説明

車両用ディスクブレーキ

【課題】トルク受け面に対する制動初期のパッドの衝突をばねの力で緩和する方法でのクロンク音対策では十分な効果を期待できない場合があるので、車両用ディスクブレーキのクロンク音を、従来とは異なる発想で効果的に抑制できるようにすることを課題としている。
【解決手段】同一ブレーキ液圧を受けて作動する第1ピストン1と第2ピストン2を備える。第2ピストン2は、パッド4との摩擦係数が第1ピストン1とパッドとの摩擦係数よりも大きく、この第2ピストン2が付勢手段13により戻り方向に付勢されて非作動時に第1ピストン1の先端よりも後退した位置にあり、制動初期に第1ピストン1が第2ピストン2に先行してパッド4に接触し、その後、パッド4がトルク受け面8に接触するまでの過程で第2ピストン2がパッド4に接触するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用のディスクブレーキ、詳しくは、車両の前進制動や後進制動時にブレーキパッドがディスクロータに引き摺られてキャリパやマウンティングに形成されたトルク受け面に衝突し、このときに発生する異音(クロンク音)を抑制したディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキにおけるクロンク音対策として、従来は、ブレーキパッド(以下では単にパッドと言う)をばねで押圧して非制動時にディスク回転方向の中立位置に保持すること(図6参照)がなされている。この技術は、下記特許文献1に開示されたものであって、トルク受け面に対するパッドの衝突力をばねで減衰させてクロンク音を抑える。
【0003】
同様の対策として、パッドをばねで押圧して予め片側のトルク受け面に押し当てることもなされている。
【0004】
また、上記以外の対策として、トルク受け面とパッドとの間のクリアランスを小さくすることや、パッドが衝突する部位に緩衝材を貼り付けることなども試みられている。
【特許文献1】特開平11−201199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ばねの力でパッドを中立位置に保持してトルク受け面に対するパッドの衝突力を和らげる方法は、クロンク音対策として従来から多用されているが、スペース上、ばねの形状の制約が多く、最適なばね力が得られないことがあり、その場合、衝突力の抑制が不十分になる。
【0006】
パッドを片側のトルク受け面に予め押し当てておく方法も同様である。この方法では、前進制動時と後進制動時のどちらか一方ではパッドの動き代が無くてクロンク音の防止が効果的になされるが、ばねによる押圧方向とは逆向きにパッドが引き摺られたときには、ばねの力に依存することになるので、衝撃の効果的な抑制を期待できないことがある。
【0007】
また、トルク受け面とパッド間のクリアランスを小さくする方法は、パッドの組み付け性や除圧時のパッド復帰性の悪化が懸念され、緩衝材を用いる方法は耐久性の低下が避けられない。
【0008】
この発明は、上記の問題を生じさせずにクロンク音を抑制できる車両用ディスクブレーキを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明においては、パッドを、キャリパのシリンダに挿入された液圧作動のピストンで押圧し、車両の車輪とともに回転するディスクロータに摺接させて制動力を発生させるディスクブレーキを以下の通りに構成した。
【0010】
すなわち、前記ピストンとして、同一ブレーキ液圧を受けて作動する第1ピストンと第2ピストンを備え、前記第2ピストンは、パッドとの摩擦係数が第1ピストンとパッドとの摩擦係数よりも大きく、この第2ピストンが付勢手段により戻り方向に付勢されて非作動時に第1ピストンの先端よりも後退した位置にあり、制動初期に前記第1ピストンが第2ピストンに先行して前記パッドに接触し、その後、前記パッドがトルク受け面に接触するまでの過程で第2ピストンがそのパッドに接触するものにした。
【0011】
パッドと第2ピストンの相互接触面の摩擦係数は、相互接触面のどちらか一方又は双方に、その相互接触面の摩擦係数を前記パッドと前記第1ピストンとの接触面の摩擦係数よりも高める表面加工を施すことによって大きくすることができる。また、パッドと第2ピストンの相互接触面の一方又は双方を、パッドと第1ピストンとの接触面を構成する素材よりも摩擦係数の大きな素材で形成することでも第1ピストンとパッドとの摩擦係数よりも大きくすることができる。
