道路用標示体および道路用標示体の設置構造
【課題】車両などが接触してもその移動を阻害しない道路用標示体を提供する。
【解決手段】車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有し路面から上方へ立設させる柱状の標識部から、ビーム部を横の一方向へのみ延ばして設ける。
前記ビーム部で遮ることで、歩行者などの人や車両などの横断を抑制することができる。
また、前記柱状の標識部が車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有するので、この柱状の標識部や前記ビーム部などに車両が接触したときに、柱状の標識部が撓んで車両から受ける力を逃がし、車両の移動を妨げず、この車両が自転車やオートバイであった場合でも、これらが道路用標示体に保持されてその運転手が放り出されるような事故が生じにくくなされる。
【解決手段】車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有し路面から上方へ立設させる柱状の標識部から、ビーム部を横の一方向へのみ延ばして設ける。
前記ビーム部で遮ることで、歩行者などの人や車両などの横断を抑制することができる。
また、前記柱状の標識部が車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有するので、この柱状の標識部や前記ビーム部などに車両が接触したときに、柱状の標識部が撓んで車両から受ける力を逃がし、車両の移動を妨げず、この車両が自転車やオートバイであった場合でも、これらが道路用標示体に保持されてその運転手が放り出されるような事故が生じにくくなされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道沿い、或いは公園や公共施設,駐車場,商業施設の入口などに設けられ、また走行車線と対向車線との間に道路方向に沿って設置させて車線分離体としても利用可能な道路用標示体とその設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公園や公共施設,その他人々が往来する商業施設の入口や駐車場などにおいて車両の進入を阻止,誘導するため、あるいは歩道沿いに設置して歩道への車両の乗り入れや駐停車を防ぐ目的で設置される道路用標示体製品については、種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、立設用の脚部2aを下端に備えた柱用の芯材2と、その芯材2を被覆する弾性緩衝体3とを備えた柵柱であって、前記芯材2の高さhを設定柵柱高さHよりも小に構成し、前記弾性緩衝体3に、前記芯材2を被覆する被覆部3aの上端から棚柱上端にまで達する延長部3bを一体に具備させ、前記被覆部3aとの連設部を視点とする前記延長部3bの弾性に抗した揺動変位が許容される状態に前記弾性緩衝体3を芯材2に取り付けてある棚柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平03−018216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の中の図5において、前記の弾性緩衝体3をコの字形状に形成させて、それぞれの端部に設けた脚部2aで立設させている実施形態が開示されているが、このような棚柱は車両等が接触する際にコの字形状の2本の柱の間に車両の一部が入り込むと、その部分が棚柱に保持されて車両の移動を阻害する場合がある。特に自転車やオートバイなどの場合は、これらの車両を棚柱が保持して、運転手を車両から放り出すような事故となる可能性が懸念される。
【0006】
そこで本発明は、車両などが接触してもその移動を阻害しない道路用標示体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路用標示体は、車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有し路面から上方へ立設される柱状の標識部から、ビーム部が横の一方向にのみ延びていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路用標示体によれば、路面から上方へ立設される柱状の標識部と、この柱状の標識部から横の一方向にのみ延びるビーム部とを備えるので、前記ビーム部で遮ることで、歩行者などの人や車両などの横断を抑制することができる。
また、前記柱状の標識部が車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有するので、この柱状の標識部や前記ビーム部などに車両が接触したときに、柱状の標識部が撓んで車両から受ける力を逃がすので、車両の移動を妨げず、この車両が自転車やオートバイであった場合でも、これらが道路用標示体に保持されてその運転手が放り出されるような事故が生じにくくなされる。
【0009】
また、前記ビーム部が車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有すれば、このビーム部に車両などが接触したときに、柱状の標識部と共にビーム部が撓んで車両から受ける力を逃がし、車両の移動をより妨げにくくなされるので好ましい。
また、前記ビーム部に扁平な板形状の外形に形成されてその板面が前面及び後面へ向けられるようになされた板部を設ければ、ビーム部の座り心地が悪いような印象を人に感じさせ、ビーム部へ歩行者などの人が腰掛けて転ぶような事故の発生を抑制でき、好ましい。
また、前記ビーム部が、扁平な板形状の外形に形成されてその板面が前面及び後面へ向けられるようになされた板部と、前記柱状の標識部に固定される円筒形状の基部と、前記板部と基部との間に連設され前記柱状の標識部側へ至るほど円筒形状となる中間部とを備えれば、ビーム部に車両が接触して上下方向への力を受けたとき、板面が前面及び後面へ向けられた板形状に形成されることで上下方向へ撓みにくくなされた板部ではなく、円筒形状に形成された基部においてビーム部が撓み、車両から受ける力を効率的に逃がすことができる。
また、前記ビーム部が、扁平な板形状の外形に形成された板部と、前記柱状の標識部に固定される円筒形状の基部と、前記板部と基部との間に連設され前記柱状の標識部側へ至るほど円筒形状となる中間部とを備えれば、前記板部と前記基部との間に車両から受ける力が集中しやすい箇所が生じにくくなされてビーム部の損傷が抑制され好ましく、これらを一の部材から形成させれば、力が集中しやすい箇所がより生じにくくなされるので、好ましい
【0010】
また、本発明に係る道路用標示体の設置構造は、前記請求項1又は2に記載の道路用標示体が、ビーム部の延びる方向を道路を走行する車両の進行方向へ向けて、複数列設されていることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る道路用標示体の設置構造によれば、請求項1又は2に記載の道路用標示体を、ビーム部の延びる方向を道路を走行する車両の進行方向へ向けて、複数列設させるので、走行する車両へ向かって延びる前記ビーム部が無く、道路用標示体に車両などが接触したときに、ビーム部の先端が車両の隙間などに入り込んで引っかかるなどして、車両の移動を妨げるような問題が生じにくくなされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の道路用標示体及び道路用標示体の設置構造によれば、車両などが接触してもその移動を阻害しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る道路用標示体の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
