説明

配線構造及び半導体搭載用基板

【課題】 接着層を挟んで積層した配線板の接合部にボイドがないようにして信頼性を高くし、しかも、積層した両配線板の厚さを薄くするとともに両配線板の接合部から外部への接着層樹脂の流出を抑制する。
【解決手段】 プリプレグ32を挟んで積層される両配線板18,19の内、導体パターン30の一部によって開口部13の縁端に沿ったボンディングパッド列15が形成される第2配線板18の導体パターン面には、第3配線板19との接合部の内側縁端に沿って環状に閉じた状態の内側帯状パターン33を形成する。又、第2配線板18の導体パターン面には、第3配線板19との接合部の外側縁端に沿って環状に閉じた状態の外側帯状パターン34を形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層配線構造に好適な配線構造、及び、ICチップ等の半導体パッケージに使用する半導体搭載用基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、入出力端子数の多いICチップを収容するために、複数の配線板を積層して形成した多層配線構造を備えた半導体パッケージがある。このような半導体パッケージでは、表裏面にそれぞれ導体パターンが形成された複数の配線板が、層間絶縁層となるプリプレグ等の接着層によって接着されている。プリプレグは、両基板の積層時に加えられる熱と圧力によって含侵樹脂が流動化し、重ね合わされた両配線板を硬化時に接着するとともに、ほぼ所定の層厚の層間絶縁層となる。
【0003】プリプレグを挟んで両配線板を積層する場合、導体パターン間の隙間にボイド(気泡)が生じないようにする必要がある。配線板の積層時に両配線板間にボイドが生じると、積層作業での加熱・加圧時にボイドが膨張し、両配線板が良好に接着されないことがある。このため、半導体パッケージの多層配線板が層間で剥離する可能性があり、信頼性を高くすることができなくなるからである。
【0004】そこで、積層時に、プリプレグ樹脂がボイドを生じることなく導体パターン同士の間の隙間を充填するようにするために、樹脂の硬化状態がAステージに近いBステージのプリプレグを使用することが考えられる。この場合には、配線板の積層時に流動化したプリプレグ樹脂が導体パターンの間の隙間に良好に充填される。しかしながら、このように樹脂の流動性が高いプリプレグを挟んで配線板を積層すると、両配線板の接合部から外部にプリプレグ樹脂が流出する問題があった。プリプレグ樹脂が半導体搭載用基板に搭載された半導体側に流出した場合には、配線板に導体パターンによって形成されたボンディングパッドが汚染される可能性があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、積層時にプリプレグ樹脂が両配線板の接合部から外部に流出しないように硬化状態がそれほどAステージに近くないプリプレグを使用しながら、積層時に両配線板間にボイドが生じないようにするために、プリプレグに加えて、両配線板の導体パターン面全体にそれぞれソルダレジストを塗布することがある。各配線板の導体パターン面にソルダレジストを塗布すると、導体パターン間の隙間が埋められて導体パターン面がある程度平坦化される。従って、両配線板を積層したときに、導体パターン間の凹部が流動化したプリプレグによって良好に充填され、両配線板間にボイドが発生し難くなる。
【0006】しかしながら、各配線板の導体パターン面をソルダレジストで被覆すると、導体パターンの上にもソルダレジストがのる。このソルダレジストの厚さは、例えば20〜30μmであることから、プリプレグを挟んで積層した両配線板間の絶縁層の厚さが厚くなり、多層配線部の厚さが厚くなって半導体パッケージの小形化の支障となる問題があった。
【0007】本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、接着層を挟んで積層した配線板間にボイドがないようにして剥離に対する信頼性を高くすることができ、しかも、積層した両配線板の厚さが厚くならないようにすることができるとともに積層した基板間から外部への接着層樹脂の流出を抑制することができる配線構造、及び、半導体搭載用基板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため、請求項1に記載の発明は、導体パターンが形成された導体パターン面を備えた配線板を含む一対の基板が、前記導体パターン面が内側となる状態で、前記両基板間に接着層を挟んで積層された配線構造において、前記両基板の少なくとも一方には、前記接着層に向き合う接合面の一部に、前記両基板の積層時に流動化した接着層樹脂の該両基板の接合部から外部への流出を抑制するための帯状パターンが形成されている。「接合部」とは、積層された両基板の各接合面の間を意味する。
