説明

走行車両

【課題】四輪自動車と同じような操作感覚で運転(操縦)可能なコンバインにおいて、主変速レバーと操向ハンドルとを直進用及び旋回用油圧駆動装置に連動連結するための機構を簡素化する。
【解決手段】ステアリングコラム内にある操向入力軸87の長手中途部に、操向入力軸87の縦軸線Z回りと当該縦軸線Zと交差する左右横長の横軸線X回りとに回動可能なボールジョイント型の球面軸受手段90を設ける。球面軸受手段90は、操向ハンドル10の操作量に応じた縦軸線Z回りの回動によって旋回用油圧駆動装置28の出力を調節し、且つ、主変速レバー73の操作量に応じた横軸線X回りの回動によって直進用油圧駆動装置25の出力を調節するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンバイン等の農作業機やクレーン車等の特殊作業機のような走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行車両としてのコンバインにおいては、走行機体に搭載されたエンジンからの動力を、直進用油圧駆動装置、旋回用油圧駆動装置及び差動機構を介して左右の走行クローラに伝達するように構成されている。
【0003】
かかる構成のコンバインの一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のコンバインでは、直進用油圧駆動装置の駆動出力量、すなわち走行機体の直進速度が操縦部に設けられた主変速レバーの操作量に応じて調節される。主変速レバーが中立位置にあれば、走行機体は直進しない。また、旋回用油圧駆動装置の駆動出力量、すなわち走行機体の進行(旋回)方向及び旋回速度は、操縦部のうち運転座席の前方に配置された操向ハンドルの回動方向及び回動操作量に応じて調節される。
【0004】
この場合、主変速レバーと操向ハンドルとは、ロッドやアーム、枢支ピン等を多用した機械的連動機構を介して、直進用及び旋回用油圧駆動装置に連動連結されている。当該機械的連動機構の作用により、特許文献1のコンバインは、クローラタイプのものでありながら、四輪自動車と同じような操作感覚で運転(操縦)可能になっている。
【特許文献1】特開2000−177619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、前述の先行技術を更に改良して、主変速レバー等の操作手段と油圧駆動装置とを連動連結するための構造をできるだけ簡素化し、近年高まっているコストダウンの要請に応えることを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明は、走行機体に搭載されたエンジンの動力を、直進用油圧駆動装置、旋回用油圧駆動装置及び差動機構を介して左右の走行部に伝達するように構成されており、前記走行機体の直進速度を変更操作する直進操作体と、前記走行機体の進行方向を変更操作する旋回操作体とを備えている走行車両であって、前記旋回操作体の操作にて第1軸線回りに回動する回動軸に、前記第1軸線回りと前記第1軸線と交差する第2軸線回りとに回動可能な球面軸受手段を備えており、前記球面軸受手段は、前記旋回操作体の操作量に応じた前記第1軸線回りの回動によって前記旋回用油圧駆動装置の出力を調節し、且つ、前記直進操作体の操作量に応じた前記第2軸線回りの回動によって前記直進用油圧駆動装置の出力を調節するように構成されているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した走行車両において、前記球面軸受手段は、前記回動軸に被嵌固定された環状の内輪部と、前記内輪部の外周側に被嵌された外輪部とを備えており、前記外輪部は、前記内輪部に対して、前記第1軸線回りに相対回転不能で、且つ、前記第2軸線回りに独立して回動可能に関連しているというものである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の構成によると、旋回操作体の操作にて第1軸線回りに回動する回動軸に、前記第1軸線回りと前記第1軸線と交差する第2軸線回りとに回動可能な球面軸受手段を備えており、前記球面軸受手段が、直進操作体の操作量に応じて前記直進用油圧駆動装置を駆動させる機能と、前記旋回操作体の操作量に応じて前記旋回用油圧駆動装置を駆動させる機能との両方を兼ね備えることになるから、例えばユニバーサルジョイントのような複雑な構成のものが不要になり、前記直進及び旋回操作体と前記各油圧駆動装置とを連動連結する構造を簡素化できる。その結果、加工精度や組み立て精度の精粗によって動作にバラツキが生ずるのを回避できるし、製造ライン中での組み立て作業性の向上にも寄与できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を、走行車両としてのコンバインに適用した場合の図面(図1〜図11)に基づいて説明する。図1はコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図、図3は走行駆動系統のスケルトン図、図4は主変速レバー及び操向ハンドルが中立位置のときの機械的切換手段を模式的に示す作用説明図、図5はステアリングコラムの正面断面図、図6はステアリングコラムの側面断面図、図7は図6のVII−VII視平面断面図、図8は球面軸受手段の拡大側面断面図、図9は主変速レバーを前進操作したときの機械的切換手段を模式的に示す作用説明図、図10は操向ハンドルを左旋回操作したときの機械的切換手段を模式的に示す作用説明図、図11は球面軸受手段の別例を示す平面断面図である。