【図2】図1の道路用標示体を構成する各部材に分解した状態を示す正面図である。
【図3】図1の柱状の標識部の断面図である。
【図4】図1の柱状の標識部のジョイント付近を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は(イ)のA−A断面図である。
【図5】図4の柱状の標識部のジョイントにビーム部を固定させた状態を示す断面図であり、(イ)はビーム部の挿入前の状態を示し、(ロ)は固定ねじで固定させた状況を示す図である。
【図6】ビーム部の断面を示す図2のA−A断面図である。
【図7】ビーム部の基部の断面を示す図2のB−B断面図である。
【図8】ビーム部の板部の断面を示す図2のC−C断面図である。
【図9】図2のビーム部を形成させる状況を示す図であり、(イ)は熱プレス加工前を示す図であり、(ロ)は熱プレス加工後を示す図である。
【図10】図1の道路用標示体を設置させた状況の一形態を示す図である。
【図11】本発明に係る道路用標示体の設置構造の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は道路用標示体である。
道路用標示体1は、ベース3の上方にポール2を突設させ、このポール2の上端にジョイント4を固定させた柱状の標識部5と、前記ジョイント4を介して一個のビーム部が横の一方向にのみ延びて、略逆L字状の形状に形成されている。
【0015】
柱状の標識部5は、ポール2をベース3の上方から着脱自在に立設できるように構成させている
本実施形態のベース3は扁平な円錐台形状に形成され、その下面を路面に当接させて設置固定されるが、路面に設置固定させる方法として、ベース3の下面に接着剤を塗布して路面へ接着固定させる方法を用いることができる。また、ベース3の設置固定方法はこれに限るものではなく、ベース部3の底面から雄ねじ部分を下方に突出させてアンカーボルトを取り付け、路面に埋設固定させたアンカーナットに螺結させて固定させてもよいし、他の固定方法を用いてもよい。
このようなベース3は、例えば射出成型により形成され、その材質としては合成樹脂、例えば、HDPE、ABS、ASA、PP、PS、PC、PET、硬質PVCなどの硬質な合成樹脂を使用することができ、本実施形態ではASA樹脂を用いて形成させているが、熱可塑性ポリウレタンや軟質ポリオレフィン、エラストマーなどの軟質な合成樹脂を用いてもよい。
【0016】
柱状の標識部5は、車両などに踏み倒された後に元の状態に復元する可撓性を有するように、ポール2を熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成しているが、これに限らず、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができる。
ポール2の外側面には反射シートが巻回されて全周に亘って貼り付けられた反射部25が設けられており、正面や側方からの視認性を高いものとすることができる。
【0017】
図3は図1の柱状の標識部5の断面図である。
本実施形態の柱状の標識部5において、ポール2の下端には、補強用部材21が固定されている。
補強用部材21はポール2の下端の変形を抑制させるためのものであり、略リング形状に形成され、その外径が前記ポール2の内径に対応する大きさに形成されている。
そして、前記補強用部材21は、下端の一部以外の部分が前記ポール2に挿入され、ポール2の外側から補強用部材21の筒壁へ螺入する固定ねじ(図示せず)によって、ポール2に固定されている。
【0018】
また、柱状の標識部5が可撓性を有するように、本実施形態のポール2は熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されているが、ジョイント4から横方向へ延びるビーム部6の重量による撓みを抑制させるために、ポール2の内側に補強筒22が内装されて設けられている。
具体的には、補強筒22は、外径がポール2の内径より小さな円筒形状に形成され、その下端を前記補強用部材21の上部に形成された環状溝に挿入され、ポール2の外側から補強用部材21の筒壁へ螺入する前記固定ねじ(図示せず)に挿通されて、補強用部材21に固定されている。
本実施形態の補強筒22は可撓性を有するように熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されており、ポール2と同様にこれに限らず、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができる。
補強筒22は、道路用標示体1に車両などが接触してポール2が踏み倒されたとき、ポール2と共に折れ曲がった状態から元の状態へ復元する際に、ポール2を内側から支えて元の状態へより確実に復元させる。
本実施形態の補強筒22は、ポール2の下端に固定された補強用部材から、ポール2の上端に固定されたジョイント4の内部に至るまで、ポール2の略全体に亘って内装されている。このように補強筒22を内装させることで、ポール2をより強い力で支えるようにするとともに、ポール2において補強筒22が内装されている部分とそれ以外の部分との境界が生じないので、この境界でのポール2の折れ曲がりを抑制させ、道路用標示体1の傾きや、力の集中によるポール2の破損を抑制させている。
【0019】
ポール2は補強用部材21が固定された下端部分をベース3の上面に設けた円形のくぼみ31に挿入させて、着脱可能に固定できるように構成されている。具体的には、ベース3に設けられた前記のくぼみ31にポール2の下端部分が挿入された後、ベース3の外側からポール2の下端部分に向けてポール固定ねじNの雄ねじを挿入させて、ポール2を貫通させて補強用部材21に螺入させ、ベース3とポール2とを固定させている。上記のように固定させることで、前記のポール固定ねじNを取り外せば、ポール2とベース3との固定を解除でき、ポール2とベース3とを着脱自在に固定できる。本実施形態では補強用部材21が螺入されたポール固定ねじNの雄ねじ部分と強固に結合できるように、補強用部材21を硬質の樹脂材料で形成させている。また、補強用部材21を硬質の樹脂材料で形成させることで、ポール2の下端部分の変形が抑制され、道路用標示体が外力を受けてもポール2とベース3との固定が容易に外れなくなる。
ポール2とベース3との固定方法は上記の方法に限るものではなく、ポール2の下端とベース3のくぼみ31とにそれぞれ係合可能な係合部と係止部とを設け、これらの係合によって着脱可能に固定させてもよいし、ポール2とベース3とは別に形成させた固定部材をポール2とベース3とに架け渡して取り付けることでこれらを固定させてもよいし、他の方法を用いて固定させても良い。
【0020】
