説明

超音波モータの駆動装置およびその方法

【課題】電力効率の低減を抑えること。
【解決手段】位相の異なる2相の駆動交番信号に基づく駆動交番電圧を超音波振動子4に印加して該超音波振動子4に異なる2つの振動モードを同時に励起させ、該超音波振動子4の出力端に生じた略楕円振動により被駆動体を相対的に移動させる超音波モータの駆動装置であって、超音波振動子の共振周波数またはその近傍の周波数をもつパルス信号である基準駆動信号を生成する基準駆動信号生成部23と、基準駆動信号よりも周波数が高いパルス信号であり、超音波モータの速度に応じたパルス幅をもつ分割信号を生成する分割信号生成部24と、基準駆動信号のハイレベル期間が分割信号で構成された駆動交番信号を生成し、該駆動交番信号を所定の位相差で出力する駆動信号生成部25とを具備する超音波モータの駆動装置3を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータの駆動装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、振動体と、振動体と接触して振動体と相対移動する対象物とを有し、振動体に対して速度に応じたパルス幅を持ったパルス信号を印加することにより、振動体を励起させる振動波モータ用駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、図16(a)に示されるような正弦波に代えて、図16(b)に示されるようなパルス波形の駆動電圧を印加し、このパルス波形のパルス幅t1を変化させることにより、振動体の駆動電圧エネルギーを変化させ、駆動速度を制御することが開示されている。
【特許文献1】特開平5−15155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に開示されているような振動子モータは、インダクタンス素子を介して振動体にパルス信号が印加される構成とされている。この場合、上記特許文献1に開示されているようなパルス信号を印加すると、図15に示されるように、インダクタンス素子の影響により振動体に印加される波形が歪み、この歪みによって電力効率が悪化するという問題があった。
更に、この電圧波形の歪みが超音波モータの動きに悪影響を及ぼす可能性もあった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、電力効率の低減を抑えることのできる超音波モータの駆動装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、位相の異なる2相の駆動交番信号に基づく駆動交番電圧を超音波振動子に印加して該超音波振動子に異なる2つの振動モードを同時に励起させ、該超音波振動子の出力端に生じた略楕円振動により被駆動体を相対的に移動させる超音波モータの駆動装置であって、前記超音波振動子の共振周波数またはその近傍の周波数をもつパルス信号である基準駆動信号を生成する基準駆動信号生成手段と、前記基準駆動信号よりも周波数が高いパルス信号であり、前記超音波モータの速度に応じたパルス幅をもつ分割信号を生成する分割信号生成手段と、前記基準駆動信号のハイレベル期間が前記分割信号で構成された駆動交番信号を生成し、該駆動交番信号を所定の位相差で出力する駆動信号生成手段とを具備する超音波モータの駆動装置を提供する。
【0006】
このような構成によれば、基準駆動信号のハイレベル期間内(基準駆動信号の立ち上がりから立下りまでの期間内)に、基準駆動信号よりも周期が短く、かつ、超音波モータの速度に応じた幅を持つ複数のパルスを分散させることが可能となる。これにより、インダクタンス素子を介したときの電圧波形のひずみを低減することが可能となり、電力効率の低減を抑制することが可能となる。
【0007】
ここで、上記分割信号の周期は、必ずしも一定である必要はない。例えば、基準駆動信号のハイレベル期間内において分割信号の周期が変化してもかまわない。また、基準駆動信号の周期は、分割信号の周期の整数倍である必要はない。
上記超音波モータの駆動装置においては、例えば、前記基準駆動信号生成手段は、所定の位相差を有する2相の前記基準駆動信号を生成し、前記駆動信号生成手段は、各相の基準駆動信号のハイレベル期間において分割信号を出力することで、2相の駆動交番信号を生成することとしてもよい。
【0008】