【0012】
前者の方法での表面加工は、例えば、面粗度を粗くする方法や、ローレット加工などで表面に微細な凹凸をつける方法などが知られており、そのような加工方法で行える。
【0013】
この発明のディスクブレーキの好ましい形態を以下に挙げる。
(1)第1ピストンをカップ状ピストンにし、この第1ピストンの内側に第2ピストンを第1ピストンの底壁に設けた貫通孔の内径面との間を液密にシールして、かつ、第1ピストンの内径面と第2ピストンの外径面との間に大気空間を生じさせて相対スライド可能に配置する。
(2)パッドに対する第2ピストンの接触面積を、第1ピストンの接触面積よりも小さくする。
【0014】
なお、この発明は、第1ピストンがディスクロータの回転方向に沿って同一キャリパに複数個設置されるいわゆる多ポット型のディスクブレーキにも適用することができる。多ポット型のディスクブレーキの場合、第2ピストンとその第2ピストンを戻り方向に付勢する付勢手段を1組だけにしてロータ回出側に配置された第1ピストンの内側に設置すると好ましい。この構造は、第2ピストンが1つしかないので、その第2ピストンの動作タイミングの調整が難しくならない。また、第1ピストンのみに押圧される部分と第1、第2ピストンの2者に押圧される部分を混在させることで、パッド押圧力の分布を適性化することも可能になる。パッド押圧力をロータ回入側で小さくすることは、制動時のいわゆる鳴きの対策として有効なことが知られており、鳴きの抑制効果が期待できる。
【0015】
多ポット型のディスクブレーキにおいて、各第1ピストンの内側に第2ピストンとその第2ピストンを戻り方向に付勢する付勢手段をそれぞれ設置することも可能である。この構造も、ロータ回入側に配置される第2ピストンのパッドへの接触面積をロータ回出側に配置される第2ピストンのパッドへの接触面積よりも小さくすることで、パッド押圧力の分布を適性化することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のディスクブレーキは、制動が開始されると第1ピストンが先行してパッドに接触し、パッドがディスクロータに押し当てられる。この押し当てにより、パッドがディスクロータに引き摺られて移動し、その移動の過程において(パッドがトルク受け面に到達する前に)第2ピストンがパッドに接触してディスクロータとの間にパッドを挟み込む。この第2ピストンは、パッドとの摩擦係数が第1ピストンの摩擦係数よりも大きい。そのために、移動中のパッドのピストンとの摩擦抵抗が増大してパッドの移動速度が落ち、トルク受け面に対する衝突力が緩和される。
【0017】
なお、この発明では、第1ピストンと第2ピストンが時間差を生じてパッドに接触する。このタイムラグが重要である。その理由は、後に説明する。
【0018】
また、パッドに対する第2ピストンの接触面積が大きすぎるのは好ましくなく(その理由も後に述べる)、接触面積の限られた第2ピストンを利用してパッドの移動速度を効果的に低下させるために、第2ピストンのパッドとの摩擦係数を第1ピストンの摩擦係数よりも大きくする。
【0019】
上記(1)の形態のディスクブレーキは、第1ピストンの内部に第2ピストンを設置するので、大型化が回避される。また、ピストンを交換することで、この発明を既存のディスクブレーキに適用することができる。さらに、第1ピストンの内径面と第2ピストンの外径面との間に生じた大気空間による断熱作用によって摩擦熱(ディスクロータとパッドの摩擦によって生じた熱)がシリンダ内のブレーキ液に伝わることを抑制することができる。
【0020】
また、第2ピストンのパッドに対する接触面積を第1ピストンの接触面積よりも小さくした上記(2)の形態のものは、トルク受け面によるパッドの受け止めが不安定にならず、ブレーキの鳴きが発生し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を、添付図面の図1〜図7に基いて説明する。図1及び図2は、この発明をピストン対向型のディスクブレーキに適用した例を示している。このディスクブレーキは、キャリパ3と、ディスクロータDを間にして対向配置する対のパッド(ブレーキパッド)4,4と、各パッドを個別に押圧する第1ピストン1、及び第2ピストン2を主たる要素として備えている。
【0022】
パッド4は、キャリパ3の窓部に横架したパッドピン5を裏板の貫通孔に通してそのパッドピン5で吊り下げており、ディスクロータDの軸方向にスライドすることができる。
【0023】
