超音波モータ
【課題】 ロータとステータの圧接状態を改善してロータの回転効率を向上した超音波モータを提供する。
【解決手段】 圧電体13及び円周方向に配列した多数の櫛歯121を備える櫛歯体12で構成されるステータ1と、回転軸3に支持されて櫛歯に圧接されるロータ2とを備え、各櫛歯121は少なくともロータ2に圧接する部分が所要の間隔で径方向に配列された複数の針状体122で構成する。針状体122は先端部が径方向に弾性変形可能で、円周方向には所要の剛性を有する構成とする。ロータ2が櫛歯121に圧接したときに針状体122は径方向に弾性変形することで各針状体122の先端がロータ2に確実に圧接し、ロータ2と櫛歯121との摩擦力を所定の摩擦力に保持でき、ステータ1の振動によるロータ2の回転効率を高くする。
【解決手段】 圧電体13及び円周方向に配列した多数の櫛歯121を備える櫛歯体12で構成されるステータ1と、回転軸3に支持されて櫛歯に圧接されるロータ2とを備え、各櫛歯121は少なくともロータ2に圧接する部分が所要の間隔で径方向に配列された複数の針状体122で構成する。針状体122は先端部が径方向に弾性変形可能で、円周方向には所要の剛性を有する構成とする。ロータ2が櫛歯121に圧接したときに針状体122は径方向に弾性変形することで各針状体122の先端がロータ2に確実に圧接し、ロータ2と櫛歯121との摩擦力を所定の摩擦力に保持でき、ステータ1の振動によるロータ2の回転効率を高くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波モータに関し、特に供給する電力に対する回転効率を向上した超音波モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、複数に分極した圧電体を円周配置したステータと、このステータに所定の圧力で当接した回転可能な円板状あるいは円環状のロータとで構成され、ステータの圧電体に高周波電圧を印加して圧電体を振動させ、この振動を圧電体と一体的に設けた櫛歯体によって円周方向に拡大させて櫛歯体を円周方向に向けて進行波動作させることで、圧電体に摩擦係合しているロータを軸回り方向に回転動作させるものである。
【0003】
図11は従来の超音波モータの一例の断面図であり、円板状の台座11の下側に円周方向に複数の櫛歯121を配列した短円筒容器状の櫛歯体12が一体に設けられており、この櫛歯体12の上面には前記櫛歯121に対応して円周方向に複数に分極された円形薄板状の圧電体13が一体的に搭載され、これら圧電体13と櫛歯体12とでステータ1が構成される。また、圧電体13にはフレキシブル基板14を介して高周波電圧が印加されるようになっている。前記台座11の中心の軸穴112内には円筒状のスリーブ15が固定され、このスリーブ15内にはボールベアリング17が内装され、このボールベアリング17によって回転軸3が軸支される。この回転軸3には、周壁部21の上端面が前記櫛歯体12の各櫛歯121に当接された短円筒状をしたロータ2が取着されている。また、スリーブ15の下端部と前記ボールベアリング17との軸方向の間に圧縮コイルスプリング16が介挿され、この圧縮コイルスプリング16の軸方向の弾性力によってボールベアリング17及び回転軸3を付勢してロータ2をステータ1の櫛歯121に圧接させている。
【0004】
この超音波モータでは、フレキシブル基板14を通して圧電体13に高周波電圧を印加すると、圧電体13が振動し、これと一体の櫛歯体12が振動し、円周方向に配列されている複数の櫛歯121が円周方向に変位される。そのため、櫛歯121に当接しているロータ2の周壁部21が摩擦力によって当該円周方向に移動され、ロータ2及びこれと一体化されている回転軸3が回転される。
【0005】
このように、ロータ2をステータ1に対して所要の圧力で当接しているが、ステータ1の櫛歯体12の振動を効率良くロータ1の回転運動に変換するためには、ロータ2をステータ1に対して偏りなく圧接させる必要がある。そのため、ロータ2の周壁部21とステータ1の櫛歯121とが圧接する圧接面を数μm程度の加工精度で加工する必要があり、また周壁部21と櫛歯121の圧接面が密接するように組立精度を高める必要もある。実際に製造する超音波モータでは、これらの要件を満たすことは難しいため、結果としてロータ2の回転運動の変換損失となり、回転効率の高い超音波モータを得ることが困難である。また、仮に面精度を高めることが可能でも加工コストが高くなり、高コストな超音波モータになる。
【0006】
