説明

農作業機

【課題】農作業機において、取扱説明書を見なくても簡単且つ効率的に、各作動部の機能調整作業を行えるようにする。
【解決手段】農作業機における各種モードの情報を表示するための液晶ディスプレイ75と、前記情報を液晶ディスプレイ75に表示させる制御を実行するコントローラ130とを備える。コントローラ130のEEPROM132には、各作動部の調整方法を示すガイダンス情報を予め記憶させる。コントローラ130は、各作動部の機能調整を行う調整モードの実行時において、ガイダンス情報が複数ある場合は、タッチパネル76の所定箇所を手動操作する毎に、液晶ディスプレイ75に、調整対象の作動部に対するガイダンス情報を、優先順位の高い方から順に切り換え表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンバインや田植機、トラクタといった農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、農作業機においては、制御目標となる制御量の信号を制御手段に伝えたり制御対象の作動量を検出したりするための入力系機器(例えばセンサや設定器等)と、入力系機器からの信号に応じて制御対象を駆動させるための出力系機器(例えば各種アクチュエータ等)とを備えている。これら入出力系機器は通常、マイクロコンピュータ等の制御手段にて制御されている。
【0003】
そして最近では、農作業機の操縦部に、液晶ディスプレイ等の表示手段が設けられている(例えば特許文献1等参照)。路上走行や各種作業の際には、農作業機の状態情報(例えばエンジンの回転数や負荷、車速、グレンタンク内に貯留された穀粒の積載量等)が表示手段の画面に表示される。このため、オペレータ(作業者)は、表示手段の画面を見ることで、農作業機における各作動部(例えば刈取部、脱穀部、走行部等)の状態を視覚的に認識できる。
【特許文献1】特開平10−23820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際の農作業時には、農作業機に生じた現象・状況に合わせて、各作動部の機能調整をすることが多々ある。このような機能調整作業をするに際しては、オペレータが農作業機の構造をある程度理解し、調整方法に習熟しておく必要がある。そして、習熟するまでは、農作業機の取扱説明書を見ながら機能調整作業を行わなければならない。
【0005】
しかし、農作業に際して、圃場まで取扱説明書を持参していることは極めてまれであるから、多くの場合、オペレータはどの部分をどのように調整すればよいのか分からず、各作動部の機能調整を事実上行えないという問題があった。仮に、取扱説明書を持参していたとしても、取扱説明書を見ながらの機能調整作業は大変煩わしく、作業効率がよくないという問題があった。
【0006】
また、前述の機能調整作業をするに際しては、安全上の観点から、農作業機を走行停止状態に保持して、エンジンから各作動部に向かう動力伝達を継断操作するためのクラッチ操作手段を切り操作しておく必要がある。しかし、オペレータがクラッチ操作手段を切り忘れたままで機能調整作業をする可能性は往々にしてある。かかる切り忘れ状態で機能調整作業をすると、オペレータが調整対象の作動部に巻き込まれてけがをするおそれがあり、大変危険であった。
【0007】
本願発明は、以上の問題点を解消すべくなされたものであり、各作動部の機能調整を安全に実行できる農作業機を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明に係る農作業機は、当該農作業機における各種モードの情報を表示するための表示手段と、前記情報を前記表示手段に表示させる制御を実行する制御手段とを備えており、前記制御手段には、前記農作業機における各作動部の調整方法を示すガイダンス情報が予め記憶された記憶手段を有しており、前記制御手段は、前記各作動部の機能調整を行う調整モードの実行時において、前記ガイダンス情報が複数ある場合は、前記表示手段上又はその近傍に配置された入力手段を手動操作する毎に、前記表示手段に、調整対象の作動部に対する前記ガイダンス情報を、優先順位の高い方から順に切り換え表示させるというものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載した農作業機において、前記複数のガイダンス情報はオペレータが実行可能な程度の調整方法になっており、且つ、これらの優先順位が調整効果の高い順に設定されているというものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した農作業機において、前記制御手段は、前記調整モードの実行時において、前記表示手段に前記ガイダンス情報を表示した状態では、前記表示手段の一部に、前記機能調整に際しての注意事項を示す注意データを併せて表示させるというものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した農作業機において、前記制御手段は、優先順位の最も低いガイダンス情報を前記表示手段に表示した状態で前記入力手段を手動操作した場合には、前記表示手段の画面表示を、専門的診断を促す旨の最終処置情報に遷移させるというものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によると、農作業機における各作動部の機能調整を行う調整モードの実行時において、ガイダンス情報が複数ある場合は、表示手段上又はその近傍に配置された入力手段を手動操作する毎に、前記表示手段に、調整対象の作動部に対する前記ガイダンス情報が、優先順位の高い方から順に切り換え表示されるので、オペレータは取扱説明書がなくても調整方法を簡単に確認でき、前記表示手段の画面表示に従って、機能調整作業を手軽に実行できるという効果を奏する。
【0013】
しかも、優先順位の高いガイダンス情報から順に前記表示手段に切り換え表示するので、オペレータは優先順位の高い調整方法(例えば不都合状態を解消する可能性が高いもの)から先に確認でき、各作動部における機能調整作業の効率化を図れるという効果をも奏する(不都合状態が解消しないという時間的なロスを減らすのに寄与できる)。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1をより具体化した構成である。この場合、前記複数のガイダンス情報はオペレータが実行可能な程度の調整方法になっており、且つ、これらの優先順位が調整効果の高い順に設定されているから、前述した機能調整作業の効率向上に高い効果を発揮できる。
【0015】
請求項3の発明によると、前記制御手段は、前記調整モードの実行時において、前記表示手段に前記ガイダンス情報を表示した状態では、前記表示手段の一部に、前記機能調整に際しての注意事項を示す注意データを併せて表示させるから、機能調整作業の前提となる条件等を、予めオペレータに知らせて確認を促すことが可能になる。従って、機能調整作業を適切な状態で行えるという効果を奏する。
【0016】
請求項4の発明によると、前記制御手段は、優先順位の最も低いガイダンス情報を前記表示手段に表示した状態で前記入力手段を手動操作した場合には、前記表示手段の画面表示を、専門的診断を促す旨の最終処置情報に遷移させるから、オペレータは最終処置情報の画面表示に到達することによって、現状の不都合状態がどの程度のものであるのか、つまり、オペレータが自ら調整できる程度の状態なのか、又は専門家の診断を頼まなければならないものなのかを簡単に把握できる。このため、現状の不都合状態次第では、販売店やサービスセンタから一々専門家を呼ばなくても、オペレータ自らが機能調整でき、農作業を大幅に中断させなくて済むという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1〜図13は本願発明をコンバインに適用した第1実施例である。図1はコンバインの側面図、図2は操縦部の平面図、図3は脱穀装置の側断面図、図4は脱穀装置の要部拡大側断面図、図5は動力伝達系のスケルトン図、図6はコントローラの機能ブロック図、図7は通常モード情報の画面図、図8は調整モードにおける選択メニュー情報の画面図、図9は不都合状態情報の画面図、図10は優先順位第1位のガイダンス情報の画面図、図11は優先順位第2位のガイダンス情報の画面図、図12は優先順位第3位のガイダンス情報の画面図、図13は最終処置情報の画面図である。
【0019】
(1).コンバインの概略構造
まず、図1〜図3を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体の進行方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく進行方向に向かって右側を単に右側と称する。
【0020】
図1に示すように、第1実施例のコンバインは、走行装置としての左右一対の走行クローラ2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、圃場の植立穀稈(未刈穀稈)を刈り取りながら取り込む4条刈り用の刈取装置3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するためのグレンタンク7とが横並び状に搭載されている。第1実施例では、脱穀装置5が走行機体1の左側に、グレンタンク7が走行機体1の右側に配置されている。走行機体1の後部には、排出オーガ8が旋回可能に設けられている。グレンタンク7内の穀粒は、排出オーガ8の先端籾投げ口からトラックの荷台やコンテナ等に搬出される。
【0021】
刈取装置3とグレンタンク7との間に操縦部9が設けられている。操縦部9内には、走行機体1の進行(旋回)方向を変更操作するための操縦ハンドル10や、オペレータが着座する操縦座席11を備えている。操縦座席11の左側方に配置されたサイドコラム12には、走行機体1の変速操作を行うための主変速レバー13及び副変速レバー14と、クラッチ操作手段としてのクラッチレバー15とが設けられている(図2参照)。
【0022】
クラッチレバー15は、刈取装置3への動力継断操作用のレバーと、脱穀装置5への動力継断操作用のレバーとを1本で兼ねたものであり、サイドコラム12に形成されたL字ガイド溝16に沿って前後左右に傾動可能に構成されている。クラッチレバー15の操作位置に応じて刈取用アクチュエータ及び脱穀用アクチュエータ(図示省略)が駆動することにより、クラッチ手段としての刈取クラッチ101及び脱穀クラッチ106(詳細は後述する)が入り切り作動することになる。クラッチレバー15がL字ガイド溝16における前後溝部の後側にあれば両クラッチ101,106とも切り状態(動力遮断状態)となり、前後溝部の前側(左右溝部の右側でもある)にあれば脱穀クラッチ106のみが入り状態(動力接続状態)となり、左右溝部の左側にあれば両クラッチ101,106とも入り状態となる。
【0023】
図2に示すように、サイドコラム12の後方にある壁面には、後述するチャフシーブ41での穀粒の選別性能を調節する前向き突出状の選別調節レバー17が複数段階(第1実施例では5段階)に上下傾動可能に設けられている。
