降りの際に例えば補助苗枠99等を掴まざるを得ず、苗枠破損の原因となっていた。乗用田植機などの農作業機は、耕盤の深い圃場に対応するためにステップ19の地面からの高さが高くなるため、高齢者には乗り降りが困難となっていた。
【0044】
そこで、本実施例の農作業機には、図6(a)の操縦席20のステップ19付近の斜視図、図6(b)、図6(c)の取っ手87の取付部付近のステップ19の断面図を示すように、乗り込み時に把持できる取っ手87は操縦席20のステップ19の窪み部19aに収納でき、必要時には容易に引き出し可能な構成とする。
そのためオペレータが苗供給作業時にステップ上で取っ手87はつまずくことなく、作業が行える。
【0045】
従来は農作業機を降車してのオペレータによる変速レバー17の操作は難しかった。そこで、図7に示すように本実施例の農作業機では、降車して農作業機を操作する場合は、変速レバー17を前方に倒して圃場上で機体の前方からオペレータが操作可能な構成において、変速レバー17を前方に倒すと、変速レバー17が前後進とも、低速レンジまでしか動かないようにし、自動的に車速牽制が入るようにしている。
【0046】
また、降車しての操作時に変速レバー17を前方に倒して操作可能な構成において、変速レバー17を前方に倒すと、自動的にエンジンスロットル弁がアイドリング(または低速)状態に下がるようにした構成にしている。
さらに機体の前方に突出して設けたフロントアーム88を更に前方に倒すと、フロントアーム88に連結した図示しないワイヤでエンジンスロットル弁の牽制がなされてエンジン回転数が高回転にならない構成とした。
【0047】
また、フロントアーム88を倒すと、フロントアーム88に連結した図示しないワイヤで変速レバー17の牽制が働き、前後進共に低速しか出ないようにしている。
これらの構成により本実施例の農作業機は降車しての操作安全性が良い。
【0048】
図8(a)の側面図と図8(b)の背面図に示すようにフロントアーム88の先端部からフロントアーム88内にセンターマスコット89を挿脱自在に取り付けて、フロントアーム88とセンターマスコット89を一体化し、センターマスコット89の先端にランプ89aを設けて、フロントアーム88とセンターマスコット89を1本のレバーとする。
【0049】
また、センターマスコット89の基部側端部をワイヤ90の一端と連結し、該ワイヤ90の他端をフロントアーム88の中間部壁面から外側に取り出してクリップ91の中間部に連結している。ランプ89aはフロントアーム88内の圧縮スプリング88aで常時フロントアーム88より突出する側に付勢されている。
【0050】
また、グリップ91の基部はフロントアーム88の壁面に回動自在に取り付けられており、グリップ91を基部の回動支点91aを中心に矢印A方向に回動させるとワイヤ90がグリップ91に引っ張られて、マスコットランプ89aがフロントアーム88に収納され、この状態を保つと、センターマスコット89がフロントアーム88内に収納されているので、フロントアーム88を後側に回動して収納してもランプ89aがハンドル16等に干渉しない。
【0051】
フロントアーム88を使用時に前方へ傾け、グリップ91を矢印A方向に回動させた状態にすることでランプ89aがフロントアーム88内に収納できる。またグリップ91を図8(a)の状態に元に戻すと、ランプ89aがフロントアーム88から突出した状態に復帰する。
【0052】
また図9に示すように、三角形状のループグリップ91を用いて、把持部にホース91bを巻き付けると、ループグリップ91がフロントアーム88に当たって干渉音が発生ない。
このようにランプ89aをフロントアーム88に収納することにより、フロントアーム88として使用する場合にランプ89aが邪魔にならず、連動で収納できるので便利である。またランプ89aをフロントアーム88内に収納するとランプ89aの破損を防ぐことができる。また、フロントアーム88とマスコットランプ89aを一体化することで全長がなることなく、ハンドル16等などの他の部材の操作の邪魔にならない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、乗用型田植機などの作業機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例である6条植え乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】図1に示す乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】図1に示す乗用型田植機の後輪の伝動部の構成を示す側面図である。
【図4】図1に示す乗用型田植機のピットマンアームの部分の作動説明図である。
【図5】図1に示す乗用型田植機の制御ブロック図である。
【図6】図1に示す乗用型田植機の取っ手部の取付構造図である。
【図7】図1に示す乗用型田植機のハンドル操作部の側面図である。
【図8】図1に示す乗用型田植機のフロントアームとセンターマスコットの構成図である。
【図9】図8の他の実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 走行車両 2 昇降用リンク装置
3 苗植付装置 4 施肥装置
6 前輪 7 後輪
8 除草剤散布装置 10a,10b メインフレーム
11 ミッションケース 11a,11b リヤ出力軸
12 エンジン 12a リコイル
12b エンジンカバー 14 ステアリングポスト
15 昇降リンク基部フレーム
16 ステアリングハンドル 17 変速レバー
18 畦クラッチレバー 19 ステップフロア
19a 窪み部 20 操縦席
21 植付昇降レバー 22 前輪支持ケース
23 後輪車軸 24 後輪伝動ケース
24a 回動支点軸 25 伝動軸
27 プーリ 28 ベルト
29 プーリ 30 後輪支持体
31 油圧式無段変速装置(HST)
32a 入力軸 32b 出力軸
35 左右後輪伝動軸 36 リフトシリンダー
37 左右フレーム 38 植付伝動ケース
39 苗載台 39a 苗取出口
41 苗植付具 42 センターフロート
43 サイドフロート 45 PTO伝動軸
51 昇降リンクセンサ 52 迎い角センサ
53 苗の有無感知センサ 54 苗減少スイッチ
55 肥料切れセンサ 62 施肥ホース
67 肥料タンク 68 肥料繰出部
69 ブロア 70a,70b ロータ
71 チェーンケース 72 支持枠体
73 梁部材 74 リンク
76 第一リンク部材 77 第二リンク部材
78 スプリング 80 施肥ガイド
81 ロータ上下位置調節レバー
82 作溝体 83 ピットマンアーム
83a 回動支点 84 アーム
84a 回動支点 84b 長穴
84c 連結ピン 85 後輪連結ロッド
86 ペダル 87 取っ手
88 フロントアーム 88a 圧縮スプリング
89 センターマスコット 89a マスコットランプ
90 ワイヤ 91 ループグリップ
91a 回動支点 91b ホース
92 油圧シリンダ 93 弾性ゴム支持アーム
94 スプリング 98 ケーブル
99 補助苗枠 100 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に設けた各一対の前輪(6)と後輪(7)と、該前輪(6)を旋回方向に操舵する旋回用ハンドル(16)と、各後輪(7)に動力を伝達する伝動機構を内蔵し、後輪(7)の車軸(23)より前側に設けた回動支点(24a)回りに上下に回動する左右各々の伝動ケース(24)と、該伝動ケース(24)を強制的に下動させるアクチュエータ(92)と、伝動ケース(24)を下側に付勢する弾性体(96)とを設けた走行車両において、
旋回用ハンドル(16)の操作で旋回外側となる後輪(7)側のアクチュエータ(92)による伝動ケース(24)の下動位置を旋回内側となる後輪(7)側のアクチュエータ(92)による伝動ケース(24)の下動位置より低くする制御装置(100)を備えたことを特徴とする走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−195232(P2008−195232A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32515(P2007−32515)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】