特許文献1では、ステータの櫛歯をロータの回転方向に弾性変形可能に構成している。特許文献1では、櫛歯が振動したときにロータの回転方向の弾性変形によってロータに圧接した状態で振動をロータに伝えることができ、ステータとロータとの間の滑りを防止して回転効率を高める上で有効である。
【特許文献1】特開2002−58266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、ステータの櫛歯はロータの回転方向に弾性変形するため、図11に示したような櫛歯が円周方向に変位して回転力をロータに伝達する構成の超音波モータに適用することはできない。また、適用可能な場合でも、櫛歯は径方向については弾性変形する構成とはなっていないため、櫛歯とロータとの径方向における両者の面精度が悪いと両者間の圧接に偏りが生じることは避けられず、回転効率を向上する上での障害になる。
【0008】
本発明の目的は、ロータとステータの圧接状態を改善してロータの回転効率を向上した超音波モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧電体及び円周方向に配列した多数の櫛歯を備える櫛歯体で構成される円形をしたステータと、回転軸に支持されて櫛歯体に圧接される円形のロータとを備える超音波モータであって、各櫛歯は少なくともロータに圧接する部分が所要の間隔で径方向に配列された複数の針状体で構成されていることを特徴とする。針状体は少なくとも先端部が径方向に弾性変形可能で、円周方向には所要の剛性を有する構成とする。
【0010】
例えば、針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成される。あるいは、針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成され、かつ内径側の辺が外径側の辺よりも短い台形に形成される。また、針状体はそれぞれ独立した板状に形成され、各針状体は基端部が櫛歯体に一体であり、先端部がロータに圧接される構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロータが櫛歯に圧接したときに、櫛歯を構成している針状体は板厚方向、すなわち径方向に弾性変形することで各針状体の先端がロータに確実に圧接し、ロータと櫛歯との摩擦力を所定の摩擦力に保持でき、ステータの振動によるロータへの回転力の伝達効率が高くなる。これにより、ロータやステータの面精度を高めなくともロータの回転効率を向上することが可能になる。
【実施例1】
【0012】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例1の超音波モータの斜視図、図2はその縦断面図である。また、図3は部分分解斜視図である。これらの図において、モータ取付用の取付穴111を有する円板状の台座11の下側に円周方向に複数の櫛歯121を配列した短円筒容器状の櫛歯体12が一体に設けられており、この櫛歯体12の上面には前記櫛歯121に対応して円周方向に複数に分極された円形薄板状の圧電体13が一体的に搭載され、これら圧電体13と櫛歯体12とでステータ1が構成される。また、圧電体13にはフレキシブル基板14を介して高周波電圧が印加されるようになっている。前記台座11の中心には軸穴112が開口され、内周面に円筒状のスリーブ15が固定されている。また、このスリーブ15内にはボールベアリング17が内装され、このボールベアリング17によって回転軸3が軸支され、ワッシャ31により抜け止めされる。この回転軸3には、周壁部21の上端面が前記櫛歯体12の各櫛歯121に当接された短円筒状をしたロータ2が取着されている。また、スリーブ15の下端部と前記ボールベアリング17との軸方向の間に圧縮コイルスプリング16が介挿されており、この圧縮コイルスプリング16の軸方向の弾性力によってボールベアリング17及びこれを支持している回転軸3を上方向に付勢し、この付勢力でロータ2をステータ1の櫛歯121に圧接させている。
【0013】
図4は前記櫛歯体12とロータ2の周壁部21との圧接状態を示す拡大断面図であり、図5は前記櫛歯体12の上下を反対に向けた斜視図である。前記櫛歯体12の円周に沿って設けられた多数の櫛歯121は、それぞれ径方向に微細間隔を置いて配列された複数個、ここでは各6個の針状体122で構成されている。図6(a)に図4のA−A線断面図を示し、図6(b)に1個の針状体122の斜視図を示すように、各針状体122は先端部122aの回転軸の軸方向の断面が円弧状をした長方形の薄板状に形成されており、その板厚方向、すなわち櫛歯体12の径方向に所要の間隔をおいて配列され、それぞれの針状体122は基端部122bにおいて櫛歯体に連結するように櫛歯体12に一体に形成されている。また、前記針状体122は径方向に並んだ6個の針状体が先端部122aにおいてロータ2の周壁部21の圧接面に接する面積の合計が、ロータ2の周壁部21との間に生じる摩擦力が所定値となるように各針状体122の板厚や先端部122aの円弧形状が設計される。さらに、各針状体122は、先端部122aが基端部122bに対して板厚方向、すなわち櫛歯体12の径方向に弾性変形が可能な一方で、円周方向には所要の剛性が得られるようにその板厚や円周方向の長さが設計されている。