【0010】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1及び図2を参照しながら、コンバインの概略構造について説明する。
【0011】
実施形態における3条刈り用のコンバインは、走行部としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、圃場の植立穀稈(未刈穀稈)を刈り取りながら取り込む刈取部3が単動式の油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
【0012】
走行機体1には、フィードチェン7付きの脱穀部6と、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク8とが横並び状に搭載されている。この場合、脱穀部6が走行機体1の進行方向左側に、グレンタンク8が走行機体1の進行方向右側に配置されている。走行機体1の後部には排出オーガ20が旋回可能に設けられている。グレンタンク8内の穀粒は、排出オーガ20の先端籾投げ口から、例えばトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。
【0013】
刈取部3とグレンタンク8との間には操縦部9が設けられている。操縦部9内には、走行機体1の進行(旋回)方向及び旋回速度を変更操作する旋回操作体としての操向ハンドル10や、オペレータが着座する操縦座席11等が配置されている。操縦部9の下方には、動力源としてのエンジン12が配置されている。エンジン12の前方には、当該エンジン12からの動力を適宜変速して左右両走行クローラ2に伝達するためのミッションケース13が配置されている。
【0014】
刈取部3は、バリカン式の刈刃装置14や穀稈搬送装置15等を備えている。刈刃装置14は、刈取部3の骨組を構成する刈取フレーム5の下方に配置されている。穀稈搬送装置15は刈取フレーム5の上方に配置されている。刈取部3にて刈り取られた刈取穀稈は、フィードチェン7に受け継ぎ搬送され、脱穀部6にて脱穀処理される。
【0015】
脱穀部6には、刈取穀稈を脱穀処理するための扱胴16が内蔵されている。扱胴16の下方には、扱網やチャフシーブ等による揺動選別と唐箕ファンの風による風選別とを行うための選別装置17が配置されている。該選別装置17による選別を経て、走行機体1の下部にある一番受け樋(図示せず)に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ及び揚穀コンベヤ(共に図示せず)を介してグレンタンク8に集積される。
【0016】
枝梗付き穀粒等の二番物は、一番コンベヤの後方にある二番コンベヤ及び還元コンベヤ(共に図示せず)を介して処理胴18(図2参照)に送られ、当該処理胴18にて再脱穀される。再脱穀後の二番物は選別装置17に戻されて再選別される。
【0017】
藁屑は、脱穀部6の後部にある排塵ファン19に吸い込まれたのち、走行機体1の後部に形成された排出口から走行機体1の外部へ排出される。
【0018】
フィードチェン7の後方(送り終端側)には排稈チェン21が配置されている。フィードチェン7の後端から排稈チェン21に受け継がれた排稈(脱粒した稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀部6の後方にある排稈カッタ22にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0019】
(2).コンバインの走行駆動系統
次に、図3を参照しながら、コンバインの走行駆動系統について説明する。
【0020】
エンジン12の前方に位置するミッションケース13は、第1油圧ポンプ23及び第1油圧モータ24からなる直進用HST式無段変速機構25(直進用油圧駆動装置)と、第2油圧ポンプ26及び第2油圧モータ27からなる旋回用HST式無段変速機構28(旋回用油圧駆動装置)とを備えている。これら両HST式無段変速機構25,28においては、エンジン12の出力軸12aに、伝達ベルト30a,30bにて、第1及び第2油圧ポンプ23,26の入力軸29a,29bを連動連結させ、各油圧ポンプ23,26を駆動するように構成されている。
【0021】
第1油圧モータ24の出力軸31には、副変速機構32及び差動機構33を介して左右走行クローラ2の各駆動輪34を連動連結させている。差動機構33は左右対称状に配置された一対の遊星ギヤ機構35,35を有している。各遊星ギヤ機構35は、1つのサンギヤ36と、該サンギヤ36の外周で噛合う3つのプラネタリギヤ37と、これらプラネタリギヤ37に噛合うリングギヤ38等にて形成されている。
【0022】
プラネタリギヤ37は、サンギヤ軸39と同軸線上に位置したキャリヤ軸40のキャリヤ41にそれぞれ回転自在に軸支させ、左右のサンギヤ36,36を挟んで左右のキャリヤ41を対向配置させている。リングギヤ38は、各プラネタリギヤ37に噛み合う内歯38aを有していてキャリヤ軸40に回転自在に軸支されている。キャリヤ軸40は左右外向きに延びていて車軸を構成しており、その先端部に駆動輪34(図1及び図3参照)が取り付けられている。