【0024】
操縦ハンドル10におけるハンドルホイルの内側には、文字、記号、画像といった各種情報を表示可能な表示手段としての液晶ディスプレイ75と、これを収納するケース77とを有する計器表示装置18が配置されている(図2参照)。計器表示装置18は、操縦ハンドル10を支持するフロントコラム19側に固定されていて、操縦ハンドル10には連結していない。このため、操縦ハンドル10を回動操作しても計器表示装置18が動くことはない。
【0025】
液晶ディスプレイ75上には、入力手段としての透明なタッチパネル76が取り付けられている。液晶ディスプレイ75に表示される情報は、タッチパネル76から透けて見える。液晶ディスプレイ75とタッチパネル76とは、制御手段としてのコントローラ130(詳細は後述する)に電気的に接続されている。タッチパネル76の所定箇所を指やペン等で押圧すると、タッチパネル76が押圧位置のデータをコントローラ130に伝送して、コントローラ130が前述した表示情報の内容を実行するように構成されている。
【0026】
操縦部9の下方には、動力源としてのエンジン20が配置されている。エンジン20の前方には、当該エンジン20からの動力を適宜変速して左右両走行クローラ2に伝達するためのミッションケース21が配置されている。
【0027】
走行機体1の前部に装着された刈取装置3は、バリカン式の刈刃装置23、4条分の穀稈引起装置24及び穀稈搬送装置25を備えている。刈刃装置23は圃場における植立穀稈の株元を切断するためのものであり、刈取装置3の骨組を構成する刈取フレーム22の下方に配置されている。穀稈引起装置24は圃場の植立穀稈を引き起こすためのものであり、刈取フレーム22の前部上方に配置されている。穀稈搬送装置25は刈刃装置23にて刈り取られた刈取穀稈をフィードチェン6に向けて搬送するためのものであり、穀稈引起装置24とフィードチェン6の送り始端部との間に配置されている。なお、穀稈引起装置24の下部前方には、圃場の植立穀稈を掻き分ける分草体26が突設されている。圃場の植立穀稈は、コンバインが圃場内を移動しながら刈取装置3を駆動させることによって連続的に刈り取られる。
【0028】
図1及び図3に示すように、走行機体1の左側に配置された脱穀装置5は、刈取穀稈を脱穀処理するための扱胴31と、扱胴31の下方に落下する脱穀物を選別するための揺動選別盤32及び唐箕ファン33と、扱胴31の後部から取り出される脱穀排出物を再処理するための処理胴34と、揺動選別盤32の後部から排塵を排出するための排塵ファン35とを備えている。扱胴31の下方には、扱胴31と揺動選別盤32との間を区画するクリンプ網36が張設されている。なお、扱胴31の回転軸109(図5参照)は、フィードチェン6による刈取穀稈の搬送方向(換言すると走行機体1の進行方向)に沿って延びている。刈取装置3から送られてきた刈取穀稈の株元側はフィードチェン6に受け継がれて後方に挟持搬送される。フィードチェン6にて挟持搬送されている刈取穀稈の穂先側は脱穀装置5内に搬入され、扱胴31にて脱穀処理される。
【0029】
図3に示すように、揺動選別盤32は、脱穀装置5を構成する脱穀筐体30内に、揺動クランク軸37と前後一対のガイドレール38,39とを介して、前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復移動可能に配置されている。エンジン20からの動力による揺動クランク軸37の回動作用によって、揺動選別盤32は前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復揺動するように構成されている。揺動選別盤32には、クリンプ網36の下方に位置するフィードパン40、フィードパン40の後方に位置するチャフシーブ41、及び、チャフシーブ41と後述する一番樋45との間を区画するグレンシーブ42が設けられている。
【0030】
揺動選別盤32の下方には、揺動選別盤32にて選別された穀粒のうち精粒等の一番物を取り出すための一番コンベヤ43及び一番樋45と、枝梗付き穀粒や穂切れ粒等の二番物を取り出すための二番コンベヤ44及び二番樋46とが設けられている。各コンベヤ43,44は、それぞれ対応する樋45,46に内装されている。第1実施例のコンベヤ43,44(又は樋45,46)は、走行機体1の進行方向前側から一番コンベヤ43(一番樋45)、二番コンベヤ44(二番樋46)の順で、側面視において走行クローラ2の後部上方に横設されている。
【0031】
扱胴31にて脱穀されクリンプ網36から漏れ落ちた脱穀物は、往復揺動する揺動選別盤32のフィードパン40上に落下して揺動選別(比重選別)をされながら、後方のチャフシーブ41に送られる。チャフシーブ41上の脱穀物は、当該チャフシーブ41自体にて揺動選別をされると共に、唐箕ファン33から後ろ向きに流れる選別風を受ける。かかる揺動選別と風選別との相互作用により、脱穀物は穀粒と藁屑とに分離される。
【0032】
チャフシーブ41及びグレンシーブ42から落下した穀粒(精粒等の一番物)は、その中の粉塵を唐箕ファン33からの選別風にて除去しながら一番樋45内に集められる。グレンシーブ42を通り抜けられなかった穀粒(枝梗付き穀粒等の二番物)は、一番樋45の後方にある二番樋46内に集められる。なお、チャフシーブ41上の比較的軽い藁屑は、排塵ファン35に吸い込まれて、その後方に形成された吸引排出口47から機外に排出される。また、チャフシーブ41上の比較的重い藁屑は、揺動選別盤32の後方に形成された揺動排出口48から機外へ排出される。
【0033】
一番樋45において脱穀筐体30の右側面板から外向きに突出した終端部は、上下方向に延びる揚穀筒50を介してグレンタンク7に連通接続されている。揚穀筒50内には揚穀コンベヤ51(図5参照)が設けられている。一番樋45内に集められた精粒等の一番物は、一番コンベヤ43及び揚穀コンベヤ51を介してグレンタンク7に集積される。
【0034】
二番樋46において脱穀筐体30の右側面板から外向きに突出した終端部は、揚穀筒50と交差して前後方向に延びる還元筒52を介して、脱穀筐体30の右側面板のうちフィードパン40の上方側に連通接続されている。還元筒52内には還元コンベヤ53(図5参照)が設けられている。還元筒52の送り終端部には、二番物を再脱穀する二番還元処理胴54が内装されている。二番樋46に集められた二番物は、二番コンベヤ44、還元コンベヤ53及び二番還元処理胴54を介して、再脱穀された状態でフィードパン40上に戻され再選別される。
【0035】
他方、フィードチェン6の送り終端側には排稈チェン55が配置されている。フィードチェン6の後端部から排稈チェン55に受け継がれた排稈(脱粒後の稈)は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は脱穀装置5の後方に設けられた排稈カッタ56にて短く切断されたのち、機外へ排出される。
【0036】
(2).穀粒の選別性能を調節するための構造
次に、図3及び図4を参照しながら、揺動選別盤32のチャフシーブ41及び唐箕ファン33による穀粒の選別性能を調節するための構造について説明する。
【0037】
チャフシーブ41は、後述する第1横桟61aの傾斜角度を刈取穀稈量に対応して自動的に変更可能に構成された可動チャフ部61と、後述する第2横桟62aの傾斜角度を手動操作にて二段階に変更可能に構成された手動チャフ部62と、複数の第3横桟63aからなる固定チャフ部63とを備えている。可動チャフ部61はグレンシーブ42(一番樋45)の上方に位置している。手動チャフ部62は二番樋46の上方に位置している。固定チャフ部63は手動チャフ部62の後方に位置している。
【0038】
可動チャフ部61は、側面視で前方斜め下向き(後方斜め上向き)に傾斜した左右長手の第1横桟61aの複数個と、揺動選別盤32の左右側板に前後移動可能に支持されたチャフ調節杆61bとを備えている。各第1横桟61aの上端側は揺動選別盤32の左右側板に回動可能に連結されている一方、下端側はチャフ調節杆61bに回動可能に連結されている。このため、各第1横桟61aの傾斜角度は、チャフ調節杆61bの前後移動によって一斉に変更される。その結果、各第1横桟61aの間の漏下間隔(可動チャフ部61の開閉度)が広がったり狭まったりすることになる。
【0039】
チャフ調節杆61bは、脱穀筐体30における左側面板の外面側に配置された連動リンク機構64(図4参照)の作用にて前後移動するように構成されている。連動リンク機構64は、操作ワイヤ65を介して操縦部9に配置された選別調節レバー17に連動連結されている。選別調節レバー17を上向きに傾動操作するほど、操作ワイヤ65を介しての連動リンク機構64の作用によりチャフ調節杆61bが後方向に移動して、各第1横桟61aの間の漏下間隔(可動チャフ部61の開閉度)が広がるように構成されている。ここで、選別調節レバー17は、下から上に向けて5段階の傾動操作が可能になっている。一番下に傾動操作した第1段階で可動チャフ部61の開閉度が最も小さく(狭く)、一番上に傾動操作した第5段階で可動チャフ部61の開閉度が最も大きく(広く)なる。
【0040】
なお、詳細は図示していないが、連動リンク機構64は、操作ワイヤ65とは別の連係ワイヤ66を介して、排稈の株元を排稈チェン55と共に挟持するためのチェンガイドにも連動連結されている。排稈量の増加のためにチェンガイドが排稈チェン55から離れるほど、連係ワイヤ66を介しての連動リンク機構64の作用によりチャフ調節杆61bが後方向に移動して、各第1横桟61aの間の漏下間隔(可動チャフ部61の開閉度)が広がるように構成されている。
【0041】
手動チャフ部62は基本的に可動チャフ部61と同じ構成であり、側面視で前方斜め下向き(後方斜め上向き)に傾斜した左右長手の第2横桟62aの複数個と、揺動選別盤32の左右側板に前後移動可能に支持されたチャフ変更杆62bとを備えている。各第2横桟62aの上端側は揺動選別盤32の左右側板に回動可能に連結されている一方、下端側はチャフ変更杆62bに回動可能に連結されている。
【0042】
チャフ変更杆62bには、当該チャフ変更杆62bを手動にて前位置と後位置とに移動操作するためのチャフ調節レバー67が設けられている。チャフ調節レバー67の手動操作にてチャフ変更杆62bを前位置又は後位置に移動させることにより、各第2横桟62aの傾斜角度が一斉に変更され、手動チャフ部62の開閉度が閉じ気味状態と通常状態と開き気味状態との3段階に変更されることになる。チャフ調節レバー67は、脱穀筐体30における左側面板の後部側(手動チャフ部62の後方箇所)に形成された覗き窓穴68に臨ませている。当該覗き窓穴68が扉体(図示省略)にて開閉可能に塞がれていることはいうまでもない。
【0043】
前述の通り、固定チャフ部63は、側面視で前方斜め下向き(後方斜め上向き)に傾斜した左右長手の第3横桟63aの複数個からなっている。これら各第3横桟63aは、揺動選別盤32の左右側板に移動不能に固定されている。
【0044】