【0009】請求項2に記載の発明は、半導体が搭載される搭載用基板上に、導体パターンが形成された導体パターン面を備えた複数の配線板を積層して形成されるとともに前記半導体を囲んだ状態で前記搭載用基板上に搭載するための開口部を備えた多層配線部が設けられ、前記配線板の少なくとも1つは、前記導体パターン面に接着層が向き合う状態で積層されている半導体搭載用基板において、前記接着層に向き合う第1の配線板の前記導体パターン面、及び、該第1の配線板に前記接着層を挟んで積層された第2の配線板の接合面の少なくとも一方には、前記両配線板の接合部の内側縁端及び外側縁端の少なくとも一方に沿って、該両配線板の積層時に流動化した接着層樹脂の該接合部から外部への流出を抑制するための帯状パターンが形成されている。「半導体搭載用基板」とは、半導体パッケージを構成する基板である。「内側縁端」とは、開口部によって環状となっている接合部の内側、即ち、開口部側の環状の縁端であり、「外側縁端」とは、同じく環状の接合部の外側、即ち、外周側の縁端である。
【0010】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記第1の配線板は、前記導体パターンの一部により前記開口部の縁端に沿って形成されるとともに前記半導体にワイヤボンディングされるボンディングパッド列を備え、前記帯状パターンは、前記導体パターン面に前記接合部の内側縁端に沿って環状に閉じた状態で設けられている。
【0011】請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記帯状パターンは、前記接合部の外側縁端に沿って環状に閉じた状態で設けられている。
(作用)請求項1に記載の発明によれば、両基板の積層に使用するプリプレグ等の接着層の硬化状態をAステージに近いBステージとすることにより、配線板の導体パターン面をソルダレジスト等の被覆層で平坦化しないままで、導体パターン面に形成されている導体パターン同士の間の隙間に接着層樹脂が良好に充填される。そして、流動化した接着層樹脂の両基板間からの流出が、積層される両基板の少なくとも一方の接合面の一部に形成されている帯状パターンによって抑制される。このとき、帯状パターンが導体パターン面又は接合面の一部にのみ形成されているので、導体パターンの上に帯状パターンがのった部分の厚さが接着層の部分的な変形によって吸収され、従来のように配線パターン面に被覆層を形成する場合と異なり、積層された両基板全体の厚さが厚くならない。
【0012】請求項2に記載の発明によれば、多層配線部の少なくとも一部を構成する第1及び第2の配線板の積層に使用する接着層樹脂の硬化状態をAステージに近いBステージとすることにより、第1の配線板の導体パターン面を被覆層で平坦化しないままで、導体パターン面に形成されている導体パターン同士の間の隙間に接着層が良好に充填される。そして、流動化した接着層樹脂の両配線板の接合部から外部への流出が、積層される両配線板の少なくとも一方に、接合部の内側縁端及び外側縁端の少なくとも一方に沿って設けられている帯状パターンによって抑制される。帯状パターンが内側縁端に沿って設けられている場合には、接合部から開口部側への接着層樹脂の流出が抑制され、帯状パターンが外側縁端に沿って設けられている場合には、接合部から多層配線部の外周側への流出が抑制される。このとき、帯状パターンが、導体パターン面又は接合面の少なくとも一方に、接合部の縁端に沿ってのみ形成されているので、導体パターンに向き合う帯状パターンの厚さが接着層の部分的な変形によって吸収され、従来のように配線パターン面に被覆層を形成する場合と異なり、積層された両配線板全体の厚さが被覆層によって厚くならない。
【0013】請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の作用に加えて、開口部の縁端に沿ってボンディングパッド列が設けられた多層配線部において、ボンディングパッド列が形成された導体パターン面に接合部の内側縁端に沿って環状に閉じた状態で帯状パターンが設けられているので、接合部からボンディングパッド列側への接着層樹脂の流出が効果的に抑制される。