【0023】
直進用HST式無段変速機構25は、第1油圧ポンプ23の回転斜板の角度変更調節により第1油圧モータ24の正逆回転と回転数の制御を行うものである。この場合、第1油圧モータ24の回転出力を、出力軸31の伝達ギヤ42から各ギヤ43,44,45及び副変速機構32を経由してサンギヤ軸39に固定したセンタギヤ46に伝達し、その結果、サンギヤ36を回転させるように構成されている。
【0024】
副変速機構32は、ギヤ44を有する副変速軸47と、ギヤ45を介してセンタギヤ46に噛合う(高速用)ギヤ48を有する駐車ブレーキ軸49とを備えている。副変速軸47とブレーキ軸49との間には、各一対の低速用ギヤ50,51、中速用ギヤ52,53、高速用ギヤ54,48を設けており、低中速スライダ55及び高速スライダ56のスライド操作にて副変速の低速・中速・高速の切換を行うように構成している。なお、副変速の低速・中速間及び中速・高速間には中立(副変速の出力が0(零)になる位置)を有している。
【0025】
駐車ブレーキ軸49には駐車ブレーキ57を設けている。また、刈取部3に回転力を伝達する刈取PTO軸58には、ギヤ59,60及び一方向クラッチ61を介して副変速軸47を連結させており、刈取部3を車速同調速度で駆動させ得るように構成されている。
【0026】
上記構成から分かるように、実施形態のコンバインは、センタギヤ46からサンギヤ軸39に伝達された第1油圧モータ24の駆動力を、左右の遊星ギヤ機構35を介して左右キャリヤ軸40に伝達させると共に、左右キャリヤ軸40に伝達された回転動力を左右の駆動輪34にそれぞれ伝え、左右走行クローラ2を駆動するように構成されている。
【0027】
旋回用HST式無段変速機構28は、第2油圧ポンプ26の回転斜板の角度変更調節により第2油圧モータ27の正逆回転と回転数の制御を行うものである。この場合、ミッションケース13内には、操向出力ブレーキ62を有するブレーキ軸63と、操向出力クラッチ64を有するクラッチ軸65と、前述した左右リングギヤ38の外歯38bに常時噛合させる左右入力ギヤ66,67とを備えている。
【0028】
第2油圧モータ27の出力軸68には、前記ブレーキ軸63及び操向出力クラッチ64を介して、クラッチ軸65を連結させ、クラッチ軸65に、正転ギヤ69を介して右入力ギヤ67を連結させている。また、クラッチ軸65には正転ギヤ69及び逆転ギヤ70を介して左入力ギヤ66を連結させている。
【0029】
低中速及び高速スライダ55,56を中立にして操向出力ブレーキ62を入にし且つ操向出力クラッチ64を切にすることにより、第2油圧モータ27からの回転動力の伝達が阻止される。
【0030】
また、前記中立以外の副変速出力時に操向出力ブレーキ62を切にし且つ操向出力クラッチ64を入にすることにより、第2油圧モータ27の回転動力は、正転ギヤ69を介して右側のリングギヤ38の外歯38bに伝達されると共に、正転ギヤ69及び逆転ギヤ70を介して左側のリングギヤ38の外歯38bに伝達される。その結果、第2油圧モータ27の正転(逆転)時は、互いに逆方向の同一回転数で、左リングギヤ38が逆転(正転)し、右リングギヤ38が正転(逆転)する。
【0031】
而して、旋回用の第2油圧モータ27を停止させて左右リングギヤ38を静止固定させた状態で、直進用の第1油圧モータ24を駆動すると、第1油圧モータ24からの回転出力はセンタギヤ46から左右のサンギヤ36に同一回転数で伝達され、左右遊星ギヤ機構35のプラネタリギヤ37及びキャリヤ41を介して、左右の走行クローラ2が左右同一回転方向で同一回転数にて駆動し、走行機体1の前後方向直進走行が行われる。
【0032】
一方、直進用の第1油圧モータ24を停止させて左右のサンギヤ36を静止固定させた状態で、旋回用の第2油圧モータ27を正逆回転駆動すると、左側の遊星ギヤ機構35が正或いは逆回転し且つ右側の遊星ギヤ機構35が逆或いは正回転し、左右走行クローラ2を逆方向に駆動し、走行機体1を左又は右に旋回させる。
【0033】
また、直進用の第1油圧モータ24を駆動させながら、旋回用の第2油圧モータ27を駆動させると、走行機体1が左右に旋回して進路が修正される。走行機体1の旋回半径は第2油圧モータ27の出力回転数によって決定される。
【0034】
(3).操縦部周辺の構造
次に、図1及び図2を参照しながら、操縦部9周辺の構造について説明する。
【0035】
図2に示すように、操縦部9における操縦座席11の前方に、縦長のステアリングコラム71が立設されている。ステアリングコラム71の上方には、旋回操作体としての丸型の操向ハンドル10が水平回転自在に配置されている。操縦座席11の一側方(実施形態では左側)には、前後に長いサイドコラム72が配置されている。サイドコラム72には、直進操作体としての主変速レバー73、副変速レバー74、刈取クラッチレバー75、脱穀クラッチレバー76が配置されている。
【0036】
主変速レバー73は、走行機体1の前進、停止、後退及びその車速を無段階に変更操作するためのものである。副変速レバー74は、作業状態に応じてミッションケース13内の副変速機構32を変更操作し、直進用HST式無段変速機構25の出力及び回転数を、低速、中速、高速及び中立という4段階の変速段に設定保持するためのものである。刈取クラッチレバー75は、刈取部3への動力継断操作用のものであり、脱穀クラッチレバー76は、脱穀部6への動力継断操作用のものである。実施形態では、いずれのレバー73〜76も前後傾動可能に構成されている。