他方、脱穀筐体30における左側面板の前部側(唐箕ファン33の箇所)には、空気取入口69が形成されている。空気取入口69の上部側には、当該空気取入口69の開口面積を増減するためのファンシャッタ70が設けられている。また、ファンシャッタ70には、当該ファンシャッタ70を手動にて開閉操作するための開閉レバー71が設けられている。この場合、開閉レバー71の手動操作にてファンシャッタ70を開閉することによって、唐箕ファン33からの選別風量が増減することになる。
【0045】
(3).コンバインの動力伝達系統
次に、図5を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。
【0046】
エンジン20からの動力の一方は刈取装置3と脱穀装置5との2方向に分岐して伝達される。エンジン20からの他の動力は排出オーガ8に向けて伝達される。エンジン20から刈取装置3に向かう分岐動力は一旦、刈取クラッチ101を介して、ミッションケース21内にある油圧ポンプ油圧モータ式(HST式)無段変速機のHST入力軸102に伝達され適宜変速される。無段変速機による変速出力は、ミッションケース21に突設された刈取PTO軸103から、プーリ及びベルト伝動系を介して、左右横長の刈取入力軸104及び刈取フレーム22内に収容された縦伝動軸105に伝達され、刈取入力軸104及び縦伝動軸105から、刈取装置3の各装置23〜25に動力伝達される。
【0047】
他方、エンジン20から脱穀装置5に向かう分岐動力は、脱穀クラッチ106を介して脱穀入力軸107に伝達される。脱穀入力軸107に伝達された動力の一部は、脱穀駆動機構108を介して、処理胴34の回転軸110と、扱胴31の回転軸109及び排稈チェン55とに伝達される。また、脱穀入力軸107からは、プーリ及びベルト伝動系を介して、唐箕ファン33のファン軸111、一番コンベヤ43と揚穀コンベヤ51、二番コンベヤ44と還元コンベヤ53と二番還元処理胴54、揺動選別盤32の揺動クランク軸37、排塵ファン35の排塵軸112、並びに排稈カッタ56に伝達される。排塵軸112を経由した分岐動力は、FC(フィードチェン)クラッチ113及びFC(フィードチェン)軸114を経てフィードチェン6に動力伝達される。
【0048】
なお、脱穀入力軸107からの動力は、流し込みクラッチ115を介して刈取入力軸104にも伝達可能である。すなわち、ミッションケース21を経由せずに直接、エンジン20からの動力を刈取装置3に伝達することによって、車速の速い遅いに拘らず、刈取装置3を一定の高速にて強制駆動させることが可能になっている。
【0049】
エンジン20から排出オーガ8に向かう動力は、グレン入力ギヤ機構116及び動力継断用のオーガクラッチ117を介して、グレンタンク7内の底コンベヤ118及び排出オーガ8における縦オーガ筒内の縦コンベヤ119に動力伝達され、次いで、受継スクリュー120を介して、排出オーガ8における横オーガ筒内の排出コンベヤ121に動力伝達される。
【0050】
(4).モード切換制御の詳細
次に、図6〜図13を参照しながら、コンバインにおけるモード切換制御の詳細について説明する。
【0051】
走行機体1に搭載された制御手段としてのコントローラ130は、コンバインの作動全般を制御すると共に、モード切換制御や液晶ディスプレイ75の表示制御を実行するためのものである。図6に示すように、コントローラ130は、各種演算処理や制御を実行するCPU131の他、制御プログラムやデータを記憶させる記憶手段としてのEEPROM132、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるためのRAM133、及び入出力インターフェイス(図示省略)等を備えている。
【0052】
記憶手段としてのEEPROM132には、コンバインのモード(動作の状態)に関する文字、記号、画像等の各種情報が予め記憶されている。詳細は後述するが、この種の情報としては、例えば通常モード情報140(図7参照)、調整モードの選択メニュー情報150(図8参照)、コンバインの各作動部(脱穀装置5や走行装置2等)に生じた不都合状態を示す不都合状態情報160(図9参照)、及び、不都合状態を解消する調整方法を示すガイダンス情報170(図10〜図12参照)等がある。また、EEPROM132には、エンジン20の定格回転数やアイドリング回転数に関するデータも予め記憶されている。
【0053】
コントローラ130の入力インターフェイスには、エンジン20への燃料噴射量を調節するガバナ付き燃料噴射ポンプ(図示省略)のラック位置を検出するためのラック位置センサ134、刈取クラッチ101の作動状態を検出する刈取クラッチセンサ135、脱穀クラッチ106の作動状態を検出する脱穀クラッチセンサ136、及び、入力手段としてのタッチパネル76等が接続されている。コントローラ130の出力インターフェイスには、燃料噴射ポンプのラック位置を調節してエンジン20の回転数を所定回転数にするためのラックアクチュエータ137、刈取用アクチュエータを駆動させるための刈取駆動回路138、脱穀用アクチュエータを駆動させるための脱穀駆動回路139、及び、表示手段としての液晶ディスプレイ75等が接続されている。
【0054】
さて、コンバインのモード(動作の状態)としては、初期モード、路上走行や各種農作業を実行する通常モード、コンバインにおける各作動部の異常状態を報知する警報表示モード、各種エラーの内容を報知するエラー表示モード、環境設定モード、及び、各作動部の機能調整をする際にその調整方法を示すガイダンス情報170(詳細は後述する)を液晶ディスプレイ75に表示する調整モードがある。
【0055】
路上走行や各種農作業をしているときは通常モードが実行される。この場合、液晶ディスプレイ75には、通常モード情報140として、走行機体1の走行速度(車速)を示す速度計141、エンジン負荷を示す略L字状の負荷グラフ142、グレンタンク7内の籾貯留量を知らせるタンクモニタ143、燃料の残量を知らせる燃料計144、副変速レバー14の設定状態を知らせる副変速モニタ145、刈取装置3における駆動速度の設定状態を知らせる刈取変速モニタ146、及び、調整モードに移行するための「ヘルプ」ボタン147が表示される(図7参照)。
【0056】
通常モードの実行中に「ヘルプ」ボタン147を押下すると、通常モードから調整モードに移行して、液晶ディスプレイ75の画面表示が通常モード情報140から調整モードの選択メニュー情報150(図8参照)に遷移する。図8に示す選択メニュー情報150の画面には、「具合の悪い箇所はありますか?」の文字データ151と、調整対象となる作動部を示す「刈取装置」、「脱穀装置」、「走行装置」、「オーガ」及び「排稈部」という5種類の選択ボタン152〜156と、通常モードに復帰するための「戻る」ボタン157とが表示される。
【0057】
第1実施例では、「ヘルプ」ボタン147の押下操作にて通常モードから調整モードへ移行するときに、コントローラ130からの指令に基づく刈取用及び脱穀用アクチュエータの駆動にて、刈取クラッチ101及び脱穀クラッチ106が切り作動する。そして、ラックアクチュエータ137の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックをアイドリング回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン20の回転数がアイドリング状態にまで低下する。
【0058】
このように制御すると、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、「ヘルプ」ボタン147を押下操作して調整モードを実行するだけで、刈取クラッチ101及び脱穀クラッチ106を切り作動させ、各作動部への動力伝達を遮断できる。従って、各作動部の機能調整をする際にクラッチレバー15を切り操作する手間が省けるし、オペレータがクラッチレバー15を切り忘れたままで機能調整作業をしたとしても、調整対象の作動部が駆動することはなく、機能調整作業を極めて安全に実行できる(機能調整作業をする上での安全性を確保できる)。
【0059】
特に第1実施例では、刈取クラッチ101よりも動力伝達下流側に、走行クローラ2を駆動させるための油圧ポンプ油圧モータ式無段変速機を備えているから、調整モードの実行中であれば、オペレータが主変速レバー13等に不用意に当たったりしても、コンバインが動き出すことはない。
【0060】
また、両クラッチ101,106の切り作動と共に、エンジン20の回転数をアイドリング状態にまで低下させるから、燃料の無駄遣いを防止して、エネルギー消費を節約できる。
【0061】
液晶ディスプレイ75に選択メニュー情報150を表示した状態で「戻る」ボタン157を押下すると、調整モードから元の通常モードに移行して、液晶ディスプレイ75の画面表示が元の通常モード情報140に戻る。このときは、コントローラ130からの指令に基づくラックアクチュエータ137の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックをEEPROM132に記憶させた定格回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン20の回転数が定格状態にまで戻る。
【0062】
また、調整モードに移行して液晶ディスプレイ75に選択メニュー情報150が表示されてから、タッチパネル76に触れない(操作しない)状態が所定時間続くと、調整モードから移行前の元の通常モードに復帰して、液晶ディスプレイ75の画面表示が元の通常モード情報140に戻る。なお、モードの切り換えに連動して両クラッチ101,106が切り作動する際は、レバー用アクチュエータ(図示省略)の駆動にて、クラッチレバー15をL字ガイド溝16における前後溝部の後側に自動的に移動させるのが望ましい。
【0063】
例えば脱穀装置5に何らかの不具合があって機能調整したい場合は、図8の選択メニュー情報150を液晶ディスプレイ75に表示した状態で「脱穀装置」の選択ボタン153を押下する。そうすると、脱穀装置5を選択(決定)したことになり、液晶ディスプレイ75の画面表示が選択メニュー情報150から脱穀装置5の不都合状態情報160に遷移する(図9参照)。図9に示す不都合状態情報160の画面には、具体的な不都合状態を表した設問データ161と、設問データ161に対して肯定的に回答するための「はい」ボタン162と、設問データ161に対して否定的に回答するための「いいえ」ボタン163と、液晶ディスプレイ75の画面表示を選択メニュー情報150に戻すための「戻る」ボタン164とが表示される。
【0064】
図9に示す設問データ161は「脱穀の選別ロスが多い?」の文字データであるが、これ以外に、例えば「籾に枝梗付きが多い?」や「飛散・脱ぷが多い?」等の文字データも設問データ161としてEEPROM132に記憶されている。この場合、「いいえ」ボタン163を押下する毎に、液晶ディスプレイ75に、各設問データ161が切り換え表示される(各設問データ161の切り換えは循環する設定になっている)。なお、各設問データ161に、発生する可能性が高いと考えられるものから順に優先順位を設定しておき、「いいえ」ボタン163を押下する毎に、液晶ディスプレイ75に、各設問データ161を優先順位の高いものから順に切り換え表示させてもよい。