【0014】請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の作用に加えて、両配線板の接合部の外側縁端に沿って環状に閉じた状態で帯状パターンが設けられているので、接合部から多層配線部の外周側への接着層樹脂の流出が効果的に抑制される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を半導体搭載用基板に具体化した一実施の形態を図1〜図6に従って説明する。
【0016】図2( a) ,(b)は半導体パッケージを構成する半導体搭載用基板10を示している。半導体搭載用基板10は、例えばICベアチップ等の半導体が搭載される搭載用基板としてのメタルスラグ11と、半導体に接続される多層配線部12とを備えている。多層配線部12の中央部には、メタルスラグ11上に半導体を搭載するための開口部13が形成されている。開口部13の周辺には、半導体の各ボンディングパッドをワイヤボンディングするためのボンディングパッド列14,15が設けられている。又、多層配線部12の上面には、各ボンディングパッド列14,15の各パッドに電気的に導通された複数のバンプ16が設けられている。
【0017】図1は多層配線部12の一部の断面を示している。多層配線部12は、積層された第1配線板17、第2配線板18及び第3配線板19とで形成されている。第1配線板17はメタルスラグ11の上面に積層され、第2配線板18は第1配線板17の上に積層され、第3配線板19は第2配線板18の上に積層されている。
【0018】第3配線板19の上面には第1配線層20が形成され、同じく下面には第2配線層21が形成されている。第2配線板18の上面には第3配線層22が形成され、同じく下面には第4配線層23が形成されている。第1配線板17の上面には第5配線層24が形成され、同じく下面には第6配線層25が形成されている。各配線層20〜25はバイアホール26によって接続されている。
【0019】第1配線板17の開口部13側の周縁部は、第2配線板18の開口部13側の周縁部よりも内側に張り出すように形成され、その張り出し部分において外部に露出する第5配線層24にボンディングパッド列14が形成されている。
【0020】又、第2配線板18の開口部13側の周縁部は、第3配線板19の開口部13側の周縁部よりも内側に張り出すように形成され、その張り出し部分において外部に露出する第3配線層22にボンディングパッド列15が形成されている。
【0021】第1配線板17は、接着層27によってメタルスラグ11に接着されている。第1配線板17の第6配線層25にはソルダマスク28が被覆されている。又、第3配線板19の第1配線層20にはソルダマスク29が被覆されている。
【0022】多層配線部12の多層配線構造について説明する。図3は、第1の配線板としての第2配線板18の上面に形成された第3配線層22を示している。第3配線層22は、導体パターン30によって形成されている。ボンディングパッド列15は、導体パターン30の一部によって形成されている。導体パターン30は、例えば、30μmの厚さに形成されている。
【0023】図4は第3配線層22の一部を拡大した図である。第3配線層22の各導体パターン30は、他の配線層20,21,23,24,25の各導体パターンとインピーダンスが調整された所定の線幅で形成されている。又、導体パターン30は、隣り合う導体パターン30との間隔が、少なくとも100μm以上となるように設けられている。尚、インピーダンス等の要因により線幅が制約されない導体パターン30は、例えば、導体パターン30aのように、隣り合う導体パターン30との間隔が100〜300μmの範囲内の幅となるように、あえて、その線幅が広く形成されている。
【0024】第2配線板18の上面には、第3配線層22を形成する導体パターン30に加えて、導体パターン30の間、即ち、導体パターン30が形成されていないパターン非形成領域に、擬似パターン31が形成されている。
【0025】擬似パターン31は、導体パターン30の厚さと同じ厚さ、即ち、30μmの厚さに形成されている。又、擬似パターン31は、電気的機能を具備しない、即ち、ボンディングパッド14,15及びバンプ16に接続されておらず電気路として使用されない導体パターンとして形成されている。さらに、擬似パターン31は、各導体パターン30の周囲をできるだけ取り囲まないように、互いに独立した形状に形成されている。
【0026】図5は導体パターン30の一部を拡大した図である。擬似パターン31は、隣り合う導体パターン30間との間隔Wが、100〜300μmの範囲内となるように設けられている。
【0027】又、第2配線板18の第3配線層22と対向する状態で積層されている第2の配線板としての第3配線板19の第2配線層21にも、同様に擬似パターンが形成されている。
