説明

超音波回転駆動装置

【課題】超音波発生部が非作動状態にあるときに回転出力部が回転しないようにした超音波回転駆動装置を提供する。
【解決手段】超音波発生部50及び該超音波発生部に相対回転可能に接触し、該超音波発生部で発生した超音波振動により回転する第1回転出力部54を備える超音波モータUMと、第1回転出力部と一緒に回転する回転入力部29及び回転入力部とは独立して回転可能な第2回転出力部25を備え、回転入力部の回転力は第2回転出力部に伝達するが、第2回転出力部の回転力は回転入力部に伝達しない一方向入出力回転伝達機構DMと、を備える超音波回転駆動装置MU。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波モータの超音波発生部と回転出力部の間の摩耗を低減することが可能な超音波回転駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力発生部と、この動力発生部によって発生した動力によって回転する回転出力軸とを有する通常タイプのモータは、動力発生部が非作動状態にあるときに回転出力軸を回転させることにより回転出力軸から動力発生部に無理な動力を伝達すると、動力発生部に大きな悪影響が及んでしまう。
これに対して、超音波発生部と、この超音波発生部と相対回転可能に接触する回転出力部とを備える超音波モータは、超音波発生部が非作動状態にあるときに回転出力部を回転させても、通常のモータに比べて動力発生部(超音波発生部)に大きな悪影響が及ぶことはない。
【0003】
【特許文献1】特許第2503997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、超音波モータは超音波発生部と回転出力部が接触しながら相対回転する構造なので、超音波発生部が非作動状態にあるときに回転出力部を回転させると超音波発生部と回転出力部の接触部が摩耗してしまう。従って、超音波モータにおいても、超音波発生部が非作動状態にあるときに回転出力部が回転しない構造にするのが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、超音波発生部が非作動状態にあるときに回転出力部が回転しないようにした超音波回転駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波回転駆動装置は、超音波発生部、及び、該超音波発生部に相対回転可能に接触し、該超音波発生部で発生した超音波振動により回転する第1回転出力部を備える超音波モータと、上記第1回転出力部と一緒に回転する回転入力部、該回転入力部とは独立して回転可能な第2回転出力部、及び、上記回転入力部の回転力は上記第2回転出力部に伝達し上記第2回転出力部の回転力は上記回転入力部に伝達しない一方向入出力回転伝達機構と、を備えることを特徴としている。
【0007】
上記一方向入出力回転伝達機構は、例えば、上記第1回転出力部の軸線に対して直交する軸方向直交面を有する上記回転入力部と、この回転入力部が挿通され、該回転入力部と相対回動自在に支持された筒状出力回転軸と、上記回転入力部に形成した、上記筒状出力回転軸内側の上記軸線を中心とする円筒面との間に、周方向で不等幅の周方向不等幅空間を有する環状空間を形成する周方向不等幅空間形成部と、付勢手段によって常に上記軸方向直交面に当接させられ、上記回転入力部の回転に連動して、該回転入力部の軸心を中心に該回転入力部に遅れながら同方向に公転する複数の差動回転部材と、上記環状空間に挿入され、該差動回転部材に押圧されることにより、該差動回転部材と同方向に公転するリテーナと、該リテーナに保持され、上記周方向不等幅空間内を該リテーナと一緒に回転する回転力伝達部材と、を備え、上記周方向不等幅空間形成部が、周方向に回転した上記回転力伝達部材が、上記回転入力部の外周面と上記筒状出力回転軸の上記円筒面の間に食い込み、上記回転入力部の回転力を上記筒状出力回転軸に伝達する形状をなす構造とすることが可能である。
【0008】
上記軸方向直交面と対向する挟持部材に、上記付勢手段によって該挟持部材側に常に付勢された上記軸方向直交面との対向部に、上記第1回転出力部の軸線に対して直交し該軸方向直交面との間に上記差動回転部材を挟持する該軸方向直交面とは別の軸方向直交面を形成するのが好ましい。
【0009】