【0065】
図9の不都合状態情報160を液晶ディスプレイ75に表示した状態で「はい」ボタン162を押下すると、選択された不都合状態情報160(「脱穀の選別ロスが多い?」の設問データ161)を解消するための調整方法を示すガイダンス情報170が、液晶ディスプレイ75に切り換え表示される(図10〜図12参照)。図10〜図12に示す不都合状態情報170の画面には、具体的な調整方法を表した回答データ171と、機能調整に際しての注意事項を示す注意データ172と、「OK」ボタン173と、「次へ」ボタン174とが表示される。
【0066】
ガイダンス情報170は不都合状態情報160(設問データ161)ごとに少なくとも1つある。実施形態のガイダンス情報170はオペレータが実行可能な程度の調整方法になっている。各不都合状態情報160に対するガイダンス情報170が複数ある場合は、不都合状態を解消する可能性が高いガイダンス情報170から順(調整効果の高い順)に優先順位が設定されている。そして、「次へ」ボタン174を押下する毎に、液晶ディスプレイ75に、各回答データ171を優先順位の高いものから順に切り換え表示させるように設定されている。
【0067】
「脱穀の選別ロスが多い?」の不都合状態情報160(設問データ161)に対するガイダンス情報170(回答データ171)は3つある。以下の説明及び図10〜図12では便宜上、「脱穀の選別ロスが多い?」の設問データ161に対する各ガイダンス情報170(各回答データ171)に、優先順位の高いものから順に符号a,b,cを付す場合がある。
【0068】
例えば図9の「はい」ボタン162を押下操作した場合は、液晶ディスプレイ75の画面表示が、脱穀装置5の不都合状態情報160から優先順位第1位のガイダンス情報170aに遷移する(図10参照)。優先順位第1位の回答データ171aは「選別調節レバーを数字の大きい方に(上側に)1段だけ調整してください。」の文字データになっている。
【0069】
次いで、図10の「次へ」ボタン174を押下すると、液晶ディスプレイ75の画面表示が、優先順位第1位のガイダンス情報170aから優先順位第2位のガイダンス情報170bに遷移する(図11参照)。優先順位第2位の回答データ171bは「脱穀左後方の覗き窓穴内にあるチャフ調節レバーを「開く」に調節してください。」の文字データになっている。
【0070】
次いで、図11の「次へ」ボタン174を押下すると、液晶ディスプレイ75の画面表示が、優先順位第2位のガイダンス情報170bから優先順位第3位のガイダンス情報170cに遷移する(図12参照)。優先順位第3位の回答データ171cは「開閉レバーを操作して唐箕のファンシャッタを1段だけ「開く」に調整してください。」の文字データになっている。
【0071】
このように制御すると、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、「ヘルプ」ボタン147を押下操作して調整モードを実行することによって、液晶ディスプレイ75に、調整モードの情報として不都合状態に応じた調整方法を示すガイダンス情報170を表示できるので、オペレータは取扱説明書がなくても調整方法を簡単に確認でき、液晶ディスプレイ75の画面表示に従って、機能調整作業を手軽に実行できる。
【0072】
しかも、優先順位の高いガイダンス情報170から順に液晶ディスプレイ75に切り換え表示するので、オペレータは優先順位の高い調整方法(例えば不都合状態を解消する可能性が高いもの)から先に確認でき、各作動部における機能調整作業の効率化を図れるのである(不都合状態が解消しないという時間的なロスを減らすのに寄与できる)。
【0073】
前述したように、図10〜図12のガイダンス情報170を液晶ディスプレイ75に表示した状態では、液晶ディスプレイ75の一部(ガイダンス情報170の下方)に、機能調整に際しての注意事項を示す注意データ172が併せて表示される。注意データ172は、不都合状態情報160(設問データ161)毎に、同じ内容の文字データになっている(図10〜図12に示す注意データは、ガイダンス情報170の優先順位に拘らず同じ内容である)。図10〜図12に示す注意データ172は「いずれの場合も選別性能が悪くなるので1段階ずつ調整してください。」の文字データになっている。このように制御すると、機能調整作業の前提となる条件等を、予めオペレータに知らせて確認を促すことが可能になるから、機能調整作業を適切な状態で行えるのである。
【0074】
図10〜図12のガイダンス情報170を液晶ディスプレイ75に表示した状態で「OK」ボタン173を押下した場合は、液晶ディスプレイ75の画面表示が図8の選択メニュー情報150に戻る。
【0075】
図12における優先順位第3位(最下位)のガイダンス情報170cを液晶ディスプレイ75に表示した状態で「次へ」ボタン174を押下すると、液晶ディスプレイ75の画面表示が優先順位第3位のガイダンス情報170cから最終処置情報175に遷移する(図13参照)。最終処置情報175は、3つのガイダンス情報170a〜170cに従って機能調整を行っても、不具合状態が解消しないときの対処方法を示すものであり、その内容は、販売店やサービスセンタ等に連絡して専門的診断を受けることを促すものになっている。図13に示す最終処置情報175の画面には、「以上の操作で解消しなければ、お買い上げいただいた販売店にご連絡ください。」の文字データ176と、「OK」ボタン177とが表示される。
【0076】
このように制御すると、現状の不都合状態がどの程度のものであるのか、つまり、オペレータが自ら調整できる程度の状態なのか、又は専門家の診断を頼まなければならないものなのかを簡単に把握できる。このため、現状の不都合状態次第では、販売店やサービスセンタから一々専門家を呼ばなくても、オペレータ自らが機能調整でき、農作業を大幅に中断させなくて済むのである。
【0077】
図13の最終処置情報175を液晶ディスプレイ75に表示した状態で「OK」ボタン177を押下すると、液晶ディスプレイ75の画面表示が図8の選択メニュー情報150に戻る。なお、以上のような表示制御が脱穀装置5以外の他の作動部に関しても同様に行えることはいうまでもない。
【0078】
(5).モード切換制御の別例
通常モードと調整モードとの切り換えを実行する操作は、「ヘルプ」ボタン147や図8の「戻る」ボタン157の押下だけに限定されるものではない。第1実施例では、通常モードの実行中に、クラッチ操作手段としてのクラッチレバー15をL字ガイド溝16における前後溝部の後側にまで操作して、刈取及び脱穀クラッチ101,106とも切り状態(動力遮断状態)にすると、コントローラ130からの指令にて通常モードから調整モードに移行し、「ヘルプ」ボタン147を押下しなくても、液晶ディスプレイ75の画面表示が通常モード情報140から調整モードの選択メニュー情報150(図8参照)に遷移する。そして、ラックアクチュエータ137の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックをアイドリング回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン20の回転数がアイドリング状態にまで低下する。
【0079】
一方、調整モードの実行中に、クラッチレバー15をL字ガイド溝16における左右溝部の左側にまで操作して、刈取及び脱穀クラッチ101,106とも入り状態(動力接続状態)にすると、コントローラ130からの指令にて、調整モードから移行前の元の通常モードに戻り、液晶ディスプレイ75の画面表示が元の通常モード情報140に戻る。そして、ラックアクチュエータ137の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックをEEPROM132に記憶させた定格回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン20の回転数が定格状態にまで戻るのである。
【0080】
このように制御すると、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、クラッチレバー15を切り操作することによって、刈取及び脱穀クラッチ101,106を切り状態にすると共に通常モードから調整モードに移行して、液晶ディスプレイ75に、調整モードの情報(選択メニュー情報150、不都合状態情報160、及びガイダンス情報170)を表示できる。このため、刈取及び脱穀クラッチ101,106を切り状態にして各作動部への動力伝達を遮断した上で、液晶ディスプレイ75の画面表示に従って機能調整作業をすることになるから、機能調整作業をする上での安全性を確実に確保できる。
【0081】
その上、両クラッチ101,106の切り作動と共に、エンジン20の回転数をアイドリング状態にまで低下させるから、燃料の無駄遣いを防止して、エネルギー消費を節約できるという利点もある。
【0082】
また、クラッチレバー15を入り操作することによって、刈取及び脱穀クラッチ101,106を入り状態にすると共に、調整モードから移行前の元の通常モードに移行して、液晶ディスプレイ75の画面表示を元の通常モード情報140に戻せるだけでなく、エンジン20の回転数を定格回転数にまで戻すから、クラッチレバー15の入り操作だけで通常作業(路上走行や各種農作業)にスムーズに移行でき、オペレータの操作負担を軽減できるのである。
【実施例2】
【0083】
図14〜図24は本願発明を田植機に適用した第2実施例である。図14は田植機の側面図、図15は田植機の平面図、図16はフロート周辺の平面図、図17はコントローラの機能ブロック図、図18は通常モード情報の画面図、図19は調整モードにおける選択メニュー情報の画面図、図20は不都合状態情報の画面図、図21は優先順位第1位のガイダンス情報の画面図、図22は優先順位第2位のガイダンス情報の画面図、図23は優先順位第3位のガイダンス情報の画面図、図24は最終処置情報の画面図である。
【0084】
(6).田植機の概略構造
まず、図14〜図16を参照しながら、田植機の全体構造について説明する。図14及び図15に示すように、田植機の走行機体201は機体フレーム202を備えており、機体フレーム202は、左右両側の前後に配置された走行装置としての前輪203及び後輪204にて支持されている。
【0085】
走行機体201における機体フレーム202の前部には、動力源としての空冷式エンジン205が搭載されている。エンジン205の後方下部には油圧式無段変速機(図示省略)を内蔵したミッションケース206が配置されている。ミッションケース206は、エンジン205からの動力を適宜変速し、ギヤ式変速機構(図示省略)を介して前後四輪203,204に伝達するためのものである。
【0086】