【0028】図6は第2配線板18と第3配線板19の積層状態を模式的に示している。第2配線板18と第3配線板19とは、接着層としてのプリプレグ32のみを介在した状態で積層されている。プリプレグ32としては、積層前の厚さが例えば60μmのものが使用されている。第3配線層22及び第2配線層21において、導体パターン30同士の間、又は、導体パターン30と擬似パターン31との間は、積層時の加圧・加熱によって流動化したプリプレグ32によってボイドが生じていない状態で充填されている。
【0029】擬似パターン31が、導体パターン30との間隔が、100〜300μmの範囲内の幅となるように設けられている理由は、導体パターン30同士の間隔、又は、導体パターン30と擬似パターン31との間隔が100〜300μmの範囲内である場合には、配線板18,19の積層時に、流動化したプリプレグ32が導体パターン30同士の間、又は、導体パターン30と擬似パターン31と間に、ボイドを生じることなく良好に入り込むためである。
【0030】尚、積層時にプリプレグ32を挟んだ状態で互いに向き合う状態で配置される第1配線板17の第5配線層24と、第2配線板18の第4配線層23とについても、各導体パターン面のパターン非形成領域に、第2配線層21及び第3配線層22と同様に擬似パターン31が形成されている。
【0031】又、図3に示すように、第2配線板18の第3配線層22が形成された導体パターン面には、導体パターン30に加え、ソルダレジストによって帯状パターンとしての内側帯状パターン33及び外側帯状パターン34が形成されている。
【0032】内側帯状パターン33は、積層時に流動化したプリプレグ樹脂の、両配線板18,19の間からボンディングパッド列15側への流出を抑制するために設けられているものであって、導体パターン面上に、第3配線板19との接合部の内側縁端となる領域に沿って環状に閉じた状態で設けられている。内側帯状パターン33は、図1,4に示すように、導体パターン30上と、導体パターン30の非形成領域とに渡って、約30μmの厚さで形成されている。
【0033】外側帯状パターン34は、積層時に流動化したプリプレグ樹脂の、両配線板17,18の間から多層配線部12の外端側への流出を抑制するために設けられているものであって、導体パターン面上に、第3配線板19との接合部の外側縁端となる領域に沿って環状に閉じた状態で形成されている。外側帯状パターン34は、図1,4に示すように、導体パターン30が形成されていないパターン非形成領域に、約30μmの厚さで形成されている。
【0034】尚、図1に示すように、第1の配線板としての第1配線板17の第5配線層24と、第2の配線板としての第2配線板18の第4配線層23とについても、第1配線板17の第5配線層24が形成された導体パターン面に、両配線板17,18の接合部の内側縁端に沿って内側帯状パターン33が形成され、同じく接合部の外側縁端に沿って外側帯状パターン34が形成されている。
【0035】次に、多層配線部の製造方法について説明する。まず、各配線板17〜19を、銅張積層板から製造する。銅張積層板にサブトラクティブ法によって各配線層20〜25を形成する導体パターン30を約30μmの厚さに形成する。このとき、擬似パターン31を形成する第1配線板17の第5配線層24、第2配線板18の第3,4配線層22,23、及び、第3配線板19の第2配線層21については、導体パターン30と共に擬似パターン31を、電気的機能を具備しない導体パターンとして同一のパターン形成工程で形成する。
【0036】次に、第1配線板17の第5配線層24と、第2配線板18の第3配線層22とに、ソルダレジストのスクリーン印刷により内側帯状パターン33及び外側帯状パターン34をそれぞれ約30μmの厚さで形成する。
【0037】各配線板17〜19に配線層20〜25を形成した後は、メタルスラグ11及び各配線板17〜19を積層する。メタルスラグ11と第1配線板17とは、第1配線板17の第6配線層25をソルダマスク28で被覆した上で、メタルスラグ11側に接着層27となる接着材を塗布して積層する。
【0038】第1配線板17と第2配線板18、及び、第2配線板18と第3配線板19とは、プリプレグ32のみを介在させた状態で加圧・加熱する。すると、図6に示すように、流動化したプリプレグ32が、各配線層間21,22、23,24において、間隔が100〜300μmの範囲内の幅とされた導体パターン30同士の間、又は、導体パターン30と擬似パターン31との間の隙間にボイドを生じることなく良好に入り込む。このとき使用するプリプレグ32は、Aステージに近いBステージのものであって含浸樹脂の流動性が高めのものが好ましい。
