説明

車輌用前照灯

【課題】 光源から出射される光のロスを低減する。
【解決手段】 光を出射する光源11bと、光源から出射された光を反射するリフレクター12と、光源から出射された光を照射する投影レンズ15と、光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁24a、25aが投影レンズの焦点面Pに沿う円弧状に形成された第1の可動シェード22と、光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁が投影レンズの焦点面に沿う円弧状に形成された第2の可動シェード23とを設け、第1の可動シェードが前後に離隔し対向して位置された一対の遮蔽部24、25を有すると共に上縁が上下する方向へ移動可能とされ、第2の可動シェードが一対の遮蔽部の間で上縁が上下する方向へ移動可能とされた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用前照灯に関する。詳しくは、それぞれ上縁が投影レンズの焦点面に沿う第1の可動シェードと第2の可動シェードを設けて光源から出射される光のロスを低減する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯には光源から出射された光の遮蔽量を移動位置に応じて調節して大きさや形状の異なる複数の配光パターンを形成する可動シェードが配置されたものがある。
【0003】
このような車輌用前照灯には、ランプボデイとカバーによって形成された内部空間に光源、リフレクター、投影レンズ及びそれぞれ回動可能(移動可能)とされた平板状の一対の可動シェードを有する灯具ユニットが配置され、第1の可動シェードと第2の可動シェードの回動位置(移動位置)に応じて複数の異なる配光パターンが形成されるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2010−40459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光源から出射された光を前方へ向けて照射する投影レンズは略半球状に形成され、光の焦点面が曲面(球面)とされる。
【0006】
ところが、特許文献1に記載された車輌用前照灯にあっては、一対の可動シェードが平板状に形成されているため、左右方向における中央部においてはカットラインを形成する部分である可動シェードの上縁が焦点に一致されるが、左右方向における中央部から左右に行くに従って可動シェードの上縁が焦点面から次第に離れてしまう。
【0007】
従って、可動シェードの上縁と焦点面が離れる分だけ光源から出射される光のロスが生じ、投影レンズから照射される光に関して光量の低下を来たすと言う問題がある。
【0008】
そこで、本発明車輌用前照灯は、光源から出射される光のロスを低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
車輌用前照灯は、上記した課題を解決するために、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を反射するリフレクターと、前記光源から出射された光を照射する投影レンズと、前記光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁が前記投影レンズの焦点面に沿う円弧状に形成された第1の可動シェードと、前記光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁が前記投影レンズの焦点面に沿う円弧状に形成された第2の可動シェードとを備え、前記第1の可動シェードが前後に離隔し対向して位置された一対の遮蔽部を有すると共に前記上縁が上下する方向へ移動可能とされ、前記第2の可動シェードが前記一対の遮蔽部の間で前記上縁が上下する方向へ移動可能とされたものである。
【0010】
従って、車輌用前照灯にあっては、第1の可動シェードと第2の可動シェードの各上縁と焦点面が一致される。
【発明の効果】
【0011】
本発明車輌用前照灯は、光を出射する光源と、前記光源から出射された光を反射するリフレクターと、前記光源から出射された光を照射する投影レンズと、前記光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁が前記投影レンズの焦点面に沿う円弧状に形成された第1の可動シェードと、前記光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁が前記投影レンズの焦点面に沿う円弧状に形成された第2の可動シェードとを備え、前記第1の可動シェードが前後に離隔し対向して位置された一対の遮蔽部を有すると共に前記上縁が上下する方向へ移動可能とされ、前記第2の可動シェードが前記一対の遮蔽部の間で前記上縁が上下する方向へ移動可能とされたことを特徴とする。
【0012】
従って、光源から出射される光のロスを低減することができ、投影レンズから照射される光に関して光量の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明車輌用前照灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
車輌用前照灯1は、車体の前端部における左右両端部にそれぞれ取り付けられて配置されている。
【0015】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口されたランプボデイ2とランプボデイ2の前端部に取り付けられたカバー3とによって構成された灯具外筐4の内部が灯室5として形成され、灯室5にランプユニット6が配置されて構成されている。