【0037】
(4).ステアリングコラムの内部構造
次に、図4〜図8を参照しながら、ステアリングコラム71の内部構造について説明する。
【0038】
ステアリングコラム71は、アルミニウム合金鋳物を成形加工して形成し、左右に分割自在な2つ割れ構造になっている。この2つ割れ構造のステアリングコラム71は複数のボルト77(図5及び図6参照)にて締結して箱形に形成している。
【0039】
ステアリングコラム71には、その上部に一体形成された上向き開口コ字型のチルト台78と、チルト台78に回転自在に軸支された下ハンドル軸86と、ステアリングコラム71上面を覆う上面カバー83から上向きに突出するようにして、下ハンドル軸86の上端部に自在継手85を介して連結された上ハンドル軸84とを備えている。旋回操作体としての操向ハンドル10は上ハンドル軸84の上端に取り付けられている。
【0040】
チルト台78には、ステアリングコラム71内部の略中央で上下方向に延びた回動軸としての操向入力軸87の上端部も回転自在に軸支されている。下ハンドル軸86のギヤ88と操向入力軸87のセクタギヤ89(図7参照)を噛み合わせることにより、下ハンドル軸86と操向入力軸87とが動力伝達可能に連結されている。詳細は図示していないが、操向入力軸87の下端部は、ステアリングコラム71を支持するトラックフレームに回動可能に軸支されている。
【0041】
上ハンドル軸84は、上面カバー83から上向きに突出した軸ケース82の内部に回転自在に軸支されている。軸ケース82の周囲は、軟質ゴム製等の蛇腹ブーツ体81にて覆われている。軸ケース82の下部には、チルト台78の両アームに上方から跨る下向き開口コ字型のチルトブラケット80が取り付けられている。
【0042】
チルトブラケット80は、チルト台78の左右両アームに、左右外側からの支点ボルト79を介して回動可能に軸支されている。このため、上ハンドル軸84ひいては操向ハンドル10が、左右の支点ボルト79回りの前後方向に屈曲回動(チルト回動)可能になっている。
【0043】
チルトブラケット80とチルト台78の左右両アームと上面カバー83の一側板とには、横支軸98を貫通させている。詳細は図示していないが、横支軸98の先端部に取り付けられた操作レバー99の回動操作にて、チルトブラケット80をロック状態とフリー状態とに選択的に切り換えることにより、操向ハンドル10は、オペレータの操作し易い屈曲角度(チルト角度)の姿勢に調節・保持される構成になっている。
【0044】
図4〜図6に示すように、操向ハンドル10の回動操作力が伝達される操向入力軸87とサイドコラム72上の主変速レバー73とは、ステアリングコラム71内に配置された機械的切換手段101に連動連結されている。
【0045】
機械的切換手段101は、
1.主変速レバー73を中立位置以外の位置に傾動操作した状態で、操向ハンドル10を中立位置以外の位置に回動操作すると、その回動操作量が大きいほど小さな旋回半径で機体が左又は右に旋回し、且つ旋回半径が小さいほど走行機体1の車速(前進及び後退時の旋回速度)が減速する、
2.主変速レバー73を前進及び後退のいずれの方向に傾動操作した場合であっても、操向ハンドル10の回動操作方向と走行機体1の旋回方向とが一致する(操向ハンドル10を右に回せば走行機体1は右旋回し、操向ハンドル10を左に回せば走行機体1は左旋回する)、
3.主変速レバー73が中立位置にあると操向ハンドル10を操作しても機能しない、
という動作を実行するために、主変速レバー73や操向ハンドル10からの操作力を適宜変換して、ステアリングコラム71内の下部に配置された直進用スライダ111及び旋回用スライダ112(詳細は後述する)に伝達するように構成されている。
【0046】
以下に、機械的切換手段101の具体的構造について説明する。
【0047】
図4〜図6に示すように、ステアリングコラム71内部の略中央で上下方向に延びた操向入力軸87の長手中途部には、操向入力軸87の縦軸線Z回りと当該縦軸線Zと交差する左右横長の横軸線X回りとに回動可能なボールジョイント型の球面軸受手段90が設けられている。
【0048】
球面軸受手段90は、操向入力軸87の長手中途部に被嵌固定された環状の内輪部91と、この内輪部91の外周側に被嵌された環状の外輪部92とを備えている(図7参照)。
【0049】
内輪部91の外周面は一部を除いて凸球面状の滑り面になっている。内輪部91の外周面のうち前述の横軸線Xから半径方向に離れた部位及びその近傍(平面視で横軸線Xと直交する軸線Y上の部位及びその近傍)には、操向入力軸87の縦軸線Z方向に延びる複数のスプライン突起91aが形成されている。
【0050】
一方、外輪部92の内周面も、一部を除いて凹球面状の滑り面になっている。そして、外輪部92の内周面には、内輪部91のスプライン突起91aに対応した複数のスプライン溝92aが凹み形成されている。なお、外輪部92の外周面のうち平面視で横軸線Xと直交する軸線Y上の部位には、後述するプッシュプル式の主変速連結ワイヤ116の一端部を支持する連結アーム93が半径外向きに突設されている。
【0051】