ミッションケース206から左右外向きに突出したフロントアクスルケース207の左右両端部に、前輪203が舵取り可能に取り付けられている。ミッションケース206から後方に突出した筒型フレーム208の後端部にはリヤアクスルケース209が固定されている。リヤアクスルケース209の左右両端部に後輪204が取り付けられている。
【0087】
機体フレーム202の上面前部及びエンジン205はフロントボンネット210にて覆われている。機体フレーム202の上面のうちフロントボンネット210より後方側は車体カバー211にて覆われている。フロントボンネット210の後部には操縦ハンドル212が設けられている。車体カバー211の上面にはシートフレーム213を介して操縦座席214が設けられている。
【0088】
フロントボンネット210の後部上面には、表示手段としての液晶ディスプレイ215が配置されている(図15参照)。液晶ディスプレイ215上には、入力手段としての透明なタッチパネル216が取り付けられている。液晶ディスプレイ215とタッチパネル216とは、制御手段としてのコントローラ250(詳細は後述する)に電気的に接続されている。液晶ディスプレイ215の左側には、走行機体201の前進、停止、後退及びその車速を変更操作するための主変速レバー217が配置されている。液晶ディスプレイ215の右側には、後述する苗植付装置224の昇降、苗植付装置224への動力伝達を継断するクラッチ手段としての植付クラッチ(図示省略)の入切、及びマーカ操作を行うクラッチ操作手段としての植付操作レバー218が配置されている。植付操作レバー218の操作位置に応じて植付用アクチュエータ(図示省略)が駆動することにより、植付クラッチが入り切り作動することになる。
【0089】
フロントボンネット210の後方右側には、走行機体201の車速を適宜調節するための変速ペダル219と、走行機体201を制動操作するためのブレーキペダル220とが配置されている。一方、操縦座席214の下方には、後述するセンタフロート231の目標傾斜角度を圃場表面硬度に応じて調節するための感度調節レバー221と、複数本のユニットクラッチレバー222とが配置されている。なお、フロントボンネット210の左右両側には、予備の苗マットを複数載せるための予備苗載台223が多段に設けられている。
【0090】
機体フレーム202の後部には、平行リンク機構225を介して、6条植え用の苗植付装置224が昇降調節可能に連結されている。苗植付装置224は従来から公知の構造であり、ミッションケース206から動力伝達される植付駆動ケース226と、植付駆動ケース226から左右外向きに突出した横パイプ227に取り付けられた3組の植付ケース228と、各植付ケース228の左右両側に取り付けられたロータリ式の苗植え機構229と、植付ケース228群の上方に左右往復動自在に配置された苗載台230と、中央植付ケース228の下方に配置されたセンタフロート231と、左右の植付ケース228の下方に配置された一対のサイドフロート232とを備えている。
【0091】
センタフロート231の上面前部は、前調節リンク233を介して平行リンク機構225のロワーリンクに連結されている。センタフロート231の上面後部は、後リンク234を介して横パイプ227に設けられた植付調節軸235に連結されている。各サイドフロート232の上面前部は、前リンク236を介して横パイプ227に固定された苗載台支柱237に連結されている。各サイドフロート232の上面後部は、後リンク238を介して植付調節軸235に連結されている。
【0092】
植付調節軸235のうちセンタフロート231を挟んで右側には、苗植付装置224の基準植付深さ(走行機体1に対する基準高さ)を設定するための植付深さ調節レバー239が前向きに傾斜した姿勢で上下傾動可能に取り付けられている。センタフロート231を挟んで左側には、苗植え機構229の苗取量を調節するための苗取量調節レバー240が前向きに傾斜した姿勢で上下傾動可能に取り付けられている。苗取量調節レバー240を上下傾動操作すると、苗載台230の下端に対して苗取出板241が接離する。当該接離間隔(距離)に応じて苗植え機構229の苗取量が調節される。
【0093】
各フロート231,232が圃場の泥面を滑走するように苗植付装置224を下降させた状態で、前後四輪203,204の駆動にて走行すると同時に、左右に往復動する苗載台230から1株分の苗を各苗植え機構229にて順次取り出すことによって、連続的に苗を植える田植作業が行われる。
【0094】
(7).モード切換制御の詳細
次に、図17〜図24を参照しながら、田植機におけるモード切換制御の詳細について説明する。
【0095】
走行機体201に搭載された制御手段としてのコントローラ250は、田植機の作動全般を制御すると共に、モード切換制御や液晶ディスプレイ215の表示制御を実行するためのものである。図17に示すように、コントローラ250の基本的な構成は第1実施例と同じであり、CPU251、記憶手段としてのEEPROM252、RAM253、及び入出力インターフェイス(図示省略)等を備えている。
【0096】
EEPROM252には、田植機のモード(動作の状態)に関する文字、記号、画像等の各種情報が予め記憶されている。詳細は後述するが、この種の情報としては、例えば通常モード情報260(図18参照)、調整モードの選択メニュー情報270(図19参照)、田植機の各作動部(苗植付装置225や走行装置等)に生じた不都合状態を示す不都合状態情報280(図20参照)、及び、不都合状態を解消する調整方法を示すガイダンス情報290(図21〜図23参照)等がある。また、EEPROM252には、エンジン205の定格回転数やアイドリング回転数に関するデータも予め記憶されている。
【0097】
コントローラ250の入力インターフェイスには、エンジン205への燃料噴射量を調節する気化器(図示省略)におけるスロットル弁の回動角度を検出する回動角センサ254、植付駆動ケース226内にある植付クラッチの作動状態を検出する植付クラッチセンサ255、及びタッチパネル216等が接続されている。コントローラ250の出力インターフェイスには、燃料噴射ポンプを駆動させてエンジン20の回転数を所定回転数にするためのポンプアクチュエータ257、植付用アクチュエータに対する植付駆動回路258、及び液晶ディスプレイ215等が接続されている。
【0098】
さて、田植機のモード(動作の状態)としては、初期モード、路上走行や各種農作業を実行する通常モード、及び、各作動部の機能調整をする際にその調整方法を示すガイダンス情報290を液晶ディスプレイ215に表示する調整モード等がある。
【0099】
路上走行や各種農作業をしているときは通常モードが実行される。この場合、液晶ディスプレイ215には、通常モード情報260として、走行機体201の走行速度を示す速度計261、エンジン負荷を示す略L字状の負荷グラフ262、燃料の残量を知らせる燃料計264、及び、調整モードに移行するための「ヘルプ」ボタン267が表示される(図18参照)。
【0100】
通常モードの実行中に「ヘルプ」ボタン267を押下すると、通常モードから調整モードに移行して、液晶ディスプレイ215の画面表示が通常モード情報260から調整モードの選択メニュー情報270(図19参照)に遷移する。図19に示す選択メニュー情報270の画面には、「具合の悪い箇所はありますか?」の文字データ271と、調整対象となる作動部を示す「走行装置」、「苗植付装置」及び「その他」という3種類の選択ボタン272〜274と、通常モードに復帰するための「戻る」ボタン277とが表示される。
【0101】
第2実施例では、「ヘルプ」ボタン267の押下操作にて通常モードから調整モードへ移行するときに、コントローラ250からの指令に基づく植付用アクチュエータの駆動にて、植付クラッチが切り作動する。そして、ポンプアクチュエータ257の駆動にて、気化器のスロットル弁をアイドリング回転数のデータに応じた角度に回動させることによって、エンジン205の回転数がアイドリング状態にまで低下する。
【0102】
このように第2実施例の場合も、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、「ヘルプ」ボタン267を押下操作して調整モードを実行するだけで、植付クラッチを切り作動させ、苗植付装置224への動力伝達を遮断できる。従って、オペレータが植付操作レバー218を切り忘れたままで機能調整作業をしたとしても、苗植付装置224が駆動することはなく、機能調整作業を極めて安全に実行できる(機能調整作業をする上での安全性を確保できる)。また、植付クラッチの切り作動と共に、エンジン205の回転数をアイドリング状態にまで低下させるから、燃料の無駄遣いを防止して、エネルギー消費を節約できる。
【0103】
液晶ディスプレイ215に選択メニュー情報270を表示した状態で「戻る」ボタン277を押下すると、調整モードから元の通常モードに移行して、液晶ディスプレイ215の画面表示が元の通常モード情報260に戻る。このときは、コントローラ250からの指令に基づくポンプアクチュエータ257の駆動にて、気化器のスロットル弁をEEPROM252に記憶させた定格回転数のデータに応じた角度に回動させることによって、エンジン205の回転数が定格状態にまで戻る。
【0104】
また、調整モードに移行して液晶ディスプレイ215に選択メニュー情報270が表示されてから、タッチパネル216に触れない(操作しない)状態が所定時間続くと、調整モードから移行前の元の通常モードに復帰して、液晶ディスプレイ215の画面表示が元の通常モード情報260に戻る。なお、モードの切り換えに連動して植付クラッチが切り作動する際は、レバー用アクチュエータ(図示省略)の駆動にて、植付操作レバー218を中立位置に自動的に移動させるのが望ましい。
【0105】
例えば苗植付装置224に何らかの不具合があって機能調整したい場合は、図19の選択メニュー情報270を液晶ディスプレイ215に表示した状態で「苗植付装置」の選択ボタン273を押下する。そうすると、苗植付装置224を選択(決定)したことになり、液晶ディスプレイ215の画面表示が選択メニュー情報270から苗植付装置224の不都合状態情報280に遷移する(図20参照)。図20に示す不都合状態情報280の画面には、具体的な不都合状態を表した設問データ281(「苗の植付姿勢が悪い?」の文字データ等)と、「はい」ボタン282と、「いいえ」ボタン283と、液晶ディスプレイ215の画面表示を選択メニュー情報270に戻すための「戻る」ボタン284とが表示される。
【0106】
図20の不都合状態情報280を液晶ディスプレイ215に表示した状態で「はい」ボタン282を押下すると、選択された不都合状態情報280(「苗の植付姿勢が悪い?」の設問データ281)を解消するための調整方法を示すガイダンス情報290が、液晶ディスプレイ215に切り換え表示される(図21〜図23参照)。図21〜図23に示す不都合状態情報290の画面には、具体的な調整方法を表した回答データ291と、機能調整に際しての注意事項を示す注意データ292と、「OK」ボタン293と、「次へ」ボタン294とが表示される。
【0107】
