説明

通路進入アシストシステム

【課題】 運転者が主通路と枝通路の交差点で車体を略直角に方向転換した後、車体の方向転換角度を直角にするために操舵すべき方向を運転者に認識させることができる枝通路への進入アシストシステムを提供する。
【解決手段】 主通路1に枝通路7の中心線の延長線に磁性体からなる基準線2を設ける一方、車体4に前記基準線2に対する車体前後方向の角度を検出する角度検出手段5と、該角度検出手段5により検出された角度に応じて操舵方向を指示する操舵方向指示手段6を搭載する。角度検出手段5の前後の磁気センサアレイ8が基準線2を跨ぐ位置に車体4を移動させると、車体4の前後方向を基準線2の方向にするために操舵すべき方向が操舵方向指示手段6で指示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主通路から荷棚間の枝通路に、フォークリフトを短時間で円滑に進入させるための通路進入アシストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の荷棚が並んでいる倉庫内においては、荷棚の間の枝通路と、各枝通路と倉庫の出入口をつなぐ主通路とが設けられる。通常、枝通路は主通路と直角に交差させてあり、運転者がその交差点でフォークリフトの車体の方向を90°転換させて、主通路から枝通路にフォークリフトを進入させる。
【0003】
また、倉庫内のスペースを有効利用する観点から、各荷棚が必要最小限の間隔で配置されること、すなわち、枝通路の幅が車体幅と略同一の幅に設けられることもある。このような枝通路及の下端部両側には、フォークリフトを案内するガイドが設けられ、このガイドの進入口側の幅は、枝通路の幅よりも広くなっている。そして、主通路から枝通路に進入しようとするフォークリフトは、その前端をガイドの進入口に進入させることで、枝通路に円滑に誘導される用になっている。
【0004】
前記ガイドにより、フォークリフトを枝通路に進入させる際に、車体の中央が枝通路の中央に完全に一致していない場合であっても、枝通路に車体を進入させることが可能となる。しかし、ガイドの進入口に車体を進入させるためには、運転者は交差点で車体の向きを略90°回転させることが必要となる。
【0005】
このため、1回の進入動作でガイドの進入口に車体を進入させることができなければ、
運転者は、いわゆる切返しという複雑な運転操作を繰返すことになり、作業時間が無駄に費やされる。
【0006】
ところで、本発明に類似する技術として、フォークリフトの通路に磁気誘導線路を敷設し、車体の前後に配置した線路検知手段で線路を検知しながら車体の進行方向を自動制御する技術は後掲する特許文献1などに開示されている。
【0007】
又、フォークリフトの移動経路に沿って設けられたガイド手段の位置に対する車体の偏倚を検出し、その偏倚を解消するために左右の車輪の回転数を制御して操舵する技術が後掲する特許文献2に開示されている。
【0008】
更に、後掲する特許文献3には、目視によりスタート位置近傍に移動させた自律走行車を、そのスタート位置から発進させて車体の左右方向のずれ量を検出し、そのずれ量が0になるように自律走行車を誘導走行させる技術が開示されている。
【0009】
しかし、直角に方向転換するフォークリフトに乗車している運転手に車体が直角に方向転換されたことを認識させる技術や、直角に方向転換するために操舵すべき方向を認識させる技術はこれまでのところ見当たらず、枝通路に進入するための方向転換は運転者の経験と勘にたよっているのが実情である。
【特許文献1】特開2002−123315号公報
【特許文献2】特開平9−269831号公報
【特許文献3】特開平9−282036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のように、運転者の経験や勘によって車体の方向転換が行われている場合、車体を主通路に対して正確に直角の方向に転換することは容易ではなく、上述のように、幾度か切返しをすることで作業時間が費やされている。特に、運転技術の未熟な運転者にとっては、車体の方向転換は困難であり、枝通路への進入に多大な作業時間を要している。
【0011】
本発明は、運転者が主通路と枝通路の交差点で車体を略直角に方向転換した後、車体の方向転換角度を直角にするために操舵すべき方向を運転者に認識させることができる枝通路への進入アシストシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するため、本発明は、主通路から分岐する枝通路の中心線を前記主通路まで延長した延長線上に設けられた基準線と、車体に搭載され、前記基準線に対する車体前後方向の角度を検出する角度検出手段と、車体に搭載され、該角度検出手段により検出された角度に応じて操舵方向を指示する操舵方向指示手段を備えることを特徴とする技術的手段を採用する。
【0013】
本発明によれば、運転者がフォークリフトを運転して主通路と枝通路の交差点で車体がある程度基準線の方向に方向転換をすると、角度検出手段が基準線を検出し、その基準線に対する車体前後方向の角度を検出(演算)する。そして、検出された基準線に対する車体前後方向の角度に応じて操舵方向指示手段が車体前後方向を基準線の方向に一致させるに操舵すべき方向を指示する。
【0014】