内輪部91の外周側に外輪部92を被嵌した状態では、内輪部91の滑り外周面と外輪部92の滑り内周面とが球面接触すると共に、スプライン突起91a群とスプライン溝92a群とが嵌り合っている(スプライン嵌合している)。
【0052】
すなわち、外輪部92は、内輪部91に対して、縦軸線Z回りには相対回転不能(内輪部91と一体的に回動自在)だが、横軸線X回りにはスプライン突起91a及び溝92a群に沿って独立的に回動可能に関連して設けられている。換言すると、外輪部92は、操向入力軸87の正逆回転にて内輪部91と共に縦軸線Z回りに水平回転可能であり、且つ、連結アーム93が上下揺動するように横軸線X回りに内輪部91と独立して前後傾動回動可能に構成されている。
【0053】
球面軸受手段90の外輪部92から後方斜め上向きに突出した支持アーム94には、入力連結体96が連係ボルト97にて着脱自在に固定されている。このため、操向ハンドル10の回動操作にて操向入力軸87を縦軸線Z回りに正逆回転させると、外輪部92だけでなく入力連結体96も、操向入力軸87(縦軸線Z)回りに正逆回転する。
【0054】
なお、操向入力軸87の縦軸線Zは特許請求の範囲に記載した第1軸線に相当し、縦軸線Zと交差する横軸線Xは特許請求の範囲に記載した第2軸線に相当する。
【0055】
図4〜図8に示すように、操向入力軸87のうち球面軸受手段90より下方の箇所には、略筒型に形成された上下3つのスライダ110〜112が縦軸線Z回りに回動可能で且つ操向入力軸87に沿って上下スライド移動可能に被嵌されている。
【0056】
上下3つのスライダ110〜112のうち最も下に位置した主変速スライダ110には、押し引きの両方向に操作力を伝達可能な主変速用プッシュプルワイヤ113の一端部が連結されている。主変速用プッシュプルワイヤ113の他端部は、サイドコラム72上の主変速レバー73と共にレバー支点軸114回りに一体回動する操作プレート115に連結されている(図4参照)。
【0057】
主変速レバー73を前後方向に傾動操作すると、その操作力が主変速用プッシュプルワイヤ113を介して主変速スライダ110に伝達され、当該主変速スライダ110を操向入力軸87に沿って上下スライド移動させる。
【0058】
また、主変速スライダ110は、プッシュプル式の主変速連結ワイヤ116を介して球面軸受手段90における外輪部92の連結アーム93にも連動連結されている。このため、主変速レバー73の前後傾動操作にて主変速スライダ110を操向入力軸87に沿って上下スライド移動させると、球面軸受手段90の外輪部92が入力連結体96と共に横軸線X回りに前後傾動する。
【0059】
上下3つのスライダ110〜112のうち最も上に位置した直進用スライダ111には、押し引きの両方向に操作力を伝達可能なプッシュプル式の直進用連結ワイヤ117の下端部が連結されている。直進用連結ワイヤ117の上端部は入力連結体96に連結されている。
【0060】
従って、球面軸受手段90の外輪部92が入力連結体96と共に横軸線X回りに前後傾動すると、直進用連結ワイヤ117が直進用スライダ111を操向入力軸87に沿って上下スライド移動させる。
【0061】
一方、上下3つのスライダ110〜112のうち中央に位置した旋回用スライダ112には、押し引きの両方向に操作力を伝達可能なプッシュプル式の旋回用連結ワイヤ122の下端部が連結されている。旋回用連結ワイヤ122の上端部も、直進用連結ワイヤ117と同様に、入力連結体96に連結されている。
【0062】
従って、横軸線X回りに前後傾動した球面軸受手段90の外輪部92が縦軸線Z回りに正逆回転すると、旋回用連結ワイヤ122が旋回用スライダ112を操向入力軸87に沿って上下スライド移動させることになる。
【0063】
なお、上下3つのスライダ110〜112は、主変速レバー73及び操向ハンドル10の操作状態に拘らず、互いに干渉することなく、操向入力軸87に沿って所定の摺動ストロークにて上下スライドするように構成されている。
【0064】
図4、図9及び図10に示すように、直進用及び旋回用の両スライダ111,112には、リニアエンコーダ等の位置検出手段127,128が取り付けられている。当該各位置検出手段127(128)により、操向入力軸87に沿った各スライダ111(112)のスライド位置(昇降位置)が検出される。
【0065】
直進用及び旋回用の位置検出手段127,128はそれぞれ、制御手段としてのコントローラ102に電気的に接続されている。各位置検出手段127,128の検出情報(スライド位置情報)はコントローラ102に適宜入力される。
【0066】
詳細は図示していないが、コントローラ102は、各種演算処理や制御を実行するCPU、制御プログラムやデータを記憶させるためのROM、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM、タイマ機能としてのクロック、各入出力系機器(センサやアクチュエータ等)とデータのやり取りをする入出力インターフェイス等を備えている。
【0067】
なお、図5及び図6に示すように、ステアリングコラム71の右側外面にはアクセルレバー130が前後傾動自在に設けられている。アクセルレバー130は、ステアリングコラム71前面内側に沿わせて延びるアクセルワイヤ131を介して、エンジン12への燃料供給部(図示せず)に連結されている。アクセルレバー130の前後傾動操作にて、燃料供給量ひいてはエンジン12の回転数が調節される。