【0014】
前記櫛歯121を構成している針状体122を一体に有する櫛歯体12は、PPS、ナイロン等のような熱変形温度が200℃以上の樹脂ベースに、チタン酸カリウムウイスカ等の耐磨耗性物質がコンパウンドされている材料で構成されており、射出成形等によって針状体と共に一体に製造される。あるいは、前記櫛歯121を構成している針状体122は、鉄、ステンレス、リン青銅、黄銅等の金属で形成され、その表面に無電解Ni−Pメッキ等の低摩擦、耐磨耗性の表面処理を施して形成され、これを鉄、ステンレス、リン青銅、黄銅等の金属やABS、PC等の樹脂で円板状に形成した櫛歯体12に接着や溶接等によって固定して製造される。
【0015】
この実施例1の超音波モータでは、フレキシブル基板14を通して圧電体13に高周波電圧を印加すると、圧電体13が振動し、これと一体の櫛歯体12が振動し、円周方向に配列されている複数の櫛歯121、すなわち各櫛歯121を構成しているそれぞれ6個の針状体122が円周方向に変位される。ロータ2の周壁部21は圧縮コイルスプリング16のバネ力によって各針状体122の先端部122a、すなわち圧接面に圧接されているため、この圧接によってロータ2の周壁部21と針状体122との圧接面に生じる摩擦力によってロータ2の周壁部21が円周方向に移動され、ロータ2及びこれと一体化されている回転軸3が回転される。回転軸3の回転力は回転軸3に取着された図には表れない歯車を介して外部に伝達される。
【0016】
このとき、ロータ2の周壁部21とステータ1の櫛歯121(針状体122)の圧接面は所定の摩擦力を得るように設計されているが、両者の圧接面の面精度によって両圧接面が密接していないと目的とする摩擦力を得ることができず、ロータの回転効率が低下することは前述の通りである。実施例1では、ロータ2の周壁部21が櫛歯121の圧接面に圧接したときに、ロータの周壁部の圧接面の面精度が低い場合でも、櫛歯121を構成している針状体122は図4に示したように板厚方向、すなわち径方向に弾性変形することで各針状体122の先端部122aがロータ2の周壁部21の圧接面に確実に圧接することになる。この場合、図4の例では周壁部21の圧接面が回転軸と垂直な面に対して外径方向に上方に傾斜した円錐面として形成しているので、各針状体122の先端部122aを揃って内径方向に弾性変形させることができる。したがって、一部の針状体が外径方向に弾性変形する等して各針状体122が相互に干渉して好適な圧接状態の障害になることはない。これにより、各6個の針状体122、すなわち櫛歯121とロータ2の周壁部21の各圧接面が設計通りの面積で圧接した状態が保持され、両者間での摩擦力を所定値に設定することが可能になる。また、各針状体122は径方向に弾性変形するが円周方向には所要の剛性が確保されるので、櫛歯体12が振動したときにそれぞれ6個の針状体122によって構成される個々の櫛歯121における円周方向の変位によるロータ2への回転力の伝達に損失が生じることはない。これにより、ロータ2の回転効率を向上することができる。
【実施例2】
【0017】
図7(a),(b)は実施例2の櫛歯を示す図であり、図6(a),(b)と同様の図である。実施例2では、針状体123を軸に垂直な断面が台形となるように形成している。ここでは、針状体123の内径側の辺123aを外径側の辺123bよりも短い台形に形成している。これにより、針状体123は板厚方向に変形する際には寸法の短い内径側の辺123aに向けて変形され易くなり、ロータ2の周壁部21の圧接面を図4に示した実施例1のように外径側に向けて上方に傾斜させることなく、回転軸の軸方向と垂直な水平面に形成した場合でも、各針状体を揃って短辺側、すなわち内径側に弾性変形させることができる。
【0018】
ここで、櫛歯体12の各櫛歯121を構成している針状体の数は実施例のように6個に限られるものではなく、任意の数に設定できる。例えば図8のように各櫛歯121を3個の針状体124で構成してもよい。これはロータとの間に要求される摩擦力や超音波モータの径寸法、さらには針状体の形状や寸法及び弾性力等の要因に応じて適切な数に設定すればよい。