ジョイント4は、円筒形をアールを付けて90度の角度に曲げたようなエルボ状の逆L字型に形成されており、その両端において、下方向を向いた端部に下方結合部41を、水平方向を向いた端部に水平結合部42をそれぞれ形成されている。
前記下方結合部41は、下方に向いたジョイント4の外周面が縮径して突出するように形成されており、円筒形のポール2の中空部分に上方から挿入可能に形成されている。下方結合部41の外周面はポール12の内周面に当接するように形成され、下方結合部41とポール12とは融着によって強固に固着されている。
ジョイント4は、車両などが接触する等して変形しても元の状態に復元するように弾性を有する材料で形成するのが好ましく、本実施形態では熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成しているが、これに限らず、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができ、他の材料を用いてもよい。
【0021】
前記水平結合部42は、ジョイント4の外周面を形成する円筒形状の壁部43の内側に、壁部43より小さな筒形に形成された内壁部44が形成されている。
それぞれ筒状に形成された壁部43と内壁部44とは、その間に環状のビーム挿入溝部46が形成されるようにそれぞれの筒の径の大きさを異ならせて設けられている。本実施形態の道路用標示体1のビーム部6の形状についての詳細は後述するが、ビーム部6のジョイント4側の端部には円筒形状の基部61が形成され、この基部61を前記のビーム挿入溝部46に挿入させて固定されるように形成されている。すなわち、ジョイント4の水平方向に向く端部に形成された壁部43、内壁部44、ビーム挿入溝部46がビーム状の標識部5を固定するための水平結合部42として機能するように、壁部43はその内側にビーム部6の基部61を挿入して収納可能に形成され、内壁部44は円筒形状の基部61に挿入可能な大きさに形成されている。
【0022】
図4は図1の柱状の標識部5のジョイント4付近を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は(イ)のA−A断面図である。
本実施形態において、ジョイント4に設けられた水平結合部42の内壁部44は、側面視からの断面形状が略正八角形の筒状に形成されており、それぞれ対向する4面をジョイント4の向きに対して真上、真下、水平横方向へ向けるように形成されている。そして、前記の面の間に形成された斜め方向に向かう4面において、ビーム挿入溝部46から内壁部44の内部へ至るように内壁部44を貫通する雄ねじ挿通孔44aが設けられている。
また、ジョイント4に設けられた水平結合部42の壁部43において、前記の雄ねじ挿通孔44aに対応する位置に、壁部43の外周面から内周面に至るねじ頭部挿通孔43aが設けられている。
本実施形態では、ジョイント4とビーム部6とを固定ねじ9によって固定するように設けており、前記の雄ねじ挿通孔44aは固定ねじ9の雄ねじ部91が挿通可能な大きさに形成され、前記のねじ頭部挿通孔43aは固定ねじ9のねじ頭部92が挿通可能な大きさに形成されている。
【0023】
図5は図4の柱状の標識部5のジョイント4にビーム部6を固定させた状態を示す断面図であり、(イ)はビーム部6の挿入前の状態を示し、(ロ)は固定ねじ9で固定させた状況を示す図である。
本実施形態のジョイント4は固定ねじ9の雄ねじ部91と螺結可能なナット82を備えたクリップナット8を内壁部44に取り付けることで、固定ねじ9によるビーム状の標識部5の着脱可能な固定を可能に形成されている。
【0024】
前記のクリップナット8は、平板状のバネを、コの字形状に曲げて形成されたクリップ部81と、このクリップ部81に固定されたナット82から構成されている。
クリップナット8は、コの字形状に形成されたクリップ部81で、ジョイント4の水平結合部42の内壁部44を挟み込み、ジョイント4内に内装されて取り付けられる。このとき、ナット82がジョイント4の内壁部44の内側に収納されるように、クリップナット8は取り付けられる。また本実施形態では、クリップナット8は、ねじ頭挿通孔43aから挿通させた固定ねじ9の雄ねじ部91を、雄ねじ挿通孔44aを挿通させてナット82に螺結可能な位置に取り付けられており、略正八角形の筒形状に形成された内壁部44の8つの面の中で、雄ねじ挿通孔44aが形成された4面にそれぞれ1個づつ合計4個取り付けられている。本実施形態では上記のようにクリップナット8を合計4個取り付けているが、これに限るものではなく、ジョイント4の大きさや形状に応じて個数を調整して取り付けて良い。
【0025】
上記のようにクリップナット8をジョイント4に取り付けることにより、ジョイント4のビーム挿入溝部46にビーム部6の基部61を挿入させた後、ジョイント4の壁部43の外側からねじ頭部挿通孔43aに固定ねじ9を挿通させ、前記の固定ねじ9の雄ねじ部91をビーム部6に貫通させ、ジョイント4の内壁部44の雄ねじ挿通孔44aを挿通させて、クリップナット8のナット82に螺結させ、ジョイント4とビーム部6とを固定させる。ビーム部6には固定ねじ9の雄ねじ部91が貫通する位置に、あらかじめ貫通穴65が設けてある。また、ジョイント4の水平結合部を構成する壁部43、内壁部44,ビーム挿入溝部46は、ビーム部6を固定する固定ねじ9がクリップナット8に螺結されたときに、固定ねじ9のねじ頭部92の上端が、ジョイント4のねじ頭部挿通孔43aから突出させずに、ジョイント4の壁部43の外周面より内側に位置するように、固定ねじ9をジョイント4の内部に収納可能に形成されている。上記のようにジョイント4を形成させることで、道路用標示体1に車両などが接触した際に、固定ねじ9のねじ頭部91が車両に接触して傷つけるなどの問題の発生を防止することができる。
【0026】
また上記のように、クリップナット8のナット82と固定ねじ9との螺結によって、ジョイント4とビーム部6とを固定することで、ジョイント4とビーム部65との固定を着脱自在で、強固なものとできる。
また上記のように、ジョイント4とビーム部6との固定にクリップナット8を用いることで、固定ねじ9を螺結させる雌ねじ部を容易にジョイント4に設けることができると共に、柱状の標識部5が破損などして交換する場合には、クリップナット8を容易にジョイント4から取り外して分別し、再利用や再生利用などを行うことができる。
【0027】
本実施形態では、固定ねじ9をジョイント4に取り付けたクリップナット8に螺結させて、ビーム部6とジョイント4の水平結合部42とを固定させているが、固定方法はこれに限るものではなく、雄ねじ91と螺結可能な雌ねじ部分を有する固定部材をジョイント4に内装固定させる方法や、ジョイント4の内壁部44に雄ねじ91と螺結可能な雌ねじを直接形成させるなどの方法を用いてもよい。
【0028】
ビーム部6は、ジョイント4から横の一方向へ延びるように設けられ、人や車両等の通過を防止するようになされている。
ビーム部6は車両などに接触して変形した後に元の状態に復元する可撓性を有するように、熱可塑性ポリウレタン樹脂、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができ、本実施形態のビーム部6は熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されている。