上記超音波モータの駆動装置において、前記分割信号よりも周波数の高い基準信号を生成する基準信号生成手段を備え、前記基準駆動信号の周期、前記分割信号の周期、および前記分割信号のパルス幅は、前記基準信号の周期の整数倍に設定されることとしてもよい。
このように、基準信号を生成することで、容易に信号の同期を取ることが可能となる。
【0009】
上記超音波モータの駆動装置において、前記超音波モータの移動速度を指示するための速度指示手段を備え、前記分割信号生成手段は、前記速度指示手段からの指示に従って、前記分割信号のパルス幅を変更することとしてもよい。
このような構成によれば、速度指示手段からの指示に応じて超音波モータの速度を自由に変えることができる。
【0010】
本発明は、上記超音波モータの駆動装置を備える超音波モータシステム、並びに、該超音波モータシステムを搭載したカメラを提供する。
【0011】
本発明は、超音波振動子の共振周波数またはその近傍の周波数をもつパルス信号である第1の駆動交番信号と該第1の駆動交番信号と位相が異なり、かつ同一の周波数をもつパルス信号である第2の駆動交番信号とを超音波振動子に印加して該超音波振動子に異なる2つの振動モードを同時に励起させ、該超音波振動子の出力端に生じた略楕円振動により被駆動体を相対的に移動させる超音波モータの駆動方法において、前記第1の駆動交番信号および前記第2の駆動交番信号のハイレベル期間を複数のパルスに分割し、該パルスの幅を前記超音波モータの速度に応じて調整可能とした超音波モータの駆動方法を提供する。
【0012】
このような駆動方法によれば、第1の駆動交番信号および第2の駆動交番信号のハイレベル期間にわたり、超音波振動子の共振周波数で定められる周期よりも短く、かつ、超音波モータの速度に応じた幅を持つ複数のパルスを分散させることが可能となる。これにより、インダクタンス素子を介したときの電圧波形のひずみを低減することが可能となり、電力効率の低減を抑制することが可能となる。
【0013】
上記超音波モータの駆動方法において、前記超音波振動子の共振周波数またはその近傍の周波数をもつパルス信号である基準駆動信号を生成するとともに、該基準駆動信号よりも周波数が高いパルス信号であり、かつ、前記超音波モータの速度に応じたパルス幅をもつ分割信号を生成し、該基準駆動信号のハイレベル期間が該分割信号で構成された駆動交番信号を生成し、該駆動交番信号に位相差をもたせることで前記第1の駆動交番信号および第2の駆動交番信号を生成することとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電力効率の低減を抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る超音波モータの駆動装置および駆動方法が適用される超音波モータシステムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る超音波モータシステムの概略構成を示したブロック図である。
図1に示されるように超音波モータシステム1は、超音波モータ2と超音波モータ2を駆動する駆動装置3とを備えている。超音波モータ2は、超音波振動子4と、超音波振動子4により駆動される被駆動体5とを備えて構成されている。
【0016】
上記超音波振動子4は、図2〜図4に示されるように、矩形板状の圧電セラミックスシート7の片側面にシート状の内部電極8を設けたものを複数枚積層してなる直方体状の圧電積層体9と、該圧電積層体9の一側面に接着された2個の摩擦接触子10とを備えている。
【0017】
図3および図4に示される圧電セラミックスシート7はそれぞれ、その略全面に内部電極8を備えている。内部電極8は、セラミックスシート7の中央部において、セラミックスシート7の長さ方向に沿って設けられた一つの検出用内部電極、およびこの内部電極の周囲に配置されて、この内部電極との間に圧電セラミックスシート7の幅方向に絶縁距離を開け、かつ圧電セラミックスシート7の長さ方向に絶縁距離を開けて設けられた、略同じ大きさを有する四つの駆動用内部電極からなる。各内部電極8は、圧電セラミックスシート7の周縁から隙間を空けて配置されるとともに、その一部が圧電セラミックスシート7の周縁まで延びている。
【0018】
これら内部電極8を備えた圧電セラミックスシート7は、図3に示されるものと、図4に示されるものとが交互に複数枚積層されることにより、直方体状の圧電積層体9を構成している。