キャリパ3は、ディスクロータDの一面側に配置されるインナー部3aとディスクロータDの他面側に配置されるアウター部3bを、ディスクロータDの外周を跨ぐブリッジ部3cを介して連結し、インナー部3aにマウントに対する取り付け足6を設けた構造になっている。
【0024】
このキャリパ3には、インナー部3aとアウター部3bに対向配置のシリンダ7,7が設けられ、そのシリンダ7,7にそれぞれ第1ピストン1,1が挿入されている。8は、パッド4を受け止めるトルク受け面であり、キャリパ3のロータ回入側とロータ回出側の双方にこのトルク受け面が存在する。9は、第1ピストン1の外周を液封する機能と、制動解除時(除圧時)に第1ピストン1を復帰さる機能を兼ね備えた周知のピストンシールである。
【0025】
第1ピストン1はカップ状ピストンであり、この第1ピストン1の内部に第2ピストン2が軸方向スライド可能に配置されている。第2ピストン2は、後方に小径部2aを有しており、その小径部2aを第1ピストン1の底壁に設けた貫通孔1aにその孔の内径面との間をシール部材10(図のそれはOリング)でシールして液密に挿入しており、第1ピストン1と第2ピストン2は、シリンダ7に挿入された同一のブレーキ液圧を背面に受ける。
【0026】
第2ピストン2は、パッド4に対する接触面積が第1ピストン1のパッド4に対する接触面積よりも小さい。また、この第2ピストン2は、外径を第1ピストン1の内径よりも小さくしてその外径と第1ピストン1の内径面との間に大気空間11を生じさせている。この大気空間11による断熱効果によって、制動時に発生する摩擦熱がシリンダ内のブレーキ液に伝わり難くなっており、ベーパーロック防止性能の低下が抑えられる。
【0027】
さらに、第1ピストン1の先端側内径部に設けたリテーナ12と第2ピストン2の外周の段差面との間に付勢手段(図のそれは渦巻きばね)13を配置し、その付勢手段13で第2ピストン2を戻り方向に付勢している。第2ピストン2は、非作動状態で復帰しているときは第1ピストン1よりも僅かに後退した位置にあり、その位置のずれを利用して制動時に第1ピストン1と第2ピストン2がパッド4に接触する時期にタイムラグを生じさせる。
【0028】
この第2ピストン2のパッド4との相互接触面の摩擦係数(便宜上μ2とする)は、第1ピストン1のパッド4との相互接触面の摩擦係数(これをμ1とする)よりも大きい。摩擦係数μ2をμ1よりも大きくするのは、相互接触面のどちらか一方又は双方に摩擦係数を高めるための表面加工(粗面化やローレット加工など)を施す方法や、相互接触面の一方又は双方を摩擦係数の大きな素材で形成する、例えば、相互接触面の一方又は双方にゴムを貼り付けるとか、ゴムをコーティングすると言った方法で行える。
【0029】
付勢手段13の力は、第2ピストン2が第1ピストン1に先行して動くことがないように設定されている。また、第1ピストン先端からの第2ピストン2の後退量は、第1ピストン1に押圧されたパッド4がディスクロータDに接触して引き摺られて動いてトルク受け面8に接触するまでの過程で第2ピストン2がパッド4に接触するように設定されている。
【0030】
第1ピストン1がパッドに接触してから第2ピストン2をパッドに接触させるまでのタイムラグはさほど大きくはないが、第1ピストン先端からの第2ピストン2の後退量などを適切に設定することで、パッド4がトルク受け面8に接触する前に第2ピストン2をパッド4に接触させることが可能である。
【0031】
ばねの力でパッド4をディスク回転方向の中立位置に保持する従来の手法を併用してもよい。この場合には、ばねを使用しない場合に比べてトルク受け面に対するパッドの接触が遅れる。従って、上記のタイムラグの設定が難しければ、このような方法を採用するのも一法である。
【0032】
次に、この発明のディスクブレーキの動作原理を、図3を参照して説明する。車両の走行中に運転者によるブレーキ操作、或いは、自動ブレーキ制御によるブレーキ操作がなされてシリンダ7内にブレーキ液圧が供給されると、その液圧を受けて第1ピストン1が前進し、パッド4を押圧する。このとき、第2ピストン2は、付勢手段13の力で第1ピストン1との相対位置が固定された状態で第1ピストン1の動きに追従する。
【0033】
第1ピストン1に押圧されたパッド4はディスクロータDに押し当てられ、図3のX1又はX2方向に動いてトルク受け面8に接触する。このときのパッド4の動き出しは、第1ピストン1とパッド4の相互接触面の摩擦係数μ1に依存する。
【0034】