ガイダンス情報290や「次へ」ボタン294に関する設定は、基本的に第1実施例の場合と同様である。「苗の植付姿勢が悪い?」の不都合状態情報280(設問データ281)に対するガイダンス情報290(回答データ291)は3つある。以下の説明及び図21〜図23では便宜上、「苗の植付姿勢が悪い?」の設問データ281に対する各ガイダンス情報290(各回答データ291)に、優先順位の高いものから順に符号a,b,cを付す場合がある。
【0108】
例えば図20の「はい」ボタン282を押下操作した場合は、液晶ディスプレイ215の画面表示が、苗植付装置224の不都合状態情報280から優先順位第1位のガイダンス情報290aに遷移する(図21参照)。優先順位第1位の回答データ291aは「感度調節レバーを鈍感側に1段だけ調整してください。」の文字データになっている。
【0109】
次いで、図21の「次へ」ボタン294を押下すると、液晶ディスプレイ215の画面表示が、優先順位第1位のガイダンス情報290aから優先順位第2位のガイダンス情報290bに遷移する(図22参照)。優先順位第2位の回答データ291bは「苗載台前方にある植付深さ調節レバーを下側に1段だけ調節してください。」の文字データになっている。
【0110】
次いで、図22の「次へ」ボタン294を押下すると、液晶ディスプレイ215の画面表示が、優先順位第2位のガイダンス情報290bから優先順位第3位のガイダンス情報290cに遷移する(図23参照)。優先順位第3位の回答データ291cは「苗載台前方にある苗取量調節レバーを下側に1段だけ調節してください。」の文字データになっている。
【0111】
このように制御すると、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、「ヘルプ」ボタン267を押下操作して調整モードを実行することによって、液晶ディスプレイ215に、調整モードの情報として不都合状態に応じた調整方法を示すガイダンス情報290を表示できるので、オペレータは取扱説明書がなくても調整方法を簡単に確認でき、液晶ディスプレイ215の画面表示に従って、機能調整作業を手軽に実行できる。
【0112】
しかも、優先順位の高いガイダンス情報290から順に液晶ディスプレイ215に切り換え表示するので、オペレータは優先順位の高い調整方法(例えば不都合状態を解消する可能性が高いもの)から先に確認でき、各作動部における機能調整作業の効率化を図れるのである(不都合状態が解消しないという時間的なロスを減らすのに寄与できる)。
【0113】
図21〜図23のガイダンス情報290を液晶ディスプレイ215に表示した状態では、第1実施例の場合と同様に、液晶ディスプレイ215の一部(ガイダンス情報290の下方)に、機能調整に際しての注意事項を示す注意データ292が併せて表示される。図21〜図23に示す注意データ292は、ガイダンス情報290の優先順位に拘らず同じ内容であり、「植付爪が磨耗していないか確認してください。」の文字データになっている。この場合も、機能調整作業の前提となる条件等を、予めオペレータに知らせて確認を促すことが可能になるから、機能調整作業を適切な状態で行える。
【0114】
図21〜図23のガイダンス情報290を液晶ディスプレイ215に表示した状態で「OK」ボタン293を押下した場合は、液晶ディスプレイ215の画面表示が図19の選択メニュー情報270に戻る。
【0115】
図23における優先順位第3位(最下位)のガイダンス情報290cを液晶ディスプレイ215に表示した状態で「次へ」ボタン294を押下すると、液晶ディスプレイ215の画面表示が優先順位第3位のガイダンス情報290cから最終処置情報295に遷移する(図24参照)。最終処置情報295は、3つのガイダンス情報290a〜290cに従って機能調整を行っても、不具合状態が解消しないときの対処方法を示すものであり、その内容は、販売店やサービスセンタ等に連絡して専門的診断を受けることを促すものになっている。図24に示す最終処置情報295の画面には、「以上の操作で解消しなければ、お買い上げいただいた販売店にご連絡ください。」の文字データ296と、「OK」ボタン297とが表示される。
【0116】
このように制御すると、現状の不都合状態がどの程度のものであるのか、つまり、オペレータが自ら調整できる程度の状態なのか、又は専門家の診断を頼まなければならないものなのかを簡単に把握できる。このため、現状の不都合状態次第では、販売店やサービスセンタから一々専門家を呼ばなくても、オペレータ自らが機能調整でき、農作業を大幅に中断させなくて済むのである。
【0117】
図24の最終処置情報295を液晶ディスプレイ215に表示した状態で「OK」ボタン297を押下すると、液晶ディスプレイ215の画面表示が図19の選択メニュー情報270に戻る。なお、以上のような表示制御が苗植付装置224以外の他の作動部に関しても同様に行えることはいうまでもない。
【0118】
(8).モード切換制御の別例
第2実施例においては、通常モードの実行中に、クラッチ操作手段としての植付操作レバー218を中立位置にまで操作して、植付クラッチを切り状態(動力遮断状態)にすると、コントローラ250からの指令にて通常モードから調整モードに移行し、液晶ディスプレイ215の画面表示が通常モード情報260から調整モードの選択メニュー情報270(図19参照)に遷移する。そして、ポンプアクチュエータ257の駆動にて、気化器のスロットル弁をアイドリング回転数のデータに応じた角度に回動させることにより、エンジン205の回転数がアイドリング状態にまで低下する。
【0119】
一方、調整モードの実行中に、植付操作レバー218を中立以外の位置に操作して、植付クラッチを入り状態(動力接続状態)にすると、コントローラ250からの指令にて調整モードから移行前の元の通常モードに戻り、液晶ディスプレイ215の画面表示が元の通常モード情報260に戻る。そして、ポンプアクチュエータ257の駆動にて、気化器のスロットル弁をEEPROM252に記憶させた定格回転数のデータに応じた角度に回動させることによって、エンジン205の回転数が定格状態にまで戻るのである。
【0120】
このように制御すると、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、植付操作レバー218を中立に操作することによって、植付クラッチを切り状態にすると共に通常モードから調整モードに移行して、液晶ディスプレイ215に、調整モードの情報を表示できる。このため、植付クラッチを切り状態にして苗植付装置224への動力伝達を遮断した上で、液晶ディスプレイ215の画面表示に従って機能調整作業をすることになるから、第1実施例の場合と同様に、機能調整作業をする上での安全性を確実に確保できる。
【0121】
その上、植付クラッチの切り作動と共に、エンジン205の回転数をアイドリング状態にまで低下させるから、燃料の無駄遣いを防止して、エネルギー消費を節約できるという利点もある。
【0122】
また、植付操作レバー218を中立以外の位置に操作することによって、植付クラッチを入り状態にすると共に、調整モードから移行前の元の通常モードに復帰して、液晶ディスプレイ215の画面表示を元の通常モード情報260に戻せるだけでなく、エンジン205の回転数を定格回転数にまで戻すから、植付操作レバー218の中立以外への操作だけで通常作業(路上走行や各種農作業)にスムーズに移行でき、オペレータの操作負担を軽減できるのである。
【実施例3】
【0123】
図25〜図35は本願発明をトラクタに適用した第3実施例である。図25はトラクタの側面図、図26はトラクタの平面図、図27は作業機用昇降機構の概略側面図、図28は作業機用昇降機構の概略平面図、図29はコントローラの機能ブロック図、図30は通常モード情報の画面図、図31は調整モードにおける選択メニュー情報の画面図、図32は不都合状態情報の画面図、図33は優先順位第1位のガイダンス情報の画面図、図34は優先順位第2位のガイダンス情報の画面図、図35は最終処置情報の画面図である。
【0124】
(9).トラクタの概略構造
まず、図25〜図28を参照しながら、トラクタの全体構造について説明する。図25及び図26に示すように、トラクタは、走行機体301とその後方に配置した作業機としてのロータリー式耕耘機302とを備えている。走行機体301は走行装置としての左右一対の前輪303と同じく左右一対の後輪304とにて支持されている。走行機体301の前部には、ボンネット306にて覆われたディーゼル式エンジン305が搭載されている。
【0125】
走行機体301の上面にはキャビン307が設置されている。キャビン307の内部には、操縦座席308と、前輪303の操向方向を左右に動かすための操縦ハンドル309とが配置されている。キャビン307の外側部にはステップ310が設けられている。ステップ310より内側で且つキャビン307の底部より下側には、燃料タンク311が配置されている。
【0126】
操縦ハンドル309は、操縦座席308前方に位置する操縦コラム335上に設けられている。操縦コラム335の右方には、耕耘機302を所定高さまで強制的に昇降操作するための自動昇降レバー336と、走行機体301を制動操作するための左右ブレーキペダル337とが配置されている。操縦コラム335の左方には、走行機体301の進行方向を前進と後進とに切り換え操作するための前後進切換レバー338と、クラッチペダル339とが配置されている。
【0127】
操縦コラム335の上面には、表示手段としての液晶ディスプレイ340が配置されている(図26参照)。液晶ディスプレイ340上には、入力手段としての透明なタッチパネル341が取り付けられている。液晶ディスプレイ340とタッチパネル341とは制御手段としてのコントローラ350(詳細は後述する)に電気的に接続されている。
【0128】
操縦座席308の左右両側にはサイドコラム342が配置されており、右サイドコラム342には、変速操作用の主変速レバー343、耕耘機302の高さ位置を手動で変更調節するための作業機昇降レバー344、走行機体301に対する耕耘機302の目標相対傾斜角度を予め設定するための傾斜設定ダイヤル345、及び、耕耘機302の目標耕耘深さを予め設定するための耕深設定ダイヤル346等が配置されている。左サイドコラム342には、副変速レバー347及びクラッチ操作手段としてのPTO変速レバー348が配置されている。左サイドコラム342の前方にはデフロックペダル349が配置されている。
【0129】
第3実施例では、PTO変速レバーの操作位置に応じてPTO用アクチュエータ(図示省略)が駆動することにより、PTO軸323への動力伝達を継断するクラッチ手段としてのPTOクラッチ(図示省略)が入り切り作動することになる(PTOクラッチはミッションケース316内に配置されている)。
【0130】
更に、図25に示すように、走行機体301は、フロントバンパ312及び前車軸ケース313を有するエンジンフレーム314と、エンジンフレーム314の後部にボルトにて取り外し可能に固定された左右の機体フレーム315とを備えている。エンジンフレーム314と機体フレーム315とよって車台が構成されている。
【0131】