【0019】
また、図9のように、各針状体125は基端側の板厚を先端側よりも厚く形成して径方向の弾性変形量に節度を与えるようにしてもよい。あるいは、各針状体は必ずしも基端から先端まで独立した板状に形成されるものではなく、図10のように、先端側の部分のみが板状に分離されて径方向に弾性変形可能な構成の針状体126として構成してもよい。この場合においても、各針状体126は基端側の板厚を先端側よりも厚くしたテーパ状に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の超音波モータの外観斜視図である。
【図2】図1の超音波モータの軸方向の断面図である。
【図3】図1の超音波モータの部分分解斜視図である。
【図4】櫛歯とロータの圧接部分の拡大断面図である。
【図5】櫛歯体の上下を反対にした斜視図である。
【図6】実施例1の櫛歯の図4のA−A線断面図と針状体の斜視図である。
【図7】実施例2の櫛歯の図4のA−A線断面図と針状体の斜視図である。
【図8】針状体の変形例1の断面図である。
【図9】針状体の変形例2の断面図である。
【図10】針状体の変形例3の断面図である。
【図11】従来の超音波モータの一例の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ステータ
2 ロータ
3 回転軸
11 台座
12 櫛歯体
13 圧電体
14 フレキシブル基板
15 スリーブ
16 圧縮コイルスプリング
17 ボールベアリング
21 周壁部
121 櫛歯
122〜126 針状体
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波モータに関し、特に供給する電力に対する回転効率を向上した超音波モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、複数に分極した圧電体を円周配置したステータと、このステータに所定の圧力で当接した回転可能な円板状あるいは円環状のロータとで構成され、ステータの圧電体に高周波電圧を印加して圧電体を振動させ、この振動を圧電体と一体的に設けた櫛歯体によって円周方向に拡大させて櫛歯体を円周方向に向けて進行波動作させることで、圧電体に摩擦係合しているロータを軸回り方向に回転動作させるものである。
【0003】
図11は従来の超音波モータの一例の断面図であり、円板状の台座11の下側に円周方向に複数の櫛歯121を配列した短円筒容器状の櫛歯体12が一体に設けられており、この櫛歯体12の上面には前記櫛歯121に対応して円周方向に複数に分極された円形薄板状の圧電体13が一体的に搭載され、これら圧電体13と櫛歯体12とでステータ1が構成される。また、圧電体13にはフレキシブル基板14を介して高周波電圧が印加されるようになっている。前記台座11の中心の軸穴112内には円筒状のスリーブ15が固定され、このスリーブ15内にはボールベアリング17が内装され、このボールベアリング17によって回転軸3が軸支される。この回転軸3には、周壁部21の上端面が前記櫛歯体12の各櫛歯121に当接された短円筒状をしたロータ2が取着されている。また、スリーブ15の下端部と前記ボールベアリング17との軸方向の間に圧縮コイルスプリング16が介挿され、この圧縮コイルスプリング16の軸方向の弾性力によってボールベアリング17及び回転軸3を付勢してロータ2をステータ1の櫛歯121に圧接させている。
【0004】
この超音波モータでは、フレキシブル基板14を通して圧電体13に高周波電圧を印加すると、圧電体13が振動し、これと一体の櫛歯体12が振動し、円周方向に配列されている複数の櫛歯121が円周方向に変位される。そのため、櫛歯121に当接しているロータ2の周壁部21が摩擦力によって当該円周方向に移動され、ロータ2及びこれと一体化されている回転軸3が回転される。
【0005】
このように、ロータ2をステータ1に対して所要の圧力で当接しているが、ステータ1の櫛歯体12の振動を効率良くロータ1の回転運動に変換するためには、ロータ2をステータ1に対して偏りなく圧接させる必要がある。そのため、ロータ2の周壁部21とステータ1の櫛歯121とが圧接する圧接面を数μm程度の加工精度で加工する必要があり、また周壁部21と櫛歯121の圧接面が密接するように組立精度を高める必要もある。実際に製造する超音波モータでは、これらの要件を満たすことは難しいため、結果としてロータ2の回転運動の変換損失となり、回転効率の高い超音波モータを得ることが困難である。また、仮に面精度を高めることが可能でも加工コストが高くなり、高コストな超音波モータになる。