第1ピストン1がパッド4をディスクロータDに押圧すると、引き続いて第2ピストン2が前進し、パッド4に接触する。その接触は、パッド4がトルク受け面8に接触する前、つまり、トルク受け面8に向って動いている途中に起こる。
【0035】
第1ピストン1がパッド4に接触してから第2ピストン2がパッド4に接触するまでのタイムラグはさほど大きくはないが、第1ピストン先端からの第2ピストン2の後退量、付勢手段13の力、第2ピストン2の受圧面積、パッド4とトルク受け面8間のディスクロータ回転方向クリアランスの大きさなどを適切に設定することで、パッド4がトルク受け面8に接触する前に第2ピストン2をパッド4に接触させることが可能である。
【0036】
第2ピストン2がパッド4に接触すると、ピストンとの摩擦抵抗が大きくなる。この発明では、第2ピストン2のパッドとの摩擦係数μ2を第1ピストン1のパッドとの摩擦係数μ1よりも大きくしているため、第2ピストン2がパッド4に接触したときの接触部の摩擦抵抗の増加が大きく、パッド4の移動速度が落ちてそのパッド4がトルク受け面8に接触するときの衝撃が緩和される。
【0037】
このときのパッド変位・ブレーキ液圧・時間の関係は、図4の線図で表すものになる。パッド変位を経過時間で除したΔd/Δtがパッドの衝突速度である。
なお、第1ピストン1と第2ピストン2がパッド4に接触するときのタイムラグがなければ、パッドの移動速度を低下させる効果は得られない。第1ピストンのみを設けたディスクブレーキのパッド変位・ブレーキ液圧・時間の関係は、図5の線Iで表される。また、第1ピストン1と第2ピストン2を併設してその2者を同時にパッドに接触させるときの、パッド変位・ブレーキ液圧・時間の関係は、図5の線IIで表されるものになる。
【0038】
パッド4の動き出しは、図6におけるばね14のセット荷重とピストンとパッドの接触部の摩擦抵抗に依存する。第1ピストン1と第2ピストン2を併設してその2者を同時にパッドに接触させると、第2ピストン2による摩擦抵抗が加算されて、図5の線IIのように、パッドが動き出すときのブレーキ液圧が点aの位置から点bの位置までΔP上昇する。これにより、パッドが動き出すときのエネルギーが大きくなるため、パッドが衝撃的に動いてトルク受け面に対するパッドの衝突速度はむしろ増幅されると思われる。
【0039】
この発明は、その不具合を、第2ピストンの非作動時位置を第1ピストン1の先端よりも後退させて第2ピストン2のパッド4に対する接触を遅らせることで解消している。
なお、パッド4に対する第2ピストン2の接触面積が大きすぎると、ピストンによるパッドの拘束力が増加し、パッド4が移動途中に拘束されてトルク受け面8に対しての接触が不安定になる。この事態は、ブレーキ鳴きを助長して好ましくない。従って、パッド4に対する第2ピストン2の接触面積は第1ピストン1の接触面積よりも小さくすることが望ましい。
【0040】
第1ピストン1と第2ピストン2は、図1に示したように、その両者を同軸上に配置するとブレーキの加工性が良くなるが、両者の中心をディスクロータの径方向に意図的にずらすことも考えられる。そのようにすることで、ディスクロータの径方向におけるパッドの面圧分布(押圧力の分布)を調整することができる。
【0041】
図7は、この発明の多ポット型ディスクブレーキへの適用例を示している。多ポット型ディスクブレーキでは、第1ピストン1がディスクロータの回転方向に沿って同一キャリパ3に複数個設置される。この多ポット型ディスクブレーキでは、第2ピストン2とその第2ピストン2を戻り方向に付勢する付勢手段13を、図のように、ロータ回出側に配置された第1ピストン1の内側に設置すると好ましい。この構造は、ロータ回入側にも第2ピストンを設ける構造で考えられる第2ピストンの作動のタイミングずれが起こらない。また、ロータ回入側でのパッド押圧力がロータ回出側でのパッド押圧力よりも小さくなって制動時の鳴きの抑制効果が高まることを期待できる。
【0042】
多ポット型ディスクブレーキにおいて、全数の第1ピストンにこの発明を特徴づける第2ピストンを伴わせる構造も勿論考えられる。この構造も、第2ピストンが遅れてパッドに接触することでトルク受け面にパッドが接触するときの衝撃が緩和される。また、ロータ回入側に配置される第2ピストンのパッドへの接触面積をロータ回出側に配置される第2ピストンのパッドへの接触面積よりも小さくすることで、パッド押圧力の分布の適性化が図れる。
【0043】