【0016】
灯室5には保持部材7が光軸調整機構8を介して水平方向及び垂直方向に傾動自在に配置されている。
【0017】
保持部材7は熱伝導性の高い金属材料によって形成され、前後方向を向くベース部9とベース部9の上下方向における中央部から前方へ突出された取付突部10とを有している。
【0018】
ベース部9の上下両端部には被支持部9a、9a、9aが設けられている。被支持部9a、9a、9aは、例えば、左右に離隔して上側に二つが設けられ、下側に一つが設けられている。
【0019】
ベース部9の後面には後方へ突出された放熱フィン9b、9b、・・・が設けられている。
【0020】
取付突部10の上面には発光ユニット11が配置されている。発光ユニット11は回路基板11aと回路基板11a上に搭載された光源11bと光源11bを閉塞して保護する保護カバー11cとを有している。光源11bとしては、例えば、発光ダイオードが用いられている。
【0021】
取付突部10の上面における後端部にはリフレクター12が取り付けられている。リフレクター12は内面が反射面12aとして形成されている。
【0022】
ベース部9に設けられた放熱フィン9b、9b、・・・の後方には放熱用ファン13が配置されている。
【0023】
取付突部10の前面には連結部材14が取り付けられている。連結部材14の前端部には投影レンズ15が取り付けられている。
【0024】
光軸調整機構8はエイミングスクリュー16、16とレベリングアクチュエーター17を有している。
【0025】
エイミングスクリュー16、16は灯室5の上部において左右に離隔して位置され、回転操作部18、18と回転操作部18、18からそれぞれ前方へ突出された軸部19、19とから成り、軸部19、19の前端部が螺軸部19a、19aとして設けられている。
【0026】
エイミングスクリュー16、16は回転操作部18、18がそれぞれランプボデイ2の後端部に回転自在に支持され、螺軸部19a、19aがそれぞれ保持部材7の上側の被支持部9a、9aに螺合されている。
【0027】
レベリングアクチュエーター17は駆動部20と駆動部20から前方へ突出された軸部21とから成り、軸部21の前端部が螺軸部21aとして設けられている。レベリングアクチュエーター17は螺軸部21aが保持部材7の下側の被支持部9aに螺合されている。
【0028】
車輌用前照灯1において、回転操作部18が図示しないドライバー等の治具によって操作されて被支持部9aに連結されたエイミングスクリュー16が回転されると、その回転方向に応じた方向へ他の被支持部9a、9aを支点として保持部材7が傾動され、ランプユニット6の光軸調整(エイミング調整)が行われる。
【0029】
また、駆動部20の駆動力によって被支持部9aに連結された軸部21が回転されると、その回転方向に応じた方向へ他の被支持部9a、9aを支点として保持部材7が傾動され、ランプユニット6の光軸調整(レベリング調整)が行われる。
【0030】
連結部材14には第1の可動シェード22と第2の可動シェード23がそれぞれ回動自在に支持されている。
【0031】
第1の可動シェード22は、図2乃至図4に示すように、それぞれ球面状の板状に形成された前側遮蔽部24と後側遮蔽部25とを有し、前側遮蔽部24と後側遮蔽部25が前後に一定の間隔で離隔して位置されている。前側遮蔽部24の上縁24aと後側遮蔽部25の上縁25aはそれぞれ配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部として設けられている。
【0032】
第1の可動シェード22の上縁24a、25aにはそれぞれ段差24b、25bが形成され、段差24b、25bは光軸Sを含む垂直面Tと交わる位置に形成されている(図4及び図5参照)。尚、図4及び図5には段差24b、25bを誇張して示している。
【0033】
第1の可動シェード22は段差24b、25bによって、上縁24a、25bのうち段差24b、25bの右側の部分が段差24b、25bの左側の部分より上方に位置されている。
【0034】
第1の可動シェード22は光源11bの光軸Sを含む垂直面Tを基準として、この垂直面Tより右側の部分の左右方向における長さが長くされ、垂直面Tより左側の部分の左右方向における長さが短くされている(図4及び図5参照)。第1の可動シェード22の上縁24a、25aは投影レンズ15の焦点面Pに沿うように後方へ凸の円弧状に形成されている(図2参照)。
【0035】
投影レンズ15の焦点面Pは前側遮蔽部24と後側遮蔽部25の間に位置されている。このように投影レンズ15の焦点面Pを前側遮蔽部24と後側遮蔽部25の間に位置させることにより、色収差の発生が抑制されると共に水平カットラインを鮮明に形成することが可能となる。
【0036】
第2の可動シェード23は球面状の板状に形成され、上縁23aが配光パターンのカットラインを形成するカットライン形成部として設けられている。
【0037】
第2の可動シェード23は右側縁が光源11bの光軸Sを含む垂直面に略一致されている(図4及び図5参照)。第2の可動シェード23の上縁23aは投影レンズ15の焦点面Pに沿うように後方へ凸の円弧状に形成されている(図2参照)。
【0038】
第2の可動シェード23は一部が第1の可動シェード22の前側遮蔽部24と後側遮蔽部25の間に配置され、前側遮蔽部24と後側遮蔽部25の間において回動可能とされている。
【0039】
第1の可動シェード22の右端部と第2の可動シェード23の左端部とにはそれぞれギヤ26、26が取り付けられている。ギヤ26、26にはそれぞれ外方へ突出された支持軸26a、26aが設けられ、支持軸26a、26aがそれぞれ連結部材14の図示しない支持部に支持されている。