運転者は、この操舵方向検出手段の指示を認識することにより、車体を枝通路に進入させるために操舵すべき方向を認識することができるので、車体の前後移動と操舵を組合せた切返しと呼ばれる複雑な運転操作を運転者が繰返す回数をなくしたり、少なくしたりすることができ、短時間で、容易に枝通路に進入できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明すれば、以下の通りである。図面において、図1は本発明の一実施例に係る通路進入アシストシステムの平面図であり、図2は該通路進入アシストシステムの機能ブロック図であり、図3は該通路進入アシストシステムの動作のフロー図であり、図4は当該通路進入アシストシステムを設置したフォークリフトのインジケータパネルの正面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施例に係る通路進入アシストシステムは、主通路1に設けられる基準線2と、フォークリフト3の車体4に搭載される角度検出手段5及び操舵方向指示手段6を備える。
【0017】
前記基準線2は枝通路7の中心線の延長線上に設けられた磁性体、即ち、主通路に埋設された磁気棒や、主通路の表面に貼り付けられた磁気テープ等で構成され、前記角度検出手段5は、車体4の前後に搭載された磁気センサアレイ8を備えている。
【0018】
磁気センサアレイ8は、車体4の幅方向に例えば1cm間隔で並ぶ多数の磁気検出素子(磁気センサ)を備えるものであり、車体4の前後方向に適当な間隔を置いた2箇所に設ければよい。
【0019】
この実施例では、フォークリフト3は車体4の4隅に車輪を有し、後輪の一方または両方が駆動輪兼操舵輪になっており、車体4の最小回転半径での旋回時の旋回中心となる位置に、前側の磁気センサアレイ8fを配置し、車体4の後端部の左右方向中央部に後側の
磁気センサアレイ8rを配置している。
【0020】
図2に示すように、前記角度検出手段5は、前後の磁気センサアレイ8の他に、前後の磁気センサアレイ8が検出する前記基準線2の位置に基づいて前記基準線2に対する車体4の前後方向の角度を演算する演算手段9とを備えている。
【0021】
又、前記操舵方向指示手段6は、前記演算手段9の演算結果に基づいて車体4の前後方向を基準線2の方向に一致させるために操舵すべき方向を判定する操舵方向判定手段10と、この操舵方向判定手段10の判定結果に従って車体4の操舵すべき方向を指示する指示器11を備える。
【0022】
図3に示すように、前記角度検出手段5は所定の周期で前後の磁気センサアレイ8f、8rの出力値を読み取り、車体4の前側と後側の両方の磁気センサアレイ8f、8rで基準線2が検出されると、演算手段9で前記基準線2に対する車体4の前後方向の角度を演算する(S1Yes→S2Yes→S3)。
【0023】
この演算結果は操舵方向判定手段10に与えられ、操舵方向判定手段10はこの演算結果に基づいて車体の前後方向を基準線2の方向にするために操舵すべき方向を判定するとともに(S4)、この判定結果を指示器11により指示する(S5)。
【0024】
操舵方向判定手段10における判定結果は、例えば車体4が前進時に、車体4の前後方向を基準線の方向に一致させるために操舵すべき方向が右である右操舵と、車体4を直進させるべき中立と、車体4の前後方向を基準線の方向に一致させるために操舵すべき方向が左である左操舵のいずれかとされる。
【0025】
もちろん、右操舵、左操舵を操舵量の大小に応じて複数段に分けて表示することも可能であるが、この実施例では構成を簡単にすると共に装置を安価にするために、右操舵及び左操舵をそれぞれ1段階表示している。
【0026】
前記指示器11は右操舵指示灯11Rと、左操舵指示灯11Lを備え、操舵方向判定手段10の判定結果が右操舵の時には右操舵指示灯11Rの点灯により右操舵が指示され、操舵方向判定手段10の判定結果が左操舵の時には左操舵指示灯11Lの点灯により左操舵が指示される。
【0027】
図4に示すように、前記指示器11は、車体4に設けられたインジケータパネル12に配置され、このインジケータパネル12には、この指示器11の他に前側の磁気センサアレイ8fが基準線2を検出していることを示す前検出灯13、後側の磁気センサアレイ8rが基準線2を検出していることを示す後検出灯14が配置される。
【0028】
前記操舵方向判定手段10の判定結果が中立の時には左操舵指示灯11L及び右操舵指示灯11Rは消灯され、前検出灯13及び後検出灯14が点灯される。
【0029】
つまり、運転者が主通路1において、枝通路7との交差点で枝通路7に向かうように車体4を基準線2の方向に方向転換すると、前後の磁気センサアレイ8f、8rが基準線2を検出して、インジケータパネル12の前検出灯13及び後検出灯14が点灯し、車体の前後方向を基準線の方向にするために操舵すべき方向が右操舵指示灯11R又は左操舵指示灯11Lの点灯若しくは両者の消灯という形態で運転者に示される。
【0030】
運転者はこの操舵方向の指示に従って操舵することにより、車体4を基準線2の方向に方向転換させた後、枝通路7に向かって直進すればよい。
【0031】
なお、主通路1の幅が狭く、上述の方向転換時に車体4を後進させることが必要になる場合、上述の構成では、車体4が後進時に運転者が操舵する方向は、指示器11に示される操舵方向と逆になる。このため、操舵方向判定手段10が、例えば、運転者が車体の前進又は後進を操作するアクセルレバーの操作方向等から車体4の進行方向を取得する構成とし、指示器11に車体4の進行方向に応じた操舵方向を示すようにすることが好ましい。
【0032】