【0006】
特許文献1では、ステータの櫛歯をロータの回転方向に弾性変形可能に構成している。特許文献1では、櫛歯が振動したときにロータの回転方向の弾性変形によってロータに圧接した状態で振動をロータに伝えることができ、ステータとロータとの間の滑りを防止して回転効率を高める上で有効である。
【特許文献1】特開2002−58266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、ステータの櫛歯はロータの回転方向に弾性変形するため、図11に示したような櫛歯が円周方向に変位して回転力をロータに伝達する構成の超音波モータに適用することはできない。また、適用可能な場合でも、櫛歯は径方向については弾性変形する構成とはなっていないため、櫛歯とロータとの径方向における両者の面精度が悪いと両者間の圧接に偏りが生じることは避けられず、回転効率を向上する上での障害になる。
【0008】
本発明の目的は、ロータとステータの圧接状態を改善してロータの回転効率を向上した超音波モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、圧電体及び円周方向に配列した多数の櫛歯を備える櫛歯体で構成される円形をしたステータと、回転軸に支持されて櫛歯体に圧接される円形のロータとを備える超音波モータであって、各櫛歯は少なくともロータに圧接する部分が所要の間隔で径方向に配列された複数の針状体で構成されていることを特徴とする。針状体は少なくとも先端部が径方向に弾性変形可能で、円周方向には所要の剛性を有する構成とする。
【0010】
例えば、針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成される。あるいは、針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成され、かつ内径側の辺が外径側の辺よりも短い台形に形成される。また、針状体はそれぞれ独立した板状に形成され、各針状体は基端部が櫛歯体に一体であり、先端部がロータに圧接される構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロータが櫛歯に圧接したときに、櫛歯を構成している針状体は板厚方向、すなわち径方向に弾性変形することで各針状体の先端がロータに確実に圧接し、ロータと櫛歯との摩擦力を所定の摩擦力に保持でき、ステータの振動によるロータへの回転力の伝達効率が高くなる。これにより、ロータやステータの面精度を高めなくともロータの回転効率を向上することが可能になる。
【実施例1】
【0012】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例1の超音波モータの斜視図、図2はその縦断面図である。また、図3は部分分解斜視図である。これらの図において、モータ取付用の取付穴111を有する円板状の台座11の下側に円周方向に複数の櫛歯121を配列した短円筒容器状の櫛歯体12が一体に設けられており、この櫛歯体12の上面には前記櫛歯121に対応して円周方向に複数に分極された円形薄板状の圧電体13が一体的に搭載され、これら圧電体13と櫛歯体12とでステータ1が構成される。また、圧電体13にはフレキシブル基板14を介して高周波電圧が印加されるようになっている。前記台座11の中心には軸穴112が開口され、内周面に円筒状のスリーブ15が固定されている。また、このスリーブ15内にはボールベアリング17が内装され、このボールベアリング17によって回転軸3が軸支され、ワッシャ31により抜け止めされる。この回転軸3には、周壁部21の上端面が前記櫛歯体12の各櫛歯121に当接された短円筒状をしたロータ2が取着されている。また、スリーブ15の下端部と前記ボールベアリング17との軸方向の間に圧縮コイルスプリング16が介挿されており、この圧縮コイルスプリング16の軸方向の弾性力によってボールベアリング17及びこれを支持している回転軸3を上方向に付勢し、この付勢力でロータ2をステータ1の櫛歯121に圧接させている。
【0013】