【0029】
図6はビーム部6の断面を示す図2のA−A断面図であり、図7はビーム部6の基部61の断面を示す図2のB−B断面図であり、図8はビーム部6の板部63の断面を示す図2のC−C断面図である。
ビーム部6は、一方の端部に円筒形状に形成された基部61が設けられて前記ジョイント4に取り付けられており、他方の側に板形状の外形に形成された板部63が設けられている。そして前記板部63と前記基部61との間には、前記板部63の板形状から前記基部61に至るほど円筒形状となる中間部12が形成されている。
そして、前記基部61には、ジョイント4との固定に用いられる固定ねじ9の雄ねじ部91が挿通可能な貫通穴65が形成されている。
【0030】
前記板部63は、その板形状の板面が前面及び後面へ向けられるように前記ジョイント4に取り付けられている。このように設けることで、板部63が上下方向へ変形しにくくなされ、自重による板部63の撓みが抑制される。
また、板面を前面及び後面へむけるように前記板部63を設けることで、ビーム部6の上への座り心地が悪いような印象を人に感じさせ、ビーム部6へ歩行者などの人が腰掛けて転ぶような事故の発生を抑制できる。
また、板部63の前面や後面の板面に、文字表示や、図形、模様等を用いた道路標示を形成させることも可能である。
【0031】
ビーム部6は、前記の如く、円筒形状の基部61と、円筒形状から板形状の外形に変化する中間部62と、板形状の外形の板部63とを備えた形状に設けられているが、本実施形態のビーム部6のこれらの形状は1本のパイプ体Pを熱プレス加工して形成させている。
【0032】
図9は図2のビーム部6を形成させる状況を示す図であり、(イ)は熱プレス加工前を示す図であり、(ロ)は熱プレス加工後を示す図である。
パイプ体Pは、図9(イ)に示すように円筒形状のパイプである。
パイプ体Pは、矢印で示されるように前後両方向から熱プレス加工により押圧され、円筒形状の筒壁が一方の端に至るまで扁平な平板状に成型されて、板形状の外形の板部63が形成されている。
そして、前記の熱プレス加工が施されていないパイプ体Pの他方の端部分は円筒形状の基部61とし、この基部61と板部63との間に、板形状から円筒形状へ形状を変化させる中間部62が形成されるように設けている。
前記ビーム部6の板部63、中間部62、基部61を一の部材で一体的に形成させることで、これらの部位の接続部分が生じないので、立設する道路用標示体1のビーム部6に車両などが接触したときに、接続部分に力が集中して破壊され、板部63が外れてしまう等の問題が抑制できる。
また、板形状の外形の板部63と円筒形状の基部61との間に、板形状から円筒形状へ徐々に形状が変化する中間部62を設けることで、これらの間のビーム部6の筒壁に力が集中する箇所が生じにくくなされ、ビーム部6の損傷が抑制できる。
また、本実施形態のビーム部6は、1本のパイプ体Pを熱プレス等により前後両方向から押圧することで、前記の板部63、中間部62、基部61を容易に形成させることができる。また前記の方法は、射出成型など他の成型方法と比較して、その筒壁の肉厚をビーム部6の一方の端から他方の端に至るまで容易に等しく形成させることができるので、ビーム部6へ外力がかかったときに筒壁の薄い部分に力が集中することがなく、ビーム部6の損傷を抑制できる。
また、パイプ体Pを前後方向から熱プレス加工して前記板部63を形成するので、この板部63の上下方向の幅が元のパイプ体Pの外径である基部61の外径より大きく形成される。このように板部63を設けることで、道路用標示体1のビーム部6の視認性が向上し、その設置場所への注意をより喚起できるようになされる。
【0033】
図10は図1の道路用標示体を設置させた実施の一形態を示す図である。
本実施形態において、道路用標示体1を二個並設させており、具体的には各々のビーム部6を若干の間隔をあけて当該ビーム部6の先端を対向させて、二個一組に並設させている。
上記のようにビーム部6を対向させた二個一組の道路用標示体1を、車の通過を防止したい場所に設置させて車止めとして利用してもよい。また走行車線と対向車線との間に本実施形態の二個一組の道路用標示体1を複数組設けて車線を分離するとともに、設置した道路を歩行者が横断することを防止するように用いることもできる。この場合、隣り合う道路用標示体間の隙間を、人が通過不能な大きさに設置させて、この間を歩行者が横断することを抑制する。
そして、道路用標示体1に車両などが接触したときには、ポール部2やビーム部6が力を受けて撓み、これらの変形によって、接触した車両が道路用標示体1へ引っかかる等の問題を生じにくくなされる。
特に自転車やオートバイなどの二輪車両が道路用標示体1に接触したときに、車両が道路用標示体1に引っかかり、運転手が投げ出されるなどの事故を引き起こす等の問題が抑制できる。
【0034】
図11は本発明に係る道路用標示体1の設置構造の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
本実施形態の道路用標示体の設置構造は、複数の道路用標示体1を路側に列設させた状況をあらわしており、具体的には、4個の道路用標示体1を等間隔に列設させ、全ての道路用標示体1のジョイント4からビーム部6が延びる方向を、道路を走行する車両の進行方向へ向けて立設させている。
本実施形態の道路用標示体1の設置構造の実施形態は、図10の実施形態と同様に、ポール部2やビーム部6の撓みによって、道路用標示体1に接触した車両の移動を妨げないようになされたものである。
そして更に、ビーム6が車両の進行方向へ向けて延設されているので、道路用標示体1に車両が接触した際に、ビーム6の先端が接触した車両の隙間などに入り込み、この車両を引っかけてその移動を妨げるなどの問題が生じにくくなされている。
【0035】
また、本実施形態の道路用標示体1の設置構造においては、柱状の標識部5より延設させたビーム部6の先端を隣りに設置させた道路用標示体1の柱状の標識部5へ向けるように設けており、各ビーム部6には、板面が上下方向へ沿うようなされた板部63をビーム部6の先端に至るように形成させている。
このように設けることで、施工時の誤差や、設置後の変形などの要因によって、延設されるビーム部6の向きが横方向に若干ずれたときでも、柱状の標識部5の横方向の厚みの大きさが板部63の横方向の厚みより大きいため、板部63の横方向への位置ずれが目立たなくなされる。
【符号の説明】
【0036】
1 道路用標示体
2 ポール
21 補強用部材
22 補強筒
25 反射部
3 ベース
31 くぼみ
4 ジョイント
41 下方結合部
42 水平結合部
43 壁部
44 内壁部
46 ビーム挿入溝部
5 柱状の標識部
6 ビーム部
61 基部
62 中間部
63 板部
65 貫通穴
8 クリップナット
81 クリップ部
82 ナット
9 固定ねじ
91 雄ねじ部
92 ねじ頭部
N ポール固定ねじ