【0039】又、第3配線板19の第1配線層20は、スクリーン印刷によるソルダマスク29で被覆する。以上詳述したように、本実施の形態によれば、以下に記載の各効果を得ることができる。
【0040】(1) プリプレグ32を挟んで第3配線板19と積層される第2配線板18の第3配線層22には、導体パターン面の一部に、両配線板18,19の積層時に流動化したプレプレグ樹脂が、両配線板18,19間から外部への流出を抑制するための内側帯状パターン33及び外側帯状パターン34を形成した。従って、プリプレグ32だけで導体パターン30同士の間の隙間をボイドを生じることなく良好に充填するために、プリプレグ樹脂の硬化状態がAステージに近いBステージのものを使用しても、流動化したプリプレグ樹脂が両配線板18,19間から外部に流出し難い。このとき、内側帯状パターン33が導体パターン面の一部にのみ形成されているので、導体パターン30の上に内側帯状パターン33がのった部分の厚さがプリプレグ32の部分的な変形によって吸収され、従来のように配線パターン面全体に被覆層を形成する場合と異なり、積層された両配線板18,19の厚さが厚くならない。
【0041】その結果、積層した配線板18,19間にボイドがないようにして剥離に対する信頼性を高くすることができ、しかも、積層した両配線板18,19の厚さが厚くならないようにすることができるとともに積層した両配線板18,19の接合部から外部へのプリプレグ樹脂の流出を抑制することができる。
【0042】尚、外側帯状パターン34は、導体パターン30が設けられていない部分にのみ形成されているので、両配線板18,19を厚くすることはない。さらに、外側帯状パターン34は、導体パターン30が設けられていない両配線板18,19の接合部の外側縁端に沿って設けられているので、加工上の理由で導体パターン30及び擬似パターン31を設けることが望ましくない外側縁端に隙間ができないようにすることができる。従って、積層された両配線板18,19の外側縁端が外側帯状パターン34及びプリプレグ樹脂で確実に封止されるので、各配線層21,22を外部から確実に封止することができる。
【0043】(2) 半導体パッケージを構成する半導体搭載用基板10の多層配線部12の配線構造に実施したので、積層した配線板17,18、18,19間にボイドがないようにして半導体パッケージの信頼性を高くすることができ、しかも、多層配線部12の厚さが厚くならないようにして半導体パッケージの薄型化を図ることができるとともに多層配線部12の開口部13側又は外周側がプリプレグ樹脂で汚染されないようにすることができる。
【0044】(3) 半導体が搭載される開口部13の縁端に沿ってボンディングパッド列15が設けられた第2配線板18の第3配線層22の導体パターン面に、積層される第3配線板19との接合部の内側縁端に沿って環状に閉じた状態で内側帯状パターン33を設けた。従って、両配線板18,19からのボンディングパッド列15側へのプリプレグ樹脂の流出が効果的に抑制されるので、開口部13の周縁端に沿って設けられたボンディングパッド列15がプリプレグ樹脂で汚染されないようにして、ボンディングパッド列15に対するワイヤボンディングの信頼性を高くすることができる。
【0045】(4) 両配線板18,19の接合部の外側縁端に沿って、環状に閉じた状態で外側帯状パターン34を設けた。従って、両配線板18,19の接合部から外周側へのプリプレグ樹脂の流出が効果的に抑制されるので、多層配線部12の外周側が汚染されないようにすることができる。
【0046】(5) 内側帯状パターン33及び外側帯状パターン34をソルダレジストのスクリーン印刷で形成するので、従来の工法で容易かつ確実に形成することができる。従って、上記(1)〜(4)に記載の各効果を備えた半導体搭載用基板10を従来の工法だけで容易かつ確実に製造することができる。
【0047】(6) 内側帯状パターン33及び外側帯状パターン34を導体パターン30と同じ厚さで形成したので、積層された配線板18,19が厚くならないようにしながら、両配線板18,19の接合部から外部へのプリプレグ樹脂の流出をより一層効果的に抑制することができる。
【0048】(7) 導体パターン面の導体パターン30が形成されていないパターン非領域に、導体パターン30との間隔が100〜300μmの範囲内の幅となるように擬似パターン31を形成するとともに、樹脂の硬化状態がAステージに近いBステージのプリプレグ32を使用した。従って、プリプレグ樹脂によるボンディングパッド列15や、多層配線部12の外側縁端の汚染を防止しながら、導体パターン30同士の間の隙間、又は、導体パターン30と擬似パターン31との間の隙間をボイドを生じさせることなく確実に充填することができる。その結果、多層配線部12の信頼性をより一層高くすることができる。