図4は前記櫛歯体12とロータ2の周壁部21との圧接状態を示す拡大断面図であり、図5は前記櫛歯体12の上下を反対に向けた斜視図である。前記櫛歯体12の円周に沿って設けられた多数の櫛歯121は、それぞれ径方向に微細間隔を置いて配列された複数個、ここでは各6個の針状体122で構成されている。図6(a)に図4のA−A線断面図を示し、図6(b)に1個の針状体122の斜視図を示すように、各針状体122は先端部122aの回転軸の軸方向の断面が円弧状をした長方形の薄板状に形成されており、その板厚方向、すなわち櫛歯体12の径方向に所要の間隔をおいて配列され、それぞれの針状体122は基端部122bにおいて櫛歯体に連結するように櫛歯体12に一体に形成されている。また、前記針状体122は径方向に並んだ6個の針状体が先端部122aにおいてロータ2の周壁部21の圧接面に接する面積の合計が、ロータ2の周壁部21との間に生じる摩擦力が所定値となるように各針状体122の板厚や先端部122aの円弧形状が設計される。さらに、各針状体122は、先端部122aが基端部122bに対して板厚方向、すなわち櫛歯体12の径方向に弾性変形が可能な一方で、円周方向には所要の剛性が得られるようにその板厚や円周方向の長さが設計されている。
【0014】
前記櫛歯121を構成している針状体122を一体に有する櫛歯体12は、PPS、ナイロン等のような熱変形温度が200℃以上の樹脂ベースに、チタン酸カリウムウイスカ等の耐磨耗性物質がコンパウンドされている材料で構成されており、射出成形等によって針状体と共に一体に製造される。あるいは、前記櫛歯121を構成している針状体122は、鉄、ステンレス、リン青銅、黄銅等の金属で形成され、その表面に無電解Ni−Pメッキ等の低摩擦、耐磨耗性の表面処理を施して形成され、これを鉄、ステンレス、リン青銅、黄銅等の金属やABS、PC等の樹脂で円板状に形成した櫛歯体12に接着や溶接等によって固定して製造される。
【0015】
この実施例1の超音波モータでは、フレキシブル基板14を通して圧電体13に高周波電圧を印加すると、圧電体13が振動し、これと一体の櫛歯体12が振動し、円周方向に配列されている複数の櫛歯121、すなわち各櫛歯121を構成しているそれぞれ6個の針状体122が円周方向に変位される。ロータ2の周壁部21は圧縮コイルスプリング16のバネ力によって各針状体122の先端部122a、すなわち圧接面に圧接されているため、この圧接によってロータ2の周壁部21と針状体122との圧接面に生じる摩擦力によってロータ2の周壁部21が円周方向に移動され、ロータ2及びこれと一体化されている回転軸3が回転される。回転軸3の回転力は回転軸3に取着された図には表れない歯車を介して外部に伝達される。
【0016】
このとき、ロータ2の周壁部21とステータ1の櫛歯121(針状体122)の圧接面は所定の摩擦力を得るように設計されているが、両者の圧接面の面精度によって両圧接面が密接していないと目的とする摩擦力を得ることができず、ロータの回転効率が低下することは前述の通りである。実施例1では、ロータ2の周壁部21が櫛歯121の圧接面に圧接したときに、ロータの周壁部の圧接面の面精度が低い場合でも、櫛歯121を構成している針状体122は図4に示したように板厚方向、すなわち径方向に弾性変形することで各針状体122の先端部122aがロータ2の周壁部21の圧接面に確実に圧接することになる。この場合、図4の例では周壁部21の圧接面が回転軸と垂直な面に対して外径方向に上方に傾斜した円錐面として形成しているので、各針状体122の先端部122aを揃って内径方向に弾性変形させることができる。したがって、一部の針状体が外径方向に弾性変形する等して各針状体122が相互に干渉して好適な圧接状態の障害になることはない。これにより、各6個の針状体122、すなわち櫛歯121とロータ2の周壁部21の各圧接面が設計通りの面積で圧接した状態が保持され、両者間での摩擦力を所定値に設定することが可能になる。また、各針状体122は径方向に弾性変形するが円周方向には所要の剛性が確保されるので、櫛歯体12が振動したときにそれぞれ6個の針状体122によって構成される個々の櫛歯121における円周方向の変位によるロータ2への回転力の伝達に損失が生じることはない。これにより、ロータ2の回転効率を向上することができる。
【実施例2】
【0017】
図7(a),(b)は実施例2の櫛歯を示す図であり、図6(a),(b)と同様の図である。実施例2では、針状体123を軸に垂直な断面が台形となるように形成している。ここでは、針状体123の内径側の辺123aを外径側の辺123bよりも短い台形に形成している。これにより、針状体123は板厚方向に変形する際には寸法の短い内径側の辺123aに向けて変形され易くなり、ロータ2の周壁部21の圧接面を図4に示した実施例1のように外径側に向けて上方に傾斜させることなく、回転軸の軸方向と垂直な水平面に形成した場合でも、各針状体を揃って短辺側、すなわち内径側に弾性変形させることができる。
【0018】