【0019】
圧電積層体9の長さ方向の一端面には6個、圧電積層体9の長さ方向の他端面には4個の合計10個の外部電極11が設けられている。各外部電極11には、同種の圧電セラミックスシート7の同一位置に配される全ての内部電極8が接続されている。これにより、同種の圧電セラミックスシート7の同一位置に配される内部電極8は、同一の電位とされるようになっている。なお、これら外部電極11はそれぞれ、配線(図示せず)を介して制御器(図示せず)に接続されている。配線は、リード線、フレキシブル基板等、可撓性を有する配線であれば任意のものでよい。
【0020】
次に、圧電積層体9の動作について説明する。
圧電積層体9の長さ方向の一端に形成された6つの外部電極11を、圧電積層体9の他側面の側(図において上側)からA相(A+,A−)、C相(C+,C−)、およびB相(B+,B−)、他端に形成された4つの外部電極11を、圧電積層体9の他側面の側(図において上側)からB相(B+,B−)、およびA相(A+,A−)とする。A相およびB相は駆動用の外部電極であり、C相は振動検出用の外部電極である。
【0021】
A相およびB相に同位相で共振周波数またはその近傍の周波数に対応する周波数をもつ交番電圧を加えると、図5に示されるような1次の縦振動が励起されるようになっている。また、A相とB相とに逆位相で共振周波数に対応する交番電圧を加えると、図6に示されるような2次の屈曲振動が励起されるようになっている。図5および図6は、有限要素法によるコンピュータ解析結果を示す図である。
【0022】
圧電積層体9に1次の縦振動が発生したときには、摩擦接触子10が圧電積層体9の長さ方向(図5に示されるX方向)に変位させられるようになっている。一方、圧電積層体9に2次の屈曲振動が生じたときには、摩擦接触子10が、圧電積層体9の幅方向(図6に示されるZ方向)に変位させられるようになっている。
【0023】
したがって、超音波振動子のA相とB相とに、位相が90°ずれた共振周波数またはその近傍の周波数に対応する周波数をもつ駆動交番電圧を加えることにより、1次の縦振動と2次の屈曲振動とが同時に発生して、図2に矢印Cで示されるように、摩擦接触子10の位置において時計回りまたは反時計回りの略楕円振動が発生するようになっている。
また、超音波振動子に発生している縦振動に応じた電荷が検出用の内部電極8に励起されることにより、C相(C+,C−)の外部電極11を介して縦振動に比例した信号(以下、この信号を「振動検出信号」という。)が検出される。この振動検出信号は、駆動装置3(図1参照)に供給され、超音波振動子4の制御に用いられる。
【0024】
次に、駆動装置3について説明する。
図7には、駆動装置3の内部概略構成が示されている。
図7に示されるように、駆動装置3は、発信回路(基準信号生成手段)21、制御値設定部22、基準駆動信号生成部(基準駆動信号生成手段)23、分割信号生成部(分割信号生成手段)24、駆動信号生成部(駆動信号生成手段)25、位相差検出部26、位置検出部27、および速度指示部(速度指示手段)28と、ドライブ回路30とを主な構成要素として備えている。
【0025】
発信回路21は基準信号(クロック信号)を生成し、基準駆動信号生成部23、分割信号生成部24に出力する。図8には、基準信号の一例が示されている。
制御値設定部22は、超音波振動子4の駆動周波数、A相とB相との位相差(本実施形態では、90°)、後述する分割信号のパルス幅、超音波モータ2の初期位置および停止位置等、超音波モータ2を制御するために必要となる各種パラメータが設定されているパラメータテーブル(図示略)を備えている。制御設定部22は、このパラメータテーブルおよび後述する位相差検出部26および位置検出部27からのフィードバック値等に基づいて、基準駆動信号の周波数指令値、分割信号のパルス幅指令値、A相B相の位相差指令値等を作成し、基準駆動信号の周波数指令値を基準駆動信号生成部23に、分割信号のパルス幅指令値を分割信号生成部24に、A相B相の位相差指令値を駆動信号生成部25にそれぞれ出力する。
【0026】
上記基準駆動信号の周波数指令値は、基準駆動信号の周波数を超音波振動子4の共振周波数に一致させるための指令値である。
分割信号のパルス幅指令値は、超音波モータの速度に応じて決定される値であり、予め設定された所定の速度で定速制御を行う場合には、該所定の速度に対応して設定されているパルス幅をパラメータテーブルから読み出し、このパルス幅をパルス幅指令値とする。パルス幅は、速度が早いほど大きい値に設定されている。