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩道沿い、或いは公園や公共施設,駐車場,商業施設の入口などに設けられ、また走行車線と対向車線との間に道路方向に沿って設置させて車線分離体としても利用可能な道路用標示体とその設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公園や公共施設,その他人々が往来する商業施設の入口や駐車場などにおいて車両の進入を阻止,誘導するため、あるいは歩道沿いに設置して歩道への車両の乗り入れや駐停車を防ぐ目的で設置される道路用標示体製品については、種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、立設用の脚部2aを下端に備えた柱用の芯材2と、その芯材2を被覆する弾性緩衝体3とを備えた柵柱であって、前記芯材2の高さhを設定柵柱高さHよりも小に構成し、前記弾性緩衝体3に、前記芯材2を被覆する被覆部3aの上端から棚柱上端にまで達する延長部3bを一体に具備させ、前記被覆部3aとの連設部を視点とする前記延長部3bの弾性に抗した揺動変位が許容される状態に前記弾性緩衝体3を芯材2に取り付けてある棚柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平03−018216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の中の図5において、前記の弾性緩衝体3をコの字形状に形成させて、それぞれの端部に設けた脚部2aで立設させている実施形態が開示されているが、このような棚柱は車両等が接触する際にコの字形状の2本の柱の間に車両の一部が入り込むと、その部分が棚柱に保持されて車両の移動を阻害する場合がある。特に自転車やオートバイなどの場合は、これらの車両を棚柱が保持して、運転手を車両から放り出すような事故となる可能性が懸念される。
【0006】
そこで本発明は、車両などが接触してもその移動を阻害しない道路用標示体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路用標示体は、車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有し路面から上方へ立設される柱状の標識部から、ビーム部が横の一方向にのみ延びていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路用標示体によれば、路面から上方へ立設される柱状の標識部と、この柱状の標識部から横の一方向にのみ延びるビーム部とを備えるので、前記ビーム部で遮ることで、歩行者などの人や車両などの横断を抑制することができる。
また、前記柱状の標識部が車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有するので、この柱状の標識部や前記ビーム部などに車両が接触したときに、柱状の標識部が撓んで車両から受ける力を逃がすので、車両の移動を妨げず、この車両が自転車やオートバイであった場合でも、これらが道路用標示体に保持されてその運転手が放り出されるような事故が生じにくくなされる。
【0009】
また、前記ビーム部が車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有すれば、このビーム部に車両などが接触したときに、柱状の標識部と共にビーム部が撓んで車両から受ける力を逃がし、車両の移動をより妨げにくくなされるので好ましい。
また、前記ビーム部に扁平な板形状の外形に形成されてその板面が前面及び後面へ向けられるようになされた板部を設ければ、ビーム部の座り心地が悪いような印象を人に感じさせ、ビーム部へ歩行者などの人が腰掛けて転ぶような事故の発生を抑制でき、好ましい。
また、前記ビーム部が、扁平な板形状の外形に形成されてその板面が前面及び後面へ向けられるようになされた板部と、前記柱状の標識部に固定される円筒形状の基部と、前記板部と基部との間に連設され前記柱状の標識部側へ至るほど円筒形状となる中間部とを備えれば、ビーム部に車両が接触して上下方向への力を受けたとき、板面が前面及び後面へ向けられた板形状に形成されることで上下方向へ撓みにくくなされた板部ではなく、円筒形状に形成された基部においてビーム部が撓み、車両から受ける力を効率的に逃がすことができる。
また、前記ビーム部が、扁平な板形状の外形に形成された板部と、前記柱状の標識部に固定される円筒形状の基部と、前記板部と基部との間に連設され前記柱状の標識部側へ至るほど円筒形状となる中間部とを備えれば、前記板部と前記基部との間に車両から受ける力が集中しやすい箇所が生じにくくなされてビーム部の損傷が抑制され好ましく、これらを一の部材から形成させれば、力が集中しやすい箇所がより生じにくくなされるので、好ましい
【0010】
また、本発明に係る道路用標示体の設置構造は、前記請求項1又は2に記載の道路用標示体が、ビーム部の延びる方向を道路を走行する車両の進行方向へ向けて、複数列設されていることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る道路用標示体の設置構造によれば、請求項1又は2に記載の道路用標示体を、ビーム部の延びる方向を道路を走行する車両の進行方向へ向けて、複数列設させるので、走行する車両へ向かって延びる前記ビーム部が無く、道路用標示体に車両などが接触したときに、ビーム部の先端が車両の隙間などに入り込んで引っかかるなどして、車両の移動を妨げるような問題が生じにくくなされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の道路用標示体及び道路用標示体の設置構造によれば、車両などが接触してもその移動を阻害しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る道路用標示体の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
【図2】図1の道路用標示体を構成する各部材に分解した状態を示す正面図である。
【図3】図1の柱状の標識部の断面図である。
【図4】図1の柱状の標識部のジョイント付近を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は(イ)のA−A断面図である。
【図5】図4の柱状の標識部のジョイントにビーム部を固定させた状態を示す断面図であり、(イ)はビーム部の挿入前の状態を示し、(ロ)は固定ねじで固定させた状況を示す図である。
【図6】ビーム部の断面を示す図2のA−A断面図である。
【図7】ビーム部の基部の断面を示す図2のB−B断面図である。
【図8】ビーム部の板部の断面を示す図2のC−C断面図である。
【図9】図2のビーム部を形成させる状況を示す図であり、(イ)は熱プレス加工前を示す図であり、(ロ)は熱プレス加工後を示す図である。
【図10】図1の道路用標示体を設置させた状況の一形態を示す図である。
【図11】本発明に係る道路用標示体の設置構造の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は道路用標示体である。
道路用標示体1は、ベース3の上方にポール2を突設させ、このポール2の上端にジョイント4を固定させた柱状の標識部5と、前記ジョイント4を介して一個のビーム部が横の一方向にのみ延びて、略逆L字状の形状に形成されている。
【0015】
柱状の標識部5は、ポール2をベース3の上方から着脱自在に立設できるように構成させている