ここで、櫛歯体12の各櫛歯121を構成している針状体の数は実施例のように6個に限られるものではなく、任意の数に設定できる。例えば図8のように各櫛歯121を3個の針状体124で構成してもよい。これはロータとの間に要求される摩擦力や超音波モータの径寸法、さらには針状体の形状や寸法及び弾性力等の要因に応じて適切な数に設定すればよい。
【0019】
また、図9のように、各針状体125は基端側の板厚を先端側よりも厚く形成して径方向の弾性変形量に節度を与えるようにしてもよい。あるいは、各針状体は必ずしも基端から先端まで独立した板状に形成されるものではなく、図10のように、先端側の部分のみが板状に分離されて径方向に弾性変形可能な構成の針状体126として構成してもよい。この場合においても、各針状体126は基端側の板厚を先端側よりも厚くしたテーパ状に形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の超音波モータの外観斜視図である。
【図2】図1の超音波モータの軸方向の断面図である。
【図3】図1の超音波モータの部分分解斜視図である。
【図4】櫛歯とロータの圧接部分の拡大断面図である。
【図5】櫛歯体の上下を反対にした斜視図である。
【図6】実施例1の櫛歯の図4のA−A線断面図と針状体の斜視図である。
【図7】実施例2の櫛歯の図4のA−A線断面図と針状体の斜視図である。
【図8】針状体の変形例1の断面図である。
【図9】針状体の変形例2の断面図である。
【図10】針状体の変形例3の断面図である。
【図11】従来の超音波モータの一例の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ステータ
2 ロータ
3 回転軸
11 台座
12 櫛歯体
13 圧電体
14 フレキシブル基板
15 スリーブ
16 圧縮コイルスプリング
17 ボールベアリング
21 周壁部
121 櫛歯
122〜126 針状体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体及び円周方向に配列した多数の櫛歯を備える櫛歯体で構成される円形をしたステータと、回転軸に支持されて前記櫛歯体に圧接される円形のロータとを備える超音波モータであって、前記各櫛歯は少なくとも前記ロータに圧接する部分が所要の間隔で径方向に配列された複数の針状体で構成されていることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記針状体は少なくとも先端部が径方向に弾性変形可能で、円周方向には所要の剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成され、かつ内径側の辺が外径側の辺よりも短い台形に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記針状体はそれぞれ独立した板状に形成され、各針状体は基端部が前記櫛歯体に一体であり、先端部が前記ロータに圧接されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波モータ。
【請求項1】
圧電体及び円周方向に配列した多数の櫛歯を備える櫛歯体で構成される円形をしたステータと、回転軸に支持されて前記櫛歯体に圧接される円形のロータとを備える超音波モータであって、前記各櫛歯は少なくとも前記ロータに圧接する部分が所要の間隔で径方向に配列された複数の針状体で構成されていることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記針状体は少なくとも先端部が径方向に弾性変形可能で、円周方向には所要の剛性を有していることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記針状体は回転軸の軸方向と垂直な方向の断面が円周方向に長く径方向に短い板状に形成され、かつ内径側の辺が外径側の辺よりも短い台形に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記針状体はそれぞれ独立した板状に形成され、各針状体は基端部が前記櫛歯体に一体であり、先端部が前記ロータに圧接されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−82369(P2007−82369A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269943(P2005−269943)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
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