A相B相の位相差指令値は、A相とB相の位相差を予め設定されている最適な位相差(本実施形態では90°)に一致させるための指令値である。
【0027】
基準駆動信号生成部23は、発信回路21から入力される基準信号S1と制御値設定部22から入力される周波数指令値とに基づいて、所定の周波数のパルス信号である基準駆動信号S2を生成し、これを駆動信号生成部25に出力する。ここで、制御値設定部22は、基準駆動信号生成部23に対して、基準駆動信号の周波数を超音波振動子4の共振周波数またはその近傍の周波数に設定するための周波数指令値を与えるので、基準駆動信号生成部23からは超音波振動子4の共振周波数と略同じ周波数の基準駆動信号が出力される。図8のbは、基準駆動信号S2の一例である。基準駆動信号の周期は、基準信号の周期の整数倍とされる。
【0028】
分割信号生成部24は、発信回路21から入力される基準信号S1と制御値設定部22から入力されるパルス幅指令値とに基づいて、基準駆動信号S2よりも周波数が高く、超音波モータ2の速度に応じたパルス幅をもつ分割信号S3を生成し、これを駆動信号生成部25に出力する。図8のcは、分割信号S3の一例である。ここで、分割信号の周期は、必ずしも一定である必要はない。例えば、基準駆動信号のハイレベル期間内において分割信号の周期が変化してもかまわない。また、基準駆動信号の周期は、分割信号の周期の整数倍である必要はない。
【0029】
駆動信号生成部25は、基準駆動信号S2と制御値設定部22からのA相B相の位相差指令値とに基づいて、位相差が90°であるA相の基準駆動信号とB相の基準駆動信号とを生成し、更に、A相の基準駆動信号のハイレベル期間において分割信号生成部24から入力される分割信号をA相の駆動交番信号として出力し、B相の基準駆動信号のハイレベル期間において分割信号生成部24から入力される分割信号をB相の駆動交番信号として出力する。これにより、A相の基準駆動信号のハイレベル期間が分割信号で構成されたA相の駆動交番信号と、B相の基準駆動信号のハイレベル期間が分割信号で構成されたB相の駆動交番信号とが生成される。
【0030】
このとき、A相、B相の駆動交番信号は、プラス側とマイナス側とに分けて生成される。図8のdには、A相プラス側の駆動交番信号の一例が、図8のeにはB相プラス側の駆動交番信号の一例が、図8のfには、A相マイナス側の駆動交番信号の一例が、図8のgにはB相マイナス側の駆動交番信号の一例がそれぞれ示されている。
このように、本実施形態においては、A相とB相との位相差は90°であり、また、プラス側の駆動交番信号とマイナス側の駆動交番信号とは、正負が逆であり、かつ、位相が180°ずれている。
【0031】
駆動信号生成部25は、A相プラス側の駆動交番信号、B相プラス側の駆動交番信号、A相マイナス側の駆動交番信号、B相マイナス側の駆動交番信号をそれぞれ生成すると、これらの駆動交番信号をドライブ回路30に出力する。
【0032】
ドライブ回路30は、図9に示されるように、スイッチング素子で構成されたHブリッジ回路31とインピーダンスマッチングおよび昇圧用のコイル32とを備えて構成されている。このドライブ回路30に駆動信号生成部25から各種駆動交番信号が入力されると、図10に示される真理値表に従って、各駆動交番電圧OUTA+、OUTA−、OUTB+、OUTB−が出力される。このとき、ドライブ回路30はコイル32を有しているので、パルス信号である駆動交番信号は、コイル32の働きにより正弦波に近い波形に変換され、正弦波に近いA相、B相の駆動交番電圧が超音波振動子4が備えるA相(A+,A−)、B相(B+,B−)の外部電極11にそれぞれ印加される。
図11には、駆動信号生成部25からドライブ回路30に供給されるA相(A+,A−)の駆動交番信号、および、ドライブ回路30から超音波振動子4のA相(A+,A−)に印加される駆動交番電圧OUT(A+,A−)の一例が示されている。
【0033】
図7に戻り、超音波振動子4に励起されている縦振動は、C相(C+,C−)の内部電極8により検出され、この縦振動に比例する電気信号がC相(C+,C−)の外部電極11を介して位相差検出部26に入力されるようになっている。