【0068】
また、ステアリングコラム71の後面にはメンテナンス窓132を開口させている。メンテナンス窓132は着脱式又は開閉式の蓋体133にて塞がれている。
【0069】
(5).HST式無段変速機構(油圧駆動装置)と電動モータとの連動構造
次に、図4、図9及び図10を参照しながら、HST式無段変速機構25,28(油圧駆動装置)と電動モータ141,142との連動構造について説明する。
【0070】
直進用HST式無段変速機構25からは、第1油圧ポンプ23の入力軸29a及び第1油圧モータ24の出力軸31以外に、直進制御軸120が外向きに突出している。
【0071】
直進制御軸120は、第1油圧ポンプ23における回転斜板の傾斜角度(斜板角)を調節するためのものであり、直進用HST式無段変速機構25の出力を調節する調節部として機能する。
【0072】
直進制御軸125は、動力伝達用のギヤ機構143とアクチュエータとしての直進電動モータ141とにより正逆回転可能に構成されている。この場合、直進制御軸120に固着された車速制御アーム121に、中継リンク144を介して、従動側ギヤとしてのセクタギヤ145が連動連結されている。コントローラ102に電気的に接続された直進電動モータ141のモータ出力軸には、駆動側ギヤとしてのピニオンギヤ146が固着されている。これら両ギヤ145,146の噛み合いにて、直進電動モータ141の回転駆動力は直進制御軸120に伝達可能になっている。
【0073】
直進電動モータ141の駆動にて直進制御軸120を正逆回転させ、第1油圧ポンプ23の斜板角を調節することにより、第1油圧モータ24の回転数制御及び正逆転切り換えが実行され、その結果、走行機体1の車速の無段階変更並びに前後進の切り換えが行われる。なお、両ギヤ145,146の組合せが前述のギヤ機構143に相当する。
【0074】
詳細は図示していないが、例えば直進電動モータ141のモータ出力軸、又は直進制御軸120等には、ロータリエンコーダやロータリポテンショメータ等の第1回動角センサが取り付けられている。第1回動角センサにより、モータ出力軸又は直線制御軸120の回動角度、ひいては直進用HST式無段変速機構25の出力量が検出される。第1回動角センサはコントローラ102に電気的に接続されており、その検出情報はコントローラ102に適宜入力される。
【0075】
他方、旋回用HST式無段変速機構28からは、第2油圧ポンプ26における回転斜板の傾斜角度(斜板角)を調節するための旋回制御軸125が外向きに突出している。
【0076】
旋回制御軸125は、旋回用HST式無段変速機構28の出力を調節する調節部として機能するものであり、動力伝達用のギヤ機構147とアクチュエータとしての旋回電動モータ142とにより正逆回転可能に構成されている。
【0077】
図4、図9及び図10から明らかなように、旋回制御軸125と旋回電動モータ142とを連動連結する構造は、直進制御軸120と直進電動モータ141とを連動連結する構造と同じである。旋回制御軸125の操向制御アーム126に、中継リンク148を介してセクタギヤ149が連動連結され、コントローラ102に電気的に接続された旋回電動モータ142のモータ出力軸に、ピニオンギヤ150が固着されている。そして、これら両ギヤ149,150を動力伝達可能に噛み合わせている。
【0078】
旋回電動モータ142の駆動にて旋回制御軸125を正逆回転させ、第2油圧ポンプ26の斜板角を調節することにより、第2油圧モータ27の回転数制御及び正逆転切り換えが実行され、その結果、走行機体1の旋回角度(旋回半径)の無段階変更並びに左右旋回方向の切り換えが行われる。
【0079】
また、例えば旋回電動モータ142のモータ出力軸、又は旋回制御軸125等には第2回動角センサ(図示せず)が取り付けられている。第2回動角センサにより、モータ出力軸又は旋回制御軸125の回動角度、ひいては旋回用HST式無段変速機構28の出力量が検出される。第2回動角センサはコントローラ102に電気的に接続されており、その検出情報はコントローラ102に適宜入力される。
【0080】
(6).機械的切換手段の挙動
次に、図4、図9及び図10を参照しながら、主変速レバー73や操向ハンドル10を操作したときの機械的切換手段101の挙動例について説明する。
【0081】
図4に示すように、主変速レバー73が中立位置のときは、操向ハンドル10を左右に回動操作しても、球面軸受手段95、入力連結体96、直進用連結ワイヤ117及び旋回用連結ワイヤ122が操向入力軸87の縦軸線Z回りの円錐軌跡Cに沿って移動するため、直進用スライダ111及び旋回用スライダ112は、操向入力軸87に沿っての上下スライド移動を行わない。この場合、両スライダ111,112における位置検出手段127,128の検出値が中立時の基準値のままで変化しないから、コントローラ102は直進電動モータ141及び旋回電動モータ142の両方を駆動させない。
【0082】
そうすると、直進制御軸120及び旋回制御軸125がいずれも正逆回転せず、第1及び第2油圧ポンプ23,26の斜板角が両方とも中立状態に保持されるから、両方のHST式無段変速機構25,28が駆動しないのである。
【0083】
つまり、主変速レバー73を中立位置にセットして走行機体1の直進を停止させた状態では、オペレータの不用意な接触等にて操向ハンドル10を回動させたとしても、旋回用HST式無段変速機構28が駆動することはなく、走行機体1を確実に停止状態に維持できる。