図2に示すように、この実施例では、必要に応じて、フォークリフト3の進行方向を前後方向に固定する進路固定手段15が設けられる。
【0033】
この進路固定手段15は、当該フォークリフト3の操舵輪16を縦軸心周りに回転させる操舵アクチュエータ17と、この操舵アクチュエータ17の動作を制御する操舵制御部18と、この操舵制御部18に直進指令を与えるボタンスィッチからなる直進指令スイッチ19を備える。
【0034】
この直進指令スイッチ19から与えられる直進指令は、前後の磁気センサアレイ8f、8rが共に基準線2を検出しており、かつ、操舵方向判定手段10の判定結果が中立である時のみ操舵制御部18に受付けられ、この直進指令を受付けた操舵制御部18は操舵輪が直進方向になるように操舵アクチュエータ17を制御する。
【0035】
従って、運転者が前記指示器11により車体4が枝通路7の方向に方向転換したことを認識した後、直進指令スイッチ19を押すと、進路固定手段15が作動し、一旦、方向転換された車体4が他の方向を向いて進行することを防止できる。
【0036】
要するに、運転者が主通路1と枝通路7の交差点に設けられた基準線2を前後の磁気センサアレイ8f、8rが跨ぐように車体4を方向転換させると、車体4を基準線2の方向に方向転換するために操舵すべき方向が指示器11により示される。
【0037】
運転者はこの指示に従って操舵することにより車体4の前後方向を基準線2の方向に調整することができ、車体4の方向が基準線2の方向、すなわち、枝通路7の方向に方向転換されると、そのことが指示器11により指示されるので、運転者は容易に認識することができる。
【0038】
そして、車体4が枝通路7の方向に方向転換されたことを認識した後、進路固定手段15を作動させて直進することにより、短時間で、容易に、かつ円滑に車体4を枝通路7に進入させることができる。
【0039】
なお、枝通路7の方向に方向転換した車体4の、枝通路7に対する車体幅方向への偏りは磁気センサアレイ8の車体幅方向の長さを適当に設定することにより所定の範囲内に抑えられるので、前記基準線2を前後の磁気センサアレイ8f、8rが跨ぐように方向転換した車体4を枝通路7に向かって直進させると、車体4の幅方向への偏りは枝通路7の進入口に設けたガイド20により矯正される。
【0040】
なお、以上で説明した構成は具体例を示したものであり、本発明の技術的範囲を何等限定するものではない。本発明の効果を奏する範囲において任意に設計することが可能である。例えば、基準線を、主通路の床色と異なる色で主通路に描くとともに、磁気センサに代えて、自身が出射した光の反射光強度を検出する光センサを配設し、基準線の有無により反射光強度が変化することから当該基準線を検出する構成としても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、フォークリフトの前後方向を枝通路の方向と一致させて進入させる運転操作を容易にし、短時間で枝通路に進入できるようにする技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の平面図である。
【図2】本発明の機能ブロック図である。
【図3】本発明のフロー図である。
【図4】本発明の正面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 主通路
2 基準線
3 フォークリフト
4 車体
5 角度検出手段
6 操舵方向指示手段
7 枝通路
8、8f、8r 磁気センサアレイ
9 演算手段
10 操舵方向判定手段
11 指示器
11L 左操舵支持灯
11R 右操舵指示灯
15 進路固定手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主通路から分岐する枝通路の中心線を前記主通路まで延長した延長線上に設けられた基準線と、
車体に搭載され、前記基準線に対する車体前後方向の角度を検出する角度検出手段と、
車体に搭載され、該角度検出手段により検出された角度に応じて操舵方向を指示する操舵方向指示手段を備えることを特徴とする通路進入アシストシステム。
【請求項2】
前記基準線は、主通路に設けられた磁性体からなり、
前記角度検出手段は、車体の前後に搭載され、車体の幅方向に磁気検出素子が並ぶ磁気センサアレイと、該磁気センサアレイが検出する前記磁性体の位置に基づいて前記基準線に対する車体前後方向の角度を演算する演算手段とを備え、
前記操舵方向指示手段は、前記演算手段の演算結果に基づいて、車体前後方向を前記基準線の方向に一致させるために操舵すべき方向を判定する操舵方向判定手段と、この操舵方向判定手段の判定結果に基づいて、前記操舵すべき方向を指示する指示器とを備えることを特徴とする請求項1に記載の通路進入アシストシステム。
【請求項3】
前記車体の進行方向を前後方向に固定する進路固定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の通路進入アシストシステム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−76518(P2006−76518A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265372(P2004−265372)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】