また、位相差検出部26には、駆動信号生成部25からいずれか一つの駆動交番信号、例えば、A相プラス側の駆動交番信号が入力されるようになっている。位相差検出部26は、超音波振動子4の外部電極11を介して入力された振動検出信号と駆動信号生成部25から入力される駆動交番信号との位相差を検出し、この位相差に比例する電気信号を制御値設定部22に出力する。これにより、超音波振動子4の位相に関するフィードバックループが形成され、超音波振動子4の位相差を一定(例えば、90°)とするためのフィードバック制御が制御値設定部22において行われることとなる。
【0034】
また、超音波モータ4の位置がエンコーダ40により検出され、検出信号が位置検出部27に入力されるようになっている。位置検出部27は、エンコーダ40からの検出信号を処理し、出力パルス数をカウントし、このカウント値を制御値設定部22に出力する。
また、速度指示部28が操作されることにより、所望の速度を指示することができるようになっている。速度指示部28から速度指令値が制御値設定部22に入力されると、制御値設定部22は、速度指示値に対応する分割信号のパルス幅をパラメータテーブルから読み出し、このパルス幅に基づくパルス幅指令を分割信号生成部24に与えるようになっている。
【0035】
次に、上述したような構成を備える駆動装置3により実現される超音波モータ2の駆動方法について説明する。
まず、超音波モータ2の起動時において、発信回路21から基準駆動信号生成部23および分割信号生成部24に基準信号が入力される。一方、制御値設定部22は、パラメータテーブルに設定されている超音波モータ2の駆動周波数を読み出し、この共振周波数を周波数指令値として基準駆動信号生成部23に与える。また、制御値設定部22は、初期値として設定されている分割信号の周波数およびパルス幅をパラメータテーブルから読み出し、これらを分割信号生成部24に与える。更に、制御値設定部22は、パラメータテーブルから初期値として設定されているA相とB相との位相差を読み出し、これを駆動信号生成部25に与える。
【0036】
これにより、基準駆動信号生成部23により超音波振動子4の共振周波数またはその近傍の周波数に設定された基準駆動信号S2が生成されて駆動信号生成部25に出力される。また、分割信号生成部24において、制御値設定部22により与えられた周波数およびパルス幅のパルス信号である分割信号S3が生成され、これが駆動信号生成部25に出力される。
【0037】
駆動信号生成部25では、基準駆動信号S2および制御値設定部22からの位相差に基づいて所定の位相差をもつA相(A+,A−)に対応する基準駆動信号とB相(B+,B−)に対応する基準駆動信号とが生成され、更に、これら各相のハイレベル期間において分割信号S3が駆動交番信号として出力される。
この結果、図8のeからgに示されるように、A相,B相に対応する基準駆動信号のハイレベル期間が分割信号で構成された各駆動交番信号が生成されることとなる。
A相、B相の駆動交番信号は、ドライブ回路30により正弦波の駆動交番電圧に変換されて、超音波振動子4の各外部端子11に印加される。
これにより、超音波振動子には図5および図6に示したような縦振動と屈曲振動とが同時に励起され、その出力端10に楕円振動が形成されることにより被駆動体が相対的に移動させられる。
【0038】
超音波振動子4に励起された縦振動は、C相の内部電極8および外部電極11により検出され、振動検出信号が位相差検出部26に入力される。位相差検出部26では、超音波振動子4に励起されている縦振動と駆動信号生成部25から出力されるA相の駆動交番信号との位相差が検出され、この位相差に応じた電気信号が制御値設定部22に出力される。
また、被駆動体5の移動位置に関する情報は、エンコーダ40、位置検出部27により検出され、移動位置に応じたカウント数が制御値設定部22に出力される。
【0039】
制御値設定部22は、位相差検出部26により検出された位相差(以下「検出位相差」という。)と目標位相差とを比較し、検出位相差が目標位相差となるような周波数指令値を生成し、これを基準駆動信号生成部23に与える。
また、制御値設定部22は、位置検出部27から入力されるカウント値から被駆動体5の移動量を求め、この移動量をサンプリング周期で割ることで超音波モータ2の駆動速度を計算する。そして、この駆動速度が目標速度よりも大きい場合には、分割信号のパルス幅を減少させるパルス幅指令値を作成し、また、駆動速度が目標速度よりも小さい場合には、分割信号のパルス幅を増加させるパルス幅指令値を作成し、これを分割信号生成部24に与える。これにより、図12に示されるように、超音波モータ2の速度に応じてパルス幅が調整された分割信号が生成され、出力される。