【0049】尚、実施の形態は上記実施の形態に限らず、以下に記載の各別例のように変更してもよい。
・ 内側帯状パターン33は、両配線板18,19の接合部から流出するプリプレグ樹脂がボンディングパッド列15を汚染しないように設ければよく、必ずしも、環状に閉じていなくてもよい。例えば、接合部の内側縁端の内、ボンディングパッド列15に相対する部分だけに設けてもよい。
【0050】・ 外側帯状パターン34は、両配線板18,19の接合部から流出するプリプレグ樹脂が多層配線部12の外側端部を汚染しないように設ければよく、必ずしも、環状に閉じていなくてもよい。例えば、接合部の外側縁端に、不連続的に設けてもよい。
【0051】・ 内側帯状パターン33及び外側帯状パターン34を、ソルダレジストのフォトエッチングで形成してもよい。
・ 内側帯状パターン33及び外側帯状パターン34の厚さは、積層された両配線板18,19が厚くならず、又、接合部から外部へのプリプレグ樹脂の流出を抑制できれば導体パターン30と同じでなくてもよい。例えば、導体パターン30の厚さ、導体パターン30同士の間隔、使用するプリプレグ樹脂の硬化状態等により、導体パターン30よりも薄く、あるいは、導体パターン30よりも厚くしもよい。
【0052】・ 擬似パターン31を導体パターン面に設けない配線構造に実施してもよい。この場合にも、樹脂の硬化状態がAステージに近いBステージのプリプレグ32を使用して両配線板18,19間にボイドが生じないようにするとともに、接合部から外部に流出したプリプレグ樹脂によるボンディングパッド列15等の汚染を防止することができる。
【0053】・ 外側帯状パターン34は、接合部から外側へのプリプレグ樹脂の流出を抑制することができればよく、第3配線板19の第2配線層21が形成された導体パターン面に設けてもよい。
【0054】・ 内側帯状パターン33又は外側帯状パターン34を、第2配線板18の第3配線層22が形成された導体パターン面だけでなく、第3配線板19の第2配線層21が形成された導体パターン面にも設けてもよい。この構成では、両配線板18,19の接合部から外部ヘのプリプレグ樹脂の流出をより効果的に抑制することができる。
【0055】・ プリプレグ32は両配線板18,19の間にボイドを生じさせることなくほぼ所定の厚さの層間絶縁層を形成して積層することができるものであればよく、積層前の厚さが60μmの厚さのものに限らないが、30〜120μmの範囲内であることが好ましい。
【0056】・ 擬似パターン31を、電気的機能を具備しない導体パターンとして形成する代りに、例えばソルダレジスト等の樹脂で形成してもよい。擬似パターン31をソルダレジストで形成するには、例えば、導体パターン30を形成した導体パターン面に、フォトエッチングによって形成する。
【0057】・ 半導体搭載用基板10に限らず、その他の、多層配線構造を備えたプリント配線板に実施してもよい。
・ 両面プリント配線板同士を積層した多層配線構造に限らず、両面プリント板と片面プリント板、あるいは、片面プリント板同士を積層した多層配線構造に実施してもよい。
【0058】以下、特許請求の範囲に記載した各発明の外に、前述した各実施の形態から把握される技術的思想をその効果とともに記載する。
(1) 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記帯状パターンは前記導体パターンと同じ厚さで形成されている。このような構成によれば、積層した両基板を厚くすることなく接合部から外部へのプリプレグ樹脂の流出をより一層効果的に抑制することができる。
【0059】(2) 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記帯状パターンは、ソルダレジストで形成されている。このような構成によれば、従来の手法であるスクリーン印刷又はフォトエッチングにより帯状パターンを容易かつ確実に形成することができる。
【0060】(3) 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記プリプレグに向き合う前記導体パターン面には、前記導体パターンが形成されていないパターン非形成領域に、前記導体パターンとの間隔が所定の幅となるように擬似パターン(31)が形成されている。このような構成によれば、導体パターン同士の間の隙間、又は、導体パターンと擬似パターンとの間の隙間にボイドを生じさせることなく確実に充填することができ、積層された両基板の信頼性をより一層高くすることができる。