機体フレーム315の後部には、エンジン305からの回転動力を適宜変速して前後四輪303,304に伝達するためのミッションケース316が搭載されている。後輪304は、ミッションケース316の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース317(図27及び図28参照)を介して取り付けられている。左右の後輪304の上方は、機体フレーム315に固定されたフェンダ318で覆われており、左右フェンダ318の上面に前述した左右サイドコラム342が取り付けられている。
【0132】
図27及び図28に示すように、ミッションケース316の後部上面には、耕耘機302を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構320が着脱可能に取り付けられている。耕耘機302は、ミッションケース316の後部に、一対の左右ロワーリンク321及びトップリンク322からなる3点リンク機構を介して連結されている。
【0133】
左右ロワーリンク321の前端部は、ミッションケース316における左右側面の後部側にロワーリンクピン324を介して回動可能に連結されている。トップリンク322の前端部は、作業機用昇降機構320の後部に設けられたトップリンクヒッチ325にトップリンクピン326を介して連結されている。ミッションケース316の後面からは、耕耘機302にPTO駆動力を伝達するPTO軸323が後向きに突出している。
【0134】
図3及び図4に示すように、作業機用昇降機構320は、その内部に設けられた昇降制御油圧シリンダ(図示省略)にて回動操作される一対の左右リフトアーム327を備えている。左ロワーリンク321と左リフトアーム327とは、左リフトロッド328を介して連結されている。他方、右ロワーリンク321と右リフトアーム327とは、右リフトロッドとしての複動形のローリング用油圧シリンダ329を介して連結されている。
【0135】
作業機用昇降機構320の上面には、走行機体301の傾斜角度(水平を基準にして左右方向に傾いた角度)を検知するローリングセンサ330と、走行機体301に対する耕耘機302の相対傾斜角度を検知する対本機傾斜センサ331とが配置されている。対本機傾斜センサ331の検出部は、センサアーム332及びセンサワイヤ333を介して、ローリング用油圧シリンダ329のピストンロッドに連結されている。
【0136】
第3実施例では、両センサ330,331の検出結果の組合せから、耕耘機302の水平に対する絶対的傾斜角度が演算される。そして、当該演算結果に基づいてローリング用油圧シリンダ329を伸縮動させることにより、水平に対する耕耘機302の傾斜姿勢が一定になるように右ロワーリンク321が昇降する構成になっている。
【0137】
(10).モード切換制御の詳細
次に、図29〜図35を参照しながら、トラクタにおけるモード切換制御の詳細について説明する。
【0138】
走行機体301に搭載された制御手段としてのコントローラ350は、トラクタの作動全般を制御すると共に、モード切換制御や液晶ディスプレイ340の表示制御を実行するためのものである。図29に示すように、コントローラ350の基本的な構成は第1及び第2実施例と同じであり、CPU351、記憶手段としてのEEPROM352、RAM353、及び入出力インターフェイス(図示省略)等を備えている。
【0139】
EEPROM352には、トラクタのモード(動作の状態)に関する文字、記号、画像等の各種情報が予め記憶されている。詳細は後述するが、この種の情報としては、例えば通常モード情報360(図30参照)、調整モードの選択メニュー情報370(図31参照)、トラクタの各作動部(耕耘機302や走行装置等)に生じた不都合状態を示す不都合状態情報380(図32参照)、及び、不都合状態を解消する調整方法を示すガイダンス情報390(図33及び図34参照)等がある。また、EEPROM352には、エンジン305の定格回転数やアイドリング回転数に関するデータも予め記憶されている。
【0140】
コントローラ350の入力インターフェイスには、エンジン305への燃料噴射量を調節するガバナ付き燃料噴射ポンプ(図示省略)のラック位置を検出するためのラック位置センサ354、ミッションケース316内にあるPTOクラッチの作動状態を検出するPTOクラッチセンサ355、及び、タッチパネル341等が接続されている。コントローラ350の出力インターフェイスには、燃料噴射ポンプのラック位置を調節してエンジン305の回転数を所定回転数にするためのラックアクチュエータ357、PTO用アクチュエータに対するPTO駆動回路258、及び、液晶ディスプレイ340等が接続されている。
【0141】
さて、トラクタのモード(動作の状態)としては、初期モード、路上走行や各種農作業を実行する通常モード、及び、各作動部の機能調整をする際にその調整方法を示すガイダンス情報390を液晶ディスプレイ340に表示する調整モード等がある。
【0142】
路上走行や各種農作業をしているときは通常モードが実行される。この場合、液晶ディスプレイ340には、通常モード情報360として、走行機体301の走行速度を示す速度計361、エンジン負荷を示す略L字状の負荷グラフ362、燃料の残量を知らせる燃料計364、及び、調整モードに移行するための「ヘルプ」ボタン367が表示される(図30参照)。
【0143】
通常モードの実行中に「ヘルプ」ボタン367を押下すると、通常モードから調整モードに移行して、液晶ディスプレイ340の画面表示が通常モード情報360から調整モードの選択メニュー情報370(図31参照)に遷移する。図31に示す選択メニュー情報370の画面には、「具合の悪い箇所はありますか?」の文字データ371と、調整対象となる作動部を示す「走行装置」、「作業機」及び「その他」という3種類の選択ボタン372〜374と、通常モードに復帰するための「戻る」ボタン377とが表示される。
【0144】
第3実施例では、「ヘルプ」ボタン367の押下操作にて通常モードから調整モードへ移行するときに、コントローラ350からの指令に基づくPTO用アクチュエータの駆動にて、PTOクラッチが切り作動する。そして、ラックアクチュエータ357の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックをアイドリング回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン305の回転数がアイドリング状態にまで低下する。
【0145】
このように第3実施例の場合も、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、「ヘルプ」ボタン367を押下操作して調整モードを実行するだけで、PTOクラッチを切り作動させ、耕耘機302への動力伝達を遮断できる。従って、オペレータがPTO変速レバー348を中立にし忘れたままで機能調整作業をしたとしても、耕耘機302が駆動することはなく、機能調整作業を極めて安全に実行できる(機能調整作業をする上での安全性を確保できる)。また、PTOクラッチの切り作動と共に、エンジン305の回転数をアイドリング状態にまで低下させるから、燃料の無駄遣いを防止してエネルギー消費を節約できる。
【0146】
液晶ディスプレイ340に選択メニュー情報370を表示した状態で「戻る」ボタン377を押下すると、調整モードから元の通常モードに移行して、液晶ディスプレイ340の画面表示が元の通常モード情報360に戻る。このときは、コントローラ350からの指令に基づくラックアクチュエータ357の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックを定格回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン305の回転数が定格状態にまで戻る。
【0147】
また、調整モードに移行して液晶ディスプレイ340に選択メニュー情報370が表示されてから、タッチパネル341に触れない(操作しない)状態が所定時間続くと、調整モードから移行前の元の通常モードに復帰して、液晶ディスプレイ340の画面表示が元の通常モード情報360に戻る。なお、モードの切り換えに連動してPTOクラッチが切り作動する際は、レバー用アクチュエータ(図示省略)の駆動にて、PTO変速レバー348を中立位置に自動的に移動させるのが望ましい。
【0148】
例えば耕耘機302に何らかの不具合があって機能調整したい場合は、図31の選択メニュー情報370を液晶ディスプレイ340に表示した状態で「作業機」の選択ボタン373を押下する。そうすると、作業機(第3実施例では耕耘機302)を選択(決定)したことになり、液晶ディスプレイ340の画面表示が選択メニュー情報370から作業機の不都合状態情報380に遷移する(図32参照)。図32に示す不都合状態情報380の画面には、具体的な不都合状態を表した設問データ381(「作業機が傾いている?」の文字データ等)と、「はい」ボタン382と、「いいえ」ボタン383と、液晶ディスプレイ340の画面表示を選択メニュー情報370に戻すための「戻る」ボタン384とが表示される。
【0149】
図32の不都合状態情報380を液晶ディスプレイ340に表示した状態で「はい」ボタン382を押下すると、選択された不都合状態情報380(「作業機が傾いている?」の設問データ381)を解消するための調整方法を示すガイダンス情報390が、液晶ディスプレイ340に切り換え表示される(図33及び図34参照)。図33及び図34に示す不都合状態情報390の画面には、具体的な調整方法を表した回答データ391と、機能調整に際しての注意事項を示す注意データ392と、「OK」ボタン393と、「次へ」ボタン394とが表示される。
【0150】
ガイダンス情報390や「次へ」ボタン394に関する設定は、基本的に第1及び第2実施例の場合と同様である。「作業機が傾いている?」の不都合状態情報380(設問データ381)に対するガイダンス情報390(回答データ391)は2つある。以下の説明及び図33及び図34では便宜上、「作業機が傾いている?」の設問データ381に対する各ガイダンス情報390(各回答データ391)に、優先順位の高いものから順に符号a,bを付す場合がある。
【0151】
例えば図32の「はい」ボタン382を押下操作した場合は、液晶ディスプレイ340の画面表示が、作業機の不都合状態情報380から優先順位第1位のガイダンス情報390aに遷移する(図33参照)。優先順位第1位の回答データ391aは「傾斜設定ダイヤルを左又は右に1目盛だけ回して調整してください。」の文字データになっている。
【0152】
次いで、図33の「次へ」ボタン394を押下すると、液晶ディスプレイ340の画面表示が、優先順位第1位のガイダンス情報390aから優先順位第2位のガイダンス情報390bに遷移する(図34参照)。優先順位第2位の回答データ391bは「ローリング用油圧シリンダに付いているセンサワイヤが引っ掛かっていないか確認してください。」の文字データになっている。
【0153】