【0084】
従って、例えばメンテナンス作業等に際しては、主変速レバー73を中立位置にセットしておけば、オペレータの意図に反して走行機体1が予想外の挙動をするおそれを確実に回避でき、安全性を十分に確保できる。
【0085】
図9に示すように、主変速レバー73を前方に倒す前進操作をしたときは、主変速用プッシュプルワイヤ113、主変速スライダ110及び主変速連結ワイヤ116を経由した操作力により、球面軸受手段90の外輪部92及び入力連結体96が横軸線X回りに回動して前方に傾く。
【0086】
このとき、入力連結体96においては、旋回用連結ワイヤ122との接続部を所定位置に停止させた状態で保持しながら、直進用連結ワイヤ117との接続部を上方に移動させる。このため、直進用連結ワイヤ117のみが引き上げられて、直進用スライダ111が操向入力軸87に沿って上向きにスライド移動する(旋回用スライダ112は中立位置のままで保持される)。
【0087】
そうすると、直進用スライダ111における位置検出手段127のスライド位置情報に基づいて、コントローラ102が直進電動モータ141を駆動させ、この駆動力がギヤ機構143を経由して、第1油圧ポンプ23の直進制御軸120を矢印F方向(前進方向)に正回転させる。その結果、走行機体1は主変速レバー73の前向き傾動操作量に比例しての前進動作を実行する。
【0088】
なお、主変速レバー73を後方に倒す後進操作をしたときは、球面軸受手段90の外輪部92、直進用連結ワイヤ117、直進用スライダ111、直進電動モータ141、ギヤ機構143及び直進制御軸120の動作が、それぞれ前記態様の逆になる。
【0089】
図10に示すように、主変速レバー73を前進操作した状態で、操向ハンドル10を左方向に回転させたときは、球面軸受手段90の外輪部92が横軸線X回りに前方に傾いた姿勢で操向入力軸87(縦軸線Z)回りに正回転して、旋回用連結ワイヤ122との接続部を上方に移動させ、旋回用連結ロッド122が引き上げられる。そして、旋回用スライダ112が操向入力軸87に沿って上向きにスライド移動する。
【0090】
そうすると、旋回用スライダ112における位置検出手段128のスライド位置情報に基づいて、コントローラ102が旋回電動モータ142を駆動させ、この駆動力がギヤ機構147を経由して、第2油圧ポンプ26の旋回制御軸125を矢印L方向(左旋回方向)に正回転させる。その結果、操向ハンドル10の回動操作量に比例して、左走行クローラ2が減速方向に駆動する一方、右走行クローラ2が増速方向に駆動し、左方向に走行機体1を旋回させてその走行進路を修正する。
【0091】
この場合、前述の走行進路修正動作と同時に、操向ハンドル10の左回動操作にて、入力連結体96が横軸線X回りに前方に傾いた姿勢で操向入力軸87(縦軸線Z)回りの矢印A方向に正回転して、入力連結体96における直進用連結ワイヤ117との接続部を下方に移動させ、直進用連結ワイヤ117が押し下げられる。そして、直進用スライダ111が操向入力軸87に沿って下向きにスライド移動する。
【0092】
そうすると、位置検出手段127のスライド位置情報に基づく直進電動モータ141の駆動にて、第1油圧ポンプ23の直進制御軸120が矢印B方向(後退方向)に逆回転し、そのときの旋回半径に対応して走行機体1の前進速度が減速するのである。
【0093】
なお、主変速レバー73を前進操作した状態で、操向ハンドル10を右方向に回転させたときは、球面軸受手段90の縦軸線Z回りの回動方向、直進用及び旋回用連結ワイヤ117,122、直進用及び旋回用スライダ111,112、直進及び旋回電動モータ141,142、ギヤ機構143,147、並びに、直進及び旋回制御軸120,125の動作が、それぞれ前記態様の逆になる。
【0094】
すなわち、主変速レバー73を前進操作した状態で操向ハンドル10を左右に回動操作すると、操向ハンドル10の回転操作量に比例して、進路を修正する旋回半径と直進速度の減速量が変化し、操向ハンドル10の回動操作量が大きいほど、左右の走行クローラ2の速度差を大きくして旋回半径が小さくなると共に、直進速度の減速量が増して車速が遅くなる。このため、走行機体1を旋回(方向転換)させたときに、オペレータ等に作用する遠心力が大きくなり過ぎるのを防止でき、走行機体1の乗り心地を向上できる。
【0095】
また、前進時と後進時とでは、操向ハンドル10の回動操作に対して、入力連結体96における旋回用連結ワイヤ122との接続部の動きが逆になり、前後進の何れにおいても操向ハンドル10の回動操作方向と走行機体の旋回方向とが一致するのである。
【0096】
以上の構成によると、主変速レバー73の傾動操作量に応じて操向入力軸87上をスライド移動する直進用スライダ111と、操向ハンドル10の回動操作量に応じて操向入力軸87上をスライド移動する旋回用スライダ112と、各スライダ111,112のスライド位置を検出する位置検出手段127,128と、各位置検出手段127,128の検出情報に基づいて各電動モータ141,142を駆動させるコントローラ102とを備えているので、各スライダ111,112と各電動モータ141,142とを、ロッドやアーム、枢支ピン等を多用して機械的に連結しなくて済み、機械的制御のような煩雑さをなくせる。このため、構成も至極簡単で且つコンパクトになる。また、製造コストの低下にも寄与できる。