上記周方向不等幅空間形成部が、上記筒状出力回転軸の上記円筒面との間に、上記周方向不等幅空間を複数形成するものであり、各周方向不等幅空間に上記回転力伝達部材を挿入してもよい。
【0010】
上記周方向不等幅空間形成部を、周方向位置によって径方向の深さが異なる周方向不等幅溝としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波モータの超音波発生部で超音波が発生して第1回転出力部が回転すると、第1回転出力部の回転力が一方向入出力回転伝達機構の回転入力軸から第2回転出力部に伝わる。
一方、一方向入出力回転伝達機構の第2回転出力部が回転したとき、この回転力は一方向入出力回転伝達機構の回転入力軸に伝わらない。従って、超音波モータの超音波発生部が非作動状態にあるときに一方向入出力回転伝達機構の第2回転出力部が回転しても、超音波モータの第1回転出力部と超音波発生部の間に回転による摩耗が生じることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の超音波回転駆動装置MUの一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態は超音波回転駆動装置MUを撮影状態をオートフォーカス(AF)とマニュアルフォーカス(MF)とに切り替え可能なカメラの交換式レンズ鏡筒(図示略)に適用したものである。
【0013】
超音波回転駆動装置MUは、超音波モータUMと一方向入出力回転伝達機構DMを一体化したものであり、まずは一方向入出力回転伝達機構DMの構造について説明する。
前後両端(図1に矢線で示すように、図1の左側を「前方」、図1の右側を「後方」として説明する)が開放する筒形状をなす固定筒部材10には、固定ねじ(図示略)によってカメラボディ内面に固定される環状の外方フランジ11と、同じく環状の内方フランジ12が突設してある。固定筒部材10の前面中央部は、カメラ光軸(中心軸A1)に対して直交する平面である第1軸方向直交面13となっている。固定筒部材10の内周面には外環14がスライド可能に嵌合しており(相対回転は不能)、外環14の内周側には複数のベアリングボール15を介して外環14と同心をなす内環16が、外環14に対して相対回転可能かつ軸線方向に相対移動不能として位置している。即ち、外環14、ベアリングボール15及び内環16によってボールベアリング装置17が構成されている。
【0014】
内環16の内周面にはカメラ光軸と平行な略円柱形状の入力回転軸(回転入力部)20が嵌合固定されている(その中心軸がA1)。入力回転軸20の外周面の長手方向中央部には、周方向に180°間隔で一対の突起21が突設してある。入力回転軸20の前端部にはばね用リテーナ22が固定ねじ23によって固定されている。ばね用リテーナ22の外周面には、入力回転軸20と同軸をなす筒状出力回転軸(第2回転出力部)25の内周面前端部が相対回転可能(軸方向移動は不能)に嵌合している。筒状出力回転軸25の内周面は、その前半部をなしばね用リテーナ22に嵌合された小径円筒面26と、後半部をなし小径円筒面26と同心をなしかつ小径円筒面26より大径の大径円筒面27とからなっている。筒状出力回転軸25の外周面の前端部には、交換式レンズ鏡筒内に配設されたフォーカシング機構(図示略)の入力ギヤと噛合する出力ギヤ28が形成してある。
【0015】
入力回転軸20の外周面の突起21の直前には、入力回転軸20と同心をなす筒状部材である回転力伝達部材(回転入力部)29の円形中心孔30が、入力回転軸20に対して中心軸A1方向に相対移動可能かつ相対回転不能として嵌合している。回転力伝達部材29とばね用リテーナ22の対向面の間には、入力回転軸20の外周側に位置する圧縮コイルばね(付勢手段)S1が縮設されており、この圧縮コイルばねS1の付勢力によって回転力伝達部材29は後方に付勢されている。
回転力伝達部材29の外周面には周方向に90°間隔で計4つの周方向不等幅溝(周方向不等幅空間形成部)31が形成してある。図2に示すように、この周方向不等幅溝31は周方向位置によって(径方向の)深さが異なる、中心軸A1と平行な方向に延びる溝である。そして、各周方向不等幅溝31と筒状出力回転軸25の大径円筒面27の間には、周方向位置によってその径方向幅が異なる収納空間(周方向不等幅空間)収納空間CSが形成されている。すなわち、図2に示すように、周方向不等幅溝31と大径円筒面27の間に形成された正面視環状の環状空間RSは、4つの収納空間(周方向不等幅空間)CSに区切られている。