【0061】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1〜請求項4に記載の発明によれば、積層した基板間にボイドがないようにして剥離に対する信頼性を高くすることができ、しかも、積層した両基板の厚さが厚くならないようにすることができるとともに両基板の接合部から外部へのプリプレグ樹脂の流出を抑制することができる。
【0062】請求項2〜請求項4に記載の発明によれば、半導体パッケージを構成する半導体搭載用基板の剥離に対する信頼性を高くすることができ、しかも、半導体パッケージの薄型化を図ることができるとともに多層配線部の開口部側又は外周側がプリプレグ樹脂で汚染されないようにすることができる。
【0063】請求項3又は請求項4に記載の発明によれば、半導体が搭載される開口部の縁端に沿って設けられたボンディングパッド列がプリプレグ樹脂により確実に汚染されないようにすることができる。
【0064】請求項4に記載の発明によれば、多層配線部の外周側がプリプレグ樹脂により確実に汚染されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 半導体搭載用基板の多層配線部の一部を示す模式断面図。
【図2】 (a)は半導体搭載用基板の平面図、(b)は同じく(a)におけるA−A線模式断面図。
【図3】 第2配線板の第3配線層を示す模式平面図。
【図4】 第3配線層の一部を拡大した模式平面図。
【図5】 第3配線層の導体パターンの一部を示す模式平面図。
【図6】 第3配線層の導体パターンの一部を示す模式断面図。
【符号の説明】
11…搭載用基板としてのメタルスラグ、12…多層配線部、13…開口部、14,15…ボンディングパッド列、17…第1の配線板としての第1配線板、18…第1の配線板及び第2の配線板としての第2配線板、19…第2の配線板としての第3配線板、30,30a…導体パターン、32…接着層としてのプリプレグ、33…帯状パターンとしての内側帯状パターン、34…同じく外側帯状パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 導体パターンが形成された導体パターン面を備えた配線板を含む一対の基板が、前記導体パターン面が内側となる状態で、前記両基板間に接着層を挟んで積層された配線構造において、前記両基板の少なくとも一方には、前記接着層に向き合う接合面の一部に、前記両基板の積層時に流動化した接着層樹脂の該両基板の接合部から外部への流出を抑制するための帯状パターンが形成されている配線構造。
【請求項2】 半導体が搭載される搭載用基板上に、導体パターンが形成された導体パターン面を備えた複数の配線板を積層して形成されるとともに前記半導体を囲んだ状態で前記搭載用基板上に搭載するための開口部を備えた多層配線部が設けられ、前記配線板の少なくとも1つは、前記導体パターン面に接着層が向き合う状態で積層されている半導体搭載用基板において、前記接着層に向き合う第1の配線板の前記導体パターン面、及び、該第1の配線板に前記接着層を挟んで積層された第2の配線板の接合面の少なくとも一方には、前記両配線板の接合部の内側縁端及び外側縁端の少なくとも一方に沿って、該両配線板の積層時に流動化した接着層樹脂の該接合部から外部への流出を抑制するための帯状パターンが形成されている半導体搭載用基板。
【請求項3】 前記第1の配線板は、前記導体パターンの一部により前記開口部の縁端に沿って形成されるとともに前記半導体にワイヤボンディングされるボンディングパッド列を備え、前記帯状パターンは、前記導体パターン面に前記接合部の内側縁端に沿って環状に閉じた状態で設けられている請求項2に記載の半導体搭載用基板。
【請求項4】 前記帯状パターンは、前記接合部の外側縁端に沿って環状に閉じた状態で設けられている請求項3に記載の半導体搭載用基板。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【公開番号】特開2000−252596(P2000−252596A)
【公開日】平成12年9月14日(2000.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−54050
【出願日】平成11年3月2日(1999.3.2)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】