なお、この発明は、例示のピストン対向型ディスクブレーキに適用すると特に顕著な効果を期待できるが、インナー側のパッドをピストンで押圧し、アウター側のパッドは、キャリパのアウター爪で押圧する浮動型ディスクブレーキに適用してもその有効性が発揮され、トルク受け面に対するインナー側パッドの衝突を和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明のディスクブレーキの一形態を示す部分破断平面図
【図2】図1のX−X線に沿った断面図
【図3】作用説明用の図
【図4】第2ピストンがタイムラグを生じてパッドに接触する場合のパッド変位・ブレーキ液圧・時間の関係を示す線図
【図5】第1ピストンのみがパッドに接触する場合と第1、第2ピストンが同時にパッドに接触する場合のパッド変位・ブレーキ液圧・時間の関係を示す線図
【図6】パッドがばねに押圧されてディスク回転方向の中立位置に保持された状態を模式化して示す図
【図7】この発明のディスクブレーキの他の形態を示す平面視断面図
【符号の説明】
【0045】
1 第1ピストン
1a 貫通孔
2 第2ピストン
2a 小径部
3 キャリパ
3a インナー部
3b アウター部
3c ブリッジ部
4 パッド
5 パッドピン
6 取り付け足
7 シリンダ
8 トルク受け面
9 ピストンシール
10 シール部材
11 大気空間
12 リテーナ
13 付勢手段
14 ばね
D ディスクロータ
M マウント
Δd パッド変位
Δt 経過時間
ΔP 昇圧値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパ(3)のシリンダ(7)に挿入された液圧作動のピストンでブレーキパッド(4)を押圧して車両の車輪とともに回転するディスクロータ(D)に摺接させ、制動力を発生させるディスクブレーキであって、
前記ピストンとして、同一ブレーキ液圧を受けて作動する第1ピストン(1)と第2ピストン(2)を備え、
前記第2ピストン(2)は、前記ブレーキパッド(4)との摩擦係数が前記第1ピストン(1)とブレーキパッド(4)との摩擦係数よりも大きく、この第2ピストン(2)が付勢手段(13)により戻り方向に付勢されて非作動時に第1ピストン(1)の先端よりも後退した位置にあり、制動初期に前記第1ピストン(1)が第2ピストン(2)に先行して前記ブレーキパッド(4)に接触し、この後、前記ブレーキパッド(4)がトルク受け面(8)に接触するまでの過程で第2ピストン(2)がそのブレーキパッド(4)に接触するように構成された車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記第1ピストン(1)がカップ状であり、この第1ピストン(1)の内側に前記第2ピストン(2)が第1ピストンの底壁に設けた貫通孔(1a)との間を液密にシールして、かつ、第1ピストン(1)の内径面と第2ピストン(2)の外径面との間に大気空間(11)を生じさせて相対スライド可能に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記ブレーキパッド(4)に対する前記第2ピストン(2)の接触面積が、前記第1ピストン(1)の接触面積よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記第1ピストン(1)が同一キャリパ(3)にディスクロータ(D)の回転方向に沿って複数個設置され、前記第2ピストン(2)と付勢手段(13)が、ロータ回出側に配置された第1ピストン(1)の内側に設置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記第1ピストン(1)が同一キャリパ(3)にディスクロータ(D)の回転方向に沿って複数個設置され、前記第2ピストン(2)と付勢手段(13)が各第1ピストン(1)の内側に設置され、ロータ回入側に配置される第2ピストン(2)のブレーキパッド(4)に対する接触面積が、ロータ回出側に配置される第2ピストン(2)のブレーキパッド(4)に対する接触面積よりも小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−19361(P2010−19361A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181245(P2008−181245)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】