回転力伝達部材29の後端面の外周縁部には、その全周に渡って環状凹部32が形成してある。この環状凹部32の底面は第1軸方向直交面13と同じく入力回転軸20の中心軸A1に対して直交する平面である(第1軸方向直交面13と平行な)第2軸方向直交面33となっている。
【0016】
そして、環状凹部32(第2軸方向直交面33)と第1軸方向直交面13の間に形成された中心軸A1を中心とする環状空間には、その中心軸A2が入力回転軸20の径方向に延びる略円柱形状の差動コロ(差動回転部材)35が配設してあり、差動コロ35の外周面が第2軸方向直交面33と第1軸方向直交面13によって弾性的に挟み込まれている。
さらに、この第1軸方向直交面13と第2軸方向直交面33の間の環状空間及び回転力伝達部材29の外周面と筒状出力回転軸25の内周面の間の環状空間には、両環状空間に跨る態様で中心軸A1を中心とする円筒形状の筒状リテーナ(リテーナ)37が、入力回転軸20回りに回転可能かつスライド可能として位置している。
筒状リテーナ37の後端部には、入力回転軸20の外周側に位置すると共に中心軸A1に対して直交する内方フランジ38が突設してある。図1及び図3に示すように、この内方フランジ38内周縁部には周方向に90°間隔で4つの方形切欠39が穿設してあり、4つの差動コロ35は各方形切欠39の内部に中心軸A2回りに回転(自転)可能として位置している。さらに、筒状リテーナ37の内方フランジ38及び筒状部40には、両者に跨る態様で周方向に90°間隔で4つの収納孔41が形成してある。図3に示すように、各収納孔41と各方形切欠39の位置は互いに周方向に45°づつずれている。
さらに4つの収納空間CSにはそれぞれ中心軸A1と平行な中心軸A3を中心とする略円柱形状部材である食付コロ(回転力伝達部材)43が4つ配設してある。各食付コロ43は筒状リテーナ37の4つの収納孔41にそれぞれ中心軸A3回りに回転(自転)可能として遊嵌している。
【0017】
次に以上構成の一方向入出力回転伝達機構DMと一体をなす超音波モータUMの構造について説明する。
固定筒部材10の外周面には、中心軸A1を中心とする環状部材である超音波発生部材(超音波発生部)50の中心孔が嵌合固定してある。超音波発生部材50の後端部外周側は正面視環状をなす振動伝達部51となっており、振動伝達部51の後端面は中心軸A1に対して直交する平面となっている。
さらに、入力回転軸20の後端部には外側筒状部52と内側筒状部53を備える有底の筒状回転出力軸(第1回転出力部)54の中心孔55が嵌合固定してある。外側筒状部52の前端面は中心軸A1に対して直交する平面であり、振動伝達部51の後端面に相対回転可能に接触している。超音波発生部材50と筒状回転出力軸54の間に形成された内部空間には、固定筒部材10の外周面に嵌合固定された筒状リテーナ57が位置している。この筒状リテーナ57と外環14の間には圧縮コイルばねS2が縮設されており、この圧縮コイルばねS2の付勢力によって外環14、ベアリングボール15及び内環16が前方に付勢され、内環16が突起21の後面に弾性接触している。
以上構成の超音波モータUMは、カメラボディ内に設けられたCPU等によって構成される制御手段(図示略)と電気的に接続している。
【0018】
次に、以上のような構成からなる超音波回転駆動装置MUの動作について説明する。
まず、AFによりフォーカシングを行う場合の超音波回転駆動装置MUの動作について説明する。
カメラボディに設けたAFスイッチ(図示略)を操作すると、カメラボディに内蔵された上記制御手段から超音波モータUMに回転信号が送られる。
例えばこの回転信号が正転信号の場合、振動伝達部51が周方向の一方向(図2の反時計方向)に進む超音波振動を発生する。すると、振動伝達部51の後端面と接触している筒状回転出力軸54(外側筒状部52)が該超音波振動と同じ方向に回転するので、筒状回転出力軸54と一体をなす入力回転軸20が図2の反時計方向に回転する。すると入力回転軸20に対して相対回転不能な回転力伝達部材29が入力回転軸20と一緒に図2の反時計方向に回転し、第1軸方向直交面13と第2軸方向直交面33とによって挟持されている各差動コロ35が、中心軸A2回りに自転しつつ、入力回転軸20の1/2の回転速度で中心軸A1回りに入力回転軸20と同方向に公転(回転)する。