【0040】
このようにして、駆動速度や位相差のフィードバック制御が行われながら安定したモータ駆動が行われ、位置検出部27から通知されるカウント数が予め設定されているカウント数に達すると、制御値設定部22は、被駆動体5が所望の位置まで移動したと判断し、駆動信号生成部25に駆動停止指令を出力する。これにより、駆動信号生成部25から駆動交番信号が出力されなくなることにより、超音波振動子4の振動が徐々に終息し、停止することとなる。
【0041】
以上、説明してきたように、本実施形態に係る超音波モータの駆動装置及び駆動方法によれば、図8に示すように、基準駆動信号のハイレベル期間内が基準駆動信号よりも周波数の高い分割信号で構成された駆動交番信号を生成し、この駆動交番信号をドライブ回路30に与えることとしたので、基準駆動信号のハイレベル期間において、電圧印加期間を分散させることが可能となる。これにより、図13および図14に示すように、超音波振動子4に印加する駆動交番電圧の歪みを低減することが可能となり、電力効率の低減を抑制することが可能となる。また、分割信号のパルス幅を超音波モータの速度に応じて変えることで、容易に速度制御を行うことができる。
【0042】
なお、上述の実施形態において、駆動装置3は、ハードウェアにより構成されていても良く、また、ソフトウェアによる処理にて上記駆動制御を実現させるようにしても良い。この場合、駆動装置3は、例えば、CPU(中央演算装置)、HDD(Hard Disc Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成されている。上記の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でROM等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の機能を実現するものとする。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
第1に、上記実施形態においては、超音波振動子4に対して被駆動体3を移動させたが、これに限られず、被駆動体3に対して超音波振動子4を移動させるようにしても良い。
第2に、上記実施形態では、超音波振動子を1つ備える超音波モータについて説明したが、超音波振動子4の設置数については、特に限定されない。超音波振動子4の設置数が増減したとしても、各超音波振動子4に対して上述のような駆動交番信号に基づく駆動交番電圧を印加させることにより、安定した駆動を実現させることが可能となる。この場合、複数の超音波振動子4に対して複数の駆動装置3をそれぞれ設け、個別に駆動信号を供給するような構成としても良いし、1つの駆動装置3から複数の超音波振動子4に対して同一の信号を供給するような構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波モータシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図1の超音波モータの超音波振動子を示す斜視図である。
【図3】図2の圧電積層体を構成する圧電セラミックスシートを示す斜視図である。
【図4】図2の圧電積層体を構成する圧電セラミックスシートを示す斜視図である。
【図5】図2の圧電積層体が1次の縦振動モードで振動する様子をコンピュータ解析により示す図である。
【図6】図2の圧電積層体が2次の屈曲振動モードで振動する様子をコンピュータ解析により示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る超音波モータの駆動装置の内部概略構成を示した図である。
【図8】基準信号、基準駆動信号、分割信号、各駆動交番信号について説明するための図である。
【図9】図7のドライブ回路の内部概略構成を示した図である。
【図10】ドライブ回路の真理値表を示した図である。
【図11】ドライブ回路に入力される駆動交番信号とドライブ回路から出力される駆動交番電圧の波形の一例を示した図である。