本実施形態のベース3は扁平な円錐台形状に形成され、その下面を路面に当接させて設置固定されるが、路面に設置固定させる方法として、ベース3の下面に接着剤を塗布して路面へ接着固定させる方法を用いることができる。また、ベース3の設置固定方法はこれに限るものではなく、ベース部3の底面から雄ねじ部分を下方に突出させてアンカーボルトを取り付け、路面に埋設固定させたアンカーナットに螺結させて固定させてもよいし、他の固定方法を用いてもよい。
このようなベース3は、例えば射出成型により形成され、その材質としては合成樹脂、例えば、HDPE、ABS、ASA、PP、PS、PC、PET、硬質PVCなどの硬質な合成樹脂を使用することができ、本実施形態ではASA樹脂を用いて形成させているが、熱可塑性ポリウレタンや軟質ポリオレフィン、エラストマーなどの軟質な合成樹脂を用いてもよい。
【0016】
柱状の標識部5は、車両などに踏み倒された後に元の状態に復元する可撓性を有するように、ポール2を熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成しているが、これに限らず、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができる。
ポール2の外側面には反射シートが巻回されて全周に亘って貼り付けられた反射部25が設けられており、正面や側方からの視認性を高いものとすることができる。
【0017】
図3は図1の柱状の標識部5の断面図である。
本実施形態の柱状の標識部5において、ポール2の下端には、補強用部材21が固定されている。
補強用部材21はポール2の下端の変形を抑制させるためのものであり、略リング形状に形成され、その外径が前記ポール2の内径に対応する大きさに形成されている。
そして、前記補強用部材21は、下端の一部以外の部分が前記ポール2に挿入され、ポール2の外側から補強用部材21の筒壁へ螺入する固定ねじ(図示せず)によって、ポール2に固定されている。
【0018】
また、柱状の標識部5が可撓性を有するように、本実施形態のポール2は熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されているが、ジョイント4から横方向へ延びるビーム部6の重量による撓みを抑制させるために、ポール2の内側に補強筒22が内装されて設けられている。
具体的には、補強筒22は、外径がポール2の内径より小さな円筒形状に形成され、その下端を前記補強用部材21の上部に形成された環状溝に挿入され、ポール2の外側から補強用部材21の筒壁へ螺入する前記固定ねじ(図示せず)に挿通されて、補強用部材21に固定されている。
本実施形態の補強筒22は可撓性を有するように熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されており、ポール2と同様にこれに限らず、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができる。
補強筒22は、道路用標示体1に車両などが接触してポール2が踏み倒されたとき、ポール2と共に折れ曲がった状態から元の状態へ復元する際に、ポール2を内側から支えて元の状態へより確実に復元させる。
本実施形態の補強筒22は、ポール2の下端に固定された補強用部材から、ポール2の上端に固定されたジョイント4の内部に至るまで、ポール2の略全体に亘って内装されている。このように補強筒22を内装させることで、ポール2をより強い力で支えるようにするとともに、ポール2において補強筒22が内装されている部分とそれ以外の部分との境界が生じないので、この境界でのポール2の折れ曲がりを抑制させ、道路用標示体1の傾きや、力の集中によるポール2の破損を抑制させている。
【0019】
ポール2は補強用部材21が固定された下端部分をベース3の上面に設けた円形のくぼみ31に挿入させて、着脱可能に固定できるように構成されている。具体的には、ベース3に設けられた前記のくぼみ31にポール2の下端部分が挿入された後、ベース3の外側からポール2の下端部分に向けてポール固定ねじNの雄ねじを挿入させて、ポール2を貫通させて補強用部材21に螺入させ、ベース3とポール2とを固定させている。上記のように固定させることで、前記のポール固定ねじNを取り外せば、ポール2とベース3との固定を解除でき、ポール2とベース3とを着脱自在に固定できる。本実施形態では補強用部材21が螺入されたポール固定ねじNの雄ねじ部分と強固に結合できるように、補強用部材21を硬質の樹脂材料で形成させている。また、補強用部材21を硬質の樹脂材料で形成させることで、ポール2の下端部分の変形が抑制され、道路用標示体が外力を受けてもポール2とベース3との固定が容易に外れなくなる。
ポール2とベース3との固定方法は上記の方法に限るものではなく、ポール2の下端とベース3のくぼみ31とにそれぞれ係合可能な係合部と係止部とを設け、これらの係合によって着脱可能に固定させてもよいし、ポール2とベース3とは別に形成させた固定部材をポール2とベース3とに架け渡して取り付けることでこれらを固定させてもよいし、他の方法を用いて固定させても良い。
【0020】
ジョイント4は、円筒形をアールを付けて90度の角度に曲げたようなエルボ状の逆L字型に形成されており、その両端において、下方向を向いた端部に下方結合部41を、水平方向を向いた端部に水平結合部42をそれぞれ形成されている。
前記下方結合部41は、下方に向いたジョイント4の外周面が縮径して突出するように形成されており、円筒形のポール2の中空部分に上方から挿入可能に形成されている。下方結合部41の外周面はポール12の内周面に当接するように形成され、下方結合部41とポール12とは融着によって強固に固着されている。
ジョイント4は、車両などが接触する等して変形しても元の状態に復元するように弾性を有する材料で形成するのが好ましく、本実施形態では熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成しているが、これに限らず、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができ、他の材料を用いてもよい。
【0021】
前記水平結合部42は、ジョイント4の外周面を形成する円筒形状の壁部43の内側に、壁部43より小さな筒形に形成された内壁部44が形成されている。
それぞれ筒状に形成された壁部43と内壁部44とは、その間に環状のビーム挿入溝部46が形成されるようにそれぞれの筒の径の大きさを異ならせて設けられている。本実施形態の道路用標示体1のビーム部6の形状についての詳細は後述するが、ビーム部6のジョイント4側の端部には円筒形状の基部61が形成され、この基部61を前記のビーム挿入溝部46に挿入させて固定されるように形成されている。すなわち、ジョイント4の水平方向に向く端部に形成された壁部43、内壁部44、ビーム挿入溝部46がビーム状の標識部5を固定するための水平結合部42として機能するように、壁部43はその内側にビーム部6の基部61を挿入して収納可能に形成され、内壁部44は円筒形状の基部61に挿入可能な大きさに形成されている。
【0022】
図4は図1の柱状の標識部5のジョイント4付近を示す、(イ)は正面図であり、(ロ)は(イ)のA−A断面図である。