この差動コロ35の公転運動により筒状リテーナ37と各食付コロ43も各差動コロ35と同じ速度で反時計方向に回転(公転)する。すると、各食付コロ43は、各収納空間CSの径方向幅が狭くなっている時計方向側の端部において、周方向不等幅溝31の時計方向側の端部と筒状出力回転軸25の大径円筒面27との間に強い力で食い込む。この結果、回転力伝達部材29(入力回転軸20)と筒状出力回転軸25が、差動コロ35、筒状リテーナ37、及び食付コロ43を介して周方向に一体となるので、回転力伝達部材29(入力回転軸20)の回転力が筒状出力回転軸25に伝わり筒状出力回転軸25が図2の反時計方向に回転する。すると、筒状出力回転軸25の回転力が出力ギヤ28から交換式レンズ鏡筒内のフォーカシング機構の入力ギヤに伝達されるので、フォーカシング機構によってフォーカスレンズ(図示略)が光軸に沿って前方に移動する。
【0019】
一方、上記制御手段が超音波モータUMに逆転信号(回転信号)を送る場合は、振動伝達部51が周方向の他方向(図2の時計方向)の超音波振動を発生し、振動伝達部51の後端面と接触している筒状回転出力軸54が該超音波振動と同じ方向に回転するので、筒状回転出力軸54と一体をなす入力回転軸20が図2の時計方向に回転する。そして、各差動コロ35が入力回転軸20の1/2の回転速度で図2の時計方向に公転(回転)し、筒状リテーナ37と各食付コロ43も各差動コロ35と同じ速度で時計方向に公転(回転)する。その結果、各食付コロ43が、各収納空間CS内を図2の時計方向に回転し、各収納空間CSの径方向幅が狭くなっている反時計方向側の端部において、周方向不等幅溝31の反時計方向側の端部と筒状出力回転軸25の大径円筒面27との間に強い力で食い込む。すると回転力伝達部材29(入力回転軸20)と筒状出力回転軸25が、差動コロ35、筒状リテーナ37、及び食付コロ43を介して周方向に一体となるので、回転力伝達部材29(入力回転軸20)の回転力が筒状出力回転軸25に伝わり筒状出力回転軸25が図2の時計方向に回転する。そして、筒状出力回転軸25の回転力が出力ギヤ28からフォーカシング機構の入力ギヤに伝達されるので、フォーカシング機構によってフォーカスレンズ(図示略)が光軸に沿って後方に移動する。
このように、制御手段が超音波モータUMを正逆両方向へ回転させることによりAFが行われる。
【0020】
さらに、このようにAFによって合焦すると、制御手段から超音波モータUMに信号が送られ、超音波モータUMは合焦直前の回転方向とは逆方向に僅かだけ回転する。すると、入力回転軸20が筒状出力回転軸25を回転させることなく、合焦直前の回転方向とは逆方向に回転し、食付コロ43の周方向不等幅溝31及び大径円筒面27に対する食い付き力が減少する。このため、交換式レンズ鏡筒に設けられたマニュアルフォーカス環(図示略)をスムーズに回転させられるようになる。
【0021】
次に、MFによりフォーカシングを行う場合の超音波回転駆動装置MUの動作について説明する。
図2の状態において、超音波モータUMを駆動させずに交換式レンズ鏡筒のマニュアルフォーカス環を回転させると、この回転力は、交換式レンズ鏡筒内のフォーカシング機構に伝達されMFが行われる。
このようにマニュアルフォーカス環の回転力がフォーカシング機構に伝わると、この回転力はフォーカシング機構から筒状出力回転軸25の出力ギヤ28に伝達されるので、筒状出力回転軸25が入力回転軸20回りに時計方向または反時計方向に回転する。しかし、筒状出力回転軸25の大径円筒面27は中心軸A1を中心とする円筒面なので、筒状出力回転軸25から食付コロ43には回転力は伝達されない。このため、筒状出力回転軸25が回転しても筒状リテーナ37及び食付コロ43は回転せず、回転力伝達部材29及び入力回転軸20は回転しない。従って、超音波モータUMの筒状回転出力軸54が回転することはなく、外側筒状部52と振動伝達部51の接触面同士が摩耗することはない。
【0022】
以上説明したように本実施形態によれば、超音波モータUMが回転駆動したときは筒状出力回転軸25が回転し、超音波モータUMを回転駆動しない状態で筒状出力回転軸25を回転させた場合は超音波モータUMの筒状回転出力軸54が回転しない超音波回転駆動装置MUが得られる。
また、一方向入出力回転伝達機構DMは、カメラの使用条件(例えば撮影時のカメラの温度等)の影響を受けにくく、使用条件が変わっても円滑に作動する。