このように制御すると、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、「ヘルプ」ボタン367を押下操作して調整モードを実行することによって、液晶ディスプレイ340に、調整モードの情報として不都合状態に応じた調整方法を示すガイダンス情報390を表示できるので、オペレータは取扱説明書がなくても調整方法を簡単に確認でき、液晶ディスプレイ340の画面表示に従って、機能調整作業を手軽に実行できる。
【0154】
しかも、優先順位の高いガイダンス情報390から順に液晶ディスプレイ340に切り換え表示するので、オペレータは優先順位の高い調整方法(例えば不都合状態を解消する可能性が高いもの)から先に確認でき、各作動部における機能調整作業の効率化を図れるのである(不都合状態が解消しないという時間的なロスを減らすのに寄与できる)。
【0155】
図33及び図34のガイダンス情報390を液晶ディスプレイ340に表示した状態では、第1及び第2実施例の場合と同様に、液晶ディスプレイ340の一部(ガイダンス情報390の下方)に、機能調整に際しての注意事項を示す注意データ392が併せて表示される。図33及び図34に示す注意データ392は、第1及び第2実施例の場合と同様に、ガイダンス情報390の優先順位に拘らず同じ内容であり、「トラクタを水平な場所においてから確認してください。」の文字データになっている。この場合も、機能調整作業の前提となる条件等を、予めオペレータに知らせて確認を促すことが可能になるから、機能調整作業を適切な状態で行える。
【0156】
図33及び図34のガイダンス情報390を液晶ディスプレイ340に表示した状態で「OK」ボタン393を押下した場合は、液晶ディスプレイ340の画面表示が図31の選択メニュー情報370に戻る。
【0157】
図34における優先順位第2位(最下位)のガイダンス情報390bを液晶ディスプレイ340に表示した状態で「次へ」ボタン394を押下すると、液晶ディスプレイ340の画面表示が優先順位第2位のガイダンス情報390bから最終処置情報395に遷移する(図35参照)。最終処置情報395は、2つのガイダンス情報390a,390bに従って機能調整を行っても、不具合状態が解消しないときの対処方法を示すものであり、その内容は、販売店やサービスセンタ等に連絡して専門的診断を受けることを促すものになっている。図35に示す最終処置情報395の画面には、「以上の操作で解消しなければ、お買い上げいただいた販売店にご連絡ください。」の文字データ396と、「OK」ボタン397とが表示される。
【0158】
このように制御した場合も、現状の不都合状態がどの程度のものであるのか、つまり、オペレータが自ら調整できる程度の状態なのか、又は専門家の診断を頼まなければならないものなのかを簡単に把握できる。このため、現状の不都合状態次第では、販売店やサービスセンタから一々専門家を呼ばなくても、オペレータ自らが機能調整でき、農作業を大幅に中断させなくて済むのである。
【0159】
図35の最終処置情報395を液晶ディスプレイ340に表示した状態で「OK」ボタン397を押下すると、液晶ディスプレイ340の画面表示が図31の選択メニュー情報370に戻る。なお、以上のような表示制御が作業機(耕耘機302)以外の他の作動部に関しても同様に行えることはいうまでもない。
【0160】
(11).モード切換制御の別例
第3実施例においては、通常モードの実行中に、クラッチ操作手段としてのPTO変速レバー348を中立位置にまで操作して、PTOクラッチを切り状態(動力遮断状態)にすると、コントローラ350からの指令にて通常モードから調整モードに移行し、液晶ディスプレイ340の画面表示が通常モード情報360から調整モードの選択メニュー情報370(図31参照)に遷移する。そして、ラックアクチュエータ357の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックをアイドリング回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン305の回転数がアイドリング状態にまで低下する。
【0161】
一方、調整モードの実行中に、PTO変速レバー348を中立以外の位置に操作して、PTOクラッチを入り状態(動力接続状態)にすると、コントローラ350からの指令にて調整モードから移行前の元の通常モードに戻り、液晶ディスプレイ340の画面表示が元の通常モード情報360に戻る。そして、ラックアクチュエータ357の駆動にて、ガバナ付き燃料噴射ポンプのラックを定格回転数のデータに応じた位置に移動させることによって、エンジン305の回転数が定格状態にまで戻るのである。
【0162】
このように制御すると、任意の作動部に何らかの不具合があって機能調整をしたい場合は、PTO変速レバー348を中立に操作することによって、PTOクラッチを切り状態にすると共に通常モードから調整モードに移行して、液晶ディスプレイ340に、調整モードの情報を表示できる。このため、PTOクラッチを切り状態にして作業機(耕耘機302)への動力伝達を遮断した上で、液晶ディスプレイ340の画面表示に従って機能調整作業をすることになるから、第1及び第2実施例の場合と同様に、機能調整作業をする上での安全性を確実に確保できる。
【0163】
その上、PTOクラッチの切り作動と共に、エンジン305の回転数をアイドリング状態にまで低下させるから、燃料の無駄遣いを防止して、エネルギー消費を節約できるという利点もある。
【0164】
また、PTO変速レバー348を中立以外の位置に操作することによって、PTOクラッチを入り状態にすると共に、調整モードから移行前の元の通常モードに復帰して、液晶ディスプレイ340の画面表示を元の通常モード情報360に戻せるだけでなく、エンジン305の回転数を定格回転数にまで戻すから、PTO変速レバー348の中立以外への操作だけで通常作業(路上走行や各種農作業)にスムーズに移行でき、オペレータの操作負担を軽減できるのである。
【0165】
(12).その他
上記した実施例の各構成は図示のものに限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば、表示手段は液晶ディスプレイ75,215,340に限らず、CRTディスプレイやELディスプレイ等であってもよい。入力手段はタッチパネル76,216,341に限らず、表示手段の近傍に配置したスイッチであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】第1実施例におけるコンバインの側面図である。
【図2】操縦部の平面図である。
【図3】脱穀装置の側断面図である。
【図4】脱穀装置の要部拡大側断面図である。
【図5】動力伝達系のスケルトン図である。
【図6】コントローラの機能ブロック図である。
【図7】通常モード情報の画面図である。
【図8】調整モードにおける選択メニュー情報の画面図である。
【図9】不都合状態情報の画面図である。
【図10】優先順位第1位のガイダンス情報の画面図である。
【図11】優先順位第2位のガイダンス情報の画面図である。
【図12】優先順位第3位のガイダンス情報の画面図である。
【図13】最終処置情報の画面図である。
【図14】第2実施例における田植機の側面図である。
【図15】田植機の平面図である。
【図16】フロート周辺の平面図である。
【図17】コントローラの機能ブロック図である。
【図18】通常モード情報の画面図である。
【図19】調整モードにおける選択メニュー情報の画面図である。
【図20】不都合状態情報の画面図である。
【図21】優先順位第1位のガイダンス情報の画面図である。
【図22】優先順位第2位のガイダンス情報の画面図である。
【図23】優先順位第3位のガイダンス情報の画面図である。
【図24】最終処置情報の画面図である。
【図25】第3実施例におけるトラクタの側面図である。
【図26】トラクタの平面図である。
【図27】作業機用昇降機構の概略側面図である。
【図28】作業機用昇降機構の概略平面図である。
【図29】コントローラの機能ブロック図である。
【図30】通常モード情報の画面図である。
【図31】調整モードにおける選択メニュー情報の画面図である。
【図32】不都合状態情報の画面図である。
【図33】優先順位第1位のガイダンス情報の画面図である。
【図34】優先順位第2位のガイダンス情報の画面図である。
【図35】最終処置情報の画面図である。
【符号の説明】
【0167】
1,201,301 走行機体
15 クラッチ操作手段としてのクラッチレバー
75,215,340 表示手段としての液晶ディスプレイ
76,216,341 入力手段としてのタッチパネル
130,250,350 制御手段としてのコントローラ
140,260,360 通常モード情報
147,267,367 「ヘルプ」ボタン
150,270,370 選択メニュー情報
160,280,380 不都合状態情報
161,281,381 設問データ
170,290,390 ガイダンス情報
171,291,391 回答データ
218 クラッチ操作手段としての植付操作レバー
348 クラッチ操作手段としてのPTO変速レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作業機における各種モードの情報を表示するための表示手段と、前記情報を前記表示手段に表示させる制御を実行する制御手段とを備えており、前記制御手段には、前記農作業機における各作動部の調整方法を示すガイダンス情報が予め記憶された記憶手段を有しており、
前記制御手段は、前記各作動部の機能調整を行う調整モードの実行時において、前記ガイダンス情報が複数ある場合は、前記表示手段上又はその近傍に配置された入力手段を手動操作する毎に、前記表示手段に、調整対象の作動部に対する前記ガイダンス情報を、優先順位の高い方から順に切り換え表示させる、
農作業機。
【請求項2】
前記複数のガイダンス情報はオペレータが実行可能な程度の調整方法になっており、且つ、これらの優先順位が調整効果の高い順に設定されている、
請求項1に記載した農作業機。
【請求項3】
前記制御手段は、前記調整モードの実行時において、前記表示手段に前記ガイダンス情報を表示した状態では、前記表示手段の一部に、前記機能調整に際しての注意事項を示す注意データを併せて表示させる、
請求項1又は2に記載した農作業機。
【請求項4】
前記制御手段は、優先順位の最も低いガイダンス情報を前記表示手段に表示した状態で前記入力手段を手動操作した場合には、前記表示手段の画面表示を、専門的診断を促す旨の最終処置情報に遷移させる、
請求項1〜3のうちいずれかに記載した農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−72067(P2009−72067A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241268(P2007−241268)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】