【0097】
その上、直進用スライダ111及び旋回用スライダ112(実施形態では主変速スライダ110も)はいずれも、共通の操向入力軸87に沿ってスライド移動するという簡単な構造であるから、製造ライン中での組み立て作業性を向上できる。
【0098】
実施形態では、操向入力軸87の縦軸線Z回りと縦軸線Zに交差する横軸線X回りとに回動可能な球面軸受手段90が、主変速レバー73の操作にて直進用HST式無段変速機構25を駆動させる機能と、操向ハンドル10の操作にて旋回用HST式無段変速機構28を駆動させる機能との両方を兼ね備えることになるから、特許文献1に記載のような複雑な構造の自在継手が不要になり、主変速レバー73及び操向ハンドル10と、各HST式無段変速機構25,28とを連動連結する構造を簡素化できる。その結果、加工精度や組み立て精度の精粗によって動作にバラツキが生ずるのを回避できるし、製造ライン中での組み立て作業性の向上にも寄与できる。
【0099】
また、操向入力軸87、球面軸受手段90、直進用スライダ111及び旋回用スライダ112は、走行機体1の操縦部9に立設されたステアリングコラム71の内部に配置されているから、操作系統の構造がコンパクトになり、操縦部9周辺の省スペース化に効果を発揮できるのである。
【0100】
(7).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明は、前述のようなコンバインに限らず、トラクタ、田植機等の農作業機やクレーン車等の特殊作業用車両のような各種車両に対して広く適用できる。
【0101】
また、球面軸受手段は、前述したスプライン付きのものに限らず、図11に図示した形態のものであってもよい。すなわち、図11に示す別例の球面軸受手段90′は、外周面が平面視小判型の内輪部91′と、当該内輪部91の外周側に嵌る小判穴を有する環状の外輪部92′とを備えている。このように構成した場合も、外輪部92′は、操向入力軸87の正逆回転にて内輪部91′と共に縦軸線Z回りに水平回転可能であり、且つ、横軸線X回りに内輪部91′と独立して前後傾動回動可能である。
【0102】
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】走行駆動系統のスケルトン図である。
【図4】主変速レバー及び操向ハンドルが中立位置のときの機械的切換手段を模式的に示す作用説明図である。
【図5】ステアリングコラムの正面断面図である。
【図6】ステアリングコラムの側面断面図である。
【図7】図6のVII−VII視平面断面図である。
【図8】球面軸受手段の拡大側面断面図である。
【図9】主変速レバーを前進操作したときの機械的切換手段を模式的に示す作用説明図である。
【図10】操向ハンドルを左旋回操作したときの機械的切換手段を模式的に示す作用説明図である。
【図11】球面軸受手段の別例を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1 走行機体
9 操縦部
10 操向ハンドル
25 直進用HST式無段変速機構(直進用油圧駆動装置)
28 旋回用HST式無段変速機構(旋回用油圧駆動装置)
32 副変速機構
33 差動機構
71 ステアリングコラム
73 主変速レバー
87 回動軸としての操向入力軸
90,90′ 球面軸受手段
91,91′ 内輪部
92,92′ 外輪部
96 入力連結体
101 機械的切換手段
102 制御手段としてのコントローラ
111 直進用スライダ
112 旋回用スライダ
127,128 位置検出手段
141 アクチュエータとしての直進電動モータ
142 アクチュエータとしての旋回電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載されたエンジンの動力を、直進用油圧駆動装置、旋回用油圧駆動装置及び差動機構を介して左右の走行部に伝達するように構成されており、前記走行機体の直進速度を変更操作する直進操作体と、前記走行機体の進行方向を変更操作する旋回操作体とを備えている走行車両であって、
前記旋回操作体の操作にて第1軸線回りに回動する回動軸に、前記第1軸線回りと前記第1軸線と交差する第2軸線回りとに回動可能な球面軸受手段を備えており、
前記球面軸受手段は、前記旋回操作体の操作量に応じた前記第1軸線回りの回動によって前記旋回用油圧駆動装置の出力を調節し、且つ、前記直進操作体の操作量に応じた前記第2軸線回りの回動によって前記直進用油圧駆動装置の出力を調節するように構成されている、
走行車両。
【請求項2】
前記球面軸受手段は、前記回動軸に被嵌固定された環状の内輪部と、前記内輪部の外周側に被嵌された外輪部とを備えており、
前記外輪部は、前記内輪部に対して、前記第1軸線回りに相対回転不能で、且つ、前記第2軸線回りに独立して回動可能に関連している、
請求項1に記載した走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−239032(P2008−239032A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84531(P2007−84531)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】