また、本実施形態のような構成にすれば、撮影状態をAFとMFとに切り替えるための切替スイッチを設けることなく、撮影状態をAFとMFとに切り替えることが可能になる。
【0023】
また、入力回転軸20に遅れながら差動コロ35を同方向に公転(回転)させ、この差動コロ35によって食付コロ43を回転力伝達部材29と筒状出力回転軸25の間に強固に食い込ませ、この食付コロ43を回転力伝達部材として機能させているので、入力回転軸20から筒状出力回転軸25へのトルク伝達を確実に行うことができる。
【0024】
しかも、回転力伝達部材である食付コロ43は、入力回転軸20の軸線と平行な中心軸A3を有する円柱状部材なので、回転力伝達部材を球状部材とした場合に比べて、回転力伝達部材29及び筒状出力回転軸25との接触面積が大きい。このため、本実施形態の一方向入出力回転伝達機構DMは、回転力伝達部材を球状とした場合に比べて、入力回転軸20から筒状出力回転軸25への回転トルクの伝達効率が良い。
【0025】
さらに、筒状リテーナ37を用いたことにより、回転力伝達部材29と筒状出力回転軸25の間に形成された環状空間RSをスペース的に有効利用できる。その結果、食付コロ43の数を増やすことが可能となり、食付コロ43の数を増やせば、入力回転軸20から筒状出力回転軸25への回転トルクの伝達効率を向上させることが可能となる。また、筒状リテーナ37を用いているので組み立てが容易であり、しかも、食付コロ43の個数を少なくすることができる。
【0026】
なお、周方向不等幅溝31の断面形状を、正三角形や正五角形等、正方形以外の正多角形や、筒状出力回転軸25の内周面(円筒面)大径円筒面27との間に周方向位置によってその径方向幅が異なる収納空間を形成する少なくとも一つの不等幅空間形成面を備えた非円形に変更することにより、各収納空間CSに配設する差動コロ35及び食付コロ43の数を変更することができ、このような変更を行うことにより、入力回転軸20から筒状出力回転軸25への回転トルクの伝達効率を調整可能となる。
【0027】
なお、入力回転軸20から筒状出力回転軸25への回転トルクの伝達効率を無視すれば、差動コロ35や食付コロ43を単なる球状部材に代える事も可能である。
また、差動コロ35の代わりに、図5に示すような差動コロ60を用いることも可能である。この差動コロ60は、その中心軸C4が入力回転軸20及び筒状出力回転軸25の径方向と平行であり、中心軸C4に直交する方向の断面形状が、中心軸C4のいずれの位置においても図5に示す形状となっている。この場合は、一対の円弧部60a、60bが、第2軸方向直交面33及び第1軸方向直交面13と当接関係を維持する範囲で入力回転軸20を回転させ、この回転範囲内で差動コロ35を入力回転軸20と筒状出力回転軸25の間に食い込ませるようにする。
さらに、回転トルクの伝達効率の低下を無視すれば、一つの収納空間CSにのみ差動コロ35及び食付コロ43を配設して実施することも可能である。
【0028】
また、筒状出力回転軸25の大径円筒面27と各周方向不等幅溝31の端部とで形成される楔状の空間の楔角、圧縮コイルばねS1の強さ、第1軸方向直交面13及び第2軸方向直交面33の面粗さを変えることによって、入力回転軸20から筒状出力回転軸25への回転トルクの伝達効率を変えることが可能である。
【0029】
さらに本実施形態では、超音波回転駆動装置MUをAF用交換式レンズ鏡筒に適用したが、レンズ鏡筒に設けたズーム環と連動するズーミング機構との間に適用し、超音波モータUM(ズーム用モータ)の回転力はズーミング機構に伝達するが、ズーム環の回転力は超音波モータUMに伝達させないようにすることも可能である。このようにすれば、オートズームとマニュアルズームの切り替えを行うための切替スイッチを設けることなく、オートズーム及びマニュアルズームを行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態の超音波回転駆動装置の縦断側面図である。
【図2】図1のII−II矢線に沿う拡大横断正面図である。
【図3】食付コロを省略して示す図1のIII−III矢線に沿う拡大横断正面図である。
【図4】モータユニットの分解斜視図である。
【図5】差動コロの変形例の、その中心軸に直交する断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 固定筒部材
11 外方フランジ
12 内方フランジ
13 第1軸方向直交面
14 外環