【0040】
ギヤ26、26はそれぞれ図示しない駆動モーターの駆動力によって回転され、ギヤ26、26の回転に伴って第1の可動シェード22と第2の可動シェード23がそれぞれギヤ26、26の支持軸26a、26aを支点として回動される。
【0041】
第1の可動シェード22と第2の可動シェード23は投影レンズ15の焦点面Pに沿う位置に配置され、焦点面Pに沿って回動可能とされている(図2及び図3参照)。
【0042】
例えば、第1の可動シェード22と第2の可動シェード23がそれぞれ上方側の移動端まで回動されると、図4に示すように、光源11bから出射される光の遮蔽量が最も多い状態となり、近距離を照射する所謂ロービームの配光パターンが形成される。尚、第1の可動シェード22と第2の可動シェード23がそれぞれ上方側の移動端に位置された状態においては、第1の可動シェード22の上縁24a、25aと第2の可動シェード23の上縁23aとが略同じ高さに位置される。
【0043】
また、第1の可動シェード22が上方側の移動端まで回動され、第2の可動シェード23が下方側に回動されると、図5に示すように、光源11bから出射される光に関してロービームの配光パターンを形成する状態よりも遮蔽量が少ない状態となり、左右の片側半分の部分で遠距離を照射し左右の片側の他の半分の部分で近距離を照射する所謂片側ハイビームの配光パターンが形成される。
【0044】
さらに、第1の可動シェード22が下方側に回動され、第2の可動シェード23が上方側の移動端まで回動されると、光源11bから出射される光に関してロービームの配光パターンを形成する状態よりも遮蔽量が少ない状態となり、左右の片側半分の部分で遠距離を照射し左右の片側の他の半分の部分で近距離を照射する所謂片側ハイビームの配光パターンが形成される。
【0045】
さらにまた、第1の可動シェード22と第2の可動シェード23がそれぞれ下方側の移動端まで回動されると、光源11bから出射される光に関して遮蔽量が最も少ない状態となり、遠距離を照射する所謂ハイビームの配光パターンが形成される。
【0046】
以上に記載した通り、車輌用前照灯1にあっては、第1の可動シェード22と第2の可動シェード23の上縁23a、24a、25aが投影レンズ15の焦点面Pに沿う円弧状に形成されている。
【0047】
従って、光源11bから出射される光のロスを低減することができ、投影レンズ15から照射される光に関して光量の低下を抑制することができる。
【0048】
また、第1の可動シェード22と第2の可動シェード23がそれぞれ球面状に形成され投影レンズ15の焦点面Pに沿って回動可能とされている。
【0049】
従って、第1の可動シェード22と第2の可動シェード23の回動位置(移動位置)によらず、光源11bから出射される光のロスを低減することができ、投影レンズから照射される光に関して光量の低下を抑制することができる。
【0050】
尚、上記には、何れも球面状に形成された第1の可動シェード22と第2の可動シェード23を例として示したが、第1の可動シェードと第2の可動シェードは各上縁が焦点面Pに沿う円弧状に形成されていればよく、例えば、平板が後方へ凸に屈曲されて形成されていてもよい。
【0051】
この場合には、第1の可動シェードと第2の可動シェードを上下方向へ移動させる構成とすることが可能である。
【0052】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図2乃至図5と共に本発明車輌用前照灯の最良の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略縦断面図である。
【図2】投影レンズと可動シェードとリフレクターを示す概略平面図である。
【図3】投影レンズと可動シェードとリフレクターを示す概略側面図である。
【図4】可動シェードとリフレクターを示す概略斜視図である。
【図5】可動シェードとリフレクターを図4とは異なる状態で示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1…車輌用前照灯、11b…光源、12…リフレクター、15…投影レンズ、22…第1の可動シェード、23…第2の可動シェード、23a…上縁、24…前側遮蔽部、24a…上縁、25…後側遮蔽部、25a…上縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を反射するリフレクターと、
前記光源から出射された光を照射する投影レンズと、
前記光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁が前記投影レンズの焦点面に沿う円弧状に形成された第1の可動シェードと、
前記光源から出射された光の一部を遮蔽し上縁が前記投影レンズの焦点面に沿う円弧状に形成された第2の可動シェードとを備え、
前記第1の可動シェードが前後に離隔し対向して位置された一対の遮蔽部を有すると共に前記上縁が上下する方向へ移動可能とされ、
前記第2の可動シェードが前記一対の遮蔽部の間で前記上縁が上下する方向へ移動可能とされた
ことを特徴とする車輌用前照灯。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−84439(P2012−84439A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230825(P2010−230825)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】