本実施形態において、ジョイント4に設けられた水平結合部42の内壁部44は、側面視からの断面形状が略正八角形の筒状に形成されており、それぞれ対向する4面をジョイント4の向きに対して真上、真下、水平横方向へ向けるように形成されている。そして、前記の面の間に形成された斜め方向に向かう4面において、ビーム挿入溝部46から内壁部44の内部へ至るように内壁部44を貫通する雄ねじ挿通孔44aが設けられている。
また、ジョイント4に設けられた水平結合部42の壁部43において、前記の雄ねじ挿通孔44aに対応する位置に、壁部43の外周面から内周面に至るねじ頭部挿通孔43aが設けられている。
本実施形態では、ジョイント4とビーム部6とを固定ねじ9によって固定するように設けており、前記の雄ねじ挿通孔44aは固定ねじ9の雄ねじ部91が挿通可能な大きさに形成され、前記のねじ頭部挿通孔43aは固定ねじ9のねじ頭部92が挿通可能な大きさに形成されている。
【0023】
図5は図4の柱状の標識部5のジョイント4にビーム部6を固定させた状態を示す断面図であり、(イ)はビーム部6の挿入前の状態を示し、(ロ)は固定ねじ9で固定させた状況を示す図である。
本実施形態のジョイント4は固定ねじ9の雄ねじ部91と螺結可能なナット82を備えたクリップナット8を内壁部44に取り付けることで、固定ねじ9によるビーム状の標識部5の着脱可能な固定を可能に形成されている。
【0024】
前記のクリップナット8は、平板状のバネを、コの字形状に曲げて形成されたクリップ部81と、このクリップ部81に固定されたナット82から構成されている。
クリップナット8は、コの字形状に形成されたクリップ部81で、ジョイント4の水平結合部42の内壁部44を挟み込み、ジョイント4内に内装されて取り付けられる。このとき、ナット82がジョイント4の内壁部44の内側に収納されるように、クリップナット8は取り付けられる。また本実施形態では、クリップナット8は、ねじ頭挿通孔43aから挿通させた固定ねじ9の雄ねじ部91を、雄ねじ挿通孔44aを挿通させてナット82に螺結可能な位置に取り付けられており、略正八角形の筒形状に形成された内壁部44の8つの面の中で、雄ねじ挿通孔44aが形成された4面にそれぞれ1個づつ合計4個取り付けられている。本実施形態では上記のようにクリップナット8を合計4個取り付けているが、これに限るものではなく、ジョイント4の大きさや形状に応じて個数を調整して取り付けて良い。
【0025】
上記のようにクリップナット8をジョイント4に取り付けることにより、ジョイント4のビーム挿入溝部46にビーム部6の基部61を挿入させた後、ジョイント4の壁部43の外側からねじ頭部挿通孔43aに固定ねじ9を挿通させ、前記の固定ねじ9の雄ねじ部91をビーム部6に貫通させ、ジョイント4の内壁部44の雄ねじ挿通孔44aを挿通させて、クリップナット8のナット82に螺結させ、ジョイント4とビーム部6とを固定させる。ビーム部6には固定ねじ9の雄ねじ部91が貫通する位置に、あらかじめ貫通穴65が設けてある。また、ジョイント4の水平結合部を構成する壁部43、内壁部44,ビーム挿入溝部46は、ビーム部6を固定する固定ねじ9がクリップナット8に螺結されたときに、固定ねじ9のねじ頭部92の上端が、ジョイント4のねじ頭部挿通孔43aから突出させずに、ジョイント4の壁部43の外周面より内側に位置するように、固定ねじ9をジョイント4の内部に収納可能に形成されている。上記のようにジョイント4を形成させることで、道路用標示体1に車両などが接触した際に、固定ねじ9のねじ頭部91が車両に接触して傷つけるなどの問題の発生を防止することができる。
【0026】
また上記のように、クリップナット8のナット82と固定ねじ9との螺結によって、ジョイント4とビーム部6とを固定することで、ジョイント4とビーム部65との固定を着脱自在で、強固なものとできる。
また上記のように、ジョイント4とビーム部6との固定にクリップナット8を用いることで、固定ねじ9を螺結させる雌ねじ部を容易にジョイント4に設けることができると共に、柱状の標識部5が破損などして交換する場合には、クリップナット8を容易にジョイント4から取り外して分別し、再利用や再生利用などを行うことができる。
【0027】
本実施形態では、固定ねじ9をジョイント4に取り付けたクリップナット8に螺結させて、ビーム部6とジョイント4の水平結合部42とを固定させているが、固定方法はこれに限るものではなく、雄ねじ91と螺結可能な雌ねじ部分を有する固定部材をジョイント4に内装固定させる方法や、ジョイント4の内壁部44に雄ねじ91と螺結可能な雌ねじを直接形成させるなどの方法を用いてもよい。
【0028】
ビーム部6は、ジョイント4から横の一方向へ延びるように設けられ、人や車両等の通過を防止するようになされている。
ビーム部6は車両などに接触して変形した後に元の状態に復元する可撓性を有するように、熱可塑性ポリウレタン樹脂、軟質ポリオレフィン、エラストマー、などを好適に用いることができ、本実施形態のビーム部6は熱可塑性ポリウレタン樹脂で形成されている。
【0029】
図6はビーム部6の断面を示す図2のA−A断面図であり、図7はビーム部6の基部61の断面を示す図2のB−B断面図であり、図8はビーム部6の板部63の断面を示す図2のC−C断面図である。
ビーム部6は、一方の端部に円筒形状に形成された基部61が設けられて前記ジョイント4に取り付けられており、他方の側に板形状の外形に形成された板部63が設けられている。そして前記板部63と前記基部61との間には、前記板部63の板形状から前記基部61に至るほど円筒形状となる中間部12が形成されている。
そして、前記基部61には、ジョイント4との固定に用いられる固定ねじ9の雄ねじ部91が挿通可能な貫通穴65が形成されている。
【0030】
前記板部63は、その板形状の板面が前面及び後面へ向けられるように前記ジョイント4に取り付けられている。このように設けることで、板部63が上下方向へ変形しにくくなされ、自重による板部63の撓みが抑制される。
また、板面を前面及び後面へむけるように前記板部63を設けることで、ビーム部6の上への座り心地が悪いような印象を人に感じさせ、ビーム部6へ歩行者などの人が腰掛けて転ぶような事故の発生を抑制できる。
また、板部63の前面や後面の板面に、文字表示や、図形、模様等を用いた道路標示を形成させることも可能である。
【0031】
ビーム部6は、前記の如く、円筒形状の基部61と、円筒形状から板形状の外形に変化する中間部62と、板形状の外形の板部63とを備えた形状に設けられているが、本実施形態のビーム部6のこれらの形状は1本のパイプ体Pを熱プレス加工して形成させている。
【0032】
図9は図2のビーム部6を形成させる状況を示す図であり、(イ)は熱プレス加工前を示す図であり、(ロ)は熱プレス加工後を示す図である。
パイプ体Pは、図9(イ)に示すように円筒形状のパイプである。
パイプ体Pは、矢印で示されるように前後両方向から熱プレス加工により押圧され、円筒形状の筒壁が一方の端に至るまで扁平な平板状に成型されて、板形状の外形の板部63が形成されている。
そして、前記の熱プレス加工が施されていないパイプ体Pの他方の端部分は円筒形状の基部61とし、この基部61と板部63との間に、板形状から円筒形状へ形状を変化させる中間部62が形成されるように設けている。