15 ベアリングボール
16 内環
17 ボールベアリング装置
20 入力回転軸(回転入力部)
21 突起
22 ばね用リテーナ
23 固定ねじ
25 筒状出力回転軸(第2回転出力部)
26 小径円筒面
27 大径円筒面
28 出力ギヤ
29 回転力伝達部材(回転入力部)
30 中心円形孔
31 周方向不等幅溝(周方向不等幅空間形成部)
32 環状凹部
33 軸方向直交面
35 差動コロ(差動回転部材)
37 筒状リテーナ(リテーナ)
38 内方フランジ
39 方形切欠
40 筒状部
41 収納孔
43 食付コロ(回転力伝達部材)
50 超音波発生部材(超音波発生部)
51 振動伝達部
52 外側筒状部
53 内側筒状部
54 筒状回転出力軸(第1回転出力部)
55 中心孔
57 筒状リテーナ
60 差動コロ
CS 収納空間(周方向不等幅空間)
DM 一方向入出力回転伝達機構
MU 超音波回転駆動装置
RS 環状空間
S1 圧縮コイルばね(付勢手段)
S2 圧縮コイルばね
UM 超音波モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発生部、及び、該超音波発生部に相対回転可能に接触し、該超音波発生部で発生した超音波振動により回転する第1回転出力部を備える超音波モータと、
上記第1回転出力部と一緒に回転する回転入力部、該回転入力部とは独立して回転可能な第2回転出力部、及び、上記回転入力部の回転力は上記第2回転出力部に伝達し上記第2回転出力部の回転力は上記回転入力部に伝達しない一方向入出力回転伝達機構と、
を備えることを特徴とする超音波回転駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波回転駆動装置において、
上記一方向入出力回転伝達機構が、
上記第1回転出力部の軸線に対して直交する軸方向直交面を有する上記回転入力部と、
この回転入力部が挿通され、該回転入力部と相対回動自在に支持された筒状出力回転軸と、
上記回転入力部に形成した、上記筒状出力回転軸内側の上記軸線を中心とする円筒面との間に、周方向で不等幅の周方向不等幅空間を有する環状空間を形成する周方向不等幅空間形成部と、
付勢手段によって常に上記軸方向直交面に当接させられ、上記回転入力部の回転に連動して、該回転入力部の軸心を中心に該回転入力部に遅れながら同方向に公転する複数の差動回転部材と、
上記環状空間に挿入され、該差動回転部材に押圧されることにより、該差動回転部材と同方向に公転するリテーナと、
該リテーナに保持され、上記周方向不等幅空間内を該リテーナと一緒に回転する回転力伝達部材と、を備え、
上記周方向不等幅空間形成部は、周方向に回転した上記回転力伝達部材が、上記回転入力部の外周面と上記筒状出力回転軸の上記円筒面の間に食い込み、上記回転入力部の回転力を上記筒状出力回転軸に伝達する形状をなしている超音波回転駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波回転駆動装置において、
上記軸方向直交面と対向する挟持部材に、上記付勢手段によって該挟持部材側に常に付勢された上記軸方向直交面との対向部に、上記第1回転出力部の軸線に対して直交し該軸方向直交面との間に上記差動回転部材を挟持する該軸方向直交面とは別の軸方向直交面を形成した超音波回転駆動装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の超音波回転駆動装置において、
上記周方向不等幅空間形成部が、上記筒状出力回転軸の上記円筒面との間に、上記周方向不等幅空間を複数形成するものであり、
各周方向不等幅空間に上記回転力伝達部材を挿入した超音波回転駆動装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項記載の超音波回転駆動装置において、
上記周方向不等幅空間形成部が、周方向位置によって径方向の深さが異なる周方向不等幅溝である超音波回転駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−76654(P2008−76654A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254744(P2006−254744)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】