【図12】超音波モータの速度が早い場合と遅い場合における分割信号の一例を示した図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る超音波モータの駆動装置および駆動方法の効果について説明するための図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る超音波モータの駆動装置および駆動方法の効果について説明するための図である。
【図15】従来の振動波モータについて説明するための図である。
【図16】従来の振動波モータについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0045】
1 超音波モータシステム
2 超音波モータ
3 駆動装置
4 超音波振動子
5 被駆動体
9 圧電積層体
10 摩擦接触子
21 発信回路
22 制御値設定部
23 基準駆動信号生成部
24 分割信号生成部
25 駆動信号生成部
26 位相差検出部
27 位置検出部
28 速度指示部
30 ドライブ回路
40 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相の異なる2相の駆動交番信号に基づく駆動交番電圧を超音波振動子に印加して該超音波振動子に異なる2つの振動モードを同時に励起させ、該超音波振動子の出力端に生じた略楕円振動により被駆動体を相対的に移動させる超音波モータの駆動装置であって、
前記超音波振動子の共振周波数またはその近傍の周波数をもつパルス信号である基準駆動信号を生成する基準駆動信号生成手段と、
前記基準駆動信号よりも周波数が高いパルス信号であり、前記超音波モータの速度に応じたパルス幅をもつ分割信号を生成する分割信号生成手段と、
前記基準駆動信号のハイレベル期間が前記分割信号で構成された駆動交番信号を生成し、該駆動交番信号を所定の位相差で出力する駆動信号生成手段と
を具備する超音波モータの駆動装置。
【請求項2】
前記分割信号よりも周波数の高い基準信号を生成する基準信号生成手段を備え、
前記基準駆動信号の周期、前記分割信号の周期、および前記分割信号のパルス幅は、前記基準信号の周期の整数倍に設定される請求項1に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項3】
前記超音波モータの移動速度を指示するための速度指示手段を備え、
前記分割信号生成手段は、前記速度指示手段からの指示に従って、前記分割信号のパルス幅を変更する請求項1または請求項2に記載の超音波モータの駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波モータの駆動装置を備える超音波モータシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波モータシステムを搭載したカメラ。
【請求項6】
超音波振動子の共振周波数またはその近傍の周波数をもつパルス信号である第1の駆動交番信号と該第1の駆動交番信号と位相が異なり、かつ同一の周波数をもつパルス信号である第2の駆動交番信号とを超音波振動子に印加して該超音波振動子に異なる2つの振動モードを同時に励起させ、該超音波振動子の出力端に生じた略楕円振動により被駆動体を相対的に移動させる超音波モータの駆動方法において、
前記第1の駆動交番信号および前記第2の駆動交番信号のハイレベル期間を複数のパルスに分割し、該パルスの幅を前記超音波モータの速度に応じて調整可能とした超音波モータの駆動方法。
【請求項7】
前記超音波振動子の共振周波数またはその近傍の周波数をもつパルス信号である基準駆動信号を生成するとともに、該基準駆動信号よりも周波数が高いパルス信号であり、かつ、前記超音波モータの速度に応じたパルス幅をもつ分割信号を生成し、該基準駆動信号のハイレベル期間が該分割信号で構成された駆動交番信号を生成し、該駆動交番信号に位相差をもたせることで前記第1の駆動交番信号および第2の駆動交番信号を生成する請求項6に記載の超音波モータの駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−236834(P2008−236834A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69106(P2007−69106)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】