前記ビーム部6の板部63、中間部62、基部61を一の部材で一体的に形成させることで、これらの部位の接続部分が生じないので、立設する道路用標示体1のビーム部6に車両などが接触したときに、接続部分に力が集中して破壊され、板部63が外れてしまう等の問題が抑制できる。
また、板形状の外形の板部63と円筒形状の基部61との間に、板形状から円筒形状へ徐々に形状が変化する中間部62を設けることで、これらの間のビーム部6の筒壁に力が集中する箇所が生じにくくなされ、ビーム部6の損傷が抑制できる。
また、本実施形態のビーム部6は、1本のパイプ体Pを熱プレス等により前後両方向から押圧することで、前記の板部63、中間部62、基部61を容易に形成させることができる。また前記の方法は、射出成型など他の成型方法と比較して、その筒壁の肉厚をビーム部6の一方の端から他方の端に至るまで容易に等しく形成させることができるので、ビーム部6へ外力がかかったときに筒壁の薄い部分に力が集中することがなく、ビーム部6の損傷を抑制できる。
また、パイプ体Pを前後方向から熱プレス加工して前記板部63を形成するので、この板部63の上下方向の幅が元のパイプ体Pの外径である基部61の外径より大きく形成される。このように板部63を設けることで、道路用標示体1のビーム部6の視認性が向上し、その設置場所への注意をより喚起できるようになされる。
【0033】
図10は図1の道路用標示体を設置させた実施の一形態を示す図である。
本実施形態において、道路用標示体1を二個並設させており、具体的には各々のビーム部6を若干の間隔をあけて当該ビーム部6の先端を対向させて、二個一組に並設させている。
上記のようにビーム部6を対向させた二個一組の道路用標示体1を、車の通過を防止したい場所に設置させて車止めとして利用してもよい。また走行車線と対向車線との間に本実施形態の二個一組の道路用標示体1を複数組設けて車線を分離するとともに、設置した道路を歩行者が横断することを防止するように用いることもできる。この場合、隣り合う道路用標示体間の隙間を、人が通過不能な大きさに設置させて、この間を歩行者が横断することを抑制する。
そして、道路用標示体1に車両などが接触したときには、ポール部2やビーム部6が力を受けて撓み、これらの変形によって、接触した車両が道路用標示体1へ引っかかる等の問題を生じにくくなされる。
特に自転車やオートバイなどの二輪車両が道路用標示体1に接触したときに、車両が道路用標示体1に引っかかり、運転手が投げ出されるなどの事故を引き起こす等の問題が抑制できる。
【0034】
図11は本発明に係る道路用標示体1の設置構造の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
本実施形態の道路用標示体の設置構造は、複数の道路用標示体1を路側に列設させた状況をあらわしており、具体的には、4個の道路用標示体1を等間隔に列設させ、全ての道路用標示体1のジョイント4からビーム部6が延びる方向を、道路を走行する車両の進行方向へ向けて立設させている。
本実施形態の道路用標示体1の設置構造の実施形態は、図10の実施形態と同様に、ポール部2やビーム部6の撓みによって、道路用標示体1に接触した車両の移動を妨げないようになされたものである。
そして更に、ビーム6が車両の進行方向へ向けて延設されているので、道路用標示体1に車両が接触した際に、ビーム6の先端が接触した車両の隙間などに入り込み、この車両を引っかけてその移動を妨げるなどの問題が生じにくくなされている。
【0035】
また、本実施形態の道路用標示体1の設置構造においては、柱状の標識部5より延設させたビーム部6の先端を隣りに設置させた道路用標示体1の柱状の標識部5へ向けるように設けており、各ビーム部6には、板面が上下方向へ沿うようなされた板部63をビーム部6の先端に至るように形成させている。
このように設けることで、施工時の誤差や、設置後の変形などの要因によって、延設されるビーム部6の向きが横方向に若干ずれたときでも、柱状の標識部5の横方向の厚みの大きさが板部63の横方向の厚みより大きいため、板部63の横方向への位置ずれが目立たなくなされる。
【符号の説明】
【0036】
1 道路用標示体
2 ポール
21 補強用部材
22 補強筒
25 反射部
3 ベース
31 くぼみ
4 ジョイント
41 下方結合部
42 水平結合部
43 壁部
44 内壁部
46 ビーム挿入溝部
5 柱状の標識部
6 ビーム部
61 基部
62 中間部
63 板部
65 貫通穴
8 クリップナット
81 クリップ部
82 ナット
9 固定ねじ
91 雄ねじ部
92 ねじ頭部
N ポール固定ねじ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有し路面から上方へ立設される柱状の標識部から、ビーム部が横の一方向にのみ延びていることを特徴とする道路用標示体。
【請求項2】
前記ビーム部は、車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有すると共に、扁平な板形状の外形に形成されてその板面が前面及び後面へ向けられるようになされた板部と、前記柱状の標識部に固定される円筒形状の基部と、前記板部と基部との間に連設され前記柱状の標識部側へ至るほど円筒形状となる中間部とを備え、前記板部と前記中間部と前記基部とが一の部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の道路用標示体。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の道路用標示体が、ビーム部の延びる方向を道路を走行する車両の進行方向へ向けて、複数列設されていることを特徴とする道路用標示体の設置構造。
【請求項1】
車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有し路面から上方へ立設される柱状の標識部から、ビーム部が横の一方向にのみ延びていることを特徴とする道路用標示体。
【請求項2】
前記ビーム部は、車両の接触によって弾性的に曲がる可撓性を有すると共に、扁平な板形状の外形に形成されてその板面が前面及び後面へ向けられるようになされた板部と、前記柱状の標識部に固定される円筒形状の基部と、前記板部と基部との間に連設され前記柱状の標識部側へ至るほど円筒形状となる中間部とを備え、前記板部と前記中間部と前記基部とが一の部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の道路用標示体。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の道路用標示体が、ビーム部の延びる方向を道路を走行する車両の進行方向へ向けて、複数列設されていることを特徴とする道路用標示体の設置構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−172501(P2012−172501A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38872(P2011−38872)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】
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